【文献】
松井剛ほか,アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の混練物の性状が特性に及ぼす影響,耐火物,2017年03月01日,Vol.69, No.3,P.163,ISSN:0039-8993
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
最大粒径1μm以下のシリカ粉体が0.8〜1.2質量%、最大粒径1μm以下のアルミナ粉体が1〜3質量%、最大粒径1mm以下のマグネシア質耐火原料が4〜7質量%、アルミナセメントが3〜8質量%、及び、残部が最大粒径30mm以下のアルミナ質耐火原料からなる耐火素材100質量%と、分散剤、並びに、爆裂防止剤から構成されるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐用性評価方法であって、
前記キャスタブル耐火物を水で混練した混練物に対し、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定したスランプが260mm以上であり、
かつ、前記混練物を目開き2.8mmのふるいに通過させたペーストに対し、レーザ回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定による粒度分布測定において、50μm以下の粒子の粒度分布の最頻値の粒子径が0.5μm以下である場合には耐用性に優れるとすることを特徴とするアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐用性評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物を用いた溶鋼取鍋の内張り炉材の築炉作業において、緻密で欠陥のない施工体を作製するためには、混練された前記アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の混練物は、分離することなく、築炉箇所の隅々にまで行き渡る程の流動性を有し、かつ、気泡を含まない条件を満足する必要がある。この条件を満たすために、前記アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物には最大粒径1μm以下のシリカ粉体とアルミナ粉体が配合されている。なお、本発明でいうところの「最大粒径」とは、厳密に言えば真球ではない各粒子の最大径(長径)である。
【0015】
最大粒径1μm以下のシリカ粉体やアルミナ粉体の作用を以下に述べる。アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が水と混練される過程で、最大粒径1μm以下のシリカ粉体やアルミナ粉体は各々、一次粒子にまで分散し、分散したこれらシリカ粉体やアルミナ粉体は、最大粒径20〜30mmと粗大な耐火原料(例えば、アルミナ質耐火原料)粒子表面に付着する。相対的に粗大な耐火原料粒子表面に微細なシリカ粉体やアルミナ粉体が付着すると、特開平11−29349号公報に記載されるように、ボールベアリング効果により耐火原料粒子の接触抵抗を低減させるために、耐火原料粒子自体の流動性を向上させる。その結果、混練物の流動性を向上させることができる。
【0016】
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物と水との混練過程で、ボールベアリング効果に寄与しなかったシリカ粉体やアルミナ粉体は、水中で一次粒子にまで分散したスラリー(1μm以下のアルミナ、シリカ粉体の一次粒子と分散剤と水からなる)を形成する。シリカ粉体やアルミナ粉体が一次粒子にまで分散したスラリーの粘性は非常に低くなるために、混練物の流動抵抗性を低減させる効果を発揮し、混練物の流動性を更に向上させる。また、シリカ粉体やアルミナ粉体が一次粒子にまで分散したスラリーは、より粒径の大きいアルミナセメントや耐火原料粒子間の間隙を埋めることにより、分離や気泡の生成を抑制する結果、緻密で欠陥のない施工体の作製に寄与する。
【0017】
したがって、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に配合されるシリカ粉体やアルミナ粉体が、混練過程で一次粒子にまで分散せず、凝集する場合には、混練物の流動性が低下すると共に、緻密で欠陥のない施工体が作製できなくなる結果、耐食性の低下を招くと考えられる。
【0018】
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物と水との混練物の流動性は、従来より、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定されるスランプで評価されている。スランプが高いほど流動性に優れると判断される。然るに現状では、後述の例で示すように、最大粒径1μm以下のシリカ粉体や、アルミナ粉体を含有するアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の施工性、耐食性、並びに、容積安定性は、混練物の流動性に関してのスランプのみでは評価できていない。
以下その原因について考察する。
【0019】
先ず、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐用性について検討した。
最大粒径1μm以下のシリカ粉体とアルミナ粉体、マグネシア質耐火原料、CaO・Al
2O
3を主結晶相とするアルミナセメント、及び、アルミナ質耐火原料から構成されるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の施工体は、溶鋼取鍋等で使用すると、耐火物の施工体内部の温度分布において1000℃となる領域では、次の(1)式の反応が起こる。
SiO
2+Al
2O
3+2(CaO・Al
2O
3)→2CaO・Al
2O
3・SiO
2(ゲーレナイト)+2Al
