(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の導電性接着剤は、アミンを含む保護層を備え、平均粒子径が30nm〜300nmである金属微粒子Aを含有し、前記アミンは、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は下記一般式(1)で表されるアルコキシアミンを含み、前記保護層において、前記炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は前記一般式(1)で表されるアルコキシアミンと、これらとは異なるアミンとの比率が、100:0〜10:90の範囲内にあることを特徴とする。
NH
2−R
2−O−R
1 …(1)
[式中、R
1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
2は炭素数1〜4のアルキレン基を示す。]
【0015】
以下、本発明の導電性接着剤、当該導電性接着剤の製造方法、当該導電性接着剤の焼結体、及び当該焼結体を部材間に備えている回路又は装置について詳述する。
【0016】
1.導電性接着剤
本発明の導電性接着剤は、前述の金属微粒子Aを所定の割合で含んでいる。
【0017】
金属微粒子A
本発明の金属微粒子Aは、アミンを含む保護層を備えており、平均粒子径が30nm〜300nmである。後述の通り、金属微粒子Aは、金属により構成された粒子(金属粒子)の表層に、当該保護層を有している。
【0018】
また、金属微粒子Aの保護層に含まれるアミンは、炭素数5〜7のモノアルキルアミン(以下、「C5−7モノアルキルアミン」ということがある。)及び前記一般式(1)で表されるアルコキシアミン(以下、「アルコキシアミン(1)」ということがある。)の少なくとも一方を含んでいる。さらに、保護層において、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は一般式(1)で表されるアルコキシアミンと、これらとは異なるアミンとの比率(C5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)の合計:C5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)とは異なるアミンの合計)が、100:0〜10:90の範囲内にある。
【0019】
本発明の金属微粒子Aの平均粒子径は、30nm〜300nmの範囲であれば特に制限なく用いることができ、30nm〜250nmの範囲であることが好ましく、30nm〜230nmの範囲であることがより好ましい。平均粒子径が30nmより小さいと、十分な機械的強度(せん断強度)が得られず、300nmより大きいと十分な導電性が得られない。なお、本発明における金属微粒子Aの平均粒子径には、上記範囲の平均粒子径を有する金属微粒子を単独で、又は、上記範囲の平均粒子径を有する金属微粒子を複数組み合わせて用いた場合だけでなく、上記範囲外の平均粒子径の金属微粒子を混合し、上記範囲の平均粒子径となった場合も含まれ得る。
【0020】
さらに、特に高い機械的強度(せん断強度)を発揮する観点から、金属微粒子Aには、保護層に含まれるアミンが炭素数5〜7のモノアルキルアミン(特に好ましくはn−ヘキシルアミン)を含み、かつ、平均粒子径が180nm〜210nmの範囲の金属微粒子Sを含んでいることが好ましい。当該金属微粒子Sの保護層に含まれるアミンは、炭素数5〜7のモノアルキルアミンを80%以上含んでいることが好ましく、90%以上含んでいることがさらに好ましい。また、金属微粒子A中における、当該金属微粒子Sの割合は、20質量%以上であることが好ましい。
【0021】
なお、本発明の金属微粒子における保護層に含まれるアミンの量は、後述の測定方法によって、求めることができる。
【0022】
さらに、金属微粒子Aは、実質的に金属微粒子Sのみにより構成されていてもよい(金属微粒子Sの割合が99質量%以上)し、他の金属微粒子を含んでいてもよい。当該金属微粒子Sと共に含まれる金属微粒子としては、保護層に含まれるアミンが炭素数5〜7のモノアルキルアミン(特に好ましくはn−ヘキシルアミン)を含み、かつ、平均粒子径が50nm〜100nmの範囲の金属微粒子Pが好ましい。当該金属微粒子Pの保護層に含まれるアミンは、炭素数5〜7のモノアルキルアミンを80%以上含んでいることが好ましく、90%以上含んでいることがさらに好ましい。また、金属微粒子A中における、当該金属微粒子Pの割合は、20質量%〜80質量%程度であることが好ましい。
【0023】
上記範囲の平均粒子径を有する金属微粒子を複数組み合わせて用いる場合、上記範囲の平均粒子径を有する金属微粒子を任意で選択し、異なる平均粒子径の金属微粒子を組み合せて金属微粒子Aとすることができる。異なる平均粒子径の組み合わせとして、例えば、平均粒子径30nm以上100nm未満(平均粒子径30nm以上100nm未満の範囲が好ましく、平均粒子径50nm以上100nm未満の範囲がより好ましい)の平均粒子径の金属微粒子(例えば、小さい平均粒子径の金属微粒子(I))と、平均粒子径100nm以上300nm以下(平均粒子径100nm以上250nm以下の範囲が好ましく、平均粒子径100nm以上230nm以下の範囲がより好ましい)の金属微粒子(例えば、大きい平均粒子径の金属微粒子(II))との組み合せを例示することができる。異なる平均粒子径の金属微粒子を組み合わせて用いる場合の比率は、適宜選択することができるが、小さい平均粒子径の金属微粒子(I)と大きい平均粒子の金属微粒子(II)の質量比(I:II)が、99:1〜1:99の範囲であればよく、90:10〜10:90の範囲が好ましく、90:10〜20:80の範囲がより好ましく、90:10〜40:60の範囲がさらに好ましい。
【0024】
さらに、金属微粒子としては、上記平均粒子径の範囲外(30nm〜300nmの範囲外であり、例えば、30nm未満、1〜25nm、300nm超、300nm超500nm以下程度)の金属微粒子を組み合わせて用いることができる。上記平均粒子径の範囲外の金属微粒子を組み合わせて用いる場合、金属微粒子を混合した後の平均粒子径が上記平均粒子径の範囲内であれば、上記平均粒子径の範囲外の金属微粒子の添加量は特に制限されず、例えば、金属微粒子の全量に対して、15質量%以下であればよく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
