特許第6962183号(P6962183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962183
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】光走査装置及びレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20211025BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G02B26/10 104Z
   G02B26/08 E
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-251972(P2017-251972)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-117335(P2019-117335A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】谷下 慎一
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−001325(JP,A)
【文献】 特開2017−116842(JP,A)
【文献】 特開2017−173803(JP,A)
【文献】 特開2016−085391(JP,A)
【文献】 米国特許第09946062(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B26/00−26/12
B81B 1/00−7/04
B81C 1/00−99/00
G01S 7/48−7/51
G01S17/00−17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを走査する光走査装置(1)であって、
光ビームを反射させる反射面を有する反射部(11)と、
前記反射部を揺動可能に支持する板状の梁であって、直線状に延びる少なくとも1つの変形部(21,21a〜21d,41)と、前記変形部の端部に連結する少なくとも1つの連結部(22)と、前記連結部において突出するリブ(23,33)と、を有する支持梁(12)と、
前記支持梁における少なくとも前記変形部に固定され、電圧が印加されることにより屈曲して前記変形部を変形させる圧電体(13,43)と、
を備え、
前記リブは、前記変形部をその長手方向に延長した位置において前記連結部の外縁内に設けられ、その両端部が、前記長手方向に直交する直交方向において、前記変形部における前記連結部と接続する部分である接続部(25)の外縁よりも外側に位置する、光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置であって、
前記圧電体は、前記接続部における前記圧電体の前記直交方向に沿った幅が、前記変形部の中央部における前記圧電体の前記直交方向に沿った幅よりも狭い、光走査装置。
【請求項3】
光ビームを走査する光走査装置(1)であって、
光ビームを反射させる反射面を有する反射部(11)と、
前記反射部を揺動可能に支持する板状の梁であって、直線状に延びる少なくとも1つの変形部(21,21a〜21d,41)と、前記変形部の端部に連結する少なくとも1つの連結部(22)と、前記連結部において突出するリブ(23,33)と、を有する支持梁(12)と、
前記支持梁における少なくとも前記変形部に固定され、電圧が印加されることにより屈曲して前記変形部を変形させる圧電体(13,43)と、
を備え、
前記リブは、前記変形部をその長手方向に延長した位置に設けられ、その両端部が、前記長手方向に直交する直交方向において、前記変形部における前記連結部と接続する部分である接続部(25)の外縁よりも外側に位置し、
前記圧電体は、前記接続部における前記圧電体の前記直交方向に沿った幅が、前記変形部の中央部における前記圧電体の前記直交方向に沿った幅よりも狭い、光走査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の光走査装置であって、
前記変形部は、前記接続部の前記直交方向に沿った幅が、前記変形部の中央部の前記直交方向に沿った幅よりも狭い、光走査装置。
【請求項5】
光ビームを走査する光走査装置(1)であって、
光ビームを反射させる反射面を有する反射部(11)と、
前記反射部を揺動可能に支持する板状の梁であって、直線状に延びる少なくとも1つの変形部(21,21a〜21d,41)と、前記変形部の端部に連結する少なくとも1つの連結部(22)と、前記連結部において突出するリブ(23,33)と、を有する支持梁(12)と、
