(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の光電変換素子、光電変換モジュールおよび電子機器について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0031】
<電子機器>
まず、本発明の電子機器の実施形態を適用した電子時計について説明する。かかる電子時計は、受光面に光が照射されると、内蔵する太陽電池(光電変換モジュール)によって発電(光電変換)し、発電により得られた電力を駆動電力として利用するように構成されている。
【0032】
図1、2は、それぞれ、本発明の電子機器の実施形態を適用した電子時計を示す斜視図である。このうち、
図1は、電子時計の表側(受光面側)から見たときの外観を表す斜視図であり、
図2は、電子時計の裏側から見たときの外観を表す斜視図である。また、
図3は、
図1、2に示す電子時計の平面図であり、
図4は、
図1、2に示す電子時計の縦断面図である。
【0033】
電子時計200は、ケース31と太陽電池80(光電変換モジュール)と表示部50と光センサー部40を含む機器本体30と、ケース31に取り付けられた2つのバンド10と、を有している。
【0034】
なお、以下の説明では、太陽電池80の受光面に直交する方向に延在する方向軸をZ軸とする。また、電子時計の裏側から表側への向きを「+Z方向」とし、その反対向きを「−Z方向」とする。
【0035】
一方、Z軸に直交する2つの軸を「X軸」および「Y軸」とする。このうち、2つのバンド10同士を結ぶ方向軸をY軸とし、Y軸に直交する方向軸をX軸とする。また、表示部50の上向きを「+Y方向」とし、下向きを「−Y方向」とする。また、太陽電池80の受光面を平面視したとき、右向きを「+X方向」とし、左向きを「−X方向」とする。
【0036】
以下、電子時計200の構成について順次説明する。
(機器本体)
機器本体30は、表側および裏側に開口したケース31と、表側の開口部を塞ぐように設けられた風防板55と、ケース31の表面と風防板55の側面とを覆うように設けられたベゼル57と、裏側の開口部を塞ぐように設けられた透明カバー44と、を備える筐体を有している。この筐体内には、後述する種々の構成要素が収容される。
【0037】
筐体のうち、ケース31は円環状をなしており、表側には風防板55を嵌め込み可能な開口部35を備え、裏側には透明カバー44を嵌め込み可能な開口部(測定窓部45)を備えている。
【0038】
また、ケース31の裏側の一部は、突出するように成形された凸状部32になっている。この凸状部32の頂部が開口しており、この開口部に透明カバー44が嵌め込まれているとともに、透明カバー44の一部が開口部から突出している。
【0039】
ケース31の構成材料としては、例えばステンレス鋼、チタン合金のような金属材料の他、樹脂材料、セラミック材料等が挙げられる。また、ケース31は、複数の部位の組み立て体であってもよく、その場合、部位同士で構成材料が異なっていてもよい。
【0040】
また、ケース31の外側面には、複数の操作部58(操作ボタン)が設けられている。
また、ケース31の表側に設けられた開口部35の外縁には、+Z方向に突出する突起部34が形成されている。そして、この突起部34を覆うように、円環状をなすベゼル57が設けられている。
【0041】
さらに、ベゼル57の内側には風防板55が設けられている。そして、風防板55の側面とベゼル57との間が、パッキンや接着剤のような接合部材56を介して接着されている。
【0042】
風防板55および透明カバー44の構成材料としては、例えばガラス材料、セラミック材料、樹脂材料等が挙げられる。また、風防板55は透光性を有し、風防板55を介して表示部50の表示内容を視認することができるようになっている。さらに、透明カバー44も透光性を有し、光センサー部40を生体情報測定部として機能させることができる。
【0043】
また、筐体の内部空間36は、後述する種々の構成要素を収容可能な閉空間になっている。
【0044】
機器本体30は、それぞれ内部空間36に収容される要素として、回路基板20と、方位センサー22(地磁気センサー)と、加速度センサー23と、GPSアンテナ28と、光センサー部40と、表示部50を構成する電気光学パネル60および照明部61と、二次電池70と、太陽電池80と、を備えている。また、機器本体30は、これらの要素の他にも、標高や水深等を算出するための圧力センサー、温度を測定する温度センサー、角速度センサーのような各種センサー、バイブレーター等を備えていてもよい。
【0045】
回路基板20は、前述した要素同士を電気的に接続する配線を含む基板である。また、回路基板20には、前述した要素の動作を制御する制御回路や駆動回路等を含むCPU21(Central Processing Unit)および他の回路素子24が搭載されている。
【0046】
また、太陽電池80、電気光学パネル60、回路基板20および光センサー部40は、風防板55側からこの順で配置されている。これにより、太陽電池80は、風防板55に近接して配置されることになり、多くの外部光が太陽電池80に効率よく入射する。その結果、太陽電池80における発電効率を最大限に高めることができる。
【0047】
以下、機器本体30に収容される要素についてさらに詳述する。
回路基板20は、その端部が回路ケース75を介してケース31に取り付けられている。
【0048】
また、回路基板20には、接続配線部63および接続配線部81が電気的に接続されている。このうち、接続配線部63を介して回路基板20と電気光学パネル60とが電気的に接続されている。また、接続配線部81を介して回路基板20と太陽電池80とが電気的に接続されている。これらの接続配線部63、81は、例えばフレキシブル回路基板で構成され、内部空間36の隙間に効率よく引き回される。
【0049】
方位センサー22および加速度センサー23は、電子時計200を装着したユーザーの体の動きに係る情報を検出することができる。方位センサー22および加速度センサー23は、ユーザーの体動に応じて変化する信号を出力し、CPU21に送信する。
【0050】
CPU21は、GPSアンテナ28を含むGPS受信部(図示せず)を制御する回路、光センサー部40を駆動しユーザーの脈波等を測定する回路、表示部50を駆動する回路、太陽電池80の発電を制御する回路等を含む。
【0051】
GPSアンテナ28は、複数の位置情報衛星から電波を受信する。また、機器本体30は、図示しない信号処理部を備えている。信号処理部は、GPSアンテナ28が受信した複数の測位信号に基づいて測位計算を行い、時刻および位置情報を取得する。信号処理部は、これらの情報をCPU21に送信する。
【0052】
光センサー部40は、ユーザーの脈波等を検出する生体情報測定部である。
図4に示す光センサー部40は、受光部41と、受光部41の外側に設けられた複数の発光部42と、受光部41および発光部42が搭載されたセンサー基板43と、を含む光電センサーである。また、受光部41および発光部42は、前述した透明カバー44を介して、ケース31の測定窓部45に臨んでいる。また、機器本体30が備える接続配線部46を介して回路基板20と光センサー部40とが電気的に接続されている。
【0053】
このような光センサー部40は、発光部42から射出した光を被検体(例えばユーザーの皮膚)に対して照射し、その反射光を受光部41で受光することにより、脈波を検出する。光センサー部40は、検出した脈波の情報をCPU21に送信する。
【0054】
なお、光電センサーに代えて、心電計、超音波センサーのような他のセンサーを用いるようにしてもよい。
【0055】
また、機器本体30は、図示しない通信部を備えている。この通信部は、機器本体30が取得した各種の情報や記憶している情報、CPU21による演算結果等を外部に送信する。
【0056】
表示部50は、風防板55を介して、電気光学パネル60の表示内容をユーザーに視認させる。これにより、例えば前述した要素から取得した情報を、文字や画像として表示部50に表示し、ユーザーに認識させることができる。
【0057】
電気光学パネル60としては、例えば、液晶表示素子、有機EL(Organic Electro Luminescence)表示素子、電気泳動表示素子、LED(Light Emitting Diode)表示素子等が挙げられる。
【0058】
図4では、一例として、電気光学パネル60が反射型の表示素子(例えば反射型液晶表示素子、電気泳動表示素子等)である場合を図示している。このため、表示部50は、電気光学パネル60が備える導光板(図示せず)の光入射面に設けられた照明部61を備えている。照明部61としては、例えばLED素子が挙げられる。このような照明部61および導光板は、反射型表示素子のフロントライトとして機能する。
【0059】
なお、電気光学パネル60が透過型の表示素子(例えば透過型液晶表示素子等)である場合には、フロントライトに代えてバックライトを設けるようにすればよい。
【0060】