上記平均粒子径の範囲外の金属微粒子は、保護層を有しているものが好ましい。当該金属微粒子の保護層において、前記C5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)と、これらとは異なるアミンとの比率が、100:0〜10:90の範囲にあるものを用いてもよく、当該範囲外のものを用いてもよい。なお、上記平均粒子径の範囲外の金属微粒子の保護層は、後述する金属微粒子Aの保護層の成分として用いることのできるものから構成されていてもよい。
【0026】
本発明において、金属微粒子Aの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察される画像に含まれる30個以上の粒子の長辺の長さの平均値である。なお、本発明の金属微粒子Aについて、単独の平均粒子径の金属微粒子を用いる場合は、走査型電子顕微鏡で観察する場合の画像に含まれる任意の30個以上の粒子の長辺の長さの平均値とすることができる。また、異なる平均粒子径の金属微粒子を組み合わせて用いる場合の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察される画像に含まれる各金属微粒子の30個以上の粒子の長辺の長さの平均値と各金属微粒子の混合比率により求めることができる。
【0027】
より具体的には、例えば2種類の異なる平均粒子径の金属微粒子を組み合わせて用いる場合、金属微粒子の真密度を一定と仮定することで、次の式(A)より求めることができる。
混合した金属微粒子の平均粒子径=2×((A/R
12+B/R
22)/(A/R
13+B/R
23))…(A)
[式中、小さい平均粒子径の金属微粒子:大きい平均粒子径の金属微粒子の比率をA:B、小さい平均粒子径の金属微粒子の半径をR
1、大きい平均粒子径の金属微粒子の半径をR
2で表す。]
【0028】
また、例えば3種類の異なる平均粒子径の金属微粒子を組み合わせて用いる場合、金属微粒子の真密度を一定と仮定することで、次の式(B)より求めることができる。
混合した金属微粒子の平均粒子径=2×((A/R
12+B/R
22+C/R
32)/(A/R
13+B/R
23+C/R
33))…(B)
[式中、小さい平均粒子径の金属微粒子:中間の平均粒子径の金属微粒子:大きい平均粒子径の金属微粒子の比率をA:B:C、小さい平均粒子径の金属微粒子の半径をR
1、中間の平均粒子径の金属微粒子の半径をR
2、大きい平均粒子径の金属微粒子の半径をR
3で表す。]
【0029】
本発明の導電性接着剤において、金属微粒子の含有量としては、特に制限されないが、好ましくは、80質量%以上、より好ましくは85質量%〜95質量%程度が挙げられる。
【0030】
本発明の金属微粒子Aの金属種としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム等を例示することができる。中でも、導電性の点では、金、銀、白金が好ましく、コスト及び低温焼結性の点では、銀、銅、ニッケルが好ましく、銀が特に好ましい。
【0031】
本発明の金属微粒子Aは、金属により構成された粒子(金属粒子)の表層に、保護層を有している。保護層を形成する材料としては、金属粒子の表層を形成でき、かつ、保護層として機能できるもの(例えば、金属微粒子A同士の凝集を抑制する層)であれば、特に制限されないが、導電性接着剤の焼結体の機械的強度を効果的に高める観点からは、好ましくは脂肪酸、アミン、ヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。保護層は、1種類の材料により構成されていてもよいし、2種類以上の材料により構成されていてもよい。
【0032】
脂肪酸
保護層における脂肪酸としては、特に制限されないが、好ましくはアルキル基の炭素数が3以上18以下の脂肪酸、より好ましくはアルキル基の炭素数が4以上18以下の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸の好ましい具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸等が挙げられる。また、脂肪酸の具体例としては、シクロヘキサンカルボン酸のような環状アルキルカルボン酸等も挙げられる。これらの中でも、導電性接着剤の焼結体の機械的強度を効果的に高める観点から、カプロン酸、2−エチルヘキシル酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸が好ましい。保護層における脂肪酸は、1種類の脂肪酸から構成されていてもよいし、2種類以上の脂肪酸により構成されていてもよい。
【0033】
アミン
金属微粒子Aの保護層に含まれるアミンは、C5−7モノアルキルアミン及びアルコキシアミン(1)の少なくとも一方を含んでいることを特徴とする。保護層に含まれるアミンとしては、C5−7モノアルキルアミン(特には、炭素数6のモノアルキルアミンが好ましい)及びアルコキシアミン(1)の少なくとも一方を含むものであれば、特に問題なく用いることができる。なお、保護層中におけるアミンは、C5−7モノアルキルアミン及びアルコキシアミン(1)の少なくとも一方のみから形成されていてもよく、それ以外のアミンを含有していてもよい。
【0034】
保護層において、C5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)と、これらとは異なるアミンとの比率は、100:0〜10:90の範囲であればよく、100:0〜20:80に範囲であれば好ましく、100:0〜30:70に範囲であればより好ましく、100:0〜40:60に範囲であればさらに好ましく、100:0〜50:50に範囲であれば特に好ましい。上記範囲であれば、焼結した際に、機械的強度(せん断強度)に優れる焼結体が得られる。
【0035】
なお、保護層に含まれる各アミンの比率は、ガスクロマトグラフィーから計算することができる。具体的には、金属微粒子1gをメタノール4gに分散させた後、濃塩酸を数滴加えよく撹拌することで保護層中のアミンをメタノール中に遊離させ、その溶液を水酸化ナトリウムで中和処理したものをガスクロマトグラフィーに導入する。クロマトグラフィーにより得られたアミンのピーク面積により各アミンの比率を定量できる。保護層に含まれるアミンの量は上記測定方法によって得られたピーク面積の値より、含有量(%)で表す。
【0036】
