特許第6962358号(P6962358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

特許6962358繊維強化プラスチック成形体用シートおよびその成形方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962358
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック成形体用シートおよびその成形方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20211025BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08J5/04CER
   C08J5/04CEZ
   C08L1/02
   C08L101/00
   C08K5/20
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-217496(P2019-217496)
(22)【出願日】2019年11月29日
(62)【分割の表示】特願2015-18899(P2015-18899)の分割
【原出願日】2015年2月2日
(65)【公開番号】特開2020-37710(P2020-37710A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-19150(P2014-19150)
(32)【優先日】2014年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-235095(P2014-235095)
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萬道 律雄
(72)【発明者】
【氏名】秋元 真也
(72)【発明者】
【氏名】砂川 寛一
(72)【発明者】
【氏名】野一色 泰友
(72)【発明者】
【氏名】本多 さくら
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0193116(US,A1)
【文献】 特開2011−115403(JP,A)
【文献】 特開2011−183670(JP,A)
【文献】 特表2009−500537(JP,A)
【文献】 特開2007−138339(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0008049(US,A1)
【文献】 特開2006−022439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/04− 5/10
5/24
C08K3/00− 13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維とマトリックス樹脂繊維を含有する繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱圧着成形する繊維強化プラスチック成形体の製造方法において、
前記パルプ繊維の含有量が質量比で全体の51%以上であり、
前記マトリックス樹脂繊維が、融点200℃以下の熱可塑性樹脂の繊維であり、
前記パルプ繊維と前記マトリックス樹脂繊維の比が51:49〜90:10であり、
前記繊維強化プラスチック成形体用シートは
水に、ポリアクリルアミド系のアニオン凝集剤を添加した後、マトリックス樹脂繊維(但し、マトリックス樹脂繊維がパルプ状である場合を除く)を添加、分散したマトリックス樹脂繊維分散液と、
パルプ繊維のろ水度がJIS P 8121−2:2 パルプ −ろ水度試験方法− 第2部:カナダ標準ろ水度法で規定されるカナディアンスタンダードフリーネスで500ml以下に調整したパルプ繊維分散液とを得、
両分散液を混合した後、湿式のシート形成法により製造されたものであり、
加熱圧縮成形後の密度が1.2〜1.5g/cmとなるように前記繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱圧縮成形すること
を特徴とする繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック成形体用シートおよびその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む不織布を加熱加圧処理し、成形した繊維強化プラスチック成形体は、既にスポーツ、レジャー用品、航空機用材料など様々な分野で用いられている。
不織布を用いた繊維強化プラスチック成形体の場合、不織布にマトリックスとなる樹脂を含浸させ、加熱加圧処理することが一般的である。樹脂として熱可塑性樹脂を使用した場合、熱硬化性樹脂を使用する場合に比べ、加熱加圧処理前の繊維強化プラスチック成形体用シートの保存管理が容易であり、長期保管ができるという利点を有する。また、成形加工が容易であり、加熱加圧処理を行うことにより成形加工品を成形することができるという利点も有している。
【0003】
強化繊維としては、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等が好んで用いられている。このような強化繊維は繊維強化プラスチック成形体の強度を高める働きをする。しかし、成形加工品を廃棄する場合を考慮すると、これらの強化繊維を使用した成形加工品は埋め立てた場合の生分解性、焼却処理時の焼却炉の負荷が増大する。対策としてパルプを強化繊維として使用することが提案されている。パルプと熱可塑性樹脂の併用については、パルプモールド法(特許文献1)、抄紙後のプレス法(特許文献2)、射出成形法(特許文献3)が提案されている。これらは良好な成形性は得られているものの、曲げ強度、曲げ弾性率については、一般的なプラスチック成形加工品と大差ないため、さらなる強度アップが求められており、満足なものが得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−322699号公報
