特許第6962247号(P6962247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962247半導体表面処理用組成物および半導体表面処理方法
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  • 特許6962247-半導体表面処理用組成物および半導体表面処理方法 図000027
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962247
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】半導体表面処理用組成物および半導体表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20211025BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20211025BHJP
   C23G 1/06 20060101ALI20211025BHJP
   C23G 1/18 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01L21/304 622C
   C08K5/17
   C08K5/09
   H01L21/304 622X
   H01L21/304 647A
   C23G1/06
   C23G1/18
   C08L33/14
【請求項の数】7
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2018-46479(P2018-46479)
(22)【出願日】2018年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-156990(P2019-156990A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ツ元 清孝
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 秀則
(72)【発明者】
【氏名】三浦 拓也
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−016341(JP,A)
【文献】 特開2005−340755(JP,A)
【文献】 特表2008−503875(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/158795(WO,A1)
【文献】 特表2016−538357(JP,A)
【文献】 特表2017−505532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00−101/14
C08K3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー鎖、並びに−NH−で表される基を含む化合物に由来する部分構造(但し、前記ポリマー鎖を除く。)を有し、
前記ポリマー鎖が、式(1)で表される繰り返し単位として、Zが−N+234y-若しくは−OP(=O)(−O-)OC24+234である繰り返し単位のみを有するか、又はZが−N+234y-若しくは−OP(=O)(−O-)OC24+234である繰り返し単位及びZが−NR56である繰り返し単位を有し、且つ
前記化合物が、ビグアニド系化合物又はポリエチレンイミンである重合体と、
(B)分子量が500以下のキレート剤とを含有する、
半導体表面処理用組成物。
【化1】
〔式(1)において、R1は、水素原子又はメチル基を示し、Zは、−N+234y-、−OP(=O)(−O-)OC24+234(但し、R2〜R4は、相互に独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示し、Yy-はy価の対アニオンを示す。)、又は−NR56(但し、R5及びR6は、相互に独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)を示し、Xは、単結合又は2価の連結基を示す。〕
【請求項2】
前記部分構造が、−NH−で表される基を含む化合物から−NH−で表される基に由来する水素原子の一部又は全部を除いた残余である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
(B)キレート剤が、分子量500以下の有機アミン系キレート剤およびカルボキシ基を2個以上有する分子量500以下の有機酸系キレート剤から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
25℃におけるpHが2〜6である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
25℃におけるpHが8〜10である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を用いて、半導体表面を処理する方法。
【請求項7】
前記半導体の基板が、タングステン含有半導体基板である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体表面処理用組成物およびそれを用いた半導体表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMP(Chemical Mechanical Polishing(化学機械研磨))は、半導体装置の製造における平坦化技術などで普及している。CMPに用いられる化学機械研磨用スラリーは、研磨粒子(砥粒)の他、エッチング剤等を含有する。また、半導体装置の製造においては、CMPの後に、研磨屑や有機残渣等の汚染を表面から除去するために半導体を洗浄用組成物で洗浄する工程も必須である。
【0003】
半導体基板の表面には、タングステン、コバルト等の金属配線材が露出しているため、CMPやその後の洗浄は、このような金属配線材が露出している被研磨面に腐食などのダメージを与えないようにして行うことが必要である。このような被研磨面へのダメージを抑える技術として、例えば、ポリエチレンイミンを配合した化学機械研磨用組成物の使用(特許文献1)やポリアリルアミンを配合した半導体基板洗浄用組成物の使用(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016−524324号公報
【特許文献2】特開2012−33774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年では、回路構造の微細化に伴い、半導体の金属配線等へのダメージを更に抑制することが求められており、この要求と効果的な汚染の低減や除去という要求をともに満足させることは難しかった。
したがって、本発明の課題は、研磨や洗浄等の処理に用いたときに半導体の表面から汚染を効果的に低減又は除去でき、且つ金属配線等の金属を腐食させにくい半導体表面処理用組成物およびこれを用いた方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、以下の<1>〜<8>の手段により解決された。
<1> (A)下記式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」とも称する。)を有するポリマー鎖(以下、「特定ポリマー鎖」とも称する。)を有する重合体(以下、「特定重合体」とも称する。)と、(B)分子量が500以下のキレート剤とを含有する、半導体表面処理用組成物(以下、「本発明の半導体表面処理用組成物」とも称する。)。
【0007】
【化1】
【0008】
〔式(1)において、R1は、水素原子又はメチル基を示し、Zは、有機アンモニウム塩を形成する基、−NR56(但し、R5及びR6は、相互に独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。)、又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示し、Xは、単結合又は2価の連結基を示す。〕
【0009】
<2> (A)重合体が、さらに−NH−で表される基(以下、「特定官能基」とも称する。)を含む化合物に由来する部分構造(但し、前記ポリマー鎖を除く。また、以下、この部分構造を「特定部分構造」とも称する。)を有する、<1>に記載の組成物。
<3> 前記部分構造が、−NH−で表される基を含む化合物から−NH−で表される基に由来する水素原子の一部又は全部を除いた残余である、<2>に記載の組成物。
<4> (B)キレート剤が、分子量500以下の有機アミン系キレート剤およびカルボキシ基を2個以上有する分子量500以下の有機酸系キレート剤から選択される少なくとも1種である、<1>〜<3>のいずれかに記載の組成物。
【0010】
<5> 25℃におけるpHが2〜6である、<1>〜<4>のいずれかに記載の組成物。
<6> 25℃におけるpHが8〜10である、<1>〜<4>のいずれかに記載の組成物。
【0011】
<7> <1>〜<6>のいずれかに記載の組成物を用いて、半導体表面を処理する方法(以下、「本発明の半導体表面処理方法」とも称する。)。
【0012】
<8> 前記半導体の基板が、タングステン含有半導体基板である、<7>に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体表面処理用組成物は、金属配線等の金属を腐食させにくく、しかも研磨や洗浄等の処理に用いたときに半導体の表面から汚染を効果的に低減又は除去する効果を有する。また、研磨処理に用いた場合にその研磨速度を低下させにくい。
本発明の半導体表面処理方法によれば、汚染や金属腐食の少ない半導体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の半導体表面処理方法を利用した配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔半導体表面処理用組成物〕
本発明の半導体表面処理用組成物は、(A)上記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー鎖を有する重合体と、(B)分子量が500以下のキレート剤とを含有する。
【0016】
<(A)成分>
(A)成分は、上記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー鎖を有する重合体である。
【0017】
(繰り返し単位(1))
繰り返し単位(1)は、上記式(1)で表されるものである。
上記式(1)において、Zは有機アンモニウム塩を形成する基、−NR56又は置換若しくは非置換の含窒素複素環基を示す。
上記有機アンモニウム塩を形成する基としては、例えば−N+234y-、−(C=O)O-+HR234、−(C=O)O-+、−OP(=O)(−O-)OC24+234(但し、R2〜R4は、相互に独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示し、Yy-はy価の対アニオンを示し、A+は4級アンモニウムカチオンを示す。)等が挙げられるが、−N+234y-が好ましい。
2〜R6は、相互に独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。ここで、本発明において「炭化水素基」とは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念であり、直鎖状、分岐状及び環状のいずれの形態であってもよく、また飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよく、不飽和結合を末端及び非末端のいずれに有していてもよい。
【0018】
上記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20(好ましくは1〜12)のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。また、上記脂環式炭化水素としては、炭素数3〜20(好ましくは3〜12)の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜20(好ましくは3〜12)のシクロアルキル基がより好ましい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。更に、上記芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基、炭素数7〜20(好ましくは炭素数7〜16)のアラルキル基がより好ましい。ここで、本発明において「アリール基」とは、単環〜3環式芳香族炭化水素基をいい、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基等が挙げられる。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基等が挙げられる。
これらの中でも、R2〜R6における炭化水素基としては、金属の腐食をより抑制できるため、炭素数1〜12(更に好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4)のアルキル基、炭素数7〜16(更に好ましくは7〜12、特に好ましくは7〜9)のアラルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ベンジル基が特に好ましい。