炭素数5〜7のモノアルキルアミンとしては、n‐アミルアミン、n‐ヘキシルアミン、n‐ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン等を例示することができる。中でもn−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミンが好ましく、n−ヘキシルアミンが特に好ましい。保護層におけるC5−7モノアルキルアミンは、1種類のモノアルキルアミンから構成されていてもよく、2種類以上のモノアルキルアミンから構成されていてもよい。
【0037】
また、前記一般式(1)中、R
1は、炭素数1〜4のアルキル基であれば、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、炭素数1〜3のアルキルであることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であることがより好ましい。R
2は、炭素数1〜4のアルキル基であれば、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であることがより好ましい。前記一般式(1)で表されるアルコキシアミンは、1種類のアルコキシアミンから構成されていてもよく、2種以上のアルコキシアミンから構成されていてもよい。
【0038】
前記一般式(1)で表されるアルコキシアミンの具体例としては、1−メトキシメチルアミン、1−エトキシメチルアミン、1−プロポキシメチルアミン、1−イソプロポキシメチルアミン、1−ブトキシメチルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、2−プロポキシエチルアミン、2−イソプロポキシエチルアミン、2−ブトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、4−メトキシブチルアミン、4−エトキブチルアミン、4−プロポキシブチルアミン、4−イソプロポキシブチルアミン、4−ブトキシブチルアミン等を例示することができる。中でも、2−エトキシエチルアミン、2−プロポキシエチルアミン、2−イソプロポキシエチルアミン、2−ブトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミンが好ましい。
【0039】
保護層に含まれるアミンは、C5−7モノアルキルアミン及びアルコキシアミン(1)のいずれか一方のみであってもよいし、両者を含んでいてもよい。両者を含む場合の比率も特に制限されず、任意に比率で含むことができ、比率としては、例えば70:30〜30:70などが挙げられる。
【0040】
前述の通り、保護層に含まれるアミンには、C5−7のモノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)とは異なるアミンが含まれていてもよい。なお、本発明の導電性接着剤において、金属微粒子Aの保護層に含まれているアミンは、導電性接着剤の焼結時に金属微粒子Aの表面から離脱するため、得られる焼結体の導電性には実質的に影響を与えない。
【0041】
保護層に含まれるアミンのうち、C5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)とは異なるアミンの具体例としては、特に制限をされないが、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、さらに、ひとつの化合物中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物等を例示することができる。
【0042】
第1級アミンとしては、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、イソアミルアミン、n−オクチルアミン、2−オクチルアミン、tert−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−アミノデカン、n−アミノウンデカン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、2−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−オレイルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、N‐エチル‐1,3‐ジアミノプロパン、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチル‐1,3‐ジアミノプロパン、N,N‐ジブチル‐1,3‐アミノプロパン、N,N‐ジイソブチル‐1,3‐ジアミノプロパン、N‐ラウリルジアミノプロパン等の直鎖又は分岐炭化水素基を有するアミン等を例示できる。
【0043】
また、脂環式アミンであるシクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミンや、芳香族アミンであるアニリン等も例示できる。
また、3−イソプロポキシプロピルアミン、イソブトキシプロピルアミン等のエーテルアミンも例示できる。
【0044】
第2級アミンとしては、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジペプチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N,N−ジノニルアミン、N,N−ジデシルアミン、N,N−ジウンデシルアミン、N,N−ジドデシルアミン、N,N−ジステアリルアミン、N−メチル−N−プロピルアミン、N−エチル−N−プロピルアミン、N−プロピル−N−ブチルアミン等のジアルキルモノアミン、及びピペリジン等の環状アミンを例示することができる。
【0045】
第3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン等を例示できる。
【0046】
さらに、異なるアミンとしては、ひとつの化合物中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物も用いることができる。ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル‐1,3‐プロパンジアミン、N,N’‐ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ヘキサンジアミン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン等を例示できる。
【0047】
