特許第6962335号(P6962335)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962335
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】キャップシール
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/24 20060101AFI20211025BHJP
   B65D 41/62 20060101ALI20211025BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B65D51/24 200
   B65D41/62
   B65D25/20 P
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-556721(P2018-556721)
(86)(22)【出願日】2017年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2017044744
(87)【国際公開番号】WO2018110602
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2020年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-243729(P2016-243729)
(32)【優先日】2016年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠原 健志
(72)【発明者】
【氏名】中林 貴光
(72)【発明者】
【氏名】山岡 経之介
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−18003(JP,A)
【文献】 特開2009−202901(JP,A)
【文献】 特開2014−114066(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/056363(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0141384(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2991001(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
B65D 23/00ー25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開封部および当該開封部から延びる首部に取り付けられるキャップシールであって、
前記容器の側面を覆う筒部と、
前記筒部が有する2つの筒端の一方である第1端に接続されて当該第1端で前記筒部を塞ぐ頂面部であって、ICタグを含む頂面部と、を備え、
前記筒部は、前記容器の側面に沿って配置される金属部と、前記第1端から延びる1以上の絶縁部とを有し、前記金属部と前記絶縁部との接続によって当該筒部の周方向に沿った閉環を構成している
キャップシール。
【請求項2】
前記筒部の延びる方向において、前記絶縁部は、前記筒部の長さの3分の2以上の長さを有する
請求項1に記載のキャップシール。
【請求項3】
前記金属部は、前記筒部の径方向に沿って並ぶ2つの端部を含み、
前記1以上の絶縁部の少なくとも1つは、前記金属部の前記2つの端部間に挟まれた部分を有する
請求項1または2に記載のキャップシール。
【請求項4】
前記金属部は、前記筒部の周方向に沿って並ぶ2つの端部を含み、
前記1以上の絶縁部の少なくとも1つは、前記筒部の外側から見て、前記金属部の前記2つの端部間に挟まれるように位置する部分を有する
請求項1または2に記載のキャップシール。
【請求項5】
前記金属部の前記2つの端部は、単一の前記金属部における前記周方向の両端部であり、
前記2つの端部間に挟まれた部分を有する前記絶縁部は、絶縁性接着剤からなる接着性絶縁部であり、前記接着性絶縁部に前記金属部の前記両端部が接着されている
請求項3または4に記載のキャップシール。
【請求項6】
前記接着性絶縁部は、前記筒部の径方向に沿って並ぶ前記2つの端部間に挟まれた部分を有し、
前記接着性絶縁部における前記2つの端部間に挟まれた部分の静電容量は、3000pF以下である
請求項5に記載のキャップシール。
【請求項7】
前記筒部は、前記筒部の径方向に沿って並ぶ複数の層を含む多層構造を有し、
前記複数の層は、絶縁性を有した樹脂層と、前記樹脂層に対して前記径方向の外側に位置して前記金属部を構成する金属層とを含み、前記金属層は、前記樹脂層上において前記第1端から延びる隙間を隔てて対峙する2つの端部を含み、
前記樹脂層は、前記金属層の前記2つの端部を繋いで前記絶縁部を構成する間隙絶縁部を有する
請求項1に記載のキャップシール。
【請求項8】
前記樹脂層は、複数の前記間隙絶縁部を有する
