(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記回転角度に基づいて前記駆動回路を制御する場合、前記回転速度と前記目標速度との偏差に基づいたPI制御を行い、前記ブレーキ通電中は前記PI制御を中止し、前記ブレーキ通電の終了時に前記PI制御を再開する請求項1又は2に記載のワイパ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のワイパ制御装置は、ワイパブレードが反転位置に到達した後も、実際の払拭速度(ワイパ速度)を目標速度に近付けるためのPI(Proportional Integral)制御を継続するので、オーバーランの抑制が困難になり、目標速度とワイパ速度との偏差が増大する。増大した偏差を解消するには、ワイパモータに印加する電圧を示すPI Dutyを増大させることを要し、ワイパ速度が急加速する、又はハンチングが発生する等のおそれがあるという問題点があった。
【0007】
図7は、下反転位置にワイパブレードが到達した後もPI制御を行った場合の、ワイパ位置、目標速度110、ワイパ速度の実速度112及びPI Dutyの対応関係を示した概略図である。目標速度110は、時間t
01でワイパブレードがオーバーランすることを前提としていないので、反転後のワイパ速度を早急に加速するように時間t
01から時間t
02までの区間114で0deg/s以上の所定値を示す。しかしながら、
図7に示した場合は、ワイパブレードがオーバーランしているので、実速度112は所定値を示す目標速度110との偏差が大きくなる。PI制御は、当該偏差を解消するため、
図7に示したように実速度112で急加速116を行い、その結果、ハンチング118等が生じ得る。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、発生したオーバーランを抑制できるワイパ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のワイパ制御装置は、ワイパブレードを払拭動作させるワイパモータを駆動する駆動回路と、前記ワイパモータの出力軸の回転角度を検出する回転角度検出部と、前記ワイパモータの回転速度が、前記回転角度検出部で検出された回転角度によって定まる前記ワイパブレードの払拭位置に対応する目標速度になるように、前記回転角度に基づいて前記駆動回路を制御すると共に、前記ワイパブレードが前記回転角度によって定まる前記ワイパブレードの反転位置に到達し、かつ前記ワイパモータの回転速度が閾値を超えている場合に、前記ワイパモータにブレーキ通電が行なわれるように前記駆動回路を制御する制御部と、を含んでいる。
【0010】
このワイパ制御装置によれば、ワイパブレードのオーバーラン時にブレーキ通電を行うことにより、発生したオーバーランを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載のワイパ制御装置は、請求項1に記載のワイパ制御装置において、記制御部は、前記ブレーキ通電を行う場合、前記ワイパモータの回転速度が前記閾値以下になるまで前記ブレーキ通電を継続する。
【0012】
このワイパ制御装置によれば、ワイパブレードのオーバーラン時に、払拭速度が閾値以下になるまでブレーキ通電を行うことにより、発生したオーバーランを抑制する。
【0013】
請求項3に記載のワイパ制御装置は、請求項1又は2に記載のワイパ制御装置において、前記制御部は、前記回転角度に基づいて前記駆動回路を制御する場合、前記回転速度と前記目標速度との偏差に基づいたPI制御を行い、前記ブレーキ通電中は前記PI制御を中止し、前記ブレーキ通電の終了時に前記PI制御を再開する。
【0014】
このワイパ制御装置によれば、ワイパブレードのオーバーラン時に、ブレーキ通電を行うと共に、PI制御を中止し、ブレーキ通電の終了時にPI制御を再開することにより、反転後の払拭速度(ワイパ速度)の急加速を抑制し、払拭動作のハンチングを防止できる。
【0015】
請求項4に記載のワイパ制御装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイパ制御装置において、前記制御部は、前記ワイパモータの回転速度が0になるまで前記ブレーキ通電を継続する。
【0016】
