(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エアバッグが、上下方向側で対向するように左右方向に略沿って配設される上壁部及び下壁部と、左右方向側で対向するように前後方向に略沿って配設される左壁部及び右壁部と、前記乗員側において前記上壁部と前記下壁部とを連結するように左右方向に略沿って配設される後壁部と、を備える構成とされて、
前記中央側凹部の凹みの先端が、前記上壁部、前記下壁部、及び、前記後壁部を構成するとともに、前記上壁部から前記後壁部を経て前記下壁部にかけての領域を左右方向側で二分割するように、外形形状を略C字形状に湾曲した帯状として略左右対称形とされる一対の内側パネルの内縁相互を結合させて構成される内側結合部から、構成され、
前記各突出部における前記頂部が、それぞれ、前記左壁部若しくは前記右壁部を構成する外側パネルと、前記内側パネルと、の外縁相互を結合させて構成される外側結合部から、構成され、
前記拘束用凹部が、前記内側パネルにタックを設けるようにして、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の助手席用エアバッグ装置では、乗員保護部における凹凸が僅かであり、また、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を保護する中央側膨張部は、突出部の頂部よりも左方となる領域に、形成されていることから、例えば、左斜め前方に向かって移動する乗員の頭部が、右方にずれて中央側膨張部の後面よりも右側となる領域(凹部の凹みの先端と突出部の頂部との間の領域)と接触する場合、乗員の頭部と、頭部の右前面側を含めた広い面積で接触することとなって、この接触により、乗員の頭部に、頭部を進行方向と逆側となる右側に向けるような回転が生じることから、乗員の頭部を的確に保護できない虞れが生じていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、左右方向側でずれた位置で受け止めることとなっても、乗員の頭部を安定して保護可能な助手席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る助手席用エアバッグ装置は、助手席前方の収納部位に折り畳まれて収納されるエアバッグを、備え、
エアバッグが、可撓性を有したシート体からなる袋状として、膨張完了時の形状を、頂部を前端側に配設させた略四角錐形状とし、膨張完了時の前端側を収納部位に取り付けられて、膨張完了時の後部側を、乗員を保護可能な乗員保護部として構成される助手席用エアバッグ装置であって、
乗員保護部が、
エアバッグの膨張完了時に、左右方向の略中央において前方側に凹む中央側凹部と、中央側凹部の左右両側において相対的に後方に突出する突出部と、を、それぞれ、上下方向に略沿わせるようにして、上下の略全域にわたって配設させる構成とされるとともに、
中央側凹部の左方若しくは右方の少なくとも一方であって、中央側凹部の凹みの先端と突出部の頂部との間となる領域に、車両の斜め衝突時若しくはオフセット衝突時に斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を進入させて拘束させるための拘束用凹部を、配設させる構成とされ、
拘束用凹部が、凹みの先端側を、エアバッグの内部に配置されるテザーによって、エアバッグの前端側に連結させるようにして、エアバッグの膨張完了時に、前方に凹ませて配設される構成とされ、
拘束用凹部と隣接して配置される突出部が、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を受け止め可能な斜突用突出部として構成され、
乗員保護部において、中央側凹部の凹みの先端と拘束用凹部の凹みの先端との間の領域である中央側領域が、エアバッグの膨張完了時における水平方向に略沿った断面において、拘束用凹部側となる端側部位を、中央側凹部側となる中央側部の曲率、及び、斜突用突出部における拘束用凹部側の領域の曲率よりも、曲率を大きく設定される大曲率部として構成されるとともに、大曲率部を、中央側領域における左右の中央よりも、拘束用凹部側に配置させるように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の助手席用エアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に後部側に配置されて乗員を保護する乗員保護部が、左右の略中央において前方側に凹む中央側凹部と、中央側凹部の左右両側において相対的に後方に突出する突出部と、を、それぞれ、上下方向に略沿わせるように配設させる構成であり、中央側凹部の左方若しくは右方の少なくとも一方であって、中央側凹部の凹みの先端と突出部の頂部との間の領域に、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を進入させて拘束可能な拘束用凹部を、配設させている構成である。