請求項7に記載のキャップシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを備えるキャップシールに関する。
【背景技術】
【0002】
キャップシールは、瓶等の容器の開封部の周囲を覆う構造物である。開封部は、すなわち、容器端部の開口部と開口部を塞ぐ蓋や栓とから構成される。キャップシールは、例えば、加熱によって収縮するシュリンクフィルムから構成されている。キャップシールは、衝撃から開口部の付近を保護する機能や、容器内への外気の侵入を抑える機能や、容器が未開封であることを示す機能を有している。近年、容器およびその内容物からなる商品の管理や真贋判定のために、ICタグを備えたキャップシールが提案されている。こうしたキャップシールが付された商品に対しては、ICタグに記憶された情報の非接触通信による読み取りを通じて、商品の管理や真贋判定が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−123917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ICタグを備えるキャップシールは、例えば、開封部付近の容器側面を覆う筒部と、筒部の一端に接続されて蓋や栓の頂部を覆う頂面部とを有し、ICタグは頂面部に備えられている。筒部がシュリンクフィルムから構成されている場合、容器へのキャップシールの取り付けの際には、開封部の外径よりも大きい内径を有する筒状に形成された筒部に開封部が挿入された後、筒部が加熱されることによって収縮し、これによってキャップシールが容器に密着した形状に成形される。
【0005】
ここで、加熱によりキャップシールを容器に密着させる上記工程においては、容器内の内容物も少なからず加熱される。そのため、内容物が、ワイン等のように、熱によって品質の変化しやすい性質を有する場合には、金属のみからなる筒部を用い、加圧によってキャップシールを容器に密着させることが好ましい。しかしながら、筒部が金属製である場合、筒部に閉環状の導電路が形成されて筒部が1巻のコイルを構成しているように見做せるため、ICタグの近傍にコイルが位置する構成となる。結果として、このコイルに流れる誘導電流に起因した電磁界の変化が、ICタグの通信特性を低下させる要因となる。
【0006】
本発明は、ICタグの通信特性の低下を抑えることのできるキャップシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するキャップシールは、容器の開封部および当該開封部から延びる首部に取り付けられるキャップシールであって、前記容器の側面を覆う筒部と、前記筒部が有する2つの筒端の一方である第1端に接続されて当該第1端で前記筒部を塞ぐ頂面部であって、ICタグを含む頂面部と、を備え、前記筒部は、前記容器の側面に沿って配置される金属部と、前記第1端から延びる1以上の絶縁部とを有し、前記金属部と前記絶縁部との接続によって当該筒部の周方向に沿った閉環を構成している。
【0008】
上記構成によれば、筒部の周方向に沿った伝導が、絶縁部によって遮られるため、筒部の全体に閉環状の導電路が形成されている構成と比較して、筒部のインダクタンスを減少させることができる。したがって、ICタグと外部機器との非接触通信に際して、筒部が電磁界に与える影響が低減されるため、ICタグの通信距離等の通信特性の低下を抑えることができる。
【0009】
上記構成において、前記筒部の延びる方向において、前記絶縁部は、前記筒部の長さの3分の2以上の長さを有してもよい。
上記構成によれば、ICタグの通信特性の低下が好適に抑えられ、ICタグと外部機器との良好な通信が可能である。
【0010】
上記構成において、前記金属部は、前記筒部の径方向に沿って並ぶ2つの端部を含み、
前記1以上の絶縁部の少なくとも1つは、前記金属部の前記2つの端部間に挟まれた部分を有してもよい。
【0011】
上記構成によれば、筒部の周方向での伝導が絶縁部によって遮られる構造が好適に実現され、また、金属部の端部同士が重なることによって筒部の強度を高めることが可能となる。
【0012】
上記構成において、前記金属部は、前記筒部の周方向に沿って並ぶ2つの端部を含み、前記1以上の絶縁部の少なくとも1つは、前記筒部の外側から見て、前記金属部の前記2つの端部間に挟まれるように位置する部分を有してもよい。
【0013】
上記構成によれば、筒部の周方向での伝導が絶縁部によって遮られる構造が好適に実現される。
上記構成において、前記金属部の前記2つの端部は、単一の前記金属部における前記周方向の両端部であり、前記2つの端部間に挟まれた部分を有する前記絶縁部は、絶縁性接着剤からなる接着性絶縁部であり、前記接着性絶縁部に前記金属部の前記両端部が接着されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、筒部を筒形状に形成するための構成が絶縁部の形成のための構成を兼ねるため、簡易な構成によって絶縁部を有する筒部が実現される。
上記構成において、前記接着性絶縁部は、前記筒部の径方向に沿って並ぶ前記2つの端部間に挟まれた部分を有し、前記接着性絶縁部における前記2つの端部間に挟まれた部分の静電容量は、3000pF以下であってもよい。