前記支持梁における少なくとも前記変形部に固定され、電圧が印加されることにより屈曲して前記変形部を変形させる圧電体(13,43)と、
を備え、
前記リブは、前記変形部をその長手方向に延長した位置に設けられ、その両端部が、前記長手方向に直交する直交方向において、前記変形部における前記連結部と接続する部分である接続部(25)の外縁よりも外側に位置し、
前記変形部は、前記接続部の前記直交方向に沿った幅が、前記変形部の中央部の前記直交方向に沿った幅よりも狭い、光走査装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の光走査装置であって、
前記支持梁は、前記直交方向に間隔を空けて並設された複数の前記変形部と、互いに隣り合う2つの前記変形部の端部同士を連結し、2つの前記変形部に対応する2つの前記リブを有する少なくとも1つの前記連結部と、前記連結部において前記リブとは別に突出する連結リブ(24,34)と、を有し、
前記連結リブは、前記リブよりもばね定数が低く、2つの前記リブ同士を連結する形状である、光走査装置。
【請求項7】
光ビームを走査する光走査装置(1)であって、
光ビームを反射させる反射面を有する反射部(11)と、
前記反射部を揺動可能に支持する板状の梁であって、直線状に延びる少なくとも1つの変形部(21,21a〜21d,41)と、前記変形部の端部に連結する少なくとも1つの連結部(22)と、前記連結部において突出するリブ(23,33)と、を有する支持梁(12)と、
前記支持梁における少なくとも前記変形部に固定され、電圧が印加されることにより屈曲して前記変形部を変形させる圧電体(13,43)と、
を備え、
前記リブは、前記変形部をその長手方向に延長した位置に設けられ、その両端部が、前記長手方向に直交する直交方向において、前記変形部における前記連結部と接続する部分である接続部(25)の外縁よりも外側に位置し、
前記支持梁は、前記直交方向に間隔を空けて並設された複数の前記変形部と、互いに隣り合う2つの前記変形部の端部同士を連結し、2つの前記変形部に対応する2つの前記リブを有する少なくとも1つの前記連結部と、前記連結部において前記リブとは別に突出する連結リブ(24,34)と、を有し、
前記連結リブは、前記リブよりもばね定数が低く、2つの前記リブ同士を連結する形状である、光走査装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の光走査装置であって、
前記リブは、前記リブの両端部が前記変形部側を向くように湾曲した形状である、光走査装置。
【請求項9】
光ビームを走査する光走査装置(1)であって、
光ビームを反射させる反射面を有する反射部(11)と、
前記反射部を揺動可能に支持する板状の梁であって、直線状に延びる少なくとも1つの変形部(21,21a〜21d,41)と、前記変形部の端部に連結する少なくとも1つの連結部(22)と、前記連結部において突出するリブ(23,33)と、を有する支持梁(12)と、
前記支持梁における少なくとも前記変形部に固定され、電圧が印加されることにより屈曲して前記変形部を変形させる圧電体(13,43)と、
を備え、
前記リブは、前記変形部をその長手方向に延長した位置に設けられ、その両端部が、前記長手方向に直交する直交方向において、前記変形部における前記連結部と接続する部分である接続部(25)の外縁よりも外側に位置し、
前記リブは、前記リブの両端部が前記変形部側を向くように湾曲した形状である、光走査装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の光走査装置であって、
前記連結部には、前記直交方向において前記圧電体を挟む両側に、前記リブの両端部のそれぞれと前記圧電体とを前記直交方向において離間させるスリット(35)が設けられる、光走査装置。
【請求項11】
車両に搭載されるレーダ装置(100)であって、
光ビームを照射する照射部(101)と、
前記照射部により照射された光ビームを走査する請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の光走査装置と、
前記光走査装置により走査された光ビームの反射光を受光する受光部(102)と、
