(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、生体組織貼付用フィルム、および、転写シートの一実施形態を説明する。本実施形態の生体組織貼付用フィルムが貼り付けられる対象である被着体は、生体組織であり、例えば、皮膚や臓器である。本実施形態の生体組織貼付用フィルムは、特に、皮膚への貼り付けに好適に用いられる。
【0019】
本実施形態の生体組織貼付用フィルムは、美容用途に用いられてもよいし、医療用途に用いられてもよい。美容用途に用いられる場合、生体組織貼付用フィルムは、スキンケアやメイクアップの補助のために皮膚に貼り付けられる。医療用途に用いられる場合、生体組織貼付用フィルムは、創傷の保護や薬剤の塗布領域の保護のために、皮膚や臓器に貼り付けられる。
【0020】
[生体組織貼付用フィルムの構成]
生体組織貼付用フィルムの形態として、第1形態〜第5形態の5つの形態を説明する。まず、これらの形態に共通する本実施形態の生体組織貼付用フィルムの特徴について説明する。
【0021】
図1が示すように、生体組織貼付用フィルム10は、第1面11Fと、第1面11Fと反対側の第2面11Rとを有する。第1面11Fは、被着体に貼り付けられる。すなわち、第1面11Fは、被着体である生体組織の表面に接する。第2面11Rは、生体組織貼付用フィルム10が被着体に貼り付けられたときに、被着体とは反対側に位置する最外面となる。
【0022】
第1面11Fと第2面11Rとの少なくとも一方は、バリア面である。バリア面における純水の接触角は、70°以上150°以下である。当該接触角は、JIS R 3257(1999)に準じた方法で測定される。詳細には、生体組織貼付用フィルム10を試験片とし、23℃、65%RHの環境において、JIS R 3257(1999)に規定される静滴法に従って、試験片のバリア面上に純水の液滴を静置して1秒経過後の時点から、10箇所の接触角を1秒おきに順に測定する。そして、10箇所の接触角の平均値を、バリア面の接触角とする。測定には、例えば、協和界面科学社製のポータブル接触角計(PCA−1)を用いる。
【0023】
バリア面においては、接触角が70°以上であるため、水との親和性が高くなることが抑えられる。すなわち、バリア面における水滴の吸着が抑えられ、液体の水の吸着に起因して生体組織貼付用フィルム10における水分の透過が進むことが抑えられる。したがって、生体組織貼付用フィルム10における水分のバリア性が高められる。水分のバリア性は、水分をはじいたり水分の透過を抑えたりする性質である。こうした効果を高めるためには、バリア面の接触角は80°以上であることが好ましい。
【0024】
また、バリア面の接触角が150°以下であることから、バリア面の撥水性が高すぎないため、バリア面の形成のための材料の選択の自由度が低くなることが抑えられるとともに、バリア面の製造工程が複雑になることが抑えられる。こうした効果を高めるためには、バリア面の接触角は120°以下であることが好ましい。
【0025】
皮膚の表面には低極性材料からなる皮脂膜が存在することが多いため、低極性材料は、皮膚の表面との親和性が高く、皮膚の表面に馴染みやすい。したがって、被着体が皮膚である場合、第1面11Fがバリア面であると、生体組織貼付用フィルム10と被着体との密着性が高められる。一方で、第1面11Fが例えば水溶性材料から構成され、第1面11Fの接触角が70°未満であれば、第1面11Fの近傍に水分が存在しやすいため、被着体に対する保湿が補助される。さらに、被着体の表面に化粧水等に含まれる水分が存在する場合には、第1面11Fが水分と馴染みやすいため、生体組織貼付用フィルム10と被着体との密着性が高められる。
【0026】
また、第2面11Rがバリア面であると、生体組織貼付用フィルム10に水滴や水を含む汚れが外部から付着することが抑えられる。特に被着体が皮膚である場合、日常生活において皮膚は水と接する機会が多いため、生体組織貼付用フィルム10への水の付着が抑えられることにより、水の付着に起因した生体組織貼付用フィルム10の汚れや剥がれが抑えられ、有益性が高い。なお、生体組織貼付用フィルム10を美容用途に用いる場合であって、生体組織貼付用フィルム10の上から化粧料を塗布する場合には、第2面11Rの接触角が70°未満であると、化粧料の付着性が高められる。
【0027】
生体組織貼付用フィルム10における水分のバリア性を高める観点では、第1面11Fと第2面11Rとの双方がバリア面であることが好ましい。
また、生体組織貼付用フィルム10における水分のバリア性を高める観点では、生体組織貼付用フィルム10における水蒸気の透過が抑えられることが好ましい。本実施形態では、生体組織貼付用フィルム10における水蒸気の透過性の低さを示すパラメータとして、閉塞率を用いる。閉塞率は、生体組織貼付用フィルム10が配置された箇所での、ヒトの体温と等しい温度を有する水の蒸散量を、生体組織貼付用フィルム10が配置されない場合の蒸散量に対して抑える割合である。
【0028】
医療用途において、湿潤環境での治癒促進効果や薬剤の浸透促進効果を良好に得るためには、生体組織表面からの水の蒸散を抑えて、生体組織表面を水分過多の状態とすることが望ましい。生体組織貼付用フィルム10の閉塞率が30%以上であれば、生体組織貼付用フィルム10を生体組織表面に貼り付けることによって、こうした水分過多の状態を好適に形成できる。また、美容用途においても、閉塞率が30%以上であれば、生体組織貼付用フィルム10の貼り付けによって、保湿効果が良好に得られる。さらに、これらの効果を高めるためには、生体組織貼付用フィルム10の閉塞率は、60%以上であることが好ましい。
【0029】
生体組織貼付用フィルム10は、当該フィルム単独で被着体に対する接着性を発現する程度に薄く、言い換えれば、上記接着性を発現する程度に、単位面積当たりの平均質量が小さい。具体的には、生体組織貼付用フィルム10の平均質量は、5.0g/m
2以下である。平均質量が5.0g/m
2以下であれば、被着体の表面形状に対する生体組織貼付用フィルム10の追従性が良好に得られる。また、被着体が皮膚である場合、平均質量が5.0g/m
2以下であれば、生体組織貼付用フィルム10の貼付部分にて皮膚が引っ張られるような感覚を使用者が覚えにくいため、生体組織貼付用フィルム10が、皮膚上に長時間に渡って留めることに適したフィルムとなる。こうした効果を高める観点では、生体組織貼付用フィルム10の平均質量は、2.0g/m
2以下であることが好ましい。
【0030】
また、生体組織貼付用フィルム10の平均質量は、0.1g/m