【0015】
上記構成によれば、13.56MHzの通信周波数において、ICタグと外部機器との良好な通信が可能である。
上記構成において、前記筒部は、前記筒部の径方向に沿って並ぶ複数の層を含む多層構造を有し、前記複数の層は、絶縁性を有した樹脂層と、前記樹脂層に対して前記径方向の外側に位置して前記金属部を構成する金属層とを含み、前記金属層は、前記樹脂層上において前記第1端から延びる隙間を隔てて対峙する2つの端部を含み、前記樹脂層は、前記金属層の前記2つの端部を繋いで前記絶縁部を構成する間隙絶縁部を有してもよい。
【0016】
上記構成によれば、隙間の位置や大きさや形状等の設定によって、絶縁部の位置や大きさや形状の調整が可能である。したがって、絶縁部の位置や大きさや形状についての調整が容易であり、その自由度も高められる。
【0017】
上記構成において、前記樹脂層は、複数の前記間隙絶縁部を有してもよい。
上記構成によれば、間隙絶縁部が1つである場合と比較して、筒部の周方向に延びる導電路がより細かく分断される。その結果、筒部のインダクタンスをより減少させることができるため、ICタグの通信特性の低下をさらに抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、キャップシールにおいて、ICタグの通信特性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】キャップシールの第1実施形態について、キャップシールの斜視構造を、キャップシールの取り付け対象である容器とともに示す図。
図2】第1実施形態のキャップシールについて、絶縁部の付近の断面構造の一例を示す図。
図3】第1実施形態のキャップシールについて、絶縁部の付近の断面構造の一例を示す図。
図4】キャップシールの第2実施形態について、キャップシールの斜視構造を、キャップシールの取り付け対象である容器とともに示す図。
図5】第2実施形態のキャップシールについて、絶縁部の付近の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1図3を参照して、キャップシールの第1実施形態について説明する。なお、キャップシールは、カプセル(capsule)、シース(sheath)、あるいは、保護スリーブ(protective sleeve)等とも称される。
【0021】
図1は、容器に取り付けられたキャップシールを示す図である。図1が示すように、キャップシール10が取り付けられる容器30は、内容物の収容空間を区画する容器本体31と、容器本体31の開口部を塞ぐ封止部32とから構成される。容器本体31の開口部は、容器本体31の端部に開口しており、内容物の入出口として機能する。容器30は、例えば、内容物としてワインを収容したガラス瓶であり、この場合、封止部32はコルクからなる栓である。容器本体31の開口部と封止部32とから、内容物の取り出しに際して開けられる部分である開封部が構成される。
【0022】
キャップシール10は、容器本体31における開口部から延びる部分である首部の側面と封止部32の側面とを覆う筒状を有する筒部11と、筒部11の軸方向における両端の一方と接続されて封止部32の頂部を覆う頂面部15とを備えている。換言すれば、頂面部15は、筒部11が有する2つの筒端の一方を塞ぎ、キャップシール10の頂部を構成する。
【0023】
頂面部15は、ICタグ16を備えている。ICタグ16は、RFID(Radio Frequency Identifier)のシステムに利用されるタグであり、ICタグ16には、ICチップ17と非接触通信のためのアンテナ18とが含まれている。詳細には、ICタグ16は、例えば、ICチップ17およびアンテナ18と、これらを支持する基材とから構成される。基材としては、例えば、樹脂フィルムや紙や合成紙等が用いられる。
【0024】
ICチップ17は、非接触型の通信機能を実現する非接触通信部を備えていれば、その他の構成は特に限定されない。ICチップ17は、ベアチップであってもよいし、各種のICパッケージやチップサイズパッケージ(CSP)のように封止材で封止されていてもよい。
【0025】
アンテナ18は、ICチップ17の非接触通信部が有する端子と電気的に接続されている。アンテナ18は、薄膜状の導電性材料から構成された導電パターンであることが好ましい。薄膜状の導電性材料には、アルミニウム、銅、金、銀等の金属薄膜や金属箔、および、金属材料を含む塗布膜が含まれる。アンテナ18のパターンを形成する方法としては、エッチング、印刷法、メッキ法等が挙げられる。アンテナ18のパターン形状は、所望の周波数特性や通信距離等の特性に応じて設定される。
【0026】
頂面部15は、ICタグ16に加えて、ICタグ16を支持する支持層や、ICタグ16を覆う保護層や、文字や絵柄等を構成する印刷層等を備えていてもよい。頂面部15が有するこれらの層の構成は、ICタグ16による通信を阻害し難い非金属材料等の材料から構成されていれば、特に限定されない。例えば、ICタグ16は、樹脂製の支持層におけるキャップシール10の内側に向けられる面に貼り付けられている。