また、電気光学パネル60が自発光型の表示素子(例えば有機EL表示素子、LED表示素子等)である場合や、自発光型ではないものの外光を利用する表示素子である場合には、フロントライトやバックライトを省略することができる。
【0061】
二次電池70は、図示しない配線を介して回路基板20に接続されている。これにより、二次電池70から出力される電力を、前述した要素の駆動に用いることができる。また、太陽電池80で発電した電力によって、二次電池70を充電することができる。
【0062】
以上、電子時計200について説明したが、本発明の電子機器の実施形態は電子時計に限定されず、例えば携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、カメラ等であってもよい。
【0063】
(太陽電池)
次に、本発明の光電変換モジュールの実施形態を適用した太陽電池80、および、太陽電池80に含まれるセル80a、80b、80c、80d(本発明の光電変換素子の実施形態)について詳述する。
【0064】
太陽電池80は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換モジュールである。
【0065】
図5は、
図4に示す電子時計200のうち太陽電池80のみを図示した平面図である。また、
図6は、
図5に示す太陽電池80の分解斜視図である。
【0066】
図5に示す太陽電池80(光電変換モジュール)は、風防板55と電気光学パネル60との間に設けられ、結晶性を有する半導体基板からなる4つのセル80a、80b、80c、80d(光電変換素子)と、4つのセル80a、80b、80c、80dと電気的に接続された配線基板82と、を備えている。
【0067】
セル80a、80b、80c、80dは、それぞれ板状をなしており、その主面はZ軸方向に向いている。また、セル80a、80b、80c、80dの各主面のうち、風防板55に臨む主面は、外部光を受光する受光面84となる。一方、電気光学パネル60に臨む主面は、発電した電力を取り出す電極パッドが設けられた電極面85となる。
【0068】
図5に示す太陽電池80の平面視形状は、円環になっている。換言すれば、4つのセル80a、80b、80c、80dがわずかな隙間を介して並ぶことにより、全体の平面視形状は、内縁形状(内形形状)および外縁形状(外形形状)がそれぞれ円形である円環になっている。
【0069】
一方、前述したケース31の開口部35は、円形をなしていることから、その内縁は曲線(円弧)を含んでいる。
【0070】
このような電子時計200によれば、円形の開口部35を有するケース31に対して、表示部50のような主要部位のスペースを確保しつつ、太陽電池80を効率的に配置することができる。これにより、太陽電池80を風防板55に近接して配置することができるので、太陽電池80の発電効率を十分に高めることができる。一方、表示部50の配置スペースを、開口部35の中心部に確保することができるので、表示部50の視認性が良好になるとともに、表示部50と太陽電池80との配置のバランスも良好になる。その結果、太陽電池80の発電効率と全体的な意匠性とを両立した電子時計200が得られる。
【0071】
なお、ケース31の開口部35(の内縁)は、少なくとも一部に曲線を含んでいればよく、例えば直線と曲線とを含んでいてもよい。
【0072】
また、「太陽電池80の外縁」とは、太陽電池80の輪郭のうち、開口部35の外側に臨む部分のことをいい、「太陽電池80の内縁」とは、太陽電池80の輪郭のうち、開口部35の中心側に臨む部分のことをいう。
【0073】
また、4つのセル80a、80b、80c、80dにおいて、それぞれの内縁および外縁は、互いに同じ中心を持つ円(同心円)の一部であることが好ましい。換言すれば、4つのセル80a、80b、80c、80dの集合体が円環をなすとき、その円環の内円と外円とが同心円であることが好ましい。これにより、とりわけ意匠性が高い電子時計200を実現することができる。
【0074】
なお、電子時計200の場合、外円の直径は、一例として15mm以上80mm以下程度であるのが好ましく、20mm以上70mm以下程度であるのがより好ましい。
【0075】
また、
図3に示すように、太陽電池80の内縁側には、表示部50(電気光学パネル60)が設けられるが、この表示部50の外形形状は、太陽電池80の内縁に沿っている。換言すれば、電子時計200は、太陽電池80の内縁に沿う外形形状を含む電気光学パネル60を有する。このように配置することで、例えば太陽電池80の内側に配される表示部50の外形形状を円形にすることができるので、意匠性が高い電子時計200を実現することができる。
【0076】
また、太陽電池80の少なくとも一部は、電気光学パネル60の画素領域より外側と重なるように配置されている。これにより、例えば、太陽電池80の受光面84を正視するように電子時計200を見たとき、太陽電池80よりも遠い位置に表示部50(電気光学パネル60)が配置されれば、太陽電池80は、電気光学パネル60の画素領域の外側を覆う、いわゆる見切り板として機能することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、4つのセル80a、80b、80c、80dの集合体によって太陽電池80が構成されているが、セルの数は、1つであってもよく、2つ以上の任意の数であってもよい。
【0078】
また、本実施形態では、太陽電池80の平面視形状が円環になっているが、多重の円環であってもよい。
【0079】
また、4つのセル80a、80b、80c、80dのうち、1つ以上が省略されてもよく、セル同士の形状が互いに異なっていてもよい。
【0080】
また、太陽電池80が含む半導体基板は、前述したように結晶性を有している。この結晶性とは、単結晶性または多結晶性のことをいう。このような結晶性を有する半導体基板を含むことにより、非晶質性を有する半導体基板を含む場合に比べて、より発電効率の高い太陽電池80が得られる。かかる太陽電池80は、仮に同じ電力を発電する場合、より面積を小さくすることを可能にする。このため、結晶性を有する半導体基板を含むことにより、発電効率と意匠性とをより高度に両立させた電子時計200が得られる。
【0081】
特に、半導体基板は、単結晶性を有するものが好ましい。これにより、太陽電池80の発電効率が特に高められる。したがって、発電効率と意匠性との両立を最大限に図ることができる。また、特に、太陽電池80の省スペース化が図られることにより、電子時計200の意匠性をより高めることができる。さらに、室内光のような低照度光においても発電効率が低下しにくいという利点もある。
【0082】
なお、単結晶性を有するとは、半導体基板全体が単結晶である場合の他、一部が多結晶または非晶質である場合も含む。後者の場合、単結晶の体積が相対的に大きい(例えば全体の90体積%以上である)ことが好ましい。
【0083】
半導体基板としては、例えばシリコン基板の他、化合物半導体基板(例えばGaAs基板)等が挙げられる。
【0084】
また、太陽電池80は、好ましくは裏面電極型とされる。具体的には、
図6に示すように、4つのセル80a、80b、80c、80dの電極面85に、それぞれ電極パッド86、87が設けられている。このうち、電極パッド86は正極であり、一方、電極パッド87は負極である。したがって、電極パッド86および電極パッド87から配線を介して電力を取り出すことができる。
【0085】
裏面電極型では、全ての電極パッドを電極面85(裏面)側に配置することができる。このため、受光面84を最大限に大きくすることができ、受光面積の最大化に伴う発電効率の向上を図ることができる。加えて、受光面84側に電極パッドを設けることによる意匠性の低下を防止することができる。このため、電子時計200の意匠性をさらに高めることができる。
【0086】
また、セル80a、80b、80c、80dは、
図5に示すように、それぞれ、複数の電極パッド86および複数の電極パッド87を含んでいるのが好ましい。これにより、セル80a、80b、80c、80d内に、電位差のある端子を複数設けることができる。また、セル80a、80b、80c、80dと配線基板82との間の機械的強度を維持しつつ、接合時に生じる熱応力の集中を防止することができる。
【0087】
また、複数の電極パッド86は、太陽電池80の外縁に沿って配置されている。一方、複数の電極パッド87は、太陽電池80の内縁に沿って配置されている。このような配置をとることにより、太陽電池80の延在方向(周方向)に沿って接続点を確保することができる。このため、太陽電池80をより確実に固定することができ、かつ、太陽電池80と配線基板82との間の接続抵抗を十分に低減させることができる。
【0088】
なお、電極パッド86、87の配置は、図示のものに限定されず、例えば電極パッド86の列の位置と電極パッド87の列の位置とが入れ替わっていてもよい。
【0089】
また、1つのセル当たりの電極パッド86、87の数も、特に限定されず、それぞれ1つであっても、任意の複数であってもよい。また、電極パッド86、87の形状も、特に限定されず、いかなる形状であってもよい。