【特許文献2】特開平6−346399号公報
【特許文献3】特開平6−345944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来技術で得られるパルプと熱可塑性樹脂からなる成形体は、廃棄後の生分解性や焼却時の焼却炉負荷軽減は達成したが、より機械的強度が高い繊維強化プラスチック成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、パルプと特定の融点を有する熱可塑性樹脂繊維を特定の比率で混抄してシート状とし、特定の条件にてプレス加工することによって、一般的なプラスチック成形加工品を遥かに超えた機械的強度(曲げ強度、曲げ弾性率)を有する成形加工品が得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0007】
[1]
パルプ繊維と、熱可塑性樹脂繊維を含むマトリックス樹脂繊維を含有する繊維強化プラスチック成形体用シートであって、パルプ繊維の含有量が質量比で全体の51%以上であり、且つ熱可塑性樹脂繊維の融点が200℃以下であって、前記繊維強化プラスチック成形体用シートは、加熱圧縮成形後の密度が1.0〜1.5g/cmとなる繊維強化プラスチック成形体を形成し得ることを特徴とする繊維強化プラスチック成形体用シート。
[2]
前記パルプ繊維の含有量が質量比で全体の60%以上としたことを特徴とする、前記[1]に記載の繊維強化プラスチック成形体用シート。
[3]
前記パルプ繊維のろ水度がJIS P 8121−2:2 パルプ −ろ水度試験方法− 第2部:カナダ標準ろ水度法で規定されるカナディアンスタンダードフリーネスで800ml以下としたことを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の繊維強化プラスチック成形体用シート。
[4]
前記、熱可塑性樹脂がポリ乳酸、エチレンビニルアルコール共重合体、非晶質PET、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンおよびポリエチレンから選ばれる一種の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用シート。
[5]
前記、熱可塑性樹脂が、融点が130℃以上の熱可塑性樹脂である、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用シート。
[6]
前記、[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱圧縮成形する成形方法であって、加熱圧縮成形温度が前記、熱可塑性樹脂の融点の±20℃以内である成形方法。
[7]
前記、[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱圧縮成形する成形方法であって、加熱圧縮成形温度が180℃以下である成形方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートから成形される繊維強化プラスチック成形体は、高い曲げ強度、曲げ弾性率を有する成形加工品を得ることができる。また、廃棄後の生分解性や焼却時の焼却炉負荷軽減できるため、各種産業において好ましく用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
本発明は、強化繊維としてパルプを用いるものである。使用するパルプについてはその製法および種類等に特に限定はない。例えば、広葉樹及び/または針葉樹のKPのような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMP及びCTMP等の機械パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、ならびにケナフ、ジュート、バガス、竹、藁、麻等の非木材パルプであってもよい。また、ECFパルプ、TCFパルプ等の塩素フリーパルプを用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲においてガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機質繊維も併用することができる。
【0011】
本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートはパルプ繊維の含有量が質量比で全体の51%以上とするものである。好ましくは、全体の60%以上、より好ましくは、全体の70%以上である。パルプ繊維の含有量が、51%未満の場合は、満足な曲げ強度、曲げ弾性率が得られないため好ましくない。
【0012】
本発明で用いられるパルプ繊維のろ水度については、特に限定するものではないが、JIS P 8121−2:2 パルプ −ろ水度試験方法− 第2部:カナダ標準ろ水度法で規定されるカナディアンスタンダードフリーネスで800ml以下とすることが好ましい。ろ水度が800mlを以下であれば、加熱成形時に熱可塑性樹脂を保持することが出来、溶融した樹脂が流出を防止することが出来る。より好ましいパルプ繊維のろ水度としてはカナディアンスタンダードフリーネスで500ml以下である。
【0013】
本発明においてマトリックスとなる樹脂は、融点が200℃以下の熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂の融点が200℃を越えると、併用するパルプ繊維が劣化する虞がある。熱可塑性樹脂の融点の下限値は特に限定するものではないが、130℃以上であると、得られる繊維強化プラスチック成形体の曲げ弾性率が優れるため好ましい。熱可塑性樹脂のより好ましい融点としては、135℃以上であり、さらに好ましくは140℃以上である。また、195℃以下が好ましく、190℃以下であることがより好ましいる。
