特許第6962280号(P6962280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962280車両制御方法、車両制御システム、及び車両制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962280
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】車両制御方法、車両制御システム、及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20211025BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20211025BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G08G1/09 V
   B60R11/04
   G08G1/005
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-120956(P2018-120956)
(22)【出願日】2018年6月26日
(65)【公開番号】特開2020-3936(P2020-3936A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】宇野 慶一
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−149767(JP,A)
【文献】 特開2015−079369(JP,A)
【文献】 特開2018−062197(JP,A)
【文献】 特開2004−295686(JP,A)
【文献】 特開2005−349898(JP,A)
【文献】 特開2016−099993(JP,A)
【文献】 特開2017−199123(JP,A)
【文献】 特開2011−150405(JP,A)
【文献】 特開2016−062414(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/056382(WO,A1)
【文献】 特開2014−199546(JP,A)
【文献】 特開2016−107817(JP,A)
【文献】 特開2001−061205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
B60W 10/00 − 60/00
B60K 6/20 − 6/547
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 58/40
B60R 9/00 − 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ(50,100,200)によって実施され、車両(ADV)の走行を制御する車両制御方法であって、
少なくとも一つのプロセッサ(51,61,261)上において、
前記車両に搭乗する乗客(P)のそれぞれについての属性情報を取得し(S101)、
前記属性情報に基づき各前記乗客の転倒リスクを個別に判定し(S102)、
前記転倒リスクが高いと判定された高リスク者(Pr)を客室(C)内にて追跡し、当該高リスク者の前記客室内での状態を個別に把握し(S111)、
個々の前記高リスク者の状態のうち姿勢として、立ち状態にある前記高リスク者のモデル化により推定される重心変化から、判定される動的な転倒リスク情報に基づき、前記車両の走行を制限する(S112)、車両制御方法。
【請求項2】
前記車両の走行制限を、前記高リスク者の客席への着座まで継続する請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項3】
前記高リスク者がいる場合に、前記車両に設置された複数の客席の中から前記乗客の着座していない空席を抽出し、前記高リスク者を前記空席に誘導する(S105)請求項1又は2に記載の車両制御方法。
【請求項4】
前記空席が無い場合に、予め設定された優先席を解放するように当該優先席に着座した前記乗客を誘導し(S108)、
前記優先席が解放された場合には、前記高リスク者を解放された前記優先席に誘導する(S110)請求項3に記載の車両制御方法。
【請求項5】
特定の停止箇所にて前記車両が停車するために減速する前の期間にて、客席から立ち上がる前記高リスク者を検出し(S122)、
立ち上がった前記高リスク者に着座を促す(S123)請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両制御方法。
【請求項6】
前記車両の発進前において、立ち状態の前記高リスク者の有無を把握し、
立ち状態の前記高リスク者がいる場合には、立ち状態の前記高リスク者がいない場合よりも、発進後の前記車両の加速度を低く設定する請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両制御方法。
【請求項7】
前記車両の停車前において、立ち状態の前記高リスク者の有無を把握し、
立ち状態の前記高リスク者がいる場合には、立ち状態の前記高リスク者がいない場合よりも、停車のための制動開始のタイミングを早める(S125)請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両制御方法。
【請求項8】
自動走行する前記車両において用いられる制御方法であって、
少なくとも前記車両の走行中に、前記乗客の転倒を検出し(S142)、
前記乗客の転倒が検出された場合には、前記車両の外部に前記客室内の状況を通知する(S143)請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両制御方法。
【請求項9】
車両(ADV)の走行を制御する車両制御システムであって、
前記車両に搭乗する乗客(P)のそれぞれについての属性情報を取得する属性情報取得部(54)と、
前記属性情報に基づき各前記乗客の転倒リスクを個別に判定するリスク判定部(57,257)と、
前記転倒リスクが高いと判定された高リスク者(Pr)を客室(C)内にて追跡し、当該高リスク者の前記客室内の状態を個別に把握する状態把握部(72)と、
個々の前記高リスク者の状態のうち姿勢として、立ち状態にある前記高リスク者のモデル化により推定される重心変化から、判定される動的な転倒リスク情報に基づき、前記車両の走行を制限する走行制限部(77)と、を備える車両制御システム。
【請求項10】
車両(ADV)に搭載され、前記車両の走行を制御する車両制御装置であって、
前記車両に搭乗する乗客(P)についての転倒リスクを個別に判定した判定結果を取得するリスク情報取得部(71)と、
前記転倒リスクが高いと判定された高リスク者(Pr)を客室(C)内にて追跡し、当該高リスク者の前記客室内の状態を個別に把握する状態把握部(72)と、
個々の前記高リスク者の状態のうち姿勢として、立ち状態にある前記高リスク者のモデル化により推定される重心変化から、判定される動的な転倒リスク情報に基づき、前記車両の走行を制限する走行制限部(77)と、を備える車両制御装置。
【請求項11】
コンピュータ(50,100,200)によって実施され、車両(ADV)に搭乗する乗客(P)を見守るための方法であって、
少なくとも一つのプロセッサ(51,61,261)上において、
前記乗客のそれぞれについての属性情報を取得し(S101)、
前記属性情報に基づき各前記乗客の転倒リスクを個別に判定し(S102)、
前記転倒リスクが高いと判定された高リスク者(Pr)を客室(C)内にて追跡し、当該高リスク者の前記客室内での状態を個別に把握し(S111)、
個々の前記高リスク者の状態のうち姿勢として、立ち状態にある前記高リスク者のモデル化により推定される重心変化から、動的な転倒リスク情報を判定する、方法。