【0090】
図7は、
図5に示す太陽電池80のA−A線断面図である。なお、
図7では、半導体基板としてSi基板800を用いた例を図示している。
図7に示す太陽電池80は、セル80aと配線基板82とを備えている。
【0091】
このうち、セル80aは、Si基板800と、Si基板800に形成されたp+不純物領域801およびn+不純物領域802(いずれもドーパント不純物領域)と、p+不純物領域801およびn+不純物領域802に接続されているフィンガー電極804(第1電極)と、フィンガー電極804に接続されているバスバー電極805(第2電極)と、を備えている。なお、
図7では、図示の便宜上、p+不純物領域801に接続されているバスバー電極805および電極パッド86(正極端子)のみを図示し、n+不純物領域802に接続されているバスバー電極および電極パッド(負極端子)の図示を省略している。また、
図7では、n+不純物領域802に接続されているフィンガー電極804について破線で示しており、このフィンガー電極804がバスバー電極805と電気的に接続されていないことを表している。
【0092】
Si基板800としては、例えばSi(100)基板等が用いられる。なお、Si基板800の結晶面は、特に限定されず、Si(100)面以外の結晶面であってもよい。
【0093】
Si基板800(半導体基板)の主要構成元素以外の不純物元素濃度は、できるだけ低いことが好ましいが、それぞれ1×10
11[atoms/cm
2]以下であるのがより好ましく、1×10
10[atoms/cm
2]以下であるのがさらに好ましい。不純物元素濃度が前記範囲内であることにより、Si基板800の不純物が光電変換に及ぼす影響を十分に小さく抑えることができる。これにより、小面積であっても十分な電力を発生させ得る太陽電池80を実現することができる。さらに、室内光のような低照度光においても発電効率が低下しにくくなるという利点もある。
【0094】
なお、Si基板800の不純物元素濃度は、例えばICP−MS(Inductively Coupled Plasma - Mass Spectrometry)法により測定することができる。
【0095】
また、p+不純物領域801に接続されているバスバー電極805の一部が露出し、前述した電極パッド86を構成している。一方、n+不純物領域802に接続されているバスバー電極(図示せず)の一部が露出し、前述した電極パッド87を構成している。
【0096】
また、電極パッド86は、
図7に示すように、導電接続部83を介して、配線基板82と接続されている。同様に、電極パッド87も、図示しない導電接続部を介して、配線基板82と接続されている。
【0097】
導電接続部83としては、例えば導電ペースト、導電シート、導電性接着剤、金属材料、はんだ、ろう材等が挙げられる。
【0098】
Si基板800の受光面84には、凹凸形状(テクスチャー)が形成されている。テクスチャーは、例えば受光面84に形成された多数のピラミッド状突起で構成される。このようなテクスチャーを設けることにより、受光面84における外部光の反射を抑制し、Si基板800に入射する光量の増大を図ることができる。
【0099】
なお、Si基板800が例えばSi(100)面を主面とする基板である場合、Si(111)面を傾斜面とするピラミッド状突起がテクスチャーとして好適に用いられる。
【0100】
また、太陽電池80は、受光面84に設けられた、図示しないパッシベーション膜を備えている。なお、このパッシベーション膜は、反射防止膜の機能を有していてもよい。一方、太陽電池80は、電極面85に設けられたパッシベーション膜806を備えている。
【0101】
また、フィンガー電極804とSi基板800との間、および、バスバー電極805とフィンガー電極804との間は、それぞれ層間絶縁膜807を介して絶縁されている。
【0102】
パッシベーション膜806や層間絶縁膜807の構成材料としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0103】
フィンガー電極804やバスバー電極805の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、銅のような金属の単体または合金等が挙げられる。
【0104】
また、各セル80a、80b、80c、80d同士の隙間の長さd(
図3参照)は、特に限定されないが、0.05mm以上3mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上1mm以下であるのがより好ましい。隙間の長さdを前記範囲内に設定することにより、受光面84側から太陽電池80を見たとき、
図7に示す端面808をより見えにくくすることができる。これにより、端面808が見えてしまうことによる意匠性の低下(美的外観の悪化)を抑制することができる。また、隙間の長さdが短すぎることによる、太陽電池80の組み立てにくさやセル同士が接触しやすくなるという問題を回避するという観点からも有用である。
【0105】
また、各セル80a、80b、80c、80dの厚さは、特に限定されないが、50μm以上800μm以下であるのが好ましく、100μm以上300μm以下であるのがより好ましい。これにより、太陽電池80の光電変換効率と機械的特性との両立を図ることができる。また、電子時計200の薄型化にも貢献することができる。
【0106】
配線基板82は、絶縁基板821と、その上に設けられた導電膜822と、を備えている。
【0107】
絶縁基板821としては、例えばポリイミド基板、ポリエチレンテレフタレート基板のような各種樹脂基板が挙げられる。導電膜822の構成材料としては、例えば銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銀または銀合金等が挙げられる。
【0108】
配線基板82は、4つのセル80a、80b、80c、80dと重なるように設けられている。このような配線基板82は、絶縁基板821と、その上に設けられた導電膜822と、導電膜822と重なる部分に開口部824を含む絶縁膜823と、を備えている。
【0109】
なお、「配線基板82が4つのセル80a、80b、80c、80dと重なる」とは、配線基板82の平面視において、配線基板82が少なくとも1つのセルと重なって見える状態をいう。また、その場合、1つのセルの全体と重なっている必要はなく、その少なくとも一部と重なっていればよい。
【0110】
なお、本実施形態では、配線基板82が4つのセル80a、80b、80c、80dと重なっている。
【0111】
絶縁基板821としては、例えばポリイミド基板、ポリエチレンテレフタレート基板のような各種樹脂基板が挙げられる。
【0112】
導電膜822の構成材料としては、例えば銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銀または銀合金等が挙げられる。
【0113】
絶縁膜823の構成材料としては、例えばポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂のような各種樹脂材料が挙げられる。
【0114】
また、絶縁基板821と絶縁膜823との間は、接着層825を介して接着されている。
【0115】
接着層825の構成材料としては、例えばエポキシ系接着材、シリコーン系接着材、オレフィン系接着材、アクリル系接着材等が挙げられる。
【0116】
配線基板82の厚さは、特に限定されないが、50μm以上3mm以下であるのが好ましく、100μm以上500μm以下であるのがより好ましい。配線基板82の厚さを前記範囲内に設定することにより、配線基板82内の導電膜822の機械的強度を維持しつつ、太陽電池80(光電変換モジュール)の薄型化を可能にする。
【0117】
−電極および端子−
図8は、
図6に示すセル80aの電極面85を示す平面図である。なお、
図8では、前述したパッシベーション膜806に覆われているフィンガー電極804やバスバー電極805を透視するように図示している。
【0118】
また、
図9は、
図8に示す平面図のうちフィンガー電極804を選択的に示す図であり、
図10は、
図8に示す平面図のうちバスバー電極805および電極パッド86、87を選択的に示す図である。フィンガー電極804およびバスバー電極805は、互いに階層が異なるため、
図9および
図10において階層別に分けて図示している。
【0119】
なお、以下の説明では、セル80aを代表として説明するが、その説明はセル80b、80c、80dについても同様である。
【0120】
セル80aは、
図8〜
図10に示すように、Si基板800を備えている。このSi基板800は、輪郭に2つの円弧を含んでいる。このうち、
図5に示す円環の外縁の一部に相当する円弧が基板外縁800aであり、円環の内縁の一部に相当する円弧が基板内縁800bである。
【0121】
また、
図8〜
