(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリプロピレン系樹脂と融点が150℃以上、融解熱容量が30J/g未満である熱可塑性エラストマー系樹脂とを含有する樹脂組成物(ここで、前記熱可塑性エラストマーは、前記樹脂組成物100質量%中に10〜80質量%含まれる)からなり、マイクロゴム硬度計にて測定した発泡体の表面硬度が30°以上70°以下であり、発泡体の厚さ方向の一方側の第一表面部と、他方側の第二表面部の中心線平均粗さRa75が、5μm以上20μm以下であり、第一表面部および第二表面部の何れかまたは両方の表面部において疑似スキン層を有して、かつ、下(式1)および(式2)が満足されていることを特徴とする発泡体。
疑似スキン層の厚み≦3μm (式1)
疑似スキン層の厚み/発泡体内部の気泡膜厚≦1.5 (式2)
100℃の温度環境下で1時間後の長さ方向(MD)若しくは幅方向(TD)の加熱収縮率が−15%〜1%であり、25%圧縮硬さが50kPa以下である請求項1記載の発泡体。
ポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーを含有し、示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが少なくとも100℃以上130℃以下および、145℃以上に存在し、融解熱容量が50J/g以下である請求項1または2記載の発泡体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体的に説明する。なお、以下に記載した各種測定の詳細方法は、実施例の項に記載のとおりである。
【0023】
また、本発明において長さ方向とは発泡体シートを作製するとき、押出方向と一致する方向(長尺シートの長手方向)を意味する。「MD」は、長さ方向を意味するMachine Directionの略語である。また、幅方向は長さ方向に直交しかつ発泡シートに平行な方向(幅方向)を意味する。「TD」は、幅方向を意味するTransverse Directionの略語である。また、厚さ方向は長手方向及び幅方向のいずれにも垂直な方向である。厚さ方向はZDとも略記される。
【0024】
なお、以上はダイから樹脂を吐出して発泡させる成形法を想定しているが、金型に樹脂を導入して発泡させるバッチ成形法において本発明は最も長い辺を長さ方向、長手方向に直交する方向で最も短い方向を厚さ方向、長さ方向および厚さ方向に直交する方向を幅方向と理解することができる。
【0025】
本発明の発泡体は、マイクロゴム硬度計にて測定した発泡体の表面硬度の数値が30°以上70°以下であることを特徴とする。表面硬度は、柔軟性や製品母材への追従性を示す指標であり、粘着シート材として貼り合せた時に製品母材の微小な凹凸を吸収し、平滑性を保持するために30°以上70°以下であることが好ましい。より好ましくは、40°以上50°以下である。
【0026】
発泡体の表面硬度が30°未満であれば柔らかすぎて基材の微小な凹凸がシート材の表面に転写するため好ましくなく、70°超であれば硬すぎて基材との密着性が低下し、微小な凹凸を吸収できずシート材に浮きが発生し、外観を損なう問題がある。
【0027】
本発明の発泡体は、発泡体の厚さ方向の一方側の第一表面部、すなわち長さ方向と幅方向を含む面に平行な、発泡体の一方の表面を含む部分と、他方側の第二表面部、すなわち長手方向と幅方向を含む面に平行な、発泡体の他方の表面を含む部分の中心線平均粗さRa75が、5μm以上20μm以下である。すなわち、その表面の中心線平均粗さRa75が5μm未満であれば、粘着剤が滑り易く表面で玉状に弾き、粘着剤を付与した際に斑が発生する問題がある。中心線平均粗さRa75が、20μm超であれば、粘着剤等を塗布したときに細かな凹凸に粘着剤が入り込まず斑が発生し、接着不良等に問題となる。
【0028】
本発明の発泡体は、100℃の温度環境下で1時間後の長さ方向(MD)、若しくは幅方向(TD)の加熱収縮率が−15%〜1%であることが好ましく、高温環境下での使用や加工処理を実施する際の寸法変化は小さい方が良いことから、より好ましくは−10〜0%である。100℃の温度環境下で1時間の長さ方向(MD)、幅方向(TD)の加熱収縮率が−15%未満であれば、加熱寸法変化が大きいため基材から剥がれたり、ズレたりすることで緩衝性とシール性が損なわれる可能性があり、100℃の温度環境下で1時間後の加熱収縮率で長さ方向(MD)、幅方向(TD)の加熱収縮率が1%より大きければ、基材を変形させたり、フクレやシワ等の外観不良が発生する恐れがある。
【0029】
さらに本発明の発泡体は、25%圧縮硬さは50kPa以下が好ましく、柔軟性と緩衝性が向上することからより好ましくは、25%圧縮硬さは40kPa以下が良い。25%圧縮硬さが50kPaより大きければ圧縮した際に適度な反発性を得られずシール性が得られない。
【0030】
本発明の発泡体の示差走査熱量計(DSC)に於ける吸熱ピークは二つ以上あることが好ましい。具体的には、示差走査熱量計(DSC)による吸熱ピークが100℃以上130℃以下および、145℃以上に存在することがこのましい。第一の吸熱ピークに於いてより好ましくは110℃以上125℃未満にあり、第二の吸熱ピークは150℃以上にあるのが更に好ましく、最も好ましくは155℃以上にあることである。第一の吸熱ピークが130℃を超える温度にある場合は発泡体の成形時の軟化温度が高くなりすぎるために成形サイクルが長くなりすぎる場合があり、第二の吸熱ピークが145℃未満にある場合は十分な成形温度にあげるために加熱速度を上げる傾向にある現状では、耐熱性が不十分になる場合が高い。
【0031】
なお、吸熱ピークは、示差走査熱量計(DSC)で測定した時に観察される吸熱ピークの頂点に対応する温度をいう。
【0032】
本発明の発泡体の示差走査熱量計(DSC)に於ける単位質量当たりの融解熱容量は50J/g未満であることが好ましい。融解熱容量が50J/gを超える場合は結晶成分が多く、本発明が達成しようとする柔軟性が十分に得られない可能性がある。更に好ましい融解熱容量は45J/g以下である。
【0033】