中でも、導電性接着剤の焼結体の機械的強度を効果的に高める観点から、n−ブチルアミン、n−オクチルアミン、N,N−ジメチル‐1,3‐ジアミノプロパン、N,N‐ジエチル‐1,3‐ジアミノプロパンが好ましい。保護層中における異なるアミンは、上述したものを1種類含んでいるものでもよく、2種類以上を含んでいるものでもよい。
【0048】
保護層において、アミンと脂肪酸とを併用する場合、アミンと脂肪酸とのモル比(アミン:脂肪酸)としては、約90:10〜約99.9:0.1の範囲が好ましく、約95:5〜約99.5:0.5の範囲がより好ましい。
【0049】
さらに、本発明における金属微粒子Aの保護層には、ヒドロキシ脂肪酸を含有してもよい、保護層に含まれ得るヒドロキシ脂肪酸としては、ヒドロキシ脂肪酸としては、炭素数3〜24で、かつ水酸基を1個以上(例えば、1個)有する化合物を使用できる。ヒドロキシ脂肪酸として、例えば、2−ヒドロキシデカン酸、2−ヒドロキシドデカン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシエイコサン酸、2−ヒドロキシドコサン酸、2−ヒドロキシトリコサン酸、2−ヒドロキシテトラコサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシトリデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシヘキサデカン酸、3−ヒドロキシヘプタデカン酸、3−ヒドロキシオクタデカン酸、ω−ヒドロキシ−2−デセン酸、ω−ヒドロキシペンタデカン酸、ω−ヒドロキシヘプタデカン酸、ω−ヒドロキシエイコサン酸、ω−ヒドロキシドコサン酸、6−ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、[R−(E)]−12−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸等が挙げられる。中でも、炭素数4〜18で、かつω位以外(特に、12位)に1個の水酸基を有するヒドロキシ脂肪酸が好ましく、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸がより好ましい。第2の保護層に含まれるヒドロキシ脂肪酸は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0050】
保護層において、ヒドロキシ脂肪酸を含む場合、ヒドロキシ脂肪酸の含有量は、アミン1モルに対して、0.1〜10モルの範囲であればよく、0.2〜5モルの範囲であることが好ましい。
【0051】
金属微粒子Aにおける保護層の割合(質量%)としては、特に制限されないが、金属微粒子Aの表面を保護しつつ、導電性接着剤の焼結体の機械的強度を効果的に高める観点から、0.1質量%〜10質量%程度が好ましく、0.2質量%〜8質量%程度がより好ましく、0.2質量%〜5質量%程度がさらに好ましい。
【0052】
本発明に用いる金属微粒子Aは、上述した特徴を有するものであれば、市販されているものを購入して用いてもよく、通常、用いられる金属微粒子(例えば、銀微粒子)の製造方法(例えば、特開2015−40319号公報)によって製造したものを用いてもよい。なお、金属微粒子の製造方法については、後で詳細を述べる。また、本発明の金属微粒子Aには、保護層におけるC5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)と、これらとは異なるアミンとの比率が、100:0〜10:90の範囲外である金属微粒子を用い、後述する方法によって、当該比率を、100:0〜10:90の範囲内に調整したものを用いることも可能である。
【0053】
溶媒
本発明の導電性接着剤は、金属微粒子Aに加えて、さらに溶媒を含むことが好ましい。溶媒を含むことにより、流動性が高まり、本発明の導電性接着剤を所望の場所に配置しやすくなる。
【0054】
溶媒としては、金属微粒子Aを分散できるものであれば、特に制限されないが、極性有機溶媒を含むことが好ましい。極性有機溶媒としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等のジオール類;グリセロール;炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルコール、シクロヘキサノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、蟻酸エチル等の脂肪酸エステル類;ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール又はグリコールエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;テルピネオール等のテルペン類;アセトニトリル;γ−ブチロラクトン;2−ピロリドン;N−メチルピロリドン;N−(2−アミノエチル)ピペラジン等が挙げられる。これらの中でも、導電性接着剤の焼結体の機械的強度をより一層効果的に高める観点から、炭素数3〜5の直鎖又は分岐鎖のアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テルピネオールが好ましい。
【0055】
溶媒は、極性有機溶媒に加えて、さらに非極性又は疎水性溶媒を含んでいてもよい。非極性有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、2−エチルヘキサン、シクロヘキサン等の直鎖、分枝、又は環状の飽和炭化水素;炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖のアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、ベンゾニトリル等の芳香族化合物;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;メチル−n−アミルケトン;メチルエチルケトンオキシム;トリアセチン等が挙げられる。これらの中でも、飽和炭化水素及び炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖のアルコール類が好ましく、ヘキサン、オクタン、デカン、オクタノール、デカノール、ドデカノールがより好ましい。溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
【0056】