図10に示すセル80aは、Si基板800に形成されたp+不純物領域801(
図7参照)を覆うように設けられたp型フィンガー電極804pと、p+不純物領域801とp型フィンガー電極804pとの間を電気的に接続するp+コンタクト811pと、を備えている。
【0122】
また、
図8〜
図10に示すセル80aは、Si基板800に形成されたn+不純物領域802(
図7参照)を覆うように設けられたn型フィンガー電極804nと、n+不純物領域802とn型フィンガー電極804nとの間を電気的に接続するn+コンタクト811nと、を備えている。
【0123】
そして、p+コンタクト811pは、1つのp型フィンガー電極804pに対して複数設けられている。したがって、それに応じて、
図7に示すp+不純物領域801も、1つのp型フィンガー電極804pに対して複数設けられている。これにより、受光によって発生した正孔(キャリア)を効率よく取り出すことができる。
【0124】
同様に、n+コンタクト811nは、1つのn型フィンガー電極804nに対して複数設けられている。したがって、それに応じて、
図7に示すn+不純物領域802も、1つのn型フィンガー電極804nに対して複数設けられている。これにより、受光によって発生した電子(キャリア)を効率よく取り出すことができる。
【0125】
p+コンタクト811pおよびn+コンタクト811nの構成材料は、例えば、前述したフィンガー電極804の構成材料と同様のものから適宜選択される。
【0126】
なお、前述したフィンガー電極804は、p型フィンガー電極804pおよびn型フィンガー電極804nの双方を指している。
【0127】
また、
図8および
図9では、p+コンタクト811pおよびn+コンタクト811nに対して相対的に密なドットを付し、フィンガー電極804に対して相対的に疎なドットを付している。
【0128】
さらに、
図8では、パッシベーション膜806で覆われている部位は、破線または鎖線で示し、パッシベーション膜806から露出している部位を、実線で示している。
【0129】
図8に示すように、p型バスバー電極805pおよびn型バスバー電極805nは、それぞれパッシベーション膜806に覆われている。これにより、外部環境からこれらの電極が保護されている。
【0130】
・電極パッド(端子)
一方、パッシベーション膜806の一部にはコンタクトホールが設けられ、p型バスバー電極805pおよびn型バスバー電極805nの一部が露出している。このうち、p型バスバー電極805pの露出面が前述した電極パッド86(正極端子)となり、n型バスバー電極805nの露出面が前述した電極パッド87(負極端子)となる。
【0131】
また、本実施形態に係るセル80aは、
図10に示すように、電極パッド86および電極パッド87をそれぞれ複数含んでいる。この電極パッド86、87と配線基板82の導電膜822との間に導電接続部83を設けることにより、セル80aと配線基板82との間を、電気的かつ機械的に接続することができる。
【0132】
また、複数の電極パッド86は、
図8および
図10に示すように、基板外縁800a(基板外縁800aに含まれる円弧の円周方向)に沿って配列されている。つまり、電極パッド86の配列軸が基板外縁800aとほぼ平行になっている。一方、複数の電極パッド87は、基板内縁800bに沿って配列されている。つまり、電極パッド87の配列軸が基板内縁800bとほぼ平行になっている。このような配置をとることにより、セル80aの延在方向(基板外縁800aに含まれる円弧の周方向)に沿って配線基板82との接続点を確保することができる。このため、セル80aを配線基板82に対してより確実に固定することができ、かつ、セル80aと配線基板82との間の接続抵抗を十分に低減させることができる。
【0133】
ここで、
図11は、
図10に示す平面図のうち電極パッド86、87を選択的に示す図である。
【0134】
図11に示すセル80aは、3個の電極パッド86(正極端子)と2個の電極パッド87(負極端子)とを備えている。なお、ここでは、説明の便宜上、3個の電極パッド86について、
図11の右側から順に、第1端子861、第3端子863、第5端子865とする。また、2個の電極パッド87について、
図11の右側から順に、第2端子872、第4端子874とする。
【0135】
第1端子861、第3端子863および第5端子865は、セル80aの電極面85のうち、中間線Mよりも基板外縁800a側にずれた位置にそれぞれ設けられている。一方、第2端子872および第4端子874は、セル80aの電極面85のうち、中間線Mよりも基板内縁800b側にずれた位置にそれぞれ設けられている。
【0136】
以上をまとめると、本実施形態に係るセル80a(光電変換素子)は、曲線(円弧)を含む基板外縁800aおよび基板内縁800bを有するSi基板800(半導体基板)と、Si基板800の電極面85(一方の面)側に設けられているフィンガー電極804およびバスバー電極805と、同様に電極面85側に設けられ、これらの電極と電気的に接続されている第1端子861、第3端子863および第5端子865と、同様に電極面85側に設けられ、前述した電極と電気的に接続されている第2端子872および第4端子874と、を有している。
【0137】
そして、第1端子861、第3端子863および第5端子865は、基板外縁800a側にずれて設けられていることから、これらの端子の基板外縁800aからの距離は、それぞれ、第2端子872および第4端子874のいずれよりも小さいといえる。
【0138】
一方、第2端子872および第4端子874は、基板内縁800b側にずれて設けられていることから、これらの端子の基板外縁800aからの距離は、それぞれ、第1端子861、第3端子863および第5端子865のいずれよりも大きいといえる。
【0139】
すなわち、基板外縁800aから第2端子872および第4端子872までの距離は、それぞれ、基板外縁800aから第1端子861、第3端子863および第5端子865までの距離のいずれよりも大きくなっている。
【0140】
そして、これらの端子は、
図11の右側から左側に向かって、Si基板800の基板外縁800aに沿うように、第1端子861、第2端子872、第3端子863、第4端子874、第5端子865の順に配置されている。その結果、これらの端子は、いわゆる「千鳥配置」になっている。
【0141】
このような配置になっていることにより、これらの端子に接合される導電接続部83も同様の配置になる。したがって、セル80aは、これらの端子の位置を支持点として、配線基板82に多点支持されることとなる。そして、前述した千鳥配置は、振動特性を良好にし、振動などによる割れが生じにくくする作用をもたらす。すなわち、基板外縁800aからの距離が互いに異なる端子が、基板外縁800aに沿って交互に配置されていることにより、基板外縁800aに曲線を含むような場合であっても、大きなたわみが生じやすい部分を設けることなくセル80aを支持することができる。その結果、振動などに伴うSi基板800の反りや割れといった不具合の発生を抑制することができる。
【0142】
また、セル80aに大きな衝撃や振動が加わった場合でも、セル80aに発生する固有振動を短周期のモードに集約させることができる。換言すれば、セル80aに割れ等の不具合を生じさせやすい長周期の固有振動を効果的に抑制することができる。これにより、セル80aの耐衝撃性や耐震性を高めることができる。
【0143】
なお、上記のような効果は、少なくとも4つの端子、すなわち、第1端子861、第2端子872、第3端子863および第4端子874の配置が千鳥配置になっていることによってもたらされる。したがって、本実施形態のように第5端子865が追加されていてもよく、さらには総端子数が6個以上であってもよい。なお、総端子数が5個以上である場合も、千鳥配置が継続されていることが好ましい。
【0144】
また、基板外縁800aと第1端子861との距離をS1とし、基板外縁800aと第2端子872との距離をS2とし、基板外縁800aと第3端子863との距離をS3とし、基板外縁800aと第4端子874との距離をS4とし、基板外縁800aと第5端子865との距離をS5とすると、(S2、S4)>(S1、S3、S5)の関係を満たしていれば、S2とS4との間の大小関係、および、S1とS3とS5との間の大小関係は特に限定されない。
【0145】
ただし、不具合をもたらす振動や接合時に生じる熱応力の集中をより緩和するという観点からは、S2とS4は互いに同程度であるのが好ましく、S1とS3とS5も互いに同程度であるのが好ましい。この「同程度」とは、例えばS2がS4の0.8倍以上1.2倍以下程度である状態、および、S1がS3の0.8倍以上1.2倍以下程度であり、かつ、S5の0.8倍以上1.2倍以下程度である状態のことをいう。
【0146】
また、いわゆる千鳥配置は、多点支持に伴う意図しない共振が発生しにくいという利点もある。例えば、(S2、S4)=(S1、S3、S5)のような関係を満たす場合には、意図しない共振が発生するおそれがある。意図しない共振は、セル80aの割れや欠け等につながるおそれがあるため、かかる共振の発生を抑制することによって、セル80aの信頼性をより高めることが可能になる。