そして、本発明の助手席用エアバッグ装置では、乗員保護部において、中央側凹部の凹みの先端と拘束用凹部の凹みの先端との間の領域である中央側領域が、エアバッグの膨張完了時における水平方向に略沿った断面において、拘束用凹部側となる端側部位を、中央側凹部側となる中央側部位の曲率、及び、拘束用凹部と隣接して配置される斜突用突出部における拘束用凹部側の領域の曲率よりも、曲率を大きく設定される大曲率部として構成されるとともに、この大曲率部を、中央側領域における左右の中央よりも、拘束用凹部側に配置させるように、構成されている。すなわち、本発明の助手席用エアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に、拘束用凹部から連なるように中央側に配置される中央側領域が、拘束用凹部に隣接した側を後方側へ大きく隆起させるとともに、急激に曲がって中央側凹部側に連ならせており、車両の斜め衝突時若しくはオフセット衝突時において、乗員の頭部が斜め前方の拘束用凹部側に向かって移動する際に、多少、中央側凹部の凹みの先端側にずれて中央側領域に接触することとなっても、拘束用凹部に隣接している領域、特に、大曲率部付近が、乗員の頭部の前面側における進行方向側の部分にだけ接触させるようにすることができる。そのため、乗員の頭部に、頭部を進行方向と逆側に向けるような回転が生じることを抑制できて、乗員の頭部を、円滑に拘束用凹部内に進入させることができる。その結果、乗員の頭部を、拘束用凹部内に進入させることにより、的確に保護することができる。
【0008】
したがって、本発明の助手席用エアバッグ装置では、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を、左右方向側でずれた位置で受け止めることとなっても、乗員の頭部を安定して保護することができる。
【0009】
また、本発明の助手席用エアバッグ装置において、エアバッグを、左右方向側で対向するように前後方向に略沿って配設される左壁部及び右壁部と、上下方向側で対向するように左右方向に略沿って配設される上壁部及び下壁部と、乗員側において上壁部と下壁部とを連結するように左右方向に略沿って配設される後壁部と、を備える構成とし、
中央側凹部の凹みの先端を、上壁部、下壁部、及び、後壁部を構成するとともに、上壁部から後壁部を経て下壁部にかけての領域を左右方向側で二分割するように、外形形状を略C字形状に湾曲した帯状として略左右対称形とされる一対の内側パネルの内縁相互を結合させて構成される内側結合部から、構成し、
各突出部における頂部を、それぞれ、左壁部若しくは右壁部を構成する外側パネルと、内側パネルと、の外縁相互を結合させて構成される外側結合部から、構成し、
拘束用凹部を、内側パネルにタックを設けるようにして、形成する構成とすることが、好ましい。
【0010】
助手席用エアバッグ装置を上記構成とすれば、乗員保護部における中央側領域が、内側パネルから、構成されることとなって、エアバッグを、平面的な結合作業で簡便に製造することができる。
【0011】
さらに、上記構成の助手席用エアバッグ装置において、拘束用凹部を、中央側凹部の左右両側に、配設させる構成とすれば、乗員の頭部を、左斜め前方に向かって移動する場合にも、右斜め前方に向かって移動する場合にも、保護することができて、好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の助手席用エアバッグ装置M(以下、単に「エアバッグ装置」と省略する)は、
図7に示すように、右側に助手席PSを配置させた左ハンドル車である車両Vにおける助手席PSの前方において、インストルメントパネル1の内部に配置されている。なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両Vの前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0014】
実施形態のエアバッグ装置Mは、