極性有機溶媒と非極性有機溶媒との双方を含む場合、極性有機溶媒の比率は、溶媒の全量に対して、5容量%以上が好ましく、10容量%以上がより好ましく、15容量%以上がさらにより好ましい。また、60容量%以下とすることができ、55容量%以下とすることもでき、50容量%以下とすることもできる。溶媒は極性有機溶媒のみからなるものとすることもできる。本発明の導電性接着剤は、このように極性有機溶媒を多く含む場合にも、金属微粒子Aの分散性が良い。
【0057】
本発明の導電性接着剤において、溶媒の割合としては、特に制限されないが、20質量%以下が好ましく、5質量%〜15質量%程度がより好ましい。
【0058】
本発明の導電性接着剤は、アミンを含む保護層を備え、平均粒子径が30nm〜300nmである金属微粒子Aを混合する(より具体的には、金属微粒子Aと溶媒を混合する)工程を備える方法により製造することができる。本発明の導電性接着剤の製造方法においては、前記アミンが炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は前記一般式(1)で表されるアルコキシアミンを含み、前記保護層において、前記炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は前記一般式(1)で表されるアルコキシアミンと、これらとは異なるアミンとの比率が、100:0〜10:90の範囲内にある、前記金属微粒子Aを用いる。
【0059】
また、本発明の導電性接着剤の製造方法において、アミンを含む保護層を備え、平均粒子径が30nm〜300nmである金属微粒子を準備し、当該金属微粒子の保護層に含まれるアミンと、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は一般式(1)で表されるアルコキシアミンとを置換して、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は前記一般式(1)で表されるアルコキシアミンと、これらとは異なるアミンとの比率が、100:0〜10:90の範囲内となるように調整し、前記金属微粒子Aを調製する工程をさらに備えていてもよい。アミンを置換して金属微粒子Aを調製する方法としては、例えば後述の方法を採用することができる。
【0060】
2.金属微粒子Aの製造方法
本発明に用いる金属微粒子A(例えば、銀微粒子)の製造方法の一例を以下に示す。
【0061】
まず、金属微粒子Aを製造するための組成物(銀微粒子調製用組成物)を用意する。具体的には、銀微粒子の原料となる銀化合物(好ましくは、硝酸銀、シュウ酸銀等)と、保護層を構成する成分(前述の脂肪酸、アミン、ヒドロキシ脂肪酸等)、及び有機溶媒を準備する。次に、これらの各成分を混合して銀微粒子調製用組成物を得る。当該組成物における各成分の割合は、前述の金属微粒子Aの構成となるように、適宜調整すればよい。例えば、組成物中のシュウ酸銀の含有量は、組成物の全量に対して、20〜70質量%程度とすることが好ましい。また、保護層に脂肪酸を含有させる場合、脂肪酸の含有量としては、組成物の全量に対して、0.1質量%〜20質量%程度とすることが好ましい。保護層におけるアミンの含有量としては、組成物の全量に対して、5質量%〜55質量%程度とすることが好ましい。保護層にヒドロキシ脂肪酸を含有させる場合、ヒドロキシ脂肪酸の含有量としては、組成物の全量に対して、0.1質量%〜15質量%程度とすることが好ましい。
【0062】
なお、アミンは、C5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)と、これらとは異なるアミンとの比率が、上記範囲内になるように調整して用いればよい。また、保護層における当該比率が、上記範囲外となるように調整した銀微粒子調製用組成物を用いて、銀微粒子を合成し、後述する方法によって、当該比率を上記範囲内に調整(アミンを置換)することも可能である。
【0063】
また、各成分の混合手段も特に制限されず、例えば、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー、ボルテックスミキサー、遊星ミル、ボールミル、三本ロール、ラインミキサー、プラネタリーミキサー、ディゾルバー等の汎用の装置で混合できる。混合時の溶解熱、摩擦熱等の影響で組成物の温度が上昇し、銀微粒子の熱分解反応が開始することを回避するために、組成物の温度を、例えば60℃以下、特に40℃以下に抑えながら混合することが好ましい。
【0064】
次に、銀微粒子調製用組成物を、反応容器内で反応、通常は加熱による反応に供することにより、銀化合物の熱分解反応が起こり、銀微粒子が生成する。反応に当たっては、予め加熱しておいた反応容器内に組成物を導入してもよく、組成物を反応容器内に導入した後に加熱してもよい。
【0065】
反応温度は、熱分解反応が進行し、銀微粒子が生成する温度であればよく、例えば50〜250℃程度が挙げられる。また、反応時間は、所望する平均粒子径の大きさや、それに応じた組成物の組成に合せて、適宜選択すればよい。反応時間としては、例えば1分間〜100時間が挙げられる。
【0066】
熱分解反応により生成した銀微粒子は、未反応原料を含む混合物として得られるため、銀微粒子を精製することが好ましい。精製方法としては、固液分離方法、銀微粒子と有機溶媒等の未反応原料との比重差を利用した沈殿方法等が挙げられる。固液分離方法としては、フィルター濾過、遠心分離、サイクロン式、又はデカンタ等の方法が挙げられる。精製時の取り扱いを容易にするために、アセトン、メタノール等の低沸点溶媒で銀微粒子を含有する混合物を希釈して、その粘度を調整してもよい。
【0067】
銀微粒子製造用組成物の組成や反応条件を調整することにより、得られる銀微粒子の平均粒子径を調整することができる。
【0068】
3.保護層における各アミンの比率を調整(置換)する方法
「2.金属微粒子Aの製造方法」の欄で述べた保護層における各アミンの前記比率(C5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)と、これらとは異なるアミンとの比率)が、上記範囲外となるように調整して得られた金属微粒子の当該比率が、上記範囲内となるように調整(置換)する方法について、述べる。
【0069】