【0147】
さらに、支持点数を多点化することにより、1つの支持点の面積を適度に小さくすることが可能になる。このため、光電素子と基板の接合時に発生する熱応力が各支持点端部に集中した際の大きさを抑制し、導電接続部83におけるクラックや剥がれ等の接合不良が生じるのを防ぐことができる。
【0148】
例えば、第1端子861、第2端子872、第3端子863、第4端子874および第5端子865の面積は、Si基板800の大きさに応じて異なるものの、それぞれ0.05mm
2以上2mm
2以下であることが好ましく、0.1mm
2以上1mm
2以下であることがより好ましい。これにより、導電接続部83におけるクラックや剥がれ等の接合不良が生じるのを防ぐことができる。
【0149】
また、第1端子861、第3端子863および第5端子865は、基板外縁800aと基板内縁800bとの中間線M(
図11参照)よりも基板外縁800a側に位置しているのが好ましい。一方、第2端子872および第4端子874は、中間線Mよりも基板内縁800b側に位置しているのが好ましい。これにより、セル80aの電極面85において、偏ることなく比較的均等に端子を配置することができる。その結果、セル80aを支持する支持点も均等に分散することとなり、固有振動を短周期なものに抑え、良好な振動特性を得ることができる。また、応力が局所に集中して不具合が発生してしまうのを抑制することができる。
【0150】
なお、電極パッド86、87の配置は、図示のものに限定されず、例えば電極パッド86の列の位置と電極パッド87の列の位置とが入れ替わっていてもよい。すなわち、正極端子が基板内縁800b側に配置され、負極端子が基板外縁800a側に配置されていてもよい。
【0151】
また、電極パッド86、87の形状も、特に限定されず、いかなる形状であってもよい。一例として、
図11に示す電極パッド86、87の形状は、それぞれ長方形であるが、真円、楕円、長円のような円形であってもよく、三角形、六角形、八角形のような多角形であってもよく、それ以外の形状であってもよい。
【0152】
さらに、特定の端子近傍に応力が集中するのをより確実に避けるという観点からは、第1端子861、第2端子872、第3端子863、第4端子874および第5端子865は、その形状が互いに同じであるのが好ましいが、互いに異なっていてもよい。
【0153】
また、電極パッド86、87は、本実施形態のように、それぞれが1つの連続した導電性の領域である形態の他、それぞれが複数に分割された領域であってそれらが群になっている形態であってもよい。
【0154】
また、基板外縁800aおよび基板内縁800bは、互いに同心の円弧を含むことが好ましい。すなわち、基板外縁800aは、相対的に大径の円弧を含み、基板内縁800bは、相対的に小径の円弧を含むことが好ましい。これにより、フィンガー電極804およびバスバー電極805の設計が容易になるとともに、セル80aの構造のバランスが最適化される。
【0155】
なお、基板外縁800aおよび基板内縁800bは、それぞれ曲線を含んでいればよく、例えば、一部が直線であってもよいし、円弧以外の曲線を含んでいてもよいし、互いに同心ではない円弧を含んでいてもよい。また、本明細書における曲線は、製造技術の制約上、角数の多い多角形の一部として製造される場合、そのような多角形の一部も含む概念である。
【0156】
また、基板外縁800aは基板内縁800bよりも長くなる。これを考慮すれば、中間線Mよりも基板外縁800a側に位置する端子の数は、中間線Mよりも基板内縁800b側に位置する端子の数よりも多いことが好ましい。すなわち、セル80aが、第1端子861、第2端子872、第3端子863、第4端子874および第5端子865という5個の端子を有する場合には、3個の端子が基板外縁800a側に設けられ、2個の端子が基板内縁800b側に設けられることが好ましい。
【0157】
これにより、基板外縁800a側における端子間距離と、基板内縁800b側における端子間距離と、の差を小さくすることができる。その結果、セル80aを支持する支持点同士の距離のばらつきが抑えられることになり、不具合をもたらす振動や接合時に生じる熱応力の集中がより発生しにくくなる。
【0158】
なお、端子同士の間隔X1(
図11参照)は、Si基板800の形状や電極パッド86、87の総数等に応じても異なるが、例えばSi基板800の最大長さを100としたとき、1以上40以下であるのが好ましく、3以上30以下であるのがより好ましく、5以上25以下であるのがさらに好ましい。端子同士の間隔X1を前記範囲内に設定することにより、セル80aを支持するのに十分な機械的強度と高い光電変換効率とを確保しつつ、セル80aにおける不具合をもたらす振動や接合時に生じる熱応力の集中を十分に緩和することができる。すなわち、端子同士の間隔X1が前記下限値を下回ると、電極パッド86、87の数が必要以上に増えてしまい、ドーパント不純物領域を配置するスペースが減ってしまうことによる光電変換効率の低下が生じるおそれがある。一方、端子同士の間隔X1が前記上限値を上回ると、多点支持の利点が希薄化し、応力が集中しやすい部位が発生したり、支持点の減少に伴う機械的強度の低下を招いたりするおそれがある。
【0159】
一例として、端子同士の間隔X1は、前述したSi基板800の最大長さに応じて異なるものの、例えば1mm以上20mm以下程度であるのが好ましく、3mm以上15mm以下程度であるのがより好ましい。
【0160】
なお、端子同士の間隔X1は、
図11に示す第1端子861と第2端子872との間隔のみならず、端子同士の最短距離のことをいう。また、Si基板800の最大長さは、例えば
図11の場合、Si基板800の角部P1と角部P2との直線距離に相当する。
【0161】
また、本実施形態では、電極パッド86、87が設けられている部分には、p+コンタクト811p、n+コンタクト811n、p型ビア配線814pおよびn型ビア配線814nが平面視で重ならないように配置されている(
図8参照)。すなわち、電極パッド86、87と、p+コンタクト811p、n+コンタクト811n、p型ビア配線814pおよびn型ビア配線814nとは、
図8に示すように、平面視で互いにずれている。これにより、電極パッド86、87は、その平坦性等の形状においてこれらのコンタクトの影響を受けることがなくなる。このため、平坦性が高く、接触不良を発生させにくい電極パッド86、87が得られる。
【0162】
なお、本発明はこのような構造に限定されず、例えば、コンタクト等が設けられていても平坦性への影響が少ない場合等には、電極パッド86、87が、p+コンタクト811p、n+コンタクト811n、p型ビア配線814pおよびn型ビア配線814nのいずれかと平面視で重なっていてもよい。
【0163】
・フィンガー電極
フィンガー電極804は、
図9に示すように、基板外縁800aが含む曲線の垂線PLの延伸方向に延在しているのが好ましい。すなわち、セル80a(光電変換素子)は、曲線を含む基板外縁800aと、基板外縁800aの内側(曲線の内側)に位置し曲線を含む基板内縁800bと、を有するSi基板800(半導体基板)と、Si基板800の一方の面に設けられている複数のフィンガー電極804(第1電極)と、を備え、フィンガー電極804は、基板外縁800aが含む曲線の垂線方向に延在しているのが好ましい。これにより、基板外縁800aが円弧である場合、フィンガー電極804は、その円弧の中心から放射状に延伸する直線に沿って延在することとなる。
【0164】
一方、本実施形態に係るセル80aでは、前述した垂線PLが基板内縁800bにも直交している。
【0165】
また、前述した垂線PLは、基板外縁800aの円弧の中心Oを通過していることが好ましい。すなわち、この円弧が真円またはそれに近い形状の一部であることが好ましい。これにより、フィンガー電極804の設計が容易になるとともに、セル80aの構造のバランスが最適化される。その結果、セル80aにおける反りや割れ等の変形がより発生しにくくなる。
【0166】
また、セル80aには、複数のフィンガー電極804が設けられている。このため、これらのフィンガー電極804は、基板外縁800aに沿って配列される(並ぶ)こととなる。換言すれば、配列軸が基板外縁800aとほぼ平行であるということができる。このように配列させることで、各フィンガー電極804の形状や面積を均一化することができ、セル80aの構造の均一化を図ることができる。その結果、セル80aにおける反りや割れ等の変形が発生しにくくなる。加えて、フィンガー電極804を、Si基板800に対してできるだけ隙間なく敷き詰めることができる。これにより、フィンガー電極804は、セル80aの電極面85側において、受光面84から入射した光を反射するための反射膜としても機能する。すなわち、フィンガー電極804が隙間なく敷き詰められることにより、受光面84から入射しSi基板800を透過してしまった光を、フィンガー電極804においてより高い確率で反射させることができる。これにより、光電変換に寄与する光量を増やすことでき、光電変換効率の向上を図ることができる。
