(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
本実施形態に係る軟磁性合金は、組成式(Fe
(1−(α+β))X1
αX2
β)
(1−(a+b+c+d+e+f))M
aP
bSi
cCu
dX3
eB
fからなる軟磁性合金であって、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はTi,V,Mn,Ag,Zn,Al,Sn,As,Sb,Biおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
X3はCおよびGeからなる群から選択される1種以上、
MはZr,Nb,Hf,Ta,MoおよびWからなる群から選択される1種以上であり、
0.030≦a≦0.120
0.010≦b≦0.150
0≦c≦0.050
0≦d≦0.020
0≦e≦0.100
0≦f≦0.030
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.55
である組成を有する。
【0027】
上記の組成を有する軟磁性合金は、非晶質からなり、粒径が15nmよりも大きい結晶からなる結晶相を含まない軟磁性合金としやすい。そして、当該軟磁性合金を熱処理する場合には、Fe基ナノ結晶を析出しやすい。そして、Fe基ナノ結晶を含む軟磁性合金は高い飽和磁束密度、低い保磁力および高い比抵抗を有しやすい。
【0028】
言いかえれば、上記の組成を有する軟磁性合金は、Fe基ナノ結晶を析出させた軟磁性合金の出発原料としやすい。
【0029】
Fe基ナノ結晶とは、粒径がナノオーダーであり、Feの結晶構造がbcc(体心立方格子構造)である結晶のことである。本実施形態においては、平均粒径が5〜30nmであるFe基ナノ結晶を析出させることが好ましい。このようなFe基ナノ結晶を析出させた軟磁性合金は、飽和磁束密度が高くなり、保磁力が低くなりやすい。さらに、比抵抗も高くなりやすい。
【0030】
なお、熱処理前の軟磁性合金は完全に非晶質のみからなっていてもよいが、非晶質および粒径が15nm以下である初期微結晶からなり、前記初期微結晶が前記非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有することが好ましい。初期微結晶が非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有することにより、熱処理時にFe基ナノ結晶を析出させやすくなる。なお、本実施形態では、前記初期微結晶は平均粒径が0.3〜10nmであることが好ましい。
【0031】
以下、本実施形態に係る軟磁性合金の各成分について詳細に説明する。
【0032】
MはZr,Nb,Hf,Ta,MoおよびWからなる群から選択される1種以上である。また、Mの種類としてはNb,HfおよびZrからなる群から選択される1種以上のみからなることが好ましい。Mの種類がNb,HfおよびZrからなる群から選択される1種以上であることにより飽和磁束密度が高くなりやすく、保磁力が低くなりやすくなる。
【0033】
Mの含有量(a)は0.030≦a≦0.120を満たす。Mの含有量(a)は0.050≦a≦0.100であることが好ましい。aが小さい場合には、熱処理前の軟磁性合金に粒径が15nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じやすく、熱処理によりFe基ナノ結晶を析出させることができず、保磁力が高くなりやすくなる。aが大きい場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなる。
【0034】
Pの含有量(b)は0.010≦b≦0.150を満たす。Pの含有量(b)は0.018≦b≦0.131を満たすことが好ましく、0.026≦b≦0.105を満たすことがより好ましい。bが小さい場合には、熱処理前の軟磁性合金に粒径が15nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じやすく、熱処理によりFe基ナノ結晶を析出させることができず、保磁力が高くなりやすくなり、比抵抗が低くなりやすくなる。bが大きい場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなる。
【0035】
Siの含有量(c)は0≦c≦0.050を満たす。すなわち、Siは含有しなくてもよい。Siの含有量(c)は0.005≦c≦0.040を満たすことが好ましい。cが大きい場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなる。また、Siを含有する場合にはSiを含有しない場合と比較して熱処理前の軟磁性合金に粒径が15nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じにくくなる。
【0036】
さらにb≧cであることが好ましい。b≧cである場合には、特に保磁力が低くなりやすくなる。
【0037】
Cuの含有量(d)は0≦d≦0.020を満たす。すなわち、Cuは含有しなくてもよい。Cuの含有量が小さくなるほど飽和磁束密度が高くなり、Cuの含有量が大きくなるほど保磁力が低くなる傾向にある。dが大きすぎる場合には、熱処理前の軟磁性合金に粒径が15nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じやすく、熱処理によりFe基ナノ結晶を析出させることができず、飽和磁束密度が低くなりやすくなり、保磁力が高くなりやすくなる。
【0038】
