(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA〜Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。
【0014】
〔フィルムロールの梱包体の構成〕
図1は、本実施形態のフィルムロールの梱包体(以下、単に梱包体とも称する)1の概略の構成を示す斜視図である。梱包体1は、フィルムロール2と、架台3と、被覆部材4とを備えている。なお、
図1では、被覆部材4を明確にする目的で、被覆部材4にハッチングを付している(他の図面でも必要に応じてハッチングを付して示す)。
【0015】
図2は、被覆部材4で包装する前のフィルムロール2および架台3を示す斜視図であり、
図3は、フィルムロール2の外観を示す斜視図である。フィルムロール2は、熱可塑性樹脂からなる長尺状の光学フィルム10を巻芯2aの周りに巻回した巻回体である。熱可塑性樹脂としては、例えばセルロースエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂などを用いることができる。
【0016】
長尺状の光学フィルム10は、例えば溶液流延製膜法で製膜される。溶液流延製膜法では、樹脂および溶媒を含むドープを流延ダイから、走行する支持体上に流延し、支持体上で乾燥させて流延膜を形成する。そして、流延膜を剥離して延伸、乾燥させてフィルムとし、フィルムの幅手方向の両端部を切断(トリミング)した後に、残ったフィルムの幅手方向の両端部にエンボス加工を行う。エンボス加工では、周面に凹凸が刻印されたエンボスロールをフィルムの両端部に押し付けることにより、フィルムに凹凸が転写されてエンボス部が形成される。このようにして製膜されたフィルムは、最終的に巻芯に巻き取ってロール状の光学フィルム(フィルムロール)となる。なお、光学フィルム10の製膜方法は上記の溶液流延製膜法に限定されるわけではなく、他の製膜方法(例えば溶融流延製膜法)であってもよい。
【0017】
図4および
図5は、フィルムロール2の断面図であって、
図4は、光学フィルム10がストレート巻きによって巻き取られたフィルムロール2の断面図を示し、
図5は、光学フィルム10がオシレート巻きによって巻き取られたフィルムロール2の断面図を示している。なお、ストレート巻きとは、光学フィルム10を幅手方向に揺動させずに、幅手端部を揃えて巻き取る方法であり、オシレート巻きとは、光学フィルム10を幅手方向に揺動させながら巻き取る方法である。
【0018】
これらの図に示すように、光学フィルム10の幅手方向(巻芯に沿う方向)の両端には、上記したエンボス加工により、凹凸状のエンボス部11が形成されている。これにより、フィルムロール2における上下の光学フィルム10の貼り付き(ブロッキング)および光学フィルム10の巻芯方向のズレを抑えることが可能となる。エンボス部11の幅Wは、光学フィルム10の幅W0の例えば5%を考えることができるが、この値に限定されるわけではない。なお、上記の幅WおよびW0は、いずれも、フィルムの幅手方向に沿った長さ(mm)である。なお、エンボス部11は、最低限、光学フィルム10の幅手方向のどこか1か所に形成されていればよく、その個数も特に限定されないが(2個以上であってもよいが)、通常は、幅手方向の両端の2か所に形成される。
【0019】
図6は、架台3の分解斜視図である。架台3は、フィルムロール2を、巻芯2aを介して、該フィルムロール2の最表層2bが他と非接触となるように、内部に保持することができるように構成されている。具体的には、架台3は、枠体31と、2つの支持梁32とを有している。なお、以下での説明の便宜上、巻芯2aが水平となるようにフィルムロール2を架台3に載置(収容)したときにその巻芯2aを支える側を「下」、「下方」または「下側」とし、その反対側を「上」、「上方」または「上側」とする。したがって、上下方向は、鉛直方向と同じである。また、鉛直方向に垂直な方向を、側方とも呼ぶ。
【0020】
枠体31は、全体として略直方体形状のフレームであり(
図2参照)、フィルムロール2を外部にはみ出すことなく収容できる大きさで形成されている。この枠体31は、上枠部31aと、下枠部31bと、4つの支柱31cとを有している。上枠部31aおよび下枠部31bは、長方形の長辺および短辺に沿った枠状のフレームである。上枠部31aは、保持するフィルムロール2よりも上方に位置し、下枠部31bは、保持するフィルムロール2よりも下方に位置する。上枠部31aの角部(長方形の頂点)と、下枠部31bの角部(長方形の頂点)とは、支柱31cを介してそれぞれ連結されている。つまり、各支柱31cは、上枠部31aおよび下枠部31bを鉛直方向に連結している。このようにして、略直方体形状のフレーム(枠体31)が構成されている。