このワイパ制御装置によれば、ワイパブレードのオーバーラン時に、払拭速度が0になるまでブレーキ通電を行うことにより、発生したオーバーランを抑制する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10を含むワイパ装置100の構成を示す概略図である。ワイパ装置100は、例えば、乗用自動車等の車両に備えられたウィンドシールドガラス12を払拭するためのものであり、一対のワイパ14、16と、ワイパモータ18と、リンク機構20とを備えている。
【0019】
ワイパ14、16は、それぞれワイパアーム24、26とワイパブレード28、30とにより構成されている。ワイパアーム24、26の基端部は、後述するピボット軸42、44に各々固定されており、ワイパブレード28、30は、ワイパアーム24、26の先端部に各々固定されている。
【0020】
ワイパ14、16は、ワイパアーム24、26の動作に伴ってワイパブレード28、30がウィンドシールドガラス12上を往復動作し、ワイパブレード28、30がウィンドシールドガラス12を払拭する。
【0021】
ワイパモータ18は、主にウォームギアで構成された減速機構52を介して、正逆回転可能な出力軸32を有している。リンク機構20は、クランクアーム34と、第1リンクロッド36と、一対のピボットレバー38、40と、一対のピボット軸42、44と、第2リンクロッド46とを備えている。
【0022】
クランクアーム34の一端側は、出力軸32に固定されており、クランクアーム34の他端側は、第1リンクロッド36の一端側に動作可能に連結されている。また、第1リンクロッド36の他端側は、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端寄りの箇所に動作可能に連結されており、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端及びピボットレバー40におけるピボットレバー38の当該端に対応する端には、第2リンクロッド46の両端がそれぞれ動作可能に連結されている。
【0023】
また、ピボット軸42、44は、車体に設けられた図示しないピボットホルダによって動作可能に支持されており、ピボットレバー38、40におけるピボット軸42、44を有する端は、ピボット軸42、44を介してワイパアーム24、26が各々固定されている。
【0024】
本実施の形態に係るワイパ装置100は、出力軸32が所定の範囲の回転角θ1で正逆回転されると、この出力軸32の回転力がリンク機構20を介してワイパアーム24、26に伝達され、このワイパアーム24、26の往復動作に伴ってワイパブレード28、30がウィンドシールドガラス12上における下反転位置P2と上反転位置P1との間で往復動作をする。θ1の値は、ワイパ装置100のリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として110°である。
【0025】
本実施の形態に係るワイパ装置100では、
図1に示されるように、ワイパブレード28、30が格納位置P3に位置された場合には、クランクアーム34と第1リンクロッド36とが直線状をなす構成とされている。
【0026】
格納位置P3は、下反転位置P2の下方に設けられている。ワイパブレード28、30が下反転位置P2にある状態から、出力軸32がθ2回転することにより、ワイパブレード28、30は格納位置P3に動作する。θ2の値は、ワイパ装置100のリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として10°とする。
【0027】
なお、回転角θ2が「0」の場合は、下反転位置P2と格納位置P3は一致し、ワイパブレード28、30は、下反転位置P2で停止し、格納される。
【0028】
ワイパモータ18には、ワイパモータ18の回転を制御するためのワイパモータ制御回路22が接続されている。本実施の形態に係るワイパモータ制御回路22は、ワイパモータ18の回路基板に設けられたサーミスタから出力された信号に基づいて、回路基板の温度を検出する温度検出回路90とマイクロコンピュータ58とを含む。
【0029】
ワイパモータ制御回路22のマイクロコンピュータ58は、ワイパモータ18の出力軸32の回転速度及び回転角を検知する回転角度センサ54の検知結果に基づいてワイパモータ18の回転速度を制御する。回転角度センサ54は、ワイパモータ18の減速機構52内に設けられ、出力軸32に連動して回転するセンサマグネットの磁界(磁力)を電流に変換して検出するMR(磁気抵抗)センサ等の絶対角センサである。
【0030】