2O
3 (1)
続いて、1400℃で上記(1)式の反応で生成したゲーレナイトは溶融し、液相を生成する。
【0020】
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物が水と混練される過程で、シリカ粉体やアルミナ粉体が、一次粒子にまで分散すると、混練物全体に渡って、シリカ粉体とアルミナ粉体が均一に分布することになる。つまり、施工体の組織全体に渡って、シリカ粉体とアルミナ粉体が均一に存在することになる。
このような施工体が使用されると、使用中には上記(1)式の反応で生成したゲーレナイトが溶けた液相が、施工体の組織全体に渡って均一に生成することになる。
【0021】
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は、使用中には耐火物の施工体内部で、耐火物の施工体を構成する原料同士の反応により体積膨張を伴うスピネルやヒボナイトの生成反応も進行する。一般的には、使用中に耐火物の施工体内部において体積膨張を伴う反応が起きると、座屈が生じ、容積安定性が損なわれる。アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物を使用した場合には、施工体の組織全体に渡って、上記(1)式の反応で生成したゲーレナイトが溶けた液相が、体積膨張を緩和する作用を果たすために、容積安定性が確保されることになる。
【0022】
したがって、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に配合されるシリカ粉体やアルミナ粉体が、混練過程で一次粒子にまで分散せず、凝集する場合には、使用中に上記(1)式の反応で生成したゲーレナイトが溶けた液相が、施工体の組織全体に渡って不均一に生成することになるために、スピネルやヒボナイトの生成時に付随する体積膨張を緩和する作用を果たすことができず、容積安定性を損なうと考えられる。
【0023】
即ち、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の容積安定性は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に配合される、シリカ粉体やアルミナ粉体の混練過程での分散性に支配されているとすることは妥当であると考えられる。
【0024】
次に分散性に関しては、上記のように、従来はアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物と水との混練物の流動性、具体的にはJIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定される、スランプで評価できると考えられていた。そこで各種のキャスタブル耐火物の混練物についてスランプと、更に混練物中の粒度分布についても検討した。
【0025】
混練物中の粒度分布を検討するために、複数種類の混練物について、島津製作所社製 SALD−3100 を使用した粒度分布測定を、以下の方法で行った。
1.試料の調製条件:目開き2.8mmのふるいを通過させた混練物から1gを採取し、試験管に移し取り、その後に100ccの水を加えて、振とうさせた後に、上澄み液から測定用試料を採取。
2.測定条件:水200ccを満たした測定用試料容器に上記の上澄み液を添加し、超音波振動を掛けながら、測定装置の水路系を循環。そして、循環する水にレーザー光を照射させ、透過率が80〜90%の範囲内にあることを確認。
3.測定を開始し、粒度分布は体積基準で算出。
粒度分布の算出は、粒子径0.1μm〜1μmの範囲は、0.1μmステップごとに粒子の体積存在率を算出(10のカテゴリに分かれている)し、粒子径1μm〜10μmの範囲では、1μmステップごとに粒子の体積存在率を算出(10のカテゴリに分かれている)し、粒子径10μm〜50μmの範囲では、10μmステップごとに体積存在率を算出した(5のカテゴリに分かれている)。この際、50μmを超える大きさの粒子は、沈降してしまうので測定していない。
【0026】
結果の一例として、
図1に最大粒径1μm以下のシリカ粉体とアルミナ粉体、最大粒径1mm以下のマグネシア質耐火原料、アルミナセメント、及び、残部が最大粒径30mm以下のアルミナ質耐火原料からなる耐火素材100質量%と、分散剤、並びに、爆裂防止剤から構成されるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物を、ミキサーにて水と混練した際に得られる混練物において、混練物を目開き2.8mmのふるいを通過させたペーストの、レーザ回折・散乱法を測定原理とする粒度分布の測定結果図を示す。
図1では、0.1μm以下の粒子は、グラフ上、粒子径0.1μmに対応する位置に0%(測定できない)と表記され、0.1〜0.2μmの粒子は、グラフ上、粒子径0.2μmに対応する位置に1%と表記され、0.2〜0.3μmの粒子は、グラフ上、粒子径0.3μmに対応する位置に3%と表記され、0.3〜0.4μmの粒子は、グラフ上、粒子径0.4μmに対応する位置に5%と表記され、0.4〜0.5μmの粒子は、グラフ上、粒子径0.5μmに対応する位置に5%と表記されている。すなわち、
図1の粒子径の表記は、その数値より1ステップ前の値から、そのステップの数値までの範囲に含まれる粒径を表記している。
図2についても同様である。
粒度分布の最頻値の粒子径は0.5μm超となっている。JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定した、前記アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の混練物のスランプは260mmである。尚、前記アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は実機では耐用性に劣っていた。
【0027】
他の例として、
