(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の積層コイル部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る積層コイル部品では、積層方向が実装面に対して平行である。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示す積層コイル部品1は、素子本体10と、素子本体10の外表面に設けられた第1の外部電極21及び第2の外部電極22と、素子本体10の外表面に設けられた異種材料層33及び34とを備えている。素子本体10の構成については後述するが、複数の絶縁層が積層されて構成されており、内部にコイルが埋設されている。
【0013】
図1に示す積層コイル部品1及び素子本体10では、長さ方向、幅方向、高さ方向を、
図1におけるL方向、W方向、T方向とする。ここで、長さ方向(L方向)と幅方向(W方向)と高さ方向(T方向)とは互いに直交する。
【0014】
図2は、
図1に示す積層コイル部品を構成する素子本体及び異種材料層の一例を模式的に示す分解斜視図である。
図2に示す素子本体10は、直方体状又は略直方体状であり、長さ方向(L方向)に相対する第1の端面11及び第2の端面12と、幅方向(W方向)に相対する第1の側面13及び第2の側面14と、高さ方向(T方向)に相対する第1の主面15及び第2の主面16とを有する。
【0015】
素子本体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、素子本体の3面が交わる部分であり、稜線部は、素子本体の2面が交わる部分である。
【0016】
図1では、第1の外部電極21は、素子本体10の第1の端面11の全体を覆うとともに、素子本体10の第1の側面13及び第2の側面14並びに第1の主面15及び第2の主面16の一部を覆っている。第2の外部電極22は、素子本体10の第2の端面12の全体を覆うとともに、素子本体10の第1の側面13及び第2の側面14並びに第1の主面15及び第2の主面16の一部を覆っている。
【0017】
図3は、
図2に示す素子本体の分解斜視図である。
図3に示すように、素子本体10は、複数の絶縁層41a、41b、41c、41d、41e、41f、41g及び41hが長さ方向(L方向)に積層されて構成されている。
したがって、
図1、
図2及び
図3では、長さ方向(L方向)が積層方向である。
【0018】
絶縁層41b、41c、41d、41e、41f、41g及び41hの主面上には、コイル導体層42a、42b、42c、42d、42e、42f及び42gがそれぞれ設けられている。コイル導体層42a〜42gは、角張ったU字型であり、3/4ターンの長さを有している。
【0019】
さらに、絶縁層41b、41c、41d、41e、41f及び41gには、積層方向(
図3ではL方向)に貫通するように、ビア導体43a、43b、43c、43d、43e及び43fがそれぞれ設けられている。通常、絶縁層の主面上には、ビア導体と接続されるランドが設けられる。
【0020】
以上のように、絶縁層41a〜41h間に設けられたコイル導体層42a〜42gと絶縁層41a〜41hを積層方向に貫通するビア導体43a〜43fとが接続されることにより、L方向に延在するコイル軸を有するコイルが構成される。
【0021】
コイル導体層42aは、
図3に示すように、引き出し部44aを含んでいる。
図2に示すように、引き出し部44aは素子本体10の第2の主面16に露出し、引き出し部44aを介してコイル導体層42aと第1の外部電極21とが接続される。同様に、コイル導体層42gは、
図3に示すように、引き出し部44bを含んでいる。
図2に示すように、引き出し部44bは素子本体10の第1の主面15に露出し、引き出し部44bを介してコイル導体層42gと第2の外部電極22とが接続される。したがって、第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、それぞれコイルと電気的に接続される。
【0022】
図2に示すように、異種材料層33は素子本体10の第1の側面13に設けられ、異種材料層34は素子本体10の第2の側面14に設けられる。
異種材料層33が設けられている素子本体10の第1の側面13、及び、異種材料層34が設けられている素子本体10の第2の側面14は、いずれも素子本体10の積層方向であるL方向に平行であるため、異種材料層33及び34は、いずれも素子本体10の積層方向であるL方向に平行な外表面に設けられていると言える。
【0023】
図1に示す積層コイル部品1を基板上に実装する場合には、素子本体10の第1の主面15又は第2の主面16が実装面となる。したがって、