図7に示すように、エアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ15及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、を備えている。また、エアバッグ装置Mは、詳細な図示を省略するが、折り畳まれたエアバッグ15の上方を覆うとともに、エアバッグ15の展開膨張時に開き可能な扉部を有するエアバッグカバーも、備える構成とされている。実施形態では、インフレーター8は、車両Vの前面衝突と、斜め衝突と、オフセット衝突と、の際に、作動するように構成されている。
【0015】
エアバッグ15は、
図1〜5に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体16と、バッグ本体16内に配置されてバッグ本体16の膨張完了形状を規制するテザー45,47,50,55と、を備える構成とされている。
【0016】
バッグ本体16は、可撓性を有したシート体から形成される袋状とされるもので、
図1〜5に示すように、膨張完了形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状とされて、上下方向側で対向するように左右方向に略沿って配設される上壁部16a及び下壁部16bと、左右方向側で対向するように前後方向に略沿って配設される左壁部16c及び右壁部16dと、乗員MP側において上壁部16aと下壁部16bとを連結するように左右方向に略沿って配設される後壁部16eと、を備えている。また、バッグ本体16は、膨張完了時の後部側を、乗員を保護可能な乗員保護部26とするとともに、膨張完了時に乗員保護部26の前側においてインパネ1と図示しないウィンドシールドとの間に配置される車体側部18を、備える構成とされている。車体側部18において、膨張完了時の前端18a側の下面側における左右方向の中央付近(下壁部の前端近傍)となる位置には、内部に膨張用ガスを流入可能に略円形に開口して形成されるガス流入口20と、ガス流入口20の周縁においてリテーナ9の図示しないボルトを挿通させるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔21と、が、形成されている。また、車体側部18における左右両側(左壁部18cと右壁部18d)には、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気させるためのベントホール24,24が、形成されている。
【0017】
乗員保護部26は、膨張完了時のエアバッグ15において、左右方向の略中央において前方側に凹む中央側凹部27と、中央側凹部27の左右両側において相対的に後方に突出する突出部29L,29Rと、を、備える構成とされている。中央側凹部27と突出部29L,29Rとは、
図3,5に示すように、バッグ本体16の膨張完了時に、それぞれ、上下方向に略沿うようにして、上下の全域にわたって形成される構成である。詳細には、実施形態のエアバッグ15では、中央側凹部27の凹んだ状態と、突出部29L,29Rの隆起した状態とは、バッグ本体16の膨張完了時に、後壁部16eから、上壁部16a若しくは下壁部16bの領域内となる前方側に延びつつ、ガス流入口20近傍となる部位にかけて、凹凸を収束させるように、連続的に形成されている。実施形態では、中央側凹部27の凹みの先端27aは、後述する内側左パネル65,内側右パネル72の内縁65b,72b相互を結合(縫着)させて形成される内側結合部28から、構成され、各突出部29L,29Rの頂部29aは、内側左パネル65,内側右パネル72の外縁65a,72aと、後述する外側パネル60における左側部位62,右側部位63の外縁62a,63aと、を、それぞれ、結合(縫着)させて形成される外側結合部30L,30Rから、構成されている。また、実施形態のエアバッグ15では、乗員保護部26は、中央側凹部27の左方(運転席側)であって、中央側凹部27の凹みの先端27aと左側の突出部29Lの頂部29aとの間となる領域に、拘束用凹部31を、配設させて構成されている。
【0018】
拘束用凹部31は、車両Vの斜め衝突時若しくはオフセット衝突時に、左斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを進入させて拘束するためのものであり、実施形態の場合、上下方向側の長さ寸法L1を、膨張完了時のバッグ本体16における後壁部16eの部位の上下方向側の幅寸法L2よりも小さくして(
図4参照)、後壁部16eの上端付近から下端側にかけて延びるように、膨張完了時のバッグ本体16を後方側から見て、上下方向に略沿って、形成されている(
図2参照)。この拘束用凹部31は、
図4,5に示すように、後端31b側を開口させて、ポケット状に前方に凹む構成とされている。詳細には、拘束用凹部31は、
