(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号生成部は、出力電圧が0の基準点において、前記アームの上側及び下側の各スイッチング素子のうち、オンの状態にあった方をオフに切り替え、オフの状態にあった方をオンに切り替える、
請求項1に記載のモータの制御装置。
前記信号生成部は、前記第3通電周期の前が前記第2通電周期である場合、前記第2通電周期においてオンの状態にあった前記アームの下側のスイッチング素子の出力電圧を、前記第3通電周期において連続的に低下させて、前記基準点に至るとオフに切り替え、さらに前記第2通電周期においてオフの状態にあった前記アームの上側のスイッチング素子をオンに切り替えて、当該スイッチング素子の出力電圧を前記基準点から連続的に上昇させる、
請求項2に記載のモータの制御装置。
前記信号生成部は、前記第3通電周期の前が前記第1通電周期である場合、前記第1通電周期においてオンの状態にあった前記アームの上側のスイッチング素子の出力電圧を、前記第3通電周期において連続的に低下させて前記基準点に至るとオフに切り替え、さらに前記第1通電周期においてオフの状態にあった前記アームの下側のスイッチング素子をオンに切り替えて、当該スイッチング素子の出力電圧を前記基準点から連続的に上昇させる、
請求項2〜4のいずれか一項に記載のモータの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータの制御装置及び記憶媒体について、説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0011】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向一方向と平行な方向とする。X軸方向は、
図1に示すバスバーアッシー60の長さ方向と平行な方向、すなわち、
図1の左右方向とする。Y軸方向は、バスバーアッシー60の幅方向と平行な方向、すなわち、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0012】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「フロント側」と呼び、Z軸方向の負の側(−Z側)を「リア側」と呼ぶ。なお、リア側及びフロント側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と呼ぶ。
【0013】
なお、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0014】
<電動オイルポンプ>
図1は、本実施形態のモータの制御装置を備えた、電動オイルポンプ10の構成を示す。
図1に示すように、電動オイルポンプ10は、シャフト41と、モータ部20と、ポンプ部30と、ハウジング12と、モータ部20の駆動装置100と、を備える。シャフト41は、軸方向に延びる中心軸Jを中心として回転する。モータ部20とポンプ部30とは、軸方向に沿って並んで設けられる。
【0015】
<モータ>
モータ部20は、カバー13と、ロータ40と、ステータ50と、ベアリング42と、バスバーアッシー60と、フロント側Oリング81と、リア側Oリング82と、を備える。
【0016】
ロータ40は、シャフト41の外周面に固定される。ステータ50は、ロータ40の径方向外側に位置する。すなわち、モータ部20は、インナーロータ型のモータである。ベアリング42は、シャフト41を回転可能に支持する。ベアリング42は、バスバーアッシー60に保持される。バスバーアッシー60は、外部電源に接続され、駆動装置100を介してステータ50に電源を供給する。
【0017】
<カバー>
カバー13の材質は、例えば、金属である。カバー13は、ハウジング12のリア側(−Z側)に固定され、バスバーアッシー60のリア側(−Z側)の少なくとも一部を覆う。カバー13は、筒状部22aと、蓋部22bと、フランジ部24と、を備える。筒状部22aは、フロント側(+Z側)に開口する。蓋部22bは、筒状部22aのリア側の端部に接続される。本実施形態において蓋部22bは、平板状の形状をしている。フランジ部24は、筒状部22aのフロント側の端部から径方向外側に拡がる。ハウジング12とカバー13とは、ハウジング12のフランジ部15とカバー13のフランジ部24とが重ね合わされて接合される。
【0018】
<ロータ>