【請求項12】
車両(ADV)に搭乗する乗客(P)を見守るためのシステムであって、
前記乗客のそれぞれについての属性情報を取得する属性情報取得部(54)と、
前記属性情報に基づき各前記乗客の転倒リスクを個別に判定するリスク判定部(57,257)と、
前記転倒リスクが高いと判定された高リスク者(Pr)を客室(C)内にて追跡し、当該高リスク者の前記客室内の状態を個別に把握する状態把握部(72)と、
個々の前記高リスク者の状態のうち姿勢として、立ち状態にある前記高リスク者のモデル化により推定される重心変化から、動的な転倒リスク情報を判定する機能部(76)と、を備えるシステム。
【請求項13】
車両(ADV)に搭載され、前記車両に搭乗する乗客(P)見守るための装置であって、
前記乗客の転倒リスクを個別に判定した判定結果を取得するリスク情報取得部(71)と、
前記転倒リスクが高いと判定された高リスク者(Pr)を客室(C)内にて追跡し、当該高リスク者の前記客室内の状態を個別に把握する状態把握部(72)と、
個々の前記高リスク者の状態のうち姿勢として、立ち状態にある前記高リスク者のモデル化により推定される重心変化から、動的な転倒リスク情報を判定する機能部(76)と、を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、車両の走行を制御する制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、車両の乗客の状態情報と車両の走行状態とに基づき、乗客の転倒の危険度を判定し、危険度に応じてブレーキ装置及び加速制御装置を制御する車内監視装置が開示されている。例えば、高齢者の乗車率が高いうえに、乗車定員を超えた状態では、急カーブを走行するようなシーンにおいて、危険度が高いと判定され、加速度を小さくするような車両制御が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−62414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車内監視装置では、高齢者の乗車率及び乗車定員といった乗客全体の情報が把握される一方で、個々の高齢者等についての客室内での状態は、把握されない。故に、実際の転倒リスクが低いにもかかわらず、過度な走行制限が実施される事態、又は実際には転倒リスクが高いにもかかわらず、走行制限が十分ではない事態等が想定され得た。
【0005】
本開示は、転倒リスクの高い乗客の転倒を回避しつつ、円滑な運行を実現可能な車両制御方法、車両制御システム、及び車両制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、開示された一つの態様は、コンピュータ(50,100,200)によって実施され、車両(ADV)の走行を制御する車両制御方法であって、少なくとも一つのプロセッサ(51,61,261)上において、車両に搭乗する乗客(P)のそれぞれについての属性情報を取得し(S101)、属性情報に基づき各乗客の転倒リスクを個別に判定し(S102)、転倒リスクが高いと判定された高リスク者(Pr)を客室(C)内にて追跡し、当該高リスク者の客室内での状態を個別に把握し(S111)、個々の高リスク者の状態のうち姿勢として、立ち状態にある高リスク者のモデル化により推定される重心変化から、判定される動的な転倒リスク情報に基づき、車両の走行を制限する(S112)、車両制御方法とされる。
【0007】
また開示された一つの態様は、車両(ADV)の走行を制御する車両制御システムであって、車両に搭乗する乗客(P)のそれぞれについての属性情報を取得する属性情報取得部(54)と、属性情報に基づき各乗客の転倒リスクを個別に判定するリスク判定部(57,257)と、転倒リスクが高いと判定された高リスク者(Pr)を客室(C)内にて追跡し、当該高リスク者の客室内の状態を個別に把握する状態把握部(72)と、個々の高リスク者の状態のうち姿勢として、立ち状態にある高リスク者のモデル化により推定される重心変化から、姿勢から判定される動的な転倒リスク情報に基づき、車両の走行を制限する走行制限部(77)と、を備える車両制御システムとされる。
【0008】
また開示された一つの態様は、車両(ADV)に搭載され、車両の走行を制御する車両制御装置であって、車両に搭乗する乗客(P)についての転倒リスクを個別に判定した判定結果を取得するリスク情報取得部(71)と、転倒リスクが高いと判定された高リスク者(Pr)を客室(C)内にて追跡し、当該高リスク者の客室内の状態を個別に把握する状態把握部(72)と、個々の高リスク者の状態のうち姿勢として、立ち状態にある高リスク者のモデル化により推定される重心変化から、判定される動的な転倒リスク情報に基づき、車両の走行を制限する走行制限部(77)と、を備える車両制御装置とされる。
【0009】
これらの態様では、車両に搭乗する各乗客の属性情報に基づき、各乗客の転倒リスクが判定される。そして、転倒リスクの高い高リスク者は、客室内での状態を個別に把握される。故に、車両の走行制限は、乗車中の高リスク者における実際の転倒リスクに応じて、適切に制御され得る。以上によれば、転倒リスクの高い乗客の転倒を回避しつつ、円滑な運行が実現される。
【0010】
尚、上記括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第一実施形態による客室監視ユニットを含むシステムの全体像を示すブロック図である。
図2】高リスク者を空席に誘導するシーンを例示する図である。
図3】転倒リスクを判定する方法の一例を示す図である。
図4】乗客認証ユニット及び客室監視ユニットにて実施される乗車発進処理の詳細を示すフローチャートである。
図5】客室監視ユニットにて実施される減速停車処理の詳細を示すフローチャートである。
図6】客室監視ユニットにて実施される緊急対応処理の詳細を示すフローチャートである。
図7】第二実施形態において、乗客の見守りに関連するシステムの全体像を示すブロック図である。
図8】変形例1によるシステムの全体像を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
【0013】
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態による車両制御装置の機能は、図1に示す客室監視ユニット100によって実現されている。客室監視ユニット100は、車両ADVに複数搭載された車載コンピュータのうちの一つである。図1及び図2に示す車両ADVは、運転者による運転操作がない状態で自律走行可能な自動運転バスであり、車外の通信ネットワークNWと通信可能なコネクテッドカーである。車両ADVには、例えば所定の定員(数名〜数十名程度)まで乗客Pを搭乗させることが可能な客室Cが設けられている。客室Cには、乗客Pを着座させる多数の座席が客席として設置されている。
【0014】
車両ADVには、自律走行を実現するための構成として、車外センサ21、自動運転制御ユニット20、走行制御ユニット30及び自動運転インターフェースユニット40等が搭載されている。加えて車両ADVには、客室Cに搭乗する乗客Pのための構成として、車内カメラ81、マイク82、カードリーダ84、モニタ86、スピーカ87、車外通信器45及び乗客認証ユニット50等が客室監視ユニット100と共に搭載されている。
【0015】
車外センサ21は、自律走行に必要な情報を取得する構成である。車外センサ21には、例えばカメラユニット、ライダユニット及びミリ波レーダユニット等に加えて、地図データベースと組み合わされたGNSS(Global Navigation Satellite System)受信器等が含まれている。カメラユニット、ライダユニット及びミリ波レーダユニットは、歩行者及び他車両等の移動物体、並びに交通信号、道路標識及び区画線等の静止物体を検出する。GNSS受信器は、車両ADVの現在位置を特定するための情報として、複数の人工衛星から送信された測位信号を受信する。