本発明の発泡体は、上述したような耐熱性と柔軟性を両立させることから少なくとも、ポリプロピレン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂を含有することが好ましい。ポリプロピレン系樹脂の含有量が多くなると耐熱性は向上し、加熱寸法変化が小さくなるが、柔軟性は低下し、表面硬度や25%圧縮硬さが大きくなる。熱可塑性エラストマーは含有量が多くなると柔軟性は向上するが、加熱寸法変化は悪化傾向となる。発泡体の表面硬度や25%圧縮硬さ、加熱寸法変化は、樹脂組成のみによって決定されるものでは無いが、上記の観点から、発泡体を構成する樹脂を100質量%としたときポリプロピレン系樹脂の含有量は10〜80重量%であることが好ましく、熱可塑性エラストマーの含有量は10〜80重量%であることが好ましい。
【0034】
本発明の発泡体に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体などが挙げられ、必要に応じてプロピレンモノマーと他の共重合可能なモノマーとの共重合体を用いることもできる。また、ポリプロピレン系樹脂は、1種類もしくは、2種類以上をブレンドして用いても良く、従来から公知の如何なるものでも良い。
【0035】
これらのポリプロピレン系樹脂の重合方法には特に制限がなく、高圧法、スラリー法、溶液法、気相法のいずれでも良く、重合触媒についても、チーグラー触媒やメタロセン触媒等、特に限定されるものではない。
【0036】
前記ポリプロピレン系樹脂は、融点が135℃以上160℃未満、MFR(230℃)が0.5g/10min以上5.0g/10min未満のエチレン−プロピレンランダム共重合体及エチレン−プロピレンランダム・ブロック共重合体でポリプロピレン系樹脂100質量%中のエチレン含有率が1質量%以上15質量%未満のもの、または、融点が150℃以上170℃未満、MFR(230℃)が1.0g/10min以上7.0g/10min未満であるエチレン−プロピレンブロック共重合体若しくはホモポリプロピレンでエチレン含有率が1質量%以上15質量%未満のものが、特に好ましく用いられる。ここでいうエチレン−プロピレンランダム・ブロック共重合体及びエチレン−プロピレンブロック共重合体の「ブロック」とはエチレン−プロピレンランダム共重合体やホモ−ポリプロピレンにエチレン−プロピレンラバーが交じり合っていることをいい、高分子化学一般でいうブロック構造とは異なる。
【0037】
前記熱可塑性エラストマー系樹脂としては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(SBC、TPS)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE、TPC)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE、TPA)、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、水添スチレンブタジエンラバー(HSBR)、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー(SEBC)、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー(CEBC)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)、オレフィンブロックコポリマー(OBC)などのブロックコポリマーやポリオレフィン−ビニル系グラフトコポリマー、ポリオレフィン−アミド系グラフトコポリマー、ポリオレフィン−アクリル系グラフトコポリマー、ポリオレフィン−シクロデキストリン系グラフトコポリマーなどのグラフトコポリマーであり、従来から公知の如何なるものでも良い。
【0038】
特に好ましくはオレフィンブロックコポリマー(OBC)もしくは、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)である。このうち、耐熱性と柔軟性の両面が高いことが好ましく、この観点から特に好ましくはオレフィンブロックコポリマー(OBC)である。これらの熱可塑性エラストマー系樹脂は、少なくとも1種類もしくは2種類以上をブレンドしても良い。また、これらの熱可塑性エラストマー系樹脂の重合方法には特に制限がなく、高圧法、スラリー法、溶液法、気相法のいずれでも良く、重合触媒についても、チーグラー触媒やメタロセン触媒等、特に限定されるものではない。
【0039】
前記熱可塑性エラストマー系樹脂は、耐熱性が優れるという観点から、融点が150℃以上の範囲にあり、融解熱容量が30J/g未満である。融点が150℃未満であると耐熱性が十分に得られない可能性があり、融解熱容量が30J/g以上であると結晶性が高く、十分な柔軟性が得られない可能性がある。更に好ましくは融点が160℃以上であり、融解熱容量が25J/g以下である。また、結晶化温度が50℃以上であることが好ましく用いられる。更に好ましくは60℃以上である。結晶化温度が50℃未満であると発泡体を成形する際のサイクルタイムが短縮できない可能性がある。
【0040】
前記熱可塑性エラストマー系樹脂は、密度が850〜920kg/m
3、MFR(230℃)が1g/10min以上15g/10min未満の範囲内にあるものが好ましく用いられ、中でも密度が860〜910kg/m
3、MFR(230℃)が5g/10min以上10g/10min未満であるものが、特に好ましく用いられる。本発明で用いられる熱可塑性エラストマー系樹脂の市販品の例示としては、オレフィンブロックコポリマー(OBC)には三井化学“タフマー”(登録商標)PN−3560、“NOTIO” (登録商標)SN−0285、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)にはプライムポリマ製“プライムTPO” (登録商標)M142E、“クオリア” (登録商標)CS356M等が挙げられる。
【0041】
本発明の発泡体は、発明の効果を損なわない限り、他の熱可塑性樹脂を混合しても構わない。ここでいう熱可塑性樹脂とは従来から公知のポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレンなどが例示される。
【0042】