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリスチレン、PETなどのポリエステル、アクリロニトリルースチレン共重合体、ABS、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン12、ポリアセタール、ポリカーボネート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等が挙げられ、なかでも、ポリ乳酸、エチレン−ビニルアルコール共重合体、非晶質PET(低融点PET)、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、およびポリエチレンが好ましく、特に、エチレンビニルアルコール共重合体、非晶質PET(低融点PET)、および ポリ乳酸が、融点(150〜180℃)の面と溶融した場合のパルプ繊維との濡れ性に優れており、成形加工品の強度が得られやすいため好ましい。
【0014】
熱可塑性樹脂は、繊維状物であれば特に限定しないが、熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、加重平均繊維長が2〜50mmであることが好ましく、5〜40mmであることがより好ましく、10〜25mmであることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用シートからの熱可塑性樹脂繊維の脱落を抑制することができ、ハンドリング性に優れた繊維強化プラスチック成形体用シートを得ることができる。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、熱可塑性樹脂繊維とパルプ繊維との分散性を良好にすることができるため、強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を形成することが可能となる。これにより、加熱加圧成形後の繊維強化プラスチック成形体は良好な強度と外観を有する。
本発明では、熱可塑性樹脂繊維は、一定の長さにカットされたチョップドストランドであることが好ましい。このような形態とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用シート中で、熱可塑性樹脂繊維を均一に分布させることができる。
【0015】
本発明では、熱可塑性樹脂繊維とパルプ繊維を含む繊維強化プラスチック成形体用シートとすることで、このシートは加熱加圧成形前には、通常の紙と同等に扱うことができ、また、巻き取りの形態で保管・輸送することが可能であり、ハンドリング性に優れるという特徴を有する。
【0016】
繊維強化プラスチック成形体用シートを製造する方法は特に限定しないが、熱可塑性樹脂繊維とパルプ繊維を混合したものを湿式、あるいは乾式のシート形成方法を採用することができる。
湿式法を用いて繊維強化プラスチック成形体用シートを製造する際には、熱可塑性樹脂繊維、パルプ繊維、必要に応じて、バインダー、填料、製紙薬品等を溶媒(通常は水)中に分散させ、その後溶媒を除去してウェブを形成する方法(湿式不織布法)が採用される。
【0017】
湿式法においては、必要に応じて使用されるバインダーとしては、例えば各種デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子が挙げられる。
填料としては、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト及びスメクタイト等の鉱物顔料、並びにポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニリデン系樹脂等の有機顔料が挙げられる。
【0018】
紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド等が挙げられる。さらに湿潤紙力増強剤も併用可能であり、例えばポリアミド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素―ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等が挙げられる。
【0019】
なお、本発明の効果を損なわない範囲において、各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤等の各種抄紙用内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することができる。さらに染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤も必要に応じて適宜添加することができる。
【0020】
抄造方法については、特に限定はなく、例えばpHが4.5付近で行われる酸性抄紙法、炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pH6の弱酸性からpH9の弱アルカリ性で行われる中性抄紙法等の全ての抄紙方法を適用することができ、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー型抄紙機、単網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を適宜用いることができ、特に円網抄紙機、単網抄紙機等の多層抄紙機を用いることにより、坪量の大きな繊維強化プラスチック成形体用シートが得られるほか、各層の処方を変更することにより深さ方法で異なった機能を有する成形体用シートを得ることもできる。
【0021】
一方、乾式法を用いて繊維強化プラスチック成形体用シートを製造する際には、例えば、カーディング法やエアレイド法などの乾式でウェブ形成を行う乾式不織布の製造工程を採用することが出来る。