図1に示す積層コイル部品1では、積層方向(
図1ではL方向)が実装面に対して平行である。
【0024】
図4は、本発明の第1実施形態に係る積層コイル部品を構成する素子本体及び異種材料層の別の一例を模式的に示す分解斜視図である。
図4に示す素子本体10Aは、直方体状又は略直方体状であり、長さ方向(L方向)に相対する第1の端面11及び第2の端面12と、幅方向(W方向)に相対する第1の側面13及び第2の側面14と、高さ方向(T方向)に相対する第1の主面15及び第2の主面16とを有する。素子本体10Aは、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。
【0025】
図5は、
図4に示す素子本体の分解斜視図である。
図5に示すように、素子本体10Aは、複数の絶縁層141a、141b、141c、141d、141e、141f、141g及び141hが長さ方向(L方向)に積層されて構成されている。
したがって、
図4及び
図5では、長さ方向(L方向)が積層方向である。
【0026】
絶縁層141b、141c、141d、141e、141f、141g及び141hの主面上には、コイル導体層42a、42b、42c、42d、42e、42f及び42gがそれぞれ設けられている。コイル導体層42a〜42gは、角張ったU字型であり、3/4ターンの長さを有している。
【0027】
さらに、絶縁層141b、141c、141d、141e、141f及び141gには、積層方向(
図5ではL方向)に貫通するように、ビア導体43a、43b、43c、43d、43e及び43fがそれぞれ設けられている。通常、絶縁層の主面上には、ビア導体と接続されるランドが設けられる。
【0028】
以上のように、絶縁層141a〜141h間に設けられたコイル導体層42a〜42gと絶縁層141a〜141hを積層方向に貫通するビア導体43a〜43fとが接続されることにより、L方向に延在するコイル軸を有するコイルが構成される。
【0029】
コイル導体層42aは、
図5に示すように、引き出し部44aを含んでいる。
図4に示すように、引き出し部44aは素子本体10Aの第2の主面16に露出し、引き出し部44aを介してコイル導体層42aと第1の外部電極21とが接続される。同様に、コイル導体層42gは、
図5に示すように、引き出し部44bを含んでいる。
図4に示すように、引き出し部44bは素子本体10Aの第1の主面15に露出し、引き出し部44bを介してコイル導体層42gと第2の外部電極22とが接続される。したがって、第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、それぞれコイルと電気的に接続される。
【0030】
図4に示す素子本体10Aは、絶縁層141a〜141h間からコイル導体層42a〜42gが露出していることを除いて、
図2に示す素子本体10と同様の構成を有している。
【0031】
図4に示すように、異種材料層33は素子本体10Aの第1の側面13に設けられ、異種材料層34は素子本体10Aの第2の側面14に設けられる。
異種材料層33が設けられている素子本体10Aの第1の側面13、及び、異種材料層34が設けられている素子本体10Aの第2の側面14は、いずれも素子本体10Aの積層方向であるL方向に平行であるため、異種材料層33及び34は、いずれも素子本体10Aの積層方向であるL方向に平行な外表面に設けられていると言える。さらに、異種材料層33及び34は、いずれも絶縁層141a〜141h間から露出したコイル導体層42a〜42gと接している。
【0032】
図2及び
図4では、素子本体の第1の側面及び第2の側面にそれぞれ異種材料層が設けられているが、素子本体の第1の側面及び第2の側面のいずれか一方の面に異種材料層が設けられていてもよい。また、素子本体の第1の主面及び第2の主面にそれぞれ異種材料層が設けられていてもよいし、素子本体の第1の主面及び第2の主面のいずれか一方の面に異種材料層が設けられていてもよい。すなわち、素子本体の第1の側面、第2の側面、第1の主面及び第2の主面の少なくとも一面に異種材料層が設けられていればよい。異種材料層は、絶縁層間から露出したコイル導体層と接していてもよい。
【0033】
素子本体の第1の側面、第2の側面、第1の主面及び第2の主面の少なくとも一面に異種材料層が設けられている場合、素子本体の第1の端面及び第2の端面の少なくとも一面にも異種材料層が設けられていてもよい。
【0034】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る積層コイル部品では、積層方向が実装面に対して直交している。
【0035】