【0021】
2つの支持梁32のうちの一方は、上枠部31aおよび下枠部31bの短辺同士を連結する2本の支柱31cの間で水平に(支柱31cに対して垂直に)位置するように、上記2本の支柱31cと連結されている。また、2つの支持梁32のうちの他方も同様に、上枠部31aおよび下枠部31bの残りの短辺同士を連結する2本の支柱31cの間で水平に(支柱31cに対して垂直に)位置するように、上記残りの2本の支柱31cと連結されている。
【0022】
2つの支持梁32には、上枠部31a側が開口するように半円筒状に切り込まれた凹部32aが形成されている。
図2に示すように、フィルムロール2の巻芯2aの両端部が各支持梁32の凹部32aに入り込むことにより、巻芯2aが支持梁32に固定され、フィルムロール2が安定して支持されることになる。なお、回動可能な蓋部材を支持梁32に設け、巻芯2aが凹部32aに入り込んだ後に、凹部32aに蓋部材を被せて、巻芯2aの凹部32aからの脱落を防止するようにしてもよい。
【0023】
なお、架台3は、上記の構成や形状に限定されるわけではない。例えば、架台3は、枠体31および支持梁32の一部を分離して(取り外して)折りたたみ可能に構成されてもよい。また、架台3は、上記の直方体形状の一部に丸みを持たせた形状であってもよい。
【0024】
図1に示した被覆部材4は、架台3を覆うことによって、架台3の内部のフィルムロール2を最表層2bと非接触で覆う部材である。架台3は、略直方体形状のフレームであるため、架台3を覆う被覆部材4は、直方体の外表面に沿う形状となっている。すなわち、被覆部材4は、フィルムロール2を介して互いに対向する上面部4aおよび下面部4bと、4つの側面部4cとを含んでいる。上面部4aは、枠体31の上枠部31a(
図6参照)を覆う面であり、側辺が上枠部31aに沿って位置することで略長方形状で形成されている。下面部4bは、枠体31の下枠部31b(
図6参照)を覆う面であり、側辺が下枠部31bに沿って位置することで略長方形状で形成されている。4つの側面部4cは、略長方形状の上面部4aおよび下面部4bの外縁(各側辺)同士を連結しており、それぞれ四角形状で形成されている。
【0025】
本実施形態では、被覆部材4は、断熱性を有する梱包材41と、透明シート42とを有して構成されている。より具体的には、
図1に示すように、被覆部材4において、上面部4aと、側面部4cの高さ方向(上面部4aと下面部4bとの対向方向、鉛直方向)の一部とが、断熱性を有する梱包材41で構成されており、下面部4bと、側面部4cの高さ方向の残りの部分とが、透明シート42で構成されている。なお、例えば被覆部材4の上面部4aと、側面部4cの全体(高さ方向の全域)とが、梱包材41で構成され、下面部4bのみが透明シート42で構成されていてもよい。
【0026】
ここで、4つの側面部4c全体の面積に対して、梱包材41が占める面積の割合を、被覆率Pとする。この被覆率Pは、
図7に示すように、被覆部材4の側面部4cにおける上面部4aおよび下面部4bの対向方向の長さ、つまり、被覆部材4で覆われる架台3の鉛直方向の長さをH(mm)とし、側面部4cのうち梱包材41で構成される部分の対向方向の長さ、つまり、架台3の鉛直方向の少なくとも一部を包装する梱包材41の上記鉛直方向の長さをX(mm)として、以下の式で定義される。この被覆率Pは、0%よりも大きく100%以下の範囲で適宜設定されればよい。
P(%)=(X/H)×100
【0027】
なお、上面部4aおよび側面部4cの一部を梱包材41で構成した場合、梱包材41としての上面部4aおよび側面部4cの一部は、連結されていてもよいし、分離されていてもよい。同様に、下面部4bおよび側面部4cの一部を梱包材41で構成した場合、梱包材41としての下面部4bおよび側面部4cの一部は、連結されていてもよいし、分離されていてもよい。
【0028】
断熱性を有する梱包材41としては、例えば、不透明で光や熱を吸収または遮断する部材を用いることができる。例えば、アルミ箔などの金属シート、段ボールのような厚紙や薄い包装紙を含む紙製シート、透明樹脂に着色顔料(例えばカーボンブラック)を混ぜた樹脂シート、布、木材などを梱包材41として用いることができる。
【0029】
また、梱包材41として、例えば
図8に示す気泡緩衝シート41aを用いることもできる。気泡緩衝シート41aとは、2枚のポリエチレン製のシート41a
