特許第6962379号(P6962379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962379
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20211025BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20211025BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H02J7/10 B
   H02J7/00 X
   H02J7/35 K
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-543480(P2019-543480)
(86)(22)【出願日】2018年8月17日
(86)【国際出願番号】JP2018030468
(87)【国際公開番号】WO2019058821
(87)【国際公開日】20190328
【審査請求日】2020年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-182595(P2017-182595)
(32)【優先日】2017年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】田川 修市
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−093888(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/126175(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能とした蓄電池と、
前記蓄電池から供給される電圧をPWM制御により昇圧した昇圧電圧を生成して高圧直流バスラインに供給する昇圧動作と、前記高圧直流バスラインから供給される電圧をPWM制御により降圧した降圧電圧を生成して前記蓄電池に供給する降圧動作を行う昇降圧回路であって、前記高圧直流バスラインの一対の端子のうちの高圧側に接続されるとともに前記高圧直流バスラインに向かって前記蓄電池の放電電流を流す方向にボディダイオードを有するハイサイドスイッチと、前記ハイサイドスイッチと前記高圧直流バスラインの前記一対の端子のうちの低圧側に接続されるローサイドスイッチと、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの接続点に一端が接続され、他端が前記蓄電池の一方の端子に接続されるインダクタと、を有する昇降圧回路と、
前記蓄電池の満充電状態を検出した検出信号を出力する検出装置と、
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとをPWM制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記検出信号の入力に基づいて、前記昇降圧回路の前記ハイサイドスイッチをオフ状態に維持するとともに前記ローサイドスイッチをPWM制御して前記蓄電池から前記ハイサイドスイッチの前記ボディダイオードを介して前記高圧直流バスラインへ前記蓄電池の放電電流を流す前記昇圧動作を行い、
前記ハイサイドスイッチをオフ状態に維持している場合には、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとをPWM制御している場合に比較して前記インダクタに流れる電流の平均値が0に近づくように、前記ローサイドスイッチをPWM制御することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置において、
前記制御部は、
前記ハイサイドスイッチをオフ状態に維持している状態で、前記昇降圧回路からの昇圧電圧の出力を要請する指令信号が外部機器から入力されたとき、前記昇降圧回路の動作を前記昇圧動作に復帰させることを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蓄電装置において、
前記制御部は、
前記ハイサイドスイッチをオフ状態に維持している状態で、前記高圧直流バスラインの電圧が通常電圧から低下したとき、前記昇降圧回路の動作を前記昇圧動作に復帰させることを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電装置において、
前記検出信号は、前記蓄電池の周囲温度が所定範囲外であることを検出した検出信号を含むことを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
請求項2に記載の蓄電装置において、
前記外部機器は、太陽光パネルの発電電力に基づいて、前記高圧直流バスラインに高圧直流電圧を供給するパワーコンディショナであることを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蓄電装置において、