【0027】
筒部11は、容器30を囲む金属部12と、筒部11の軸方向に沿って延びる帯状の樹脂部13とを有している。樹脂部13は絶縁部の一例である接着性絶縁部を構成する。
金属部12は、圧延等によって引き延ばされた金属からなるシートから構成されており、容器30における首部の側面に沿って配置される。金属部12を構成する金属は特に限定されず、例えば、アルミニウムや錫等が挙げられる。金属部12は、単一のシート状の部材であって、筒部11の周方向に容器30の外周を一巻きして樹脂部13の位置で途切れている。
【0028】
樹脂部13は、絶縁性接着剤である樹脂から構成されている。こうした樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が挙げられる。特に、エポキシ樹脂は、絶縁性が高いため、樹脂部13の材料として好適に用いられる。樹脂部13の抵抗率は、10Ωm以上であることが好ましい。
【0029】
樹脂部13は、筒部11の軸方向における一方の端部から他方の端部まで、直線状に延びている。すなわち、樹脂部13は、筒部11の有する2つの筒端を結んでいる。
図2は、樹脂部13の付近についての筒部11の径方向に沿った断面構造を示す図である。図2が示すように、筒部11の周方向における金属部12の両端部である2つの端部12a,12bの各々は、樹脂部13に接着されている。金属部12の2つの端部12a,12bは、筒部11の径方向に沿って並び、それらの間に樹脂部13を挟んでいる。端部12aと端部12bとは直接には接しておらず、金属部12と樹脂部13との接続によって筒部11はその周方向に沿った閉環を構成している。
【0030】
筒部11の外側から見て、樹脂部13は、筒部11の周方向における金属部12の端部12aからはみ出していることが好ましく、また、筒部11の内側から見ても、樹脂部13は、筒部11の周方向における金属部12の端部12bよりもはみ出していることが好ましい。こうした構成によれば、容器30へのキャップシール10の取り付けに際して、筒部11に変形が生じた場合であっても、金属部12の両端部が互いに接触することが的確に抑えられる。
【0031】
上記構成によれば、金属部12における筒部11の周方向に延びる導電路が樹脂部13によって遮られ、すなわち、筒部11の周方向に沿った伝導が樹脂部13によって遮られる。そのため、筒部11に閉環状の導電路が形成されている構成と比較して、筒部11のインダクタンスを減少させることができる。したがって、ICタグ16と外部機器との非接触通信に際して、筒部11に起因した電磁界への影響をICタグ16に対して低減できるため、ICタグ16の通信距離等の通信特性の低下を抑えることができる。
【0032】
ここで、金属部12の2つの端部12a,12bに挟まれる樹脂部13の静電容量は、3000pF以下であることが好ましい。例えば、樹脂部13において、2つの端部12a,12bに挟まれる部分が平面視にて5mm×33mmの大きさを有し、樹脂部13の比誘電率が2.0であるとする。この場合、樹脂部13の厚さが1μmであるとき、すなわち、樹脂部13において端部12a,12bに挟まれる部分の静電容量が2920.5pFであるとき、13.56MHzの通信周波数において、ICタグ16と、ICタグ16の通信対象である外部機器との良好な通信が可能であることが実験によって確認された。
【0033】
ICタグ16と外部機器との間の通信路には、筒部11の存在に起因して、ICタグ16と外部機器との通信を阻害するインピーダンスが介在する。筒部11の存在に起因したインピーダンスは、ICタグ16や外部機器に対して、金属部12に基づくコイルと、樹脂部13に基づくコンデンサとが並列に接続された回路と等価である。なお、金属部12の抵抗値は、無視できるほどに小さい。一般に、ICタグ16のインピーダンスと、リーダー/ライター等の外部機器のインピーダンスとは、信号の伝達を効率よく進めるために整合されている。そのため、ICタグ16と筒部11との合成インピーダンスは、外部機器に対して、ICタグ16のインピーダンスに近いことが好ましく、すなわち、上記LC並列回路でのインピーダンスが小さいことが好ましい。換言すれば、上記コイルでの自己インダクタンスが所定の大きさに抑えられた状態においては上記コンデンサでの静電容量が小さいことが好ましい。そして、13.56MHzの通信周波数が用いられる場合には、上記実験により、樹脂部13において端部12a,12bに挟まれる部分の静電容量が3000pF以下であると、上記LC並列回路でのインピーダンスが十分に小さく抑えられ、良好な通信が可能であることが示唆される。
【0034】
なお、金属部12と樹脂部13との位置関係は、上記構成に限らず、図3に示す構成であってもよい。すなわち、図3が示すように、金属部12の2つの端部12a,12bは、樹脂部13の表面にて筒部11の周方向に沿って並んでいる。端部12aと端部12bとが周方向に離れていれば、これらの端部12a,12bの間は樹脂部13で埋められていてもよいし、隙間が空いていてもよい。こうした構成においては、筒部11の外側から見て、筒部11の周方向における金属部12の2つの端部12a,12bの間に樹脂部13が挟まれるように位置している。要は、筒部11の周方向に沿った伝導が樹脂部13によって遮られるように、金属部12と樹脂部13とが接続されていればよい。