図2に最大粒径1μm以下のシリカ粉体とアルミナ粉体、最大粒径1mm以下のマグネシア質耐火原料、アルミナセメント、及び、残部が最大粒径30mm以下のアルミナ質耐火原料からなる耐火素材100質量%と、分散剤、並びに、爆裂防止剤から構成されるアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物を、ミキサーにて水と混練した際に得られる混練物において、混練物を目開き2.8mmのふるいを通過させたペーストのレーザ回折・散乱法を測定原理とする粒度分布の測定結果図を示す。粒度分布の最頻値の粒子径は0.5μm以下となっている。JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定した、前記アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の混練物のスランプは260mmである。尚、前記アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物は実機では耐用性に優れていた。
【0028】
アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の原料構成の同じ上記2例は、従来の評価によれば、同じ流動性を示すことから、分散性が同等であって、耐用性も同等と推定されるものが、実機の耐用性は大きく異なった。
発明者が鋭意検討した結果、分散剤等の影響による混練物中での見掛の粒度構成における最頻値が耐用性に大きく影響することを知見した。
【0029】
本発明者は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物を、ミキサーにて水と混練した際に得られる混練物につき、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定されたスランプ、並びに、前記混練物を目開き2.8mmのふるいを通過させたペーストの、レーザ回折・散乱法を測定原理とする粒度分布から求まる粒度分布の最頻値の粒子径と、前記アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物との実機での耐用性を調べた。その結果、スランプが260mm以上であり、かつ、粒度分布の最頻値の粒子径が0.5μm以下の場合には、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の実機での耐用性に優れるという相関を見出した。
この相関を知見したことにより、物の構成(形状、構造、組織、組成等)として、どのような違いによりアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐用性が向上するか不明であっても、耐用性の優れたアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物を判定、選別することができる。
本発明の粒度分布測定方法としては、レーザ回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定による粒度分布測定のいずれでも使用できる。尚、レーザ回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定においては、体積基準、または、個数基準のいずれの基準でも測定を行うことができる。
【0030】
粒度分布を測定する試料の作製手順を以下に記す。アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物をミキサーにて水と混練して得られる混練物を、振動ふるい(たとえば、興和工業所社製 円型振動ふるい機)を用いて目開き2.8mmのふるいを通過するペーストを得る。振動ふるいに用いられるモーターの回転数は1000〜4000rpmの範囲の回転数を設定することができる。
【0031】
目開き2.8mmのふるいを用いるのは、混練によって得られる微粒子の分散状態が、ふるいを通過させることで破壊されず、状態を保持したままのペーストを回収するためである。
2.8mm超とすると、ふるいを通過したペースト中には、微粒子の凝集体以外に骨材が相対的に多量に含まれてしまい、測定される粒度分布の1μm以下に明確な最頻値が出現しなくなるからである。
2.8mm未満とすると、ふるいの目が細かすぎて、微粒子の凝集体が通過できず、微粒子の分散状態を正確に把握できなくなるからである。
【0032】
以下に、本発明の評価方法の適用対象とするアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の材料について述べる。最大粒径1μm以下のシリカ粉体が0.8〜1.2質量%、最大粒径1μm以下のアルミナ粉体が1〜3質量%、最大粒径1mm以下のマグネシア質耐火原料が4〜7質量%、アルミナセメントが3〜8質量%、及び、残部が最大粒径30mm以下のアルミナ質耐火原料からなる耐火素材ではないキャスタブル耐火物は、本発明の評価方法を用いるまでもなく耐用性に劣ると判断されるため、本発明の適用対象外である。
【0033】
本発明のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられるシリカ粉体としては、シリコン及びシリコン合金の製造時に副生するシリカフラワーやシリカヒュームのようなシリカや、気相法で製造したエアロゾル状のシリカ、及び、湿式法で合成した非晶質含水シリカ、及び、それを乾燥させたものが使用できる。
【0034】
シリカ粉体の最大粒径は1μm以下とする。シリカ粉体の最大粒径が1μm超では、粒径が大きすぎるため、混練過程での分散効果が発揮されず、施工性、耐食性、並びに、容積安定性に劣るからである。