【0016】
自動運転制御ユニット20は、自動運転インターフェースユニット40と電気的に接続されている。自動運転制御ユニット20は、車両ADVの状態を示す状態情報を、自動運転インターフェースユニット40から取得する。自動運転制御ユニット20は、プロセッサ、RAM、メモリ装置及び入出力インターフェースを有する制御回路を主体に構成された車載コンピュータである。自動運転制御ユニット20は、メモリ装置に記憶された自律走行プログラムをプロセッサによって実行し、位置推定部24、環境認識部25、ルート生成部26及び自律走行制御部27等の機能部を実装する。
【0017】
位置推定部24は、車外センサ21から取得する測位信号及び検出情報等に基づき、車両ADVの現在位置を高精度に推定する。環境認識部25は、位置推定部24にて特定された位置情報、位置情報に基づき地図データベースから取得する地図データ、及びカメラユニット等の検出情報を組み合わせて、車両ADVの周囲の走行環境、及び当該周囲の障害物等を認識する。環境認識部25は、車両ADVの周囲の認識結果に基づき、車両ADVの周囲の走行環境を再現した仮想空間を生成する。
【0018】
ルート生成部26は、環境認識部25によって認識された走行環境、及び自動運転インターフェースユニット40から取得する車両ADVの状態情報に基づき、車両ADVを自律走行させるための走行計画を生成する。自律走行制御部27は、ルート生成部26によって生成された走行計画に基づき、走行計画に従った走行を実現させる駆動、制動及び操舵の各制御量を演算する。自律走行制御部27は、各制御量を指示する制御コマンドを生成し、自動運転インターフェースユニット40へ向けて逐次出力する。
【0019】
走行制御ユニット30は、車両ADVに搭載された車載センサ群及び車載アクチュエータ群と直接的又は間接的に電気接続されている。車載センサ群は、車両ADVの状態を検出する複数のセンサである。車載センサ群には、例えば車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等が含まれている。車載アクチュエータ群は、車両ADVの加減速制御及び操作制御等を実行する。車載アクチュエータ群には、例えば、駆動用及び回生用のモータジェネレータ駆動用モータ、ブレーキアクチュエータ、並びにステアリングアクチュエータ等が含まれている。
【0020】
走行制御ユニット30は、プロセッサ、RAM、メモリ装置及び入出力インターフェースを有する制御回路を主体に構成された車載コンピュータである。走行制御ユニット30は、自動運転インターフェースユニット40と電気的に接続されている。走行制御ユニット30は、車載センサ群の出力に基づく車両ADVの状態情報を、自動運転インターフェースユニット40に逐次提供する。走行制御ユニット30は、駆動、制動及び操舵等の制御指令を自動運転制御ユニット20から取得する。走行制御ユニット30は、取得した制御指令に基づき、車載アクチュエータ群を作動させ、走行計画に基づく自動走行を実施する。
【0021】
自動運転インターフェースユニット40は、プロセッサ、RAM、メモリ装置及び入出力インターフェースを有する制御回路を主体に構成された車載コンピュータである。自動運転インターフェースユニット40は、自動運転制御ユニット20及び走行制御ユニット30の間に介在し、車両ADVの自律走行を統合的に管理する。自動運転インターフェースユニット40は、走行制御ユニット30から取得する車両ADVの状態情報を自動運転制御ユニット20に提供すると共に、自動運転制御ユニット20から取得する制御コマンドに基づいて、走行制御ユニット30の制御指令を出力する。
【0022】
自動運転インターフェースユニット40は、客室監視ユニット100及び車外通信器45と電気的に接続されている。自動運転インターフェースユニット40は、客室Cに搭乗する乗客Pの状況を反映した走行制限指令を、客室監視ユニット100から取得する。加えて自動運転インターフェースユニット40は、車外通信器45を通じて管理センタ92(後述する)からも走行制限指令を取得する。自動運転インターフェースユニット40は、これらの走行制限指令に基づき、自動運転制御ユニット20から取得する制御コマンドに対して、走行制御ユニット30へ出力する制御指令を調整する。
【0023】
車内カメラ81及びマイク82は、客室Cにおける乗客Pの状況を把握するためのセンサであって、例えば客室Cの天井に複数組設置されている。車内カメラ81は、客室C及び乗客Pを撮影し、生成した客室映像を乗客認証ユニット50及び客室監視ユニット100へ向けて逐次出力する。車内カメラ81は、広角レンズと組み合わされており、客室内に死角ができない配置で設置されている。車内カメラ81は、可視光域の光に加えて、近赤外線域の光を検出可能な構成であってもよく、又はレーザスキャナ等と組み合わされていてもよい。マイク82は、客室Cの音を検出した客室音声を、客室監視ユニット100へ向けて逐次出力する。
【0024】
カードリーダ84は、例えば客室Cの出入口付近に設置されている。カードリーダ84の設置場所は、客室内であってもよく、車体の外部であってもよい。カードリーダ84は、交通系のICカード13及び当該カード機能を有する携帯端末11との間で、近距離無線通信(Near Field Communication)可能なデバイスである。カードリーダ84へのICカード13又は携帯端末11の提示が確実に実施されるよう、乗客Pが客室Cに搭乗するタイミングに合わせて、「カードを読み取り機に当てて下さい」等の音声メッセージが、スピーカ87によって再生される。さらに、読み取りが完了すると、「読み取りました。ありがとうございます。」等の音声メッセージが再生される。
【0025】
カードリーダ84は、ICカード13及び携帯端末11から固有の識別情報(以下、「ID」)を受信する。加えてカードリーダ84は、ICカード13及び携帯端末11に記憶された乗客Pの登録データを受信可能である(図3参照)。カードリーダ84は、受信したID及び登録データを乗客認証ユニット50に提供する。
【0026】
モニタ86及びスピーカ87は、客室内に設置され、客室Cの乗客Pに情報を提示する。モニタ86は、例えば液晶ディスプレイ等であり、広告、ニュース、車両ADVの運行情報、注意喚起情報等を画面に表示する。スピーカ87は、乗客Pへ向けた音声メッセージを客室内に再生する。
【0027】
車外通信器45は、車外の通信ネットワークNWと無線通信可能である。通信ネットワークNWには、クラウドサーバ90等に構築された決済システム91、多数の車両ADVの運行を管理する管理センタ92、及び病院などの救急機関のシステム(以下、「救急センタ99」)等が接続されている。管理センタ92には、運行管理コンピュータ93及びオペレータ端末94等が設置されている。車外通信器45は、決済システム91、管理センタ92及び救急センタ99との間で情報を送受信する。
【0028】
乗客認証ユニット50は、車両ADVへの乗車の際に乗客Pの個人認証を行う機能と、各乗客Pの特性を判断する機能とを有する車載コンピュータである。乗客認証ユニット50は、プロセッサ51、RAM52、メモリ装置53及び入出力インターフェースを有する制御回路を主体に構成されている。プロセッサ51は、RAM52と結合された演算処理のためのハードウェアであって、種々のプログラムを実行可能である。メモリ装置53は、不揮発性の記憶媒体を含む構成であって、プロセッサ51によって実行される種々のプログラムを格納している。メモリ装置53に格納されたプログラムには、乗客Pの認証及び特性判断を乗客認証ユニット50に実施させる認証プログラムが少なくとも含まれている。プロセッサ51による認証プログラムの実行により、乗客認証ユニット50には、図1及び図3に示す属性情報取得部54、料金収受部55、特性保管データベース56及びリスク判定部57等の機能部が実装される。