【0167】
さらに、少なくとも互いに隣り合うフィンガー電極804同士は、互いに同一形状であり、かつ、互いに同一面積であることが好ましい。これにより、セル80aの構造のさらなる均一化が図られることとなる。
【0168】
なお、同一形状、同一面積および平行とは、それぞれ、製造時に発生する誤差を許容する概念である。
【0169】
また、フィンガー電極804が基板外縁800aに沿って配列される場合、p型フィンガー電極804pとn型フィンガー電極804nとが交互に並んでいるのが好ましいが、このような配列パターンに限定されるものではなく、一部または全部が異なる配列パターンであってもよい。
【0170】
また、フィンガー電極804の輪郭は、いかなる形状であってもよいが、
図9では、基板外縁800aに臨む第1電極外縁812と、基板内縁800bに臨む第1電極内縁813と、を有している。そして、第1電極外縁812の長さは、第1電極内縁813の長さより長くなっている。つまり、
図9に示すフィンガー電極804は、基板外縁800aの延在方向における長さを「幅」とするとき、第1電極内縁813から第1電極外縁812に向かうにつれて徐々に幅が広くなっている。
【0171】
このような輪郭形状を有するフィンガー電極804によれば、フィンガー電極804同士の隙間を一定にしながら、フィンガー電極804をSi基板800に対してできるだけ隙間なく敷き詰めることが可能になる。このため、フィンガー電極804同士の絶縁性を確保しつつ、フィンガー電極804による反射膜としての機能をより高めることができる。
【0172】
なお、第1電極外縁812が基板外縁800aに臨むとは、双方がほぼ一定の距離を保ちながら変位している状態を指す。そして、「一定の距離を保ちながら」とは、第1電極外縁812の全長にわたって、双方の離間距離の変化幅が、離間距離の最大値の100%以下(好ましくは離間距離の平均値の10%以下)である状態を指す。
【0173】
同様に、第1電極内縁813が基板内縁800bに臨むとは、双方がほぼ一定の距離を保ちながら変位している状態を指す。そして、「一定の距離を保ちながら」とは、第1電極内縁813の全長にわたって、双方の離間距離の変化幅が、離間距離の最大値の100%以下(好ましくは離間距離の平均値の10%以下)である状態を指す。
【0174】
なお、
図9に示す2本の垂線PLは、互いに隣り合う2つのフィンガー電極804の幅の中心を通過している。また、前述したように各垂線PLは、基板外縁800aの円弧の中心Oを通過している。したがって、2本の垂線PL同士がなす角度θは、隣り合うフィンガー電極804同士のピッチに相当する。この角度θは、Si基板800におけるキャリア移動度等に応じて適宜設定されるが、一例として0.05°以上1°以下であるのが好ましく、0.1°以上0.5°以下であるのがより好ましい。これにより、各フィンガー電極804に対応して設けられるコンタクト同士のピッチやドーパント不純物領域同士のピッチが最適化されるため、受光により発生したキャリアの取り出し効率が向上するとともに、キャリアの再結合確率を低下させることができる。その結果、光電変換効率が特に高いセル80aが得られる。
【0175】
また、フィンガー電極804の幅は、上記と同様の観点から、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であるのがより好ましい。
【0176】
一方、フィンガー電極804同士の間隔は、1μm以上50μm以下であるのが好ましく、3μm以上30μm以下であるのがより好ましい。これにより、フィンガー電極804同士の絶縁を図りつつ、フィンガー電極804が占める面積を十分に大きくすることができる。
【0177】
・バスバー電極
一方、セル80aは、
図8および
図10に示すように、複数のフィンガー電極804を跨ぐように、かつ、これらのフィンガー電極804を覆うように設けられたp型バスバー電極805pおよびn型バスバー電極805nを備えている。そして、p型バスバー電極805pは、p型ビア配線814pを介して複数のp型フィンガー電極804pと電気的に接続されており、n型バスバー電極805nは、n型ビア配線814nを介して複数のn型フィンガー電極804nと電気的に接続されている。
【0178】
また、p型ビア配線814pは、1つのp型バスバー電極805pに対して複数設けられている。同様に、n型ビア配線814nも、1つのn型バスバー電極805nに対して複数設けられている。
【0179】
p型ビア配線814pおよびn型ビア配線814nの構成材料は、例えば、前述したバスバー電極805の構成材料と同様のものから適宜選択される。
【0180】
なお、前述したバスバー電極805は、p型バスバー電極805pおよびn型バスバー電極805nの双方を指している。
【0181】
また、
図10では、p型ビア配線814pおよびn型ビア配線814nに対して相対的に密なドットを付し、バスバー電極805に対して相対的に疎なドットを付している。
【0182】
ここで、バスバー電極805の延在方向は、
図8および
図10に示すように、フィンガー電極804の延在方向と交差している。すなわち、前述したように、フィンガー電極804が基板外縁800aの垂線方向に延在しているのに対し、バスバー電極805は、基板外縁800aと平行な方向に延在している。したがって、
図8に示すようにSi基板800を平面視したとき、フィンガー電極804とバスバー電極805とがほぼ直交することとなる。これにより、複数のフィンガー電極804を跨ぐようにバスバー電極805が配置されることになるので、双方の交差部にp型ビア配線814pおよびn型ビア配線814nが配置された場合、バスバー電極805が効果的な集電体となる。
【0183】
なお、「平行な方向」とは、バスバー電極805と基板外縁800aとがほぼ一定の距離を保ちながら変位している状態を指す。そして、「一定の距離を保ちながら」とは、バスバー電極805の全長にわたって、双方の離間距離の変化幅が、離間距離の最大値の100%以下(好ましくは離間距離の平均値の10%以下)である状態を指す。
【0184】
また、フィンガー電極804とバスバー電極805との交差角度は、90°に限定されず、鋭角側の角度が30°以上90°未満程度であってもよい。また、バスバー電極805は、必ずしも基板外縁800aと平行でなくてもよく、直線状に延在するものであってもよい。
【0185】
また、前述したように、本実施形態に係るバスバー電極805は、Si基板800の厚さ方向においてフィンガー電極804と重なっている。これにより、バスバー電極805の配置に必要なスペースを確保する必要がないため、Si基板800においてフィンガー電極804やp+不純物領域801およびn+不純物領域802を配置するスペースをより広く確保することができる。その結果、取り出せるキャリアの数が増えるとともに、フィンガー電極804の反射膜としての機能が向上するため、光電変換効率をより高めることができる。
【0186】
なお、バスバー電極805は、図示しない層間絶縁膜を介してフィンガー電極804と絶縁されている一方、層間絶縁膜を貫通するp型ビア配線814pおよびn型ビア配線814nを介してフィンガー電極804と電気的に接続されている。
【0187】
このとき、Si基板800の平面視におけるp型ビア配線814pの位置は、p+コンタクト811pの位置と重なっていてもよいが、ずれていることが好ましい。同様に、Si基板800の平面視におけるn型ビア配線814nの位置は、n+コンタクト811nの位置と重なっていてもよいが、ずれていることが好ましい。これにより、p型ビア配線814pおよびn型ビア配線814nの下地の平坦性が高くなるため、形成位置のずれ等が生じにくくなる。このため、セル80aの製造歩留まりの低下を抑制することができる。
【0188】
なお、好ましくは、p型ビア配線814pの位置は、p+コンタクト811p同士の中間に設けられ、n型ビア配線814nの位置は、n+コンタクト811n同士の中間に設けられる。
【0189】
また、バスバー電極805の輪郭は、いかなる形状であってもよいが、
図10では、基板外縁800aに臨む第2電極外縁815と、基板内縁800bに臨む第2電極内縁816と、を有している。そして、第2電極外縁815の長さは、第2電極内縁816の長さより長くなっている。つまり、
図10に示すバスバー電極805は、基板外縁800aの延在方向における長さを「幅」とするとき、第2電極内縁816から第2電極外縁815に向かうにつれて徐々に幅が広くなっている。
【0190】
このような輪郭形状を有するバスバー電極805によれば、Si基板800と同様の形状、すなわち、円環の一部を切り出したような形状となる。このため、Si基板800の全体に敷き詰められている複数のフィンガー電極804に対して、バスバー電極805を交差させやすくなるとともに、p型バスバー電極805pとn型バスバー電極805nの複数本を配置しやすくなる。