1・41a
2を、これらの間に無数の気泡(空気層)41a
3が形成されるように貼り合わせ、気泡41a
3の存在によって緩衝性を持たせたシートである。
【0030】
さらに、上述した材料を適宜組み合わせて梱包材41を構成することもできる。例えば、気泡緩衝シートと金属シートとを貼り合わせて梱包材41を構成することができ、樹脂シートと金属シートとを貼り合わせて梱包材41を構成することもできる。
【0031】
透明シート42は、被覆部材4において、梱包材41以外の部分を構成している。透明シート42は、透明な樹脂シートであれば特に限定されない。例えば、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、低密度ポリエチレン(PE、LDPE)などを原料として製造される透明な樹脂シートを、透明シート42として用いることができる。
【0032】
〔梱包体の製造方法〕
次に、梱包体1の製造方法について説明する。例えば、梱包材41として金属シートを用い、透明シート42としてポリエチレン製の透明な樹脂シートを用いた場合、以下のようにして梱包材41および透明シート42で架台3を覆うことにより、梱包体1を得ることができる。なお、以下の図面では、便宜的に、架台3の支持梁32aおよびフィルムロール2の図示を省略するが、架台3には、支持梁32aにてフィルムロール2が支持されているものとする(以降の図面でも同様とする)。
【0033】
図9は、本実施形態の梱包体1の製造方法の一例を示す説明図である。まず、架台3の下枠部31bを透明シート42で覆うとともに、接着剤またはテープでこれらを固定する。続いて、4つの支柱31cの下半分(高さ方向の中心よりも下枠部31b側)を順に囲むように透明シート42を巻き付けて、接着剤等で固定する。
【0034】
次に、架台3の上枠部31aを梱包材41で覆うとともに、これらを接着剤等で固定する。そして、4つの支柱31cの上半分(高さ方向の中心よりも上枠部31a側)を順に囲むように梱包材41を巻き付けて、接着剤等で固定する(P=50%)。これにより、梱包体1が完成する。なお、梱包材41の長さXおよび透明シート42の長さ(W−X)は、設定される被覆率Pが実現されるように、適宜調整すればよい。
【0035】
なお、最初に透明シート42で架台3の全体を覆うか、上枠部31aと4つの支柱31c全体とを覆い、次に、梱包材41(例えば金属シート)で上枠部31aと4つの支柱31cの高さ方向の一部とを覆うようにしてもよい。この場合、梱包材41の内側に透明シート42が位置するが、被覆部材4において、梱包材41以外の部分が透明シート42であることに変わりはない。
【0036】
図10は、梱包体1の他の製造方法を示す説明図である。梱包体1は、以下のようにして製造されてもよい。すなわち、架台3の下枠部31bを覆うように透明シート42を接着剤等で貼り付けるとともに、透明シート42の四隅に切り欠き42Pを形成する。そして、下枠部31bからはみ出た透明シート42を下枠部31bに沿って折り曲げて支柱31cに接着剤等で固定する。次に、架台3の上枠部31aを覆うように梱包材41を接着剤等で貼り付けるとともに、梱包材41の四隅に切り欠き41Pを形成する。そして、上枠部31aからはみ出た梱包材41を上枠部31aに沿って折り曲げて支柱31cに接着剤等で固定する。これにより、梱包体1が完成する。
【0037】
図11は、梱包体1のさらに他の製造方法を示す説明図である。例えば、梱包材41として、段ボールなどの厚紙を予め蓋状に折り曲げた蓋部41bを用いてもよい。この場合、架台3の下半分(下枠部31bを含む)を覆うように透明シート42を巻き付けてこれらを接着剤等で固定した後、上枠部31a側から蓋部41bを架台3に被せることにより、梱包体1を得ることができる。
【0038】
以上のように、本実施形態では、架台3を覆うことによってフィルムロール2を覆う被覆部材4の一部が、断熱性を有する梱包材41で構成されている。これにより、梱包体1の外部の熱のフィルムロール2への伝達が上記梱包材41によって妨げられる。しかも、フィルムロール2の最表層2bと梱包材41とは非接触であり、これらの間には空隙層が存在する。空気は熱伝導率が極めて低いため、外部の熱のフィルムロール2への伝達を妨げる効果がさらに増大する。また、断熱性を有する梱包材41で構成されているのは被覆部材4の一部であるため、被覆部材4の内部に熱が蓄積されたとしても、その熱を、被覆部材4の残りの部分(梱包材41以外の透明シート42)を介して外部に拡散(放熱)させることもできる。
【0039】