カーディング法は、繊維塊を機械的に梳りながら均一なシート状のウェブを形成させる方法であり、繊維長のやや長い短繊維を用いる場合に好適な方法である。また、エアレイド法は、空気中で解繊した熱可塑性樹脂繊維、パルプ繊維および必要に応じて熱融着性樹脂粒子を気流中で均一に混合した原料繊維などを含む気流を、下側にサクションボックスを備えたメッシュ状無端ベルト上に吐出してエアレイドウェブを形成するようなウェブ形成工程を経る乾式不織布の製造方法である。
乾式法で形成されたウェブは、以下に示すような繊維結合工程によってシート化される。繊維結合工程としては、例えば、ニードルパンチ法のようにウェブ面に垂直方向に針を通すことにより熱可塑性樹脂繊維やパルプ繊維を互いに交絡させてシートを形成させる方法があり、限定されるものではないが、カーディング法によるウェブ形成方法と組み合わせて好ましく用いられる。また、加熱により乾式法ウェブに配合された熱融着性接着剤を融着させて原料繊維を結合する工程(サーマルボンド法)、得られた乾式法ウェブに接着剤を付与して原料繊維を結合する工程(ケミカルボンド法)、あるいはサーマルボンド法とケミカルボンド法を組み合わせた方法(マルチボンド法)を採用することができる。
乾式法において、ウェブを形成する繊維を結合してシートを形成するために、サーマルボンド法やマルチボンド法が採用される場合には、粒子状あるいは繊維状の熱融着性接着剤が使用される。粒子状の熱融着性接着剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリアミド、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの熱融着性の樹脂粒子が用いられ、原料繊維と混合あるいは形成された繊維ウェブ上に付与した後、加熱処理することにより原料繊維を結合させる。繊維状の熱融着性接着剤としては、低融点ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、などのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、低融点ポリアミド、アクリル樹脂系、酢酸ビニル系(PVAc)の樹脂類からなるものを採用することが出来る。
また、熱融着性合成繊維としては、融点の異なる2種類の樹脂を複合化させて得られ、繊維の表面のみが溶融する芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維も好ましく用いることが出来る。芯鞘型構造の熱融着性複合合成繊維は、融点の高い樹脂からなる芯の外周上に、融点の低い樹脂からなる鞘が形成された構造を有し、具体的には、融点が異なる2種の樹脂を組み合わせた形態(PET/PET複合繊維、PE/PE複合繊維、PP/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、PE/PP複合繊維、PVAc/PET複合繊維、ポリブチレンサクシネート/ポリ乳酸複合繊維等)が挙げられる。
また、ウェブを形成する繊維の結合にケミカルボンド法が用いられる場合、繊維同士を固着させるために使用されるバインダーは、必要に応じて適宜選択可能であり、たとえば、デンプン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸ソーダ等の溶液タイプのバインダーや、ポリアクリル酸エステル、アクリル・スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリルニトリル・ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重合体、尿素−メラミン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス等のエマルジョンタイプのバインダー等が使用可能である。本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートに使用されるバインダーは、繊維、粉体、顆粒状、溶液あるいはエマルジョンなど、種々の形態を用いることが出来、上記例示のうち一種に限定されず、適宜、二種以上を併用することも出来る。
【0022】
本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートは、目的とする成形品の形状や成形法に合わせて任意の形状に加工することができる。繊維強化プラスチック成形体用シートは、1枚単独、或いは所望の厚さとなるように積層して熱プレスで加熱加圧成形したり、あらかじめ赤外線ヒーター等で予熱し、金型によって加熱加圧成形することができる。このように、一般的な繊維強化プラスチック成形体用シートの加熱加圧成形方法を用いて加工することにより、強度に優れた繊維強化プラスチック成形体とすることができる。
【0023】
繊維強化プラスチック成形体用シートから繊維強化プラスチック成形体を成形する際の成形温度については特に限定するものではないが、例えば熱可塑性樹脂繊維の融点の±20℃の範囲内で行うことが好ましい。一方、パルプの熱分解(ヘミセルロースの分解)を考慮すると成形温度は180℃以下が好ましい。
【0024】
繊維強化プラスチック成形体を成形する際の圧力としては、5〜25MPaが好ましい。また、所望の保持温度に到達するまでの昇温速度は3〜30℃/分が好ましく、所望の熱プレス温度での保持時間としては1〜30分、その後、成形体を取り出す温度(200℃以下)までは圧力を維持しながら、3〜20℃/分の冷却速度とするのが好ましい。更に、生産効率はやや落ちるものの、熱プレスの保持温度からマトリックス樹脂のガラス転移温度までは空冷でゆっくりと0.1〜3℃/分で冷却することも、強度向上の観点からは好ましい。また、急速加熱、急速冷却(ヒートアンドクール)成形を用いて熱プレス成形することも可能であり、その場合の昇温、冷却速度はそれぞれ30〜500℃/分である。
【0025】
