(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962277
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20211025BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20211025BHJP
H01R 12/51 20110101ALI20211025BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610A
H01R12/51
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-109970(P2018-109970)
(22)【出願日】2018年6月8日
(65)【公開番号】特開2019-213419(P2019-213419A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2020年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻屋 慶直
(72)【発明者】
【氏名】猪上 昌朋
(72)【発明者】
【氏名】若林 弘
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−231004(JP,A)
【文献】
特開2013−233914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H01R 12/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタが装着された基板と、
開口部が形成され、前記基板が収容されるケースと、
前記開口部に装着され、前記コネクタが挿通される挿通孔が貫通形成されたカバーと、を備え、
前記カバーは、前記コネクタの両側の位置に、前記コネクタの先端よりも前方に突出する突出部を備え、
前記挿通孔の孔縁は、互いに対向する一対の短径部と前記短径部よりも長く、互いに対向する一対の長径部とを有し、
前記突出部は、前記短径部側に設けられており、
前記カバーは、前記基板が収容された前記ケースに対して前記挿通孔に前記コネクタが挿通される方向に組み付けられて前記ケースに係止される被係止部を備え、
前記突出部は、前記挿通孔の孔縁に沿って延びる壁部と、前記壁部の延びる方向に対して交差する方向に延びるリブと、を備える、電気接続箱。
【請求項2】
前記リブは、前記短径部に沿う方向に延出された延出部を有する請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記カバーには、前記長径部に沿って補強壁が設けられており、前記補強壁は、前記コネクタの先端よりも前方に突出しない高さとされている請求項1または請求項2に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、電気接続箱に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部と接続可能なコネクタを備えた電気接続箱が知られている。特許文献1の電気接続箱は、開口部を有するケースと、ケースの開口部に組み付けられるカバーとを備え、カバーに形成された貫通孔からコネクタが外部に突出している。また、ケース内にはコネクタが表面実装されたプリント基板が収容されており、コネクタの端子は、プリント基板に半田付けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−95930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気接続箱のコネクタがカバーの貫通孔から突出する構成では、コネクタが外部からの応力を受けやすいため、基板に半田付けされたコネクタの端子に外部からの応力が及び、基板と端子との間の接続不良等の不具合が懸念される。また、電気接続箱の輸送時には、コネクタ内への埃等の進入を防止するために、コネクタが下側となる向きで電気接続箱を輸送することが好ましいが、この場合には、電気接続箱の輸送時の振動の影響をコネクタが受けることが懸念される。
【0005】
本明細書に記載された技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、外部からの応力をコネクタが受けることによる不具合を抑制することが可能な電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載された電気接続箱は、コネクタが装着された基板と、開口部が形成され、前記基板が収容されるケースと、前記開口部に装着され、前記コネクタが挿通される挿通孔が貫通形成されたカバーと、を備え、前記カバーは、前記コネクタの両側の位置に、前記コネクタの先端よりも前方に突出する突出部を備える。
【0007】
本構成によれば、カバーは、コネクタの両側の位置に、コネクタの先端よりも前方に突出する突出部を備えるため、この突出部により、コネクタに対する外部の応力の影響を抑制することが可能になる。よって、外部からの応力をコネクタが受けることによる不具合を抑制することが可能になる。
【0008】
本明細書に記載された技術の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記挿通孔の孔縁は、互いに対向する一対の短径部と前記短径部よりも長く、互いに対向する一対の長径部とを有し、前記突出部は、前記短径部側に設けられている。
このようにすれば、長径部側に突出部を設ける構成と比較して、相手側コネクタとの嵌合の際に突出部が障害となることを抑制することができる。
【0009】