本実施の形態に係るワイパモータ18は、前述のように減速機構52を有しているので、出力軸32の回転速度及び回転角は、ワイパモータ本体の回転速度及び回転角と同一ではない。しかしながら、本実施の形態では、ワイパモータ本体と減速機構52は一体不可分に構成されているので、以下、出力軸32の回転速度及び回転角を、ワイパモータ18の回転速度及び回転角とみなすものとする。
【0031】
マイクロコンピュータ58は、回転角度センサ54が検出した出力軸32の回転角からワイパブレード28、30のウィンドシールドガラス12上での位置を算出可能で当該位置に応じて出力軸32の回転速度が変化するように駆動回路56を制御する。駆動回路56は、ワイパモータ制御回路22の制御に基づいてワイパモータ18に印加する電圧を生成する回路であり、電源である車両のバッテリの電力をスイッチングしてワイパモータ18に印加する電圧を生成する。
【0032】
また、ワイパモータ制御回路22のマイクロコンピュータ58には、車両のエンジンの制御等を行う主ECU(Electronic Control Unit)92を介してワイパスイッチ50が接続されている。ワイパスイッチ50は、車両のバッテリからワイパモータ18に供給される電力をオン又はオフするスイッチである。ワイパスイッチ50は、ワイパブレード28、30を、低速で動作させる低速作動モード選択位置(LOW)、高速で動作させる高速作動モード選択位置(HIGH)、一定周期で間欠的に動作させる間欠作動モード選択位置(INT)、停止モード選択位置(OFF)に切替可能である。また、各モードの選択位置に応じてワイパモータ18を回転させるための指令信号を主ECU92と信号入力回路62とを介してマイクロコンピュータ58に出力する。例えば、ワイパスイッチ50が、高速作動モード選択位置ではワイパモータ18を高速で回転させ、低速作動モード選択位置ではワイパモータ18を低速で回転させ、間欠作動モード選択位置ではワイパモータ18を間欠的に回転させる。
【0033】
ワイパスイッチ50から各モードの選択位置に応じて出力された信号が主ECU92と信号入力回路62とを介してマイクロコンピュータ58に入力されると、マイクロコンピュータ58はワイパスイッチ50からの指令信号に対応する制御を行う。具体的には、マイクロコンピュータ58は、ワイパスイッチ50からの指令信号に基づいて、所望する往復払拭周期でワイパブレード28、30が作動するように、回転角度センサ54により、出力軸32の回転信号を読み取ってワイパモータ18に印加する電圧を制御する。
【0034】
図2は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10の構成の一例の概略を示すブロック図である。また、
図2示したワイパモータ18は、一例として、ブラシ付きDCモータである。
【0035】
図2に示したワイパ装置100は、ワイパモータ18の巻線の端子に印加する電圧を生成する駆動回路56と、駆動回路56を構成するスイッチング素子のオン及びオフを制御するマイクロコンピュータ58を有するワイパモータ制御回路22とを含んでいる。マイクロコンピュータ58には、ダイオード68を介してバッテリ80の電力が供給されると共に、供給される電力の電圧は、ダイオード68とマイクロコンピュータ58との間に設けられた電圧検出回路60によって検知され、検知結果はマイクロコンピュータ58に出力される。マイクロコンピュータ58は、電圧が所定の下限値以上かつ所定の上限値以下の場合に、駆動回路56を制御してワイパモータ18の巻線に印加する電圧を生成させる。
【0036】
また、ダイオード68とマイクロコンピュータ58との間に一端が接続され、他端(−)が接地された電解コンデンサC1が設けられている。電解コンデンサC1は、マイクロコンピュータ58の電源を安定化するためのコンデンサである。電解コンデンサC1は、例えば、サージ等の突発的な高電圧を蓄え、接地領域に放電することにより、マイクロコンピュータ58を保護する。
【0037】
また、マイクロコンピュータ58には、駆動回路56を介してワイパモータ18の巻線に流れる電流(モータ電流)を検出する電流検出部76が接続されている。電流検出部76は、抵抗値が0.2mΩ〜数Ω程度のシャント抵抗の両端の電位差を増幅してシャント抵抗の電流に比例する電圧値を信号として出力する。マイクロコンピュータ58は、電流検出部76が出力した信号に基づいてモータ電流の大小を算出し、モータ電流が所定の上限値以上になった場合には、回路がショート又はワイパモータ18が過負荷になったと状態であると判定する。
【0038】
マイクロコンピュータ58には、ワイパスイッチ50から主ECU92及び信号入力回路62を各々介してワイパモータ18の回転速度を指示するための信号が入力される。