X3はCおよびGeからなる群から選択される1種以上である。X3の含有量(e)は0≦e≦0.100を満たす。すなわち、X3は含有しなくてもよい。X3の含有量(e)は0≦e≦0.050であることが好ましい。X3の含有量が多すぎる場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなり、保磁力が高くなりやすくなる。
【0039】
Bの含有量(f)は0≦f≦0.030を満たす。すなわち、Bは含有しなくてもよい。さらに、0≦f≦0.010であることが好ましく、実質的にBを含有しないことがさらに好ましい。なお、実質的にBを含有しないとは0≦f<0.001である場合を指す。Bの含有量が多い場合には飽和磁束密度が低くなりやすくなり、保磁力が高くなりやすくなる。
【0040】
Feの含有量(1−(a+b+c+d+e+f))については、特に制限はないが0.730≦1−(a+b+c+d+e+f)≦0.930を満たすことが好ましい。0.780≦1−(a+b+c+d+e+f)≦0.930を満たしていてもよい。上記の範囲を満たす場合には飽和磁束密度を向上させやすく、保磁力を低下させやすくなる。
【0041】
また、本実施形態に係る軟磁性合金においては、Feの一部をX1および/またはX2で置換してもよい。
【0042】
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上である。X1の含有量(α)はα=0でもよい。すなわち、X1は含有しなくてもよい。また、X1の原子数は組成全体の原子数を100at%として40at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦α{1−(a+b+c+d+e+f)}≦0.40を満たすことが好ましい。
【0043】
X2はTi,V,Mn,Ag,Zn,Al,Sn,As,Sb,Biおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上である。X2の含有量(β)はβ=0でもよい。すなわち、X2は含有しなくてもよい。また、X2の原子数は組成全体の原子数を100at%として3.0at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦β{1−(a+b+c+d+e+f)}≦0.030を満たすことが好ましい。
【0044】
FeをX1および/またはX2に置換する置換量の範囲としては、0≦α+β≦0.55とする。α+β>0.55の場合には、熱処理によりFe基ナノ結晶合金とすることが困難となり、仮にFe基ナノ結晶合金とできたとしても保磁力が高くなりやすい。
【0045】
なお、本実施形態に係る軟磁性合金は上記以外の元素を不可避的不純物として含んでいてもよい。また、上記以外の元素は軟磁性合金100重量%に対して合計で1重量%未満、含んでいてもよい。
【0046】
以下、本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法について説明する
【0047】
本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法には特に限定はない。例えば単ロール法により本実施形態に係る軟磁性合金の薄帯を製造する方法がある。また、薄帯は連続薄帯であってもよい。
【0048】
単ロール法では、まず、最終的に得られる軟磁性合金に含まれる各金属元素の純金属を準備し、最終的に得られる軟磁性合金と同組成となるように秤量する。そして、各金属元素の純金属を溶解し、混合して母合金を作製する。なお、前記純金属の溶解方法には特に制限はないが、例えばチャンバー内で真空引きした後に高周波加熱にて溶解させる方法がある。なお、母合金と最終的に得られるFe基ナノ結晶からなる軟磁性合金とは通常、同組成となる。
【0049】
次に、作製した母合金を加熱して溶融させ、溶融金属(浴湯)を得る。溶融金属の温度には特に制限はないが、例えば1200〜1500℃とすることができる。
【0050】
単ロール法においては、主に後述する熱処理前の時点では、薄帯は粒径が15nmよりも大きい結晶が含まれていない非晶質である。非晶質である薄帯に対して後述する熱処理を施すことにより、Fe基ナノ結晶合金を得ることができる。
【0051】
なお、熱処理前の軟磁性合金の薄帯ロールの回転速度を調整することで得られる薄帯の厚さを調整することができるが、例えばノズルとロールとの間隔や溶融金属の温度などを調整することでも得られる薄帯の厚さを調整することができる。薄帯の厚さには特に制限はないが、例えば5〜30μmとすることができる。
【0052】
粒径が15nmよりも大きい結晶が含まれているか否かを確認する方法には特に制限はない。例えば、粒径が15nmよりも大きい結晶の有無については、通常のX線回折測定により確認することができる。
【0053】
また、熱処理前の薄帯には、粒径が15nm未満の初期微結晶が全く含まれていなくてもよいが、初期微結晶が含まれていることが好ましい。すなわち、熱処理前の薄帯は、非晶質および該非晶質中に存在する該初期微結晶とからなるナノヘテロ構造であることが好ましい。なお、初期微結晶の粒径に特に制限はないが、平均粒径が0.3〜10nmの範囲内であることが好ましい。
【0054】
また、上記の初期微結晶の有無および平均粒径の観察方法については、特に制限はないが、例えば、イオンミリングにより薄片化した試料に対して、透過電子顕微鏡を用いて、制限視野回折像、ナノビーム回折像、明視野像または高分解能像を得ることで確認できる。制限視野回折像またはナノビーム回折像を用いる場合、回折パターンにおいて非晶質の場合にはリング状の回折が形成されるのに対し、非晶質ではない場合には結晶構造に起因した回折斑点が形成される。また、明視野像または高分解能像を用いる場合には、倍率1.00×10
5〜3.00×10
5倍で目視にて観察することで初期微結晶の有無および平均粒径を観察できる。
【0055】
