(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、絶縁基板の両面にスパイラル導体を形成しているため、スパイラル導体を形成した後に、絶縁基板を加工することができない。よって、スパイラル導体などの積層物を安定して形成するための絶縁基板の厚み(具体的には0.3mm)を確保してしまうと、インダクタ部品の低背化が困難となり、一方、インダクタ部品の低背化が可能な厚みの絶縁基板とすると、スパイラル導体などの積層物を安定して形成することが困難となる。すなわち、インダクタ部品の加工性と低背化を両立することが難しい。
【0006】
また、特許文献2では、基板上に素体等の積層物を形成した後に基板を除去するため、特許文献1に比べると加工性と低背化のトレードオフは改善される。しかし、基板を除去する際のプロセスにより、基板の残渣を完全に排除するために、残った積層物側の一部が除去されてしまう可能性が高く、例えば素体の一部が除去されることによる強度や絶縁性の低下、平面コイルの一部が除去されることによる直流電気抵抗(Rdc)の低下、磁性体端子や磁性中脚部の一部が除去されることによるインダクタンス(L)の低下などが発生し得る。さらに、この積層物側の除去量は、量産時には除去プロセスごとにばらつく可能性があり、上記強度、絶縁性、Rdc、L、部品の高さ寸法などの量産ばらつきを増加し得る。
【0007】
以上のように、従来のインダクタ部品は、小型低背化に適した構成とは言えない。
【0008】
そこで、本開示の課題は、小型低背化に適したインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
樹脂を含む第1磁性層及び第2磁性層と、
第1主面が前記第1磁性層と密着し、第2主面の上方に前記第2磁性層が配置された焼結体の基板と、
前記第2磁性層と前記基板との間に配置されたスパイラル配線と
を備える。
【0010】
ここで、密着とは、間に他の構成要素を介さずに接する構成をいい、例えば上記においては、基板の第1主面が第1磁性層と直接接する構成をいう。また、上方とは、上記密着する場合、間に他の構成要素を介する場合のいずれも含めて上側に位置する構成をいい、例えば上記においては、第2主面が第2磁性層と直接接してもよいし、第2主面と第2磁性層との間に他の構成要素を介してもよい。
【0011】
本開示のインダクタ部品によれば、第2磁性層やスパイラル配線といった第2主面の上方の積層物は焼結体であって安定した基板の第2主面上に形成できるため、積層物の形成精度を向上できる。また、基板の第1主面が第1磁性層と密着しているので、第1主面にはスパイラル配線が形成されていない。これによれば、積層物の形成精度を向上するため、基板の厚みをある程度確保した場合であっても、基板は、第1主面側から研磨などの加工が可能であるため、第2主面上に積層物を形成した後に厚みを低減することができる。したがって、インダクタ部品の形成精度と低背化とを両立できる。
【0012】
また、基板は完全には除去されていないことから、上記加工からスパイラル配線などの積層物を保護でき、Rdcなどの量産ばらつきを抑制できる。
【0013】
さらに、基板の加工量という調整要素を製造プロセスに加えることによって、インダクタ部品の強度、L、高さ寸法などの設計自由度を向上できるとともに、これらの量産ばらつきを低減できる。
【0014】
ここで、スパイラル配線とは、平面上で延伸する曲線(2次元曲線)を意味し、ターン数が1周を超える曲線であってもよく、ターン数が1周未満の曲線であってもよく、または、一部に直線を有していてもよい。
【0015】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記基板は、磁性体である。
【0016】
前記実施形態によれば、インダクタ部品における磁性体の領域が増えるため、Lを向上できる。
【0017】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1磁性層及び前記第2磁性層は、樹脂に含有された金属磁性粉を含み、
前記基板は、フェライトの焼結体である。
【0018】
前記実施形態によれば、金属磁性粉を含む第1磁性層及び第2磁性層により、直流重畳特性を向上できる。
【0019】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1磁性層及び前記第2磁性層は、さらにフェライト粉を含む。
【0020】
前記実施形態によれば、比透磁率の高いフェライトを含むことにより、第1磁性層及び第2磁性層の体積当たりの透磁率である実効透磁率を向上できる。
【0021】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1磁性層の厚みと前記第2磁性層の厚みの合計は、前記基板の厚みよりも大きい。
【0022】
前記実施形態によれば、樹脂を含む磁性層の割合が大きくなることで、インダクタ部品の応力吸収性が向上し、信頼性が向上する。また、第1磁性層及び第2磁性層が金属磁性粉を含む場合、インダクタ部品の直流重畳特性を向上できる。
【0023】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1磁性層の厚みと前記第2磁性層の厚みは、いずれも、前記基板の厚みよりも厚い。
【0024】
前記実施形態によれば、樹脂を含む磁性層の割合が一層大きくなることで、インダクタ部品の応力吸収性が一層向上し、信頼性が一層向上する。また、第1磁性層及び第2磁性層が金属磁性粉を含む場合、インダクタ部品の直流重畳特性を一層向上できる。
【0025】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1磁性層の電気抵抗率及び前記第2磁性層の電気抵抗率は、前記基板の電気抵抗率より高い。
【0026】
前記実施形態によれば、電気抵抗率が高い部分を含むことで、材料に由来する損失である鉄損を小さくできる。なお、上記において、第1磁性層、第2磁性層及び基板の電気抵抗率は、1.0Vにおける単位長さあたりの電気抵抗と断面積の積を基準とする。