【0029】
属性情報取得部54は、カードリーダ84によって読み取られたID及び登録データを取得する。携帯端末11又はICカード13から取得可能な登録データは、例えば所持者の氏名、住所、年齢、性別、及びチャージ金額(残高)等である。属性情報取得部54は、IDと紐付けられた乗客Pの登録データを、クラウドサーバ90から取得可能である。クラウドサーバ90から取得可能な登録データは、例えば生活体力の低下の有無、治療中の病気の種別、妊娠の有無、障がいの有無、及びこれらの情報の開示可否等である。これらの登録データは、携帯端末11又はICカード13に予め記憶されていてもよい。属性情報取得部54は、登録データのうちで転倒リスクに関連する複数の項目を、車両ADVに搭乗する乗客Pそれぞれについての属性情報として取得する。
【0030】
属性情報取得部54は、別の方法で属性情報を取得可能であってもよい。例えば属性情報取得部54は、車内カメラ81による客室映像又は車外センサ21のカメラユニットによる前方映像を解析し、画像認識によって属性情報を取得してもよい。客室映像及び前方映像からは、年齢、性別、身体特性、動きのスムーズさ等の属性情報が取得可能である。
【0031】
また別の方法として、属性情報取得部54は、過去の乗車時に発生した不安全行動及び転倒の実績を属性情報として取得してもよい。加えて属性情報取得部54は、他の交通機関の乗車時に発生した不安全行動及び転倒の実績を、属性情報として取得してもよい。これらの属性情報は、例えばIDと紐付けられた状態でクラウドサーバ90にアップロードされ、以後の乗車時に繰り返し取得されてもよく、各車両ADVの特性保管データベース56にIDと紐付けられた状態で保存されて、繰り返し利用されてもよい。
【0032】
料金収受部55は、認証キー及びIDをクラウドサーバ90上の決済システム91に送信し、車両ADV(モビリティサービス)の利用料金について、リアルタイムでの決済を実現させる。
【0033】
特性保管データベース56は、転倒リスクの判定に用いるデータ(以下、「転倒リスクデータ」)を少なくとも保管している。転倒リスクデータは、属性情報として取得可能な各項目の内容を、リスク数値に換算するテーブル(又はマップ等)である。特性保管データベース56には、乗客Pの年齢、生活体力の低下、治療中の病気の有無、妊娠の有無、障がいの有無等を、それぞれリスク数値に換算するテーブルが記憶されている。
【0034】
リスク判定部57は、属性情報取得部54にて取得された属性情報に基づき、車両ADVへ搭乗するタイミングにて、各乗客Pの転倒リスクを個別に判定する。リスク判定部57は、属性情報取得部54にて取得された属性情報を、特性保管データベース56から読み出した転倒リスクデータを用いて数値化し、各乗客Pのリスクを判定する。一例として、リスクは、最大10点とされ、年齢による8点、生活体力の低下による5点、病院通院中による5点、といったかたちで項目毎に積算される。リスク判定部57は、転倒リスクデータを用いて判定した各乗客Pの転倒リスクを、ID並びに年齢及び性別等の属性情報と共に、客室監視ユニット100に逐次提供する。
【0035】
客室監視ユニット100は、客室Cに搭乗中の乗客Pを見守り、車両ADVの自律走行を制御する車載コンピュータである。こうした客室監視ユニット100の機能は、有人車両における運転者の役割を代替する。客室監視ユニット100は、転倒リスクの高い乗客P(以下、「高リスク者Pr」)の状態を把握し、転倒を生じさせないような走行制限を実施する。加えて、客室監視ユニット100は、転倒の発生に対する対処も実施可能である。
【0036】
こうした見守り機能を実現するため、客室監視ユニット100は、プロセッサ61、RAM62、メモリ装置63及び入出力インターフェースを有する制御回路を主体に構成されている。プロセッサ61は、RAM62と結合された演算処理のためのハードウェアであって、種々のプログラムを実行可能である。メモリ装置63は、不揮発性の記憶媒体を含む構成であって、プロセッサ61によって実行される種々のプログラムを格納している。メモリ装置63に格納されたプログラムには、客室監視に基づく車両制御を客室監視ユニット100に実施させる車両制御プログラムが少なくとも含まれている。プロセッサ61による車両制御プロフラムの実行により、客室監視ユニット100には、リスク情報取得部71、乗客状態把握部72、車内状況把握部73、誘導制御部74、車外通知部75、モデル生成部76及び走行制限部77等の機能部が実装される。
【0037】
リスク情報取得部71は、各乗客Pのリスク、ID及び属性情報等をリスク判定部57から取得する。リスク情報取得部71は、IDの読み込みタイミング及び属性情報等を参照し、客室映像から検出される個々の乗客Pに、転倒リスクを関連付ける。リスク情報取得部71は、各乗客Pを転倒リスクに応じてグループ分けする。具体的に、リスク情報取得部71は、客室Cに搭乗する乗客Pの中から、転倒リスクが高いと判定された高リスク者Pr(例えば、転倒リスク5以上)と、それ以外の乗客P(例えば、転倒リスク4以下,一般者)とに振り分ける。
【0038】
乗客状態把握部72は、リスク情報取得部71にて選別された高リスク者Prを、客室内にて追跡する。乗客状態把握部72は、車両ADVの運行期間において、客室映像及び客室音声の解析等により、高リスク者Prを含む各乗客Pの客室内での状態を、乗車から降車まで、個別に把握し続ける。具体的に、乗客状態把握部72は、各乗客Pの姿勢、並びに客室内の移動(位置)、着座及び離席等の行動を継続的に監視し、立ち状態(立位)の高リスク者Prの有無を把握する。また乗客状態把握部72は、高リスク者Prによるつり革及び握り棒等の把持を検出し、これ以上移動しない状態であるか否かを判断する。
【0039】
さらに乗客状態把握部72は、客室映像に基づく乗客Pの異変検出、客室音声に基づく異変検出、及び乗客Pの通報による異変検出等が可能である。具体的に、乗客状態把握部72は、フロア上に乗客Pが倒れた状態、乗客Pが床に座り込んだ状態、乗客Pの体が横に大きく傾いた状態等を、異変又は異常として検出する。
【0040】
車内状況把握部73は、客室映像の解析に基づき、客室Cの状況を把握する。具体的に、車内状況把握部73は、客室Cに設置された複数の客席の中から、他の乗客P(一般者)が着座していない空席を抽出し、空席の有無を把握する。こうした客室Cの状況把握には、例えば超音波センサ、ライダ等の測距センサ、各座席に設置された感圧センサ及びシートベルトスイッチ等の検出情報が用いられてもよい。さらに車内状況把握部73は、複数の客席の中から、荷物等によって占拠されている箇所を抽出する。
【0041】
誘導制御部74は、高リスク者Prの転倒リスクを解消するため、高リスク者Prを客席に着座させた状態で車両ADVが発進及び停車できるように、高リスク者Prを含む各乗客Pへ向けた誘導を制御する。具体的に、誘導制御部74は、リスク情報取得部71にて選別された高リスク者Prに対し、空席への誘導を実施する。空席への誘導には、スピーカ87を用いた音声ガイダンス、客室Cに設定された発光機器による光ガイダンス、及び各乗客Pの携帯端末11へのメッセージ通知等が用いられてよい。
【0042】