図6は、本発明の第2実施形態に係る積層コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図6に示す積層コイル部品2は、素子本体110と、素子本体110の外表面に設けられた第1の外部電極21及び第2の外部電極22と、素子本体110の外表面に設けられた異種材料層33及び34とを備えている。素子本体110の構成については後述するが、複数の絶縁層が積層されて構成されており、内部にコイルが埋設されている。
【0036】
図6に示す積層コイル部品2及び素子本体110では、長さ方向、幅方向、高さ方向を、
図6におけるL方向、W方向、T方向とする。ここで、長さ方向(L方向)と幅方向(W方向)と高さ方向(T方向)とは互いに直交する。
【0037】
図7は、
図6に示す積層コイル部品を構成する素子本体及び異種材料層の一例を模式的に示す分解斜視図である。
図7に示す素子本体110は、直方体状又は略直方体状であり、長さ方向(L方向)に相対する第1の端面11及び第2の端面12と、幅方向(W方向)に相対する第1の側面13及び第2の側面14と、高さ方向(T方向)に相対する第1の主面15及び第2の主面16とを有する。素子本体110は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。
【0038】
図6では、第1の外部電極21は、素子本体110の第1の端面11の全体を覆うとともに、素子本体110の第1の側面13及び第2の側面14並びに第1の主面15及び第2の主面16の一部を覆っている。第2の外部電極22は、素子本体110の第2の端面12の全体を覆うとともに、素子本体110の第1の側面13及び第2の側面14並びに第1の主面15及び第2の主面16の一部を覆っている。
【0039】
図8は、
図7に示す素子本体の分解斜視図である。
図8に示すように、素子本体110は、複数の絶縁層241a、241b、241c、241d、241e、241f、241g及び241hが高さ方向(T方向)に積層されて構成されている。
したがって、
図6、
図7及び
図8では、高さ方向(T方向)が積層方向である。
【0040】
絶縁層241b、241c、241d、241e、241f、241g及び241hの主面上には、コイル導体層242a、242b、242c、242d、242e、242f及び242gがそれぞれ設けられている。コイル導体層242a〜242gは、角張ったU字型であり、3/4ターンの長さを有している。
【0041】
さらに、絶縁層241b、241c、241d、241e、241f及び241gには、積層方向(
図8ではT方向)に貫通するように、ビア導体243a、243b、243c、243d、243e及び243fがそれぞれ設けられている。通常、絶縁層の主面上には、ビア導体と接続されるランドが設けられる。
【0042】
以上のように、絶縁層241a〜241h間に設けられたコイル導体層242a〜242gと絶縁層241a〜241hを積層方向に貫通するビア導体243a〜243fとが接続されることにより、T方向に延在するコイル軸を有するコイルが構成される。
【0043】
コイル導体層242aは、
図8に示すように、引き出し部244aを含んでいる。
図7に示すように、引き出し部244aは素子本体110の第1の端面11に露出し、引き出し部244aを介してコイル導体層242aと第1の外部電極21とが接続される。同様に、コイル導体層242gは、
図8に示すように、引き出し部244bを含んでいる。
図7に示すように、引き出し部244bは素子本体110の第2の端面12に露出し、引き出し部244bを介してコイル導体層242gと第2の外部電極22とが接続される。したがって、第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、それぞれコイルと電気的に接続される。
【0044】
図7に示すように、異種材料層33は素子本体110の第1の側面13に設けられ、異種材料層34は素子本体110の第2の側面14に設けられる。
異種材料層33が設けられている素子本体110の第1の側面13、及び、異種材料層34が設けられている素子本体110の第2の側面14は、いずれも素子本体110の積層方向であるT方向に平行であるため、異種材料層33及び34は、いずれも素子本体110の積層方向であるT方向に平行な外表面に設けられていると言える。
【0045】
図6に示す積層コイル部品2を基板上に実装する場合には、素子本体110の第1の主面15又は第2の主面16が実装面となる。したがって、
図6に示す積層コイル部品2では、積層方向(
図6ではT方向)が実装面に対して直交している。
【0046】
図9は、本発明の第2実施形態に係る積層コイル部品を構成する素子本体及び異種材料層の別の一例を模式的に示す分解斜視図である。