2以上である。平均質量が0.1g/m
2以上であれば、生体組織貼付用フィルム10の強度が良好に得られる。したがって、例えば、被着体が皮膚である場合には、皮膚上の生体組織貼付用フィルム10に衣服等が擦れた場合でも、生体組織貼付用フィルム10が破れにくい。こうした効果を高める観点では、生体組織貼付用フィルム10の平均質量は、0.3g/m
2以上であることが好ましい。
【0031】
なお、上記平均質量は、平面視にて1m
2の面積を有する部分あたりに換算した生体組織貼付用フィルム10の質量である。また、生体組織貼付用フィルム10の密度は、例えば、1g/cm
3以上3g/cm
3以下である。
【0032】
以下、第1形態〜第5形態の生体組織貼付用フィルム10を順に説明する。
図2は、第1形態の生体組織貼付用フィルム10である生体組織貼付用フィルム10Aを示す。生体組織貼付用フィルム10Aは、耐水層20のみからなる。耐水層20が有する2つの面の一方が第1面11Fであり、他方が第2面11Rである。第1形態の生体組織貼付用フィルム10Aにおいては、第1面11Fと第2面11Rとの双方がバリア面である。さらに、耐水層20においては、水蒸気の透過も抑えられる。
【0033】
耐水層20は、疎水性の材料を含む。例えば、耐水層20は、疎水性の高い高分子材料から構成される。疎水性の高い高分子材料は、水と馴染みにくいため、耐水層20の表面において水分をはじくとともに、耐水層20の内部に水分の経路を形成し難い。こうした高分子材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、スチレンブタジエン系エラストマー等のオレフィン系樹脂が挙げられる。なかでも、生体組織貼付用フィルム10Aの閉塞率を高める観点では、脂環式の飽和炭化水素ポリマーであるシクロオレフィンポリマーやシクロオレフィンコポリマーが好適に用いられる。具体的な製品としては、例えば、ポリプラスチックス社のTOPAS(登録商標)、三井化学社製のアペル(登録商標)、JSR社製のARTON(登録商標)、日本ゼオン社製のZEONEX(登録商標)が挙げられる。
【0034】
また、耐水層20は、ポリ乳酸等の疎水性の低い高分子材料と、当該高分子材料に添加された撥水性添加剤とから構成されてもよい。撥水性添加剤は、撥水性添加物の一例である。
【0035】
撥水性添加剤としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレンジラフィー油が挙げられる。また他に、撥水性添加剤として、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)等のアミノ酸エステル油剤、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット等のペンタエリスリトール安息香酸エステル油剤、ジイソステアリン酸グリセリルやトリイソステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル油剤、トリイソステアリン酸ジグリセリルやペンタステアリン酸テトラグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸、(アジピン酸・2−エチルへキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、(12−ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリトール、(12−ヒドロキシステアリン酸・イソステアリン酸)ジペンタエリスリトール等のジペンタエリスリット脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0036】
なお、耐水層20は、疎水性の高い高分子材料と、撥水性添加剤とを含んでいてもよい。
図3は、第2形態の生体組織貼付用フィルム10である生体組織貼付用フィルム10Bを示す。生体組織貼付用フィルム10Bは、耐水層21と樹脂層30とを備えている。耐水層21と樹脂層30とは、生体組織貼付用フィルム10Bの厚さ方向に沿って積層されており、樹脂層30は耐水層20の一方の面に接する。耐水層21は、第1形態の耐水層20と同様の材料から構成される。
【0037】
樹脂層30における水分のバリア性の程度は、特に限定されない。樹脂層30の表面は、バリア面であってもよいし、バリア面でなくてもよい。樹脂層30における水分のバリア性が耐水層21よりも低いとき、樹脂層30の表面の接触角は、耐水層21の表面の接触角よりも小さく、樹脂層30の閉塞率は、耐水層21の閉塞率よりも小さい。
【0038】
耐水層21における樹脂層30に接する面とは反対側の面は、第1面11Fおよび第2面11Rの一方であり、樹脂層30における耐水層21に接する面とは反対側の面は、第1面11Fおよび第2面11Rの他方である。すなわち、耐水層21と樹脂層30とのいずれが被着体に貼り付けられてもよい。第1面11Fと第2面11Rとのうち、少なくとも耐水層21が有する面は、バリア面である。
【0039】
樹脂層30における水分のバリア性が耐水層21よりも低い場合、樹脂層30が第1面11Fを有する形態であれば、被着体に接する第1面11Fの近傍に水分が存在しやすいため、被着体の保湿が補助され、また、耐水層21のバリア面が被着体と反対側の最外面となるために生体組織貼付用フィルム10Bへの水滴や汚れの付着が抑えられる。
図3は、樹脂層30が第1面11Fを有する形態を例示している。
【0040】
樹脂層30の主成分である樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン等のエステル樹脂およびこれらの共重合樹脂、化粧品の皮膜形成剤として使用される樹脂である、アクリル樹脂やシリコーンおよびこれらの共重合樹脂、酢酸セルロースや酢酸プロピオン酸セルロースや酢酸酪酸セルロース等のセルロース誘導体、医療機器での使用実績の高い樹脂である、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、スチレンブタジエン系エラストマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドが用いられる。また、これらの樹脂が混合されて樹脂層30の材料として用いられてもよい。なお、樹脂層30の主成分は、樹脂層30中において50質量%以上を占める成分である。
【0041】