加熱圧縮成形後の、本発明の繊維強化プラスチック成形体の密度としては、1.0〜1.5g/cmの範囲であり、好ましくは1.1〜1.5g/cmの範囲であり、さらに好ましくは1.2〜1.5g/cmの範囲である。加熱圧縮成形後の、本発明の繊維強化プラスチック成形体の密度が小さいと、充分な成形体の曲げ強度や曲げ弾性率が低くなり、本発明に規定する範囲の密度とすることにより、充分な曲げ強度、曲げ弾性率の成形体を得ることが出来る。
また、繊維強化プラスチック成形体の曲げ強度は、100MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがさらに好ましい。
【0026】
繊維強化プラスチック成形体の厚みは、特に限定されないが、0.05〜50mm程度である。本発明の繊維強化プラスチック成形体は、上記のような構成により、所望の強度比を有し得る。
【実施例】
【0027】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0028】
<実施例1>
(繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(A)の調製)
5kgの水中にポリアクリルアミド系のアニオン凝集剤(商品名:スミフロックFA−40、住友化学社製)の0.03%液を100g添加した後、ポリ乳酸繊維(商品名:PL01、繊維太さ約40μm、繊維長:3mm、ユニチカ社製)を25g添加し、撹拌して分散させて、0.5%のポリ乳酸繊維分散液を得た。さらにNBKP(ろ水度:480ml)の0.5%分散液5.2kgを投入して混合撹拌して、ポリ乳酸:パルプ(49:51)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(A)を得た。
【0029】
(繊維強化プラスチック成形体用シートスラリーのシート化)
手漉き機を用いて、上記繊維強化プラスチック成形体シートスラリーの調製で得られたスラリーを手漉きして、110℃のシリンダードライヤーで乾燥させて、坪量150g/mの繊維強化プラスチック成形体用シート(A)を得た。
【0030】
(繊維強化プラスチック成形体の成形加工)
30tプレス機(東洋精機工業社製)を用いて、上記繊維強化プラスチック成形体用シートスラリーのシート化で得られたシートを9枚積層して、常温のホットプレスに挿入して1MPaの加圧下で170℃まで昇温した後10MPaまで加圧した。この状態で20分間保持した後、10分かけて30℃まで冷却して厚み1000μm、密度1.35g/cmの繊維強化プラスチック成形体(A)を得た。
【0031】
<実施例2>
実施例1の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリーの調製において、0.5%のポリ乳酸繊維分散液の使用量を3kgとし、0.5%NBKPの分散液の使用量を7kgとしてポリ乳酸:パルプ(30:70)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(B)を調製した。さらに実施例1の繊維強化プラスチック成形体の成形加工において、170℃での保持圧力を20MPaとした以外は実施例1と同様にして、厚み1000μm、密度1.35g/cmの繊維強化プラスチック成形体(B)を得た。
【0032】
<実施例3>
実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリーの調製において、0.5%のポリ乳酸繊維分散液の使用量を2kgとし、0.5%NBKPの分散液の使用量を8kgとしてポリ乳酸:パルプ(20:80)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(C)を調製した以外は実施例2と同様にして、厚み1015μm、密度1.33g/cmの繊維強化プラスチック成形体(C)を得た。
【0033】
<実施例4>
実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリーの調製において、0.5%のポリ乳酸繊維分散液の使用量を1kgとし、0.5%NBKPの分散液の使用量を9kgとしてポリ乳酸:パルプ(10:90)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(D)を調製した以外は実施例2と同様にして、厚み1098μm、密度1.23g/cmの繊維強化プラスチック成形体(D)を得た。
【0034】
<比較例1>
実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリーの調製において、0.5%のポリ乳酸繊維分散液を使用せず、NBKP分散液のみを用いた繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(E)を調整した以外は実施例2と同様にして、厚み1107μm、密度1.22g/cmの繊維強化プラスチック成形体(E)を得た。
【0035】
<比較例2>
実施例1の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリーの調製において、0.5%のポリ乳酸繊維分散液の使用量を9kgとし、0.5%NBKPの分散液の使用量を1kgとしてポリ乳酸:パルプ(90:10)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(F)を調製した以外は実施例1と同様にして、厚み1063μm、密度1.27g/cmの繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0036】
<実施例5>
(繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(G)の調製)