図9に示す素子本体110Aは、直方体状又は略直方体状であり、長さ方向(L方向)に相対する第1の端面11及び第2の端面12と、幅方向(W方向)に相対する第1の側面13及び第2の側面14と、高さ方向(T方向)に相対する第1の主面15及び第2の主面16とを有する。素子本体110Aは、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。
【0047】
図10は、
図9に示す素子本体の分解斜視図である。
図10に示すように、素子本体110Aは、複数の絶縁層341a、341b、341c、341d、341e、341f、341g及び341hが高さ方向(T方向)に積層されて構成されている。
したがって、
図9及び
図10では、高さ方向(T方向)が積層方向である。
【0048】
絶縁層341b、341c、341d、341e、341f、341g及び341hの主面上には、コイル導体層242a、242b、242c、242d、242e、242f及び242gがそれぞれ設けられている。コイル導体層242a〜242gは、角張ったU字型であり、3/4ターンの長さを有している。
【0049】
さらに、絶縁層341b、341c、341d、341e、341f及び341gには、積層方向(
図10ではT方向)に貫通するように、ビア導体243a、243b、243c、243d、243e及び243fがそれぞれ設けられている。通常、絶縁層の主面上には、ビア導体と接続されるランドが設けられる。
【0050】
以上のように、絶縁層341a〜341h間に設けられたコイル導体層242a〜242gと絶縁層341a〜341hを積層方向に貫通するビア導体243a〜243fとが接続されることにより、T方向に延在するコイル軸を有するコイルが構成される。
【0051】
コイル導体層242aは、
図10に示すように、引き出し部244aを含んでいる。
図9に示すように、引き出し部244aは素子本体110Aの第1の端面11に露出し、引き出し部244aを介してコイル導体層242aと第1の外部電極21とが接続される。同様に、コイル導体層242gは、
図10に示すように、引き出し部244bを含んでいる。
図9に示すように、引き出し部244bは素子本体110Aの第2の端面12に露出し、引き出し部244bを介してコイル導体層242gと第2の外部電極22とが接続される。したがって、第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、それぞれコイルと電気的に接続される。
【0052】
図9に示す素子本体110Aは、絶縁層341a〜341h間からコイル導体層242a〜242gが露出していることを除いて、
図7に示す素子本体110と同様の構成を有している。
【0053】
図9に示すように、異種材料層33は素子本体110Aの第1の側面13に設けられ、異種材料層34は素子本体110Aの第2の側面14に設けられる。
異種材料層33が設けられている素子本体110Aの第1の側面13、及び、異種材料層34が設けられている素子本体110Aの第2の側面14は、いずれも素子本体110Aの積層方向であるT方向に平行であるため、異種材料層33及び34は、いずれも素子本体110Aの積層方向であるT方向に平行な外表面に設けられていると言える。さらに、異種材料層33及び34は、いずれも絶縁層341a〜341h間から露出したコイル導体層242a〜242gと接している。
【0054】
図7及び
図9では、素子本体の第1の側面及び第2の側面にそれぞれ異種材料層が設けられているが、素子本体の第1の側面及び第2の側面のいずれか一方の面に異種材料層が設けられていてもよい。また、素子本体の第1の端面及び第2の端面にそれぞれ異種材料層が設けられていてもよいし、素子本体の第1の端面及び第2の端面のいずれか一方の面に異種材料層が設けられていてもよい。すなわち、素子本体の第1の側面、第2の側面、第1の端面及び第2の端面の少なくとも一面に異種材料層が設けられていればよい。異種材料層は、絶縁層間から露出したコイル導体層と接していてもよい。
【0055】
素子本体の第1の側面、第2の側面、第1の端面及び第2の端面の少なくとも一面に異種材料層が設けられている場合、素子本体の第1の主面及び第2の主面の少なくとも一面にも異種材料層が設けられていてもよい。
【0056】
[第1実施形態]及び[第2実施形態]で説明したように、本発明の積層コイル部品においては、素子本体の積層方向に平行な外表面のうち、少なくとも一面に、絶縁層と異なる材料から構成される異種材料層が設けられていることを特徴としている。
本発明の積層コイル部品では、素子本体の外表面に設ける異種材料層の材料を変えることによって、積層コイル部品のインダクタンスや強度等の特性を変化させることができる。