樹脂層30が第1面11Fを有する場合、樹脂層30は、美容成分や抗炎症成分等の被着体に作用する成分を含んでいてもよい。美容成分には、保湿成分や美白成分が含まれる。美容成分としては、例えば、セラミド、ヒアルロン酸、サクラン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、セルロース、グルコマンナン、プルラン、キチン、カラギーナン、ヘパリン、ポルフィラン、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、ポリアクリル酸、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングルコール、フィブロイン、キトサンが挙げられる。なお、樹脂層30は、これらの成分を2種類以上含んでいてもよい。
【0042】
図4は、第3形態の生体組織貼付用フィルム10である生体組織貼付用フィルム10Cを示す。生体組織貼付用フィルム10Cは、第2形態の耐水層21に代えて、撥水性粒子23を含有する耐水層22を備える。撥水性粒子23は、撥水性添加物の一例である。第1面11Fと第2面11Rとのうち、少なくとも耐水層22が有する面は、バリア面である。
【0043】
撥水性粒子23は、例えば、長鎖アルキル基やトリフルオロメチル基を有するカップリング剤で表面処理された無機粒子、長鎖アルキル基を含有するポリマー粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子である。こうした撥水性粒子23を高分子材料に添加することにより、耐水層22の表面で撥水性粒子23が水をはじくとともに、耐水層22の表面に撥水性粒子23の形状に沿った凹凸が形成されることにより当該表面に水が付着し難くなる。したがって、耐水層22の表面の接触角を大きくすることができる。例えば、撥水性粒子23が添加されていない層では、90°から100°程度であった接触角が、撥水性粒子23が添加された層では、130°から150°程度に大きくなる。
【0044】
耐水層22が含む撥水性粒子23以外の材料には、第1形態の耐水層20と同様の材料が用いられる。第1形態にて例示した、疎水性の高い高分子材料への撥水性粒子23の添加、もしくは、疎水性の低い高分子材料と撥水性添加剤との混合物に対する撥水性粒子23の添加によって、第3形態の耐水層22では、第1形態の耐水層20よりも接触角を大きくすることが可能である。ただし、70°以上150°以下の接触角を有するバリア面の形成が可能であれば、疎水性の低い高分子材料に撥水性粒子23が添加されることによって、第3形態の耐水層22が構成されていてもよい。
【0045】
撥水性粒子23は、
図4が示すように、第1面11Fもしくは第2面11Rである耐水層22の表面に集まっていてもよいし、耐水層22内に均等に分散していてもよい。要は、撥水性粒子23の少なくとも一部が、耐水層22の上記表面であるバリア面を構成し、バリア面が粒子形状に追従した形状を有していれば、接触角を大きくする効果は得られる。
【0046】
撥水性粒子23のレーザー回折法による体積平均粒子径は、10nm以上10μm以下であることが好ましく、50nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。こうした大きさの撥水性粒子23であれば、被着体に対する接着性を発現する程度に薄い生体組織貼付用フィルム10Cを構成する耐水層22への添加に適しているとともに、接触角を大きくする効果が良好に得られる。
【0047】
なお、生体組織貼付用フィルム10Cは、第1形態と同様に、耐水層22のみを備えていてもよい。この場合、第1面11Fおよび第2面11Rの少なくとも一方が撥水性粒子23の粒子形状に追従した形状を有していればよく、粒子形状に追従した形状を有するバリア面において、接触角を大きくする効果が得られる。
【0048】
図5は、第4形態の生体組織貼付用フィルム10である生体組織貼付用フィルム10Dを示す。生体組織貼付用フィルム10Dは、第2形態の耐水層21に代えて、微細な凹凸構造25を有する耐水層24を備える。第1面11Fと第2面11Rとのうち、少なくとも耐水層24が有する面は、バリア面である。そして、耐水層24は、バリア面に、凹凸構造25を有している。
【0049】
バリア面に凹凸構造25が形成されていることにより、バリア面に水が付着し難くなるため、バリア面の接触角を大きくすることが可能である。また、凹凸構造25が、撥水処理が行われた表面を有する形態であれば、バリア面における接触角のさらなる拡大が可能である。撥水処理は、例えば、フッ素樹脂によるコーティングや、長鎖アルキル基やトリフルオロメチル基を有するカップリング剤を用いた表面処理である。
【0050】
凹凸構造25を構成する凸部の高さは、50nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上400nm以下であることがより好ましい。また、凹凸構造25を構成する凸部の配置間隔は、50nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上400nm以下であることがより好ましい。凹凸構造25の高さおよび配置間隔が上記下限値以上であれば、凹凸が小さすぎないため、凹凸構造25の形成が容易である。また、凹凸構造25の高さおよび配置間隔が上記上限値以下であれば、凹凸に起因した光の干渉によって生体組織貼付用フィルム10Cが色づいて見えることや、凹凸に起因した光の散乱によって生体組織貼付用フィルム10Cが白濁して見えることが抑えられる。
【0051】
また、凹凸構造25の形成を容易にするためには、凹凸構造25を構成する凸部の幅に対する高さの比は、1.0以下であることが好ましい。
耐水層24は、第1形態の耐水層20と同様の材料から構成される。第1形態にて例示した、疎水性の高い高分子材料からなる膜への凹凸構造25の付与、もしくは、疎水性の低い高分子材料と撥水性添加剤からなる膜への凹凸構造25の付与によって、第4形態の耐水層24では、第1形態の耐水層20よりもバリア面の接触角を大きくすることが可能である。ただし、70°以上150°以下の接触角を有するバリア面の形成が可能であれば、疎水性の低い高分子材料からなる膜に凹凸構造25が付与されることによって、第4形態の耐水層24が構成されていてもよい。
【0052】
また、耐水層24は、第3形態の耐水層22と同様の材料から構成されてもよく、すなわち、耐水層24は、撥水性粒子23を含んでいてもよい。さらに、樹脂層30が凹凸構造を有し、耐水層24は、樹脂層30の凹凸構造に沿った表面形状として、凹凸構造25を有していてもよい。