【0027】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記基板の前記第1主面と前記第2主面を接続する側面の少なくとも一部は、前記第1磁性層又は前記第2磁性層に覆われている。
【0028】
前記実施形態によれば、樹脂を含む磁性層の割合が大きくなることで、インダクタ部品の応力吸収性が向上し、信頼性が向上する。また、第1磁性層及び第2磁性層が金属磁性粉を含む場合、インダクタ部品の直流重畳特性を向上できる。
【0029】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記基板は、クラック部を有する。
【0030】
前記実施形態によれば、クラック部において応力開放がなされ、インダクタ部品の衝撃耐性が向上する。
【0031】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記基板の前記第2主面上に配置された絶縁層をさらに備え、
前記スパイラル配線は、前記絶縁層上に形成されている。
【0032】
前記実施形態によれば、スパイラル配線の絶縁性が向上する。
【0033】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記絶縁層上に配置された第2絶縁層をさらに備え、前記スパイラル配線は、前記第2絶縁層に被覆されている。
【0034】
前記実施形態によれば、スパイラル配線の絶縁性が一層向上する。なお、絶縁層と第2絶縁層は一体化していてもよい。
【0035】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記スパイラル配線は、前記基板の前記第2主面上に配置されている。
【0036】
前記実施形態によれば、スパイラル配線と基板の第2主面との間に絶縁層などの他の構成要素を介さないため、同体積でのLやRdcなどの特性向上や同特性を維持した低背化などを実現できる。
【0037】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記スパイラル配線は、スパイラル形状の第1導体層と、前記第1導体層上に配置され、前記第1導体層に沿った形状の第2導体層とを有し、
前記第1導体層の厚みは、0.5μm以上である。
【0038】
前記実施形態によれば、第1導体層の厚みによって、基板の凹凸を吸収でき、第2導体層の形成・加工が容易になるので、インダクタ部品の形成精度が向上する。
【0039】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記スパイラル配線は、スパイラル形状の第1導体層と、前記第1導体層上に配置され、前記第1導体層に沿った形状の第2導体層とを有し、
前記第1導体層のNi含有率は、5.0wt%以下である。
【0040】
前記実施形態によれば、第1導体層の導電率と第2導体層の導電率の差を小さくでき、スパイラル配線を流れる電流は第1導体層および第2導体層の断面内をほぼ均一に流れ、スパイラル配線内の発熱を均一化できる。また、スパイラル配線のRdcが低減される。
【0041】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記スパイラル配線は、スパイラル形状の第1導体層と、前記第1導体層上に配置され、前記第1導体層に沿った形状の第2導体層とを有し、
前記第1導体層の側面のテーパー角度は、前記第2導体層の側面のテーパー角度よりも大きい。
【0042】
前記実施形態によれば、スパイラル配線の側面における第2磁性層の充填性が向上する。
【0043】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記スパイラル配線は、積層方向に複数配列され、前記複数のスパイラル配線は、直列接続されている。
【0044】
前記実施形態によれば、Lを向上できる。
【0045】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記スパイラル配線は、同一平面上に複数配置され、
同一平面上で隣り合う前記スパイラル配線は、互いに対向する側面を有し、前記各側面の少なくとも一部は、前記第2磁性層と接しており、
隣り合う前記スパイラル配線の間には、絶縁層が配置されている。
【0046】
前記実施形態によれば、隣り合うスパイラル配線の間の絶縁性、耐電圧が向上する。
【0047】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記スパイラル配線は、前記インダクタ部品の積層方向に平行な側面から外部に露出している露出部を有する。
【0048】
前記実施形態によれば、スパイラル配線は露出部を有することで、製造時の静電破壊耐性を向上できる。
【0049】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記露出部の露出面の厚みは、前記スパイラル配線の厚み以下で、かつ、45μm以上である。
【0050】
前記実施形態によれば、露出面の厚みがスパイラル配線の厚み以下であることにより、磁性層の割合を増やすことができ、Lを向上できる。また、露出面の厚みが45μm以上であることにより、断線の発生を低減できる。
【0051】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記露出面は、酸化膜である。
【0052】
前記実施形態によれば、インダクタ部品とその隣り合う部品との間でショートを抑制できる。
【発明の効果】
【0053】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、小型低背化に適したインダクタ部品を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0056】
(第1実施形態)
(構成)
図1Aは、インダクタ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。
図1Bは、
図1AのX−X断面図である。
【0057】
インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、スマートフォン、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載され、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0058】