【0057】
本発明の積層コイル部品において、絶縁層を構成する材料としては、例えば、ガラス材料、フェライト材料などの無機材料、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリマー樹脂などの有機材料、ガラスエポキシ樹脂などの複合材料などが挙げられる。
【0058】
本発明の積層コイル部品において、絶縁層を構成する材料と異なる限り、異種材料層を構成する材料は特に限定されないが、異種材料層は、無機材料を含むことが好ましい。
【0059】
無機材料としては、例えば、フェライト材料、金属磁性材料、結晶化ガラス等が挙げられる。例えば、絶縁層がガラス材料から構成される場合、異種材料層は、フェライト材料又は金属磁性材料を含むことが好ましい。また、絶縁層がガラス材料から構成される場合、異種材料層は、結晶化ガラスを含むことが好ましい。
【0060】
異種材料層がフェライト材料又は金属磁性材料を含む場合、積層コイル部品のインダクタンスを大きくすることができ、また、たわみ強度等の強度を高くすることができる。
【0061】
異種材料層が結晶化ガラスを含む場合、積層コイル部品のたわみ強度等の強度を高くすることができる。
【0062】
本発明の積層コイル部品において、素子本体の外表面の二面以上に異種材料層が設けられている場合、それぞれの面に設けられている異種材料層を構成する材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
本発明の積層コイル部品において、異種材料層の厚みは、5μm以上、50μm以下であることが好ましく、10μm以上、40μm以下であることがより好ましい。
異種材料層の厚みが上記範囲にあると、積層コイル部品のサイズを小さくすることができる。
【0064】
本発明の積層コイル部品において、素子本体の外表面の二面以上に異種材料層が設けられている場合、それぞれの面に設けられている異種材料層の厚みは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
異種材料層の厚みは、以下の方法により測定される。
試料を垂直になるように立てて、試料の周りを樹脂で固める。例えば、試料のLT側面が露出するようにする。
研磨機で試料のW方向の約1/2の深さで研磨を終了し、LT断面を露出させる。
研磨によるコイル導体層のだれを除去するために、研磨終了後、イオンミリング(日立ハイテク社製 イオンミリング装置IM4000)により研磨表面を加工する。
異種材料層を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、得られた写真から異種材料層の厚みを測定する。測定は各異種材料層について3ヶ所測定し、3ヶ所の平均を求め、異種材料層の厚みと定義する。
【0066】
本発明の積層コイル部品において、異種材料層は、素子本体の積層方向に平行な外表面のうち、少なくとも一面に設けられていればよい。異種材料層は、素子本体の積層方向に平行な外表面のうち、隣り合う二面に設けられていてもよいし、相対する二面に設けられていてもよいし、全ての面に設けられていてもよい。相対する二面に異種材料層が設けられる場合、面積の大きい方の外表面に異種材料層が設けられていることが好ましい。素子本体の外表面のうち、コイルと第1の外部電極又は第2の外部電極とが接続している部分には、異種材料層が設けられないことが好ましい。
【0067】
本発明の積層コイル部品においては、素子本体の積層方向に平行な外表面に加えて、素子本体の積層方向に直交する外表面にも異種材料層が設けられていてもよい。
【0068】
本発明の積層コイル部品において、異種材料層は、素子本体のそれぞれの外表面の全面に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。
【0069】
本発明の積層コイル部品において、素子本体の積層方向に平行な外表面に設けられた異種材料層は、絶縁層間から露出したコイル導体層と接していてもよい。
この場合、コイル導体層と異種材料層との間の部分を薄くすることによって、積層コイル部品のサイズを小さくすることができる。
【0070】
本発明の積層コイル部品において、素子本体の積層方向に平行な外表面のうち、二面以上に異種材料層が設けられている場合、少なくとも一面に設けられた異種材料層が、絶縁層間から露出したコイル導体層と接していればよい。
【0071】
以下、本発明の積層コイル部品の製造方法の一例について説明する。
以下の例では、複数の積層コイル部品を同時に作製する際の積層コイル部品の製造方法について説明する。
【0072】
まず、絶縁層用の感光性ガラスペーストを準備する。