前記カバーは、前記基板が収容された前記ケースに対して前記挿通孔に前記コネクタが挿通される方向に組み付けられて前記ケースに係止される被係止部を備え、前記突出部は、前記挿通孔の孔縁に沿って延びる壁部と、前記壁部の延びる方向に対して交差する方向に延びるリブと、を備える。
このようにすれば、カバーをケースに組み付ける際に作業者が押さえる突出部の面積をリブの分だけ大きくすることができるため、ケースに対するカバーの組み付け作業性を向上させることができる。
【0010】
前記リブは、前記短径部に沿う方向に延出された延出部を有する。
このようにすれば、突出部を形成できる面積の少ない短径部側について、突出部の面積を大きくすることができるため、カバーの組み付け作業を容易に行うことが可能になる。
【0011】
前記カバーには、前記長径部に沿って補強壁が設けられており、前記補強壁は、前記コネクタの先端よりも前方に突出しない高さとされている。
このようにすれば、カバーにおける長径部側については、補強壁の高さをコネクタよりも低くすることにより、カバーの長径部側を補強しつつ、補強壁が相手側コネクタとの嵌合の際の障害となることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に記載された技術によれば、外部からの応力をコネクタが受けることによる不具合を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本実施形態について、
図1〜
図8を参照しつつ説明する。電気接続箱10は、例えば電気自動車やハイブリット自動車等の車両のバッテリ等の電源とランプやモータ等からなる負荷との間の電力供給経路に配される。電気接続箱10は任意の向きで配置することができるが、以下では、
図1のX方向を前方、Y方向を左方、Z方向を上方として説明する。
【0015】
電気接続箱10は、
図5に示すように、コネクタ13が装着された基板11と、基板11が収容されるケース20と、ケース20に装着されるカバー30とを備える。基板11は、例えば長方形状であって、絶縁板に銅箔等からなる導電路がプリント配線技術により形成されたプリント基板とされており、基板11の下面に電子部品19が実装されている。電子部品19は、例えば、FET(Field Effect Transistor)、コイル、コンデンサ、IC(Integrated Circuit)等とすることができる。コネクタ13は、合成樹脂製のハウジング14と、コネクタ端子18とを備える。ハウジング14は、相手側コネクタCNが嵌合可能な角筒状のフード部15と、フード部15の後方に連なり、コネクタ端子18を固定する端子固定部16とを備える。フード部15の内壁には、相手側コネクタCNとの嵌合方向を案内可能な突条15Aが前後方向(嵌合方向)に延びている。端子固定部16の下部には、基板11側のコネクタ端子18を支持する板状の支持部16Aが後方側に延びている。
【0016】
コネクタ端子18は、銅、銅合金等からなる棒状であって、クランク状に屈曲されている。コネクタ端子18の一方の端部は、フード部15内に突出し、相手側コネクタCNの端子と接続され、他方の端部は、基板11の表面の導電路に半田付けされる。コネクタ13は、例えば金型内にコネクタ端子18を配し、金型内に樹脂を注入するインサート成型により形成することができるが、これに限られず、例えばコネクタ端子をハウジングの圧入孔に圧入するようにしてもよい。
【0017】
ケース20は、合成樹脂製であって、
図6,
図7に示すように、扁平な角筒状とされており、一対の対向壁21A,21Cと、一対の対向壁21A,21C間を連ね、対向壁21A,21Cよりも面積の小さい一対の側壁21B,21Dとを備え、前方側(一端側)に開口部22が形成され、後方側(他端側)に閉鎖された閉鎖壁21Fが形成されている。開口部22は、コネクタ13が装着された基板11を挿通可能な長方形状とされている。側壁21B,21Dの外面の前端部(カバー30側の端部)には、ロック凸部24が外方に突出している。ロック凸部24は、外方に段差状に突出し、前方側(カバー30側)に向けて傾斜状に突出寸法が小さくなる形状とされている。また、側壁21B,21Dの前端部におけるロック凸部24の両側は矩形状に切り欠かれている。
図5に示すように、基板11は、ケース20内において、ケース20の対向壁21A,21Cに対して、板面が平行となる姿勢で配されている。
【0018】
カバー30は、合成樹脂製であって、
図6,
図7に示すように、挿通孔32が貫通形成されたカバー本体31と、カバー本体31の両端部に設けられ、ケース20の一対のロック凸部24に係止する一対の被係止部41とを備える。カバー本体31は、ケース20の開口部22を覆う平板状であって、前方に突出する左右一対の突出部34A,34Bと、一対の突出部34A,34Bを連ねる上下一対の補強壁39A,39Bとが挿通孔32を包囲するように設けられている。
【0019】
挿通孔32は、
図2,
図4に示すように、長方形状であって、上下方向に延び、互いに対向する一対の短径部32Aと、左右方向に延び、互いに対向する一対の長径部32Bとを備える。長径部32Bは、短径部32Aよりも長くなっている。
【0020】
各突出部34A,34Bは、作業者が指で押さえることが可能な面積で形成され、挿通孔32の孔縁に沿って延びる壁部35と、壁部35の延びる方向に対して直交する方向(交差する方向)に突出する複数のリブ36A〜36Fとを備える。壁部35と複数のリブ36A〜36Fとは、先端面(前端面)が面一(高さ寸法が同一)に形成されている。複数のリブ36A〜36Fは、互いに平行に延びており、最下端のリブ36Fは、壁部35の下方側にL字状に延出された延出部37に設けられている。
【0021】
各補強壁39A,39Bは、長径部32Bに沿って一定の高さで直線状に延びており、