前記制御部は、前記ハイサイドスイッチをオフ動作させた瞬間の前記インダクタに流れる電流の値をサンプリング・ホールドし、前記ハイサイドスイッチをオフ状態に維持している状態から前記ハイサイドスイッチのPWM制御を再開するときには、前記インダクタに流れる電流の値が、サンプリング・ホールドされた電流の値よりも大きくならないように、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチをPWM制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムで発電された電力を蓄電池に蓄電し、あるいは蓄電池に蓄電された電力を必要に応じて負荷機器に供給する蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭に設置される太陽光発電システムでは、太陽光パネルで発電される直流電力がパワーコンディショナ内のインバータで所定の交流電圧に変換されて家庭内の負荷機器に供給され、あるいは電力系統に供給される。
【0003】
近年、太陽光パネルで発電された直流電力を蓄電池に蓄電し、その蓄電池に蓄電された電力を必要時にパワーコンディショナを介して家庭内の負荷機器に供給可能とする蓄電装置が提案されている。
【0004】
この蓄電装置は、太陽光パネルで発電された直流電力が、パワーコンディショナ内のPVコンバータを介して高圧直流バスラインに供給され、双方向コンバータで降圧されて蓄電池に充電される。また、蓄電池に蓄電された直流電力は双方向コンバータで昇圧されるとともに平滑用キャパシタで平滑されて高圧直流バスラインに供給され、パワーコンディショナ内のインバータで交流電圧に変換されて家庭内の負荷機器に供給される。
【0005】
蓄電池に昇降圧チョッパを介して充電し、あるいは蓄電池から昇降圧チョッパを介して放電可能とした充放電回路として、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−115730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような蓄電装置では、蓄電池が満充電状態まで充電された後は、蓄電池への充電電流を確実に遮断して、過充電による蓄電池の劣化を防止する必要がある。
チョッパ回路は、電力変換効率を向上させるために、スイッチング素子としてFETを使用することが一般的となっている。このようなチョッパ回路で、蓄電池の満充電後に、蓄電池への充電電流を遮断するには、チョッパ回路を構成するFETを交互に均等な時間でオン・オフさせて、充放電電流を互いに相殺させる必要がある。
【0008】
しかし、FETをPWM制御した状態で、蓄電池への充電電流を完全に遮断することができず、過充電による蓄電池の劣化が発生するという問題点がある。
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は蓄電池が満充電となった後は、蓄電池への充電電流を遮断し得る蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
また、上記課題を解決する蓄電装置は、充放電可能とした蓄電池と、前記蓄電池から供給される電圧をPWM制御により昇圧した昇圧電圧を生成して高圧直流バスラインに供給する昇圧動作と、前記高圧直流バスラインから供給される電圧をPWM制御により降圧して前記蓄電池に供給する降圧動作を行う昇降圧回路を備えた蓄電装置において、蓄電池の満充電状態を検出した検出信号を出力する検出装置と、検出信号の入力に基づいて、昇降圧回路のハイサイドスイッチをオフ状態に維持する制御部を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、蓄電池が満充電状態となると、ハイサイドスイッチがオフ状態に維持されて、蓄電池への充電電流が遮断される。
また、上記の蓄電装置において、前記制御部は、前記ハイサイドスイッチをオフ状態に維持している状態で、前記昇降圧回路からの昇圧電圧の出力を要請する指令信号が外部機器から入力されたとき、前記昇降圧回路の動作を昇圧動作に復帰させることが好ましい。
【0011】
この構成により、ハイサイドスイッチがオフ状態であっても、制御部に指令信号が入力されたときは、昇降圧回路から昇圧電圧が出力される。
また、上記の蓄電装置において、前記制御部は、前記ハイサイドスイッチをオフ状態に維持している状態で、前記高圧直流バスラインの電圧が通常電圧から低下したとき、前記昇降圧回路の動作を昇圧動作に復帰させることが好ましい。
【0012】
この構成により、ハイサイドスイッチがオフ状態であっても、高圧直流バスラインの電圧が通常電圧から低下すると、昇降圧回路から昇圧電圧が出力される。
また、上記の蓄電装置において、前記検出信号は、前記蓄電池の周囲温度が所定範囲外であることを検出した検出信号を含むことが好ましい。
【0013】
この構成により、周囲温度が所定範囲外での蓄電池の充電が防止される。
また、上記の蓄電装置において、前記外部機器は、太陽光パネルの発電電力に基づいて、前記高圧直流バスラインに高圧直流電圧を供給するパワーコンディショナであることが好ましい。
【0014】
この構成により、パワーコンディショナから高圧直流バスラインに供給される電圧が低下すると、昇降圧回路から昇圧電圧が出力される。