ロータ40は、ロータコア43と、ロータマグネット44と、を備える。ロータコア43は、シャフト41を軸周り(θ方向)に囲んで、シャフト41に固定される。ロータマグネット44は、ロータコア43の軸周りに沿った外側面に固定される。ロータコア43及びロータマグネット44は、シャフト41と一体となって回転する。ロータマグネット44としては、永久磁石を用いる。本実施形態では、特に、吸引力と反発力が強いレアアースマグネット、例えばネオジムマグネット等を用いる。
【0019】
<ステータ>
ステータ50は、ロータ40を軸周り(θ方向)に囲み、ロータ40を中心軸J周りに回転させる。ステータ50は、コアバック部51と、ティース部52と、コイル53と、ボビン(インシュレータ)54と、を備える。
【0020】
コアバック部51の形状は、シャフト41と同心の円筒状である。ティース部52は、コアバック部51の内側面からシャフト41に向かって延びている。ティース部52は、複数設けられ、コアバック部51の内側面の周方向に均等な間隔で配置される。コイル53は、導電線53aが巻き回されて構成される。コイル53は、ボビン54に設けられている。ボビン54は、各ティース部52に装着される。
【0021】
本実施の形態においては、モータ部20は3相ブラシレスモータである。また、ステータ50において、3つのコイル53がデルタ結線される。
【0022】
<ベアリング>
ベアリング42は、ステータ50のリア側(−Z側)に配置される。ベアリング42は、後述するバスバーホルダ61が備えるベアリング保持部65に保持される。ベアリング42は、シャフト41を支持する。ベアリング42の構成は、特に限定されず、いかなる公知のベアリングを用いてよい。
【0023】
<バスバーアッシー>
バスバーアッシー60は、ステータ50と電気的に接続されるバスバー91と、バスバーを保持するバスバーホルダ61と、を備える。バスバーホルダ61はリア側に開口部を備える。カバー13の蓋部22bは、バスバーホルダ61のリア側の開口部を塞ぐ。また、カバー13の蓋部22bのフロント側の面は、リア側Oリング82の全周と接触している。これにより、カバー13は、バスバーホルダ61の開口部の周囲の一周に亘って、バスバーホルダ61のリア側の本体部リア面と、リア側Oリング82を介して接触する。
【0024】
バスバーホルダ61は、コネクタ部63を備える。コネクタ部63を介して、モータ部20と外部電源とが接続される。接続された外部電源は、コネクタ部63が備える電源用開口部63aの底面から突出するバスバー91及び配線部材92と電気的に接続される。これにより、バスバー91及び配線部材92から、駆動装置100を介してステータ50のコイル53に駆動電流が供給される。
【0025】
<ポンプ部>
本実施形態のポンプ部30は、歯車の回転運動により内部の容積を変化させることでオイルの吸入と吐出を行う歯車ポンプである。歯車ポンプは容積型ポンプのひとつであり、その他、ダイヤフラムの往復運動により内部の容積を変化させるダイヤフラムポンプを用いることもできる。容積型ポンプを用いることでモータを低速回転させている時でもオイルの吸入と吐出を行うことができ、電動オイルポンプの高応答性を達成できる。
【0026】
ポンプ部30は、モータ部20の軸方向一方側、詳細にはフロント側(+Z軸側)に位置する。ポンプ部30は、モータ部20によってシャフト41を介して駆動される。ポンプ部30は、ポンプボディ31と、ポンプカバー32と、ポンプロータ35と、Oリング83と、を備える。
【0027】
ポンプボディ31は、モータ部20のフロント側においてハウジング12内に固定される。ポンプボディ31の外周面は、Oリング83を介してハウジング12の内周面と径方向において接触する。ポンプボディ31は、ポンプロータ35を収容する、フロント側(+Z側)の面からリア側(−Z側)に窪んだポンプ室33を備える。ポンプ室33の軸方向に視た形状は、円形状である。
【0028】
ポンプボディ31は、軸方向両端に開口しシャフト41が通され、フロント側の開口がポンプ室33に開口する貫通孔31aを備える。貫通孔31aのリア側の開口は、モータ部20側に開口する。貫通孔31aは、シャフト41を回転可能に支持する軸受部材として機能する。
【0029】
ポンプボディ31は、ハウジング12よりもフロント側に位置しハウジング12の外部に露出する露出部36を備える。露出部36は、ポンプボディ31のフロント側の端部の部分である。露出部36は、軸方向に延びる円柱状である。露出部36は、ポンプ室33と径方向に重なる。
【0030】