【0039】
マイクロコンピュータ58には、出力軸32の回転に応じて変化するセンサマグネット70の磁界を検知する回転角度センサ54が接続されている。マイクロコンピュータ58は、回転角度センサ54が出力した信号に基づいて、出力軸の回転角度を算出することにより、ワイパブレード28、30のウィンドシールドガラス12上での位置を特定する。
【0040】
さらに、マイクロコンピュータ58は、メモリ48に記憶されているワイパブレード28、30の位置(又は当該位置に対応する出力軸32の回転角度)に応じて規定されたワイパモータ18の回転速度(目標速度)のデータを参照して、回転角度センサ54が検出した出力軸32の回転角度の変化に基づいて算出したワイパモータ18の回転速度が、特定したワイパブレード28、30の位置に応じた回転速度になるように駆動回路56を制御する。
【0041】
駆動回路56は、
図2に示すように、スイッチング素子にN型のFET(電界効果トランジスタ)であるFET1、FET2、FET3、FET4を用いている。FET1及びFET2は、ドレインがノイズ防止コイル66を介してバッテリ80に各々接続されており、ソースがFET3及びFET4のドレインに各々接続されている。また、FET3及びFET4のソースは接地されている。
【0042】
また、FET1のソース及びFET3のドレインは、ワイパモータ18の巻線の一端に接続されており、FET2のソース及びFET4のドレインは、ワイパモータ18の巻線の他端に接続されている。
【0043】
FET2及びFET3の各々のゲートにハイレベル信号が入力されることにより、FET2及びFET3がオンになり、ワイパモータ18には例えばワイパブレード28、30を車室側から見て時計回りに動作させるCW電流72が流れる。さらに、FET2及びFET3の一方をオン制御しているとき、他方をPWM(Pulse Width Modulation)制御により、小刻みにオンオフ制御することにより、CW電流72の電圧を変調できる。
【0044】
また、FET1及びFET4の各々のゲートにハイレベル信号が入力されることにより、FET1及びFET4がオンになり、ワイパモータ18には例えばワイパブレード28、30を車室側から見て反時計回りに動作させるCCW電流74が流れる。さらに、FET1及びFET4の一方をオン制御しているとき、他方をPWM制御により、小刻みにオンオフ制御することにより、CCW電流74の電圧を変調できる。
【0045】
駆動回路56の回路基板には温度検知のためのサーミスタRTと抵抗R1とで構成された分圧回路が実装されている。サーミスタRTは、温度に応じて抵抗値が変化する素子である。サーミスタRTの抵抗値が変化すると、サーミスタRTと抵抗R1とで構成された分圧回路によって分圧された電圧が変化する。マイクロコンピュータ58は、当該分圧回路で分圧された電圧は、温度検出回路90でマイクロコンピュータ58が処理可能なデジタル信号に変換されてマイクロコンピュータ58に入力される。マイクロコンピュータ58は、サーミスタRTと抵抗R1とで構成された分圧回路で分圧された電圧の変化から駆動回路56が実装されている回路基板の温度を算出する。本実施の形態では、サーミスタRTが検知した温度が所定の上限値以下の場合に、駆動回路56による電圧の生成を行う。
【0046】
サーミスタRTは、ワイパモータ18の負荷に応じて温度が変化し、かつ発熱が顕著な箇所であれば、駆動回路56が実装されている回路基板以外の箇所に設けてもよい。例えば、可能であれば、ワイパモータ18のハウジング内部に実装してもよい。
【0047】
本実施の形態では、電源であるバッテリ80と駆動回路56との間にはノイズ防止コイル66が設けられると共に、駆動回路56に対して並列になるように電解コンデンサC2が設けられている。ノイズ防止コイル66は、駆動回路56のスイッチングによって発生するノイズを抑制するための素子である。
【0048】
電解コンデンサC2は、駆動回路56から生じるノイズを緩和すると共に、サージ等の突発的な高電圧を蓄え、接地領域に放電することにより、駆動回路56に過大な電流が入力されるのを防止するための素子である。
【0049】
図3(A)は、CW電流72を生成して、ワイパブレード28、30を下反転位置P2から上反転位置P1に払拭動作させるOPEN作動時の通電パターンを、
図3(B)は、CCW電流74を生成して、ワイパブレード28、30を上反転位置P1から下反転位置P2に払拭動作させるCLOSE作動時の通電パターンを、
図3(C)は、ワイパモータ18の回転を停止させる場合の通電パターンを、各々示した説明図である。