【0053】
なお、生体組織貼付用フィルム10Dは、第1形態と同様に、耐水層24のみを備えていてもよい。この場合、第1面11Fおよび第2面11Rの少なくとも一方が凹凸構造25を有していればよく、凹凸構造25が設けられているバリア面において、接触角を大きくする効果が得られる。
【0054】
図6は、第5形態の生体組織貼付用フィルム10である生体組織貼付用フィルム10Eを示す。生体組織貼付用フィルム10Eは、第2形態の耐水層21に代えて、微細な凹凸構造27および撥水性粒子28を有する耐水層26を備える。撥水性粒子28は、撥水性添加物の一例である。第1面11Fと第2面11Rとのうち、少なくとも耐水層26が有する面は、バリア面である。そして、耐水層26は、バリア面に、凹凸構造27を有するとともに撥水性粒子28を保持している。
【0055】
凹凸構造27および撥水性粒子28によって、バリア面の接触角を大きくすることが可能である。第4形態の凹凸構造25と同様に、凹凸構造27を構成する凸部の高さは、50nm以上500nm以下であることが好ましく、凹凸構造27を構成する凸部の配置間隔は、50nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0056】
撥水性粒子28は、長鎖アルキル基やトリフルオロメチル基を有するカップリング剤で表面処理されたシリカや酸化亜鉛からなる粒子である。撥水性粒子28は、凹凸構造27の表面に並んでいる。撥水性粒子28のレーザー回折法による体積平均粒子径は、1nm以上5000nm以下であることが好ましい。
【0057】
撥水性粒子28以外の耐水層26の材料には、第1形態の耐水層20と同様の材料が用いられる。第1形態にて例示した、疎水性の高い高分子材料からなる膜、もしくは、疎水性の低い高分子材料と撥水性添加剤からなる膜への撥水性粒子28および凹凸構造27の付与によって、第5形態の耐水層26では、第1形態の耐水層20よりもバリア面の接触角を大きくすることが可能である。ただし、70°以上150°以下の接触角を有するバリア面の形成が可能であれば、疎水性の低い高分子材料からなる膜に撥水性粒子28および凹凸構造27が付与されることによって、第5形態の耐水層26が構成されていてもよい。
【0058】
なお、生体組織貼付用フィルム10Eは、第1形態と同様に、耐水層26のみを備えていてもよい。この場合、第1面11Fおよび第2面11Rの少なくとも一方に凹凸構造27が形成されているとともに撥水性粒子28が保持されていればよく、凹凸構造27および撥水性粒子28が位置するバリア面において、接触角を大きくする効果が得られる。
【0059】
第1形態〜第5形態のいずれにおいても、生体組織貼付用フィルム10の各層は、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、各種のフィラー、色素、タンパク質、酵素、薬剤、および、美容成分等が挙げられる。また、生体組織貼付用フィルム10は、例えば肌色等に着色されていてもよい。また、生体組織貼付用フィルム10は、3つ以上の層を有していてもよい。
【0060】
[転写シートの構成]
転写シートは、生体組織貼付用フィルム10を被着体に貼り付ける場合に用いられる。
図7が示すように、転写シート40は、生体組織貼付用フィルム10と、生体組織貼付用フィルム10を支持する支持基材41とを備えている。支持基材41は、生体組織貼付用フィルム10の第2面11Rに接する。
図7は、転写シート40が、第1形態の生体組織貼付用フィルム10Aを備える形態を図示しているが、転写シート40は、第1形態〜第5形態のいずれの生体組織貼付用フィルム10を備えていてもよい。
【0061】
支持基材41は、生体組織貼付用フィルム10の保管時や、生体組織貼付用フィルム10の使用に際して被着体上まで生体組織貼付用フィルム10を移動させるときに、生体組織貼付用フィルム10の変形を抑える機能を有する。支持基材41に支持されていることにより、生体組織貼付用フィルム10が取り扱いやすくなる。なお、支持基材41の大きさは、
図7が示すように生体組織貼付用フィルム10よりも大きくてもよいし、生体組織貼付用フィルム10と一致していてもよい。
【0062】
支持基材41は、多孔質基材であることが好ましい。多孔質基材は、内部に微小な多数の間隙を有する基材であり、液体を浸透あるいは透過させることができる。支持基材41として用いることのできる多孔質基材としては、例えば、不織布、紙、編物、織物等の繊維材料からなるシート、メッシュ状のように間隙を含む構造を有する樹脂シートが挙げられる。これらの基材のなかでも、不織布が好適に用いられる。不織布を構成する繊維は、例えば、綿、麻、羊毛、パルプ等の天然繊維、レーヨン等の半合成繊維、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の合成繊維等である。上記の繊維のなかでも、天然繊維、特にパルプが好適に用いられる。不織布は、1種類の繊維から構成されていてもよいし、2種類以上の繊維から構成されていてもよい。
【0063】
なお、支持基材41は、多孔質基材に限らず、内部に間隙を有さない樹脂シートや金属箔等の基材であってもよい。また、支持基材41として、シリコーンやフッ素樹脂からなる表面を有する樹脂シートのように、離型性を有する基材が用いられてもよい。
【0064】
[生体組織貼付用フィルムおよび転写シートの製造方法]
生体組織貼付用フィルム10および転写シート40の製造方法の一例を説明する。なお、上述した生体組織貼付用フィルム10および転写シート40の製造が可能であれば、下記とは異なる製造方法が用いられてもよい。
【0065】
まず、成膜用基材の表面に、生体組織貼付用フィルム10を形成する。成膜用基材は、離型性を有する基材であればよく、例えば、シリコーンやフッ素樹脂からなる表面を有するポリエチレンテレフタレートフィルムやオレフィンフィルムが好適に用いられる。
【0066】
生体組織貼付用フィルム10が複数の層を有する場合、第1面11Fを有する層から順に、成膜用基材上に各層を積層すると、転写シート40の製造が容易である。
生体組織貼付用フィルム10の構成層の材料が適宜の溶媒に溶かされて塗液が生成され、この塗液の塗布によって形成された塗膜が乾燥により固化されることによって、上記構成層が形成される。生体組織貼付用フィルム10が複数の層を有する場合、塗液の塗布と塗膜の乾燥とが、層ごとに繰り返される。
【0067】