を備える、レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から入射する光ビームを走査する圧電駆動型の光走査装置、いわゆる光偏向器が知られている。引用文献1には、光ビームを反射させる反射部と、反射部を所定の軸周りに揺動させるミアンダ形状のアクチュエータと、を備える光偏向器が開示されている。アクチュエータは、支持体と、圧電体と、連結部と、リブと、を備える。支持体は、直線状に延びる薄い平板部であって、その長手方向に直交する方向に間隔を空けて複数並設される。圧電体は、支持体のほぼ全面に形成され、電圧が印加されることにより屈曲して支持体を変形させる。連結部は、隣り合う支持体の端部同士を連結する半円状の平板部である。リブは、連結部の剛性を向上させるため、連結部の一方の面において突出するように設けられている。リブは、支持体の長手方向に直交する方向に沿って連結部の一方の端部から他方の端部まで延びる平板状である。換言すると、圧電体の長手方向の延長線上付近にリブの端部が位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−235298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような光走査装置には、活性層、BOX層及び支持層が積層された積層構造を有するSOI基板が材料として用いられる。SOI基板は、圧電駆動しやすいように部分的に薄化されている。具体的には、厚さの制御性を上げるために、薄化する部分、例えばリブ以外の部分は活性層からなる膜構成とされ、リブについては活性層、BOX層及び支持層の膜構成とされることが一般的である。このように加工された基板に、圧電駆動のための圧電膜が形成される。
【0005】
ところで、反射部による光ビームの走査角は、圧電膜に印加される電位差を大きくすることで拡大することができる。ただし、BOX層は、他の層と比較して破壊応力が小さく、また、他の層と貼り合わせで形成されているため密着性が低い。したがって、大きな応力がかかると、リブのBOX層で構造破壊が生じることが懸念される。
【0006】
具体的には、発明者の詳細な検討の結果、圧電体の長手方向に沿った外縁又はその延長線と、リブと、の交差部付近には特に応力が集中しやすいという課題が見出された。例えば上述した光偏向器の場合、圧電体が屈曲すると、支持体の中央部においては、支持体の長手方向に沿った曲げ応力がかかるのみであるのに対し、リブの端部においては、支持体の長手方向に沿った曲げ応力と、長手方向に直交する方向に反る力と、が同時にかかる。このため、圧電体の長手方向に沿った外縁の延長線と、リブと、が交差する交差部に応力が集中しやすくなる。このため、上述した光偏光器では、圧電膜に印加する電位差を大きくすると、リブの端部におけるBOX層に応力が集中し、リブが破壊してしまうことが懸念される。
【0007】
なお、リブの破壊を生じにくくしつつ走査角を拡大させる方法として、支持体の長さを長くすること、又は、ミアンダ形状を構成する支持体の本数を増やすことが考えられる。しかし、このような方法で反射部の走査角を拡大しようとすると、支持体の共振周波数が
低下し、外部振動に対して共振し破壊しやすい構造となってしまう。
【0008】
本開示の一局面は、リブにかかる応力を分散することにより走査角を拡大できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、光ビームを走査する光走査装置(1)であって、反射部(11)と、支持梁(12)と、圧電体(13,43)と、を備える。反射部は、光ビームを反射させる反射面を有する。支持梁は、反射部を揺動可能に支持する板状の梁であって、直線状に延びる少なくとも1つの変形部(21,21a〜21d,41)と、変形部の端部に連結する少なくとも1つの連結部(22)と、連結部において突出するリブ(23,33)と、を有する。圧電体は、支持梁における少なくとも変形部に固定され、電圧が印加されることにより屈曲して変形部を変形させる。リブは、変形部をその長手方向に延長した位置に設けられ、その両端部が、長手方向に直交する直交方向において、変形部における連結部と接続する接続部の外縁よりも外側に位置する。
【0010】
このような構成によれば、リブの両端部が交差部から離れるため、リブにかかる応力が分散される。このため、交差部にかかる応力が緩和され、リブが破壊されにくくなる。したがって、リブにかかる応力を分散することにより走査角を拡大することができる。
【0011】
本開示の一態様は、車両に搭載されるレーダ装置であって、照射部と、上述した光走査装置と、受光部と、を備える。照射部は、光ビームを照射する。光走査装置は、照射部により照射された光ビームを走査する。受光部は、光走査装置により走査された光ビームの反射光を受光する。
【0012】
このような構成によれば、リブにおける破壊が生じにくい光走査装置を用いて走査角を拡大することのできるレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】光走査装置が搭載されるレーダ装置の構成図である。
図2】第1実施形態の光走査装置の構成を示す全体図である。