なお、R2〜R6における置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、ベンゾイル基、置換又は非置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基を挙げることができる。
【0019】
y-は、1価の対アニオンでも多価の対アニオンでもよい。また、単原子のアニオンでも多原子のアニオンでもよい。
多価の対アニオンとしては、多価アニオン性化合物由来のものが挙げられる。多価アニオン性化合物とは、水に溶解させたときに電離して2価以上の負電荷を帯びる有機又は無機化合物のことをいう。多価アニオン性化合物としては、例えば、ガム類やポリアクリル酸誘導体等の高分子化合物、クエン酸及びその塩やEDTA等のキレート剤として知られる化合物が挙げられる。
1価の対アニオンとしては、Cl-、Br-、I-等のハロゲンイオン;ClO4-、BF4-、CH3(C=O)O-、PF6-等の酸の対アニオンが挙げられる。
y-としては、1〜6価の対アニオン(yが1〜6の整数のもの)が好ましく、1〜3価の対アニオン(yが1〜3の整数のもの)がより好ましく、1価の対アニオンが更に好ましく、ハロゲンイオンが特に好ましい。
【0020】
また、本発明において「含窒素複素環基」とは、環の構成要素として少なくとも1個の窒素原子を有する複素環基をいい、複素単環基、又はこれらが2個縮合してなる縮合複素環基であることが好ましい。これら複素環基は、不飽和環でも飽和環でもよく、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子)を環内に有していてもよい。
不飽和複素環としては、例えば、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イミダゾリン環、テトラヒドロピリミジン環等が挙げられる。また、飽和複素環としては、例えば、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環等が挙げられる。なお、含窒素複素環基における置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシ基、エステル基、エーテル基、水酸基、アミノ基、アミド基、チオール基、チオエーテル基等が挙げられる。
【0021】
上記複素単環基としては、5〜7員環のものが好ましく、具体的には、下記式(1−1)又は(1−2)で表される基本骨格を有する基が挙げられ、これら複素単環基は置換基を有していてもよい。
【0022】
【化2】
【0023】
式(1−1)において、Rは水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示し、Yy-はy価の対アニオンを示し、「*」は結合手であることを示すが、Rにおける炭化水素基としては上記R2と同様のものが挙げられ、Yy-としては上記−N+234y-におけるYy-と同様のものが挙げられる。
【0024】
【化3】
【0025】
式(1−2)において、「*」は結合手であることを示す。
【0026】
また、上記縮合複素環基としては、具体的には、下記式(1−3)〜(1−5)で表される基本骨格を有する基が挙げられ、これら縮合複素環基は置換基を有していてもよい。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
式(1−3)〜(1−5)において、「*」は結合手であることを示す。
【0031】
上記式(1)において、Xで示される2価の連結基としては、例えば、メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、−(C=O)OR11−(*)、−(C=O)NHR12−(*)、又は−ArR13−(*)(但し、Arは、アリーレン基を示し、「*」は、上記Zに結合する結合手であることを示す。)等が挙げられる。本発明における「アリーレン基」としては、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基等が挙げられる。また、R11〜R13は、相互に独立に、メチレン基、アルキレン基、又はアルキレンオキシアルキレン基である。
【0032】
X及びR11〜R13で示されるアルキレン基としては、炭素数2〜10(好ましくは2〜6、より好ましくは炭素数2〜4)のアルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
また、アルキレンオキシアルキレン基に含まれるアルキレン基としては、上記アルキレン基と同様のものが好ましい。アルキレンオキシアルキレン基としては、C2-4アルキレンオキシC2-4アルキレン基が好ましく、具体的にはエチレンオキシエチレン基等が挙げられる。
【0033】
Xとしては、側鎖導入反応の選択性が良好になり、特定重合体が製造し易くなるため、−(C=O)OR11−(*)、−(C=O)NHR12−(*)、又は−ArR13−(*)が好ましく、−(C=O)OR11−(*)が特に好ましい。また、R11〜R13としては、炭素数2〜6(より好ましくは炭素数2〜4)のアルキレン基が特に好ましい。
【0034】
(繰り返し単位(2))
特定ポリマー鎖としては、所望の効果が高まるため、繰り返し単位(1)に加えて、下記式(2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」とも称する。)を有するものが好ましい。
【0035】
【化7】
【0036】
〔式(2)において、
7は、水素原子又はメチル基を示し、
Aは、芳香族炭化水素基、−(C=O)OR8、−(C=O)NHR9、又は−OR10(但し、R8〜R10は、炭化水素基又は鎖状若しくは環状のエーテル構造を有する基を示す。)を示す。〕
【0037】
上記式(2)のAにおいて、芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
また、上記式(2)のAにおいて、R8〜R10は炭化水素基又は鎖状若しくは環状のエーテル構造を有する基を示す。該炭化水素基としては、上記R2と同様のものの他、飽和縮合多環炭化水素基、飽和橋かけ環炭化水素基、飽和スピロ炭化水素基、飽和環状テルペン炭化水素基等の脂環式炭化水素基が挙げられる。R8〜R10の炭化水素基としては、炭素数1〜20(好ましくは1〜15)のアルキル基、炭素数6〜20(好ましくは6〜14)のアリール基、炭素数7〜20(好ましくは炭素数7〜16)のアラルキル基、炭素数3〜20(好ましくは4〜15)の脂環式炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソデシル基、ドデシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、t−ブチルシクロヘキシル基、デカヒドロ−2−ナフチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、アダマンチル基、ジシクロペンテニル基、ペンタシクロペンタデカニル基、トリシクロペンテニル基、イソボルニル基が特に好ましい。
【0038】
一方、R8〜R10における鎖状のエーテル構造を有する基としては、下記式(3)で表される基が好ましい。
【0039】
【化8】
【0040】
〔式(3)において、
14は、相互に独立に、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、
15は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換若しくは非置換のアリール基を示し、
nは2〜150の整数を示し、
「*」は結合手であることを示す。〕
【0041】
14としては、2種以上のアルキレン基により構成されていてもよく、エチレン基及び/又はプロピレン基が好ましい。
15における炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
15におけるアリール基としてはフェニル基が好ましい。アリール基には、α−クミル基等が置換していてもよい。
15としては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
nは、2〜20の整数が好ましく、2〜10の整数がより好ましく、2〜5の整数が特に好ましい。
【0042】
また、R8〜R10における環状のエーテル構造を有する基としては、下記式(4)で表される基が好ましい。
【0043】
【化9】
【0044】
〔式(4)において、
16は、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基を示し、
CEは置換基としてアルキル基を有してもよい環状エーテル基を示し、
「*」は結合手であることを示す。〕
【0045】
上記式(4)において、R16としては、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。R16としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、エタン−1,1−ジイル基、トリメチレン基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、テトラメチレン基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などを挙げることができる。
【0046】
上記式(4)において、CEとしては、環を構成する原子数が3〜7個の環状エーテル基であることが好ましく、その具体例としては、下記式(i)〜(viii)で表される環状エーテル基などを挙げることができる。
【0047】
【化10】
【0048】
〔式(i)〜(viii)において、「*」はR16と結合する結合手であることを示す。〕
【0049】
本発明において、上記R8〜R10としては、所望の効果が高まるため、炭化水素基が好ましい。
【0050】
特定ポリマー鎖は、繰り返し単位(1)、(2)以外の繰り返し単位(以下、他の繰り返し単位とも称する。)を有していてもよい。このような繰り返し単位の例としては、アニオン性基を有するビニル系単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アニオン性を示す水酸基などが挙げられ、中でもカルボキシ基、スルホン酸基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
アニオン性基を有するビニル系単量体の好適な具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ〔2−(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、p−ビニル安息香酸、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンなどの酸性基を有するビニル系単量体、これらの塩が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。その他、他の繰り返し単位を構成する単量体としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドの如きN−位置換マレイミド;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートの如き水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系単量体等が挙げられる。特定ポリマー鎖は、他の繰り返し単位に該当するものを1種又は2種以上有していてよい。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味するものとする。
【0051】
特定ポリマー鎖において、繰り返し単位(1)の共重合割合は、全繰り返し単位中、好ましくは10〜99質量%、より好ましくは15〜95質量%、更に好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは50〜85質量%である。繰り返し単位(2)の共重合割合は、全繰り返し単位中、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは15〜50質量%である。各繰り返し単位をこのような割合で共重合することにより、所望の効果をより高めることができる。また、繰り返し単位(1)の共重合割合と繰り返し単位(2)の共重合割合との質量比率〔(1)/(2)〕としては、15/85〜99/1が好ましく、20/80〜95/5がより好ましく、30/70〜90/10が特に好ましい。
なお、共重合割合や共重合比は熱分解ガスクロマトグラフィー測定等により測定することができる。例えば後述する合成例1においては、各クロマトグラムのピークのフラグメントから、DAMA、nBMA、MMA、EHMA由来のピークを同定して定量し、共重合比を算出することができる。測定条件の一例を下記に示す。なお、共重合比はNMRによっても測定できる。
<重合体の組成比確認>
装置:熱分解ガスクロマトグラム質量分析装置(熱分解部:日本分析工業製パイロホイルサンプラJPS-350、ガスクロマトグラフ部:Agilent Technologies 7890A GC System、質量分析計部:Agilent Technologies 5975 inert XL Mass Selective detector)
カラム:BPX-5
温度:熱分解温度590℃×5秒、カラム注入口280℃、カラム温度(開始温度を50℃として1分間に10℃ずつ350℃まで昇温)
流量:He 1.0mL/min.