塗液の塗布方法としては、ダイレクトグラビア、リバースグラビア、小径リバースグラビア、マイヤーコート、ダイ、カーテン、スプレー、スピンコート、スクリーン印刷、コンマ、ナイフ、グラビアオフセット、ロールコート等の各種のコーティング方法が使用可能である。生体組織貼付用フィルム10の厚さおよび平均質量は、塗液中の固形分の割合および塗布方法によって制御できる。
【0068】
成膜用基材上の生体組織貼付用フィルム10の表面に、支持基材41を接触させ、成膜用基材から支持基材41へ生体組織貼付用フィルム10を転写することにより、転写シート40が形成される。転写方法としては、吸引による剥離を利用する方法や犠牲膜を利用する方法等、公知の転写方法が用いられればよい。
【0069】
なお、生体組織貼付用フィルム10が複数の層を有する場合、一部の層を成膜用基材上に形成し、形成した層を支持基材41に転写した後に、支持基材41上の層の上に残部の層を形成してもよい。例えば、成膜用基材上に耐水層を形成し、耐水層を支持基材41に転写した後、支持基材41上の耐水層の上に、樹脂層の材料を含む塗液を塗布して塗膜を乾燥することにより、樹脂層を形成してもよい。
【0070】
第3形態の撥水性粒子23を含む耐水層22を形成する場合、耐水層22の形成のための塗液に、撥水性粒子23を分散させればよい。
第4形態の凹凸構造25を有する耐水層24を形成する場合、表面に凹凸構造を有する原版を作製し、熱インプリント法や溶液キャスト法によって、原版の凹凸を耐水層24の材料からなる膜に転写する。例えば、溶液キャスト法を用いる場合、原版上に耐水層24の材料の塗液を塗布し、塗膜を乾燥した後、原版を剥離することによって、耐水層24が形成される。この場合、原版が成膜用基材として機能する。原版の表面の凹凸構造の形成には、例えば、サンドブラスト処理による凹凸の形成、アルミニウム表面の陽極酸化によるポーラス表面の形成、フォトリソグラフィを利用した凹凸の形成等の方法が用いられる。
【0071】
また、耐水層24の凹凸構造25が形成された面に、フッ素樹脂によるコーティングや、長鎖アルキル基やトリフルオロメチル基を有するカップリング剤を用いた表面処理を行うことにより、撥水処理された表面の形成が可能である。フッ素樹脂としては、例えば、AGC社製のサイトップ(登録商標)が用いられる。
【0072】
第5形態の凹凸構造27および撥水性粒子28を有する耐水層26を形成する場合、まず、凹凸構造27を有する層を形成する。例えば、サンドブラスト処理等によって表面に凹凸構造を形成した原版にシリコーン離型処理を行った後、熱エンボス加工や注型成形を利用して、原版の凹凸を耐水層26の材料からなる膜に転写する。その後、当該膜の凹凸構造27が形成された面に、撥水性粒子28を分散させた液を塗布することにより、凹凸構造27が形成された表面に撥水性粒子28を保持する耐水層26が形成される。
【0073】
[生体組織貼付用フィルムの貼付方法]
図8〜
図10を参照して、被着体への生体組織貼付用フィルム10の貼付方法、すなわち、転写シート40を用いた生体組織貼付用フィルム10の転写方法を説明する。以下では、例として、美容用途において、被着体としての皮膚に生体組織貼付用フィルム10を貼り付ける場合を説明する。なお、
図8〜
図10では、転写シート40が第1形態の生体組織貼付用フィルム10Aを備える場合を例示している。
【0074】
図8が示すように、まず、皮膚Sk上に、水、化粧水、ローション、美容クリーム等の液状体Lqを塗り付ける。
そして、
図9が示すように、液状体Lqの塗布領域に生体組織貼付用フィルム10を重ねるように、転写シート40を皮膚Sk上に配置する。このとき、生体組織貼付用フィルム10の第1面11Fを皮膚Skに接触させる。
【0075】
続いて、
図10が示すように、生体組織貼付用フィルム10から支持基材41を剥離する。これにより、生体組織貼付用フィルム10が皮膚Skに転写される。生体組織貼付用フィルム10は、液状体Lqと共に皮膚Skの表面形状に追従していき、皮膚Skと密着する。なお、時間の経過とともに、液状体Lqが皮膚Skに吸収されること等によって、生体組織貼付用フィルム10と皮膚Skの表面との間に位置する液状体Lqの体積は減少する。その結果、生体組織貼付用フィルム10と皮膚Skとの密着性が高まる。
【0076】
本実施形態の生体組織貼付用フィルム10では、水分のバリア性が高められているため、美容用途においては、肌の保湿性が高められる。また、医療用途においては、創傷治癒時の湿潤環境が好適に構築され、また、被着体に薬剤を塗布した場合には、薬剤の良好な浸透性が得られる。
【0077】
なお、生体組織貼付用フィルム10の貼付前における被着体への液状体Lqの塗布は必須ではない。一方で、生体組織貼付用フィルム10を、被着体上の美容クリームや薬剤の塗布領域を保護するために使用してもよい。すなわち、被着体の表面に美容クリームや薬剤を塗布した後、その塗布領域に生体組織貼付用フィルム10を貼り付けることによって、当該塗布領域を生体組織貼付用フィルム10で覆う。これにより、当該塗布領域への水分や汚れの付着を抑えることができるため、被着体の表面付近に美容成分や薬効成分を長時間に渡って留めることができる。
【0078】
[実施例]
上述した生体組織貼付用フィルムおよび転写シートについて、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
【0079】
(実施例1)
ポリDL乳酸(BMG社製)をトルエンに溶解させて、5質量%の濃度のポリ乳酸溶液を作製した。続いて、白色ワセリンをトルエンに溶解させて、10質量%の濃度のワセリン溶液を作製した。ポリ乳酸溶液とワセリン溶液とを、溶液が含む固形分中のポリDL乳酸と白色ワセリンとの質量比が、ポリDL乳酸:白色ワセリン=9:1となるように混合し、耐水層の塗液を得た。この塗液を、グラビアコート法を用いて、成膜用基材である離型性ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製)の上面に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることによって、耐水層を形成した。このとき、乾燥後の塗膜である耐水層の平均質量が1.0g/m
2になるように、塗膜を形成した。
【0080】
これにより、耐水層からなる実施例1の生体組織貼付用フィルムが形成された。実施例1の生体組織貼付用フィルムは、第1形態の生体組織貼付用フィルムに相当する。すなわち、実施例1の生体組織貼付用フィルムにおいては、第1面と第2面との双方がバリア面である。
【0081】
続いて、成膜用基材上の生体組織貼付用フィルムの上面にポリエステル製の不織布を積層した後、成膜用基材から生体組織貼付用フィルムと不織布との積層体を剥離することにより、実施例1の転写シートを作製した。