【0191】
また、かかるバスバー電極805は、前述したように、フィンガー電極804とバスバー電極805とがほぼ直交することになる。このため、双方の交差部にp型ビア配線814pおよびn型ビア配線814nが配置されやすくなるといった効果を享受することができる。
【0192】
なお、第2電極外縁815が基板外縁800aに臨むとは、双方がほぼ一定の距離を保ちながら変位している状態を指す。そして、「一定の距離を保ちながら」とは、第2電極外縁815の全長にわたって、双方の離間距離の変化幅が、離間距離の最大値の100%以下(好ましくは離間距離の平均値の10%以下)である状態を指す。
【0193】
同様に、第2電極内縁816が基板内縁800bに臨むとは、双方がほぼ一定の距離を保ちながら変位している状態を指す。そして、「一定の距離を保ちながら」とは、第2電極内縁816の全長にわたって、双方の離間距離の変化幅が、離間距離の最大値の100%以下(好ましくは離間距離の平均値の10%以下)である状態を指す。
【0194】
以上、セル80aを代表に説明したが、太陽電池80(光電変換モジュール)は、このようなセル80a(光電変換素子)と、このセル80aと重なるように設けられている配線基板82と、セル80aの電極パッド86、87と配線基板82の導電膜822とを電気的に接続する導電接続部83と、を有する。したがって、太陽電池80は、セル80aにおける振動などに伴う大きなたわみなどの変形が抑制され、割れ等の不具合を抑制し得る信頼性の高いものとなる。
【0195】
−配線基板−
また、配線基板82によってセル80aの電極面85の少なくとも一部が覆われることになるため、電極面85が保護される。このため、電極面85に異物が付着したり、外力が加わったりすることが抑制される。その結果、電極面85の信頼性を確保することができる。
【0196】
なお、導電接続部83は、セル80aと配線基板82とを電気的のみならず、機械的にも接続している。このため、導電接続部83の機械的特性を最適化することにより、セル80a、80b、80c、80dと配線基板82との間の機械的強度を維持しつつ、接合時に生じる熱応力の集中を緩和することができる。
【0197】
具体的には、導電接続部83のヤング率は、0.5GPa以上15GPa以下であるのが好ましく、1GPa以上10GPa以下であるのがより好ましく、1.5GPa以上6.5GPa以下であるのがさらに好ましい。導電接続部83のヤング率を前記範囲内に設定することにより、導電接続部83に求められる接着強度を確保しつつ、導電接続部83において歪み等を吸収することができる。このため、高い機械的特性に基づく機械的接続の信頼性と、セル80aに発生する不具合をもたらす振動や接合時に生じる熱応力の集中を緩和する特性と、を両立させることができる。
【0198】
なお、導電接続部83のヤング率が前記下限値を下回ると、導電接続部83の機械的特性が低くなるため、セル80aの仕様等によっては、求められる接着強度を満たすことができないおそれがある。一方、導電接続部83のヤング率が前記上限値を上回ると、導電接続部83の変形能が低下するため、セル80aの仕様等によっては、導電接続部83においてセル80aの歪みを十分に吸収することができず、セル80aに反りや割れ等、あるいは導電接続部83におけるクラックや剥がれ等の不具合を発生させるおそれがある。
【0199】
また、導電接続部83のヤング率は、例えば25℃において動的粘弾性測定装置(DMA)により測定される。
【0200】
また、上述したヤング率の観点からすれば、導電接続部83としては、特に樹脂材料を含む導電性接着剤が好ましく用いられる。
【0201】
導電性接着剤に含まれる樹脂材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いられる。
【0202】
また、電子時計200(電子機器)は、このような4つのセル80a、80b、80c、80d(光電変換素子)を含む太陽電池80を備えている。このため、信頼性の高い電子時計200が得られる。
【0203】
<太陽電池の製造方法>
次に、
図7に示す太陽電池80の製造方法の一例について説明する。
【0204】
図12および
図13は、
図7に示す太陽電池80の製造方法の一例を説明するための図である。
【0205】
図7に示す太陽電池80の製造方法は、セル80a(光電変換素子)、および、絶縁基板821と導電膜822と導電膜822と重なる部分に開口部824を含む絶縁膜823とを備える配線基板82を準備する準備工程と、セル80aおよび開口部824の少なくとも一方に、導電性の導電接続部83を配置する配置工程と、導電接続部83を介して、セル80aと配線基板82とを重ね合わせる積層工程と、を有する。
【0206】
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、セル80aを準備する(準備工程)。このセル80aは、例えば、半導体ウエハーにドーパント不純物領域等を形成した後、電極や絶縁膜を成膜することにより形成し、その後、個片化することにより製造される。
【0207】
[2]次に、セル80aおよび開口部824の少なくとも一方に、導電性の導電接続部83を配置する(配置工程)。具体的には、
図12に示すように、セル80aの電極パッド86に導電接続部83を配置するようにしてもよく、
図13に示すように、配線基板82の開口部824に導電接続部83を配置するようにしてもよい。
【0208】
図12に示す導電接続部83は、セル80aの電極パッド86に接するように配置される。一方、
図13に示す導電接続部83は、配線基板82の開口部824に接するように配置される。このようにして配置された導電接続部83は、後述する積層工程においてセル80aの電極パッド86と配線基板82の開口部824との間を電気的に接続する。
【0209】
このようにして配置される導電接続部83の体積は、開口部824の体積以下であることが好ましい。これにより、後述する積層工程において導電接続部83の全量を開口部824の内部に収めることができる。換言すれば、開口部824から導電接続部83があふれ出すのを防止することができる。その結果、あふれ出た導電接続部83が短絡を生じさせたり、外観上の不具合になったりするのを防止することができる。
【0210】
なお、「導電接続部83の体積」とは、
図7に示すセル80aの下面(パッシベーション膜806の下面)を含む平面よりも下方に位置している部分の体積のことをいう。例えば、電極パッド86が
図7に示すように上方に後退している場合、セル80aの下面を含む平面よりも上方に位置している導電接続部については、「導電接続部83の体積」に含めない。
【0211】
また、本発明における「開口部824の体積」とは、底面に導電膜822が露出し、絶縁膜823や接着層825の端面が内側面である有底凹部の体積のことをいう。
【0212】
開口部824の深さは、絶縁膜823や接着層825の厚さに応じて異なるため、特に限定されないが、一例として1μm以上100μm以下であるのが好ましく、2μm以上50μm以下であるのがより好ましい。これにより、太陽電池80が厚くなりすぎるのを防ぎつつ、十分な強さの接着強度を発現可能な厚さの導電接続部83を得ることができる。このため、より信頼性の高い太陽電池80が得られる。
【0213】
また、セル80aの電極パッド86に接するように導電接続部83が配置される場合、導電接続部83の形状は、
図12に示すように、下に向かって突出する形状、すなわち、後述する積層工程において配線基板82側に向かって突出する形状に成形されているのが好ましい。このような形状に成形されていることにより、後述する積層工程において、配線基板82の開口部824の底面に露出している導電膜822に対して導電接続部83が高い確率で接触することとなる。これにより、導電接続部83を介して、セル80aの電極パッド86と配線基板82の開口部824との間の電気的接続を確実に図ることができる。
【0214】
図12に示す導電接続部83の突出高さは、開口部824の形状に応じて適宜設定されるが、開口部824の深さより高いことが好ましい。これにより、後述する積層工程において、導電接続部83により、セル80aの電極パッド86と配線基板82の開口部824との間をより確実に接続することができる。
【0215】
なお、
図12に示す導電接続部83の突出高さは、好ましくは開口部824の深さの101%以上1000%以下とされるが、より好ましくは110%以上750%以下とされ、さらに好ましくは120%以上500%以下とされる。これにより、導電接続部83により、セル80aの電極パッド86と配線基板82の開口部824との間をより確実に接続することができる。
【0216】
なお、「導電接続部83の突出高さ」とは、
図12に示すセル80aの下面を含む平面から導電接続部83の先端までの距離のことをいう。また、開口部824の深さとは、
図12に示す絶縁膜823の上面を含む平面から開口部824の底面までの距離のことをいう。