シリカ粉体の配合割合は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐火素材100質量%中、0.8〜1.2質量%とする。シリカ粉体の配合割合が0.8質量%未満では、配合割合が少ないためボールベアリング効果による分散効果が発揮されず、施工性、耐食性、並びに、容積安定性に劣り、1.2質量%超では施工性に劣り、耐火性が低下するために耐食性に劣るためである。
【0035】
本発明のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられるアルミナ粉体としては、バイヤー法により製造されたアルミナや、電融法により製造されたアルミナの粉砕物が使用できる。
【0036】
アルミナ粉体の最大粒径は1μm以下とする。アルミナ粉体の最大粒径が1μm超では、粒径が大きすぎるため、混練過程での分散効果が発揮されず、施工性、耐食性、並びに、容積安定性に劣るからである。
アルミナ粉体の配合割合は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐火素材100質量%中、1〜3質量%の範囲とする。アルミナ粉体の配合割合が1質量%未満では、配合割合が少ないため分散効果が発揮されず、施工性、耐食性、並びに、容積安定性に劣り、3質量%超では混練物におけるアルミナ粒子の体積割合が増大し、アルミナ粒子の凝集が生じるために、施工性と耐食性に劣るためである。
【0037】
本発明のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられるマグネシア質耐火原料としては、焼結マグネシアまたは電融マグネシアが使用できる。
【0038】
マグネシア質耐火原料の最大粒径は1mm以下とする。マグネシア質耐火原料の最大粒径が1mm超であると、粒径が大きいために反応性に劣り、アルミナとの反応によるスピネル生成量が少なくなる結果、耐食性に劣るためである。
マグネシアの配合割合は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐火素材100質量%中、4〜7質量%の範囲とする。マグネシア質耐火原料の配合割合が4質量%未満では、配合割合が少ないため耐食性に劣り、7質量%超ではアルミナとの反応による体積膨張を伴うスピネルの生成量が増大するために、容積安定性に劣るためである。
【0039】
本発明のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられるアルミナセメントとしては、CaO・Al
2O
3を含有するアルミナセメントが使用できる。
アルミナセメントの配合割合は、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐火素材100質量%中、3〜8質量%の範囲とする。アルミナセメントの配合割合が3質量%未満では、配合割合が少ないため、液相の生成量が少なくなり、容積安定性に劣り、8質量%超では、液相の生成量が多くなり、耐食性に劣るためである。
【0040】
本発明のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられるアルミナ質耐火原料としては、焼結アルミナ、電融アルミナ、重焼アルミナ、ボーキサイト、電融ボーキサイト、ばん土頁岩などが使用できる。
【0041】
アルミナ質耐火原料の最大粒径は30mm以下とする。最大粒径が30mm超であると、耐食性に劣り、さらに、接触抵抗が大きくなり、混練物の流動性が低下し、施工性に劣るためである。
【0042】
本発明のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられる分散剤としては、一般に使用されるものでよい。
例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ(たとえば、酸性ヘキサメタリン酸ソーダ)、ポリアクリル酸ソーダ、ポリカルボン酸ソーダ、スルホン酸ソーダ、ナフタレンスルホン酸ソーダ、リグニンスルホン酸ソーダ、ウルトラポリリン酸ソーダ、炭酸ソーダ、ホウ酸ソーダ、クエン酸ソーダなどが1種類以上使用できる。
分散剤の配合割合も一般的な処方でよい。例えばアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐火素材100質量%に対して、外掛けで0.1〜質量1%の範囲が望ましい。
【0043】
本発明のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物に用いられる爆裂防止剤としては、一般に使用されるものでよい。
例えばビニロンファイバー、乳酸アルミニウム、発泡剤である金属アルミニウム、アゾジカルボンアミド等を挙げることができる。
爆裂防止剤の配合割合も一般的な処方でよい。例えば、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐火素材100質量%に対して、外掛けで0.01〜0.03質量%の範囲が望ましい。
【0044】
本発明のアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の混練物の作製は、実機で施工する条件とできる限り同等とすることが好ましい。
【0045】
例えば、前記組成を満たすアルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐火素材100質量%に対し、外掛けで3.6〜5質量%の水を添加し、ミキサーで混練し、作製しても良い。添加する水の量は、通常外掛けで6質量%までであり、通常の量を超えて水を添加すると、施工体の強度が低下するなど、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の耐用性が低下する。
【0046】
ミキサーとしてはボルテックスミキサー、ターボミキサー、二軸ミキサー、並びに、高速ミキサーのいずれでも使用できる。
【実施例】
【0047】
以下に本発明の実施例とその比較例を示す。
【0048】