ポンプカバー32は、ポンプボディ31のフロント側に取り付けられる。ポンプカバー32は、ポンプカバー本体32aと、吐出口32dを含むポンプコネクタ部32bと、吸入口32cと、を備える。ポンプカバー本体32aは、径方向に拡がる円板状である。ポンプカバー本体32aは、ポンプ室33のフロント側の開口を閉塞する。ポンプコネクタ部32bは、軸方向に延びる円筒状である。ポンプコネクタ部32bは、軸方向両端に開口する吐出口32dを備える。ポンプコネクタ部32bは、ポンプカバー本体32aからフロント側に延びる。吸入口32cは、ポンプカバー32のフロント側の面に開口する。吐出口32d及び吸入口32cは、ポンプ室33と繋がり、ポンプ室33へのオイルの吸入およびポンプ室33からのオイルの吐出が可能である。シャフト41が周方向一方向き(−θ向き)に回転する場合、吸入口32cからオイルがポンプ室33に吸入される。ポンプ室33に吸入されたオイルは、ポンプロータ35によって送られ、吐出口32dへ吐出される。
【0031】
ポンプロータ35は、インナーロータ37と、アウターロータ38と、を備える。インナーロータ37は、シャフト41のフロント側の端部に取り付けられる。アウターロータ38は、インナーロータ37の径方向外側を囲む。インナーロータ37は、円環状であり、径方向外側面に歯を備える歯車である。
【0032】
インナーロータ37とアウターロータ38とは互いに噛み合い、インナーロータ37が回転することでアウターロータ38が回転する。インナーロータ37とアウターロータ38とが回転することで、吸入口32cからポンプ室33内に吸入されるオイルを、吐出口32dに送ることができる。すなわち、シャフト41の回転によりポンプロータ35は回転する。言い換えると、モータ部20とポンプ部30とは同一の回転軸を備える。
【0033】
<ハウジング>
ハウジング12は、中心軸Jに対し両端が開口した多段の円筒形状をしている。ハウジング12の材質は、例えば、金属である。ハウジング12は、モータ部20とポンプ部30とを保持する。ハウジング12は、筒部14と、フランジ部15と、を備える。筒部14は、中心軸Jを中心とする円筒状をしている。筒部14は、軸方向(Z軸方向)に沿って、バスバーアッシー挿入部21aと、ステータ保持部21bと、ポンプボディ保持部21cと、をリア側(−Z側)からフロント側(+Z側)へ向かって順に備える。フランジ部15は、筒部14のリア側の端部から径方向外側に延びる。
【0034】
バスバーアッシー挿入部21aのリア側の端部は、カバー13のフランジ部24およびハウジング12のフランジ部15を介して、カバー13の筒状部22aと連結する。バスバーアッシー挿入部21aは、バスバーアッシー60のフロント側(+Z側)の端部を中心軸Jの径方向外側から囲む。バスバーアッシー挿入部21aと、ステータ保持部21bと、ポンプボディ保持部21cとは、それぞれ同心の円筒形状であり、直径はこの順に小さくなる。
【0035】
バスバーアッシー60のフロント側の端部は、ハウジング12の内側に位置する。ステータ保持部21bの内側面には、ステータ50の外側面、すなわち、コアバック部51の外側面が接触している。これにより、ハウジング12には、ステータ50が保持される。ポンプボディ保持部21cの内周面には、ポンプボディ31の外周面が固定される。
【0036】
<駆動装置>
駆動装置100は、ベアリング42とカバー13との間に配置され、モータ部20を駆動する。
図2は、駆動装置100の構成を示すブロック図である。
図2において、モータ部20の3相をそれぞれU相、V相及びW相と表す。
図2に示すように、駆動装置100は、回転位置検出部101、インバータ102、インバータ駆動部103及び制御装置110を備える。
【0037】
回転位置検出部101は、モータ部20の回転位置、具体的にはロータ40の回転位置を検出する。回転位置検出部101としては、例えばホール素子、磁気抵抗素子等の磁気式センサ、光学式エンコーダ、レゾルバ等を使用することができる。また、回転位置検出部101は、
図1に示すセンサマグネット711及びセンサマグネット保持部712を備える。
【0038】
センサマグネット711は、円環状であり周方向にN極とS極とが交互に配置される。センサマグネット保持部712は、中央の孔がシャフト41のリア側(+Z側)の端部の小径部分に嵌まることで位置決めされる。センサマグネット保持部712は、シャフト41とともに回転可能である。センサマグネット711は、センサマグネット保持部712の外周面に配置される。
【0039】