誘導制御部74は、客室内での転倒リスクを低下させるような報知を行う。例えばバス停等の予め規定された停留所にて、高リスク者Prが客室Cに搭乗すると、車内状況把握部73によって抽出された空席に、高リスク者Prを誘導する(図2参照)。この場合、「進行方向に空席がございます。安全のため、席にご着席ください。発車まで十分に時間がございます。」等の音声メッセージが、スピーカ87によって再生される。誘導制御部74は、高リスク者Prの移動及び空席への着席を監視すると共に、空席までの移動中に、着座待ちの状態を所定の音声メッセージを用いて他の乗客Pに報知する。こうしたアナウンスによれば、高リスク者Prの近くの座席が譲られて、空席への移動が省略可能になり得る。
【0043】
加えて誘導制御部74は、客室Cの空席状況に応じて報知を変更可能である。空席が無い場合、誘導制御部74は、所定のアナウンスにより、予め設定された優先席を解放するように、優先席に着座した乗客Pを誘導する。また誘導制御部74は、客席が荷物によって占拠されている場合、客席から荷物を退かすように乗客Pを誘導する。この場合、例えば、「1人でも多く座れるよう荷物は網棚または膝上にお願いします。優先のお客様に席をお譲りください。ご協力ありがとうございます。」等の音声メッセージが、スピーカ87によって再生される。そして、優先席が解放された場合には、誘導制御部74は、解放された優先席に高リスク者Prを誘導する。
【0044】
ここで、高リスク者Prは、客室内の移動に時間を要するため、周囲の乗客Pに迷惑をかけないように、停留所等での減速及び停車に先立って、早めに席を立ち、移動を開始する傾向にある。そのため誘導制御部74は、停留所の手前、車両ADVが減速する前の期間にて、完全に停車するまで着座状態を維持すうように、高リスク者Prを誘導する。それでも客席から立とうとする高リスク者Prに対しては、「完全に停車するまで席を立たないでください。停車時間には十分余裕があります。」等の音声メッセージが再報知される。
【0045】
車外通知部75は、乗客状態把握部72にて乗客Pの異変及び異常が検出された場合に、管理センタ92に客室Cの状況を通知する。車外通知部75による管理センタ92への通知機能により、客室監視ユニット100によるシステム判定と、管理センタ92のオペレータによる有人判定とを組み合わせた二段階の管理が実施される。
【0046】
車外通知部75は、乗客P(高リスク者Pr)の転倒状況を撮影した客室映像及び客室音声等をオペレータ端末94に送信する。加えて車外通知部75は、客室Cと管理センタ92との通話回線の接続等を実施する。さらに管理センタ92では、救急センタ99への通報、病院等への目的地の変更処理、及び他の乗客Pを乗せる別車両の手配等がオペレータによって実施可能である。尚、救急センタ99への通報は、車外通知部75によって自動的に実施されてもよい。
【0047】
モデル生成部76は、立ち状態の高リスク者Prがいる場合に、高リスク者Prの姿勢を解析し、現在の動的な転倒リスクを判定する。具体的に、モデル生成部76は、立ち状態にある高リスク者Prをモデル化し、車両ADVの走行に伴う高リスク者Pr揺れ度合い、即ち、重心変化を推定する。モデル生成部76は、高リスク者Prの重心をフロア面に垂直に投影した投影位置が両足の間に収まっているか否かを判定する。投影位置が両足の間である場合、モデル生成部76は、動的な転倒リスクが低い低リスク姿勢であると判定する。一方で、投影位置が両足の間から外れている場合、モデル生成部76は、動的な転倒リスクが高い高リスク姿勢であると判定する。モデル生成部76は、重心の投影位置に基づく動的な転倒リスク情報を、走行制限部77に提供し、転倒防止のための走行制限に活用させる。
【0048】
走行制限部77は、自動運転インターフェースユニット40へ向けた走行制限指令の出力により、車両ADVの自律走行を制限する。走行制限部77は、停留場等での乗車期間において、車両ADVの発進を待機する走行制限指令を、高リスク者Prの着席完了まで継続的に出力する。そして、高リスク者Prの客席への着座に基づき、走行制限部77は、発進を許可する指令を自動運転インターフェースユニット40に出力する。
【0049】
走行制限部77は、一部の高リスク者Prが着座できないシーンにおいて、乗客状態把握部72による移動終了の判断結果に基づき、発進許可の指令を自動運転インターフェースユニット40に出力する。この場合、走行制限部77は、個々の高リスク者Prの状態に基づき、高リスク者Prの転倒を引き起こさない程度の駆動、制動及び操舵までは許容する走行制限を行う。
【0050】
詳記すると、走行制限部77は、自動運転インターフェースユニット40へ向けた走行制限指令の出力により、車両ADVの走行に伴って生じる加減速度及び操舵角速度を、制御コマンドに基づいて走行する通常時よりも低減させる。尚、通常時は、立ち状態の高リスク者Prがいない場合である。走行制限部77は、モデル生成部76から取得する動的な転倒リスク情報に基づき、高リスク者Prの姿勢が車両挙動に起因する重心変化によって高リスク姿勢とならないように、駆動、制動及び操舵の各制御量を制限する。加えて走行制限部77は、転倒リスク情報に基づき、高リスク姿勢の高リスク者Prがいる場合、低リスク姿勢の高リスク者Prしかない場合よりも、各制御量の制限度合いを大きくする。
【0051】
以上の客室監視ユニット100にて実施される乗車発進処理、減速停車処理、及び緊急対応処理の各詳細を、図4図6に基づき、図1等を参照しつつ説明する。図4に示す乗車発進処理は、停留所等の特定の停止箇所での停車に伴って開始される。
【0052】
乗車発進処理のS101では、車両ADVに順に搭乗する各乗客Pについて、それぞれの属性情報を、携帯端末11、ICカード13、及びクラウドサーバ90等から取得し、S102に進む。S102では、S101にて取得した属性情報に基づき、各乗客Pについての転倒リスクを個別に判定する。そして、各乗客Pへの転倒リスクの紐付けにより、高リスク者Prを選別し、S103に進む。
【0053】
S103では、S102の判定結果を参照し、高リスク者Prの有無を判定する。S103にて、全ての乗客Pの転倒リスクが4以下である場合、高リスク者Prがいないと判定し、S107に進む。S107では、「みなさん席についたので、発車します。」等の音声メッセージをスピーカ87によって再生させつつ、発進を許可する指令を自動運転インターフェースユニット40へ向けて出力する。その結果、自動運転制御ユニット20の制御に基づく通常の発進シーケンスが実施される。
【0054】
一方、S103にて、高リスク者Prがいると判定した場合、S104に進む。S104では、客室Cの状況を把握し、空席の有無を判定する。S104にて、空席があると判定した場合、S105に進む。S105では、空席への誘導シーケンスを実施し、S106に進む。誘導シーケンスでは、音声メッセージ等を利用し、S104にて抽出された空席に、高リスク者Prを誘導する。尚、高リスク者Prの搭乗が事前に想定される場合、高リスク者Prにとって乗降容易となる入口付近の客席を空けるような誘導が、他の乗客Pに対して予め実施されてもよい。
【0055】
S106では、S105の誘導先となる客席、又は他の乗客Pが譲った客性に、高リスク者Prが着座したか否かを監視する監視シーケンスを実施し、S107に進む。そして、高リスク者Prの着座完了を待って、自動運転制御ユニット20の制御に基づく通常の発進シーケンスが実施される。
【0056】
S104にて、空席が無いと判定した場合、S108に進む。S108では、優先席解放シーケンスにより、優先席又は荷物の置かれた客席の解放を他の乗客Pに呼びかけ、S109に進む。S109では、S108による呼びかけの結果、優先席又は客席が解放されたか否かを判定する。S109にて、優先席等の解放があったと判定した場合、S110に進む。S110では、優先席への誘導シーケンスを実施し、高リスク者Prを解放された優先席に誘導する。そして、S106及びS107の各シーケンスを順に実施する。
【0057】