図1Aと
図1Bに示すように、インダクタ部品1は、基板61と、第1磁性層11と、第2磁性層12と、絶縁層15と、スパイラル配線21と、垂直配線51、52と、外部端子41,42と、被覆膜50とを有する。
【0059】
基板61は、平板状であり、インダクタ部品1の製造プロセス上の基台となる部分である。基板61は、下面である第1主面61aと上面である第2主面61bとを含む。主面61a,61bに対する法線方向を、図中、Z方向(上下方向)とし、以下では、順Z方向を上側、逆Z方向を下側とする。なお、Z方向は他の実施形態、実施例においても同様とする。
【0060】
基板61は、第1主面61a側が研磨されており、基板61の厚みは、例えば、5μm以上100μm以下である。基板61は、例えば、NiZn系やMnZn系などのフェライトからなる磁性体基板や、アルミナ、ガラスからなる非磁性体基板などの焼結体であることが好ましい。これにより、基板61の強度や平坦性を確保でき、基板61上の積層物の加工性が向上する。
【0061】
スパイラル配線21は、基板61の上方側、具体的には基板61の第2主面61b上の絶縁層15上にのみ形成され、基板61の第2主面61bに沿ってスパイラル形状に延びる配線である。スパイラル配線21は、ターン数が1周を超えるスパイラル形状である。スパイラル配線21は、例えば、上側からみて、外周端21bから内周端21aに向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。
【0062】
スパイラル配線21の厚みは、例えば、40μm以上120μm以下であることが好ましい。スパイラル配線21の実施例として、厚みが45μm、配線幅が50μm、配線間スペースが10μmである。配線間スペースは3μm以上20μm以下が好ましい。
【0063】
スパイラル配線21は、導電性材料からなり、例えばCu、Ag,Auなどの低電気抵抗な金属材料からなる。本実施形態では、インダクタ部品1は、スパイラル配線21を1層のみ備えており、インダクタ部品1の低背化を実現できる。つまり、スパイラル配線21は、その両端(内周端21aおよび外周端21b)にスパイラル形状部分よりもやや線幅の大きいパッド部を有し、パッド部において、垂直配線51,52と直接接続されている。
【0064】
絶縁層15は、基板61の第2主面61b上に形成された膜状の層であり、スパイラル配線21を被覆している。具体的に述べると、絶縁層15は、スパイラル配線21の底面及び側面のすべてを覆い、スパイラル配線21の上面については、ビア導体25との接続部分を除いた部分を覆っている。絶縁層15は、スパイラル配線21の内周部分に対応した位置に孔部を有する。基板61とスパイラル配線21の底面との間の絶縁層15の厚みは、例えば、10μm以下である。
【0065】
絶縁層15は、磁性体を含有しない絶縁性材料からなり、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂などの樹脂材料からなる。なお、絶縁層15は、シリカなどの非磁性体のフィラーを含んでいてもよく、この場合は、絶縁層15の強度や加工性、電気的特性の向上が可能である。
【0066】
第1磁性層11は、基板61の第1主面61aと密着する。第2磁性層12は、基板61の第2主面61bの上方に配置されている。スパイラル配線21は、第2磁性層12と基板61との間に配置されている。なお、本実施形態では、第2磁性層12は、スパイラル配線21の上方だけではなく、スパイラル配線21の内周部分及び外周部分も覆うように、絶縁層15に沿って形成されている。
【0067】
第1磁性層11及び第2磁性層12は、磁性材料の粉末を含有する樹脂を含む。樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂及びこれらの混合体などである。磁性材料の粉末としては、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金などの金属磁性体材料の粉末、あるいは、NiZn系やMnZn系などのフェライトの粉末などである。磁性材料の含有率は、好ましくは、磁性層全体に対して50vol%以上85vol%以下である。なお、磁性材料の粉末は、粒子が略球形状であることが好ましく、平均粒径が5μm以下であることが好ましい。なお、第1、第2磁性層11,12を構成する樹脂は、絶縁層15と同種材料を用いることが好ましく、この場合、絶縁層15と第1、第2磁性層11,12の密着性を向上できる。
【0068】
垂直配線51,52は、導電性材料からなり、スパイラル配線21からZ方向に延在し、第2磁性層12の内部を貫通している。垂直配線51,52は、スパイラル配線21からZ方向に延在し、絶縁層15の内部を貫通するビア導体25と、ビア導体25からZ方向に延在し、第2磁性層12の内部を貫通する柱状配線31,32とを含む。
【0069】
第1垂直配線51は、スパイラル配線21の内周端21aの上面から上側に延在するビア導体25と、該ビア導体25から上側に延在し、第1磁性層11の内部を貫通する第1柱状配線31とを含む。第2垂直配線52は、スパイラル配線21の外周端21bの上面から上側に延在するビア導体25と、該ビア導体25から上側に延在し、第1磁性層11の内部を貫通する第2柱状配線32とを含む。垂直配線51,52は、スパイラル配線21と同様の材料からなる。
【0070】
外部端子41,42は、導電性材料からなり、例えば、低電気抵抗かつ耐応力性に優れたCu、耐食性に優れたNi、はんだ濡れ性と信頼性に優れたAuが内側から外側に向かってこの順に並ぶ3層構成である。
【0071】
第1外部端子41は、第2磁性層12の上面に設けられ、該上面から露出する第1柱状配線31の端面を覆っている。これにより、第1外部端子41は、スパイラル配線21の内周端21aに電気的に接続される。第2外部端子42は、第2磁性層12の上面に設けられ、該上面から露出する第2柱状配線32の端面を覆っている。これにより、第2外部端子42は、スパイラル配線21の外周端21bに電気的に接続される。