熱可塑性エラストマー系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂組成物100質量%中に10質量%〜80質量%含まれていることが好ましいが、10〜65質量%含むことが更に好ましく、柔軟性と緩衝性を向上させ、加工性が向上することから熱可塑性エラストマー系樹脂は、30〜55質量%含むことがもっとも好ましい。熱可塑性エラストマー系樹脂が10質量%未満であれば、優れた柔軟性と緩衝性が得られず、熱可塑性エラストマー系樹脂が65質量%より大きければ、柔軟性が向上しシール材として圧縮した際に適度な反発が得られず外観欠点が発生する。
【0043】
本発明の発泡体には、ポリエチレン系樹脂が含まれても良い、ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)などが挙げられ、必要に応じてエチレンモノマーと他の共重合可能なモノマーとの共重合体を用いることもできる。また、ポリエチレン系樹脂は、1種類もしくは、2種類以上をブレンドしても良い。また、これらのポリプロピレン系樹脂の重合方法には特に制限がなく、高圧法、スラリー法、溶液法、気相法のいずれでも良く、重合触媒についても、チーグラー触媒やメタロセン触媒等、特に限定されるものではない。
【0044】
ポリエチレン系樹脂は、密度が890〜950kg/m
3、MFR(190℃)が1g/10min以上15g/10min未満の範囲内にあるものが好ましく用いられ、中でも密度が920〜940kg/m
3、MFR(190℃)が2g/10min以上10g/10min未満、融点が100℃以上130℃未満のエチレン−α−オレフィン共重合体が、特に好ましく用いられる。
【0045】
本発明の発泡体は、厚さ方向の一方側の第一表面部と他方側の第二表面部、発泡体内部が同一の樹脂組成物で構成されていることが好ましい。厚さ方向の中央部、第一表面部および第二表面部の樹脂組成が異なると加熱時の収縮率や融点の違いによりシワや凹凸などの外観が損なわれシール材としての効果を得られないことがある。
【0046】
本発明の発泡体は、第一表面部および第二表面部の何れかまたは両方の表面部において下(式1)および(式2)が満足されていることが好ましい。
【0047】
疑似スキン層の厚み≦3μm (式1)
疑似スキン層の厚み/発泡体内部の気泡膜厚≦1.5 (式2)
なおここで、疑似スキン層とはスキン層が除去されて後に発泡体の表面から熱をかけ表面近傍の気泡の形状を変化せしめて形成される発泡倍率が発泡体の中心部のそれよりも低く、また、密度としても高い層状の部分であり、その厚みは後述する方法によって求められる。また、気泡膜厚は後述の方法によって求められる。
【0048】
疑似スキン層の厚みが3μm以下であれば粘着剤を塗布された粘着テープとして使用されたときに接着される基材への追従性が向上し、細かな凹凸にすき間なく密着することができる。疑似スキン層の厚みの下限については(式2)を満たす限り特に制限は無い。
【0049】
また、疑似スキン層の厚みを発泡体内部の気泡膜厚で除した値は1.5以下であることが好ましく、粘着剤を塗布された粘着テープとして使用されたとき疑似スキン層の厚みが薄いことで柔軟性や曲げ応力が低下し、角R(曲げ)のきつい箇所へシワや破れなく貼り付けることができる。さらに細かな凹凸にすき間なく密着させる観点からは疑似スキン層の厚みを発泡体内部の気泡膜厚で除した値は1.3以下であることが更に好ましい。本発明の発泡体は、高温環境下(特に100℃以上)で使用されることが想定されることから
疑似スキン層の厚みと内部気泡の膜厚に差が小さい方が高温環境下で発生する収縮応力差が小さく寸法変化や粘着テープの浮きや剥がれが抑制できる。
【0050】
また、第一表面部および第二表面部の両方において(式1)および(式2)が満足されることが好ましい。
【0051】
本発明の発泡体は、厚さが80μm〜800μmが好ましく、より好ましくは、厚さが80μm〜350μmである。厚さが350μmより厚くなることで、断熱性と緩衝性は向上するがシール材として基材同士のクリアランスが極端に狭いところに使用できないことがあり、800μmより厚くなるとより顕著である。厚さが80μm未満では、目的とする断熱性、緩衝性が低下することがある。
【0052】
本発明の発泡体は、長さ方向(MD)の平均気泡径が150μm〜450μmであることが好ましい。平均気泡径が150μm未満であれば単位面積当たりの気泡数が多くなり、気泡径が縮小することで空気量も減少し、断熱性や緩衝性、25%圧縮硬さなどの柔軟性が低下する。平均気泡径が450μmを超えると気泡径が拡大し発泡体の強度が低下し、粘着テープ基材として破れやすくなり外観不良を引き起こしたり、量産性を損なうことがある。
【0053】
発泡体の平均気泡径は、発泡体試料片を鋭利な刃で気泡が潰れないよう切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所社製、型式:S−3000Nまたは株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、型式:S−3400N)を用いて30〜50倍に拡大して撮影し、任意に抽出した100点の気泡の内径を直線2点間で測定し、その算術平均値を平均気泡径(μm)とした。
【0054】
本発明の発泡体は、見かけ密度が33〜300kg/m
3が好ましく、より好ましくは、55〜200kg/m
3である。見かけ密度が33kg/m
3未満であれば発泡体の強度が低下し、シール材として使用したときに破れ等の不良が発生しやすくなる。見かけ密度が300kg/m
3より大きければ形状は安定するが柔軟性と緩衝性や追従性が低下する可能性がある。
【0055】
本発明の発泡体は、架橋された樹脂発泡体(架橋発泡体という)、架橋されていない樹脂発泡体(非架橋発泡体という)のいずれの態様とすることができ、用途に応じて適切な樹脂発泡体を選択すれば良い。しかし、樹脂発泡体の表面に平滑性があり、外観に優れる点から、架橋発泡体が好ましい。
【0056】
本発明の発泡体を架橋させる場合、すなわち、本発明の発泡体を架橋発泡体とする場合、架橋状態を示すゲル分率は、20%以上65%以下の範囲であることが好ましく、更には30%以上50%以下の範囲であることが好ましい。このゲル分率が20%未満では、発泡時表面から発泡剤のガスが逸散し、所望の発泡倍率の製品が得られにくくなり、柔軟性が低下し、25%圧縮硬さが大きくなり、中心線平均粗さが大きくなるため好ましくない。ゲル分率が65%を超えると発泡体が硬くなり、表面硬度が大きくなったり、25%圧縮硬さが大きくなり、加熱した際に溶融しにくくなるために表面平滑性が低下し中心線平均粗さが大きくなるほか、過度の架橋となり表面平滑な高発泡倍率の製品が得られにくくなることと、破断点伸度等の機械強度が低下し成形性が低下することがある。