3kgの水中にポリアクリルアミド系のアニオン凝集剤(商品名:スミフロックFA−40、住友化学社製)の0.03%液を60g添加した後、ポリ乳酸繊維(商品名:PL−01、融点170℃、繊維太さ15μm、繊維長:5mm、ユニチカ社製)を15g添加し、撹拌して分散させて、0.5%のポリ乳酸繊維分散液を得た。さらにNBKP(ろ水度:480ml)の0.5%分散液7kgを投入して混合撹拌して、ポリ乳酸:パルプ(30:70)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(G)を得た。
実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(A)に代えて繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(G)を調製した以外は実施例2と同様にして、厚み1015μm、密度1.33g/cmの繊維強化プラスチック成形体(G)を得た。
【0037】
<実施例6>
(繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(H)の調製)
3kgの水中にポリアクリルアミド系のアニオン凝集剤(商品名:スミフロックFA−40、住友化学社製)の0.03%液を60g添加した後エチレンビニルアルコール共重合体繊維(商品名:S030、融点170℃、繊維太さ9μm、繊維長:5mm、クラレ社製)を15g添加し、撹拌して分散させて、0.5%のエチレンビニルアルコール共重合体繊維分散液を得た。さらにNBKP(ろ水度:480ml)の0.5%分散液7kgを投入して混合撹拌して、エチレンビニルアルコール共重合体繊維:パルプ(30:70)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(H)を得た。
実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(A)に代えて繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(H)を調製した以外は実施例2と同様にして、厚み1015μm、密度1.33g/cmの繊維強化プラスチック成形体(H)を得た。
【0038】
<実施例7>
(繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(I)の調製)
3kgの水中にポリアクリルアミド系のアニオン凝集剤(商品名:スミフロックFA−40、住友化学社製)の0.03%液を60g添加した後、低融点PET繊維(商品名:N701Y、融点130℃、繊維太さ23μm、繊維長:5mm、クラレ社製)を15g添加し、撹拌して分散させて、0.5%の低融点PET繊維分散液を得た。さらにNBKP(ろ水度:480ml)の0.5%分散液7kgを投入して混合撹拌して、低融点PET繊維:パルプ(30:70)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(I)を得た。
実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(A)に代えて繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(I)を調製した以外は実施例2と同様にして、厚み1015μm、密度1.33g/cmの繊維強化プラスチック成形体(I)を得た。
【0039】
<実施例8>
(繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(J)の調製)
3kgの水中にポリアクリルアミド系のアニオン凝集剤(商品名:スミフロックFA−40、住友化学社製)の0.03%液を60g添加した後、ポリプロピレン繊維(商品名:PZ、融点160℃、繊維太さ15μm、繊維長:10mm、ダイワボウポリテック社製)を15g添加し、撹拌して分散させて、0.5%のポリプロピレン繊維分散液を得た。さらにNBKP(ろ水度:480ml)の0.5%分散液7kgを投入して混合撹拌して、ポリプロピレン繊維:パルプ(30:70)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(J)を得た。
実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(A)に代えて繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(J)を調製した以外は実施例2と同様にして、厚み1015μm、密度1.33g/cmの繊維強化プラスチック成形体(J)を得た。
【0040】
<実施例9>
(繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(K)の調製)
3kgの水中にポリアクリルアミド系のアニオン凝集剤(商品名:スミフロックFA−40、住友化学社製)の0.03%液を60g添加した後、酸変性ポリプロピレン繊維(商品名:PZ−AD、融点160℃、繊維太さ15μm、繊維長:5mm、ダイワボウポリテック社製)を15g添加し、撹拌して分散させて、0.5%の酸変性ポリプロピレン繊維分散液を得た。さらにNBKP(ろ水度:480ml)の0.5%分散液7kgを投入して混合撹拌して、酸変性ポリプロピレン繊維:パルプ(30:70)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(K)を得た。
実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(A)に代えて繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(K)を調製した以外は実施例2と同様にして、厚み1015μm、密度1.33g/cmの繊維強化プラスチック成形体(K)を得た。
【0041】
<実施例10>
(繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(L)の調製)