【0072】
外部端子41,42には、好ましくは、防錆処理が施されている。ここで、防錆処理とは、NiおよびAu、または、NiおよびSnなどで被膜することである。これにより、はんだによる銅喰われや、錆びを抑制することができ、実装信頼性の高いインダクタ部品1を提供できる。
【0073】
被覆膜50は、絶縁性材料からなり、第2磁性層12の上面を覆い、柱状配線31,32および外部端子41,42の端面を露出させている。被覆膜50によって、インダクタ部品1の表面の絶縁性を確保することができる。なお、被覆膜50が第1磁性層11の下面側に形成されていてもよい。
【0074】
前記インダクタ部品1によれば、第2磁性層12やスパイラル配線21といった第2主面61bの上方の積層物は焼結体であって安定した基板61の第2主面61b上に形成できるため、積層物の形成精度を向上できる。また、第1主面61aが第1磁性層11と密着しているので、第1主面61aにはスパイラル配線21が形成されていない。これによれば、積層物の形成精度を向上するため、基板61の厚みをある程度確保した場合であっても、基板61は、第1主面61a側から研磨などの加工が可能であるため、第2主面61b上に積層物を形成した後に厚みを低減することができる。したがって、インダクタ部品1の形成精度と低背化とを両立できる。
【0075】
また、基板61は完全には除去されていないことから、上記加工からスパイラル配線21、第2磁性層12、絶縁層15などの積層物を保護でき、Rdcなどの量産ばらつきを抑制できる。
【0076】
さらに、基板61の加工量という調整要素を製造プロセスに加えることによって、インダクタ部品1の強度、L、高さ寸法などの設計自由度を向上できるとともに、これら量産ばらつきを低減できる。
【0077】
また、絶縁層15は、基板61の第2主面61b上に直接に配置され、スパイラル配線21は、絶縁層15上に形成されている。これによれば、第2主面61bとの間に絶縁層15を介するため、スパイラル配線21の第2主面61b側の絶縁性が向上する。
【0078】
また、スパイラル配線21は、絶縁層15に被覆されている。これによれば、スパイラル配線21が絶縁層15で被覆され、スパイラル配線21の絶縁性が一層向上する。なお、本実施形態ではスパイラル配線21が形成された絶縁層15と、スパイラル配線21を被覆する絶縁層15が一体化しているが、例えば、スパイラル配線21が形成された絶縁層とは別の、スパイラル配線21を被覆する第2絶縁層をさらに備える構成であってもよい。
【0079】
好ましくは、基板61は、磁性体である。これによれば、インダクタ部品1における磁性体の領域が増えるため、Lを向上できる。
【0080】
好ましくは、第1、第2磁性層11,12は、樹脂に含有された金属磁性粉を含み、基板61は、フェライトの焼結体である。これによれば、金属磁性粉を含む第1磁性層11及び第2磁性層12により、直流重畳特性を向上できる。
【0081】
好ましくは、第1、第2磁性層11,12は、さらにフェライト粉を含む。これによれば、金属磁性粉だけでなく、比透磁率の高いフェライトを含むことにより、第1、第2磁性層11,12の体積当たりの透磁率である実効透磁率を向上できる。
【0082】
好ましくは、第1磁性層11の厚みと第2磁性層12の厚みの合計は、基板61の厚みよりも厚い。言い換えると、第1磁性層11の体積と第2磁性層12の体積との合計は、基板61の体積よりも大きい。これによれば、比較的柔らかい樹脂を含む磁性層11,12の割合が大きくなることで、インダクタ部品1の応力吸収性が向上し、熱衝撃や外圧などの影響を低減できるため、インダクタ部品1の信頼性が向上する。また、第1、第2磁性層11,12が金属磁性粉を含む場合、インダクタ部品1の直流重畳特性を向上できる。
【0083】
好ましくは、第1磁性層11の厚みと第2磁性層12の厚みは、いずれも、基板61の厚みよりも厚い。これによれば、比較的柔らかい樹脂を含む磁性層11,12の割合が一層大きくなることで、インダクタ部品1の応力吸収性が一層向上し、熱衝撃や外圧などの影響を低減できるため、インダクタ部品1の信頼性が一層向上する。また、第1、第2磁性層11,12が金属磁性粉を含む場合、インダクタ部品1の直流重畳特性を一層向上できる。
【0084】
好ましくは、第1磁性層11の電気抵抗率及び第2磁性層12の電気抵抗率は、基板61の電気抵抗率より高い。これによれば、電気抵抗率が高い部分を含むことで、材料に由来する損失である鉄損を小さくできる。
【0085】
本願における電気抵抗率の測定方法としては、具体的には、研磨や切り出しによって取り出した測定対象物に、ガリウム・インジウム合金の電極を形成した上で、絶縁抵抗計を用いて、室温下、1.0Vの印加電圧で電気抵抗を測定し、形成した電極面積と電極間距離を基に、電気抵抗率(Ω・m)=電気抵抗(Ω)×(電極面積(m
2)/電極間距離(m))の式より算出すればよい。なお、材料状態の測定対象物については、加圧・加熱などで硬化させた上で測定すればよい。例えば、第1磁性層11及び第2磁性層12の電気抵抗率は、1.0×10
11〜12Ω・mのオーダーであり、基板61の電気抵抗率は、1.0×10
9〜10Ω・mのオーダーである。
【0086】
好ましくは、基板61は、クラック部を有する。クラック部は、基板61の内部の破断により形成される。これによれば、クラック部において応力開放がなされ、インダクタ部品1の衝撃耐性が向上する。
【0087】
好ましくは、スパイラル配線21は、スパイラル形状の第1導体層と、第1導体層上に配置され、第1導体層に沿った形状の第2導体層とを有し、第1導体層の厚みは、0.5μm以上である。これによれば、第1導体層の厚みによって、基板61の凹凸を吸収でき、第2導体層の形成・加工が容易になるので、インダクタ部品1の形成精度が向上する。
【0088】
好ましくは、スパイラル配線21は、スパイラル形状の第1導体層と、第1導体層上に配置され、第1導体層に沿った形状の第2導体層とを有し、第1導体層のNi含有率は、5.0wt%以下である。これによれば、第1導体層の導電率と第2導体層の導電率の差を小さくでき、スパイラル配線21を流れる電流は第1導体層および第2導体層の断面内をほぼ均一に流れ、スパイラル配線21内の発熱を均一化できる。またスパイラル配線21のRdcが低減される。また、このとき、第1導体層211は、無電解めっきで形成されていないといえる。