イオン化法:電子イオン化法(EI法)
検出部:MS四重極、Aux−2
【0052】
特定ポリマー鎖は、繰り返し単位(1)に該当するものを1種又は2種以上有していてよく、また、繰り返し単位(2)に該当するものを1種又は2種以上有していてよいが、特定ポリマー鎖は、繰り返し単位(1)として、Zが有機アンモニウム塩を形成する基である繰り返し単位(1)のみが含有されているか、Zが有機アンモニウム塩を形成する基である繰り返し単位(1)と、Zが−NR56である繰り返し単位(1)の両方が含有されていることが好ましい。
また、繰り返し単位(1)は、所望の効果が高まるため、Zが有機アンモニウム塩を形成する基である繰り返し単位を、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上含有していることが好ましい(なお、この含有量の上限値は特に限定されるものではなく、例えば100モル%である。)。Zが有機アンモニウム塩を形成する基である繰り返し単位と、Zが−NR56である繰り返し単位の両方を含む場合、Zが有機アンモニウム塩を形成する基である繰り返し単位と、Zが−NR56である繰り返し単位との共重合比(モル比)は、20/80〜99/1が好ましく、30/70〜98/2がより好ましく、40/60〜95/5が特に好ましい。
【0053】
特定ポリマー鎖が繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)を有する場合、特定ポリマー鎖はブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよく特に限定されるものではないが、所望の効果が高まるため、ランダム共重合体であることが好ましい。
なお、上記ブロック共重合体としては、繰り返し単位(2)を有さず、繰り返し単位(1)を有するAブロックと、繰り返し単位(1)を有さず、繰り返し単位(2)を有するBブロックとを含む、ブロック共重合体が挙げられる。該ブロック共重合体としては、A−B型ブロック共重合体が挙げられる。Aブロック中において、繰り返し単位(1)は、1つのAブロック中に2種以上含有されていてもよく、その場合、各々の繰り返し単位は、該Aブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合のいずれの態様で含有されていてもよい。また同様に、Bブロック中において、繰り返し単位(2)は、1つのBブロック中に2種以上含有されていてもよく、その場合、各々の繰り返し単位は、該Bブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合のいずれの態様で含有されていてもよい。
【0054】
特定ポリマー鎖の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、移動相:テトラヒドロフラン)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが、好ましくは3,000以下、より好ましくは300〜3,000、更に好ましくは500〜2,500である。また、特定ポリマー鎖のMwと、GPC(移動相:テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜1.8、より好ましくは1.0〜1.7、特に好ましくは1.1〜1.5である。特定ポリマー鎖をこのような態様にすることにより、所望の効果を高めることができる。
【0055】
特定ポリマー鎖は、その末端が特定部分構造と結合していることが好ましく、特に、その末端が特定部分構造中の特定官能基由来のN原子と結合していることが好ましい。また、特定ポリマー鎖としては、環状エーテル基が開環してなる2価の基を有するものが好ましく、高い反応性を有するため、環状エーテル基が開環してなる2価の基をポリマー鎖の末端に有するものがより好ましい。また、特定重合体は、上記環状エーテル基が開環してなる2価の基が、特定部分構造と結合しているものが好ましく、特に、上記環状エーテル基が開環してなる2価の基が、特定部分構造中の特定官能基由来のN原子と結合しているものが好ましい。
環状エーテル基が開環してなる2価の基としては、環を構成する原子数が3〜7個の環状エーテル基が開環してなる2価の基が好ましく、式(i−2)〜(viii−2)で表される環状エーテル基が開環してなる2価の基がより好ましく、式(i−2)で表される環状エーテル基が開環してなる2価の基(開環エポキシ基)が特に好ましい。なお、式(i−2)〜(iv−2)で表される環状エーテル基が開環してなる2価の基は、具体的には下記式(i−3)〜(iv−3)で表される。
【0056】
【化11】
【0057】
〔各式において、「*」は繰り返し単位(1)(特定ポリマー鎖が繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)を有する場合は繰り返し単位(1)又は(2))と結合する結合手であることを示し、「**」は、特定部分構造中の特定官能基由来のN原子と結合する結合手であることを示す。〕
【0058】
また、繰り返し単位(1)(特定ポリマー鎖が繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)を有する場合は繰り返し単位(1)又は(2))と環状エーテル基が開環してなる2価の基は、2価の連結基を介して結合していてもよい。
2価の連結基としては、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。2価の連結基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、エタン−1,1−ジイル基、トリメチレン基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、テトラメチレン基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などを挙げることができる。
【0059】
特定ポリマー鎖の含有量としては、金属の腐食をより抑制できるため、特定重合体全量に対し、40〜99質量%が好ましく、45〜97質量%がより好ましく、50〜95質量%が特に好ましい。
なお、特定ポリマー鎖の含有量は熱分解ガスクロマトグラフィー等により測定することができる。例えば後述する合成例1においては、各クロマトグラムのピークのフラグメントから、特定重合体と、特定ポリマー鎖に対応するピークを同定して定量し、特定ポリマー鎖の含有量を算出することができる。測定条件の一例を下記に示す。なお、特定ポリマー鎖の含有量は、NMRによっても測定できる。
<重合体の組成比確認>
装置:熱分解ガスクロマトグラム質量分析装置(熱分解部:日本分析工業製パイロホイルサンプラJPS-350、ガスクロマトグラフ部:Agilent Technologies 7890A GC System、質量分析計部:Agilent Technologies 5975 inert XL Mass Selective detector)
カラム:BPX-5
温度:熱分解温度590℃×5秒、カラム注入口280℃、カラム温度(開始温度を50℃として1分間に10℃ずつ350℃まで昇温)
流量:He 1.0mL/min.
イオン化法:電子イオン化法(EI法)
検出部:MS四重極、Aux−2
【0060】
(特定部分構造)
特定重合体としては、所望の効果が高まるため、特定ポリマー鎖に加えて、特定部分構造を有するものが好ましい。
特定部分構造は、特定官能基(−NH−で表される基)を含む化合物に由来する部分構造である。但し、特定部分構造は、特定ポリマー鎖を含まない概念である。特定部分構造は、前記化合物から特定官能基に由来する水素原子の一部又は全部を除いた残余であることが好ましい。
特定官能基を含む化合物としては、腐食をより抑制できるため、第1級アミノ基、第2級アミノ基、カルバモイル基(−C(=O)−NH2)及びアミド結合(−C(=O)−NH−)から選ばれる少なくとも1種を特定官能基含有基として含む化合物が好ましく、第1級アミノ基、第2級アミノ基及びカルバモイル基から選ばれる少なくとも1種を含む化合物がより好ましく、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種を含む化合物が特に好ましい。また、特定官能基を含む化合物は、特定官能基を1個含む化合物であっても複数含む化合物であってもよいが、特定官能基を複数含む化合物であることが好ましい。
特定部分構造は、低分子(非重合体型の)化合物由来のものでも高分子(重合体型の)化合物由来のものでもよいが、腐食をより抑制できるため、高分子(重合体型)のアミン化合物由来のものが好ましく、アミン化合物のうち多分岐型重合体に由来するものが特に好ましい。アミン化合物が多分岐型重合体である場合には、特定重合体は、特定部分構造をコア部とし特定ポリマー鎖をアーム部とする多分岐型星型重合体となる。なお、重合体型のアミン化合物の重量平均分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは150以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、更に好ましくは2000以下、特に好ましくは1500以下である。
また、特定官能基を含む化合物が第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種を含む化合物である場合、特定部分構造は、特定官能基を含む化合物由来のアミノ基の一部又は全部が有機アンモニウム塩化していてもよい。
【0061】
また、上記特定官能基を含む化合物としては、例えば、ポリアジリジン系重合体;そのアルキルイソシアネート変性物、アルキレンオキサイド変性物等のポリアジリジン系重合体変性物;芳香族ジアミン系化合物等のジアミン系化合物;ビグアニド系化合物(低分子(非重合体)でも高分子(重合体)でもよい);アミノ酸;アミノ酸誘導体;ペプチド;アミノ糖;ポリアミノ糖:その他抗菌薬等を挙げることができる。特定重合体は、これらに由来する特定部分構造のうち1種を有していても2種以上を有していてもよい。
これらの中でも、特定官能基を含む化合物としては、ポリアジリジン系重合体、ジアミン系化合物、ビグアニド系低分子化合物、アミノ酸、アミノ酸誘導体が好ましく、腐食をより抑制できるため、ポリアジリジン系重合体、ビグアニド系低分子化合物がより好ましく、ポリアジリジン系重合体が特に好ましい。ジアミン系化合物としては、芳香族ジアミン系化合物が好ましい。なお、ポリアジリジン系重合体の重量平均分子量は、上記と同様に、好ましくは100以上、より好ましくは150以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、更に好ましくは2000以下、特に好ましくは1500以下である。また上記したように、特定官能基を含む化合物がポリアジリジン系重合体である場合には、特定重合体は、特定部分構造をコア部とし特定ポリマー鎖をアーム部とする多分岐型星型重合体となる。
【0062】
ポリアジリジン系重合体としては、下記式(11)で表される繰り返し単位を有するものが挙げられる。
【0063】
【化12】
【0064】
〔式(11)において、
17は、水素原子又は他の繰り返し単位(11)と結合する結合手を示し、
18〜R21は、相互に独立に、水素原子又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。
但し、R18及びR19がともに炭化水素基である場合は、R18及びR19が一緒になって環を形成していてもよく、R18及びR20がともに炭化水素基である場合は、R18及びR20が一緒になって環を形成していてもよく、R20及びR21がともに炭化水素基である場合は、R20及びR21が一緒になって環を形成していてもよい。〕
【0065】
17が他の繰り返し単位(11)と結合する結合手である場合、式(11)は、具体的には下記式(11−2)で表される。ポリアジリジン系重合体としては、R17が水素原子の繰り返し単位と式(11−2)で表される3価の繰り返し単位の両方を有するものが好ましい。
【0066】
【化13】
【0067】
〔式(11−2)において、R18〜R21は、式(11)中のR18〜R21と同義である。〕
【0068】
18〜R21で示される炭化水素基は上記R2〜R6と同様に、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念であり、直鎖状、分岐状及び環状のいずれの形態であってもよく、また飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよく、不飽和結合を末端及び非末端のいずれに有していてもよい。R18〜R21で示される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜20(好ましくは1〜12、より好ましくは1〜4)のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