【0082】
(実施例2)
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチック社製)をトルエンに溶解させて、5質量%の濃度の溶液である耐水層の塗液を作製した。成膜用基材として、ポリビニルアルコールが塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルムを準備し、上記塗液を、成膜用基材の上面にグラビアコート法を用いて塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることによって、耐水層を形成した。このとき、乾燥後の塗膜である耐水層の平均質量が1.0g/m
2になるように、塗膜を形成した。
【0083】
これにより、耐水層からなる実施例2の生体組織貼付用フィルムが形成された。実施例2の生体組織貼付用フィルムは、第1形態の生体組織貼付用フィルムに相当する。すなわち、実施例2の生体組織貼付用フィルムにおいては、第1面と第2面との双方がバリア面である。
【0084】
続いて、成膜用基材上の生体組織貼付用フィルムの上面にポリエステル製の不織布を積層した後、成膜用基材から生体組織貼付用フィルムと不織布との積層体を剥離することにより、実施例2の転写シートを作製した。
【0085】
(実施例3)
耐水層を、乾燥後の平均質量が5.0g/m
2になるように形成したこと以外は、実施例2と同様の材料および工程によって、実施例3の生体組織貼付用フィルムおよび転写シートを形成した。
【0086】
(実施例4)
耐水層を、乾燥後の平均質量が0.5g/m
2になるように形成したこと以外は、実施例2と同様の材料および工程によって、実施例4の生体組織貼付用フィルムおよび転写シートを形成した。
【0087】
(実施例5)
酢酸プロピオン酸セルロース(イーストマンケミカル社製)を酢酸ブチルに溶解させ、5質量%の濃度の溶液である樹脂層の塗液を作製した。この塗液を、グラビアコート法を用いて、成膜用基材である離型性ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製)の上面に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることによって、樹脂層を形成した。このとき、乾燥後の塗膜である樹脂層の平均質量が1.0g/m
2になるように、塗膜を形成した。
【0088】
続いて、ポリエチレンワックス(ビックケミー社製)をトルエンに分散させることにより、耐水層の塗液を作製した。この塗液を、成膜用基材上の樹脂層の上面に、グラビアコート法を用いて塗布して塗膜を形成し、160℃で1分間、塗膜を加熱乾燥させることにより、耐水層を形成した。このとき、乾燥後の塗膜である耐水層の平均質量が1.0g/m
2になるように、塗膜を形成した。
【0089】
これにより、耐水層と樹脂層とを備える実施例5の生体組織貼付用フィルムが形成された。実施例5の生体組織貼付用フィルムは、第2形態の生体組織貼付用フィルムに相当する。
【0090】
続いて、成膜用基材上の生体組織貼付用フィルムの上面にセルロース製の不織布を積層した後、成膜用基材から生体組織貼付用フィルムと不織布との積層体を剥離することにより、実施例5の転写シートを作製した。実施例5の転写シートにおいて、支持基材は耐水層と接している。すなわち、実施例5の生体組織貼付用フィルムにおいては、樹脂層が第1面を有し、耐水層が第2面を有する。そして、第2面のみがバリア面である。
【0091】
(実施例6)
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチック社製)をトルエンに溶解させて、5質量%の濃度の溶液である樹脂層の塗液を作製した。成膜用基材として、ポリビニルアルコールが塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルムを準備し、上記塗液を、成膜用基材の上面にグラビアコート法を用いて塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることによって、樹脂層を形成した。このとき、乾燥後の塗膜である樹脂層の平均質量が1.0g/m
2になるように、塗膜を形成した。
【0092】
続いて、シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチック社製)をトルエンに溶解させて、5質量%の濃度の溶液を作製した後、当該溶液に、ポリテトラフルオロエチレン粒子(シャーロック社製、体積平均粒子径:1μm)を、当該溶液中の固形分に占める質量の割合が30%となるように分散させることにより、耐水層の塗液を作製した。この塗液を、成膜用基材上の樹脂層の上面に、グラビアコート法を用いて塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることにより、耐水層を形成した。このとき、乾燥後の塗膜である耐水層の平均質量が1.0g/m
2になるように、塗膜を形成した。
【0093】
これにより、耐水層と樹脂層とを備える実施例6の生体組織貼付用フィルムが形成された。実施例6の生体組織貼付用フィルムは、第3形態の生体組織貼付用フィルムに相当する。
【0094】
続いて、成膜用基材上の生体組織貼付用フィルムの上面にセルロース製の不織布を積層した後、成膜用基材から生体組織貼付用フィルムと不織布との積層体を剥離することにより、実施例6の転写シートを作製した。実施例6の転写シートにおいて、支持基材は耐水層と接している。すなわち、実施例6の生体組織貼付用フィルムにおいては、樹脂層が第1面を有し、耐水層が第2面を有する。そして、第1面と第2面との双方がバリア面である。
【0095】
(実施例7)
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチック社製)をトルエンに溶解させて、5質量%の濃度の溶液である樹脂層の塗液を作製した。成膜用基材として、ポリビニルアルコールが塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルムを準備し、上記塗液を、成膜用基材の上面にグラビアコート法を用いて塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることによって、樹脂層を形成した。このとき、乾燥後の塗膜である樹脂層の平均質量が1.0g/m