【0035】
なお、筒部11と頂面部15との接続部分の構成は特に限定されない。例えば、筒部11の端部が径方向の内側に張り出すように折り曲げられ、この折り曲げられた部分に筒部11の外側もしくは内側から頂面部15が貼り付けられていてもよい。あるいは、頂面部15の周縁から筒部11の軸方向に延設された部分に、筒部11の内側面もしくは外側面が貼り付けられていてもよい。
【0036】
また、ICタグ16の一部は、筒部11に含まれてもよい。例えば、ICタグ16が、断線検知回路を構成する導電パターンを備え、ICタグ16のなかで断線検知回路の位置する部分が、筒部11の内側面を構成する領域まで延びていてもよい。断線検知回路における断線の有無はICチップ17によって検知され、検知結果は、キャップシール10の破壊の有無の判定に利用される。
【0037】
キャップシール10の容器30への取り付けは、例えば、以下の手順で行われる。すなわち、筒部11と頂面部15とが接合されてキャップシール10が組み立てられた後に、筒部11に容器30の開封部が挿入され、カシメ加工等による加圧によってキャップシール10が容器30に密着させられる。あるいは、キャップシール10の組み立てと容器30への取り付けとが並行して行われてもよい。例えば、筒部11に開封部が通された後に、筒部11に頂面部15が接合されてもよいし、金属部12を容器30に巻き付けた後に、樹脂部13による金属部12の端部12a,12bの接着が行われることにより、筒部11が形成されてもよい。
【0038】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)筒部11の周方向に沿った伝導が絶縁部によって遮られるため、筒部11に閉環状の導電路が形成されている構成と比較して、ICタグ16の通信距離等の通信特性の低下を抑えることができる。
【0039】
(2)絶縁部が、筒部11の径方向に沿って金属部12の端部12a,12b間に挟まれている構成、あるいは、絶縁部が、筒部11の外側から見て筒部11の周方向に沿って金属部12の端部12a,12b間に挟まれている構成によれば、上記伝導の絶縁部による遮断が好適に実現できる。特に、絶縁部が、筒部11の径方向に沿って金属部12の端部12a,12b間に挟まれている構成では、金属部12の端部同士が重なることによって筒部11の強度を高めることが可能である。そして、絶縁部が絶縁性接着剤から形成される構成であれば、筒部11の製造が容易である。
【0040】
(3)絶縁部を絶縁性接着剤が構成し、金属部12が単一であって、絶縁部に筒部11の周方向における金属部12の両端部が接着されている構成によれば、筒部11を筒形状に形成するための構成が絶縁部の形成のための構成を兼ねる。そのため、簡易な構成によって絶縁部を有する筒部11が実現され、筒部11の生産効率も高められる。
【0041】
(第2実施形態)
図4および図5を参照して、キャップシールの第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図4が示すように、第2実施形態のキャップシール20は、筒部21と頂面部15とを備え、頂面部15の構成は、第1実施形態と同様である。図4および図5が示すように、第2実施形態の筒部21は、樹脂層25と金属層26とからなる多層構造を有した複合シートから構成されており、樹脂層25に対して筒部21の径方向の外側に位置する金属層26が、複数の金属部22を含んでいる。
【0043】
金属層26は、筒部21が有する2つの筒端を結ぶ隙間Sによって、複数の金属部22に筒部21の周方向に分離されている。複数の金属部22は、容器30を囲み、容器30の側面に沿って配置される。隙間Sは、筒部21の軸方向における一方の端部から他方の端部まで、直線状に延びている。
【0044】
図5が示すように、樹脂層25と金属層26とは、筒部21の径方向に沿って並んでおり、金属層26は、樹脂層25に対して筒部21の径方向の外側に位置している。すなわち、筒部21の外側から見た場合、金属層26からなる金属部22が視認され、樹脂層25は、容器30の側面に接する。
【0045】
樹脂層25を構成する樹脂は、絶縁性の樹脂であり、こうした樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン等が挙げられる。樹脂層25の抵抗率は、10Ωm以上であることが好ましい。金属層26を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、錫、銅等が挙げられる。
【0046】
隙間Sは、樹脂層25上において金属層26を分断している。樹脂層25は隙間によって分断されておらず、1つの連続した層である。