左右方向側で対向するとともに、左右方向側から見て上下に幅広とした略長方形状の左側壁32と右側壁33と
を有し、この左側壁32と右側壁33との上縁相互、下縁相互、前縁相互を、それぞれ、結合(縫着)させることにより、後端31b側を開口させた略ポケット状に、構成されている(
図4参照)。すなわち、拘束用凹部31は、前端31a側(凹みの先端側)にかけて、幅寸法を略一定として、構成されている。具体的には、拘束用凹部31の上下方向側の長さ寸法L1は、400mm程度に設定されている。また、拘束用凹部31は、前後方向側の幅寸法(深さ)L3を、乗員MPの頭部MHの前側の領域を進入可能な寸法に設定されており、具体的には、50〜100mm程度に設定されている(
図4参照)。この拘束用凹部31は、実施形態の場合、バッグ本体16内に配置される後述する凹部用テザー50と補助テザー55とにより、エアバッグ15の膨張完了時に、凹みの先端(前端31a)を左側(運転席側)前方に向けるように、前後方向に対して傾斜して、配置される構成である(
図5参照)。また、実施形態では、拘束用凹部31の前端31a側を凹部用テザー50及び補助テザー55に連結させる連結部34は、後縁側の上下の幅寸法を、拘束用凹部31の上下の幅寸法と一致させ、前縁側にかけて幅寸法を漸減させるように、構成されて、上下の略中央となる位置を、凹部用テザー50及び補助テザー55に連結させている構成とされている。連結部34は、拘束用凹部31を上下に幅広としていても、エアバッグ15の膨張完了時に、拘束用凹部31を上下で略均一に、凹部用テザー50及び補助テザー55によって、左斜め前方に向かって牽引可能とするために、このような形状とされている。
【0019】
また、実施形態のエアバッグ15では、拘束用凹部31と隣接して配置される左側(運転席側)の突出部29Lが、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを受け止め可能な斜突用突出部として構成されている。
【0020】
そして、実施形態のエアバッグ15では、乗員保護部26において、中央側凹部27の凹みの先端27aと拘束用凹部31の凹みの先端(前端31a)との間の領域である中央側領域38において、
図5,8のAに示すように、エアバッグ15の膨張完了時における水平方向に略沿った断面において、拘束用凹部31側となる端側部位39が、中央側凹部27側となる中央側部位40の曲率、及び、斜突用突出部29Lにおける拘束用凹部側となる右側領域29bの曲率よりも、曲率を大きく設定される大曲率部39aとして構成されている。そして、この大曲率部39aは、
図8のAに示すように、中央側領域38における左右の中央(左右の中央を通る中心線CL1)よりも、拘束用凹部31側(左側、すなわち、運転席側)に配置させるように、構成されている。具体的には、エアバッグ15の膨張完了時における水平方向に略沿った断面において、大曲率部39aは、R30程度に設定され、中央側部位40に接触する接線CL2(中央側部位40の左右方向の略中央と接触する接線)は、前後方向に対する傾斜角度θを、40°程度に設定されている。なお、このような中央側領域38の形状は、後述する内側左パネル65の形状や凹部用テザー50及び補助テザー55の長さ寸法等によって、適宜変更可能である。
【0021】
バッグ本体16内には、
図3〜5に示すように、テザー45,47,50,55が、配置されている。具体的には、バッグ本体16内に、左右テザー45,47と、凹部用テザー50と、補助テザー55と、が配置されている。
【0022】
左右テザー45,47は、バッグ本体16の膨張完了時において、左壁部16cと右壁部16dとを連結するように、左右方向に略沿って配置されるもので、実施形態の場合、
図3,4に示すように、上下の2箇所に、配設されている。実施形態の場合、各左右テザー45,47は、それぞれ、左右方向に略沿った帯状として、バッグ本体16の膨張完了時に、幅方向を水平方向に対して傾斜させるように、配置されている(
図3,4参照)。各左右テザー45,47は、ともに、
図5,6に示すように、左右方向側で並設される2枚のテザー用基布46L,46R,48L,48Rの縁部相互を、それぞれ、結合させて構成されている。これらの左右テザー45,47は、膨張完了時のバッグ本体16における左壁部16cと右壁部16dとの離隔距離を規制するために、配置されている。
【0023】
凹部用テザー50は、エアバッグ15の膨張完了時に、
図5に示すように、拘束用凹部31の凹みの先端側(前端31a側)と、バッグ本体16の前端側(車体側部18の前端18a側)と、を連結するように、配置されるもので、