したがって、以上より、梱包体1の輸送後、倉庫への搬入作業時に、梱包体1が屋外に曝露されても、梱包体1の内部のフィルムロール2に急激な温度上昇が生じるのを抑えることができる。これにより、フィルムロール2の熱膨張を抑え、この熱膨張に起因してチェーン状の故障が発生するのを低減することができる。
【0040】
また、梱包体1において、上述の定義で規定される梱包材41の被覆率Pが大きくなると、側面部4cにおいて、梱包材41以外の部分(透明シート42)の面積が小さくなるため、被覆部材4の内部に閉じ込められた熱を、透明シート42を介して放出するときの放熱性が低下する。放熱性が低下すると、被覆部材4の内部に熱がこもりやすくなって、フィルムロール2に熱膨張を抑える効果が小さくなり、チェーン状の故障を低減する効果が小さくなる。このような観点から、被覆率Pは、50%以下であることが望ましい。
【0041】
一方、梱包材41の被覆率Pが10%未満であると、側面部4cにおいて、断熱性を有する梱包材41によって外部の熱を遮断する効果が小さくなる。
【0042】
以上より、梱包材41による断熱効果と、透明シート42による放熱効果とをバランスよく得る観点から、被覆率Pは10%以上50%以下であることが望ましいと言える。
【0043】
また、本実施形態では、
図4および
図5で示したように、フィルムロール2は、1種の光学フィルム10のみを巻回して積層した巻回体である。この構成では、光学フィルム10に他のフィルム(例えば次工程で剥離される保護フィルム)を積層して巻回体とする構成に比べて、保護フィルムを用いない分、コスト削減を図ることができる。また、例えば偏光板の加工工程において、フィルムロール2から光学フィルム10を繰り出すときに、保護フィルムを剥離する工程が不要であるため、工数の削減および製造工程の簡略化を図ることもできる。
【0044】
また、本実施形態では、被覆部材4において、断熱性を有する梱包材41以外の部分は、透明シート42で構成されている。これにより、被覆部材4の内部に熱が蓄積されたとしても、その熱を、透明シート42を介して外部に拡散することができる。したがって、被覆部材4の内部に熱がこもるのを低減して、フィルムロール2の温度上昇を抑え、フィルムロール2の熱膨張に起因するチェーン状の故障を効率よく抑えることが可能となる。また、透明シート42により、外部の雨風や塵埃から、フィルムロール2を保護することもできる。
【0045】
図12は、本実施形態の梱包体1の他の構成を示す斜視図である。同図のように、梱包体1において、断熱性を有する梱包材41と、透明シート42との位置関係は、
図1の構成とは逆であってもよい。すなわち、被覆部材4の下面部4bと、側面部4cにおける下面部4b側の一部とが、断熱性を有する梱包材41で構成されていてもよい。このとき、被覆部材4の上面部4aと、側面部4cの残りの部分(上面部4a側)とは、透明シート42で構成される。
【0046】
図1および
図12のように、被覆部材4の上面部4aまたは下面部4bと、側面部4cの高さ方向(上面部4aおよび下面部4bの対向方向)の少なくとも一部とが、断熱性を有する梱包材41で構成されていることにより、上面部4aのみ、または下面部4bのみを梱包材41で被覆する構成に比べて、梱包材41で覆われる面積が増大し、遮熱効果がさらに高くなる。したがって、フィルムロール2において、熱膨張に起因するチェーン状の故障を低減する効果を確実に得ることができる。
【0047】
なお、
図1および
図12より、被覆部材4の上面部4aは、フィルムロール2の鉛直上方を覆い、下面部4bは、フィルムロール2の鉛直下方を覆い、側面部4cは、フィルムロール2を側方から覆うことは明らかである。したがって、架台3を包装することによって、上面部4aまたは下面部4bと、側面部4cの鉛直方向の少なくとも一部とを構成する梱包材41は、以下のように表現することができる。つまり、断熱性を有する梱包材41は、フィルムロール2の鉛直上方または鉛直下方を覆うように架台3を包装するとともに、架台3の鉛直方向の少なくとも一部を、フィルムロール2を側方から覆うように包装する。
【0048】
〔包装材について〕
図13は、梱包体1のさらに他の構成を、架台3および被覆部材4の図示を省略して示す斜視図である。梱包体1は、包装材5をさらに備えていてもよい。包装材5は、フィルムロール2の巻芯方向(巻芯2aが延びる方向)の少なくとも一部において、フィルムロール2の最表層2bを覆うシートであり、例えば、
図8で示した気泡緩衝シート41aや、不透明な金属シートまたは樹脂シートなど、梱包材41を構成するシートと同様のシートで構成することができる。