樹脂層25上には筒部11の周方向に沿って並ぶ複数の隙間Sが設けられていてもよく、隙間Sの数は限定されない。隙間Sの数が2以上である場合、複数の金属部22は、2つの隙間Sによって挟まれることによって区画された部分を含む。
【0047】
こうした隙間Sは、例えば、樹脂層に金属層が積層された複合シートに対してエッチングが行われて、金属層の一部が削られることによって形成される。筒部21の周方向における両端部、すなわち、複合シートの両端部は、第1実施形態と同様に絶縁性接着剤を用いて接着されていてもよいし、絶縁性接着剤による接着とは異なる方法によって接合されていてもよい。
【0048】
上記構成において、金属層26は、各隙間Sによって分離されてその隙間Sを隔てて対峙する2つの端部を含む。言い換えれば、互いに隣り合う金属部22のうち、一方の金属部22の端部と他方の金属部22の端部とが隙間Sを隔てて対峙している。第2実施形態のキャップシール20においては、樹脂層25のなかで、各隙間Sと対向する位置で、各隙間Sを隔てて対峙する金属層26の上記2つの端部を繋いでいる部分が、絶縁部の一例である間隙絶縁部を構成する。そして、金属部22と間隙絶縁部との接続によって、筒部21の周方向に沿った閉環が構成されている。筒部21の外側から見て、間隙絶縁部は、筒部21の周方向に沿って並ぶ金属部22の端部間に挟まれるように位置している。
【0049】
上記構成においては、筒部21の周方向に沿った伝導が間隙絶縁部によって遮られる。そのため、筒部21に閉環状の導電路が形成されている構成と比較して、ICタグ16の通信特性の低下を抑えることができる。
【0050】
また、複数の隙間Sが設けられている構成では、隙間Sが1つである場合と比較して、筒部21の周方向に延びる導電路が、より細かく分断される。その結果、筒部21のインダクタンスをより減少させることができるため、ICタグ16の通信特性の低下をさらに抑えることができる。そして、複合シートにおける金属層のパターニングによって隙間Sを形成する構成であれば、複数の隙間Sを形成することが容易である。
【0051】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1),(2)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(4)樹脂層25上の隙間Sによって金属層26が分離されることにより、筒部21の周方向に沿った伝導が絶縁部によって遮られた構成が実現される。これによれば、隙間Sの位置や大きさや形状等の設定によって、絶縁部の位置や大きさや形状の調整が可能である。したがって、絶縁部の位置や大きさや形状についての調整が容易であり、その自由度も高められる。
【0052】
(5)複数の隙間Sが設けられていることにより、複数の絶縁部が設けられている構成によれば、筒部21の周方向に延びる導電路がより細かく分断されるため、ICタグ16の通信特性の低下をさらに抑えることができる。
【0053】
[変形例]
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・第1実施形態において、筒部11の周方向に並ぶ複数の接着性絶縁部が設けられていてもよい。すなわち、金属部12が筒部11の周方向に複数の部分に分割されており、隣り合う2つの上記部分の端部が樹脂部13に接着される。換言すれば、複数の樹脂部13が設けられ、金属部12のなかで筒部11の周方向に隣り合う2つの部分が樹脂部13で繋がれるように、金属部12の各部分と樹脂部13とが配置される。こうした構成によっても、第2実施形態の(5)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0054】
・第2実施形態において、隙間Sは、筒部21の2つの筒端を結んでいればよく、筒部21の延びる方向、すなわち、筒部21の軸方向に沿って延びる直線状を有していなくてもよい。例えば、筒部21の外側から見て、隙間Sは、筒部21の延びる方向に対して傾斜した方向に延びてもよいし、曲線状に延びてもよいし、図柄を構成していてもよい。
【0055】
・各実施形態において、絶縁部が筒部の2つの筒端を結んでいなくても、2つの筒端のうち、頂面部15によって塞がれる筒端である第1端から絶縁部が延びている構成であれば、絶縁部が全く設けられない構成と比較して、ICタグ16の通信特性の低下を抑える効果は得られる。すなわち、絶縁部は、筒部の第1端である一方の筒端から延びて、他方の筒端まで到達していなくてもよい。
【0056】
・筒部が絶縁部を有し、金属部と絶縁部との接続によって筒部の周方向に沿った閉環が構成されることにより筒部の周方向に沿った伝導が遮られていれば、絶縁部の材料や形状は、上記実施形態にて例示した材料や形状と異なっていてもよい。
【0057】
・容器30の内容物は特に限定されない。各実施形態のキャップシールであれば、容器30への取り付けに際して加熱を行わなくてもよいため、熱による内容物の変質が抑えられる。特に、内容物がワインのように酒類である場合に有用性が高い。
【0058】