一方、S109にて、優先席等の解放が無いと判定した場合、S111に進む。尚、S104にて、全ての優先席に高リスク者Prが着座しており、且つ、荷物に占拠された客席も無いと判断した場合、S108及びS109をスキップし、S111に移行してもよい。S111では、移動完了監視シーケンスを実施し、S112に進む。移動完了監視シーケンスでは、高リスク者Prを客室内にて追跡し、高リスク者Prの客室内での状態を把握することで、移動の完了を見守る。S112では、立ち状態の高リスク者Prがいることを前提とした発進許可を、自動運転インターフェースユニット40へ向けて出力する。こうした発進シーケンスでは、個々の高リスク者Prの状態に基づき車両ADVの走行が制限され、通常の発進シーケンスよりもゆっくりとした発進加速で車両ADVの走行が開始される。
【0058】
図5に示す減速停車処理は、停留所等までの残距離が所定距離未満となったことに基づき、停車のために減速する前の期間にて開始される。
【0059】
S121では、停留所等の手前にて、席を立たないように乗客Pに注意を呼びかける。具体的に、乗客Pの立ち上がりを防止するためのアナウンスを、モニタ86及びスピーカ87を用いて実施し、S122に進む。
【0060】
S122では、客席から立ち上がる乗客Pの検出により、立ち上がりが発生したか否かを判定する。S122にて、乗客Pの立ち上がりが発生していないと判定した場合、S126に進む。S126では、通常の減速を許可する指令を自動運転インターフェースユニット40へ向けて出力する。その結果、自動運転制御ユニット20の制御に基づく通常の停車シーケンスが実施される。
【0061】
一方、S122にて、客席から立ち上がる乗客Pを検出した場合、S123に進む。S123では、停車まで立たないように誘導するアナウンスを実施し、立ち上がった乗客Pに着席を促し、S124に進む。
【0062】
S124では、全ての高リスク者Prが着座した状態にあるか否かを判定する。S124にて、全ての高リスク者Prが着座していると判定した場合、S126に進み、通常の停車シーケンスを実施させる。
【0063】
一方、S124にて、立ち状態の高リスク者Prがいると判定した場合には、S125に進む。S125では、早期減速シーケンスを実施し、S126に進む。早期減速シーケンスでは、停車のための制動開始のタイミングが、立ち状態の高リスク者Prがいない場合よりも早められる。そして、S126の停車シーケンスでは、通常の停車シーケンスの2分の1程度の減速度に、車両ADVの制動力が制限される。同様に、許容される最大の操舵角速度も、減速度と同様に、通常の停車シーケンスよりも低い値に設定される。尚、停車シーケンスでは、減速による体の揺れを観測し、重心の投影位置が両足の間に収まるように、減速度をリアルタイムに調整してもよい。
【0064】
図6に示す緊急対応処理は、乗客Pの転倒が検出された場合に、客室Cの状況を管理センタ92に通知し、状況に対応するための処理である。緊急対応処理は、車両ADVの走行システムの起動に基づき開始され、走行システムがオフ状態とされるまで継続される。
【0065】
S141では、客室映像及び客室音声等の監視情報を解析し、S142に進む。S142では、S141の解析結果に基づき、異変が検出されたか否かを判定する。S141及びS142の繰り返しにより、異変発生の監視状態が維持される。そして、異変検出があった場合には、S142からS143に進む。
【0066】
S143では、管理センタ92のオペレータ端末94へ向けて確認依頼を送信し、S144に進む。S144では、オペレータによる遠隔での状況確認に必要な情報として、異変検出前後の客室映像及び客室音声等を、オペレータ端末94へ向けて送信する。加えてS144では、客室Cとオペレータ端末94とで電話回線を接続し、乗客Pとオペレータとを通話可能な状態として、S145に進む。尚、管理センタ92のオペレータは、病院等の医療的なシステムDBへ問い合わせを行い、異変の発生した乗客Pの状態を判定してもよい。
【0067】
S145では、オペレータによる状況判断の結果を、オペレータ端末94から取得する。S145にて、異常が無い旨の状況判断結果を取得した場合、S141に戻る。一方で、S145にて、異常がある旨の状況判断結果を取得した場合、S146に進む。S146では、異常対応シーケンスとして、救急センタ99への通報、病院への目的地変更、他の乗客Pを搭乗させる他車両の手配等を実施し、緊急対応処理を終了する。S146の異常対応シーケンスに含まれる各処置は、客室監視ユニット100によって自動で実施されてもよく、管理センタ92のオペレータによって手動で実施されてもよい。さらに、オペレータが要救護状況と判断したことに基づき、運行管理に携わる救護者が車両ADVに急行してもよい。
【0068】
ここまで説明した第一実施形態では、各乗客Pの属性情報が取得され、それぞれの属性情報に基づき、各乗客Pの転倒リスクが判定される。そして、転倒リスクの高い高リスク者Prは、客室内での状態を個別に把握される。故に、車両ADVの走行制限は、乗車中の高リスク者Prにおける実際の転倒リスクに応じて、適切に制御され得る。以上によれば、転倒リスクの高い乗客Pの転倒を回避しつつ、円滑な運行が実現される。換言すれば、ゆとりある車両ADVの運行と、一般者である乗客Pの期待する円滑運行との両立が実現される。
【0069】
加えて第一実施形態の走行制限は、高リスク者Prが客席に着座するまで継続される。故に、高齢者、妊産婦、生活体力低下者等の高リスク者Prは、移動を焦ることなく、余裕をもった乗車を行うことができる。故に、移動を焦ったことに起因する転倒も、抑止可能となる。このように、高リスク者Prの移動中の発進を制限すれば、高リスク者Prの転倒リスクは、いっそう効果的に低減される。
【0070】
一方で、転倒リスクの低い一般者が移動中であっても、車両ADVの発進は許容され得る。このように、走行(発進)制限を行う対象を高リスク者Prに限定すれば、転倒リスクの低減と円滑運行とが、いっそう両立され得る。
【0071】
また第一実施形態では、高リスク者Prを空席に誘導する誘導シーケンスが実施される。故に、高リスク者Prは、車両ADVへの搭乗後、スムーズに空席へと移動できる。以上によれば、転倒リスク低減のため、高リスク者Prの着席を待機する配慮がなされても、円滑な車両ADVの運行への影響は、小さく抑えられ得る。
【0072】
さらに第一実施形態では、空席が無い場合に、優先席の解放を呼びかける誘導が実施される。そのため、高リスク者Prを着座させた状態が、高い確実性を持って作り出される。故に、高リスク者Prの転倒リスクは、いっそう低減可能となる。
【0073】
加えて第一実施形態では、停車前に客席から立ち上がる高リスク者Prが検出され、立ち上がった高リスク者Prに対して着座を促すアクチュエーションが実施される。以上によれば、車両ADVの停車まで高リスク者Prを座らせた状態が維持され易くなる。その結果、停留所等で停車する際の制動期間においても、高リスク者Prの転倒リスクは、いっそう低減可能となる。
【0074】
また第一実施形態では、立ち状態の高リスク者Prの有無が発進前に把握され、立ち状態の高リスク者がいる場合には、立ち状態の高リスク者Prがいない場合よりも、発進後の車両ADVの加速度が低く設定される。こうした走行制限によれば、全ての高リスク者Prを着席させられなくても、転倒リスクの増大は回避され得る。
【0075】
さらに、客室監視ユニット100は、高リスク者Prによるつり革及び握り棒等の把持を確認したうえで、車両ADVの発進を許可する。故に、高リスク者Prが立ち状態であったとしても、発進の際の転倒は、生じ難くなる。
【0076】
加えて第一実施形態では、停留所等での減速開始前に、立ち状態の高リスク者Prの有無が把握される。そして、立ち状態の高リスク者がいる場合には、立ち状態の高リスク者Prがいない場合よりも、減速開始のタイミングを早めることで、発生する減速度が低減される。こうした走行制限によれば、制動に伴う転倒リスクの増大も、適切に回避され得る。