表1、2に、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物の原料配合と評価結果を示す。表1、2の配合で作製した耐火素材100質量%に、表1、2に示す量の外掛けで、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ、または、ポリカルボン酸ソーダを添加し、爆裂防止剤としてビニロンファイバーを添加し、更に水を耐火素材100質量%に対する外掛け3.6〜5質量%の範囲で添加して、二軸ミキサーを用いて3分間混練し、混練物を作製した。
尚、比較例1は、特許文献4に記載された実施例を模擬して作製した、アルミナ−マグネシア質キャスタブル耐火物である。
【0049】
混練物の施工性は、JIS A 1101に規定されたコンクリートのスランプ試験方法で測定されるスランプと、前記混練物を目開き2.8mmの振動ふるいを通過させたペーストに対する、レーザ回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定により評価した。測定された粒度分布から、最頻値の粒子径を求めた。
粒度分布測定は、島津製作所社製 SALD−3100 を使用し、以下の方法で行った。
1.試料の調製条件:目開き2.8mmのふるいを通過させた混練物から1gを採取し、試験管に移し取り、その後に100ccの水を加えて、振とうさせた後に、上澄み液から測定用試料を採取。
2.測定条件:水200ccを満たした測定用試料容器に上記の上澄み液を添加し、超音波振動を掛けながら、測定装置の水路系を循環。そして、循環する水にレーザー光を照射させ、透過率が80〜90%の範囲内にあることを確認。
3.測定を開始し、粒度分布は体積基準で算出。
粒度分布の算出は、粒子径0.1μm〜1μmの範囲は、0.1μmステップごとに粒子の体積存在率を算出(10のカテゴリに分かれている)し、粒子径1μm〜10μmの範囲では、1μmステップごとに粒子の体積存在率を算出(10のカテゴリに分かれている)し、粒子径10μm〜50μmの範囲では、10μmステップごとに体積存在率を算出した(5のカテゴリに分かれている)。この際、50μmを超える大きさの粒子は、沈降してしまうので測定していない。
スランプが高いほど、最頻値が小さいほど、施工性に優れることを意味する。
尚、振動ふるいは、興和工業所社製 円型振動ふるい機を用い、振動ふるいに用いたモーターの回転数は1800rpmである。
【0050】
耐食性は、侵食材として転炉スラグを用いた回転侵食炉法により評価した。
耐食性の評価試料は、前記混練物を目開き10.7mmのふるいを通過させた混練物を、所定寸法の金枠に振動を付与させながら流し込み、室温で24時間養生した後に、110℃で24時間乾燥させ、大気中で1000℃×6時間焼成することにより作製した。
回転侵食炉法は、回転侵食炉内に、前記評価試料を内張りし、評価試料の表面温度が1650℃に到達した時点で、炉内にスラグを投入し30分経過後に溶融したスラグを排出し、新たにスラグを投入するという操作を6回繰り返すことにより試験を行った。試験後に試料を切断し、切断面における最大侵食深さを測定することにより耐食性を評価した。
耐食性は比較例1の最大侵食深さを100%の長さとして相対評価した。数値が小さいほど、耐食性に優れることを意味する。
【0051】
容積安定性は、以下の方法で1500℃×3時間焼成後の残存線変化率を測定することにより評価した。
容積安定性の評価試料は、前記混練物を目開き10.7mmのふるいを通過させた混練物を所定寸法の金枠に振動を付与させながら流し込み、室温で24時間養生した後に、110℃で24時間乾燥させることにより作製した。
1500℃×3時間焼成後の残存線変化率は、JIS−R2554「キャスタブル耐火物の線変化率試験方法」に準拠して測定した。
1500℃×3時間焼成後の残存線変化率が小さいほど、容積安定性に優れることを意味し、1%以下である場合に優と判定した。
【0052】
実機使用時の損耗速度は、表1、2の配合で作製した耐火素材100質量%に、表1、2に示す量の外掛けで、分散剤としてポリアクリル酸ソーダまたは、ポリカルボン酸ソーダを添加し、爆裂防止剤としてビニロンファイバーを添加し、更に水を耐火物素材100質量%に対する外掛け3.6〜5質量%の範囲で添加して、二軸ミキサーを用いて3分間混練し、混練物を容量300tの溶鋼取鍋の側壁部に施工し、この溶鋼取鍋を70回(ch)使用した後に当該耐火物の厚みを測定し、元の厚みから差し引いた値を使用回数で除することにより平均損耗速度(mm/ch)として算出した。損耗速度は0.2mm/ch以下である場合に優と判定した。実機使用時の損耗速度が低いことは、施工性、耐食性、並びに、容積安定性の全てについて優れていることを示している。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例1〜5は、分離の無い混練物が得られていることと、そのスランプが260mm以上であり、目開き2.8mmのふるいを通過させた混練物の粒度分布における最頻値の粒子径が、0.5μm以下であるために、施工性、耐食性、並びに、容積安定性に優れていることが予測された。これらの実施例について、特性評価を行ったところ、予測通り、耐食性に優れ、容積安定性に優れ、実機で使用しても損耗速度が小さく、極めて優れた耐用性を示していることが確認でき、本発明による耐用性評価方法が有用であることを確認できた。
【0055】
【表2】
【0056】
比較例1は、耐食性試験の基準とした例であるが、アルミナ粉体の最大粒径が1μm超、配合量が3質量%超であるために、スランプ、目開き2.8mmのふるいを通過させた混練物の粒度分布における最頻値(以下単に最頻値ともいう。)を評価するまでもなく、施工性、耐食性、並びに、容積安定性に劣ることが予測された。この比較例1について、特性評価を行ったところ、予測通り、耐食性、容積安定性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0057】