図5に示すように、コネクタ13の先端(前端)よりも低い突出寸法とされている(補強壁39A,39Bの先端がコネクタ13の先端よりも後方に配置されている)。カバー30における補強壁39Bの下方の平板状の部分31Bは、補強壁39Aの上方の平板状の部分31Aよりも上下方向の寸法(及び面積)が大きくされているため、突出部34A,34Bにおける延出部37を延出可能な面積が確保されている。
【0022】
各被係止部41は、
図1に示すように、被係止孔41Aが貫通形成された枠状であって、被係止孔41Aの孔縁にロック凸部24が係止されることでカバー30の離脱が規制される。この被係止部41は、撓み変形可能であって、カバー30を装着する際には、被係止部41がロック凸部24に当接して弾性拡開し、ロック凸部24が被係止孔41A内に至ると、被係止部41が弾性復元してロック凸部24に係止されるように構成されている。
【0023】
電気接続箱10の組み付けについて説明する。
基板11の表面にコネクタ13を例えばリフロー半田付けにより実装する。そして、
図7に示すように、ケース20の開口部22から基板11をケース20内に収容する。次に、作業者は、カバー30の挿通孔32にコネクタ13を挿通しつつ、突出部34A,34Bの平坦な先端面を指で下方に押圧してカバー30をケース20に組み付けると、被係止部41が弾性変形した後、被係止孔41Aの孔縁がロック凸部24に係止され、電気接続箱10が形成される。電気接続箱10は、輸送時には、
図8に示すように、カバー30を下端部に配し、例えば輸送用ケースの底面部50に載置して輸送する。このとき、突出部34A,34Bの平坦面が底面部50の平坦面に載置されることにより、電気接続箱10が起立した姿勢で保持されるとともに、コネクタ13の先端は、底面部50に対して隙間を空けた位置に配されているため、輸送時の振動等の影響をコネクタ13が受けにくいようになっている。
【0024】
本実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
電気接続箱10は、コネクタ13が装着された基板11と、開口部22が形成され、基板11が収容されるケース20と、開口部22に装着され、コネクタ13が挿通される挿通孔32が貫通形成されたカバー30と、を備え、カバー30は、コネクタ13の両側の位置に、コネクタ13の先端よりも前方に突出する突出部34A,34Bを備える。
本実施形態によれば、カバー30は、コネクタ13に対する両側にコネクタ13の先端よりも前方に突出する突出部34A,34Bを備えるため、この突出部34A,34Bにより、コネクタ13に対する外部の応力の影響を抑制することが可能になる。よって、外部からの応力をコネクタ13が受けることによる不具合を抑制することが可能になる。
【0025】
また、挿通孔32の孔縁は、互いに対向する一対の短径部32Aと短径部32Aよりも長く、互いに対向する一対の長径部32Bとを有する長方形状であって、突出部34A,34Bは、短径部32A側に設けられている。
このようにすれば、長径部32B側に突出部34A,34Bを設ける構成と比較して、相手側コネクタCNとの嵌合の際に突出部34A,34Bが障害となることを抑制することができる。
【0026】
また、カバー30は、基板11が収容されたケース20に対して挿通孔32にコネクタ13が挿通される方向に組み付けられてケース20に係止される被係止部41を備え、突出部34A,34Bは、挿通孔32の孔縁に沿って延びる壁部35と、壁部35の延びる方向に対して交差する方向に延びるリブ36A〜36Fと、を備える。
このようにすれば、カバー30をケース20に組み付ける際に作業者が指で押さえる突出部34A,34Bの面積をリブ36A〜36Fの分だけ大きくすることができるため、ケース20に対するカバー30の組み付け作業性を向上させることができる。
【0027】
また、リブ36A〜36Fは、短径部32Aに沿う方向に延出された延出部37を有する。
このようにすれば、突出部34A,34Bを形成できる面積の少ない短径部32A側について、突出部34A,34Bの面積を大きくすることができるため、カバー30の組み付け作業を容易に行うことが可能になる。
【0028】
また、カバー30には、長径部32Bに沿って補強壁39A,39Bが設けられており、補強壁39A,39Bは、コネクタ13の先端よりも前方に突出しない高さとされている。
このようにすれば、カバー30における長径部32B側については、補強壁39A,39Bの高さをコネクタ13よりも低くすることにより、カバー30の長径部32B側を補強しつつ、補強壁39A,39Bが相手側コネクタCNとの嵌合の際の障害となることを抑制することができる。
【0029】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
(1)突出部34A,34Bは、カバー30における短径部32A側に設けたが、これに限られず、カバー30の長径部32B側に設けてもよい。また、挿通孔32の孔縁の全周に突出部を設けてもよい。
【0030】
(2)突出部34A,34Bには延出部37を設けたが、延出部37を設けないようにしてもよい。
【0031】
(3)リブ36A〜36Fは、壁部35の延びる方向に対して直交する方向に延びる構成としたが、これに限られず、壁部35の延びる方向に対して直交以外の方向(交差する方向)に延びる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10: 電気接続箱
11: 基板
13: コネクタ
20: ケース
22: 開口部
24: ロック凸部
30: カバー
32: 挿通孔
32A: 短径部
32B: 長径部
34A,34B: 突出部
35: 壁部
36A〜36F: リブ
37: 延出部
39A,39B: 補強壁
41: 被係止部
41A: 被係止孔