【0049】
フィルムロール2の最表層2bを包装材5が覆うことにより、外部からの熱をフィルムロール2の直前で遮断または吸収し、フィルムロール2への熱の伝達を妨げることができる。したがって、包装材5を梱包材41と併用することにより、外部の熱によるフィルムロール2の急激な温度上昇を抑える効果をより高めることができ、フィルムロール2において、熱膨張に起因するチェーン状の故障を低減する効果をより高めることができる。
【0050】
ここで、包装材5の厚みは、被覆部材4の梱包材41の厚みよりも厚いことが望ましい。この場合、外部の熱が梱包材41を介して包装材5に到達したとしても、包装材5の厚みによって上記熱を確実に遮断できる。したがって、上記チェーン状の故障のみならず、フィルムロール2の熱による弾性変形も抑えることが可能となる。
【0051】
〔架台の他の構成について〕
上述した架台3において、下枠部31bは、金属板と一体化されて下面部を構成していてもよい。この場合、被覆部材4は、架台3の上記下面部を覆う必要が無く、上述した上面部4aおよび4つの側面部4cのみで構成することができる。このことから、被覆部材4は、架台3の少なくとも一部を覆うことによって、フィルムロール2を最表層2bと非接触で覆う構成であればよいと言える。
【0052】
〔実施例〕
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。
【0053】
<梱包体1の作製>
まず、長尺状の光学フィルムとしてのセルローストリアセテートフィルムを(TACフィルム、幅1300mm、膜厚40μm)を巻芯に巻き取ったフィルムロールを用意した。すなわち、上記フィルムロールは、TACフィルムという1種の光学フィルムのみの巻回体である(巻長は4000m)。このフィルムロールを、
図2と同様の構造を有する架台に、該ロールの最表層が他の部材(例えば架台)と非接触となるように収容した(フィルムロールの巻芯を架台で支持した)。なお、ここでは、フィルムロールの最表層を包装材(断熱シート)で覆わずに、フィルムロールを架台に収容した。
【0054】
次に、梱包材として、金属シート(日本マタイ株式会社製、厚み30μm)を用い、架台内部に収容したフィルムロールの鉛直上方を覆うように、架台を梱包材で包装し、梱包材をテープで固定した。また、透明シートとして、低密度ポリエチレンからなる透明シート(厚み50μm)を用い、フィルムロールの鉛直下方を覆い、かつ、フィルムロールを側方から囲むように、上記透明シートで架台を包装してテープで固定し、梱包体1を作製した。なお、梱包材および透明シートによる包装の順序は逆でもよい。梱包体1では、梱包材がフィルムロールの側方を覆っていないため(フィルムの側方は透明シートで覆われているため)、上述の式で定義される梱包材の被覆率Pは、0%である。
【0055】
<梱包体2の作製>
フィルムロールの鉛直上方に加えて、フィルムロールを側方から覆うように、梱包材で架台を包装した以外は、梱包体1の作製と同様にして梱包体2を作製した。このとき、側面部の梱包材による被覆率Pが50%となるように、架台の上半分を梱包材で包装した。なお、架台において上記梱包材で包装されていない部分(架台の下半分)は、梱包体1の作製で用いた透明シートと同じシートで包装した。
【0056】
<梱包体3の作製>
フィルムロールの鉛直上方に加えて、フィルムロールを側方から覆うように、梱包材で架台を包装した以外は、梱包体1の作製と同様にして梱包体3を作製した。このとき、側面部の梱包材による被覆率Pが100%となるように、架台の鉛直方向全域を梱包材で包装した。なお、架台において上記梱包材で包装されていない部分(フィルムロールの鉛直下方)は、梱包体1の作製で用いた透明シートと同じシートで包装した。
【0057】
<梱包体4の作製>
架台内部に収容したフィルムロールの鉛直下方を覆うように、梱包材で架台を包装し、フィルムロールの鉛直上方および側方を覆うように、透明シートで架台を包装した以外は、梱包体1の作製と同様にして梱包体4を作製した。梱包体4では、梱包材がフィルムロールの側方を覆っていないため(フィルムの側方は透明シートで覆われているため)、上述の式で定義される梱包材の被覆率Pは、0%である。
【0058】
<梱包体5の作製>
フィルムロールの鉛直下方に加えて、フィルムロールを側方から覆うように、梱包材で架台を包装した以外は、梱包体4の作製と同様にして梱包体5を作製した。このとき、側面部の梱包材による被覆率Pが50%となるように、架台の下半分を梱包材で包装した。なお、架台において上記梱包材で包装されていない部分(架台の上半分)は、梱包体4の作製で用いた透明シートと同じシートで包装した。