【0057】
本発明の発泡体は、独立気泡を有する発泡体でクッション性、断熱性の観点から独立気泡率は80%以上が好ましく、また、シート形状とできる。
【0058】
本発明の発泡体においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、フェノール系、リン系、アミン系およびイオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、マイカやタルク等の充填剤、臭素系およびリン系等の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、およびポリテトラフルオロエチレン等のポリオレフィン用添加剤を添加することができる。
【0059】
本発明で使用する発泡体シートは、発明の効果を損なわない限り、発泡体を着色しても構わない。着色材とは従来から公知の如何なる顔料(カーボンブラックや酸化チタン等)を単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0060】
黒色に着色する際に用いられる黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライトなど)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素などいかなる公知の着色剤を用いることができる。中でも、コスト、入手性の観点から、カーボンブラックが好ましい。
【0061】
黒色着色剤は、単独又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。黒色着色剤の含有量は、特に限定されず、発泡体の質量を100質量%としたとき1質量%〜20質量%の含量で使用することが好適である。
【0062】
本発明の発泡体を両面粘着シートの部材として使用したときにおいて所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。
【0063】
本発明の発泡体の表面には公知の表面処理が施されていてもよい。例えば、下塗り処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などの化学的又は物理的な表面処理が施されていてもよい。より具体的には、アクリル系粘着剤層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤などによるコーティング処理等が施されていても良い。発泡体の表面平滑性に変化を与えないことからコロナ放電処理が好ましい。
【0064】
本発明の発泡体の少なくとも一面、例えばシート状とした発泡体の片面または両面、に粘着剤層を積層し、粘着テープとすることができる。粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。上記粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、ホットメルト型粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤などのいずれの剤型であっても良い。
【0065】
前記粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以上80μm以下である。粘着剤層は、薄層であるほど、端部のゴミや埃の付着を防止する効果が高いため、薄い方が好ましい。なお、粘着剤層は、単層であってもよいし、積層体であってもよい。
【0066】
本発明の発泡体は、片面もしくは両面粘着テープとして使用される際、情報通信機器内部のシール材や衝撃吸収材として使用でき、自動車内装材に使用する粘着テープとしては、部材の擦れを防止する緩衝材(保護シート)やマスキングテープとして使用できる。
【0067】
次に本発明の発泡体の製造方法について、以下に説明する。
【0068】
本発明の発泡体は、厚さ方向の上下両表面に3μm以上のスキン層を有する発泡体シートを作製する工程と、該発泡体シートを厚さ方向にスライス、すなわち長さ方向および幅方向を含む面に平行な面でスライスし、スキン層を有しない発泡体シートを作製する工程と、該スライス加工した発泡体シートを加熱する工程とを含む。ここで、発泡体を厚み方向に圧縮する工程をさらに含むことができる。
【0069】
ここで、スキン層は発泡体の製造工程において表層部に生じる密度の高い層のことをいい、発泡倍率が極めて低い層である。発泡体の製造工程では外部環境から熱または活性光線にて発泡作用を促して発泡させることが多く行われるところ、表面に圧力がかかって押しつぶされたりすることや発泡挙動が内部とは異なることがあるためにスキン層は生じる。一方で、スキン層は内部を保護する支持層としての役割を果たすので内部の発泡状態を良好なものとできる。
【0070】
本発明の発泡体の製造方法において、スライス加工した発泡体シートを加熱する工程においては発泡体の表面温度を(式3)の範囲内の温度に加熱することが好ましい。
【0071】
Tm−20(℃)≦H≦Tm+60(℃) (式3)
(ここで、Tm:発泡体シートの表面を構成する樹脂または樹脂組成物の融点(℃)、H:発泡体シートの表面温度(℃))
発泡体の表面平滑性と柔軟性を両立するため加熱温度は、発泡体シートの表面を構成する樹脂または樹脂組成物の融点:Tmよりも60℃以上高い温度以下、発泡体の融点:Tmよりも20℃低い温度以上であることが好ましい。加熱の温度が低すぎると十分に疑似スキン層が形成されず、表面平滑性が低下するため好ましくなく、高すぎると発泡体が溶断したり、発泡体の密度が高くなり柔軟性が低下するため好ましくない。この融点Tmは、発泡体シートの表面を構成する樹脂または樹脂組成物が複数の融点を有する場合は、最も高い融点を意味する。
【0072】
表面平滑性や柔軟性を好ましくするためには加熱時の発泡体の表面温度(℃):HはTm以上、Tm+50℃以下が良い。