【0050】
図3(A)に示したように、FET2をオン制御しているとき、FET3をPWM制御することにより、ワイパモータ18の回転速度を制御する。また、FET3がオフになった際には、FET1がオンになる。FET2はオンなので、ワイパモータ18には、いわゆるブレーキ通電が行われる。かかるブレーキ通電は、FET2がオンで、FET3がオフになった際のワイパモータ18の惰性回転を防止するためのものである。本実施の形態では、FET2がオンの状態で、FET1とFET3とが交互にオンとなる通電パターンを相補駆動と称する。
【0051】
図3(B)に示したように、FET1をオン制御しているとき、FET4をPWM制御することにより、ワイパモータ18の回転速度を制御する。また、FET4がオフになった際には、FET2がオンになる。FET1はオンなので、ワイパモータ18には、
図3(A)の場合と同様に惰性回転防止のブレーキ通電が行われる。
図3(B)に示した場合は、FET2とFET4とが交互にオンとなる相補駆動となる。
【0052】
図3(C)に示したように、ワイパモータ18の回転を完全に制動するために、FET1及びFET2をオンにして、FET3及びFET4をオフにするブレーキ通電が行われる。
図3(C)に示したブレーキ通電は、一例として、反転位置でワイパブレード28、30がオーバーランした際に行われる。
【0053】
図4は、本実施の形態で、ワイパブレード28、30が下反転位置P2を越えてオーバーランした場合の、ワイパ位置、目標速度98、ワイパ速度の実速度102及びPI Dutyの対応関係を示した概略図である。
図4に示した場合では、オーバーランか否かの判定は、ワイパブレード28、30が下反転位置P2に到達した時間t
1で、ワイパ速度の実速度102が閾値108を超えているか否かで行う。実速度102は、回転角度センサ54が検出した出力軸32の回転角度の変化からマイクロコンピュータ58が算出する。の実速度102は、出力時32の回転速度に相関するので、ワイパモータ18の回転速度とみなしてもよい。
【0054】
図4に示した場合は、閾値108が0deg/sよりも小さい、すなわち負の値で設定されているので、実速度102の絶対値が閾値108の絶対値以下であればオーバーランではないと判定し、実速度102の絶対値が閾値108の絶対値を超えているのであればオーバーランであると判定する。
【0055】
目標速度98は、時間t
1で0deg/sになり、時間t
2から時間t
3まで0deg/s以上の所定値を示す。時間t
2から時間t
3までの所定値は、下反転位置P2で停止したワイパブレード28、30が下反転位置P2で反転した際、ワイパ速度を早急に加速するためのものである。
【0056】
図4に示した場合では、時間t
1でワイパブレード28、30がオーバーランした場合は、目標速度98と実速度102との偏差を解消するようにPI Dutyを決定するPI制御を中止すると共に、実速度102が0deg/sになる、すなわちワイパモータ18の回転が完全に停止する時間t
2までブレーキ通電を行うことにより、オーバーランを抑制する。さらに、時間t
2からPI制御を再開し、時間t
1までとは逆方向の通電(逆通電)を行う。時間t
2からのPI制御は、一例として時間t
3で目標速度98と実速度102との偏差が解消して、実速度102が目標速度98に追従して変化するようにPI Dutyを決定する。その結果、ワイパブレード28、30のオーバーランが発生しても、実速度102は滑らかに変化し、ワイパ速度の急加速又はハンチングを抑制できる。
【0057】
図5は、本実施の形態で、ワイパブレード28、30が下反転位置P2を越えてオーバーランした場合の、ワイパ位置、目標速度104、ワイパ速度の実速度102及びPI Dutyの対応関係の他の例を示した概略図である。
図5に示した場合では、オーバーランか否かの判定は、
図4の場合と同様に、ワイパブレード28、30が下反転位置P2に到達した時間t
10で、ワイパ速度の実速度106が閾値108を超えているか否かで行う。実速度106は、
図4の実速度102と同様に、回転角度センサ54が検出した出力軸32の回転角度の変化からマイクロコンピュータ58が算出する。
【0058】
図5に示した場合も、閾値108が負の値で設定されているので、実速度106の絶対値が閾値108の絶対値以下であればオーバーランではないと判定し、実速度106の絶対値が閾値108の絶対値を超えているのであればオーバーランであると判定する。
【0059】
目標速度104は、時間t
10で0deg/sになり、時間t