【0059】
<梱包体6の作製>
フィルムロールの鉛直下方に加えて、フィルムロールを側方から覆うように、梱包材で架台を包装した以外は、梱包体4の作製と同様にして梱包体6を作製した。このとき、側面部の梱包材による被覆率Pが100%となるように、架台の鉛直方向全域を梱包材で包装した。なお、架台において上記梱包材で包装されていない部分(フィルムロールの鉛直上方)は、梱包体4の作製で用いた透明シートと同じシートで包装した。
【0060】
<梱包体7の作製>
梱包体1の作製で用いたフィルムロールを架台に収容した後、上記架台を透明シートのみで包装し、梱包体7を作製した。上記透明シートとしては、梱包体1の作製で用いた透明シートと同じシートを用いた。
【0061】
<梱包体8の作製>
梱包体1の作製で用いたフィルムロールの最表層に包装材を巻き付けて、上記フィルムロールを架台に収容した。そして、この架台を透明シートのみで包装して梱包体8を作製した。なお、上記包装材としては、
図8で示した構造の気泡緩衝シートに金属シートを貼り合わせた断熱シート(川上産業株式会社製、厚み3.5mm)を用いた。また、上記透明シートとしては、梱包体1の作製で用いた透明シートと同じシートを用いた。
【0062】
<評価>
(ロール温度変化1)
作製した梱包体1〜8を、25℃の室内で保管した後、直射日光の当たる30℃の屋外に搬出し、60分間放置した。そして、屋外放置後のロールの最表面の温度を、温度センサ(株式会社テストー製、型番05609056)で測定した。ここで、ロール温度の変化量をT1(℃)とすると、T1=(60分放置後のフィルム温度)−(室内時のフィルム温度(25℃))と定義する。
《評価基準》
◎:T1≦7℃
○:7℃<T1≦10℃
△:10℃<T1≦15℃
×:15℃<T1
【0063】
(チェーン状変形)
作製した梱包体1〜8を屋外で60分間放置した後に、フィルムロールの最表層にチェーン状の変形があるか否かを目視で確認した。そして、以下の評価基準に基づいて、チェーン状変形について評価した。
《評価基準》
◎:変形は確認されなかった。
○:若干の変形が確認されたが、弾性変形のため、実用上問題はない。
△:1〜2本のチェーン状変形が確認された。
×:3本以上のチェーン状変形が確認された。
【0064】
表1に、梱包体1〜8についての評価の結果を示す。なお、表1では、梱包体1〜8と実施例または比較例との対応関係についても併せて示す。また、表中の梱包材の包装位置において、「上」、「下」、「横」は、それぞれ、フィルムロールの鉛直上方、鉛直下方、側方を覆う位置であることを示し、以下の表でも同様の表記を採用する。
なお、後述する梱包体17に対応する実施例12以外の実施例(実施例1〜11、13、14)は、本発明の単なる参考例であり、本発明の範囲には属さないものである。
【0066】
表1より、実施例1〜4では、フィルムロールの最表層において、チェーン状の変形が確認されていない。これは、実施例1〜4の梱包体では、フィルムロールの鉛直上方または鉛直下方とフィルムロールの側方を覆うように、断熱性を有する梱包材で架台が覆われており、また、梱包材とフィルムロールとの間に熱伝達を抑える空隙層が存在していることから、これらの相乗効果で断熱性が高くなり、フィルムロールの急激な温度上昇が抑えられた結果、熱膨張によるチェーン状の変形が抑えられたためと考えられる。
【0067】
これに対して、比較例1および2では、チェーン状の変形が確認されている。これは、フィルムロールの鉛直上方のみ、または鉛直下方のみを覆うように、断熱性を有する梱包材で架台を覆うだけでは、断熱効果が十分発揮されないため、フィルムロールの急激な温度上昇を抑えることが困難となり、熱膨張によってチェーン状の変形が生じたものと考えられる。
【0068】
また、比較例3では、断熱性を有する梱包材で架台を覆っていないことから、フィルムロールの急激な温度上昇が生じ、熱膨張によってチェーン状の変形が生じたものと考えられる。比較例4では、フィルムロールの最表層を、断熱性を有する包装材で覆っているが、結果的に、熱膨張によってチェーン状の変形が発生している。このことから、上記包装材でロールの最表層を覆うだけでは、ロール最表層と上記包装材との間に熱伝達を抑える空間を十分に確保できていないため、フィルムロールの急激な温度上昇を抑える効果が小さいと言える。
【0069】
<梱包体9の作製>
梱包体1の作製と同様にして、梱包体9を作製した。すなわち、梱包体9では、被覆率P=0%である。