上記で記載したように、第1導体層が無電解めっきで形成されていない場合、第1磁性層11への触媒付与プロセス、無電解めっきプロセス(シード層形成工程)や、無電解めっきで形成された導体層をエッチングするプロセス(シード層除去工程)による第1磁性層11への影響を無くすことができる。具体的には、第1磁性層11は、磁性粉を含有するが、この磁性粉が第1導体層形成時の前処理やプロセスで使用されるめっき液、エッチング液などによって除去されてしまうことを抑制することができる。したがって、上記のとおり、第1導体層が無電解めっきで形成されていない特徴を有する場合、第1磁性層11の透磁率低下や強度低下を抑制することができる。
【0089】
なお、Ni含有率の測定方法としては、必要に応じて第1導体層と第2導体層の境界を明確化する前処理を行った上で、第1導体層側について、走査透過型電子顕微鏡(STEM)によるEDX分析を行ってNiの含有率(wt%)を算出する。前処理については、例えば、第1導体層及び第2導体層を有する配線について、研磨やミリングなどで断面上に露出させ、当該断面をArによるドライエッチングまたは硝酸によるウェットエッチングで薄くエッチングすれば、エッチングレートの差より第1導体層と第2導体層の境界がより明らかになる。ただし、前処理の有無に関わらず、STEMで粒子の連続性、粒径から、第1導体層を判別してもよい。EDX分析では、例えばJEOL社製のJEM−2200FSをSTEMとして、Thermo Fisher Scientific社製のNoran System 7をEDXシステムとして用いて、400kの倍率(必要により400k以上の倍率)で実施すればよい。
【0090】
好ましくは、スパイラル配線21は、
図2に示すように、スパイラル形状の第1導体層211と、第1導体層211上に配置され、第1導体層211に沿った形状の第2導体層212とを有する。第1導体層211の側面211aのテーパー角度は、第2導体層212の側面212aのテーパー角度よりも大きい。第1導体層211の側面211aは、第1導体層211の幅方向の面をいい、第2導体層212の側面212aは、第2導体層212の幅方向の面をいう。これによれば、スパイラル配線21が順テーパーとなりスパイラル配線21の配線間に第2磁性層12を充填しやすくなる。
例えば、第1導体層211の側面211aのテーパー角度は30.0°、第2導体層212の側面212aのテーパー角度は1.2°である。この際、Z方向を基準(0°)として、テーパー形状になる場合の角度を正、逆テーパー形状になる場合の角度を負とする。また、テーパー角度は、正確には、第1導体層211、第2導体層212のそれぞれの厚みの上下20%を除いた80%分の領域で測定すればよい。
また、好ましくは、第1導体層211の線幅は、第2導体層212の線幅と異なる。第1導体層211の線幅は、第1導体層211の幅の最大値をいい、第2導体層212の線幅は、第2導体層212の幅の最大値をいう。これによれば、様々な形状を形成する導体層の形成方法の組合せを採用でき、スパイラル配線21の設計自由度が増す。
また、第1導体層211の線幅は、第2導体層212の線幅よりも大きいことが好ましく、これによれば、スパイラル配線21が、底面側は太く、天面側は細い順テーパー形状となり、スパイラル配線21の側面付近に第2磁性層12を充填しやすくなる。
なお、
図2の線幅、テーパー角度の関係に限られず、例えば、第1導体層211の線幅またはテーパー角度が、第2導体層212の線幅またはテーパー角度よりも小さくてもよい。
【0091】
なお、基板61は、スパイラル配線21の内周部分に対応した位置に孔部を設けてもよく、基板61の孔部に第1磁性層11または第2磁性層12もしくはその両方を配置することができ、比較的柔らかい樹脂を含む第1、第2磁性層11,12の割合が大きくなることで、インダクタ部品1の応力吸収性が向上し、熱衝撃や外圧などの影響を低減できるため、インダクタ部品1の信頼性を向上できる。また、第1磁性層11、第2磁性層12が金属磁性粉を含む場合、インダクタ部品1の直流重畳特性を向上できる。
【0092】
また、基板61は、スパイラル配線21のスパイラル形状に沿った形状としてもよく、インダクタ部品1における基板61の割合を低減して、比較的柔らかい樹脂を含む第1、第2磁性層11,12の割合が大きくなることで、インダクタ部品1の応力吸収性が向上し、熱衝撃や外圧などの影響を低減できるため、インダクタ部品1の信頼性を向上できる。また、第1磁性層11、第2磁性層12が金属磁性粉を含む場合、インダクタ部品1の直流重畳特性を向上できる。
【0093】
また、スパイラル配線21からインダクタ部品1の下面に引き出すように垂直配線を設けてもよい。このとき、インダクタ部品1の下面に垂直配線に接続される外部端子を設けてもよい。これにより、インダクタ部品1と他の回路部品との接続自由度を向上できる。
【0094】
また、インダクタ部品1は、1つのスパイラル配線21を有するが、この構成に限られず、同一平面上に巻回された2つ以上のスパイラル配線を備えていてもよい。インダクタ部品1では外部端子の形成自由度が高いため、外部端子の数が多いインダクタ部品において、その効果はより一層顕著となる。
【0095】
(製造方法)
次に、インダクタ部品1の製造方法について説明する。
【0096】
図3Aに示すように、基板61を準備する。基板61は、例えば、焼結フェライトからなる平板状の基板である。基板61の厚みは、インダクタ部品の厚みに影響を与えないため、加工上のそりなどの理由から適宜取り扱いやすい厚さのものを用いればよい。
【0097】
図3Bに示すように、基板61上に磁性体を含有しない絶縁層62を形成する。絶縁層62は、例えば、磁性体を含有しないポリイミド系樹脂などからなり、基板61の上面(第2主面61b)上に上記ポリイミド系樹脂を印刷、塗布などによってコーティングして形成される。なお、絶縁層62は、例えば、基板61の上面上に、蒸着、スパッタリング、CVDなどのドライプロセスによってシリコン酸化膜などの無機材料の薄膜として形成してもよい。
【0098】