3kgの水中にポリアクリルアミド系のアニオン凝集剤(商品名:スミフロックFA−40、住友化学社製)の0.03%液を60g添加した後、ポリエチレン繊維(商品名:EST−8、融点130℃、繊維太さ20μm、繊維長:0.9mm、三井化学社製)を15g添加し、撹拌して分散させて、0.5%のポリエチレン繊維分散液を得た。さらにNBKP(ろ水度:480ml)の0.5%分散液7kgを投入して混合撹拌して、ポリエチレン繊維:パルプ(30:70)の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(L)を得た。
実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(A)に代えて繊維強化プラスチック成形体用シートスラリー(L)を調製した以外は実施例2と同様にして、厚み1015μm、密度1.33g/cmの繊維強化プラスチック成形体(L)を得た。
【0042】
<実施例11>
(繊維強化プラスチック成形体用シート(M)の作製)
走行する無端のメッシュ状コンベア上に坪量14g/mのティシュを繰り出し、その上に、パルプ(NBKP)とポリ乳酸繊維(商品名:PL01、融点170℃、繊維太さ15μm、繊維長:5mm、ユニチカ社製)とPET/PET芯/鞘型複合繊維(商品名:テトロン、繊維太さ15μm、繊維長:5mm、帝人ファイバー社製)を7:2.5:0.5の質量比で配合し、空気中で均一に混合して調製した原料繊維を、エアレイド方式のウェブフォーミング機により空気流とともに落下堆積させてウェブを形成した。
次いで、形成されたウェブ上にティッシュを繰り出し、温度140℃のスルーエアードライヤーを通過させ、坪量150g/mの乾式不織布シートを作製した後、表裏面のティッシュを剥ぎ取り、繊維強化プラスチック成形体用シート(M)とした。実施例2の繊維強化プラスチック成形体用シート(B)に代えて繊維強化プラスチック成形体用シート(M)を使用した以外は実施例2と同様にして、厚み1000μm、密度1.35g/cmの繊維強化プラスチック成形体(M)を得た。
【0043】
<実施例12>
実施例11の繊維強化プラスチック成形体用シートの作製において、パルプ(NBKP)とポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート芯鞘繊維(商品名:NBF(KK)PL、融点100℃、繊維太さ18μm、繊維長:5mm、ダイワボウポリテック社製)を7:3の質量比で配合し、空気中で均一に混合して調製した原料繊維を用いて繊維強化プラスチック成形体用シート(N)を作製した以外は、実施例11と同様にして、厚み1015μm、密度1.33g/cmの繊維強化プラスチック成形体(N)を得た。
【0044】
<実施例13>
実施例11の繊維強化プラスチック成形体用シートの作製において、パルプ(NBKP)とエチレンビニルアルコール共重合体繊維(商品名:S030、融点170℃繊維太さ約9μm、繊維長:5mm、クラレ社製)、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート芯鞘繊維(NBF(KK)PL、融点100℃繊維太さ約18μm、繊維長:5mm、ダイワボウポリテック社製)を7:2:1の質量比で配合し、空気中で均一に混合して調製した原料繊維を用いて繊維強化プラスチック成形体用シート(O)を作製した以外は実施例11と同様にして、厚み1023μm、密度1.32g/cmの繊維強化プラスチック成形体(O)を得た。
【0045】
<実施例14>
実施例11の繊維強化プラスチック成形体用シートの作製において、パルプ(NBKP)とPE/PP芯/鞘型複合繊維(商品名:ETC、融点130℃、繊維太さ13μm、繊維長5mm、チッソ株式会社製)を6:4の質量比で配合し、空気中で均一に混合して調製した原料繊維を用いて繊維強化プラスチック成形体用シート(P)を作製した以外は実施例10と同様にして、厚み1174μm、密度1.15g/cmの繊維強化プラスチック成形体(P)を得た。
【0046】
(評価)
<曲げ強度、曲げ弾性率の測定>
得られた繊維強化プラスチック成形体を、JIS K 7074に準じた曲げ試験を行った結果を表1、表2および表3に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
表1からわかるように、実施例1〜4は、曲げ強度が100MPaを超え、また曲げ弾性率が10GPaを超えており、十分な強度を示していることがわかる。一方、比較例1及び2では、曲げ強度が100MPaまで届かず、また曲げ弾性率についても10GPaを超えなかった。
また、表2のうち、熱可塑性樹脂繊維が、特に好ましいポリ乳酸繊維、エチレンビニルアルコール共重合体、あるいは低融点PET繊維である、実施例5〜7は、曲げ強度、曲げ弾性率ともに充分な強度を示している。また、酸変性PPは、強度がやや低いものの、曲げ強度が100MPaを超え、また曲げ弾性率が10GPaを超えており、十分な強度を示している。PPは、酸変性PPに比べ、強度が低くなった。融点がさらに低く、パルプ繊維に対する濡れ性が低いポリエチレン繊維では、さらに強度が低くなった。
【0051】
表3は、乾式法によって作製した繊維強化プラスチック成形体用シートを用いた、繊維強化プラスチック成形体の実施例で、融点が低く、パルプ繊維に対する濡れ性が低いポリエチレン繊維では強度がやや低いものの、それ以外の実施例は、曲げ強度が100MPaを超え、また曲げ弾性率が10GPaを超えており、十分な強度を示した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、強度が十分に高められた繊維強化プラスチック成形体を成形し得る繊維強化プラスチック成形体用シートを得ることができる。このため、本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートから成形される繊維強化プラスチック成形体は、機械的強度が要求される構造部品等に好ましく用いられ、廃棄時にも環境負荷を低減させた産業上の利用可能性が高い。