また、開口部を有していれば、容器本体31の形状や材質は特に限定されない。容器本体31がガラスのような脆性材料から構成される場合、容器本体31のなかで開口部付近の強度は低くなり易いが、各実施形態のキャップシールを取り付けることにより、金属部によって開口部付近が保護される。すなわち、キャップシールによって開封部の付近を保護する効果も得られる。
【0059】
また、封止部32は、容器本体31の開口部を塞ぐ構造を有していれば、その形状や材質は特に限定されず、封止部32は、開口部に詰められる栓であってもよいし、開口部に被せられる蓋であってもよい。
【0060】
[実施例]
上述したキャップシールについて、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
(実施例1−1)
アルミニウムシートを円筒状に丸め、その周方向の両端部を絶縁テープによって固定することにより、筒部を形成した。その際、筒部の径方向に沿って、アルミニウムシートの両端部の間に絶縁テープが挟まれるように、両端部と絶縁テープとを固定した。筒部の径方向において、絶縁テープから構成される絶縁部の厚さは1.0mmであった。また、絶縁部の抵抗値を測定したところ、抵抗値は、計測器(日置電機社製:3540 ミリオームハイテスタ、測定レンジ:30KΩ)の検出限界を超える大きさであった。
【0061】
円形の樹脂シート上に導電性インクの印刷によってアンテナを形成し、さらにICチップを実装することによりICタグを形成し、頂面部とした。アンテナは、直径21mmの円形領域に形成した。頂面部を、筒部の一方の筒端に、接着剤を用いて接着して、実施例1−1のキャップシールを得た。
【0062】
(実施例1−2)
筒部の径方向において、絶縁テープから構成される絶縁部の厚さを2.0mmに形成すること以外は、実施例1−1と同様の工程によって、実施例1−2のキャップシールを得た。絶縁部の抵抗値を測定したところ、抵抗値は、計測器(日置電機社製:3540 ミリオームハイテスタ、測定レンジ:30KΩ)の検出限界を超える大きさであった。
【0063】
(実施例1−3)
アルミニウムシートの両端部を絶縁テープによって固定する際に、筒部の周方向に沿ってアルミニウムシートの両端部が並ぶように、すなわち、筒部の外側から見て、アルミニウムシートの両端部の間に絶縁テープが挟まれるように両端部と絶縁テープとを固定したこと以外は、実施例1−1と同様の工程によって、実施例1−3のキャップシールを得た。筒部の径方向における絶縁テープの厚さは約0.1mmであり、筒部の周方向において、絶縁部に固定されたアルミニウムシートの両端部間の距離は1.0mmであった。また、絶縁部の抵抗値を測定したところ、抵抗値は、計測器(日置電機社製:3540 ミリオームハイテスタ、測定レンジ:30KΩ)の検出限界を超える大きさであった。
【0064】
(実施例1−4)
アルミニウムシートを3つの部分に分割して筒状に配置し、互いに隣り合う部分の端部同士を絶縁テープによって固定することにより、筒部を形成した。その際に、筒部の外側から見て、筒部の周方向に沿って、アルミニウムシートの端部間に絶縁テープが挟まれるように、端部と絶縁テープとを固定した。その他は、実施例1−1と同様の工程によって、実施例1−4のキャップシールを得た。すなわち、実施例1−4のキャップシールは、実施例1−3のキャップシールにおける絶縁部を三箇所に増やした構成を有する。筒部の径方向における絶縁テープの厚さは約0.1mmであり、筒部の周方向において、絶縁部に固定されたアルミニウムシートの端部間の距離は、3つの絶縁部について、1.0mm、2.0mm、5.0mmであった。また、各絶縁部の抵抗値を測定したところ、いずれの絶縁部についても、抵抗値は、計測器(日置電機社製:3540 ミリオームハイテスタ、測定レンジ:30KΩ)の検出限界を超える大きさであった。
【0065】
(比較例1)
アルミニウムシートを円筒状に丸め、その周方向の両端部を互いに係止することにより、筒部を形成した。その他は、実施例1−1と同様の工程によって、比較例1のキャップシールを得た。すなわち、比較例1のキャップシールの筒部は、絶縁部を有さず、金属部のみから構成されている。
【0066】
<通信特性試験>
実施例および比較例のキャップシールについて、ICタグの通信特性の試験として、通信距離の測定を行った。具体的には、ハイトゲージに、頂面部を下側に向けてキャップシールを固定し、頂面部の直下にICタグのリーダーを配置した。そして、ICタグとリーダーとの通信が途絶えるまで、すなわち、リーダーにおける通信状態を示す反応がなくなるまで、キャップシールを上方に移動させた。ICタグとリーダーとの通信が途絶える直前の頂面部とリーダーとの間の距離を計測することにより、各実施例および比較例についてのICタグの通信距離を求めた。また、参考例1として、ハイトゲージにICタグのみを固定して、同様の方法により通信距離を計測した。表1は、各実施例、比較例、および、参考例における通信距離の測定結果を示す。
【0067】
【表1】
表1が示すように、実施例1−1〜1−4のいずれについても、参考例1よりは通信距離が短いものの、比較例1よりは通信距離が拡大されている。したがって、筒部に絶縁部を設けることによって、ICタグの通信特性の低下が抑えられることが確認された。