保護層に含まれるアミンにおいて、C5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)と、これらとは異なるアミンとの比率が、上記範囲外の金属微粒子を溶媒中に分散させ、C5−7モノアルキルアミン及びアルコキシアミン(1)の少なくとも一方を、金属微粒子の質量に対して、0.1〜5倍量の範囲で添加し、室温〜80℃で、1分〜24時間撹拌を行う工程に付することで、保護層中における各アミンの比率を上記範囲に調整(置換)することができる。また、予め各アミンの比率を特定の割合に調整した溶媒中に、金属微粒子を加えることで、金属微粒子の保護層中におけるC5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)と、これらとは異なるアミンとの比率を所望する比率に調整することも可能である。
【0070】
金属微粒子を分散させる溶媒は、金属微粒子の合成に用いることができる溶媒を用いてもよく、導電性接着剤に用いることのできる溶媒を用いても良い。保護層中における各アミンの比率を上記範囲に調整(置換)した金属微粒子は、「2.金属微粒子Aの製造方法」の欄で述べた固液分離方法によって回収することができる。なお、本保護層における各アミンの比率を調整(置換)する方法は、上記範囲外の平均粒子径の金属微粒子において、保護層中におけるC5−7モノアルキルアミン及び/又はアルコキシアミン(1)と、これらとは異なるアミンとの比率を所望する比率に調整することも可能である。
【0071】
4.導電性接着剤の焼結体
本発明の導電性接着剤の焼結体は、前述の「1.導電性接着剤」で詳述した本発明の導電性接着剤を焼結することにより得られる。本発明の導電性接着剤の焼結体においては、導電性接着剤の保護層を構成している成分が、焼結の際の高熱により、ほとんどが離脱しており、焼結体は、実質的に金属により構成されている。
【0072】
焼結温度としては、特に制限されないが、得られる焼結体が高い導電性と高い接着力を発揮しつつ、機械的強度を効果的に高める観点から、好ましくは150℃〜200℃程度、より好ましくは150℃〜185℃程度が挙げられる。同様の観点から、焼結時間としては、好ましくは0.4時間〜2.0時間程度、より好ましくは0.5時間〜1.2時間程度が挙げられる。焼結は、大気、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)等の雰囲気下で行うことができる。焼結手段としては、特に制限されず、オーブン、熱風式乾燥炉、赤外線乾燥炉、レーザー照射、フラッシュランプ照射、マイクロウェーブ等が挙げられる。
【0073】
5.回路又は装置
本発明の回路又は装置は、それぞれ、本発明の焼結体により部材間が接着された部分を備えている。すなわち、本発明の回路又は装置は、前述の「1.導電性接着剤」で詳述した本発明の導電性接着剤を、回路又は装置の部材間に配置し、導電性接着剤を焼結させて、部材間を接着したものである。
【0074】
前述の通り、本発明の焼結体は、高い導電性と高い接着力を発揮しつつ、機械的強度が効果的に高められていることから、これを備える回路又は装置においても、部材間の導電性及び密着性に優れており、機械的強度も優れている。
【実施例】
【0075】
以下の実施例において本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0076】
実施例及び比較例において使用した各成分の詳細は、以下の通りである。
・シュウ酸銀((COOAg)
2)特許文献1(特許第5574761号公報)に記載の方法で合成した。
・オレイン酸(和光純薬工業株式会社製)
・N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(和光純薬工業株式会社製)
・N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン(和光純薬工業株式会社製)
・n−ヘキシルアミン(炭素数6、和光純薬工業株式会社製)
・n−プロピルアミン(炭素数3、和光純薬工業株式会社製)
・n−ブチルアミン(炭素数4、和光純薬工業株式会社製)
・3−メトキシプロピルアミン(炭素数4、和光純薬工業株式会社製)
・2‐(2−エチルへキシルオキシ)エタノール(和光純薬工業株式会社製)
・ブタノール(和光純薬工業株式会社製)
・ペンタノール(和光純薬工業株式会社製)
【0077】
以下の実施例及び比較例において、合成した銀微粒子の保護層におけるアミンの測定は、以下の方法により行った。
【0078】
(銀微粒子の保護層に含まれる各アミンの比率の測定方法)
銀微粒子1gに対して、メタノール4gを添加し、1分間撹拌した。その後、撹拌しながら濃塩酸100mgを添加し、さらに10分間撹拌を続け、保護層を遊離させた。さらに撹拌を続けながら、48%水酸化ナトリウム水溶液を150mg添加し、pH>7とした。その固液混合物を濾過することで、保護層に含まれるアミンを抽出したメタノール溶液が得られ、ガスクロマトグラフィー用の試料とした。その試料をガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC−2010、カラム:RESTEK製 Rtx−5 Amine)を用いて分析を行い、得られたピーク面積比より保護層に含まれるアミンの比率(GC%)の定量を行った。結果を表1−3に示す。
【0079】
なお、表1−3において、HAはn−ヘキシルアミン、MPはメトキシプロピルアミン、DAはN,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン又はN,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、BuNH
2はn−ブチルアミン、PrNH
2はn−プロピルアミンを意味する。
【0080】
以下の実施例及び比較例において、機械的強度、及び塗膜の割れや欠けは、それぞれ、以下のようにして評価した。結果は表1−3に示す。
【0081】
(機械的強度の評価)
各実施例及び比較例で得られた各塗膜のせん断強度は、ボンドテスター(西進商事製SS30−WD)を用いてダイシェアテストを実施して測定した。
【0082】
(塗膜の割れや欠けの評価)
各実施例及び比較例で得られた各塗膜の表面を目視で観察し、塗膜の割れや欠けの有無を評価した。
【0083】
<合成例1> 平均粒子径200nmの金属微粒子の合成例