ロールの温度、回転速度およびチャンバー内部の雰囲気には特に制限はない。ロールの温度は4〜30℃とすることが非晶質化のため好ましい。ロールの回転速度は速いほど初期微結晶の平均粒径が小さくなる傾向にあり、30〜40m/sec.とすることが平均粒径0.3〜10nmの初期微結晶を得るためには好ましい。チャンバー内部の雰囲気はコスト面を考慮すれば大気中とすることが好ましい。
【0056】
また、Fe基ナノ結晶合金を製造するための熱処理条件には特に制限はない。軟磁性合金の組成により好ましい熱処理条件は異なる。通常、好ましい熱処理温度は概ね400〜600℃、好ましい熱処理時間は概ね10分〜10時間となる。しかし、組成によっては上記の範囲を外れたところに好ましい熱処理温度および熱処理時間が存在する場合もある。また、熱処理時の雰囲気には特に制限はない。大気中のような活性雰囲気下で行ってもよいし、Arガス中のような不活性雰囲気下で行ってもよい。
【0057】
また、得られたFe基ナノ結晶合金における平均粒径の算出方法には特に制限はない。例えば透過電子顕微鏡を用いて観察することで算出できる。また、結晶構造がbcc(体心立方格子構造)であること確認する方法にも特に制限はない。例えばX線回折測定を用いて確認することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る軟磁性合金を得る方法として、上記した単ロール法以外にも、例えば水アトマイズ法またはガスアトマイズ法により本実施形態に係る軟磁性合金の粉体を得る方法がある。以下、ガスアトマイズ法について説明する。
【0059】
ガスアトマイズ法では、上記した単ロール法と同様にして1200〜1500℃の溶融合金を得る。その後、前記溶融合金をチャンバー内で噴射させ、粉体を作製する。
【0060】
このとき、ガス噴射温度を4〜30℃とし、チャンバー内の蒸気圧を1hPa以下とすることで、上記の好ましいナノヘテロ構造を得やすくなる。
【0061】
ガスアトマイズ法で粉体を作製した後に、400〜600℃で0.5〜10分、熱処理を行うことで、各粉体同士が焼結し粉体が粗大化することを防ぎつつ元素の拡散を促し、熱力学的平衡状態に短時間で到達させることができ、歪や応力を除去することができ、平均粒径が10〜50nmのFe基軟磁性合金を得やすくなる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0063】
本実施形態に係る軟磁性合金の形状には特に制限はない。上記した通り、薄帯形状や粉末形状が例示されるが、それ以外にもブロック形状等も考えられる。
【0064】
本実施形態に係る軟磁性合金(Fe基ナノ結晶合金)の用途には特に制限はない。例えば、磁性部品が挙げられ、その中でも特に磁心が挙げられる。インダクタ用、特にパワーインダクタ用の磁心として好適に用いることができる。本実施形態に係る軟磁性合金は、磁心の他にも薄膜インダクタ、磁気ヘッドにも好適に用いることができる。
【0065】
以下、本実施形態に係る軟磁性合金から磁性部品、特に磁心およびインダクタを得る方法について説明するが、本実施形態に係る軟磁性合金から磁心およびインダクタを得る方法は下記の方法に限定されない。また、磁心の用途としては、インダクタの他にも、トランスおよびモータなどが挙げられる。
【0066】
薄帯形状の軟磁性合金から磁心を得る方法としては、例えば、薄帯形状の軟磁性合金を巻き回す方法や積層する方法が挙げられる。薄帯形状の軟磁性合金を積層する際に絶縁体を介して積層する場合には、さらに特性を向上させた磁芯を得ることができる。
【0067】
粉末形状の軟磁性合金から磁心を得る方法としては、例えば、適宜バインダと混合した後、金型を用いて成形する方法が挙げられる。また、バインダと混合する前に、粉末表面に酸化処理や絶縁被膜等を施すことにより、比抵抗が向上し、より高周波帯域に適合した磁心となる。
【0068】
成形方法に特に制限はなく、金型を用いる成形やモールド成形などが例示される。バインダの種類に特に制限はなく、シリコーン樹脂が例示される。軟磁性合金粉末とバインダとの混合比率にも特に制限はない。例えば軟磁性合金粉末100質量%に対し、1〜10質量%のバインダを混合させる。
【0069】
例えば、軟磁性合金粉末100質量%に対し、1〜5質量%のバインダを混合させ、金型を用いて圧縮成形することで、占積率(粉末充填率)が70%以上、1.6×10
4A/mの磁界を印加したときの磁束密度が0.45T以上、かつ比抵抗が1Ω・cm以上である磁心を得ることができる。上記の特性は、一般的なフェライト磁心と同等以上の特性である。
【0070】
また、例えば、軟磁性合金粉末100質量%に対し、1〜3質量%のバインダを混合させ、バインダの軟化点以上の温度条件下の金型で圧縮成形することで、占積率が80%以上、1.6×10
4A/mの磁界を印加したときの磁束密度が0.9T以上、かつ比抵抗が0.1Ω・cm以上である圧粉磁心を得ることができる。上記の特性は、一般的な圧粉磁心よりも優れた特性である。
【0071】
さらに、上記の磁心を成す成形体に対し、歪取り熱処理として成形後に熱処理することで、さらにコアロスが低下し、有用性が高まる。なお、磁心のコアロスは、磁心を構成する磁性体の保磁力を低減することで低下する。
【0072】
また、上記磁心に巻線を施すことでインダクタンス部品が得られる。巻線の施し方およびインダクタンス部品の製造方法には特に制限はない。例えば、上記の方法で製造した磁心に巻線を少なくとも1ターン以上巻き回す方法が挙げられる。
【0073】
さらに、軟磁性合金粒子を用いる場合には、巻線コイルが磁性体に内蔵されている状態で加圧成形し一体化することでインダクタンス部品を製造する方法がある。この場合には高周波かつ大電流に対応したインダクタンス部品を得やすい。
【0074】