図6に示すテザー用基布51から、構成されている。テザー用基布51は、帯状の本体部52と、本体部52の前端側において右方に突出するように形成される略円形の連結部53と、を備えている。この凹部用テザー50は、前端50a側の連結部53を、ガス流入口20の周縁に結合(縫着)させ、ガス流入口20の左方から延びる本体部52の後端(後端50b)を、補助テザー55の右端55bとともに、拘束用凹部31の前端31a側に設けられる連結部34に連結させる構成である。補助テザー55は、エアバッグ15の膨張完了時に、
図5に示すように、右端55bを拘束用凹部31の凹みの先端側(前端31a側)に連結され、左端55aを左壁部16cに連結されて、拘束用凹部31の凹みの先端側(前端31a側)と左壁部16cとを連結する構成とされている。凹部用テザー50と補助テザー55とは、それぞれ、長さ寸法を、エアバッグ15の膨張完了時に協働して、拘束用凹部31を、左側斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHの進行方向に略沿うように、前後方向に対して傾斜させつつ、前方に牽引可能な寸法に、設定されている。また、実施形態のエアバッグ15では、これらの凹部用テザー50と補助テザー55とを所定の長さに設定することにより、エアバッグ15の膨張完了時に、拘束用凹部31が後端31b側を口開きさせて配置されることを抑制でき、また、中央側領域38における拘束用凹部31側の部位(端側部位39)の隆起した状態を維持することができる。
【0024】
バッグ本体16は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、
図6に示すように、主に左壁部16c及び右壁部16dを構成する外側パネル60と、主に上壁部16aから後壁部16eを経て下壁部16bにかけてを構成する一対の内側左パネル65,内側右パネル72と、から構成されている。
【0025】
外側パネル60は、実施形態の場合、開いた蝶の形状に近似した左右対称形として、車体側部18におけるガス流入口20の周縁の部位を構成する略長方形状の下側部位61と、下側部位61から左右両側に延びるように配設される略楕円形状の左側部位62,右側部位63と、を備えている。下側部位61は、下壁部16bの前側の領域を構成するものである。左側部位62は、膨張を完了させたバッグ本体16において、主に左壁部16cを構成するものであり、詳細には、左壁部16cに加えて、乗員保護部26における左側の突出部29L(斜突用突出部)の頂部29aよりも左側の領域も、構成することとなる。右側部位63は、膨張を完了させたバッグ本体16において、主に右壁部16dを構成するものであり、詳細には、右壁部16dに加えて、乗員保護部26における右側の突出部29Rの頂部29aよりも右側の領域も、構成することとなる。
【0026】
内側左パネル65,内側右パネル72は、主に、上壁部16aから後壁部16eを経て下壁部16bにかけての領域を構成するもので、詳細には、乗員保護部26においては、左右の突出部29L,29Rにおける頂部29a,29a間の領域を、構成している。内側左パネル65,内側右パネル72は、この領域を、左右方向側で二分割するように、外形形状を略C字形状に湾曲した帯状として略左右対称形とされている。
【0027】
実施形態のエアバッグ15において、内側左パネル65は、前側部位66と後側部位69とに前後で2分割されており、各前側部位66,後側部位69は、それぞれ、拘束用凹部31を構成する凹部形成部位67,70を、備えている。そして、各凹部形成部位67,70の上縁67a,70a相互、前縁67c,70c相互、下縁67b,70b相互を、それぞれ、結合(縫着)させて連結させた状態(拘束用凹部31形成後の状態)の前側部位66と後側部位69とは、外形形状を、内側右パネル72と左右対称形とされることとなる。また、内側左パネル65,内側右パネル72は、外縁65a,72a側の形状を、それぞれ、外側パネル60における左側部位62,右側部位63の外縁62a,63a側の形状と、略一致させて構成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ15では、拘束用凹部31は、内側左パネル65に、余肉(凹部形成部位67,70)を設け、この余肉にタックを設けるようにして、形成されている。
【0028】
実施形態では、バッグ本体16を構成する外側パネル60,内側左パネル65(前側部位66,後側部位69),内側右パネル72、左右テザー45,47を構成するテザー用基布46L,46R,48L,48R、凹部用テザー50を構成するテザー用基布51、及び、補助テザー55は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0029】