【0073】
次に本発明の発泡体の製造方法について、以下に例示的に説明する。
【0074】
本発明の発泡体シートは、ポリオレフィン系樹脂発泡体を作製する工程と、該発泡体を長さ方向および幅方向を含む面に平行な面でスライスして発泡体シートを作製する工程と有する。また好ましく更に、該スライス加工した発泡体シートを加熱する工程と延伸、圧縮する工程を有することができ、発泡体表面に
疑似スキン層を形成することができる。
【0075】
最初に、厚さ方向の上下両表面に3μm以上のスキン層を有する発泡体シートを作製する工程について説明する。
【0076】
本発明で使用する発泡体シートは、ポリオレフィン系樹脂の混合物に気体を生ずることができる発泡剤を混合して製造するものであり、その製造方法としては、ポリオレフィン系樹脂の混合物に、発泡剤として、熱分解型化学発泡剤を加えて溶融混練し、常圧加熱にて発泡する常圧発泡法、押出機内で熱分解型化学発泡剤を加熱分解し、高圧下で押出ながら発泡する押出発泡法、プレス金型内で熱分解型化学発泡剤を加熱分解し、減圧しながら発泡するプレス発泡法、および押出機内で気体あるいは気化する溶剤を溶融混合し、高圧下で押出しながら発泡する押出発泡法等の方法があげられる。
【0077】
ここで用いられる熱分解型化学発泡剤とは、熱を加えることで分解しガスを放出する化学発泡剤であり、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシベンゼンスルフォニルヒドラジドなどの有機系発泡剤、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムおよびカルシウムアジドなどの無機系発泡剤があげられる。
【0078】
発泡剤は、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。柔軟で成形性が高く表面平滑で高倍率な発泡体シートを得るため、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いた常圧発泡法が好適に用いられる。
【0079】
本発明で使用する発泡体シートを架橋させるための方法は特に制限がない。架橋発泡体シートを得る方法としては、例えば、シラン基、過酸化物、水酸基、アミド基、エステル基などの化学構造を有する架橋剤を原料中に含有させることにより化学的に架橋する化学架橋方法、電子線、α線、β線、γ線、紫外線をポリオレフィン系樹脂に放射することにより架橋する放射線架橋方法などが挙げられる。
【0080】
また、本発明で使用する発泡体シートにおいて、電子線架橋では架橋構造を構築することが困難な場合には、発泡体シートを製造するための原料中に架橋助剤を含有させることで電子線による架橋発泡体シートを得ることができる。架橋助剤としては特に制限はないが、多官能モノマーを使用するのが好ましい。多官能モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼンなどを使用することができる。これらの多官能モノマーは、それぞれ単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0081】
前記発泡体シートは、ポリプロピレン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂および、ポリエチレン系樹脂に、更にアゾジカルボンアミド等の熱分解型発泡剤を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー等の混合機器を用いて均一に混合し、押出機や加圧式ニーダー等の溶融混練機器を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練し、T型口金によってシート形状に成形した後、電離性放射線を照射し架橋させる。
【0082】
次に、得られたシート状物を熱媒となる塩浴上に浮かべる方法や、熱風等の雰囲気下中に投じる方法により、熱分解型発泡剤の分解温度以上に昇温させて、分解により発生したガスにより発泡させることによって、本発明で使用する発泡体シートを得ることができる。
【0083】
また、前記発泡体シートのその他の製造方法としては従来から公知の如何なるものでも良い。例えば、ポリプロピレン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリエチレン系樹脂を加えて、気泡核材としてタルクを混合して、樹脂組成物を調製し、次に並列した二段式のタンデム型押出機にて得られた前記樹脂組成物を、タンデム型押出機の第一押出機に供給して溶融混練し、第一押出機の途中から発泡剤として超臨界状態の炭酸ガス(二酸化炭素)を圧入して、溶融状態の樹脂組成物と二酸化炭素を均一に混合混練した上で、発泡剤を含む溶融樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して、溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却し、その後、第二押出機の先端に取り付けた金型の円環ダイから押出発泡させ円筒状の発泡体の一点をカッターにより切開して、発泡体シートを得ることが出来る。
【0084】
また、ポリプロピレン系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂および、ポリエチレン系樹脂に、熱膨張マイクロカプセル等の熱分解型発泡剤を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー等の混合機器を用いて均一に混合した後、T型口金を接続した押出機にて熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱してT型口金から排出された発泡体をカレンダーロールにて延伸して冷却しながら長尺状の発泡体シートを得ることが出来る。
【0085】
この様にして作製した発泡体シートは、通常厚さ方向の上下両表面にスキン層を有している場合が多く、そのため、発泡体内部よりスキン層の表面硬度が高く、曲げ応力が高いことで基材追従性および柔軟性が低下する問題がある。この問題を解決するために厚さ方向の上下両面のスキン層を一旦除去し、表面硬度と基材追従性に適したスライス面を加熱して得られる