また、R18及びR19、R18及びR20、R20及びR21がそれぞれ形成していてもよい環としては、シクロヘキサン環、メチルシクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等の炭素数3〜10のシクロアルカン環が挙げられる。
18〜R21における置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子を挙げることができる。
【0069】
ポリアジリジン系重合体の具体例としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ(2,2−ジメチルアジリジン)、ポリ(2,3−ジメチルアジリジン)、ポリ(2,2,3,3−テトラメチルアジリジン)、ポリ(2−エチルアジリジン)、ポリ(2−ヘキシルアジリジン)、ポリ(7−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン)、ポリ(1−アザスピロ[2.5]オクタン)、ポリ(1−メチル−7−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン)、ポリ(3−メチル−7−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン)等を挙げることができる。中でも、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンが好ましく、ポリエチレンイミンが特に好ましい。
【0070】
ジアミン系化合物としては、下記(12)又は(13)で表されるものが挙げられる。
【0071】
【化14】
【0072】
〔式(12)において、
22は、単結合、エーテル結合、アミド結合、エステル結合、チオ基又は2価の有機基を示し、
23及びR24は、相互に独立に、置換又は非置換の炭化水素基を示し、
p及びqは、相互に独立に、0〜4の整数を示す。
但し、R22が2価の有機基であり、且つp及びqのうち少なくともいずれかが0〜3の整数のとき、R22は隣接するフェニレン基と縮合環を形成していてもよい。〕
【0073】
【化15】
【0074】
〔式(13)において、R25は、置換若しくは非置換の2価の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは非置換の2価の含窒素複素環基を示す。〕
【0075】
式(12)において、R22は、単結合、エーテル結合、アミド結合、エステル結合、チオ基又は2価の有機基を示す。これらの中では、単結合、エーテル結合、チオ基、2価の有機基が好ましく、2価の有機基がより好ましい。
2価の有機基としては、置換又は非置換の2価の炭化水素基、当該置換又は非置換の2価の炭化水素基の炭素原子の一部がエーテル結合、アミド結合、エステル結合及びチオ基から選ばれる1種以上に置き換わった基がより好ましく、置換又は非置換の2価の炭化水素基、当該置換又は非置換の2価の炭化水素基の炭素原子の一部がエーテル結合及びエステル結合から選ばれる1種以上に置き換わった基が更に好ましく、置換又は非置換の2価の炭化水素基の炭素原子の一部がエステル結合に置き換わった基が特に好ましい。また、2価の有機基の炭素数としては、1〜50が好ましく、2〜40がより好ましく、3〜30が更に好ましく、5〜20が特に好ましい。なお、置換又は非置換の2価の炭化水素基の炭素原子の一部がエーテル結合、アミド結合、エステル結合及びチオ基から選ばれる1種以上に置き換わった基において、エーテル結合、アミド結合、エステル結合、チオ基は1つでもよく、2つ以上でもよい。
22における「2価の炭化水素基」としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基のいずれでもよい。また、これらが連結した2価の基であってもよい。
上記2価の脂肪族炭化水素基の炭素数としては、1〜50が好ましく、2〜40がより好ましく、3〜30が更に好ましく、5〜20が特に好ましい。なお、2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、2価の脂肪族炭化水素基は分子内に不飽和結合を有していてもよいが、好ましくはアルカンジイル基である。アルカンジイル基の具体例としては、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,1−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,1−ジイル基、ペンタン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,1−ジイル基、ヘキサン−1,2−ジイル基、ヘキサン−1,3−ジイル基、ヘキサン−1,4−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基等が挙げられる。
上記2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3〜20であり、より好ましくは3〜16であり、更に好ましくは3〜12であり、特に好ましくは3〜8である。具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。
上記2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6〜18であり、より好ましくは6〜12である。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレン基、アンスリレン基の他、フルオレニレン基(フルオレン環由来の2価の基)等が挙げられる。
なお、2価の脂環式炭化水素基の結合部位及び2価の芳香族炭化水素基の結合部位は、環上のいずれの炭素上でもよい。
22における置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子を挙げることができる。
【0076】
式(12)において、R23及びR24は、相互に独立に、置換又は非置換の炭化水素基を示す。R23及びR24で示される炭化水素基は上記R2〜R6と同様に、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念であり、直鎖状、分岐状及び環状のいずれの形態であってもよく、また飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよく、不飽和結合を末端及び非末端のいずれに有していてもよい。R23及びR24で示される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜20(好ましくは1〜12、より好ましくは1〜4)のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。R23及びR24における置換基としては、例えば、ハロゲン原子を挙げることができる。
式(12)において、p及びqは、相互に独立に、0〜4の整数を示す。p、qとしては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。なお、pが2〜4の整数の場合、p個のR23は同一であっても異なっていてもよく、また、qが2〜4の整数の場合、q個のR24は同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
式(13)において、R25は、置換若しくは非置換の2価の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは非置換の2価の含窒素複素環基を示す。
上記2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6〜18であり、より好ましくは6〜12である。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレン基、アンスリレン基の他、フルオレニレン基(フルオレン環由来の2価の基)等が挙げられる。
上記2価の含窒素複素環基の炭素数は、好ましくは4〜18であり、より好ましくは4〜10である。具体的には、ピリジニレン基(ピリジン環由来の2価の基)、ピリミジニレン基(ピリミジン環由来の2価の基)、アクリジニレン基(アクリジン環由来の2価の基)、カルバゾール環由来の2価の基等が挙げられる。
なお、2価の芳香族炭化水素基の結合部位及び2価の含窒素複素環基の結合部位は、環上のいずれの炭素上でもよい。
25における置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシ基を挙げることができる。
【0078】
ジアミン系化合物の具体例としては、例えば、アジピン酸ビス(4−アミノフェニルエチル)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4'−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール等を挙げることができる。
【0079】
ビグアニド系化合物は、分子中に少なくとも1つのビグアニド骨格を有するものであればよく、1つのビグアニド骨格を含む低分子の化合物であっても、ポリヘキサメチレンビグアニドのような、ビグアニド骨格を含む繰り返し単位を複数有する化合物でもよい。中でも、所望の効果が高まるため、1つのビグアニド骨格を含む低分子の化合物が好ましい。1つのビグアニド骨格を含む低分子の化合物としては、下記式(14)で表されるものが挙げられる。
【0080】
【化16】
【0081】
〔式(14)において、R26は、有機基を示す。〕
【0082】
式(14)において、R26で示される有機基としては、置換又は非置換の炭化水素基が好ましい。
26で示される炭化水素基は上記R2〜R6と同様に、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念であり、直鎖状、分岐状及び環状のいずれの形態であってもよく、また飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよく、不飽和結合を末端及び非末端のいずれに有していてもよい。
上記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20(好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4)のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。また、上記脂環式炭化水素としては、炭素数3〜20(好ましくは3〜12)の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜20(好ましくは3〜12)のシクロアルキル基がより好ましい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。更に、上記芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基、炭素数7〜20(好ましくは炭素数7〜16)のアラルキル基がより好ましい。アリール基とは、単環〜3環式芳香族炭化水素基をいい、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基等が挙げられる。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基等が挙げられる。
これらの中でも、R26における炭化水素基としては、炭素数1〜12(更に好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4)のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基が特に好ましい。
なお、R26における置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基を挙げることができる。
【0083】
ビグアニド系化合物の好適な具体例としては、例えば、エチルビグアニド、1−ブチルビグアニド、1−オクタデシルビグアニド、フェニルビグアニド、1−o−トリルビグアニド、1−p−トリルビグアニド、1−(2−フェニルエチル)ビグアニド、1−(2,3−キシリル)ビグアニド、1−(4−メトキシフェニル)ビグアニド等を挙げることができる。
【0084】
また、アミノ酸、アミノ酸誘導体としては、公知のアミノ酸、アミノ酸誘導体が挙げられる。また、ペプチド、抗菌薬としては、公知のオリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチド構造や第1級アミノ基、第2級アミノ基を含む抗生物質等が挙げられる。