さらに、軟磁性合金粒子を用いる場合には、軟磁性合金粒子にバインダおよび溶剤を添加してペースト化した軟磁性合金ペースト、および、コイル用の導体金属にバインダおよび溶剤を添加してペースト化した導体ペーストを交互に印刷積層した後に加熱焼成することで、インダクタンス部品を得ることができる。あるいは、軟磁性合金ペーストを用いて軟磁性合金シートを作製し、軟磁性合金シートの表面に導体ペーストを印刷し、これらを積層し焼成することで、コイルが磁性体に内蔵されたインダクタンス部品を得ることができる。
【0075】
ここで、軟磁性合金粒子を用いてインダクタンス部品を製造する場合には、最大粒径が篩径で45μm以下、中心粒径(D50)が30μm以下の軟磁性合金粉末を用いることが、優れたQ特性を得る上で好ましい。最大粒径を篩径で45μm以下とするために、目開き45μmの篩を用い、篩を通過する軟磁性合金粉末のみを用いてもよい。
【0076】
最大粒径が大きな軟磁性合金粉末を用いるほど高周波領域でのQ値が低下する傾向があり、特に最大粒径が篩径で45μmを超える軟磁性合金粉末を用いる場合には、高周波領域でのQ値が大きく低下する場合がある。ただし、高周波領域でのQ値を重視しない場合には、バラツキの大きな軟磁性合金粉末を使用可能である。バラツキの大きな軟磁性合金粉末は比較的安価で製造できるため、バラツキの大きな軟磁性合金粉末を用いる場合には、コストを低減することが可能である。
【実施例】
【0077】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0078】
下表に示す各実施例および比較例の合金組成となるように原料金属を秤量し、高周波加熱にて溶解し、母合金を作製した。
【0079】
その後、作製した母合金を加熱して溶融させ、1300℃の溶融状態の金属とした後に、大気中において20℃のロールを回転速度40m/sec.で用いた単ロール法により前記金属をロールに噴射させ、薄帯を作成した。薄帯の厚さ20〜25μm、薄帯の幅約15mm、薄帯の長さ約10mとした。
【0080】
得られた各薄帯に対してX線回折測定を行い、粒径が15nmよりも大きい結晶の有無を確認した。そして、粒径が15nmよりも大きい結晶が存在しない場合には非晶質相からなるとし、粒径が15nmよりも大きい結晶が存在する場合には結晶相からなるとした。
【0081】
その後、各実施例および比較例の薄帯に対し、550℃、60minで熱処理を行った。熱処理後の各薄帯に対し、飽和磁束密度および保磁力を測定した。飽和磁束密度(Bs)は振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁場1000kA/mで測定した。保磁力(Hc)は直流BHトレーサーを用いて磁場5kA/mで測定した。比抵抗(ρ)は4探針法による抵抗率測定で測定した。本実施例では、飽和磁束密度は1.30T以上を良好とし、1.50T以上をさらに良好とした。保磁力は10.0A/m以下を良好とし、5.0A/m以下をさらに良好とした。比抵抗(ρ)は組成をFe
90Zr
7B
3とした点以外は実施例3と同一の製法で作成した薄帯(以下、Fe
90Zr
7B
3薄帯とも呼ぶ)の比抵抗(ρ)に対して、20%以上40%未満、上昇した場合を良好とし、40%以上、上昇した場合をさらに良好とした。以下に示す表では、比抵抗がFe
90Zr
7B
3薄帯の比抵抗から40%以上、上昇した場合を◎、Fe
90Zr
7B
3薄帯の比抵抗から20%以上40%未満、上昇した場合を○、Fe
90Zr
7B
3薄帯の比抵抗と同一、または20%未満、上昇した場合を△、Fe
90Zr
7B
3薄帯の比抵抗よりも低い場合を×とした。なお、比抵抗(ρ)は良好でなくても本願発明の目的を達成できる。
【0082】
なお、以下に示す実施例では特に記載の無い限り、全て平均粒径が5〜30nmであり結晶構造がbccであるFe基ナノ結晶を有していたことをX線回折測定、および透過電子顕微鏡を用いた観察で確認した。また、下記の表19以外の表に記載した全ての実施例および比較例はX1およびX2を含有しない。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
【表11】
【0094】
【表12】
【0095】
【表13】
【0096】
【表14】
【0097】
【表15】
【0098】
【表16】
【0099】
【表17】
【0100】
【表18】
【0101】
【表19】
【0102】
【表20】
【0103】
【表21】
【0104】
表1はMがZrのみでありSi、Cu、X3およびBを含まない場合において、Zrの含有量(a)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0105】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例1〜6は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0106】
これに対し、Zrの含有量が小さすぎる比較例1は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力Hcが著しく高くなり、比抵抗ρが低くなった。また、Zrの含有量が大きすぎる比較例2は飽和磁束密度が低下した。
【0107】
表2はMがNbのみでありSi、Cu、X3およびBを含まない場合において、Nbの含有量(a)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0108】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例7〜11は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0109】