図3Cに示すように、絶縁層62をフォトリソグラフィによってパターニングして、スパイラル配線を形成する領域を残す。つまり、絶縁層62をスパイラル配線に沿った部分を残して除去する。絶縁層62には、基板61が露出する開口部62aが設けられる。
図3Dに示すように、絶縁層62上を含め、基板61上にCuのシード層63をスパッタリングや無電解めっきで形成する。なお、シード層63は、別の基板上において電解めっきにより形成し、基板61へ転写してもよい。
【0099】
図3Eに示すように、シード層63上にドライフィルムレジスト(DFR)64を貼り付ける。
図3Fに示すように、DFR64をフォトリソグラフィによりパターニングして、スパイラル配線21を形成する領域に貫通孔64aを形成し、貫通孔64aからシード層63を露出させる。
【0100】
図3Gに示すように、電解めっきにより、貫通孔64a内のシード層63上に金属膜65を形成する。
図3Hに示すように、金属膜65の形成後、DFR64を除去し、シード層63のうち、金属膜65が形成されていない露出部分をエッチングにより除去する。これにより、スパイラル配線21が形成され、スパイラル配線21の内周部及び外周部に対応する位置に犠牲導体層66が形成される。
【0101】
図3Iに示すように、絶縁層62をさらに形成し、
図3Cと同様に、絶縁層62における、スパイラル配線21の内周部及び外周部に重なる領域を除去する。
図3Jに示すように、犠牲導体層66を除去する。その後、この際、スパイラル配線21の両端部上の絶縁層62も除去する。これにより、スパイラル配線21を絶縁層15(絶縁層62)により被覆する。つまり、スパイラル配線21は、第1導体層としてのシード層63と、第2導体層としての金属膜65とを有する。金属膜65は、シード層63に沿ったスパイラル形状である。
【0102】
図3Kに示すように、
図3Dから
図3Hと同様にして、ビア導体25および第1、第2柱状配線31,32を形成する。これにより、第1、第2垂直配線51,52を形成する。
【0103】
図3Lに示すように、磁性体材料からなる磁性シート67を基板61の上面側(スパイラル配線形成側)に圧着する。これにより、基板61の第2主面61b側に第2磁性層12を形成する。
【0104】
図3Mに示すように、磁性シート67を研磨し、垂直配線51,52(柱状配線31,32)の上端を露出させる。
図3Nに示すように、磁性シート67の上面上に、被覆膜50としてのソルダーレジスト(SR)68を形成する。
【0105】
図3Oに示すように、SR68をフォトリソグラフィによりパターニングし、外部端子を形成する領域に、第1、第2垂直配線51,52および第2磁性層12(磁性シート67)が露出する貫通孔68aを形成する。
【0106】
図3Pに示すように、基板61を第1主面61a側から研磨する。このとき、基板61を完全に除去せず、一部を残す。
図3Qに示すように、磁性体材料からなる磁性シート67を基板61の研磨側の第1主面61aに圧着し適切な厚みに研磨する。
【0107】
図3Rに示すように、無電解めっきにより、垂直配線51,52からSR68の貫通孔68a内に成長するCu/Ni/Auの金属膜69を形成する。金属膜69により、第1垂直配線51に接続される第1外部端子41と、第2垂直配線52に接続される第2外部端子42を形成する。
図3Sに示すように、個片化し、必要に応じてバレル研磨を行い、バリを除去して、インダクタ部品1を製造する。
【0108】
なお、上記のインダクタ部品1の製造方法はあくまで一例であって、各工程において用いる工法や材料は、適宜他の公知のものと置き換えても良い。例えば、上記では、絶縁層62やDFR64、SR68はコーティング後にパターニングしたが、塗布、印刷、マスク蒸着、リフトオフなどによって、直接必要な部分に絶縁層62を形成してもよい。また、基板61の除去や磁性シート67の薄層化には研磨を用いたが、ブラスト、レーザーなどの他の物理プロセスや、フッ酸処理などの化学プロセスを用いてもよい。
【0109】
(第2実施形態)
図4は、インダクタ部品の第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、絶縁層および磁性層の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0110】
図4に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aは、第1実施形態のインダクタ部品1と比較すると、第1実施形態の絶縁層15がなく、基板61が磁性層11,12に覆われている。
【0111】
具体的に述べると、基板61の第1主面61aと第2主面61bを接続する側面61cは、第1磁性層11又は第2磁性層12に覆われている。これによれば、比較的柔らかい樹脂を含む磁性層11,12の割合が大きくなることで、インダクタ部品1Aの応力吸収性が向上し、熱衝撃や外圧などの影響を低減できるため、インダクタ部品1Aの信頼性が向上する。また、磁性層11,12が金属磁性粉を含む場合、インダクタ部品1Aの直流重畳特性を向上できる。なお、全ての側面61cが磁性層11,12に覆われていてもよいし、側面61cの少なくとも一部が、磁性層11,12に覆われていてもよい。
【0112】
また、スパイラル配線21は、基板61の第2主面61b上に直接に配置されている。すなわち、第2主面61bはスパイラル配線21と密着している。これによれば、スパイラル配線21と基板61の第2主面61bとの間に絶縁層15などの他の構成要素を介さないため、同体積でのLやRdcなどの特性向上や同特性を維持した低背化などを実現できる。
【0113】
なお、本実施形態では、さらに第2磁性層12は、スパイラル配線21を含む基板61の第2主面61b上に直接に配置されている。すなわち、スパイラル配線21は、第2磁性層12と密着している。これによれば、スパイラル配線21と第2磁性層12との間に絶縁層15などの他の構成要素を介さないため、同体積でのLやRdcなどの特性(向上や同特性を維持した低背化などをより一層実現できる。
【0114】