上記アミノ酸誘導体としては、N−アシルアミノ酸が好ましく、N−アルカノイルアミノ酸がより好ましい。N−アルカノイルアミノ酸におけるアルカノイル基としては、炭素数2〜10のアルカノイル基が好ましく、炭素数2〜6のアルカノイル基がより好ましい。アルカノイル基としては、具体的には、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。アミノ酸誘導体としては、N−アセチルアミノ酸が特に好ましい。
アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド、抗菌薬としては、具体的には、リジン、グリシン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、N−アセチル−L−グルタミン、N−アセチル−L−グルタミン酸、ポリリジン、グリシルグリシン、グリシルサルコシン、グルタチオン、L−アラニル−L−グルタミン、ダプトマイシン、バンコマイシン、コリスチン、アンピリシン、セフジトレンピボキシル、セファロスポリンC、アズトレオナム、チゲモナム、ストレプマイシン、ゲンタマイシン、アルベカシン、ミノサイクリン、トスフロサキシン、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、アシクロビル、バラシクロビル、ラミブジン、ナイスタチン等を挙げることができる。
また、アミノ糖、ポリアミノ糖としては、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、ヘキソサミン、キトサン等を挙げることができる。
【0085】
特定部分構造の含有量としては、金属の腐食をより抑制できるため、特定重合体全量に対し、1〜60質量%が好ましく、3〜55質量%がより好ましく、5〜50質量%が特に好ましい。
また、特定ポリマー鎖と特定部分構造との含有量の質量比率としては、金属の腐食をより抑制できるため、40/60〜99/1が好ましく、45/55〜97/3がより好ましく、50/50〜95/5が特に好ましい。
なお、特定部分構造の含有量は熱分解ガスクロマトグラフィー等により測定することができる。
【0086】
次に、特定重合体の製造方法について説明する。
特定重合体は、公知の方法を適宜組み合わせることにより製造できる。例えば、繰り返し単位(1)を与える単量体及び必要に応じてその他の単量体を(共)重合させればよい。また、特定部分構造を有するものを製造する場合には、以下の工程1及び2を含む方法により得ることが好ましい。
(工程1)繰り返し単位(1)を有する重合体(好ましくは繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)を有する共重合体)と環状エーテル基を有する化合物とを接触させ、前記重合体に環状エーテル基を導入する工程
(工程2)工程1で得られた環状エーテル基含有重合体と、特定官能基を含む化合物とを接触させ、前記環状エーテル基と前記特定官能基を反応させる工程
【0087】
(工程1)
工程1は、繰り返し単位(1)を有する重合体と環状エーテル基を有する化合物とを接触させ、前記重合体に環状エーテル基を導入する工程である。
繰り返し単位(1)を有する重合体は、市販品を用いても化学合成して用いてもよいが、上記各繰り返し単位を与える単量体をリビング重合することにより製造することが好ましい。リビング重合法としては、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合等、公知の方法を採用することができる。
【0088】
繰り返し単位(1)を与える単量体であって、式(1)におけるZが有機アンモニウム塩を形成する基又は−NR56である単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチル(4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジエチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアンモニウム塩型カチオン性官能基又はアミノ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類や、これらに対応する(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
なお、Zが有機アンモニウム塩を形成する基である繰り返し単位(1)は、Zが−NR56である単量体(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート)を共重合した後や工程1の後、或いは工程2の後に、塩化ベンジル等のハロゲン化炭化水素化合物を反応させ、アミノ基を4級化させて得ることが好ましく、特に、工程2の後にアミノ基を4級化させて得ることが好ましい。
【0089】
また、繰り返し単位(1)を与える単量体であって、式(1)におけるZが含窒素複素環基である単量体としては、例えば、下記式の化合物群α(モノマー1〜18)、下記式(5)で表される化合物、4−ビニルピリジン、これらの塩等が挙げられる。なお、繰り返し単位(1)を与える単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
【化17】
【0091】
【化18】
【0092】
また、繰り返し単位(2)を与える単量体としては、Aが芳香族炭化水素基である繰り返し単位(2)を与える単量体として、例えば、スチレン、α−メチルスチレンが挙げられる。また、R8〜R10が炭化水素基である繰り返し単位(2)を与える単量体として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、デカヒドロ−2−ナフチル(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;これらに対応する(メタ)アクリルアミド類;エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が挙げられる。また、R8〜R10が鎖状又は環状のエーテル構造を有する基である繰り返し単位(2)を与える単量体として、ポリエチレングルコール(n=2〜10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングルコール(n=2〜10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコール(n=2〜10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングルコール(n=2〜10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜10)モノ(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕オキセタン、3−〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕−3−エチルオキセタン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の鎖状又は環状のエーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル類;これらに対応する(メタ)アクリルアミド類;3−(ビニルオキシメチル)−3−エチルオキセタン等のビニルエーテル類が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
また、繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)以外の繰り返し単位を与える単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ〔2−(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、p−ビニル安息香酸、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレンなどの酸性基を有するビニル系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドの如きN−位置換マレイミド;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートの如き水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系単量体等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
環状エーテル基を有する化合物は、繰り返し単位(1)を有する重合体に環状エーテル基を導入できるものであればよいが、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピフルオロヒドリン、エピヨードヒドリン等のエピハロヒドリン等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
環状エーテル基を有する化合物の使用量は、繰り返し単位(1)を有する重合体に対して、通常0.05〜0.2モル当量程度である。
工程1の反応時間は通常0.5〜2.5時間であり、反応温度は通常−78〜20℃である。
【0095】
(工程2)
工程2は、工程1で得られた環状エーテル基含有重合体と、特定官能基を含む化合物とを接触させ、前記環状エーテル基と前記特定官能基を反応させる工程である。
特定官能基を含む化合物は、特定部分構造を与えるものとして挙げたものを使用すればよい。
特定官能基を含む化合物の使用量は、環状エーテル基含有重合体に対して、通常0.7〜1.3モル当量程度である。
工程2は有機リン化合物の存在下で行ってもよい。有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、ジフェニル(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス[4−(メチルチオ)フェニル]ホスフィン等のトリフェニルホスフィンやその誘導体が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
工程2の反応時間は通常10〜40時間であり、反応温度は通常40〜80℃である。
【0096】
なお、前記各工程は、溶媒存在下又は非存在下で行ってよい。溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテ−ト、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエチレングリコール誘導体;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコール誘導体;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、γ−ブチルラクトンなどのエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリン、N,N'−ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;トルエン、キシレン、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、モルホリンなどのエーテル類などが挙げられ、これらのうち1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記各工程において、各反応生成物の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、再沈殿、透析、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
【0097】
(A)成分の含有量は、金属の腐食をより抑制でき且つ効果的に汚染を低減・除去できるため、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、好ましくは0.0001〜0.5質量%であり、より好ましくは0.001〜0.1質量%であり、特に好ましくは0.005〜0.1質量%である。
【0098】
<(B)成分>
本発明の半導体表面処理用組成物は、(B)分子量が500以下のキレート剤を含有する。
ここで、本明細書において、キレート剤とは、金属イオンと結合してキレート化合物を形成する多座配位子をもつ化合物のうち(A)成分以外のものをいい、本発明で用いるキレート剤の分子量は500以下である。このようなキレート剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
キレート剤の分子量は、好ましくは60〜480、より好ましくは60〜300である。また、低分子(非重合体型)のキレート剤が好ましい。さらに、キレート剤としては、半導体材料元素からなるイオンに対し配位能力を有するものが好ましい。