図3】第1実施形態の支持梁の一部を示す拡大図である。
図4】第1実施形態における距離L1に対するリブのBOX層にかかる応力比を示すグラフである。
図5】第2実施形態の光走査装置の構成を示す全体図である。
図6】第2実施形態の支持梁の一部を示す拡大図である。
図7】第2実施形態における距離L2に対するリブのBOX層にかかる応力比を示すグラフである。
図8】第3実施形態の光走査装置の構成を示す全体図である。
図9】第3実施形態の支持梁の一部を示す拡大図である。
図10】第3実施形態における接続部の幅B1に対する一定の共振周波数での走査角比率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示すレーダ装置100は、車両に搭載され、照射部101と、光走査装置1と、駆動部102と、受光部103と、制御部104と、を備える。
【0015】
照射部101は、光ビームを照射する。
光走査装置1は、照射部101により照射された光ビームを走査する。
駆動部102は、光走査装置1を駆動させる駆動信号を発信する。
【0016】
受光部102は、光走査装置1により走査された光ビームの反射光を受光する。
制御部104は、照射部101により照射された光ビームに基づいて、光ビームを反射した物標との相対関係を示す相対値を測定する。
【0017】
図2に示すように、光走査装置1は、反射部11と、支持梁12と、圧電体13と、を備える。反射部11及び支持梁12には、活性層、BOX層及び支持層が積層された積層構造を有するSOI基板が材料として用いられる。
【0018】
反射部11は、光ビームを反射させる円形の反射面を有する。反射部11は、光走査装置1において中央に配置されるように、反射部11の一部において左右対称に支持梁12と連結している。
【0019】
支持梁12は、反射部11を揺動可能に支持する板状の梁である。支持梁12は、変形部21と、連結部22と、リブ23と、連結リブ24と、を有する。支持梁12における変形部21、連結部22、リブ23及び連結リブ24は、SOI基板を形状加工することにより一体的に形成されている。
【0020】
変形部21は、直線状に延びる長方形状の薄い平板部であり、SOI基板において活性層からなる膜構成とされる。変形部21は、変形部21の長手方向に直交する直交方向に間隔を空けて複数並設されている。以下の説明では、変形部21の長手方向に直交する直交方向を方向Xとし、変形部21の長手方向を方向Yとする。本実施形態においては、変形部21は、方向Xにおいて反射部11の左右両側に各4つ並設されている。以下の説明では、変形部21をそれぞれ反射部11に近い側から変形部21a〜21dとする。
【0021】
連結部22は、薄い平板部であり、SOI基板において活性層からなる膜構成とされる。連結部22は、変形部21の端部に連結しており、互いに隣り合う2つの変形部21の端部同士を連結することで、ミアンダ形状を形成する。具体的には、連結部22は、例えば変形部21bの一方の端部と、隣り合う変形部21のうち一方の変形部21aの当該一方の端部と同じ側の端部と、を連結し、変形部21bの他方の端部と、隣り合う変形部21のうち他方の変形部21cの当該他方の端部と同じ側の端部と、を連結する。このように連結部22は、方向Yにおける変形部21の両端部のそれぞれを左右に隣り合う異なる変形部21の端部と連結する。
【0022】
リブ23は、連結部22において連結部22の一方の面から垂直に突出する板厚が厚い部分であり、SOI基板において活性層、BOX層及び支持層の膜構成とされる。リブ23は、変形部21を方向Yに延長した位置に設けられ、方向Xに沿って直線状に延びる。図3に示すように、リブ23は、その両端部が、方向Xにおいて、変形部21における連結部22と接続する部分である接続部25の外縁よりも外側に位置する。
【0023】
連結リブ24は、連結部22においてリブ23とは別にリブ23と同じ面に突出する板厚が厚い部分であり、SOI基板においてリブ23と同様に活性層、BOX層及び支持層の膜構成とされる。連結リブ24は、連結部22の面に直交する方向から見て連結リブ24の両端部が変形部21側を向くように湾曲した形状であり、連結部22に設けられる2つの変形部21に対応する2つのリブ23同士を連結する。具体的には、2つのリブ23の対向する一方の端部がそれぞれ連結リブ24の両端部に連結される。連結リブ24は、リブ23よりも細く形成されているため、リブ23よりもばね定数が低い。なお、連結部
22の面に直交する方向とは、方向X及び方向Yに直交する方向である。
【0024】