2になるように、塗膜を形成した。
【0096】
続いて、ポリメタクリル酸メチル(東亞合成社製)を酢酸エチルに溶解させた溶液に、ナノシリカ分散体(日産化学社製)を、溶液中の固形分に占める質量の割合が30%となるように分散させることにより、耐水層の塗液を作製した。この塗液を、成膜用基材上の樹脂層の上面にグラビアコート法を用いて塗布して塗膜を形成し、塗膜を加熱乾燥させた。このとき、乾燥後の塗膜の平均質量が4.0g/m
2になるように、塗膜を形成した。さらに、凹凸構造を有するニッケルスタンパーで、乾燥させた塗膜に対し熱圧エンボス加工を行い、表面に凹凸構造を有する耐水層を形成した。ニッケルスタンパーにおける凹凸構造の凸部の高さは200nmであり、凸部の配列間隔は200nmである。そして、エタノールで希釈したトリフロオロプロピルメトキシシランを用いて、耐水層の表面の撥水処理を実施し、酢酸処理、水洗処理、熱処理を順に実施した。
【0097】
これにより、耐水層と樹脂層とを備える実施例7の生体組織貼付用フィルムが形成された。実施例7の生体組織貼付用フィルムは、第4形態の生体組織貼付用フィルムに相当する。
【0098】
続いて、成膜用基材上の生体組織貼付用フィルムの上面にセルロース製の不織布を積層した後、成膜用基材から生体組織貼付用フィルムと不織布との積層体を剥離することにより、実施例7の転写シートを作製した。実施例7の転写シートにおいて、支持基材は耐水層と接している。すなわち、実施例7の生体組織貼付用フィルムにおいては、樹脂層が第1面を有し、耐水層が第2面を有する。そして、第1面と第2面との双方がバリア面である。
【0099】
(比較例1)
ポリDL乳酸(BMG社製)をトルエンに溶解させて、5質量%の濃度のポリ乳酸溶液を作製した。この溶液を、グラビアコート法を用いて、成膜用基材である離型性ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製)の上面に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることによって、生体組織貼付用フィルムを形成した。このとき、乾燥後の塗膜である生体組織貼付用フィルムの平均質量が0.8g/m
2になるように、塗膜を形成した。
【0100】
これにより、比較例1の生体組織貼付用フィルムが形成された。比較例1の生体組織貼付用フィルムはバリア面を有していない。
続いて、成膜用基材上の生体組織貼付用フィルムの上面にポリエステル製の不織布を積層した後、成膜用基材から生体組織貼付用フィルムと不織布との積層体を剥離することにより、比較例1の転写シートを作製した。
【0101】
(比較例2)
酢酸プロピオン酸セルロース(イーストマンケミカル社製)を酢酸ブチルに溶解させて、5質量%の濃度の溶液を作製した。この溶液を、グラビアコート法を用いて、成膜用基材である離型性ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製)の上面に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させることによって、生体組織貼付用フィルムを形成した。このとき、乾燥後の塗膜である生体組織貼付用フィルムの平均質量が1.0g/m
2になるように、塗膜を形成した。
【0102】
これにより、比較例2の生体組織貼付用フィルムが形成された。比較例2の生体組織貼付用フィルムはバリア面を有していない。
続いて、成膜用基材上の生体組織貼付用フィルムの上面にポリエステル製の不織布を積層した後、成膜用基材から生体組織貼付用フィルムと不織布との積層体を剥離することにより、比較例2の転写シートを作製した。
【0103】
(比較例3)
生体組織貼付用フィルムを、乾燥後の平均質量が8.0g/m
2になるように形成したこと以外は、比較例2と同様の材料および工程によって、比較例3の生体組織貼付用フィルムおよび転写シートを形成した。
【0104】
(評価方法)
<接触角>
各実施例および各比較例について、以下の方法で、生体組織貼付用フィルムの第2面における純水の接触角を測定した。すなわち、人工皮革(サプラーレ)の表面に化粧水を塗布した後、生体組織貼付用フィルムの第1面が人工皮革の表面に接するように、転写シートを人工皮革に重ね、支持基材のみを剥離して、試験片を作製した。そして、試験片を30分間放置した後に、接触角を測定した。接触角の測定は、23℃、65%RHの環境で、JIS R 3257(1999)の静滴法に準じて行った。液滴には純水を使用し、接触角の測定には、ポータブル接触角計(協和界面科学社製:PCA−1)を用いた。測定では、液滴が試験片上に静置されてから1秒経過した後、10箇所の接触角を1秒おきに順に測定し、その平均値を試験片の接触角とした。
【0105】
<耐水性>
各実施例および各比較例の生体組織貼付用フィルムについて、以下の方法で、耐水性を評価した。すなわち、試験者の人差し指の腹を化粧水で濡らした後、転写シートを、生体組織貼付用フィルムの第1面が人差し指の腹に接するように、人差し指に重ね、支持基材のみを剥離して、30分間放置した。そして、当該人差し指を水道水に10分間曝した後に、人差し指上の生体組織貼付用フィルムを観察した。観察の結果、生体組織貼付用フィルムに部分的な浮きや剥がれがない場合を「〇」、生体組織貼付用フィルムに部分的な浮きや剥がれがある場合を「△」、生体組織貼付用フィルムを貼り付けた部分の3分の1以上の面積にてフィルムの剥がれが生じた場合を「×」として評価した。
【0106】
<閉塞率>
各実施例および各比較例の生体組織貼付用フィルムについて、閉塞率を測定した。閉塞率は、生体組織貼付用フィルムが配置された部分での、ヒトの体温と等しい温度を有する水の蒸散量を、生体組織貼付用フィルムが配置されない場合の蒸散量に対して抑える割合である。閉塞率は、以下の方法によって測定した。
【0107】
1)37°Cに保たれたウォーターバスの温水をタイトボックス内に循環させる。タイトボックスにガラスサンプル瓶を入れ、ガラスサンプル瓶に、ガラスサンプル瓶の開口から鉛直方向に4cmだけ離れた位置まで、37°Cの温水を入れる。
【0108】
2)上記1)におけるガラスサンプル瓶の開口に、直径9mmの穴をあけたプラスチック板を置き、上記穴に、PTFEメンブレンフィルター(メルクミリポア社製、孔径:10μm,直径:25mm,白色無地)を被せて、5分間、放置する。
【0109】
3)ポータブル水分蒸散計(Delfin Technologies社製:VapoMeter)を用い、開口部直径が9mmのフランツセル用のアダプターを取り付けて、上記2)の操作後のプラスチック板の穴の位置での水分蒸散量を、メンブレンフィルター上にて測定する。測定した値を初期値とする。