【0099】
また、上記のような「キレート剤」としては、残渣を低減・除去する性能を向上できるため、有機アミン系キレート剤、カルボキシ基を2個以上有する有機酸系キレート剤が好ましい。
【0100】
(カルボキシ基を2個以上有する有機酸系キレート剤)
上記有機酸系キレート剤としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、これらの塩(アルカリ金属塩(例えばカリウム塩)、アンモニウム塩等)等のヒドロキシ基をもたないポリカルボン酸系キレート剤;クエン酸(分子量:192)、リンゴ酸(分子量:134)、酒石酸、これらの塩(アルカリ金属塩(例えばカリウム塩)、アンモニウム塩等)等の2個以上のカルボキシ基と1個以上のヒドロキシ基を有する有機酸系キレート剤;エチレンジアミン四酢酸(分子量:292)、グリコールエーテルジアミン四酢酸、これらの塩(アルカリ金属塩(例えばカリウム塩)、アンモニウム塩等)等のアミノポリカルボン酸系キレート剤が挙げられる。ヒドロキシ基をもたないポリカルボン酸系キレート剤としては、ヒドロキシ基をもたないジカルボン酸系キレート剤が好ましい。アミノポリカルボン酸系キレート剤としては、アミノポリ酢酸系キレート剤が好ましい。
これらの有機酸系キレート剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら有機酸系キレート剤の中では、残渣を低減・除去する性能を向上できるため、2個以上のカルボキシ基と1個以上のヒドロキシ基を有する有機酸系キレート剤、アミノポリカルボン酸系キレート剤が好ましく、2個以上のカルボキシ基と1個以上のヒドロキシ基を有する有機酸系キレート剤がより好ましい。
【0101】
(有機アミン系キレート剤)
上記有機アミン系キレート剤としては、例えば、モノエタノールアミン(分子量:61)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン系キレート剤;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、1,3−プロパンジアミン等の第一級アミン系キレート剤;ピペリジン、ピペラジン等の第二級アミン系キレート剤;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第三級アミン系キレート剤;グリシン、フェニルアラニン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、リシン、プロリン、ヒスチジン(分子量:155)、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、システイン、バリン等のアミノ酸系キレート剤等が挙げられる。なお、これらの塩でもよい。この塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等の無機酸塩;酢酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
これらの有機アミン系キレート剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら有機アミン系キレート剤の中では、金属配線表面上の残渣を除去する効果が高いため、アルカノールアミン系キレート剤、アミノ酸系キレート剤が好ましく、アルカノールアミン系キレート剤がより好ましい。
アルカノールアミン系キレート剤としては、モノアルカノールアミン系キレート剤が好ましく、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが特に好ましい。
【0102】
(B)成分の含有量は、金属の腐食をより抑制でき且つ効果的に汚染(特に金属配線表面の付着物)を低減・除去できるため、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、好ましくは0.001〜0.5質量%であり、より好ましくは0.005〜0.3質量%であり、更に好ましくは0.01〜0.1質量%であり、特に好ましくは0.01〜0.05質量%である。
また、半導体表面処理用組成物中の(A)成分と(B)成分との含有質量比〔(B)/(A)〕は、本発明の所望の効果が高まるため、好ましくは0.1〜100であり、より好ましくは0.5〜30であり、更に好ましくは1〜15であり、更に好ましくは1.5〜7.5であり、特に好ましくは1.5〜3である。
【0103】
<任意成分>
本発明の半導体表面処理用組成物は、(A)成分、(B)成分以外の成分(以下、「他の成分」ともいう)を含んでいてもよい。このような他の成分としては、水系媒体、研磨粒子(砥粒)、水溶性(共)重合体又はその塩、酸化剤、還元剤、界面活性剤、pH調整剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0104】
上記水系媒体としては、水の他、水とアルコールの混液が挙げられるが、水が好ましい。水としては、イオン交換水、純水、超純水などが挙げられる。
水系媒体の含有量は、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、また、好ましくは100質量%未満、より好ましくは99.9999質量%以下である。
【0105】
上記研磨粒子としては、無機酸化物粒子、有機粒子が好ましく、無機酸化物粒子がより好ましい。半導体表面処理用組成物が研磨粒子を含む場合、化学機械研磨等の研磨処理に適したものとなる。一方、本発明の半導体表面処理用組成物は、金属を腐食させにくく、且つ化学機械研磨後の洗浄に用いたときの残渣除去性能に優れるため、研磨粒子を含有しないタイプの半導体表面洗浄処理用組成物としても非常に適したものである。
無機酸化物粒子としては、例えば、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機粒子が挙げられる。この中でも、シリカ、アルミナが好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、コロイダルシリカ、フュームドシリカが挙げられるが、配線金属膜表面のスクラッチの発生をより抑制できるため、コロイダルシリカが特に好ましい。
研磨粒子の一次粒子径(D1)は、好ましくは10〜200nmである。一次粒子径(D1)は、例えば、観察法やBET比表面積法等で測定できる。
観察法による一次粒子径(D1)測定は、例えば研磨粒子の0.01質量%の水分散液を、銅マイクログリッド上に滴下し乾燥させた後、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製 H7650)を用いて測定倍率20,000倍における粒子画像を取得した後、解析ソフトMac−Viewで粒子径を複数個計測し、Heywood径の中心値を一次粒子径(D1)として測定することができる。また、BET比表面積法は、例えば研磨粒子の分散液をホットプレート上で予備乾燥後、800℃で加熱処理して測定用サンプルを調製し、この測定用サンプルを用いてBET比表面積を測定する。研磨粒子の真比重と比表面積から一次粒子径(D1)を換算することが出来る。
【0106】
本発明の半導体表面処理用組成物は、研磨粒子を含有しないものであってもよいが、研磨粒子を使用する場合、その含有量は、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、好ましくは0.2〜10質量%であり、より好ましくは0.3〜5質量%である。研磨粒子の含有量が上記範囲にあると、配線金属膜に対する十分な研磨速度が得られると共に、粒子の沈降・分離が発生しにくい安定な半導体表面処理用組成物が得られやすい。
【0107】
上記水溶性(共)重合体又はその塩としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体等の不飽和カルボン酸の重合体およびその塩の他、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性高分子が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0108】
上記水溶性(共)重合体又はその塩の含有量は、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0〜0.5質量%である。
【0109】
上記酸化剤としては、過酸化水素;過酢酸、過安息香酸、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸化合物;重クロム酸カリウム等の重クロム酸化合物;ヨウ素酸カリウム等のハロゲン酸化合物;硝酸、硝酸鉄等の硝酸化合物;過塩素酸等の過ハロゲン酸化合物;過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩の他、ヘテロポリ酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
酸化剤を使用する場合、その含有量は、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜30質量%であり、より好ましくは0.05〜20質量%であり、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0110】
上記還元剤としては、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミンリン酸塩、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン硫酸塩、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン硝酸塩、N,N−ジメチルヒドロキシルアミンリン酸塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン硫酸塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン塩酸塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン硝酸塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンリン酸塩等のアミン系還元剤の他、亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸アンモニウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸カリウム、チオグリコール酸ナトリウム、N−アセチル−L−システイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
還元剤の含有量は、本発明の所望の効果が高まるため、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0〜5質量%であり、特に好ましくは0〜2.5質量%である。
【0111】
上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
上記アニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;アルキルナフタレンスルホン酸;ラウリル硫酸等のアルキル硫酸エステル;ポリオキシエチレンラウリル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル;ナフタレンスルホン酸縮合物;リグニンスルホン酸等を挙げることができる。これらのアニオン性界面活性剤は、塩の形態で使用してもよい。
【0112】
上記ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0113】
上記界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0114】
上記界面活性剤の含有量は特に限定されないが、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、0〜1質量%が好ましく、0〜0.1質量%がより好ましい。
【0115】
なお、本発明の半導体表面処理用組成物の各成分を上記で記載した濃度範囲とする場合、その濃度範囲となるように各成分を直接配合してもよいし、上記濃度範囲よりも濃縮された状態の組成物を調製しておき、処理に使用する前に水系媒体を添加することで各成分の濃度が上記範囲となるように希釈してもよい。なお、上記濃縮状態の組成物は、溶媒以外の各成分の含有量の比率を保ったまま、溶媒を除去することによって、溶媒以外の各成分の濃度を上げることで調製できる。また、溶媒の添加量を予め少なくすることによって調製することもできる。
【0116】