疑似スキンを得た発泡体が良い。これについては、詳細を後述する。
【0086】
発泡体のスキン層の厚みは、上述したような発泡体の様々な製造方法や条件などによって異なるが、スキン層の厚みは3μm以上であることが一般的である。
【0087】
なお、本発明においてスキン層とは、発泡体シートを製造する際に発生する、上面表面及び下面表面の密度の高い層のことであり、該層は未発泡部分、又は厚み方向の中央部分に比べて発泡倍率が非常に低い部分を多く含む部分である。スキン層では気泡構造が殆ど存在しないか、存在していても発泡倍率が小さいため、スキン層の大部分が樹脂の未発泡部分からなるため、スキン層が存在することで、上記の通り基材追従性および柔軟性が低下する。スキン層の厚みが50μm以上となると発泡体の柔軟性が低下するため好ましくなく、スキン層の厚みが2μm以下となると発泡体の表面平滑性が低下するため好ましくない。
【0088】
次に、前記発泡体シートを厚さ方向にスライスし、スキン層を有しない発泡体シートを作成する工程について説明する。
【0089】
発泡体シートをスライスする機器は、工業用軟質材、ゴムシートをスライスできるものであれば良く、例えば、株式会社ニッピ機械社製「NP−120RS」が使用できる。更に一般的に使用される発泡体の研磨機であればよく、ベルトサンダー研磨やルーター研磨、機械的研磨法に化学的作用を組み合わせたCMP(ケミカル・メカニカルポリッシング)などがある。
【0090】
発泡体シートのスキン層を除去する方法としては、用途毎に設定された厚さより若干厚目に発泡体シートを作製し、発泡体を厚さ方向に挟み込む上下スキン層をスライスまたは、研磨して除去し、気泡膜を破壊したスライス面および、研磨面からなるスキン層が除去された発泡体シートを得ることが出来る。
【0091】
次に、前記スライス加工した発泡体シートを加熱する工程について説明する。
【0092】
前述の通り、発泡体の上下両表面にスキン層を有していることで、発泡体の基材追従性および柔軟性が低下する問題がある。これを防止するために、発泡体のスキン層を除去すると、気泡断面が露出することになり、表面平滑性などが低下してしまう。
【0093】
本発明では、これを防止するために、スライス面に加熱処理を行うことで、
疑似スキン層を有することを特徴とする。また、気泡が露出した凹凸のあるスライス面に加熱処理を行うことで、発泡体の表面を平滑にすることが可能となる。加熱の方法は、ヒーターや熱風など、公知のものであれば特に限定されるものでは無い。
【0094】
加熱の温度は特に限定されるものでは無いが、低すぎると十分に疑似スキン層が形成されず、表面平滑性が低下するため好ましくなく、高すぎると発泡体が溶断したり、発泡体の密度が高くなり柔軟性が低下するため好ましくない。また、この加熱の際に、長さ方向(MD)に延伸することが好ましい。より好ましくは、加熱する際にスライスされた気泡壁が溶融し、溶融された表面が平滑になるので、110%以上の延伸倍率で延伸することが好ましい。なお、加熱の際とは、加熱と延伸が同時であっても、逐次であっても、これらが複合されていても、いずれの場合でも良く、特に制限は無い。加熱する際にスライス面が溶融しなければ
疑似スキンを有せずに気泡壁の破片が残り外観状態を悪くする。また、延伸が110%以下であれば、発泡体を薄くすることが出来ず、気泡形状を制御することが出来なくなる。上記加熱延伸は、長さ方向(MD)、幅方向(TD)、長さ方向(MD)および幅方向(TD)同時延伸のいずれかの方法で発泡体を得ることができる。一方、250%以上延伸すると、得られた発泡体の加熱寸法変化が大きくなるため好ましくない。
【0095】
本発明の発泡体は、前記スライス加工した発泡体シートを必要に応じて厚み方向に圧縮しても良い。発泡体シートを圧縮することで薄肉化でき、
疑似スキン層の表面を更に平滑にできる。発泡体シートの圧縮は、加熱の前に実施しても良いし、加熱の後でも、加熱と同時であっても良い。圧縮する方法としては、駆動するロールで挟みこむ方法や、プレス板で挟み込む方法など従来から公知のいかなる方法でも良い。この様に、加熱した後に、ロール等で表面を成形することにより、発泡体の表面平滑性を向上させることが出来る。中心線平均粗さを20μm以下とするためには、ロールやプレス板の中心線平均粗さは15μm以下であることが好ましい。また、ロールやプレス板が平滑過ぎると、発泡体が粘着するため生産性が低下するので、中心線平均粗さは1μm以上であることが好ましい。
【0096】
前記した組成を有する樹脂組成物を用いているので、加熱延伸処理により、特定の表面部を容易に形成し、適度な柔軟性と表面硬度を示す発泡体を得ることができる。また、発泡体の表面を溶融させることで表面部の外側の表面の気泡状態、表面状態及び露出する気泡壁を制御することができる。また、加熱圧縮処理によって、発泡シートをより一層薄型化でき気泡が扁平になり、荷重が付与された際の反発力が小さくなる特徴も得られる。
【0097】
この様に、スキン層を一旦除去し、それに伴って生成したスライス面を加熱などして得られる疑似スキン層は、スキン層に比べるとその厚みが薄く、また延伸や圧縮などにより厚み方向の気泡を扁平形状にすることが可能となるため、基材追従性および柔軟性を低下させること無く、表面平滑性を付与することができる。
【実施例】
【0098】
以下の実施例と比較例で用いた評価方法は、次のとおりである。
【0099】
(1)ポリオレフィン系樹脂の密度:
ポリオレフィン系樹脂の密度は、JIS K7112(1999)「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に準じて測定した。
【0100】
(2)MFR:
MFRとは、JIS K7210(1999)「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート (MFR) およびメルトボリュームフローレイト (MVR) の試験方法」の附属書B(参考)「熱可塑性プラスチック材料の規格と指定とその試験条件」に基づきポリエチレン系樹脂(a2)は、温度190℃、荷重2.16kgf、ポリプロピレン系樹脂(a1)、熱可塑性エラストマー系樹脂(a3)は温度230℃、荷重2.16kgfの条件でメルトマスフローレート計(株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ型式F−B01)を使用し、手動切り取り法を採用し、ダイから10min間にでてきた樹脂の重量を測定した。