磁気撹拌子を入れた50mLガラス製遠沈管に、オレイン酸(0.1g)、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン(3.25g)、及びペンタノール(4.0g)を投入し、1分間程度攪拌したのち、シュウ酸銀(4.0g)を投入し、約10分間攪拌することで、銀微粒子調製用組成物を得た。その後、アルミブロックを備えたホットスターラー(小池精密機器製作所製HHE−19G−U)上に、これらのガラス製遠沈管を立てて設置し、40℃で30分間攪拌し、さらに、90℃で30分間攪拌した。放冷後、磁気撹拌子を取り出し、各組成物にメタノール15gを添加してボルテックスミキサーで攪拌した後、遠心分離機(日立工機製CF7D2)にて3000rpm(約1600×G)で1分間の遠沈操作を実施し、遠沈管を傾けることにより上澄みを除去した。メタノール15gの添加、撹拌、遠心分離、及び上澄み除去の工程を2回繰り返し、製造された銀微粒子1を回収した。合成例1で得られた銀微粒子1を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製S−4500)にて観察し、画像に含まれる任意の30個の粒子の長辺の長さを測定して、平均値を求めた。平均粒子径は200nmであった。
【0084】
銀微粒子1の保護層に含まれるアミンの比率の調整(置換)方法
合成例1で得られた銀微粒子1の分散液(メタノール溶液)を用いて、n−ヘキシルアミン(銀微粒子1Aの調製に使用)、メトキシプロピルアミン(銀微粒子1Bの調製に使用)の各アミンを銀微粒子1の質量の3倍量を添加し、室温で4時間撹拌した。撹拌後、磁気撹拌子を取り出し、各組成物にメタノール15gを添加してボルテックスミキサーで攪拌した後、遠心分離機(日立工機製CF7D2)にて3000rpm(約1600×G)で1分間の遠沈操作を実施し、遠沈管を傾けることにより上澄みを除去した。メタノール15gの添加、撹拌、遠心分離、及び上澄み除去の工程を2回繰り返し、保護層におけるアミンの比率を調整(置換)した銀微粒子1A,1Bを回収した。なお、平均粒子径は変化しなかった。
【0085】
(実施例1,2)
実施例1では銀微粒子1A、実施例2では銀微粒子1Bを用い、それぞれ、総質量の10%相当のテルピネオールを添加し、各分散液を得た。この液をクラボウ社製のマゼルスターを用い、2回撹拌優先モードにて混合し、各導電性接着剤を調製した。
【0086】
次に、銅板上に無電解銀めっきを0.5μm施した基材を準備し、その上に各導電性接着剤を塗膜厚みが50μmとなるように、均一に塗膜を行い、その上に裏面(導電性接着剤と接する面)に金めっきもしくは金スパッタ処理が施されたシリコンウエハ(サイズ2mm×2mm)を上に乗せた。これを乾燥器(循環式)により、所定温度(150℃)にて60分間加熱させ、各導電性接着剤が焼結した塗膜を得た。
【0087】
<合成例2> 平均粒子径75nmの金属微粒子の合成例
磁気撹拌子を入れた50mLガラス製遠沈管に、オレイン酸(0.1g)、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン(3.25g)、及びブタノール(6.0g)を投入し、1分間程度攪拌したのち、シュウ酸銀(4.0g)を投入し、約10分間攪拌することで、銀微粒子調製用組成物を得た。その後、アルミブロックを備えたホットスターラー(小池精密機器製作所製HHE−19G−U)上に、これらのガラス製遠沈管を立てて設置し、40℃で30分間攪拌し、さらに、90℃で30分間攪拌した。放冷後、磁気撹拌子を取り出し、各組成物にメタノール15gを添加してボルテックスミキサーで攪拌した後、遠心分離機(日立工機製CF7D2)にて3000rpm(約1600×G)で1分間の遠沈操作を実施し、遠沈管を傾けることにより上澄みを除去した。メタノール15gの添加、撹拌、遠心分離、及び上澄み除去の工程を2回繰り返し、製造された銀微粒子2を回収した。合成例2で得られた銀微粒子2を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製S−4500)にて観察し、画像に含まれる任意の30個の粒子の長辺の長さを測定して、平均値を求めた。平均粒子径は75nmであった。なお、合成例2で得られた銀微粒子2は、銀微粒子2Cとして、実施例に用いた。
【0088】
銀微粒子2の保護層に含まれる各アミンの比率の調整(置換)方法
合成例2で得られた銀微粒子2の分散液(メタノール溶液)を用いて、n−ヘキシルアミン(銀微粒子2Aの調製に使用)、メトキシプロピルアミン(銀微粒子2Bの調製に使用)、n−ブチルアミン(銀微粒子2Dの調製に使用)、n−プロピルアミン(銀微粒子2Eの調製に使用)の各アミンを銀微粒子2の質量の3倍量を添加し、室温で4時間撹拌した。撹拌後、磁気撹拌子を取り出し、各組成物にメタノール15gを添加してボルテックスミキサーで攪拌した後、遠心分離機(日立工機製CF7D2)にて3000rpm(約1600×G)で1分間の遠沈操作を実施し、遠沈管を傾けることにより上澄みを除去した。メタノール15gの添加、撹拌、遠心分離、及び上澄み除去の工程を2回繰り返し、保護層における各アミンの比率を調整(置換)した銀微粒子2A〜2Eを回収した。なお、平均粒子径は変化しなかった。
【0089】
(実施例3,4及び比較例1〜3)
上記で得られた各銀微粒子2A〜2Eを用い、総質量の10%相当のテルピネオールを添加し、各分散液を得た。実施例3では銀微粒子2A、実施例4では銀微粒子2B、比較例1では銀微粒子2C、比較例2では銀微粒子2D、比較例3では銀微粒子2Eを用いた。これらの液をそれぞれクラボウ社製のマゼルスターを用い、2回撹拌優先モードにて混合し、各導電性接着剤を調製した。
【0090】
次に、銅板上に無電解銀めっきを0.5μm施した基材を準備し、その上に各導電性接着剤を塗膜厚みが50μmとなるように、均一に塗膜を行い、その上に裏面(導電性接着剤と接する面)に金めっきもしくは金スパッタ処理が施されたシリコンウエハ(サイズ2mm×2mm)を上に乗せた。これを乾燥器(循環式)により、所定温度(150℃)にて60分間加熱させ、各導電性接着剤が焼結した塗膜を得た。
【0091】
<合成例3> 平均粒子径20nmの金属微粒子の合成例
磁気撹拌子を入れた50mLガラス製遠沈管に、オレイン酸(0.06g)、ヘキシルアミン(1.4g)、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(0.3g)、ブチルアミン(0.6g)及び2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタノール(4.0g)を投入し、1分間程度攪拌したのち、シュウ酸銀(4.0g)を投入し、約10分間攪拌することで、銀微粒子調製用組成物を得た。その後、アルミブロックを備えたホットスターラー(小池精密機器製作所製HHE−19G−U)上に、これらのガラス製遠沈管を立てて設置し、40℃で30分間攪拌し、さらに、90℃で30分間攪拌した。放冷後、磁気撹拌子を取り出し、各組成物にメタノール15gを添加してボルテックスミキサーで攪拌した後、遠心分離機(日立工機製CF7D2)にて3000rpm(約1600×G)で1分間の遠沈操作を実施し、遠沈管を傾けることにより上澄みを除去した。メタノール15gの添加、撹拌、遠心分離、及び上澄み除去の工程を2回繰り返し、製造された銀微粒子6を回収した。合成例3で得られた銀微粒子3を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製S−4500)にて観察し、画像に含まれる任意の30個の粒子の長辺の長さを測定して、平均値を求めた。平均粒子径は20nmであった。