上記pH調整剤としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、アンモニア等の塩基性物質が挙げられる。上記pH調整剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、上記pH調整剤を用いて、半導体表面処理用組成物のpHを後述する範囲に調整してもよい。
【0117】
<半導体表面処理用組成物のpH>
本発明の半導体表面処理用組成物の25℃におけるpHの値は、1〜12の範囲であることが好ましく、2〜10の範囲であることがより好ましく、2〜8.5の範囲であることが更に好ましく、2〜7の範囲であることが更に好ましく、2〜6の範囲であることが更に好ましく、3〜5.5の範囲であることが更に好ましく、3〜5の範囲であることが特に好ましい。
pHを上記範囲とすることによって、金属(特にタングステン)配線表面の腐食発生が特に抑制される。また、汚染もより効果的に低減・除去できる。さらに、研磨処理の速度も維持させやすくなる。
【0118】
一方、本発明の半導体表面処理用組成物は、25℃におけるpHの値が8〜10の範囲でも金属配線表面の腐食発生を抑制できる。後記の実施例に示すように、pHがこの範囲の場合、一般的にはポリエチレンイミン等を用いても腐食が発生しやすい(比較例11参照)。しかしながら、本発明の半導体表面処理用組成物においては、意外にも、pHが8〜10の範囲であっても、金属配線表面の腐食発生を充分に抑制できる。
なお、半導体表面処理用組成物のpHは、上記有機酸系キレート剤やpH調整剤等を混合することにより調整することができる。
【0119】
ここで、pHとは、水素イオン指数のことを指し、その値は、市販のpHメーター等を用いて測定することができるものである。
【0120】
<半導体表面処理用組成物の用途等>
そして、本発明の半導体表面処理用組成物は、後記実施例に示すとおり、金属配線等の金属を腐食させにくく、しかも研磨や洗浄等の処理に用いたときに半導体の表面から汚染を効果的に低減又は除去する効果を有する。また、研磨処理に用いた場合にその研磨速度を低下させにくい。
このような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、(A)成分が、金属配線等の金属表面に吸着することによって、金属の腐食が持続的且つ大幅に抑制され、このような(A)成分とともに(B)成分を組み合わせることによって、汚染を効果的に低減又は除去する効果に優れたものになると本発明者らは推察する。さらに、(A)成分はタングステンに特に吸着しやすいため、本発明の半導体表面処理用組成物は、タングステン含有金属配線を有する半導体の表面処理に適したものになったと推察する。
したがって、本発明の半導体表面処理用組成物は、ラッピング処理(粗研磨処理)、ポリシング処理(仕上げ研磨処理)、化学機械研磨処理(CMP処理)といった研磨処理用;エッチング処理、化学機械研磨処理後の洗浄処理、感光性樹脂の剥離処理、アッシングされたウエハ表面に残る感光性樹脂の灰分を除去するアッシング残渣洗浄処理といった洗浄又は剥離処理用;研磨処理と洗浄処理をともに行う平坦化処理用;上記のような洗浄処理後に洗い流すリンス処理用の組成物として有用である。また、これら処理は、半導体製造における一工程であるため、本発明の半導体表面処理用組成物は、半導体の製造方法においても有用である。
本発明の半導体表面処理用組成物は、研磨処理用及び/又は洗浄処理用の組成物として適している。特に、化学機械研磨処理用及び/又は化学機械研磨処理後の洗浄処理用の組成物として適しており、化学機械研磨処理後の洗浄処理用の組成物として殊更適している。
なお、本発明の半導体表面処理用組成物は、液状(スラリー状を含む)であることが好ましい。
【0121】
また、本発明の半導体表面処理用組成物は、半導体基板の金属(具体的には金属配線)を含む面の処理に適する。金属としては、例えば、タングステン、銅、コバルト、ルテニウム、チタン等が挙げられるが、本発明の半導体表面処理用組成物は、半導体基板のタングステンを含む面(例えば、タングステンを含む金属配線を含む面)の処理に特に適する。
また、半導体表面は、真空プロセスで形成された酸化シリコン膜のような絶縁膜を一部に有していてもよい。
【0122】
〔半導体表面処理方法〕
本発明の半導体表面処理方法は、上記で説明した本発明の半導体表面処理用組成物で半導体表面を処理することを特徴とするものである。
【0123】
半導体の表面処理の手法としては、本発明の半導体表面処理用組成物を半導体基板の金属(具体的には金属配線)を含む面に接触させ、その面を処理する手法が挙げられる。金属配線に用いられる金属としては、上記と同様に、タングステン、銅、コバルト、ルテニウム、チタン等が挙げられる。本発明の半導体表面処理方法は、タングステン含有半導体基板(具体的にいえば、半導体基板のタングステンを含む金属配線を含む面)の処理に特に適している。
【0124】
本方法における「処理」としては、上記と同様に、ラッピング処理(粗研磨処理)、ポリシング処理(仕上げ研磨処理)、化学機械研磨処理(CMP処理)といった研磨処理;エッチング処理、化学機械研磨処理後の洗浄処理、感光性樹脂の剥離処理、アッシングされたウエハ表面に残る感光性樹脂の灰分を除去するアッシング残渣洗浄処理といった洗浄又は剥離処理;研磨処理と洗浄処理をともに行う平坦化処理;上記のような洗浄処理後に洗い流すリンス処理が挙げられる。これら処理は、本発明の半導体表面処理用組成物を用いること以外は、常法と同様にして行えばよい。
【0125】
本発明の半導体表面処理方法の好適な具体例としては、以下の方法1〜2が挙げられる。
(方法1) 本発明の半導体表面処理用組成物を用いて半導体表面を研磨処理する研磨工程を含む、半導体表面の研磨処理方法。
(方法2) 本発明の半導体表面処理用組成物を用いて半導体表面を洗浄処理する洗浄工程を含む、半導体表面の洗浄処理方法。
【0126】
また、本発明の半導体表面処理用組成物を用いて半導体表面を研磨処理する研磨工程と、当該研磨工程の後に、本発明の半導体表面処理用組成物を用いて半導体表面を洗浄処理する洗浄工程を含む、半導体表面の平坦化処理方法も、本発明の半導体表面処理方法に包含される。なお、この方法は、半導体表面処理用組成物を用いる洗浄工程の前後に、超純水又は純水による洗浄を行ってもよい。
以下、この方法を利用した配線基板の作製プロセスの一具体例について、図面を用いながら詳細に説明する。
【0127】
(研磨工程)
図1は、本発明の半導体表面処理方法を利用した配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。かかる配線基板は、以下のプロセスを経ることにより形成される。
【0128】
図1(a)は、化学機械研磨(CMP)処理前の被処理体を模式的に示す断面図である。
図1(a)に示すように、被処理体100は、基体10を有する。基体10は、例えばシリコン基板とその上に形成された酸化シリコン膜から構成されていてもよい。さらに、基体10には、図示していないが、トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。
【0129】
被処理体100は、基体10の上に、配線用凹部20が設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の表面ならびに配線用凹部20の底部および内壁面を覆うように設けられたバリアメタル膜14と、配線用凹部20を充填し、かつバリアメタル膜14の上に形成された金属膜16とが順次積層されて構成される。
【0130】
絶縁膜12としては、例えば、真空プロセスで形成された酸化シリコン膜(例えば、PETEOS膜(Plasma Enhanced−TEOS膜)、HDP膜(High Density Plasma Enhanced−TEOS膜)、熱化学気相蒸着法により得られる酸化シリコン膜等)、FSG(Fluorine−doped silicate glass)と呼ばれる絶縁膜、ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、SiON(Silicon oxynitride)と呼ばれる絶縁膜、Siliconnitride等が挙げられる。
【0131】
バリアメタル膜14としては、例えば、タンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、およびこれらの化合物等が挙げられる。バリアメタル膜14は、これらの1種から形成されることが多いが、タンタルと窒化タンタルなど2種以上を併用することもできる。
【0132】
金属膜16は、図1(a)に示すように、配線用凹部20を完全に埋めることが必要となる。そのためには、通常化学蒸着法または電気めっき法により、10000〜15000オングストロームの金属膜を堆積させる。金属膜16の材料としては、タングステン、銅、コバルト、ルテニウム、チタンが挙げられるが、合金でもよい。
【0133】
次いで、図1(a)の被処理体100のうち、配線用凹部20に埋没された部分以外の金属膜16を、バリアメタル膜14が露出するまでCMPにより高速研磨する(第1研磨工程)。さらに、表面に露出したバリアメタル膜14をCMPにより研磨する(第2研磨工程)。このようにして、図1(b)に示すような配線基板200が得られる。本発明の半導体表面処理用組成物は、第1研磨工程に用いても第2研磨工程に用いてもよい。配線材料およびバリアメタル材料が表面に共存する配線基板を、本発明の半導体表面処理用組成物で研磨することによって、配線材料およびバリアメタル材料の腐食を抑制でき、且つ配線基板上の酸化膜や有機残渣を効率的に低減・除去することができる。
【0134】
(洗浄工程)
次いで、図1(b)に示す配線基板200の表面(被洗浄面)を、本発明の半導体表面処理用組成物を用いて洗浄する。このようにして配線材料およびバリアメタル材料が表面に共存する配線基板をCMP終了後に洗浄した場合も、配線材料およびバリアメタル材料の腐食を抑制でき、且つ配線基板上の酸化膜や有機残渣を効率的に低減・除去することができる。
【0135】
洗浄工程は、特に制限されないが、本発明の半導体表面処理用組成物を配線基板200に直接接触させる手法により行われる。半導体表面処理用組成物を配線基板200に直接接触させる方法としては、半導体表面処理用組成物を洗浄槽に満たして配線基板を浸漬させるディップ式;半導体表面処理用組成物をノズルから配線基板上に流下しながら配線基板を高速回転させるスピン式;配線基板に半導体表面処理用組成物を噴霧して洗浄するスプレー式等の方法が挙げられる。また、このような方法を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の配線基板を同時に洗浄するバッチ式洗浄装置、1枚の配線基板をホルダーに装着して洗浄する枚葉式洗浄装置等が挙げられる。
【0136】
本発明の半導体表面処理方法において、処理する際の本発明の半導体表面処理用組成物の温度は、通常室温とされるが、性能を損なわない範囲で加温してもよく、例えば40〜70℃程度に加温することができる。
【0137】
また、本発明の半導体表面処理用組成物を配線基板200に直接接触させる方法に加えて、物理力による洗浄方法を併用することも好ましい。これにより、配線基板200に付着したパーティクルによる汚染の除去性が向上し、洗浄時間を短縮することができる。物理力による洗浄方法としては、洗浄ブラシを使用したスクラブ洗浄や超音波洗浄が挙げられる。
【実施例】
【0138】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例で使用した原料の略称は、次のとおりである。
DAMA :ジメチルアミノエチルメタクリレート
MMA :メチルメタクリレート
nBMA :ノルマルブチルメタクリレート
EHMA :2−エチルヘキシルメタクリレート
【0139】
〔Mw及びMw/Mnの測定条件〕
各合成例で測定したMw及びMnは、下記仕様のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の測定値である。
装置 :GPC−104(昭和電工株式会社製)
カラム:LF−604を3本とKF−602を結合して用いた
移動相:THF
温度 :40℃
流量 :0.6mL/min.
【0140】
〔合成例1〜3 特定重合体の合成(1)〕
WO2017/104676の合成例1〜3と同様にして重合体を合成した。
すなわち、末端にエポキシ基を有し、DAMA、MMA、nBMA及びEHMA由来の繰り返し単位を有するランダム共重合体a−1、a−2、a−3を得た。これを用いて、ポリエチレンイミン側鎖に、DAMA、MMA、nBMA及びEHMA由来の繰り返し単位を有し、その一部が4級アンモニウム化された重合体を合成した。得られた重合体を、重合体(A−1)、(A−2)、(A−3)と称する。
【0141】
〔合成例4 特定重合体の合成(2)〕
WO2017/104676の合成例4と同様にして重合体を合成した。