圧電体13は、変形部21と同様、方向Yに沿って直線状に延びる長方形状の薄膜であり、支持梁12においてリブ23が設けられる面とは反対側の面に固定される。圧電体13は、上部電極、圧電膜及び下部電極の3層から構成される。本実施形態では、圧電体13は、方向Xにおいて変形部21の外縁から少し余白を残して、支持梁12における余白を除く変形部21の全面及び連結部22の一部を覆うように設けられる。連結部22の一部において圧電体13は、圧電体13とは反対面に設けられるリブ23に重なる位置まで延びている。圧電体13の材料としては、例えば、上部電極には白金又は金が用いられ、圧電膜にはチタン酸ジルコン酸鉛が用いられ、下部電極には2層となるようにチタン及び白金が用いられる。圧電体13は、電圧が印加されることにより屈曲して変形部21を変形させる。これにより、反射部11が揺動する。
【0025】
[1−2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本実施形態では、リブ23は、変形部21を方向Yに延長した位置に設けられ、その両端部が、方向Xにおいて、接続部25の外縁よりも外側に位置する。このため、方向Yに沿った圧電体13の外縁の延長線と、リブ23と、が交差する交差部26からリブ23の両端部が離れるので、電圧が印加されることによって圧電体13が屈曲する際にリブ23にかかる応力が分散され、リブ23が破壊されにくくなる。したがって、リブ23にかかる応力を分散することにより走査角を拡大することができる。図4は、リブ23の端部と交差部26との間の距離L1に対するリブ23におけるBOX層にかかる応力比を示すグラフである。ここで、距離L1が135umの場合、距離L1が0umの場合と比較して、リブ23のBOX層にかかる応力比が約50%となるので、走査角を2倍に拡大してもリブ23が破壊されにくくなる。
【0026】
(1b)本実施形態では、支持梁12は、リブ23よりもばね定数が低く、連結部22に設けられる2つのリブ23同士を連結する連結リブ24を有する。これにより、電圧が印加されることによって圧電体13が屈曲する際に連結リブ24が撓むことによりリブ23にかかる応力が連結リブ24にも分散される。したがって、連結リブ24を有しない構成と比較して、更にリブ23にかかる応力を緩和することができる。
【0027】
[2.第2実施形態]
[2−1.構成]
図5及び図6に示すように、第2実施形態では、リブ33及び連結リブ34の形状が第1実施形態のリブ23及び連結リブ24の形状と異なる。また、第2実施形態では、連結部22にスリット35が設けられる点で第1実施形態の構成と異なる。その他、基本的な構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と共通する構成については、同一符号を用いて説明を省略する。
【0028】
第2実施形態のリブ33は、連結部22の面に直交する方向から見て、リブ33の両端部が変形部21側を向くように湾曲した形状である。
第2実施形態の連結リブ34は、連結部22の面に直交する方向から見て、連結リブ34の両端部が変形部21側を向くようにU字状であり、2つのリブ33同士を連結する。具体的には、隣り合う2つのリブ33の中央部にそれぞれ連結リブ24の両端部が連結される。
【0029】
第2実施形態の連結部22には、方向Xにおいて圧電体13を挟む両側に、リブ33の両端部のそれぞれと圧電体13とを方向Xにおいて離間させるスリット35が設けられる。
【0030】
[2−2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)第2実施形態では、リブ33は湾曲した形状である。このため、第1実施形態の構成と比較して、方向Xにおけるリブ33の外形寸法を小さくすることができる。また、第2実施形態では、連結部22にスリット35が設けられている。このため、電圧が印加されることによって圧電体13が屈曲する際にリブ33にかかる応力をスリット35に集中させ、湾曲した形状のリブ33で比較的均一に応力を受け止めることができる。したがって、第1実施形態の構成と比較して、方向Xにおける外形寸法を小さくしつつリブ33にかかる応力を緩和することができる。図7は、リブ33の端部における湾曲した形状の内側の内縁と、スリット35のリブ33側の外縁と、の間の距離L2に対する、リブ33におけるBOX層にかかる応力比を示すグラフである。ここで、距離L2が10umの場合、距離L2が0umの場合と比較して、リブ33のBOX層にかかる応力比を約50%まで下げることができる。
【0031】
[3.第3実施形態]
[3−1.構成]
図8及び図9に示すように、第3実施形態では、変形部41及び圧電体43の形状が第2実施形態の変形部21及び圧電体13の形状と異なる。その他、基本的な構成は第2実施形態と同様であり、第2実施形態と共通する構成については、同一符号を用いて説明を省略する。