【0101】
(3)発泡体を構成する樹脂の融点および発泡体の融点:
融点とは、示差走査熱量分析で得られた縦軸に融解熱容量(J/g)、横軸に温度をとったときに得られるDSC曲線の吸熱ピークから得られる最大の温度である。示差走査熱量計(DSC:セイコー電子工業株式会社製RDC220−ロボットDSC)を用いてサンプルを2mg準備し、窒素環境下において測定した。測定条件は、サンプルを200℃の温度まで昇温し溶融させた後、10℃/分の速度で−100℃の温度まで冷却させた時に得られる発熱ピークが結晶化温度であり、更に冷却させて階段状の変位点の中点にあたるのがガラス転移温度である。それから10℃/分の速度で昇温して、単位質量あたりの吸熱ピークを測定した。この二回目の昇温時に得られる融解による吸熱ピークの頂点を融点とした。
【0102】
本発明の発泡体における融点の測定方法についても、上記の方法と同じである。複数の樹脂を用いて発泡体を作成する場合は、二回目の昇温時に得られる吸熱ピークのうち、低い方から順に第1の融点とする。
【0103】
(4)発泡体の厚さ:
発泡体の厚さは、ISO1923(1981)「発泡プラスチック及びゴム一線寸法の測定方法」に従って測定を行った値である。具体的には10cm
2の面積を持つ円形測定子をつけたダイヤルゲージを用いて、一定の大きさに切った発泡体を平坦な台に静置させた上から発泡体表面に10gの一定圧力で接触させて測定する。
【0104】
(5)発泡体のみかけ密度:
発泡体のみかけ密度は、JIS K6767(1999)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に準じて測定・計算した値である。10cm角に切った発泡体の厚さを測定し、且つこの試験片の質量を秤量する。以下の式によって得られた値をみかけ密度とし、単位はkg/m
3とする。
【0105】
みかけ密度(kg/m
3)={試験片の質量(kg)/試験片面積0.01(m
2)/試験片の厚さ(m)}
(6)発泡体のゲル分率:
発泡体を約0.5mm四方に切断し、約100mgを0.1mgの単位で秤量する。140℃の温度のテトラリン200mlに3時間浸漬した後、100メッシュのステンレス製金網で自然濾過し、金網上の不溶解分を1時間120℃下で熱風オーブンにて乾燥する。次いで、シリカゲルを入れたデシケータ内で30分間冷却し、この不溶解分の質量を精密に秤量し、次の式に従って発泡体のゲル分率を百分率で算出する。
ゲル分率(%)={不溶解分の質量(mg)/秤量した発泡体の質量(mg)}×100。
【0106】
(7)発泡体の加熱収縮率の測定方法:
加熱収縮率の測定方法としては、JIS K6767(1999)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に準じておこなう。具体的には100mm角の標線を書いた試験片を100℃に調整した熱風オーブン内、60分間放置した後に23℃の環境下に60分以上放置冷却したのち長さ方向(MD)および幅方向(TD)に引かれた標線の間隔の減少量を元の標線間距離である100mmで除したものの百分率で表した値である。
【0107】
(8)発泡体の25%圧縮硬さ:
発泡体の25%圧縮硬さは、JIS K6767(1999)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に基づいて測定した値である。具体的には、発泡体を長さ方向(MD)50mm×幅方向(TD)50mmに切断し、厚さが20mm以上30mm以下になるように重ね、初期厚さを測定する。平面板にサンプルを置き、発泡体の初期厚さの25%まで10mm/分の速度で圧縮して停止し、20秒後の荷重を測定し、下記式により発泡体の25%圧縮硬さ(kPa)を計算した。
25%圧縮硬さ(kPa)=25%圧縮し20秒後の荷重(N)/25(cm
2)/10。
【0108】
(9)スキン層厚さの測定:
スキン層厚さは、試料を鋭利な刃で気泡が潰れないよう切断し、切り出された垂直断面をキーエンス株式会社製、型式:VHS−900F光学顕微鏡を用いて100〜150倍に拡大観察し、気泡部分が無い発泡体の部分の厚みを測定した。任意に抽出した5点の算術平均値をスキン層厚さとした。
(10)
疑似スキン層の厚さ、発泡体内部の気泡膜厚:
疑似スキン層の厚さおよび発泡体内部の気泡膜厚は、試料を鋭利な刃で気泡が潰れないよう切断し、切り出された垂直断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N)を用いて100〜150倍の倍率で観察し、得られた画像および計測ソフトを使用して
疑似スキン層の厚さおよび気泡膜厚の各々を測定した。なお、撮影された画像の1.5mm×1.5mm範囲内において、
疑似スキン層は、スライス後に直接加熱された面を任意に測定し、内部気泡膜厚は、
疑似スキン層以外の試料中央付近の気泡壁についてそれぞれ10箇所の視野において測定し、算術平均として求めた。
(11)発泡体の表面硬度測定:
表面硬度測定は、測定物が薄くて柔らかいものを測定できる高分子計器株式会社製「マイクロゴム硬度計MD−1capaタイプC」を使用し、5回測定した値の上下限値を取り除いた3回の平均値を使用した。測定条件は、加圧面φ9mm、押針φ1mm半球形の測定子により、押針高さは0.5mmから3mm/secの速度で下降させて測定した。
【0109】
(11)発泡体の表面粗さ測定(中心線平均粗さRa75):
表面粗さは、JIS B0601(:2001)に規定される中心線平均粗さRa75を使用し、3回測定してその算術平均値を使用した。
【0110】
(評価方法)
実施例と比較例で用いた評価方法については、次のとおりである。
【0111】
(1)追従性
追従性評価としては、以下の方法により実施した。1m角にサンプリングした発泡体の四方をクランプして、円筒金型(直径50mmφ×高さ50mm)に常温で接触させた。
○:円筒天面との間に隙間無く追従した。
△:円筒天面との間に若干の隙間が生じたが、角は追従した。
×:円筒天面との間に隙間が生じ、角の追従が起こらなかった。
【0112】
(2)クッション性