本実施形態では、回転位置検出部101として、3つのコイル53間に配置された3つのホール素子を用いる。回転位置検出部101は、各ホール素子により、センサマグネット711の磁界を検出し、検出した磁界の大きさに比例する3つで1組の検出信号を出力する。1組の検出信号から、例えば60°の電気角ごとに回転位置を検出できる。なお、3つのホール素子の検出信号を1組とする例を説明したが、1組とするホール素子の数はこれに限定されず、モータ部20の構成に応じた数とすることができる。
【0040】
<インバータ>
インバータ102は、
図2に示すように、モータ部20のU相、V相及びW相の3相にそれぞれ対応する3組のアームQを備える。各アームQは、ブリッジ接続される。各アームQは、直列接続された上側のスイッチング素子Q1と下側のスイッチング素子Q2を備える。スイッチング素子Q1及びQ2としては、FET(Field Effect Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor FET)等の半導体素子を用いることでき、本実施の形態ではMOSFETを用いる。
【0041】
各アームQの上側のスイッチング素子Q1及び下側のスイッチング素子Q2は、電源200と接続される。電源200は、上述したコネクタ部63を介して接続される外部電源である。インバータ102は、制御装置110により生成され、インバータ駆動部103から出力された制御信号を入力する。インバータ102は、入力した制御信号にしたがって、各相のアームQの上側及び下側の各スイッチング素子Q1及びQ2のオンとオフを切り替え、例えばデューティ比のようにオンとオフの時間によってモータ部20の各相に交流電圧波形の駆動電流を供給する。
【0042】
<インバータ駆動部>
インバータ駆動部103は、制御装置110において生成した制御信号から、インバータ102の各アームQの上側のスイッチング素子Q1及び下側のスイッチング素子Q2に対する制御信号をそれぞれ生成して、出力する。
【0043】
<モータの制御装置>
制御装置110は、
図2に示すように、通電パターン決定部111、現在位置推定部111a、回転数算出部112、差算出部113、出力電圧決定部114及び信号生成部115を備える。制御装置110の各構成部の処理内容は、各部の処理手順を記述したプログラムを、当該プログラムを記憶する記憶媒体からコンピュータが読み取って実行するソフトウェア処理により、実現することができる。コンピュータとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサー、マイクロコンピュータ等を使用することができる。記憶媒体としては、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等を使用することができる。なお、各構成部の処理内容を、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等のハードウェアにより実現してもよい。
【0044】
通電パターン決定部111は、回転位置検出部101から出力された1組の検出信号が示す回転位置に基づき、モータ部20の各相の通電パターンを決定する。
【0045】
現在位置推定部111aは、回転位置検出部101から出力された1組の検出信号と当該検出信号の入力タイミングから、モータ部20、具体的にはロータ40の現在の回転位置を推定する。
【0046】
回転数算出部112は、回転位置検出部101から出力された1組の検出信号から、回転位置の単位時間あたりの変化量を求め、当該変化量からモータ部20の現在の回転数を算出する。
【0047】
差算出部113は、目標回転数と、回転数算出部112において算出した現在の回転数との差を算出する。差算出部113は、電動オイルポンプ10が搭載された車両等の外部の制御装置からその都度指示された目標回転数を入力することもできるし、記憶媒体に保存された一定の目標回転数を記憶媒体から読み取って入力することもできる。
【0048】
出力電圧決定部114は、差算出部113において算出した回転数の差により、電源200からインバータ102を介してモータ部20へ供給する駆動電流の出力電圧の制御値を決定する。本実施の形態では、インバータ102をPWM(Pulse Width Modulation)方式で制御し、出力電圧決定部114は、信号生成部115において制御信号として生成するパルス信号のデューティ比を出力電圧の制御値として決定する。
【0049】