【0070】
<梱包体10〜15の作製>
フィルムロールの鉛直上方に加えて、フィルムロールを側方から覆うように、梱包材で架台を包装した以外は、梱包体1の作製と同様にして梱包体10〜15を作製した。このとき、側面部の梱包材による被覆率Pが表2に示す値となるように、架台の鉛直方向の少なくとも一部を梱包材で包装して、梱包体10〜15を作製した。なお、架台において上記梱包材で包装されていない部分は、梱包体1の作製で用いた透明シートと同じシートで包装した。
【0071】
<評価>
(ロール温度変化1)
作製した梱包体9〜15を、25℃の室内で保管した後、直射日光の当たる30℃の屋外に搬出し、60分間放置した。そして、屋外放置後のロールの最表面の温度を、上記温度センサで測定した。ここで、ロール温度の変化量をT1(℃)とすると、T1=(60分放置後のフィルム温度)−(室内時のフィルム温度(25℃))と定義する。
《評価基準》
◎:T1≦7℃
○:7℃<T1≦10℃
△:10℃<T1≦15℃
【0072】
(ロール温度変化2)
上記のように、梱包体9〜15を屋外で60分間放置した後、25℃の室内に戻して30分間放置した。そして、室内放置後のロールの最表面の温度を、上記温度センサで測定した。ここで、ロール温度の変化量T2(℃)を、T2=(室内に戻して30分後のフィルム温度)−(室内時のフィルム温度(25℃))と定義する。
《評価基準》
◎:T2≦5℃
○:5℃<T2≦7℃
△:7℃<T2
【0073】
(チェーン状変形)
梱包体9〜15を、25℃の室内に戻して30分間放置した後に、フィルムロールの最表層にチェーン状の変形があるか否かを目視で確認した。そして、以下の評価基準に基づいて、チェーン状変形について評価した。
《評価基準》
◎:変形は確認されなかった。
○:若干の変形が確認されたが、弾性変形のため、実用上問題はない。
△:1〜2本のチェーン状変形が確認された。
【0074】
表2に、梱包体9〜15についての評価の結果を示す。なお、表2では、梱包体9〜15と実施例または比較例との対応関係についても併せて示す。
【0076】
表2に示すように、梱包体10〜15については、屋外に曝露した直後において、ロールの温度上昇が抑えられており、その後、室内に戻して一定時間放置しても、チェーン状の変形は見られなかった。ただし、被覆率が50%よりも大きい梱包体13〜15では、室内放置後にロールの弾性変形が確認された。これは、被覆率が大きい梱包体では、断熱性を有する梱包材で包装される面積が大きく、上記梱包材以外の透明フィルムで包装される面積が小さくなることから、梱包体内部の熱の外部への拡散(放熱)の効率が低下し、室内放置後も梱包体内部に熱がこもっているために生じたものと考えられる。ただし、弾性変形は、チェーン状の変形のような塑性変形とは異なり、ロールからフィルムを繰り出すと無くなるため(応力がなくなるため)、フィルムの使用時に問題となることはない。
【0077】
以上より、被覆率Pは、特に、梱包体を屋外に曝露した後、室内に戻したときのロールの弾性変形に影響し、被覆率Pが10%以上50%以下であれば、梱包材による断熱効果と、透明シートによる放熱効果とをバランスよく得て、上記弾性変形を抑える効果が高いと言える。
【0078】
なお、被覆率Pが0%の梱包体9では、梱包体9を屋外に60分間曝露した時点でロール最表層にチェーン状の変形が生じており、その後、梱包体9を室内に戻しても、そのチェーン状の変形が残っていることが確認された。
【0079】
<梱包体16の作製>
梱包体1の作製で用いたフィルムロールの最表層を包装材(断熱シート)で覆い、この状態でフィルムロールを
図2の架台に収容した。上記包装材としては、梱包体1の作製で用いた梱包材と同一材料の金属シート(日本マタイ株式会社製、厚み30μm)を用いた。そして、上記架台を、梱包体11の作製と同様にして(被覆率P=30%となるように)、梱包材で包装し、梱包体16を作製した。したがって、梱包体16では、梱包材の厚み=包装材の厚み=30μm、である。
【0080】
<梱包体17〜19の作製>
梱包材の厚みおよび包装材の厚みを表3のように変更した以外は、梱包体16の作製と同様にして、梱包体17・19を作製した。また、上述した梱包体11の作製と同様にして、フィルムロールの最表層を包装材で覆っていない梱包体18を作製した。
【0081】
<評価>
(ロール温度変化1)
作製した梱包体16〜19を、25℃の室内で保管した後、直射日光の当たる30℃の屋外に搬出し、60分間放置した。そして、屋外放置後のロールの最表面の温度を、上記温度センサで測定した。ここで、ロール温度の変化量をT1(℃)とすると、T1=(60分放置後のフィルム温度)−(室内時のフィルム温度(25℃))と定義する。