そして、実施形態のバッグ本体16は、
図3〜6に示すように、外側パネル60,内側左パネル65(前側部位66,後側部位69),内側右パネル72の対応する縁部相互を、縫合糸を用いて縫着(結合)させることにより、袋状とされている。具体的には、内側左パネル65における前側部位66と後側部位69とに形成される凹部形成部位67,70は、上縁67a,70a相互、前縁67c,70c相互、下縁67b,70b相互を、それぞれ、結合される。外側パネル60における下側部位61の前縁61aは、内側左パネル65,内側右パネル72の前縁65c,72cと、結合され、下側部位61の後縁61bは、内側左パネル65,内側右パネル72の後縁65d,72dと、結合される。外側パネル60における左側部位62の外縁62aは、下側部位61の前左縁61c,後左縁61d、及び、内側左パネル65の外縁65aと、結合され、外側パネル60における右側部位63の外縁63aは、下側部位61の前右縁61e,後右縁61f、及び、内側右パネル72の外縁72aと、結合される。内側左パネル65の内縁65bは、内側右パネル72の内縁72bと結合される。
【0030】
この実施形態のエアバッグ装置Mは、内部にリテーナ9を収納させた状態のエアバッグ15を、ケース12内に収納可能に折り畳み、周囲を、破断可能な図示しないラッピングシートによりくるんだ状態で、ケース12内に収納させ、インフレーター8を、リテーナ9を利用してエアバッグ15のガス流入口20の周縁とともに、ケース12に連結させ、その後、折り畳まれたエアバッグ15とインフレーター8とを収納保持させたケース12を、車両Vに搭載されたインパネに形成される図示しないエアバッグカバーに連結させれば、車両Vに搭載させることができる。
【0031】
実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、車両Vに搭載した状態で、車両Vの前面衝突時、斜め衝突時、若しくは、オフセット衝突時に、インフレーター8が作動することとなり、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、ケース12から突出しつつ、
図7に示すように膨張を完了させることとなる。
【0032】
そして、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ15の膨張完了時に後部側に配置されて乗員MPを保護する乗員保護部26が、左右の略中央において前方側に凹む中央側凹部27と、中央側凹部27の左右両側において相対的に後方に突出する突出部29L,29Rと、を、それぞれ、上下方向に略沿わせるように配設させる構成であり、中央側凹部27の左方であって、中央側凹部27の凹みの先端27aと突出部29Lの頂部29aとの間の領域に、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを進入させて拘束可能な拘束用凹部31を、配設させている構成である。また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、乗員保護部26において、中央側凹部27の凹みの先端27aと拘束用凹部31の凹みの先端(前端31a)との間の領域である中央側領域38が、エアバッグ15の膨張完了時における水平方向に略沿った断面において、拘束用凹部31側となる端側部位39を、中央側凹部27側となる中央側部位40の曲率、及び、斜突用突出部としての左側の突出部29Lにおける拘束用凹部側の領域(右側領域29b)の曲率よりも、曲率を大きく設定される大曲率部39aとして構成されるとともに、この大曲率部39aを、中央側領域38における左右の中央よりも、拘束用凹部31側に配置させるように、構成されている。すなわち、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ15の膨張完了時に、拘束用凹部31から連なるように中央側に配置される中央側領域38が、拘束用凹部31に隣接した側を後方側へ大きく隆起させるとともに、急激に曲がって中央側凹部27側に連ならせており、車両Vの斜め衝突時若しくはオフセット衝突時において、乗員MPの頭部MHが斜め前方の拘束用凹部31側に向かって移動する際に、多少、中央側凹部27の凹みの先端27a側にずれて中央側領域38に接触することとなっても、拘束用凹部31に隣接している領域、特に、大曲率部39a付近が、乗員MPの頭部MHの前面側における進行方向側の部分にだけ接触させるようにすることができる。