出力電圧の制御値は、PID(Proportional-Integral-Differential Controller)制御によって決定することができる。具体的には、出力電圧決定部114は、比例(P)係数、積分(I)係数及び微分(D)係数を用いて、回転数の差から、それぞれ比例項、積分項及び微分項の少なくとも1項を算出する。出力電圧決定部114は、比例項、積分項及び微分項のいずれか1項を、又は2項以上の和を、信号生成部115において生成するPWM方式のパルス信号のデューティ比として決定することができる。例えば、出力電圧決定部114は、PID制御を行う場合は比例項、積分項及び微分項の3項の和を、PI制御を行う場合は比例項と積分項の和を、デューティ比として決定することができる。
【0050】
信号生成部115は、インバータ102により、電源200からの駆動電流をモータ部20の各相へ供給させる制御信号を生成する。上述のように、本実施の形態において、信号生成部115は、制御信号としてPWM方式のパルス信号を生成する。
【0051】
信号生成部115は、通電パターン決定部111において決定した通電パターンと、現在位置推定部111aにより推定した現在の回転位置と、に基づいて、モータ部20のU相、V相及びW相の各相に供給する駆動電流の交流電圧波形の位相を決定する。また、信号生成部115は、出力電圧決定部114において決定した出力電圧の制御値に基づいて、パルス信号のデューティ比を決定する。信号生成部115は、決定した位相において決定したデューティ比のパルス信号を生成し、出力する。
【0052】
<制御信号の生成手順>
以下、信号生成部115における具体的な制御信号の生成手順を説明する。
信号生成部115は、インバータ102により、第1通電周期と第2通電周期を、第1通電周期と第2通電周期の間に第3通電周期を挟んで交互に繰り返す交流電圧波形の駆動電流を供給させるパルス信号を生成する。第1通電周期は、各アームQの上側のスイッチング素子Q1のみをオンの状態とする通電周期である。第2通電周期は、各アームQの下側のスイッチング素子Q1のみをオンの状態とする通電周期である。
【0053】
また、信号生成部115は、上記パルス信号として、第3通電周期において、各アームQの上側及び下側の各スイッチング素子Q1及びQ2のオンとオフを順に切り替え、さらにオンに切り替えたスイッチング素子Q1又はQ2の出力電圧を連続的に変化させて、前後の第1通電周期と第2通電周期の波形を連続させるパルス信号を、モータ部20の各相で第1〜第3通電周期の位相を異ならせて生成する。
【0054】
図3は、信号生成部115が生成するパルス信号によって、インバータ102から供給される駆動電流の交流電圧波形の一例を示す。
図3に示すように、U相の交流電圧波形は、電気角が0〜360°の位相において、第3通電周期T3、第1通電周期T1、第3通電周期T3、第2通電周期T2の順に、各通電周期を繰り返す。第1通電周期T1及び第2通電周期T2は、それぞれ電気角が120°の周期であり、第3通電周期T3は電気角が60°の周期である。
【0055】
第1通電周期T1では、アームQの上側のスイッチング素子Q1のみがオンの状態にあり、スイッチング素子Q1の出力電圧、すなわちスイッチング素子Q1から出力される駆動電流の出力電圧は一定である。第2通電周期T2では、アームQの下側のスイッチング素子Q2のみがオンの状態にあり、スイッチング素子Q2の出力電圧は一定である。第3通電周期T3では、各スイッチング素子Q1及びQ2のオンとオフが切り替わり、オンに切り替わった方の出力電圧が連続的に変化して、前後の第1通電周期T1と第2通電周期T2の波形が連続する。
【0056】
V相及びW相の交流電圧波形は、U相の交流電圧波形と同じ波形であるが、各相の交流電圧波形は、
図3に示すように位相がそれぞれ120°の電気角だけずれる。これにより、各相で第1〜第3通電周期の位相が異なる。
【0057】
各相の交流電圧波形には6つの通電パターン1〜6がある。各通電パターン1〜6は、電気角が60°の位相ごとに切り替わる。各通電パターン1〜6において、第3通電周期T3にある相は、U相、V相及びW相のいずれか1相である。
【0058】
信号生成部115は、第3通電周期T3では、出力電圧が0の基準点において、アームQの上側のスイッチング素子Q1と下側のスイッチング素子Q2のうち、オンの状態にあった方をオフに切り替え、オフの状態にあった方をオンに切り替えさせるパルス信号を生成する。これにより、第3通電周期T3において各スイッチング素子Q1及びQ2の通電を切り替えて、その前後の第1通電周期T1と第2通電周期Tと波形を連続させることができる。
【0059】
例えば、