【0032】
第3実施形態の変形部41は、接続部25の方向Xに沿った幅B1については、第2実施形態の接続部25の方向Xに沿った幅と同じである。それに対して、変形部41の中央部の方向Xに沿った幅B2は、第2実施形態の変形部21の中央部の方向Xに沿った幅よりも広い。換言すると、変形部41は、接続部25の方向Xに沿った幅B1が、変形部41の中央部の方向Xに沿った幅B2よりも狭く形成されている。
【0033】
第3実施形態の圧電体43は、接続部25における圧電体43の方向Xに沿った幅B3については、第2実施形態の接続部25における圧電体13の方向Xに沿った幅と同じである。それに対して、変形部41の中央部における圧電体43の方向Xに沿った幅B4は、第2実施形態の変形部21の中央部における圧電体13の方向Xに沿った幅よりも広い。換言すると、圧電体43は、接続部25における圧電体43の方向Xに沿った幅B3が、変形部41の中央部における圧電体43の方向Xに沿った幅B4よりも狭く形成されている。
【0034】
[3−2.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)第3実施形態では、幅B1よりも幅B2が広く形成されており、幅B3よりも幅B4が広く形成されている。また、第3実施形態でも第2実施形態と同様に変形部41の外縁から少し余白を残して圧電体43が設けられる。このため、第3実施形態の余白の方向Xにおける幅が第2実施形態と同じ場合、変形部41の方向Xに沿った幅に対する圧電体43の方向Xに沿った幅の比率を高くすることができる。したがって、第2実施形態の構成と比較して、低電圧で大きい走査角を得ることができる。図10は、接続部25の幅B1に対する、一定の共振周波数での走査角比率を示すグラフである。ここで、幅B1が一定である場合、幅B2が幅B1よりも広い構成は、幅B2が幅B1と同じ構成と比較して、一定の共振周波数での走査角比率を上げることができる。また、共振周波数の狙い値が同じ場合、図10に示すように、例えば、幅B2が幅B1と同じ構成においては幅B1が約550umで100%の走査角比率を得ることができるのに対して、幅B2が幅B1よりも広い構成においては幅B1が約400umで同等の走査角比率を得ることができ
る。つまり、第2実施形態の構成と比較して、方向Xにおける連結部22の外形寸法を小さくしても第2実施形態の構成と同等の走査角が得られる。このように、方向Xにおける連結部22の外形寸法が小さくなることにより、方向Xにおける支持梁12の外形寸法を小さくすることができる。したがって、光走査装置1のサイズを低減することができる。
【0035】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0036】
(4a)上記各実施形態では、圧電体13,43が、連結部22において、圧電体13,43とは反対面に設けられるリブ23,33に重なる位置まで延びる構成を例示したが、例えば、圧電体13,43の方向Yに沿った端部がリブ23,33と重ならない構成であってもよい。
【0037】
(4b)上記各実施形態では、連結リブ24,34は、リブ23,33よりも細く形成される構成を例示したが、リブ23,33よりもばね定数を低くする方法はこれに限定されるものではない。例えば、連結リブ24,34を波状に形成し、連結リブ24,34を直線に形成した場合よりも長くすることで、リブ23,33よりもばね定数を低くするようにしてもよい。
【0038】
(4c)上記第3実施形態では、幅B1よりも幅B2が広く、また幅B3よりも幅B4が広く形成される構成を例示したが、変形部41及び圧電体43の形状はこれに限定されるものではない。例えば、上記第1実施形態又は第2実施形態のように変形部41における幅B2が幅B1と同じ構成において、圧電体43のみ幅B4が幅B3よりも広く形成される構成であってもよい。また例えば、上記第1実施形態又は第2実施形態のように圧電体43における幅B4が幅B3と同じ構成において、変形部41のみ幅B2が幅B1よりも広く形成される構成であってもよい。
【0039】
(4d)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0040】
1…光走査装置、11…反射部、12…支持梁、13,43…圧電体、21,21a〜21d,41…変形部、22…連結部、23,33…リブ、24,34…連結リブ、25…接続部、26…交差部、35…スリット、100…レーダ装置、101…照射部、102…駆動部、103…受光部、104…制御部。
図1
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図10