【0217】
一方、配線基板82の開口部824に接するように導電接続部83が配置される場合、導電接続部83の形状は、
図13に示すように、上に向かって突出する形状、すなわち、後述する積層工程においてセル80a側に向かって突出する形状に成形されているのが好ましい。このような形状に成形されていることにより、後述する積層工程において、セル80aの電極パッド86に対して導電接続部83が高い確率で接触することとなる。これにより、導電接続部83を介して、セル80aの電極パッド86と配線基板82の開口部824との間の電気的接続を確実に図ることができる。
【0218】
図13に示す導電接続部83の突出高さは、配線基板82の上面を含む平面から突出していれば、その高さは特に限定されない。換言すれば、導電接続部83が開口部824の底面から突出するように配置されている場合、導電接続部83の突出高さは、開口部824の深さより高いことが好ましい。これにより、後述する積層工程において、導電接続部83により、配線基板82の開口部824とセル80aの電極パッド86との間をより確実に接続することができる。
【0219】
なお、
図13に示す導電接続部83の突出高さは、好ましくは開口部824の深さの101%以上1000%以下とされるが、より好ましくは110%以上750%以下とされ、さらに好ましくは120%以上500%以下とされる。これにより、導電接続部83により、セル80aの電極パッド86と配線基板82の開口部824との間をより確実に接続することができる。
【0220】
なお、「導電接続部83の突出高さ」とは、
図13に示す絶縁膜823の上面を含む平面から導電接続部83の先端までの距離のことをいう。また、開口部824の深さとは、
図13に示す絶縁膜823の上面を含む平面から開口部824の底面までの距離のことをいう。
【0221】
また、開口部824の平面視形状は、特に限定されないが、一例として、絶縁基板821の長手方向に沿う長軸を有する形状とされる。これにより、開口部824内において導電接続部83の位置ずれがある程度許容されるため、セル80aの接続に際し、導電接続部83がセル80aの電極パッド86、87の位置に応じてある程度移動することが許容される。その結果、セル80aにおいて接続に伴う応力が残留してしまうことが抑制される。したがって、より信頼性の高い太陽電池80を実現することができる。
【0222】
また、開口部824から露出する導電膜822は、いわゆるランド部として機能する。すなわち、配線基板82は、
図7に示すように、絶縁基板821と、絶縁基板821に設けられている導電膜822(導電層)と、導電膜822と電気的に接続されている複数のランド部が露出している開口部824と、を有している。そして、開口部824の配置(ランド部の配置)は、
図11に示す、第1端子861、第2端子872、第3端子863、第4端子874および第5端子865の配置に対応している。
【0223】
開口部824の配置がこのように設定されていることで、セル80aと配線基板82とが導電接続部83を介して接合された後、第1端子861、第2端子872、第3端子863、第4端子874および第5端子865やランド部について余分な露出部が生じるのを低減することができる。その結果、例えば太陽電池80を実装する際、意図しない接触による短絡等の電気的不良が発生するリスクを抑えることができ、太陽電池80の信頼性をより高めることができる。
【0224】
[3]次に、
図12または
図13に示すように、導電接続部83を介して、セル80aと配線基板82とを重ね合わせる(積層工程)。
【0225】
具体的には、セル80aと配線基板82とを重ね合わせた後、セル80aと絶縁膜823とが接するまで互いに近づける。それとともに、導電接続部83が加熱され、溶融または軟化する。これにより、導電接続部83は、荷重を受けて変形し、開口部824の内部に広がる。その結果、導電接続部83は、セル80aの電極パッド86と配線基板82の導電膜822の双方に接触し、双方の間を電気的および機械的に接続することができる。
【0226】
なお、セル80aと配線基板82との間は、さらに導電接続部83以外の部材を介して接続されていてもよいが、好ましくは導電接続部83のみを介した構造であるのが好ましい。これにより、接続作業が容易になるため、太陽電池80の製造コストの低減を図ることができる。
【0227】
また、前述したように、導電接続部83の体積が開口部824の体積以下であるとき、導電接続部83が変形したとしても、開口部824の内側に収まることとなる。このため、導電接続部83が開口部824からあふれ出ることが防止される。これにより、あふれ出た導電接続部83が短絡を生じさせたり、外観上の不具合になったりするのを防止することができる。
【0228】
さらに、導電接続部83が開口部824からあふれ出ると、あふれ出た導電接続部83が、セル80aと絶縁膜823との間に介在することとなる。このため、あふれ出た導電接続部83の量によって、セル80aと絶縁膜823との距離が変わったり、セル80aが傾いたりするおそれがある。このような懸念は、太陽電池80の寸法精度に影響を与えるため、例えば機器本体30の内部空間36に太陽電池80を格納するとき、不具合の発生を招くこととなる。
【0229】
したがって、導電接続部83があふれ出るのを防止することにより、例えばセル80aの平坦性を確保することができる。その結果、太陽電池80の寸法精度に不具合が発生したり、太陽電池80の見た目が悪化したりするのを防止することができる。
【0230】
なお、開口部824の長軸方向の長さをL1としたとき(
図5参照)、開口部824同士の離間距離L2(
図5参照)は、長さL1の1%以上500%以下であるのが好ましく、10%以上400%以下であるのがより好ましく、100%以上300%以下であるのがさらに好ましい。開口部824同士の離間距離L2を前記範囲内に設定することにより、開口部824からあふれ出た導電接続部83が隣り合う開口部824まで到達してしまう確率を下げつつ、複数の開口部824を設けることを可能にして、それによる機械的および電気的な信頼性の向上を図ることができる。
【0231】
なお、開口部824同士の離間距離L2は、平面視において1つの開口部824に最も近い距離にある開口部824との間の最短距離のことをいう。
【0232】
また、開口部824の周辺では、導電膜822の厚さ分、絶縁膜823が盛り上がっている。このため、この積層工程では、盛り上がっている部分がセル80aに接したとき、それ以外の部分はセル80aから離間することとなる。
【0233】
換言すれば、開口部824から導電接続部83があふれ出ないことで、絶縁膜823の一部(盛り上がっている部分)がセル80aに接触し、それ以外の部分(盛り上がっている部分とは別の一部)がセル80aから離間することとなる。
【0234】
このような構成によれば、盛り上がっている部分において、配線基板82とセル80aとが接触することによって、双方の距離を正確に規制することができる。これにより、太陽電池80の平坦性や寸法精度をより高めることができる。一方、接触していない部分が存在することによって、配線基板82とセル80aとの間に応力が発生しにくい。すなわち、双方の熱膨張率が異なる場合でも、接触していない部分がずれることによって応力の発生を抑制することができる。
【0235】
また、絶縁膜823の一部がセル80aから離間することにより、絶縁膜823とセル80aとの間に異物がかみ込む可能性が小さくなる。これにより、この異物のかみ込みによるセル80aの破損を回避することができる。
【0236】
なお、接触していない部分とは、互いに離間していることを要するわけではなく、接していてもよいが応力等に応じて容易にずれ得る状態になっている部分のことをいう。例えば配線基板82が可撓性を有する場合、その可撓性によって配線基板82がセル80aに追従するような状態になっていてもよい。
【0237】
導電膜822の厚さは、1μm以上150μm以下であるのが好ましく、3μm以上100μm以下であるのがより好ましい。これにより、盛り上がっている部分の突出高さが最適化されるため、太陽電池80の寸法精度と導電膜822の導電性との両立を図ることができる。
【0238】
すなわち、導電膜822の厚さが前記下限値を下回ると、導電膜822の導電性が低下するおそれがある。一方、導電膜822の厚さが前記上限値を上回ると、盛り上がっている部分の突出高さが高くなりすぎるため、配線基板82とセル80aとの接着が不安定になったり寸法精度が低下したりするおそれがある。
以上のようにして太陽電池80が得られる。
【0239】
以上、本発明について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0240】
例えば、本発明の光電変換素子、光電変換モジュールおよび電子機器は、前記実施形態の要素の一部が、同等の機能を有する任意の要素に代替されたものであってもよく、また、前記実施形態に任意の要素が付加されたものであってもよい。