図3に示すように、U相の通電パターンが通電パターン6、1及び2の順に切り替わるとき、交流電圧波形は第2通電周期T2、第3通電周期T3及び第1通電周期T1の順に切り替わる。信号生成部115は、第2通電周期T2においてオンの状態にあった下側のスイッチング素子Q2の出力電圧を、次の第3通電周期T3において連続的に低下させて、基準点に至るとオフに切り替えさせるパルス信号を生成する。さらに、信号生成部115は、第2通電周期T2においてオフの状態にあったU相のアームQの上側のスイッチング素子Q1をオンに切り替えて、当該スイッチング素子Q1の出力電圧を基準点から連続的に上昇させるパルス信号を生成する。これにより、下側のスイッチング素子Q2から上側のスイッチング素子Q1へ通電が切り替わる場合には、右肩上がりの波形に制御することができる
【0060】
また、
図3に示すように、U相の通電パターンが通電パターン3、4及び5の順に切り替わるとき、交流電圧波形は第1通電周期T1、第3通電周期T3及び第2通電周期T2の順に切り替わる。信号生成部115は、第1通電周期T1においてオンの状態にあったU相のアームQの上側のスイッチング素子Q1の出力電圧を、次の第3通電周期T3において連続的に低下させて、基準点に至るとオフに切り替えさせるパルス信号を生成する。さらに、信号生成部115は、第1通電周期T1においてオフの状態にあったU相のアームQの下側のスイッチング素子Q2をオンに切り替えて、当該スイッチング素子Q2の出力電圧を基準点から連続的に上昇させるパルス信号を生成する。これにより、上側のスイッチング素子Q1から下側のスイッチング素子Q2へ通電が切り替わる場合には、右肩下がりの波形に制御することができる。
【0061】
信号生成部115は、第3通電周期T3では、パルス信号のデューティ比を制御することにより、各スイッチング素子Q1及びQ2の出力電圧を連続的に変化させる。これにより、出力電圧の変化を緩やかにすることができる。
【0062】
図4は、
図3に示す交流電圧波形の通電パターン1におけるパルス信号を示す。
図4に示すように、電気角が0〜60°の周期にある通電パターン1では、3相のうち、U相が第3通電周期T3にある。信号生成部115は、前の第2通電周期T2においてオンの状態にあったU相のアームQの下側のスイッチング素子Q2へ出力するパルス信号のデューティ比を、第3通電周期T3において連続的に低下させる。スイッチング素子Q2のデューティ比が0、すなわち出力電圧が0の基準点に到達すると、信号生成部115は、U相のアームQの下側のスイッチング素子Q2をオフ、上側のスイッチング素子Q1をオンに切り替える。そして、信号生成部115は上側のスイッチング素子Q1へ出力するパルス信号のデューティ比を、次の第1通電周期T1のデューティ比まで連続的に上昇させる。これにより、第3通電周期T3における電流方向の変化を緩やかにすることができる。
【0063】
通電パターン1では、V相は上側のスイッチング素子Q1のみオン状態の第1通電周期T1にある。W相は、下側のスイッチング素子Q2のみオン状態の第2通電周期T2にある。
図4に示す例では、信号生成部115は、第1通電周期T1、すなわち上側のスイッチング素子Q1側の通電周期では、オン時のデューティ比を、出力電圧決定部114により決定した一定の出力電圧のデューティ比とする。また、信号生成部115は、第2通電周期T2、すなわち下側のスイッチング素子Q2側の通電周期では、オンに固定し、デューティ比を100%で運用する。
【0064】
第3通電周期T3の前が第1通電周期の場合は、信号生成部115は、第3通電周期T3において、アームQの上側のスイッチング素子Q1へ出力するパルス信号のデューティ比を連続的に低下させる。また、信号生成部115は、アームQの下側のスイッチング素子Q2へ出力するパルス信号のデューティ比を、次の第2通電周期T2のデューティ比まで連続的に上昇させる。第3通電周期T3における電流方向の変化を緩やかにすることができる。
【0065】
信号生成部115は、モータ部20の回転位置に応じて、上昇又は低下させるデューティ比を決定することができる。これにより、第3通電周期T3の波形を任意の波形にすることができる。例えば、電気角で0〜30°の回転位置においてデューティ比を90%から0%に低下させる場合、回転位置が5°シフトするごとにデューティ比を15%の一定値ずつ低下させることにより、
図3に示すように、第3通電周期T3の波形を直線状の波形にすることができる。また、現在の回転位置を電気角θで表すと、各回転位置のデューティ比をsinθ×90%に決定することにより、第3通電周期T3の波形を正弦波のような曲線状の波形にすることができる。