【0092】
銀微粒子3の保護層に含まれる各アミンの比率の調整(置換)方法
合成例3で得られた銀微粒子3の分散液(メタノール溶液)を用いて、n−ヘキシルアミンを銀微粒子の質量の3倍量を添加し、室温で4時間撹拌した。撹拌後、磁気撹拌子を取り出し、各組成物にメタノール15gを添加してボルテックスミキサーで攪拌した後、遠心分離機(日立工機製CF7D2)にて3000rpm(約1600×G)で1分間の遠沈操作を実施し、遠沈管を傾けることにより上澄みを除去した。メタノール15gの添加、撹拌、遠心分離、及び上澄み除去の工程を2回繰り返し、保護層に含まれるアミンの比率を調整(置換)した銀微粒子3Aを回収した。なお、平均粒子径は変化しなかった。
【0093】
(比較例4)
上記で得られた銀微粒子3Aを用い、総質量の10%相当のテルピネオールを添加し、各分散液を得た。この液をクラボウ社製のマゼルスターを用い、2回撹拌優先モードにて混合し、導電性接着剤を調製した。
【0094】
次に、銅板上に無電解銀めっきを0.5μm施した基材を準備し、その上に導電性接着剤を塗膜厚みが50μmとなるように、均一に塗膜を行い、その上に裏面(導電性接着剤と接する面)に金めっきもしくは金スパッタ処理が施されたシリコンウエハ(サイズ2mm×2mm)を上に乗せた。これを乾燥器(循環式)により、所定温度(150℃)にて60分間加熱させ、導電性接着剤が焼結した塗膜を得た。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示される結果から明らかな通り、金属微粒子の平均粒子径が30nm〜300nmの範囲内であり、保護層中のアミンが、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は上記一般式(1)で表されるアルコキシアミンを含み、さらに、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は一般式(1)で表されるアルコキシアミンと、これらとは異なるアミンとの比率が、100:0〜10:90の範囲内にある実施例1〜4の導電性接着剤は、塗膜のせん断強度が高く、塗膜の割れや欠けも無かった。一方、保護層に含まれるアミンにおいて、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、n−ブチルアミン、またはn−プロピルアミンの割合が100%である比較例1−3の導電性接着剤は、塗膜のせん断力が低かった。また、金属微粒子の平均粒子径が20nmである比較例4の導電性接着剤についても、塗膜のせん断力が低かった。
【0097】
(実施例5〜11)
上記で得られた各銀微粒子1A,1B,2A,2B,2Cを表2に示す割合で混合し、総質量の10%相当のテルピネオールを添加し、各分散液を得た。この液をクラボウ社製のマゼルスターを用い、2回撹拌優先モードにて混合し、各導電性接着剤を調製した。なお、混合後の平均粒子径は上述した方法により求めた。
【0098】
次に、銅板上に無電解銀めっきを0.5μm施した基材を準備し、その上に各導電性接着剤を塗膜厚みが50μmとなるように、均一に塗膜を行い、その上に裏面(導電性接着剤と接する面)に金めっきもしくは金スパッタ処理が施されたシリコンウエハ(サイズ2mm×2mm)を上に乗せた。これを乾燥器(循環式)により、所定温度(150℃)にて60分間加熱させ、各導電性接着剤が焼結した塗膜を得た。
【0099】
【表2】
【0100】
表2に示される結果から明らかな通り、実施例5〜11の導電性接着剤は、平均粒子径または保護層中に含まれるアミンが異なる金属微粒子を混合したものであるが、金属微粒子の平均粒子径が30nm〜300nmの範囲内であり、保護層中のアミンが、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は上記一般式(1)で表されるアルコキシアミンを含み、さらに、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は一般式(1)で表されるアルコキシアミンと、これらとは異なるアミンとの比率が、100:0〜10:90の範囲内にあることから、焼結温度が150℃において、塗膜のせん断強度が高く、塗膜の割れや欠けもなかった。
【0101】
(実施例12,比較例5,6)
上記で得られた各銀微粒子1A,1B,2A,2B,2C,3Aを表3に示す割合で混合し、総質量の10%相当のテルピネオールを添加し、各分散液を得た。この液をクラボウ社製のマゼルスターを用い、2回撹拌優先モードにて混合し、各導電性接着剤を調製した。なお、混合後の平均粒子径は上述した方法により求めた。
【0102】
次に、銅板上に無電解銀めっきを0.5μm施した基材を準備し、その上に各導電性接着剤を塗膜厚みが50μmとなるように、均一に塗膜を行い、その上に裏面(導電性接着剤と接する面)に金めっきもしくは金スパッタ処理が施されたシリコンウエハ(サイズ2mm×2mm)を上に乗せた。これを乾燥器(循環式)により、所定温度(150℃)にて60分間加熱させ、各導電性接着剤が焼結した塗膜を得た。
【0103】
【表3】
【0104】
表3に示される結果から明らかな通り、実施例12の導電性接着剤は、平均粒子径及び保護層中に含まれるアミンが異なる金属微粒子を3種類混合したものであるが、金属微粒子の平均粒子径が30nm〜300nmの範囲内であり、保護層中のアミンが、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は上記一般式(1)で表されるアルコキシアミンを含み、さらに、炭素数5〜7のモノアルキルアミン及び/又は一般式(1)で表されるアルコキシアミンと、これらとは異なるアミンとの比率が、100:0〜10:90の範囲内にあることから、焼結温度が150℃において、塗膜のせん断強度が高く、塗膜の割れや欠けもなかった。一方、平均粒子径が30μmを下回る比較例5,6では、塗膜のせん断強度が低かった。