具体的には、ガラス粉末にバインダーポリマー、光重合性モノマー、及び、光重合開始剤を含む感光性有機成分を含有させて、感光性ガラスペーストを作製する。
ガラス粉末としては、例えば、SiO
2−B
2O
3系ガラス、SiO
2−B
2O
3−K
2O系ガラス、SiO
2−B
2O
3−Li
2O−CaO系ガラス、SiO
2−B
2O
3−Li
2O−CaO−ZnO系ガラス、及び、Bi
2O
3−B
2O
3−SiO
2−Al
2O
3系ガラス等が好ましい。
また、必要に応じて、クォーツ、アルミナ、シリカ、フォルステライト等のフィラーを含有させてもよい。
【0073】
同様に、銀粉末にバインダーポリマー、光重合性モノマー、及び、光重合開始剤を含む感光性有機成分を含有させて、感光性銀ペーストを作製する。銀粉末以外の金属粉末を用いてもよい。
【0074】
感光性ガラスペーストをフィルム状の基材上に塗布して、紫外線を全面露光することにより、絶縁層を形成する。次に、感光性銀ペーストを絶縁層上に塗布し、露光及び現像することで、コイル導体層を形成する。
【0075】
次に、感光性ガラスペーストを絶縁層及びコイル導体層上に塗布する。更に、露光及び現像によって、ビア導体の位置にビアホールが設けられた絶縁層を形成する。感光性銀ペーストを絶縁層上に塗布し、露光及び現像することで、コイル導体層及びビア導体を形成する。その後、絶縁層、コイル導体層及びビア導体を形成する工程と同様の工程を繰り返す。以上により、複数の素子本体からなるマザー積層体が作製される。
【0076】
マザー積層体を押し切り等の方法により、個別の素子本体にカットする。その後、所定の温度及び時間で素子本体を焼成する。
【0077】
焼成後の素子本体の外表面、又は、焼成前の素子本体の外表面に対して、異種材料層を形成する。このように、異種材料層は、焼成後の素子本体の外表面に形成してもよいし、焼成前の素子本体の外表面に形成してもよい。異種材料層は、例えば、異種材料のシートを貼り付けるか、又は、異種材料を塗布することにとって形成することができる。
【0078】
焼成後の素子本体の外表面に異種材料層を形成する場合、焼成後の素子本体の外表面に異種材料のシートを付与することが好ましい。例えば、所定のサイズ及び厚みを有する異種材料のシートを作製し、エポキシ樹脂等の接着剤により対象の面に貼り付けることで、異種材料層を形成することができる。
【0079】
焼成前の素子本体の外表面に異種材料層を形成する場合、焼成前の素子本体の外表面に異種材料のグリーンシートを付与し、素子本体と同時焼成することが好ましい。例えば、異種材料のグリーンシートを作製し、素子本体の対象の面を、加温した異種材料のグリーンシートに押さえ付けることで、異種材料を付与することができる。この後、素子本体と異種材料のグリーンシートを同時焼成することで、異種材料層を形成することができる。
【0080】
異種材料層がフェライト材料を含む場合、Ni−Zn−Cuフェライト材料を用いることが好ましい。
フェライト材料は、主成分が、
FeをFe
2O
3に換算して40mol%以上49.5mol%以下、
ZnをZnOに換算して2mol%以上35mol%以下、
CuをCuOに換算して4mol%以上12mol%以下であり、
残部がNiOである材料から、必要な特性に応じて組成を選定して用いられる。
さらにBi、Sn、Mn、Co等の微量添加物(不可避不純物を含む)を含有させてもよい。
【0081】
異種材料層が金属磁性材料を含む場合、金属磁性粉とガラスのコンポジット材料を用いることが好ましい。
例えば、Fe−Si系合金、Fe−Si−Cr系合金、Fe−Si−Al系合金、Fe−Ni合金、Fe−Co合金、Fe−Si−B−P−Cu−C系合金、Fe−Si−B−Nb−Cu系合金等の金属磁性粉が用いられる。
これらの金属磁性粉に、例えば、SiO
2−B
2O
3系ガラス、SiO
2−B
2O
3−K
2O系ガラスを含有させたコンポジット材料が用いられる。上記の金属磁性粉に樹脂を含有させたコンポジット材料を用いてもよい。
【0082】
異種材料層が結晶化ガラスを含む場合、Si、B、アルカリ土類金属を含む結晶化ガラスを用いることが好ましい。
【0083】
焼成後、異種材料層が形成された素子本体に対してバレルを用いて研磨を施して、エッジの丸めやバリ取りを行うとともに、引き出し部を素子本体から露出させる。
【0084】
その後、異種材料層が形成された素子本体の外表面に第1の外部電極及び第2の外部電極を形成する。例えば、異種材料層が形成された素子本体の外表面を銀ペーストにディップし、焼付けを行うことにより、銀電極を形成する。最後に、銀電極上にNi,Cu,Zn等をめっきすることにより、外部電極を形成する。以上の工程を経て、積層コイル部品が得られる。
【0085】
[その他の実施形態]