比較例2は、シリカ粉体の最大粒径が1μm超であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、施工性、耐食性、並びに、容積安定性に劣ることが予測された。この比較例2について、特性評価を行ったところ、予測通り、施工性、耐食性、容積安定性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0058】
比較例3は、シリカ粉体の配合量が0.8質量%未満であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、施工性に劣ると共に、耐食性と容積安定性にも劣ることが予測された。この比較例3について、特性評価を行ったところ、予測通り、施工性、耐食性、容積安定性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0059】
比較例4は、シリカ粉体の配合量が1.2質量%超であるために、混練過程で形成されるスラリー中で凝集体が生成し、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、施工性が劣ると共に、耐食性に劣ることが予測された。この比較例4について、特性評価を行ったところ、予測通り、施工性、耐食性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0060】
比較例5は、アルミナ粉体の最大粒径が1μm超であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、施工性、耐食性、並びに、容積安定性に劣ることが予測された。この比較例5について、特性評価を行ったところ、予測通り、耐食性、容積安定性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0061】
比較例6は、アルミナ粉体の配合量が1質量%未満であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、施工性に劣ると共に、耐食性と容積安定性にも劣ることが予測された。この比較例6について、特性評価を行ったところ、予測通り、施工性、耐食性、容積安定性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0062】
比較例7は、アルミナ粉体の配合量が3質量%超であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、施工性と耐食性のみが劣ることが予測された。この比較例7について、特性評価を行ったところ、予測通り、施工性、耐食性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0063】
比較例8は、マグネシア質耐火原料の最大粒径が1mm超であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、耐食性のみが劣ることが予測された。この比較例8について、特性評価を行ったところ、予測通り、耐食性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0064】
比較例9は、マグネシア質耐火原料の配合量が4質量%未満であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、耐食性のみが劣ることが予測された。この比較例9について、特性評価を行ったところ、予測通り、耐食性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0065】
比較例10は、マグネシア質耐火原料の配合量が7質量%超であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、容積安定性のみが劣ることが予測された。この比較例10について、特性評価を行ったところ、予測通り、容積安定性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0066】
比較例11は、アルミナセメントの配合量が3質量%未満であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、容積安定性のみが劣ることが予測された。この比較例11について、特性評価を行ったところ、予測通り、容積安定性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0067】
比較例12は、アルミナセメントの配合量が8質量%超であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、耐食性のみが劣ることが予測された。この比較例12について、特性評価を行ったところ、予測通り、耐食性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0068】
比較例13は、アルミナ質耐火原料の最大粒径が30mm超であるために、スランプ、最頻値を評価するまでもなく、施工性に劣ると共に、耐食性にも劣ることが予測された。この比較例13について、特性評価を行ったところ、予測通り、施工性、耐食性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていた。
【0069】
比較例14は、耐火素材の粒径と配合割合は本発明の適用範囲内であるも、分散剤の使用量が多いために、スランプは260mm以上となるが、混練過程で形成されるスラリー中で凝集体が生成し、粒度分布における最頻値の粒子径が0.5μm超となるために施工性、耐食性、並びに、容積安定性に劣ることが予測された。この比較例14について、特性評価を行ったところ、予測通り、耐食性、容積安定性に劣っており、実機で使用しても損耗速度が大きく、耐用性に劣っていたため、本発明による耐用性評価方法が有用であることを確認できた。