また、第2磁性層12が、絶縁層15を介さずにスパイラル配線21と密着することにより、垂直配線51,52は、絶縁層15の内部を貫通するビア導体25を含まない。すなわち、スパイラル配線21は、第2磁性層12の内部を貫通する柱状配線31,32と直接接続されている。これにより、垂直配線51,52内における界面を減らすことができ、接続信頼性を向上できる。また、柱状配線31,32よりも断面積が小さいビア導体25を含まないため、インダクタ部品1AのRdcを低減することができる。
【0115】
(第3実施形態)
図5Aは、インダクタ部品の第3実施形態を示す透視平面図である。
図5Bは、
図5AのX−X断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、スパイラル配線の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0116】
図5Aと
図5Bに示すように、第3実施形態のインダクタ部品1Bでは、第1実施形態のインダクタ部品1と比較して、スパイラル配線21,22は、積層方向に複数配列され、複数のスパイラル配線21,22は、直列接続されている。
【0117】
具体的に述べると、第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22は、Z方向に積層されている。第1スパイラル配線21は、上側からみて、外周端21bから内周端21aに向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。第2スパイラル配線22は、上側からみて、内周端22aから外周端22bに向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。
【0118】
第1スパイラル配線21の外周端21bは、その外周端21bの上側の第1垂直配線51(ビア導体25および第1柱状配線31)を介して、第1外部端子41に接続される。第1スパイラル配線21の内周端21aは、その内周端21aの下側の第2ビア導体27を介して、第2スパイラル配線22の内周端22aに接続される。
【0119】
第2スパイラル配線22の外周端22bは、その外周端22bの上側の第2垂直配線52(ビア導体25、26および第2柱状配線32)を介して、第2外部端子42に接続される。ビア導体26は、図示されていないが、第2スパイラル配線22の外周端22bの上側のビア導体25からZ方向に延在し絶縁層15の内部を貫通する。ビア導体26は、第1スパイラル配線21と同一平面上に形成される。
【0120】
前記インダクタ部品1Bでは、第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22とが直列に接続されているので、ターン数を増やすことでLを向上できる。また、第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22は、それぞれ法線方向に積層されているので、ターン数に対してZ方向からみたインダクタ部品1Bの面積、すなわち実装面積を低減でき、インダクタ部品1Bの小型化が実現できる。
【0121】
なお、インダクタ部品1Bでは、直列接続されたスパイラル配線を2層備える構成であったが、これに限られず、直列接続されたスパイラル配線は3層以上であってもよい。また、インダクタ部品1Bでは、2層のスパイラル配線からなるインダクタを同一平面上に1つ配置しているが、同一平面上にインダクタを2つ以上配置していてもよい。
【0122】
(第4実施形態)
図6Aは、インダクタ部品の第4実施形態を示す透視平面図である。
図6Bは、
図6AのX−X断面図である。第4実施形態は、第1実施形態とは、スパイラル配線の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第4実施形態において、他の実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0123】
図6Aと
図6Bに示すように、第4実施形態のインダクタ部品1Cでは、第1実施形態のインダクタ部品1と比較して、スパイラル配線21C〜24Cは、同一平面上に複数配列されている。
【0124】
第1スパイラル配線21C、第2スパイラル配線22C、第3スパイラル配線23Cおよび第4スパイラル配線24Cは、Z方向から見たときに、半楕円形の弧状である。すなわち、第1〜第4スパイラル配線21C〜24Cは、約半周分巻回された曲線状の配線である。また、スパイラル配線21C〜24Cは、中間部分で直線部を含んでいる。
【0125】
第1、第4スパイラル配線21C,24Cは、その両端が外側に位置する第1垂直配線51および第2垂直配線52に接続され、第1垂直配線51および第2垂直配線52からインダクタ部品1Cの中心側に向かって孤を描く曲線状である。
【0126】
第2、第3スパイラル配線22C,23Cは、その両端が内側に位置する第1垂直配線51)および第2垂直配線52に接続され、第1垂直配線51および第2垂直配線52からインダクタ部品1Cの縁側に向かって孤を描く曲線状である。
【0127】
ここで、第1〜第4スパイラル配線21C〜24Cのそれぞれにおいて、スパイラル配線21C〜24Cが描く曲線と、スパイラル配線21C〜24Cの両端を結んだ直線とに囲まれる範囲を内径部分とする。このとき、Z方向からみて、いずれのスパイラル配線21C〜24Cについても、その内径部分同士は重ならない。
【0128】
一方、第1、第2スパイラル配線21C,22Cは、互いに近接している。すなわち、第1スパイラル配線21Cで発生した磁束は、近接する第2スパイラル配線22Cの周囲を回り込み、第2スパイラル配線22Cで発生した磁束は、近接する第1スパイラル配線21Cの周囲を回り込む。これは、互いに近接している第3、第4スパイラル配線23C,24Cでも同様である。したがって、第1スパイラル配線21Cと第2スパイラル配線22Cと、第3スパイラル配線23Cと第4スパイラル配線24Cとはそれぞれ磁気結合している。
【0129】