これに対し、Nbの含有量が小さすぎる比較例3は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力Hcが著しく高くなり、比抵抗ρが低くなった。また、Nbの含有量が大きすぎる比較例5は飽和磁束密度が低下した。
【0110】
表3はMがZrのみでありSi、Cu、X3およびBを含まない場合において、Pの含有量(b)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0111】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例12〜17は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0112】
これに対し、Pの含有量が小さすぎる比較例6は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力Hcが著しく高くなり、比抵抗ρが低くなった。Pの含有量が多すぎる比較例7は飽和磁束密度Bsが低下した。
【0113】
表4はMがZrのみでありSi、X3およびBを含まない場合において、Cuの含有量(d)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0114】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例18〜21は飽和磁束密度Bsおよび保磁力Hcが良好であった。
【0115】
これに対し、Cuの含有量が大きすぎる比較例8は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力Hcが著しく高くなった。さらに、飽和磁束密度Bsが低くなった。
【0116】
表5はMがZrのみでありSi、CuおよびBを含まない場合において、X3の種類および含有量(e)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0117】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例22〜28は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0118】
これに対し、X3の含有量が大きすぎる比較例9および10は飽和磁束密度Bsが低下し保磁力Hcが高くなった。
【0119】
表6はMがZrのみでありSi、CuおよびX3を含まない場合において、Bの含有量(f)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0120】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例29〜31は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0121】
これに対し、Bの含有量が大きすぎる比較例12は保磁力Hcが高くなった。
【0122】
表7はMがNbのみでありSi、CuおよびX3を含まない場合において、Bの含有量(f)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0123】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例33〜36は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0124】
これに対し、Bの含有量が大きすぎる比較例13は飽和磁束密度Bsが次低くなり、保磁力Hcが高くなった。
【0125】
表8は実施例3からMの種類を変化させた実施例を記載したものである。
【0126】
Mの種類が変化しても各成分の含有量が所定の範囲内である実施例37〜41は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0127】
表9はMがZrのみでありCu、X3およびBを含まない場合において、Pの含有量(b)とSiの含有量(c)との和を一定にしてPとSiとの比率を変化させた実施例を記載したものである。
【0128】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例42〜48は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。特にb≧cである実施例42〜46は、b<cである実施例47および48と比較して飽和磁束密度Bsおおび保磁力Hcが優れる結果となった。
【0129】
表10はMがZrのみでありCu、X3およびBを含まない場合において、Siの含有量(c)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0130】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例49〜54は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0131】
これに対し、Siの含有量が大きすぎる比較例14は飽和磁束密度Bsが低下した。
【0132】
表11はMがZrのみでありCu、X3およびBを含まない場合において、Zrの含有量(a)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0133】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例56〜60は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0134】
これに対し、Zrの含有量が大きすぎる比較例15は飽和磁束密度Bsが低下した。
【0135】