【0077】
また第一実施形態では、乗客Pに転倒等の異変又は異常が発生した場合、車両ADVの外部への通知が実施される。こうした緊急対応によれば、運転者等の管理責任者が車両ADVに搭乗していなくても、運転者による車内の見守りと同等の効果が発揮され得る。故に、無人バスである車両ADVに対し、高リスク者Prに該当するような高齢者、妊産婦及び生活体力低下者等が抱く不安は、軽減可能となる。その結果、移動弱者にとっても利用し易いユニバーサルなモビリティサービスが実現され得る。
【0078】
尚、第一実施形態では、乗客状態把握部72が「状態把握部」に相当し、乗客認証ユニット50及び客室監視ユニット100が協働で「車両制御システム」に相当する。そして、乗客認証ユニット50が「コンピュータ」に相当し、客室監視ユニット100が「車両制御装置」及び「コンピュータ」に相当する。
【0079】
(第二実施形態)
図7に示す本開示の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態では、管理センタ92に設置された運行管理コンピュータ200により、車両ADVの自律走行がリモート制御されている。運行管理コンピュータ200は、車両ADVに搭載された乗客認証ユニット50及び客室監視ユニット100と連携し、第一実施形態と実質同一の乗車発進制御(図4参照)、減速停車制御(図5参照)、及び緊急対応制御(図6参照)を実行する。
【0080】
乗客認証ユニット50は、プロセッサ51による認証プログラムの実行によって料金収受部55を有し、乗客Pの個人認証を行う機能を備える。一方で、第二実施形態の乗客認証ユニット50は、各乗客Pの特性を判断する機能を備えていない。
【0081】
客室監視ユニット100は、メモリ装置63に記憶された誘導制御プログラムをプロセッサ61によって実行し、誘導制御部74及び車外転送部175等の機能部を有する。誘導制御部74は、運行管理コンピュータ200から取得する誘導指令に基づき、第一実施形態と同様に、高リスク者Prを含む各乗客Pへ向けたアナウンス等の実施を制御する。車外転送部175は、車外通信器45と連携し、乗客状態及び客室状況及を把握するために必要な客室映像及び客室音声等のデータを、運行管理コンピュータ200へ向けて転送する。
【0082】
運行管理コンピュータ200は、管理センタ92に設置されており、通信ネットワークNWを通じて、各車両ADVの客室監視ユニット100と接続されている。運行管理コンピュータ200は、プロセッサ261、RAM262、メモリ装置263及び入出力インターフェースを有する制御回路を主体に構成されたコンピュータである。プロセッサ261は、RAM262と結合された大規模な演算処理のためのハードウェアであって、種々のプログラムを実行可能である。
【0083】
メモリ装置263は、不揮発性の記憶媒体を含む構成であって、プロセッサ261によって実行される種々のプログラムを格納している。運行管理コンピュータ200は、メモリ装置263に記憶された遠隔車両制御プログラムをプロセッサ261によって実行する。運行管理コンピュータ200には、第一実施形態と実質同一の属性情報取得部54、特性保管データベース56、乗客状態把握部72、車内状況把握部73、モデル生成部76及び走行制限部77に加えて、リスク判定部257及び誘導指示部274が実装される。第二実施形態において、運行管理コンピュータ200は、各乗客Pの特性を判断する機能と、客室Cに搭乗中の乗客Pを見守り、車両ADVの自律走行を遠隔制御する機能とを有する。
【0084】
リスク判定部257は、第一実施形態のリスク判定部57(図1参照)と同様に、属性情報取得部54にて取得された属性情報に基づき、各乗客Pの転倒リスクを個別に判定する。加えてリスク判定部257は、第一実施形態のリスク情報取得部71(図1参照)と同様に、運行管理コンピュータ200へ送信された客室映像から抽出される個々の乗客Pに、判定した転倒リスクを紐付けていく。
【0085】
誘導指示部274は、客室監視ユニット100の誘導制御部74と連携し、転倒リスクを低下させるような誘導を、乗客Pに対して実施する。誘導指示部274は、乗客状態把握部72にて把握される乗客状態、及び車内状況把握部73にて把握される客室状況等に応じて、誘導制御部74へ向けて送信する誘導指令の内容を変更する。こうした誘導指示部274の制御により、車両ADVの客室Cでは、第一実施形態と実質同一の誘導が各乗客Pに対して実施される。
【0086】
ここまで説明した第二実施形態では、運行管理コンピュータ200の走行制限部77が、通信ネットワークNW及び車外通信器45を通じて、自動運転インターフェースユニット40に走行制限指令を出力する。以上により、遠隔からのリモート制御による車両ADVの走行制限が可能となる。
【0087】
このように、車両ADVの走行を制限する処理が管理センタ92で実行されていても、高リスク者Prにおける実際の転倒リスクに応じて、車両ADVの走行が適切に制御され得る。したがって、第二実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、転倒リスクの高い乗客Pの転倒を回避しつつ、円滑な運行が実現される。尚、第二実施形態では、運行管理コンピュータ200が「コンピュータ」及び「車両制御システム」に相当する。
【0088】
(他の実施形態)
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0089】
上記第一実施形態の変形例1では、図8に示すように、各乗客Pの特性判断に関連した処理が、乗客認証ユニット50ではなく、客室監視ユニット100によって実施される。変形例1の乗客認証ユニット50は、第二実施形態と同様に主に決済処理を実施する。客室監視ユニット100は、乗客特性を判断する機能部として、属性情報取得部54、特性保管データベース56及びリスク判定部257を有する。加えて客室監視ユニット100は、第一実施形態と実質同一の乗客状態把握部72、車内状況把握部73、誘導制御部74、車外通知部75、モデル生成部76及び走行制限部77を有する。
【0090】
以上のように、見守り及び走行制限に関連した機能部が客室監視ユニット100に集約された変形例1でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、高リスク者Prに配慮した円滑な車両ADVの運行が実現される。
【0091】
上記実施形態では、高リスク者を空席へ案内するため、音声メッセージによるアナウンス等が実施されていた。しかし、他の乗客の快適性を考慮し、空席への音声による誘導は、実施されなくてもよい。又は、空席を見つけられずにいる高リスク者を乗客状態把握部が検出した場合に限り、空席への誘導が実施されてもよい。
【0092】
上記実施形態では、優先席及び荷物に占領された客席がある場合に、これらの客席を解放するような呼びかけが実施されていた。しかし、優先席ではない一般の客席を高リスク者に譲るような呼びかけが、一般者に対して積極的に実施されてもよい。
【0093】
上記実施形態では、停留所から発進するシーンと、停留所に向けて減速するシーンの両方とで、高リスク者の見守り結果を反映した走行制限が行われていた。しかし、高リスク者に配慮した走行制限は、発進シーン及び減速シーンの一方のみで実施されてもよい。又は、発進シーン及び減速シーンとは異なる他の走行シーンにおいて、高リスク者の状態を反映した走行制限が実施されてもよい。例えば、急ブレーキに伴う転倒リスクを低減させるために、走行制限部は、立ち状態の高リスク者がいる場合に、立ち状態の高リスク者がいない場合よりも、巡航時に許容する最高速度を低く設定させる走行制限指令を出力してもよい。