【0066】
モータを駆動する一般的な交流電圧波形としては、方形波及び正弦波が挙げられるが、
図3に示す本実施の形態の交流電圧波形は、方形波及び正弦波と比べて、少ない計算量で円滑な回転制御が可能である。
【0067】
図5は、方形波の交流電圧波形の一例を示す。
図5に示すように、U相、V相及びW相の各相の方形波の交流電圧波形は、各相のアームQの上側のスイッチング素子Q1のみがオンの通電周期と、下側のスイッチング素子Q2のみがオンの通電周期を、各スイッチング素子Q1及びQ2がいずれもオフの非通電周期を挟んで繰り返す。各相の交流電圧波形は、位相が120°ずれ、60°ごとの通電パターン1〜6がある。各通電周期は電気角が120°の周期であり、非通電周期は電気角が60°の周期である。
【0068】
上記のような方形波の場合、各通電パターン1〜6の切り替わり時における電流方向の変化が大きいため、トルクの脈動が生じやすい。これに対し、
図3に示す本実施の形態の交流電圧波形では、各通電パターン1〜6の切り替わり時にも電流方向の変化が緩やかであるため、モータ部20の滑らかな回転制御が可能になる。
【0069】
図6Aは、
図3に示す本実施の形態の交流電圧波形の駆動電流を供給したときの電源電圧、電源電流及びU相の電流の測定値を示す。また、
図6Bは、
図5に示す方形波の交流電圧波形の駆動電流を供給したときの電源電圧、電源電流及びU相の電流の測定値を示す。
図6A及び
図6Bを比較すると、
図5に示す方形波の交流電圧波形の場合は電流方向が変化するごとに電源電圧及び電源電流が大きく変動しているが、
図3に示す本実施の形態の交流電圧波形の場合は変動が少ない。また、U相の電流波形も、
図5に示す方形波に比べて
図3に示す交流電圧波形の方が、変化が緩やかである。
【0070】
図7は、正弦波の交流電圧波形の一例を示す。
図7に示すように、正弦波の交流電圧波形では非通電周期がない。各相のアームQにおいて上側のスイッチング素子Q1及び下側のスイッチング素子Q2のオンとオフが交互に切り替わり、オン時の出力電圧が連続的に変化するため、滑らかな回転制御が可能である。
図3に示す本実施の形態の交流電圧波形によれば、この正弦波に近い回転制御が可能であり、電流方向の変化による脈動を減らすことができる。
【0071】
一方で、正弦波の交流電圧波形の場合、パルス信号のデューティ比を常に計算する必要がある。また、全位相において3相すべてのデューティ比を並行して計算しなければならず、高性能のコンピュータが必要である。これに対し、
図3に示す本実施の形態の交流電圧波形によれば、出力電圧の計算が必要なのは第3通電周期T3のみである。各通電パターン1〜6で第3通電周期T3にある相は3相のうちの1相のみであり、計算量が少ない。高性能のコンピュータでなくても十分計算が可能であるため、計算に必要な演算資源の構成を簡易化できる。
【0072】
以上のように、本実施の形態のモータ部20の制御装置110によれば、第3通電周期T3において、前後の第1通電周期T1と第2通電周期T2の波形を連続させることができる。したがって、第3通電周期T3における電流の方向の変化が緩やかとなり、方形波の交流電圧波形と比べてモータ部20の滑らかな回転制御が可能になる。また、連続的に変化させる出力電圧の計算が必要なのは各通電パターン1〜6において1相のみであるので、全位相において3相すべての計算が必要な正弦波の交流電圧波形と比べて計算量を大幅に減らすことができる。したがって、簡易な構成で、滑らかな回転制御を実現できる。
【0073】
電動オイルポンプ10においては、モータ部20の制御装置110によって、モータ部20の脈動を減らすことにより、輸送するオイルの脈動を抑えることができ、特に効果的である。また、制御装置110は簡易な構成でよいため、電動オイルポンプ10のコストを下げることもできる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されない。
例えば、モータ部20として、3相のモータの例を説明したが、3相以外の複数相のモータにも、本発明を適用することができる。
また、各相のコイル53がデルタ結線されたモータ部20の例を説明したが、各相のコイル53がスター結線されたモータにも、本発明を適用することができる。
【0075】
本出願は、2017年8月31日に出願された日本特許出願である特願2017−166913号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。