表12はMがNbのみでありCu、X3およびBを含まない場合において、Nbの含有量(a)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0136】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例61〜66は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0137】
これに対し、Nbの含有量が小さすぎる比較例16は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力Hcが著しく高くなった。また、Nbの含有量が大きすぎる比較例17は飽和磁束密度Bsが低下した。
【0138】
表13はMがZrのみでありCu、X3およびBを含まない場合において、Pの含有量(b)およびSiの含有量(c)を同時に変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0139】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例67〜73は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0140】
これに対し、Pの含有量が小さすぎる比較例18は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力Hcが著しく高くなった。さらに、比抵抗ρも低下した。また、Zrの含有量が大きすぎる比較例17は保磁力Hcが大きくなった。
【0141】
表14はMがZrのみでありX3およびBを含まない場合において、Cuの含有量(d)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0142】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例74〜77は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0143】
これに対し、Cuの含有量が大きすぎる比較例20は飽和磁束密度Bsが小さくなった。
【0144】
表15はMがZrのみでありCuおよびBを含まない場合において、X3の種類および含有量(e)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0145】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例78〜85は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0146】
これに対し、X3の含有量が大きすぎる比較例21は飽和磁束密度Bsが小さくなった。
【0147】
表16はMがZrのみでありCuおよびX3を含まない場合において、Bのび含有量(f)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0148】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例86〜89は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0149】
これに対し、Bの含有量が大きすぎる比較例22は保磁力Hcが大きくなった。
【0150】
表17はMがHfのみでありCuおよびX3を含まない場合において、Bのび含有量(f)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0151】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例90〜94は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0152】
これに対し、Bの含有量が大きすぎる比較例23は保磁力Hcが大きくなった。
【0153】
表18はMがHfのみでありCuおよびX3を含まない場合において、Bのび含有量(f)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
【0154】
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例96〜99は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好であった。
【0155】
これに対し、Bの含有量が大きすぎる比較例24は飽和磁束密度Bsが小さくなり、保磁力Hcが大きくなった。
【0156】
表19は実施例43についてFeの一部をX1および/またはX2で置換した実施例を記載したものである。
【0157】
Feの一部をX1および/またはX2で置換しても良好な特性を示した。ただし、α+βが0.50を超える比較例25は保磁力が上昇した。
【0158】
表20は実施例3についてロールの回転速度、熱処理温度および/または熱処理時間を変化させることで初期微結晶の平均粒径およびFe基ナノ結晶合金の平均粒径を変化させた実施例および比較例を記載したものである。表21は実施例43についてロールの回転速度、熱処理温度および/または熱処理時間を変化させることで初期微結晶の平均粒径およびFe基ナノ結晶合金の平均粒径を変化させた実施例を記載したものである。
【0159】
初期微結晶の平均粒径およびFe基ナノ結晶合金の平均粒径を変化させても、熱処理前の薄帯に粒径が15nmよりも大きい結晶が存在しない場合は良好な特性を示した。これに対し、熱処理前の薄帯に粒径が15nmよりも大きい結晶が存在する場合、すなわち、熱処理前の薄帯が結晶相からなる場合には、熱処理後のFe基ナノ結晶の平均粒径が著しく高くなり、保磁力Hcが著しく高くなった。