【0068】
また、実施例1−1と実施例1−2とを比較すると、筒部の径方向に沿って金属部の間に絶縁部が挟まれる場合、径方向における絶縁部の厚さが厚い方が、通信距離が拡大されることが確認された。また、実施例1−3と実施例1−4とを比較すると、絶縁部の数が多い方が、通信距離が拡大されることが確認された。
【0069】
(実施例2−1)
アルミニウムシートを円筒状に丸め、その周方向の両端部の間に径方向に沿ってポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを挟み、上記両端部を上記PETフィルムに接着することにより、筒部を形成した。アルミニウムシートの厚さは11μmであり、筒部の直径は30mmであり、筒部の高さは65mmである。PETフィルムの厚さは47μmであり、筒部の周方向に沿ったPETフィルムの幅は1mmであり、筒部の軸方向に沿ったPETフィルムの長さは65mmである。すなわち、絶縁部を構成するPETフィルムは、筒部の2つの筒端を結んでいる。
【0070】
15mm×15mmの正方形領域に形成されたアンテナを有するICタグを用いて頂面部を形成し、頂面部と筒部とを組み合わせて、実施例2−1のキャップシールを得た。
(実施例2−2)
アルミニウムシートからなる筒の一方の筒端から当該筒の軸方向に沿ってスリットを形成し、スリットの形成された部分に絶縁テープを配置して、筒部を形成した。アルミニウムシートの厚さは11μmであり、筒部の直径は30mmであり、筒部の高さは65mmである。スリットの長さは、上記一方の筒端から15mmである。
【0071】
15mm×15mmの正方形領域に形成されたアンテナを有するICタグを用いて頂面部を形成し、頂面部を筒部の上記一方の筒端を塞ぐように配置して、実施例2−2のキャップシールを得た。
【0072】
(実施例2−3)
スリットを、上記一方の筒端から30mmの長さに形成すること以外は、実施例2−2と同様にして、実施例2−3のキャップシールを得た。
【0073】
(実施例2−4)
スリットを、上記一方の筒端から40mmの長さに形成すること以外は、実施例2−2と同様にして、実施例2−4のキャップシールを得た。
【0074】
(実施例2−5)
スリットを、上記一方の筒端から65mmの長さに形成すること以外は、実施例2−2と同様にして、実施例2−5のキャップシールを得た。すなわち、実施例2−5における絶縁部は、筒部の2つの筒端を結んでいる。
【0075】
(比較例2)
スリットを設けないこと以外は、実施例2−2と同様にして、比較例2のキャップシールを得た。すなわち、比較例2の筒部は、絶縁部を有さない金属製の筒である。
【0076】
<通信特性試験>
実施例および比較例のキャップシールについて、ICタグの通信特性の試験として、通信距離の測定を行った。具体的には、ハイトゲージに、頂面部を下側に向けてキャップシールを固定し、頂面部の直下にICタグのリーダーを配置した。そして、ICタグとリーダーとの通信が途絶えるまで、すなわち、リーダーにおける通信状態を示す反応がなくなるまで、キャップシールを上方に移動させた。ICタグとリーダーとの通信が途絶える直前の頂面部とリーダーとの間の距離を計測することにより、各実施例および比較例についてのICタグの通信距離を求めた。また、参考例2として、ハイトゲージにICタグのみを固定して、同様の方法により通信距離を計測した。表2は、各実施例、比較例、および、参考例における通信距離の測定結果を示す。
【0077】
【表2】
表2が示すように、実施例2−1〜2−5のいずれについても、参考例2よりは通信距離が短いものの、比較例2よりは通信距離が拡大されている。したがって、筒部に絶縁部を設けることによって、ICタグの通信特性の低下が抑えられることが確認された。
【0078】
特に、スリットの長さ、すなわち、絶縁部の長さを変化させた実施例2−2〜2−5に着目すると、絶縁部が筒部の2つの筒端を結んでいなくとも、頂面部によって塞がれる筒端から絶縁部が延びている構成であれば、比較例2よりは通信距離が拡大することが確認された。さらに、絶縁部の長さが長いほど、通信距離が拡大されること、すなわち、ICタグの通信特性の低下が抑えられることが確認された。ここで、絶縁部の長さの変化に対する通信距離の変化は、絶縁部の長さが短い領域ほど顕著であり、筒部の高さ65mmに対して、40mmの長さの絶縁部を有する実施例2−4であれば、筒部の軸方向の全体に絶縁部が設けられている実施例2−5に近い水準の通信距離を確保できる。したがって、絶縁部が、筒部の延びる方向において筒部の長さの3分の2以上の長さを有する構成であれば、良好な通信距離の確保が可能であることが示唆される。
【符号の説明】
【0079】
S…隙間、10,20…キャップシール、11,21…筒部、12,22…金属部、12a,12b…端部、13…樹脂部、15…頂面部、16…ICタグ、17…ICチップ、18…アンテナ、25…樹脂層、26…金属層、30…容器、31…容器本体、32…封止部。
図1
図2
図3
図4
図5