なお、第1、第2スパイラル配線21C,22Cにおいて、同じ側にある一端からその反対側にある他端に向かって同時に電流が流れた場合、互いの磁束は強めあう。これは、第1スパイラル配線21Cと第2スパイラル配線22Cの同じ側にある各一端を共にパルス信号の入力側、その反対側にある各他端を共にパルス信号の出力側とした場合に、第1スパイラル配線21Cと第2スパイラル配線22Cとは正結合されていることを意味する。一方、例えば、第1スパイラル配線21Cと第2スパイラル配線22Cの一方のスパイラル配線では一端側を入力、他端側を出力とし、他方のスパイラル配線では一端側を出力、他端側を入力とすれば、第1スパイラル配線21Cと第2スパイラル配線22Cとは負結合されている状態とできる。これは第3、第4スパイラル配線23C,24Cについても同様である。
【0130】
第1から第4スパイラル配線21C〜24Cの一端側に接続された第1垂直配線51、および、第1から第4スパイラル配線21C〜24Cの他端側に接続された第2垂直配線52は、それぞれ、第2磁性層12の内部を貫通し、上面において露出する。第1垂直配線51には、第1外部端子41が接続され、第2垂直配線52には、第2外部端子42が接続される。
【0131】
第1スパイラル配線21Cと第2スパイラル配線22Cは、絶縁層15に一体に覆われており、第1スパイラル配線21Cと第2スパイラル配線22Cの電気的絶縁性を確保する。第3スパイラル配線23Cと第4スパイラル配線24Cは、絶縁層15に一体に覆われており、第3スパイラル配線23Cと第4スパイラル配線24Cの電気的絶縁性を確保する。
【0132】
また、インダクタ部品1Cでは、スパイラル配線21C〜24Cの垂直配線51,52との接続位置からチップの外側に向かってさらに配線が伸びて、この配線はチップの外側に露出している。つまり、スパイラル配線21C〜24Cは、インダクタ部品1Cの積層方向に平行な側面から外部に露出している露出部200を有する。
【0133】
この露出部200は、前述のインダクタ部品1の製造方法において、電解めっきにて金属膜65を形成後、個片化する前に、追加で電解めっきを行う際の給電配線と接続される。この給電配線によりシード層63を除去した後であっても、追加で電解めっきを容易に行うことができ、シード層63及び金属膜65からなるスパイラル配線の配線間距離をより狭くすることができる。具体的には、インダクタ部品1Cにおいては、上記追加の電解めっきを行うことで、第1、第2スパイラル配線21C,22Cの配線間距離および第3、第4スパイラル配線23C,24Cの配線間距離を狭くでき、磁気結合を高めることができる。
【0134】
また、スパイラル配線21C〜24Cは、露出部200を有するので、製造時の静電破壊耐性を向上できる。具体的には、前述のインダクタ部品1の製造方法において、個片化する前は、各露出部200は給電配線を介して複数のインダクタ部品と接続されている。したがって、この状態で各配線に静電気が印加されても、給電配線を通じて、当該静電気を分散、グランドへ放出することが可能となり、静電破壊耐性を向上できる。
【0135】
好ましくは、各スパイラル配線21C〜24Cにおいて、露出部200の露出面200aの厚みは、各スパイラル配線21C〜24Cの厚み以下で、かつ、45μm以上である。これによれば、露出面200aの厚みがスパイラル配線21C〜24Cの厚み以下であることにより、磁性層11,12の割合を増やすことができ、Lを向上できる。また、露出面200aの厚みが45μm以上であることにより、断線の発生を低減できる。
【0136】
好ましくは、露出面200aは、酸化膜である。これによれば、インダクタ部品1Cとその隣り合う部品との間でショートを抑制できる。
【0137】
なお、第1から第3実施形態において、スパイラル配線に、第4実施形態の露出部200と同様の露出部を設けてもよい。
【0138】
(第5実施形態)
図7Aは、インダクタ部品の第5実施形態を示す透視平面図である。
図7Bは、
図7AのX−X断面図である。第5実施形態は、第4実施形態とは、絶縁層の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第5実施形態において、他の実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0139】
図7Aと
図7Bに示すように、第5実施形態のインダクタ部品1Dでは、第4実施形態のインダクタ部品1Cと比較して、絶縁層15は、スパイラル配線21C,22Cの全周を覆っていない。
【0140】
具体的に述べると、隣り合うスパイラル配線21C,22Cは、互いに対向する側面210C,220Cを有する。各側面210C,220Cの少なくとも一部は、第2磁性層12と接している。これにより、第2磁性層12の量を増加できて、比較的柔らかい樹脂を含む第2磁性層12の割合を大きくして、インダクタ部品1Dの応力吸収性を向上し、熱衝撃や外圧などの影響を低減できるため、インダクタ部品1Dの信頼性を向上できる。また、第2磁性層12が金属磁性粉を含む場合、インダクタ部品1Dの直流重畳特性を向上できる。
【0141】
また、隣り合うスパイラル配線21C,22Cの間には、絶縁層15が配置されている。これにより、隣り合うスパイラル配線21C,22Cの間の絶縁性、耐電圧が向上する。絶縁層15は、隣り合うスパイラル配線21C,22Cの間の最小距離部に位置し、各側面210C,220Cの一部に接触している。なお、絶縁層15は、各側面210C,220Cに接触しなくてもよく、例えば、隣り合うスパイラル配線21C,22Cの間において、側面210C、第2磁性層12、絶縁層15、第2磁性層12、側面220Cの順に並んでいてもよい。
【0142】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第5実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0143】
第2実施形態では、スパイラル配線21は基板61の第2主面61b、第2磁性層12の両方に密着していたが、これに限られず、第2主面61bとのみ、又は第2磁性層12とのみ密着し、その他の部分については絶縁層15を介していてもよい。さらに、第2実施形態では、スパイラル配線21は第2磁性層12と側面及び上面で密着していたが、側面又は上面のいずれか一方のみと密着し、他方とは絶縁層15を介していてもよいし、側面または上面の全面ではなく、一部のみ第2磁性層12と密着し、その他の部分については絶縁層15を介していてもよい。