すなわち、末端にエポキシ基を有し、DAMA、MMA、nBMA及びEHMA由来の繰り返し単位を有するランダム共重合体a−4を得た。これを用いて、フェニルビグアニド由来の部分構造と、DAMA、MMA、nBMA及びEHMA由来の繰り返し単位とを有し、その一部が4級アンモニウム化された重合体を合成した。得られた重合体を、重合体(A−4)と称する。
【0142】
〔合成例5 特定重合体の合成(3)〕
WO2017/104676の合成例5と同様にして重合体を合成した。
すなわち、末端にエポキシ基を有し、DAMA、MMA、nBMA及びEHMA由来の繰り返し単位を有するランダム共重合体a−5を得た。これを用いて、1−(o−トリル)ビグアニド由来の部分構造と、DAMA、MMA、nBMA及びEHMA由来の繰り返し単位とを有し、その一部が4級アンモニウム化された重合体を合成した。得られた重合体を、重合体(A−5)と称する。
【0143】
合成例1〜5で得た重合体a−1〜重合体a−5における各単量体の共重合割合(質量%)、及び単量体全量の合計100質量部に対するエピクロロヒドリンの含有割合(質量部)を表1に示す。
また、重合体a−1〜重合体a−5のMw、Mw/Mnについてもあわせて表1に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
合成例1〜5で使用したポリマー鎖を与える重合体(重合体a−1〜重合体a−5)、特定部分構造を与える化合物、及びベンジルクロライドの使用割合を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
〔実施例1〜17、比較例1〜12 半導体表面処理用組成物の調製(1)〕
ポリエチレン製容器に、表3〜4に記載の成分(pH調整剤以外)を投入し、pHが表3〜4に記載の値になるようにpH調整剤として硝酸又は水酸化カリウムを加え、15分間撹拌することで、実施例1〜17および比較例1〜12の半導体表面処理用組成物を得た。
【0148】
〔実施例18〜30、比較例13〜21 半導体表面処理用組成物の調製(2)〕
ポリエチレン製容器に、表5〜6に記載の成分(pH調整剤以外)を投入し、pHが表5〜6に記載の値になるようにpH調整剤として硝酸又は水酸化カリウムを加え、15分間撹拌することで、実施例18〜30および比較例13〜21の半導体表面処理用組成物を得た。
【0149】
〔試験例1 研磨速度の測定〕
実施例18〜30および比較例13〜21の半導体表面処理用組成物を化学機械研磨用スラリーとして用いて、下記(1)に示した研磨速度測定用基板(評価用の8インチウエハ)を化学機械研磨装置「EPO112」(株式会社荏原製作所製)にて下記(2)の条件で化学機械研磨し、下記(3)の方法で研磨速度を算出した。研磨速度の測定値が大きいほど、研磨性能に優れるといえる。結果を表5、6に示す。
【0150】
(1)研磨速度測定用基板
・膜厚2,000オングストロームのタングステン(W)膜が積層された8インチ熱酸化膜付きシリコン基板。
・膜厚10,000オングストロームのPETEOS膜が積層された8インチシリコン基板。
【0151】
(2)研磨条件
・ヘッド回転数:70rpm
・ヘッド荷重:200gf/cm2
・テーブル回転数:70rpm
・半導体表面処理用組成物の供給速度:200mL/分
・研磨時間:60秒
【0152】
(3)研磨速度の算出方法
タングステン膜については、電気伝導式膜厚測定器(KLAテンコール社製、形式「オムニマップRS75」)を用いて、研磨処理後の膜厚を測定し、化学機械研磨により減少した膜厚および研磨時間から研磨速度を算出した。
PETEOS膜については、光干渉式膜厚測定器(ナノメトリクス・ジャパン社製、型式「Nanospec6100」)を用いて、研磨処理後の膜厚を測定し、化学機械研磨により減少した膜厚および研磨時間から研磨速度を算出した。
【0153】
〔試験例2 エッチングレートの算出〕
コバルト(Co)、タングステン(W)又はPETEOSを、スパッタ法で表面に成膜した8インチのシリコンウエハを1×3cmにカットし金属ウエハ試験片とした。これら試験片について、NPS株式会社製、金属膜厚計「RG−5」を用いて予め膜厚を測定した。ポリエチレン容器に入れた半導体表面処理用組成物100mLを60℃に保ち、実施例1〜17、比較例1〜12の組成物にはコバルト又はタングステンを成膜した金属ウエハ試験片を、実施例18〜30、比較例13〜21の組成物にはタングステン又はPETEOSを成膜した金属ウエハ試験片を、それぞれ60分間浸漬処理した。その後、流水で10秒間洗浄し乾燥した。本浸漬処理後の金属ウエハ試験片を再度膜厚測定し、減少した膜厚量を浸漬時間の60分間で割ることでエッチングレート(ER,単位:Å/min.)を算出した。結果を表3〜6に示す。
【0154】
〔試験例3 腐食観察の評価〕
コバルト(Co)又はタングステン(W)をスパッタ法で表面に成膜した8インチのシリコンウエハを1×1cmにカットし金属ウエハ試験片とした。これら試験片について、走査型電子顕微鏡により倍率50000倍にて表面を観察しておいた。実施例1〜17、比較例1〜12の半導体表面処理用組成物50mLをポリエチレン容器に入れて25℃に保ち、金属ウエハ試験片(1×1cm)を60分間浸漬し、流水で10秒間洗浄し乾燥させた後、走査型電子顕微鏡により倍率50000倍にて表面の腐食を観察し、以下の基準で評価した。結果を表3、4に示す。
(腐食観察の評価基準)
○:浸漬前と比較して腐食による表面の形状変化が認められなかった。
△:浸漬前と比較して腐食している箇所と腐食していない箇所とが混在していた。
×:浸漬前と比較して全面が腐食していた。
【0155】
〔試験例4−1 欠陥評価(1)〕
化学機械研磨後の洗浄処理を、実施例1〜17および比較例1〜12の半導体表面処理用組成物を用いて行い、この処理に関して欠陥評価を行った。具体的な手順は次のとおりである。
まず、コロイダルシリカ水分散体PL−3(扶桑化学工業株式会社製)をシリカに換算して1質量%に相当する量になるようにポリエチレン製容器に投入し、全構成成分の合計が100質量%となるようにイオン交換水、およびpH調整剤としてマレイン酸を加え、pHを3に調整した。さらに、酸化剤として35質量%過酸化水素水を、過酸化水素に換算して1質量%となるように加えて15分間撹拌し、化学機械研磨用組成物Xを得た。
コバルト(Co)又はタングステン(W)をスパッタ法で表面に成膜した8インチのシリコンウエハを3×3cmにカットし金属ウエハ試験片とした。この金属ウエハ試験片を被研磨体として、以下の研磨条件で化学機械研磨処理を1分間実施した。
(研磨条件)
研磨装置:ラップマスターSFT社製「LM−15C」
研磨パッド:ロデール・ニッタ株式会社製「IC1000/K−Groove」
定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:90rpm
ヘッド押し付け圧:3psi
化学機械研磨用組成物Xの供給速度:100mL/分
【0156】
続いて、イオン交換水の供給速度が500mL/分となる洗浄条件で、研磨パッド上での水洗浄処理を10秒間実施した。本方法で化学機械研磨処理された金属ウエハ試験片を、Bruker Corporation製の走査型原子間力顕微鏡(AFM)であるDimension FastScanを用いてフレームサイズ10μmにて5か所観察し、5か所の算術平均粗さの平均値が0.1nm以下の平坦な表面であると確認できた金属ウエハ試験片のみを選別し、次の欠陥評価に用いた。実施例1〜17、比較例1〜12の半導体表面処理用組成物50mLを25℃に保温し、これに上記で選別した試験片を15分間浸漬処理し、流水で10秒間洗浄し乾燥させた後、AFMを用いてフレームサイズ10μmにて5か所観察した。得られた5枚の画像について画像解析ソフトを用いて解析し、2.0nm以上の高さをもつ付着物の合計を欠陥数とした。評価基準は次の通りである。欠陥数とその評価結果を表3、4に示す。
【0157】
(欠陥数の評価基準(1))
○:欠陥数100個未満
△:欠陥数100個以上500個未満
×:欠陥数500個以上
【0158】
〔試験例4−2 欠陥評価(2)〕
実施例18〜30および比較例13〜21の半導体表面処理用組成物を化学機械研磨用組成物として用いて化学機械研磨処理を行い、この処理に関して欠陥評価を行った。具体的な手順は次のとおりである。
タングステン(W)をスパッタ法で表面に成膜した8インチのシリコンウエハを3×3cmにカットし金属ウエハ試験片とした。この金属ウエハ試験片を被研磨体として、以下の研磨条件で、化学機械研磨処理を1分間実施した。
【0159】
(研磨条件)
研磨装置:ラップマスターSFT社製「LM−15C」
研磨パッド:ロデール・ニッタ株式会社製「IC1000/K−Groove」
定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:90rpm
ヘッド押し付け圧:3psi
化学機械研磨用組成物の供給速度:100mL/分
【0160】
続いて、イオン交換水の供給速度が500mL/分となる洗浄条件で、研磨パッド上での水洗浄処理を10秒間実施した。本方法で化学機械研磨処理された金属ウエハ試験片を、Bruker Corporation製の走査型原子間力顕微鏡(AFM)であるDimension FastScanを用いてフレームサイズ10μmにて5か所観察した。得られた5枚の画像について画像解析ソフトを用いて解析し、10nm以上の高さをもつ付着物の合計を欠陥数とした。評価基準は次の通りである。欠陥数とその評価結果を表5、6に示す。
【0161】
(欠陥数の評価基準(2))
○:欠陥数30個未満
△:欠陥数30個以上150個未満
×:欠陥数150個以上
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】
【0165】
【表6】
【0166】
表3に示すとおり、化学機械研磨後の洗浄処理に、(A)成分と(B)成分を組み合わせた半導体表面処理用組成物(実施例1〜17)を用いることによって、タングステン、コバルトのいずれにおいても欠陥評価結果が良好となり、汚染を効果的に低減又は除去できることがわかった。また、ER測定、SEMによる腐食評価の結果から、金属を腐食させにくいことがわかった。さらに、タングステン配線を含む半導体基板の洗浄処理に適する傾向があった。
【0167】
表4の比較例1〜5は、(B)成分が不足する半導体表面処理用組成物である。表4に示すとおり、化学機械研磨後の洗浄処理に比較例1〜5の組成物を用いた場合は、タングステン、コバルトのいずれにおいても欠陥評価結果が不良となり、汚染を効果的に低減又は除去できなかった。
表4の比較例6〜9は、(A)成分が不足する半導体表面処理用組成物である。表4に示すとおり、比較例6〜9の組成物は、タングステンのERが大であり(10Å/min超)、タングステンを腐食させやすいものであった。また、コバルトの欠陥評価結果が不良となった。
表4の比較例10〜12は、(A)成分の代わりにポリエチレンイミンを用いた半導体表面処理用組成物である。表4に示すとおり、このうち比較例10、12の組成物は、タングステン、コバルトのいずれにおいても欠陥評価結果が不良となり、汚染を効果的に低減又は除去できなかった。比較例11の組成物は、タングステンのERが大であり(10Å/min超)、タングステンを腐食させやすいものであった。また、比較例10〜12いずれについても、コバルトの欠陥評価結果が不良となった。
また、この表4からは、比較例10の組成物において、(B)成分を加えた場合(比較例12)には、各評価の改善はほとんどみられないということもわかる。
【0168】
表5に示すとおり、(A)成分と(B)成分を組み合わせた半導体表面処理用組成物(実施例18〜30)で化学機械研磨処理を行った場合は、欠陥評価結果が良好となり、汚染を効果的に低減又は除去できることがわかった。また、ER測定の結果から、金属を腐食させにくいことがわかった。
また、表3、5から、(A)成分と(B)成分との組み合わせは、研磨、洗浄といった半導体表面処理に広く有用であることがわかる。
【0169】
表6の比較例13〜17は、(B)成分が不足する半導体表面処理用組成物である。表6に示すとおり、比較例13〜17の組成物で化学機械研磨処理を行った場合は、欠陥評価結果が不良となり、汚染を効果的に低減又は除去できなかった。
表6の比較例18〜20は、(A)成分が不足する半導体表面処理用組成物である。表6に示すとおり、比較例18〜20の組成物は、タングステンのERが大であり(10Å/min超)、タングステンを腐食させやすいものであった。
表6の比較例21は、(A)成分に変えてポリエチレンイミンを(B)成分と組み合わせた半導体表面処理用組成物である。表6に示すとおり、比較例21の組成物で化学機械研磨処理を行った場合は、欠陥評価結果が不良となり、汚染を効果的に低減又は除去できなかった。
【符号の説明】
【0170】
10 基体
12 絶縁膜
14 バリアメタル膜
16 金属膜
20 配線用凹部
100 被処理体
200 配線基板
図1