そのため、乗員MPの頭部MHを、進行方向と逆方向側へ向かうとともに水平方向に略沿うような回転の発生を抑制して、円滑に拘束用凹部31内に進入させることができる。詳細に説明すれば、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ15の膨張完了時に、中央側領域38において、乗員MPの頭部MHの進行方向側である左側の領域(端側部位39)が、後側(乗員MP側)に向かって大きく隆起していることから、左斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHが、中心線CL3よりも移動方向側となる左前側の領域のみを、端側部位39(大曲率部39a)に接触させることとなって(
図8のB参照)、この接触により、乗員MPの頭部MHに、移動方向と逆側となる右側に向かわせるような回転が発生することを、的確に抑制でき、乗員MPの頭部MHを、拘束用凹部31内に進入させることができる。その結果、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、乗員MPの頭部MHを、拘束用凹部31内に進入させることにより、的確に保護することができる。
【0033】
したがって、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを、左右方向側でずれた位置で受け止めることとなっても、乗員MPの頭部MHを安定して保護することができる。
【0034】
図9に、比較例のエアバッグ15´を示すが、この比較例のエアバッグ15´では、中央側領域38´は、単に略半円弧状に隆起させた状態として、全体を大きく湾曲させるように構成されている。そのため、膨張完了時のエアバッグ15´に、左斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHが接触する際に、頭部MHは、中心線CL3をまたぐように、広い面積で、前面側を中央側領域38´に接触させることから、乗員MPの頭部MHに、頭部MHを進行方向と逆側となる右側に向けるような回転Rが生じることを避け難い。
【0035】
また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、車両Vの前面衝突時には、前方移動する乗員MPの頭部MHは、中央側凹部27内に進入するようにして、保護されることとなる。
【0036】
さらに、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、バッグ本体16が、外側パネル60と、一対の内側左パネル65,内側右パネル72と、から構成されて、中央側凹部27の凹みの先端27aが、内側左パネル65,内側右パネル72の内縁65b,72b相互を結合させて構成される内側結合部28から、構成され、各突出部29L,29Rにおける頂部29aが、それぞれ、外側パネル60における左側部位62,右側部位63と、内側左パネル65,内側右パネル72と、の外縁62a,65a,63a,72a相互を、それぞれ、結合させて構成される外側結合部30L,30Rから、構成されて、拘束用凹部31が、内側左パネル65にタック(凹部形成部位67,70)を設けるようにして、形成される構成である。すなわち、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、乗員保護部26における中央側領域38が、内側左パネル65から、構成されることから、エアバッグ15を、平面的な結合作業で簡便に製造することができる。また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、外形形状を略C字形状に湾曲した帯状とされる内側左パネル65,内側右パネル72の内縁65b,72b相互を結合させて形成される内側結合部28により、中央側凹部27の凹みの先端27aが形成されていることから、内部に、中央側凹部の凹みの先端とエアバッグの前端側とを連結させるテザー等を配置させなくとも、中央側凹部の凹みの形状や、中央側領域の形状を、安定させることができる。
【0037】
なお、実施形態のエアバッグ15では、拘束用凹部31は、中央側凹部27の運転席側となる左側のみに配設される構成であるが、
図10に示すエアバッグ15Aのように、拘束用凹部31AL,31ARを、中央側凹部27Aの左右両側に配設させる構成としてもよい。エアバッグ15Aをこのような構成とすれば、乗員の頭部を、左斜め前方に向かって移動する場合にも、右斜め前方に向かって移動する場合にも、保護することができる。