また、上記の蓄電装置において、前記昇降圧回路は、前記高圧直流バスラインの一対の端子間に直列に接続される前記ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチと、前記ハイサイドスイッチとローサイドスイッチの接続点に一端が接続され、他端が前記蓄電池の一方の端子に接続されるインダクタとを備え、前記ハイサイドスイッチとローサイドスイッチは、前記制御部によりPWM制御されるMOSFETで構成し、前記ハイサイドスイッチは前記インダクタから前記高圧直流バスラインに向かって前記蓄電池の放電電流を流すボディダイオードを備えることが好ましい。
【0015】
この構成により、ハイサイドスイッチがオフ状態に維持されるとき、蓄電池からハイサイドスイッチのボディダイオードを介して高圧直流バスラインに放電電流が流れる。そして、昇降圧回路で昇圧動作が再開されると、ハイサイドスイッチから高圧直流バスラインに昇圧電圧が供給される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蓄電装置によれば、蓄電池が満充電となった後は、蓄電池への充電電流を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】太陽光発電システムの蓄電装置を示す回路図。
図2】蓄電装置の動作を示すフローチャート。
図3】(a)〜(d)は、昇降圧回路のコイルに流れる電流を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す太陽光発電システムの蓄電装置は、電池パック1、昇降圧回路2、平滑用キャパシタ3及び充放電制御部4を備える。電池パック1は、蓄電池5とその蓄電池5の充放電状態を管理するBMU(バッテリーマネジメントユニット)を備えている。BMU6は、蓄電池5のセル電圧、SOC(State of charge:充電量)、蓄電池5の周囲温度等を検出し、各検出信号Xを充放電制御部4に出力する。
【0019】
昇降圧回路2は、コイル7と、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)で構成されるハイサイド側の第一のスイッチ8とローサイド側の第二のスイッチ9で構成され、一対の端子t1,t2を介して高圧直流バスライン10に接続される。
【0020】
第一のスイッチ8と第二のスイッチ9は、端子t1,t2間で直列に接続され、コイル7は第一のスイッチ8と第二のスイッチ9の接続点と蓄電池5のプラス側端子との間に接続されている。また、蓄電池5のマイナス側端子は、昇降圧回路2を介して端子t2に接続されている。
【0021】
第一のスイッチ8及び第二のスイッチ9のゲートには、充放電制御部4から制御信号Q1,Q2が入力されている。そして、制御信号Q1,Q2により第一のスイッチ8及び第二のスイッチ9がPWM制御され、コイル7との協働により昇圧動作あるいは降圧動作が行われる。
【0022】
具体的には、昇圧動作時には、例えば300Vの蓄電池5の出力電圧が380Vに昇圧されて、高圧直流バスライン10に供給される。また、降圧動作時には、高圧直流バスライン10に供給される例えば380Vの直流電圧が300Vに降圧されて、蓄電池5に供給される。
【0023】
第二のスイッチ9のソース・ドレイン間にはボディダイオードD2が介在され、第一のスイッチ8のソース・ドレイン間にはボディダイオードD1が介在される。ボディダイオードD2は、コイル7側がカソードとなるように介在され、ボディダイオードD1はコイル7側がアノードとなるように介在される。
【0024】
平滑用キャパシタ3は、端子t1,t2の間に接続されて、昇降圧回路2から出力される昇圧電圧を平滑して高圧直流バスライン10に出力する。
高圧直流バスライン10にはパワーコンディショナ11が接続される。パワーコンディショナ11には、太陽光パネル12及び家庭内の交流負荷13及び商用電力系統14が接続される。
【0025】
そして、太陽光パネル12で発電された直流電力は、パワーコンディショナ11内のPVコンバータにより昇圧されるとともにインバータで商用交流電力に変換されて家庭内の交流負荷13あるいは商用電力系統14に供給される。また、PVコンバータにより昇圧された高圧直流電圧が高圧直流バスライン10に供給される。
【0026】
高圧直流バスライン10に供給されている電圧は電圧計15で検出されて、その検出電圧V1が充放電制御部4に出力される。また、充放電制御部4にはパワーコンディショナ11から高圧直流バスライン10への昇圧電圧の供給を要請する指令信号CSが入力される。
【0027】
充放電制御部4は、あらかじめ設定されたプログラムに基づいて制御信号Q1,Q2を出力して第一及び第二のスイッチ8,9をPWM制御する。昇降圧回路2は、制御信号Q1,Q2の入力に基づいて、昇圧動作あるいは降圧動作を行う。
【0028】
また、BMU6から充放電制御部4に検出信号Xが入力されると、第一のスイッチ8がオフされて、蓄電池5への充電電流の供給が遮断される。
充放電制御部4は、電圧計15から入力された検出電圧V1が、高圧直流バスライン10の通常の電圧、例えば380V未満に低下したとき、あるいはパワーコンディショナ11から指令信号CSが入力されたとき、昇降圧回路2を昇圧動作させて高圧直流バスライン10に昇圧電圧を供給する。