11から時間t
12まで0deg/s以上の所定値を示す。時間t
11から時間t
12までの所定値は、
図4の場合と同様に下反転位置P2で停止したワイパブレード28、30が下反転位置P2で反転した際、ワイパ速度を早急に加速するためのものである。
【0060】
図5に示した場合では、時間t
10でワイパブレード28、30がオーバーランした場合は、目標速度104と実速度102との偏差を解消するようにPI Dutyを決定するPI制御を中止すると共に、実速度102が閾値108まで減速するように時間t
11までブレーキ通電を行うことにより、オーバーランを抑制する。さらに、時間t
11からPI制御を再開し、時間t
10までの通電に対する逆通電を行う。時間t
11からのPI制御は、一例として時間t
12で目標速度104と実速度102との偏差が解消して、実速度102が目標速度104に追従して変化するようにPI Dutyを決定する。その結果、ワイパブレード28、30のオーバーランが発生しても、実速度102は滑らかに変化し、ワイパ速度の急加速又はハンチングを抑制できる。
【0061】
図5の場合では、ワイパモータ18の回転が完全に停止するまでブレーキ通電を行わないので、ブレーキ通電の時間が
図4の場合よりも短くなる。その結果、
図4の場合よりも早期にPI制御を再開できる。
【0062】
図6は、本実施の形態に係るワイパ制御装置10における通電処理の一例を示したフローチャートである。ステップ600では、ワイパブレード28、30を上反転位置P1から下反転位置P2に払拭動作させるClose作動を行う。
【0063】
ステップ602では、ワイパブレード28、30が下反転位置P2に到達したか否かを判定し、ワイパブレード28、30が下反転位置P2に到達した場合には手順をステップ604に移行し、ワイパブレード28、30が下反転位置P2に到達していない場合には手順をステップ600に移行してClose作動を継続する。
【0064】
ステップ604では、ワイパ速度の実速度102、106が所定の閾値108以下であるか否かを判定する。
図4、5に示したように、閾値108が0deg/sよりも小さい、すなわち負の値で設定されている場合には、ステップ603では、実速度102、106の絶対値が閾値108の絶対値以下になったか否かを判定する。
【0065】
ステップ604で、実速度102、106が閾値108以下の場合は、ステップ606で、ワイパブレード28、30を下反転位置P2で反転させて、上反転位置P1まで払拭動作させるOpen作動を行って処理を終了する。
【0066】
ステップ604で、実速度102、106が閾値108を超えている場合は、ステップ608でブレーキ通電を行なう。ブレーキ通電は、
図4の場合のように、実速度102が0deg/sになるまで継続してもよいし、
図5の場合のように、実速度106が閾値108になるまででもよい。ステップ608のブレーキ通電後は、手順をステップ604に移行し、実速度102、106が閾値108以下であるか否かを判定する。
【0067】
図6では、一例として、ワイパブレード28、30が下反転位置P2でオーバーランする場合を示した。上反転位置P1でオーバーランする場合は、
図6のステップ600でOpen作動を行い、ステップ602でワイパブレード28、30が上反転位置P1に到達したか否かを判定し、ステップ606でClose作動をするようにすればよい。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態では、ワイパブレード28、30が反転位置でオーバーランした場合、いったんPI制御を中止すると共に、ブレーキ通電を行ってワイパ速度を減速させることにより、発生したオーバーランを抑制する。その結果、反転後のワイパブレード28、30のワイパ速度の急加速、又はワイパブレード28、30のハンチングを抑制できる。
【0069】
オーバーランで回転するワイパモータ18には回生電流が発生するので、かかる状態でワイパブレード28、30を反転させるために、ワイパモータ18に逆通電を行うと、ワイパモータ18の負荷が大きくなるが、予めブレーキ通電でオーバーランによるワイパモータ19の回転を制動しているのであれば、その限りではない。ブレーキ通電時にも回転するワイパモータ18には回生電流が発生するが、かかる状態で逆通電をする場合よりもワイパモータ18の負荷は小さいので、ワイパモータ18の損傷を防止できる。又は、ワイパモータ18の定格が、ブレーキ通電を行わない場合より小さくてもよいので、ワイパ装置の小型化、低コスト化に寄与することができる。