クッション性評価としては、以下の方法により実施した。発泡体を10mm厚みになる様に鉄板の上に積層させる。その後、指で発泡体の上部を押さえて評価した。
○:指が沈み込み、十分な反発を感じる。
△:指の沈み込みが不十分、もしくは反発を感じない。
×:硬さを感じる。
【0113】
(3)粘着強度差
粘着強度差としては、以下の方法により実施した。発泡体の両面に粘着剤を塗布し、それぞれの表面についてSUS板に貼り付けた後、手で引き剥がして評価した。
○:両面の強度差を感じない。
×:両面の強度差を感じる。
【0114】
(4)粘着加工性
粘着加工性としては、以下の方法により実施した。発泡体の表面に粘着剤を塗布したときの表面を観察した。
○:表面に十分に粘着剤層が保持できている。
△:表面に粘着剤層が形成されているが薄い。但し、塗布量を上げると保持できている。
×:粘着剤層の形成が不十分。
【0115】
(5)耐熱性
耐熱性評価としては、以下の方法により実施した。1m角の発泡体を四方でクランプして200℃の成形機中で30秒保持した後の表面性を評価した。
○:表面性に問題なく、美麗である。
△:表面に若干の凹凸が生じる。
×:荒れが生じ、凹凸が激しくなる。
【0116】
(6)総合評価
総合評価としては、追従性、クッション性、粘着強度差、粘着加工性、耐熱性の結果を元に実施した。
◎:×が一つも無く、△が一つまでのもの
○:×が一つも無く、△が二つまでのもの
△:×が二つまでのもの
×:×が三つ以上あるもの。
【0117】
(使用樹脂)
実施例と比較例で用いた樹脂は、次のとおりである。
【0118】
<熱可塑性エラストマー系樹脂>
a−1:三井化学製“タフマー”(登録商標)PN−3560
密度866kg/m
3、MFR(230℃)=6.0g/10min、融点=160℃、結晶化温度=60℃、ガラス転移温度=−25℃、結晶融解エネルギー=23J/g
a−2:プライムポリマ製“プライムTPO”(登録商標)M142E
密度900kg/m
3、MFR(230℃)=10.0g/10min、融点=153℃、結晶化温度=80℃、ガラス転移温度=−23℃、結晶融解エネルギー=29J/g
a−3:ダウ・ケミカル製“INFUSE”(登録商標)9107
密度866kg/m
3、MFR(230℃)=3.0g/10min、融点=121℃、結晶化温度=95℃、ガラス転移温度=−62℃、結晶融解エネルギー=15J/g
<ポリプロピレン系樹脂>
b−1:プライムポリマ製“プライムポリプロ“(登録商標)J452HAP
密度:900kg/m
3、MFR(230℃)=3.5g/10min、融点=163℃
b−2:日本ポリプロ製“ノバテック”(登録商法)PP EG6D
密度:900kg/m
3、MFR(230℃)=0.8g/10min、融点=146℃。
【0119】
<ポリエチレン系樹脂>
c−1:日本ポリエチレン製“ノバテック”(登録商標)LL UJ960
密度:935kg/m
3、MFR(190℃)=5g/10min、融点=126℃
c−2:日本ポリエチレン製“ノバテック”(登録商法)LD LJ602
密度:922kg/m
3、MFR(190℃)=5.3g/10min、融点=113℃。
【0120】
<エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂>
EVA:東ソー製“ウルトラセン”(登録商標)636
密度941kg/m
3、MFR(190℃)=2.5g/10min、融点=82℃、
発泡剤:アゾジカルボンアミド永和化成工業製“ビニホールAC#R”(登録商標)
架橋助剤:和光純薬工業製55%ジビニルベンゼン
酸化防止剤:BASF社製“IRGANOX”(登録商標)1010。
【0121】
(加工方法)
実施例、比較例で実施した加工方法は、次のとおりである。
【0122】
(1)スライス工程
厚み方向に二つ以上に裁断する工程のことで、回転したバンドソーにより裁断した。
【0123】
(2)加熱工程
200℃以上に加熱できるヒーターにより両面を加熱する工程のことで、赤外線ヒーターを用いた。
【0124】
(3)延伸工程
巻き出しと巻き取りで測差をつけることで延伸する工程のことで、駆動しているニップロールの速度をコントロールすることで長手方向に延伸した。
【0125】
(4)圧縮工程
厚み方向に圧縮して発泡体を圧延する工程のことで、ニップロールの間隙を元の発泡体の厚みよりも締めることで圧縮した。
【0126】
[実施例1〜8
、10]、
[参考例1〜13]、[比較例1〜4]
実施例1〜
8および10、参考例1〜13、と比較例1〜4で作製した発泡体は、次のとおりである。
【0127】
表に示す熱可塑性エラストマー系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、発泡剤、架橋助剤および酸化防止剤をそれぞれの比率でヘンシェルミキサーを用いて混合し、二軸押出機を用いて160〜180℃の温度で溶融押出し、Tダイを用いて目標とする発泡体厚さの1/2以上の厚さのポリオレフィン系樹脂シートを作製した。なお。表中、発泡剤、架橋助剤および酸化防止剤の配合量は樹脂小計を100質量部とした質量部である。このようにして得られたポリオレフィン系樹脂シートに、加速電圧600kV、所定の吸収線量の電子線を片面から照射して架橋シートを得た後、この架橋シートを210℃の温度の塩浴上に浮かべ、上方から赤外線ヒーターで加熱し発泡させた。その発泡体を40℃の温度の水で冷却し、発泡体表面を水洗して乾燥させ、厚さが1.0〜3.0mm、みかけ密度が30〜350kg/m3、ゲル分率が35〜55%の発泡体の長尺ロールを得た。前記得られた長尺ロール状の発泡体を株式会社ニッピ機械社製「NP−120RS」のスライス機で厚さが300μm〜800μmになるように発泡体の片方面第一表面部より長さ方向(MD)に順番に3〜5枚スライスし、片方にスキン層を有するスライスされた発泡体とスキン層を有しない上下面をスライスされた長尺ロール状の発泡体を得た。スキン層を有しない上下面をスライスされた長尺ロール状の発泡体に赤外線ヒーターを使用して上下面を140℃〜195℃で加熱しながら長さ方向(MD)に105%〜150%に延伸した厚さ方向上下面の両面に加熱された
疑似スキン層を有する厚さ100μm〜750μmの発泡体を作製した。
【0128】
【表1】
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】