《評価基準》
◎:T1≦7℃
○:7℃<T1≦10℃
△:10℃<T1≦15℃
【0082】
(ロール温度変化3)
上記梱包体16〜19を、30℃の屋外にさらに30分間放置し(合計90分間放置)、その後のロールの最表面の温度を、上記温度センサで測定した。ここで、ロール温度の変化量をT3(℃)とすると、T3=(90分放置後のフィルム温度)−(室内時のフィルム温度(25℃))と定義する。
《評価基準》
◎:T3≦10℃
○:10℃<T3
【0083】
(ロール温度変化4)
上記梱包体16〜19を、30℃の屋外にさらに30分間放置し(合計120分間放置)、その後のロールの最表面の温度を、上記温度センサで測定した。ここで、ロール温度の変化量をT4(℃)とすると、T4=(120分放置後のフィルム温度)−(室内時のフィルム温度(25℃))と定義する。
《評価基準》
◎:T4≦10℃
○:10℃<T4≦15℃
△:15℃<T4
【0084】
(チェーン状変形)
作製した梱包体16〜19を屋外で合計120分間放置した後に、フィルムロールの最表層にチェーン状の変形があるか否かを目視で確認した。そして、以下の評価基準に基づいて、チェーン状変形について評価した。
《評価基準》
◎ :変形は確認されなかった。
○○:一部の範囲で若干の変形が確認されたが、弾性変形のため、実用上問題はない。
○ :広い範囲で若干の変形が確認されたが、弾性変形のため、実用上問題はない。
【0085】
表3に、梱包体16〜19についての評価の結果を示す。なお、表3では、梱包体16〜19と実施例または比較例との対応関係についても併せて示す。
【0087】
表3に示すように、梱包体16〜19のいずれについても、屋外に曝露してから60分後、90分後、120分後において、ロールの温度上昇が抑えられており、チェーン状の変形は見られなかった。ただし、包装材の厚みが梱包材の厚み以下であると、屋外に曝露する時間が長くなるにつれて、ロールの温度上昇が起こり、弾性変形が生じやすくなっていることがわかる。これは、包装材の厚みが薄いと、包装材による断熱効果が低下して、ロールの温度上昇が生じやすくなるためと考えられる。したがって、ロールの弾性変形を抑える点では、包装材の厚みは梱包材の厚みよりも大きいことが望ましいと言える。
【0088】
なお、梱包材および包装材として、梱包体8の作製で用いた断熱シート(金属膜付き気泡緩衝シート)を用い、梱包材および包装材の厚みを梱包体16〜19と同様に変化させて、上記と同様に屋外曝露後のロールの温度および変形の有無を確認したところ、表3と同様の結果が得られた。
【0089】
なお、以上の実施例では、フィルムロールを構成する光学フィルムとしてTACフィルムを用いているが、TAC以外のセルロースエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂などを用いて光学フィルムを製膜し、その光学フィルムを巻回してフィルムロールを構成し、架台および梱包材と組み合わせて梱包体を構成した場合でも、上述した実施例と同様の傾向があることが確認された。
【0090】
〔補足〕
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0091】
以上で説明した本実施形態のフィルムロールの梱包体は、以下のように表現することができる。
【0092】
1.熱可塑性樹脂からなる長尺状の光学フィルムを巻芯の周りに巻回した巻回体であるフィルムロールと、
前記フィルムロールを、前記巻芯を介して、該ロールの最表層が他と非接触となるように、内部に保持することのできる架台と、
断熱性を有し、前記フィルムロールの鉛直上方または鉛直下方を覆うように前記架台を包装するとともに、前記架台の鉛直方向の少なくとも一部を、前記フィルムロールを側方から覆うように包装する梱包材とを備えていることを特徴とするフィルムロールの梱包体。
【0093】
2.前記架台の鉛直方向の長さをH(mm)とし、前記架台の鉛直方向の少なくとも一部を包装する前記梱包材の鉛直方向の長さをX(mm)としたとき、
以下の式で規定される被覆率Pが、10%以上50%以下であることを特徴とする前記1に記載のフィルムロールの梱包体;
P=(X/H)×100
である。
【0094】
3.断熱性を有し、前記フィルムロールの最表層の少なくとも一部を覆う包装材を備え、
前記包装材の厚みは、前記梱包材の厚みよりも大きいことを特徴とする前記1または2に記載のフィルムロールの梱包体。