【0110】
4)上記2)のメンブレンフィルター上に、生体組織貼付用フィルムにおける第1面がメンブレンフィルターに接するように、転写シートを乗せ、指で転写シートを押さえてメンブレンフィルターに転写シートを貼り付ける。そして、生体組織貼付用フィルムから支持基材を剥がし、5分間、放置する。
【0111】
5)上記ポータブル水分蒸散計を用い、上記3)と同様に、上記4)の操作後のプラスチック板の穴の位置での水分蒸散量を、生体組織貼付用フィルム上にて測定する。測定した値をサンプル値とし、閉塞率=(初期値−サンプル値)/初期値×100の計算式によって、閉塞率を算出する。
【0112】
各実施例および各比較例の生体組織貼付用フィルムについて、閉塞率が60%以上である場合を「〇」、閉塞率が30%以上60%未満である場合を「△」、閉塞率が30%未満である場合を「×」として、評価を行った。
【0113】
<密着性>
各実施例および各比較例の生体組織貼付用フィルムについて、以下の方法で、被着体との密着性を評価した。すなわち、試験者の前腕を水で濡らし、生体組織貼付用フィルムの第1面が前腕の表面に接するように、転写シートを前腕に重ね、支持基材のみを剥離した。生体組織貼付用フィルムの貼付部分の端部を指で擦り、剥がれが生じなかった場合を「〇」、剥がれが僅かに生じた場合を「△」、貼付部分の3分の1以上の面積にて剥がれが生じた場合を「×」として、評価を行った。
【0114】
(評価結果)
表1は、各実施例および各比較例について、接触角の測定結果、および、耐水性、閉塞率、密着性の評価結果を示す。
【0115】
【表1】
表1が示すように、密着性の評価において、生体組織貼付用フィルムの平均質量が5.0g/m
2を超える比較例3では、生体組織貼付用フィルムの剥がれが大きく密着性が低い。これに対し、生体組織貼付用フィルムの平均質量が5.0g/m
2以下である実施例1〜7および比較例1,2では、生体組織貼付用フィルムの剥がれが生じないか剥がれが僅かであり、良好な密着性が得られている。したがって、平均質量が5.0g/m
2以下であれば、生体組織の表面形状に対する生体組織貼付用フィルムの追従性が良好に得られることが示唆される。また、比較例3では、密着性が低いことに起因して、耐水性の評価においても、生体組織貼付用フィルムの剥がれが大きかった。
【0116】
そして、バリア面を有する耐水層を備えない比較例1〜3では、閉塞率が30%未満と低いことに加え、耐水性の評価においても、生体組織貼付用フィルムの剥がれが僅かであるサンプルはあるものの、生体組織貼付用フィルムの剥がれが生じないサンプルは得られなかった。一方、バリア面を有する耐水層を備える実施例1〜7では、閉塞率が良好であるとともに、耐水性の評価においても、生体組織貼付用フィルムの剥がれが生じないか剥がれが僅かであった。したがって、実施例1〜7では、水分のバリア性が良好であることが示唆される。なお、接触角が大きいほど、耐水性が高い傾向が認められた。
【0117】
以上、実施形態および実施例にて説明したように、上記生体組織貼付用フィルムおよび転写シートによれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)生体組織貼付用フィルム10の平均質量が0.1g/m
2以上5.0g/m
2以下であるため、生体組織貼付用フィルム10は、生体組織の表面形状に対する追従性を有する。そして、生体組織貼付用フィルム10は、70°以上150°以下の接触角を有するバリア面を備えるため、バリア面への水の吸着に起因して生体組織貼付用フィルム10における水分の透過が進むことが抑えられる。したがって、生体組織貼付用フィルム10における水分のバリア性が高められる。
【0118】
(2)バリア面を有する耐水層が、オレフィン系樹脂を含む構成であれば、上記接触角を有するバリア面が好適に実現されるとともに、耐水層における水蒸気の透過が抑えられるため、生体組織貼付用フィルム10における水分のバリア性がより高められる。また、上記オレフィン系樹脂が、環状構造を含むオレフィン系樹脂であれば、バリア面の接触角を大きくすること、および、耐水層における水蒸気の透過をより抑制することが可能である。したがって、生体組織貼付用フィルム10における水分のバリア性がさらに高められる。
【0119】
(3)バリア面を有する耐水層が、耐水層の内部もしくは表面に撥水性添加物を含む構成であれば、上記接触角を有するバリア面が好適に実現される。撥水性添加物は、添加前において液体状もしくは固体状の材料であって、バリア面の接触角を大きくする効果を奏する。耐水層の内部に撥水性添加物が含まれる形態においては、耐水層の主成分である高分子材料を含む溶液に対し撥水性添加物が溶解または分散されることにより、撥水性添加物が、耐水層に含有される。
【0120】
(4)耐水層が撥水性粒子23を含む形態であれば、撥水性粒子23を含有しない耐水層と比較して、バリア面の接触角を大きくすることが可能である。
(5)生体組織貼付用フィルム10が、バリア面に凹凸構造25を有する形態であれば、凹凸構造25を有さない場合と比較して、バリア面の接触角を大きくすることが可能である。
【0121】
(6)生体組織貼付用フィルム10が、バリア面に凹凸構造27を有するとともに撥水性粒子28を保持する形態であれば、凹凸構造27および撥水性粒子28を有さない耐水層や、凹凸構造27および撥水性粒子28の一方のみを有する耐水層と比較して、バリア面の接触角を大きくすることが可能である。
【0122】
(7)生体組織貼付用フィルム10が、耐水層と樹脂層とを備える形態であれば、耐水層と樹脂層との組成を異ならせることで、第1面11Fと第2面11Rとにおける親水性等の特性を異ならせることができる。そして、耐水層が、バリア面である第2面11Rを有し、樹脂層が、第1面11Fを有する形態であれば、生体組織貼付用フィルム10における被着体に貼り付けられる面と反対側の最外面がバリア面であるため、生体組織貼付用フィルム10に対する外部からの水や汚れの付着が抑えられる。また、被着体に接する樹脂層に保湿成分等の被着体に作用する成分を含有させることで、生体組織貼付用フィルム10の機能を高めることや生体組織貼付用フィルム10に機能を付加することも可能である。
【0123】
(8)転写シート40において、生体組織貼付用フィルム10が支持基材41に支持されているため、生体組織貼付用フィルム10の変形が抑えられるとともに、生体組織貼付用フィルム10が取り扱いやすくなる。