本発明の積層コイル部品は、上記実施形態に限定されるものではなく、積層コイル部品の構成、製造条件等に関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0086】
例えば、絶縁層の層数、形状及び材料、コイル導体層の長さ、形状及び材料、ビア導体の数、位置、形状及び材料、コイルの構成、外部電極の形状及び材料、外部電極の形成方法、コイルと外部電極との接続方法等は特に限定されるものではない。例えば、コイル導体層の長さは、3/4ターンに限定されず、1/2ターン等であってもよい。コイル導体層の形状は、角張っていてもよいし、丸みを帯びていてもよい。また、コイルは、複数のコイル導体層とビア導体とが接続されることにより構成されていなくてもよく、例えば、1層のコイル導体層により構成されていてもよい。
【0087】
本発明の積層コイル部品において、外部電極の形成方法は、素子本体に埋め込まれた電極導体層を切断により露出させ、めっき加工を施す方法であってもよい。
【0088】
積層方向が実装面に対して平行である場合、積層方向はL方向であってもよいし、W方向であってもよい。
【0089】
これまでの実施形態では、フォトリソグラフィ法により積層コイル部品を製造する方法について説明してきた。
【0090】
図11は、フォトリソグラフィ法により製造された積層コイル部品の一例を模式的に示す透視斜視図である。
図11に示す積層コイル部品3は、素子本体210と、素子本体210の外表面に設けられた第1の外部電極221及び第2の外部電極222と、素子本体210の外表面に設けられた異種材料層35とを備えている。素子本体210は、複数の絶縁層(図示せず)が積層されて構成されており、内部にコイル200が埋設されている。
図11では、幅方向(W方向)が積層方向である。
【0091】
図11では、第1の外部電極221は、素子本体210の第1の端面11と第2の主面16に跨って設けられたL字型の電極であり、第2の外部電極222は、素子本体210の第2の端面12と第2の主面16に跨って設けられたL字型の電極である。なお、第1の外部電極221及び第2の外部電極222は、それぞれ、素子本体210の第2の主面16のみに設けられた電極であってもよい。
このように、素子本体の内部に第1の外部電極及び第2の外部電極を埋め込むことにより、素子本体に第1の外部電極及び第2の外部電極を外付けする構成に比べて、積層コイル部品の小型化を図ることができる。
【0092】
詳細な説明は省略するが、絶縁層間に設けられた複数のコイル導体層と上記絶縁層を積層方向に貫通するビア導体とが接続されることにより、W方向に延在するコイル軸を有するコイル200が構成されている。
【0093】
コイル200は、第1の外部電極221及び第2の外部電極222と同一工程で形成されることが好ましい。コイル200の一端は第1の外部電極221と接続され、コイル200の他端は第2の外部電極222と接続される。したがって、第1の外部電極221及び第2の外部電極222は、それぞれコイル200と電気的に接続される。
【0094】
図11に示すように、異種材料層35は、素子本体210の第1の主面15に設けられている。
異種材料層35が設けられている素子本体210の第1の主面15は、素子本体210の積層方向であるW方向に平行であるため、異種材料層35は、素子本体210の積層方向であるW方向に平行な外表面に設けられていると言える。
【0095】
図11では、素子本体210の第1の主面15に異種材料層35が設けられているが、例えば、素子本体210の第1の端面11に第1の外部電極221が設けられておらず、素子本体210の第2の端面12に第2の外部電極222が設けられていない場合、素子本体210の第1の端面11及び第2の端面12にそれぞれ異種材料層が設けられていてもよいし、素子本体210の第1の端面11及び第2の端面12のいずれか一方の面に異種材料層が設けられていてもよい。また、素子本体210の第1の側面13及び第2の側面14の少なくとも一面にも異種材料層が設けられていてもよい。
【0096】
図11に示す積層コイル部品3を基板上に実装する場合には、素子本体210の第2の主面16が実装面となる。したがって、
図11に示す積層コイル部品3では、積層方向(
図11ではW方向)が実装面に対して平行である。
【0097】
本発明においては、フォトリソグラフィ法により積層コイル部品を製造しなくてもよく、例えば、絶縁層となるべき絶縁シートを用いて、コイル導体層パターンが形成された絶縁シートを積層していくシート積層法により積層コイル部品を製造してもよいし、絶縁性ペーストの印刷と導電性ペーストの印刷を繰り返して、絶縁層及びコイル導体層パターンを順次形成していく印刷積層法により積層コイル部品を製造してもよい。