【0094】
また上記実施形態では、発進を待機する制御、制動タイミングを早める制御、及び発生加速度を低く制限する制御等が、転倒回避のための走行制限として実施されていた。しかし、各走行シーンにて実施される走行制限の具体的な内容も、適宜変更可能である。例えば、発進を待機する制御が省略され、高リスク者の移動中の加速度をさらに低減させるような走行制限が実施されてもよい。さらに、加速度を時間微分した躍度の値を基準として、走行制限が実施されてもよい。加えて、特定の停止箇所は、停留場等に限定されない。
【0095】
上記実施形態では、システムにて判断困難な内容は、車外のオペレータに通知され、オペレータ判断によって対処されていた。しかし、見守りシステムの判断力が十分に確保可能であれば、車外のオペレータの判断を仰ぐような通知処置は、省略されてもよい。
【0096】
上記実施形態にて、乗客の誘導に用いられていたモニタ及びスピーカ等の構成は、適宜変更されてよい。例えば、頻繁な音声アナウンスは、多くの乗客に煩わしく感じられ易い。そのため、指向性のスピーカを用いた音声メッセージの再生により、誘導対象である高リスク者や他の乗客のみに、音声アナウンスが伝わるようにされてもよい。さらに、車内通信器と各乗客の携帯端末をBluetooth(登録商標)の規格に準じた無線通信によって接続し、誘導対象である高リスク者や他の乗客のみに、誘導のメッセージが伝えられてもよい。
【0097】
上記実施形態では、乗客の個人認証に、携帯端末及びICカード等が用いられていたが、個人認証のための構成は、適宜変更されてよい。例えば個人認証には、ウェアラブル端末が用いられてもよい。或いは、生体情報を用いた指紋認証及び顔認証等によって、個人が認証されてもよい。
【0098】
上記実施形態では、属性情報及び転倒リスクデータを組み合わせて、転倒リスクを数値化し、閾値(レベル5)以上の転倒リスクを有する乗客が、高リスク者に選別されていた。しかし、高リスク者を選別する手法は、適宜変更されてよい。例えば、属性情報と転倒実績とを紐付けた過去のデータを用いて機械学習を行い、機械学習によって生成された判定器に属性情報を適用するAI処理により、高リスク者と一般者とのグループ分けが実施されてもよい。
【0099】
さらに、高リスク者の選定基準も、例えば車両が運行される地域(国)、利用者の傾向、時間帯等に応じて、適宜変更されてよい。加えて、登録データのうちで、属性情報として採用する項目も、転倒リスクとの関連性を考慮して、適宜変更されてよい。
【0100】
上記実施形態では、属性情報から推定される静的な転倒リスクに基づき選別した高リスク者が立ち状態にあるか否かにより、走行制限の実施の要否が決定されていた。そして、高リスク者の重心変化に基づく動的な転倒リスクをさらに算出する処理により、走行制限の制限量が調整されていた。しかし、動的な転倒リスクの推定は、省略されてもよい。
【0101】
上記第一実施形態では、客室監視ユニットから自動運転インターフェースユニットに走行制限指令が出力されていた。一方、上記第二実施形態では、運行管理コンピュータから自動運転インターフェースユニットに走行制限指令が出力されていた。以上のように、自動運転インターフェースユニットに走行制限指令を出力するコンピュータは、一つに限定されない。客室監視ユニット及び運行管理コンピュータの両方が自動運転インターフェースユニットに走行制限指令を出力してもよい。この場合、客室監視ユニットの走行制限指令が優先されてもよく、又は運行管理コンピュータの走行制限指令が優先されてもよい。又は、二つの走行制限指令のうちで、制限量の大きい一方が優先されてもよい。
【0102】
上記実施形態では、高リスク者を含む全乗客が客室監視ユニットによる監視対象とされていた。しかし、高リスク者のみを監視対象とし、他の乗客(一般者)は、監視対象から外されてもよい。さらに、高リスク者が複数搭乗している場合、最も転倒リスクの値が大きい乗客のみを監視対象としてもよい。
【0103】
上記実施形態では、本開示による見守りシステムを実現する車両制御方法を、無人バスに適用した例を説明した。しかし、本開示の車両制御方法を適用可能な車両は、無人バスに限定されず、有人車両であってもよい。例えば、運転者による客室全体の監視が困難な鉄道車両及び連節バス等に、上記の車両制御方法は、適用されてよい。さらに、有人車両に上記の車両制御方法が適用されれば、経験の浅い運転者の不注意に起因する転倒リスクの増大が回避され得る。
【0104】
本開示の車両制御方法を実施するコンピュータとして、上記実施形態では、乗客認証ユニット、客室監視ユニット及び運行管理コンピュータ等が例示されていた。しかし、車両制御方法を実施するコンピュータは、これらに限定されない。例えば、車載された複数の電子制御ユニットと、センタ又はクラウド上のコンピュータが、乗客の見守りに関連する演算を分散処理してもよい。或いは、自動運転インターフェースユニット及び自動運転制御ユニット等の車載コンピュータが、見守り及び走行制限に関連する各機能を実現するための演算を、単独で又は分散して処理してもよい。
【0105】
以上のように、車載コンピュータ及び運行管理コンピュータの各制御回路により提供された各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組合せによっても提供可能である。さらに、こうした機能がハードウェアである電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
【0106】
車両制御プログラム等に関連したデータ処理、並びに命令及びコードを実行するプロセッサの具体的な構成は、適宜変更可能である。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)に加えて、GPU(Graphics Processing Unit)を含む構成であってもよい。さらに、プロセッサは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)及びAIの学習及び推論に特化したアクセラレータ(例えばDSP(Digital Signal Processor)等)を含んでいてもよい。加えてプロセッサは、FPGA及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等に実装された構成であってもよい。
【0107】
車両制御プログラム等を格納する構成として、フラッシュメモリ及びハードディスク等の種々の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)が、メモリ装置に採用可能である。こうした記憶媒体の形態も、適宜変更されてよい。例えば記憶媒体は、メモリカード等の形態であって、コンピュータに設けられたスロット部に挿入されて、制御回路に電気的に接続される構成であってよい。さらに記憶媒体は、上述のような車載装置等のメモリ装置に限定されず、当該メモリ装置へのプログラムのコピー基となる光学ディスク及び汎用コンピュータのハードディスクドライブ等であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
ADV 車両、C 客室、P 乗客、Pr 高リスク者、50 乗客認証ユニット(車両制御システム,コンピュータ)、51,61,261 プロセッサ、54 属性情報取得部、57,257 リスク判定部、71 リスク情報取得部、72 乗客状態把握部(状態把握部)、77 走行制限部、100 客室監視ユニット(車両制御装置,車両制御システム,コンピュータ)、200 運行管理コンピュータ(車両制御システム,コンピュータ)
図1
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図8