【0029】
次に、上記のように構成された蓄電装置の作用を図に従って説明する。
蓄電装置の作動時には、充放電制御部4により昇降圧回路2の第一及び第二のスイッチ8,9が制御信号Q1,Q2によりPWM制御されて交互にオン・オフ駆動される。そして、蓄電池5の出力電圧を昇圧して高圧直流バスライン10に供給する昇圧動作、あるいはパワーコンディショナ11から高圧直流バスライン10に供給される高圧電圧を降圧して蓄電池5に供給する降圧動作が行われる(ステップS1)。
【0030】
次いで、BMU6から出力される検出信号Xに基づいて、蓄電池5の周囲温度があらかじめ設定された所定の温度範囲内であるかを判定し(ステップS2)、蓄電池5の周囲温度が所定の温度範囲内である場合にはステップS3に移行して、蓄電池5のセル電圧があらかじめ設定された上限値に達しているか否かが判定される。
【0031】
そして、蓄電池5の周囲温度が所定の温度範囲内であり、セル電圧が上限値に達していない場合は、第一及び第二のスイッチ8,9のスイッチング制御が継続される。
蓄電池5の周囲温度が所定の温度範囲外となるか、あるいはセル電圧が上限値に達すると、ステップS4に移行して、充放電制御部4から第一のスイッチ8をオフ状態とする制御信号Q1が出力される。この結果、蓄電池5への充電電流の供給が停止される。
【0032】
例えばリチウムイオン電池で構成される蓄電池5は、周囲温度が所定の温度範囲外の極低温、あるいは高温である状態で充電が行われると、故障が発生することがある。ステップS2では、このような故障を回避するために、蓄電池5の周囲温度に基づいて、蓄電池5への充電電流の供給の可否が判定される。
【0033】
第一のスイッチ8がオフ状態に維持されると、蓄電池5への充電電流の供給は停止されるが、蓄電池5からコイル7及び第一のスイッチ8のボディダイオードD1を経て平滑用キャパシタ3あるいは高圧直流バスライン10に流れる放電電流は許容された状態である。従って、蓄電池5のSOC値は徐々に低下する。
【0034】
次いで、充放電制御部4は、第一のスイッチ8をオフ状態に維持した状態で、入力される検出信号Xに基づいて、蓄電池5のSOC値が100未満となったか否かの判定を継続する(ステップS5,S8)。
【0035】
そして、SOC値が100未満となると、ステップS2と同様に、蓄電池5の周囲温度があらかじめ設定された所定の温度範囲内であるかを判定し(ステップS6)、蓄電池5の周囲温度が所定の温度範囲内である場合にはステップS7に移行して、第一のスイッチ8のオフ動作を解除し、ステップS1に復帰する。
【0036】
ステップS6で、蓄電池5の周囲温度が所定の温度範囲から外れていると、第一のスイッチ8をオフ状態に維持してステップS5に復帰する。従って、蓄電池5のSOC値が100未満となり、かつ蓄電池5の周囲温度が所定の温度範囲内となるまで、第一のスイッチ8がオフ状態に維持される。
【0037】
また、ステップS8で第一のスイッチ8をオフ状態に維持している状態で、電圧計15の検出電圧V1が低下し、あるいはパワーコンディショナ11から指令信号CSが入力されると、充放電制御部4は第一及び第二のスイッチ8,9のPWM制御を再開し、高圧直流バスライン10に昇圧電圧を出力する。
【0038】
上記のような蓄電装置の動作時において、蓄電池5への充電時及び放電時にコイル7に流れる電流について説明する。
図3(a)〜(d)において、電流ILは昇降圧回路2の第一及び第二のスイッチ8,9がPWM制御されているときにコイル7に流れる電流であり、+側の電流は蓄電池5から昇降圧回路2に向かって流れる放電電流Idであり、−側の電流は昇降圧回路2からコイル7に向かって流れる充電電流Icである。
【0039】
図3(a)に示すように、電流ILの平均値Aveが0である場合には、充電電流Icと放電電流Idが平衡状態であるため、蓄電池5には充電電流Icは供給されず、蓄電池5から放電電流Idが流れることもない。
【0040】
図3(b)に示すように、電流ILの平均値Aveが+側である場合には、充電電流Icより放電電流がIdが大きくなるため、蓄電池5から昇降圧回路2に放電電流が流れる。
【0041】
図3(c)に示すように、電流ILの平均値Aveが−側である場合には、放電電流Idより充電電流がIcが大きくなるため、昇降圧回路2から蓄電池5に充電電流が流れる。
【0042】
図3(c)に示す充電状態において、蓄電池5のセル電圧が上限値に達して第一のスイッチ8がオフされるとき、図3(d)に示すように、充電電流Icが遮断されて、僅かな放電電流Idがコイル7から第一のスイッチ8のボディダイオードD1を経て平滑用キャパシタ3及び高圧直流バスライン10に供給される。
【0043】
この状態から、蓄電池5のセル電圧が低下して、第一のスイッチ8のスイッチング動作が再開されると、充電電流Icが蓄電池5に突入電流として流入する可能性がある。
そこで、図3(d)に示すように、第一のスイッチ8をオフ動作させているときには、電流ILの平均値Aveが0近傍となるように第二のスイッチ9のスイッチング動作を制御する。このような制御を行うことにより、第一のスイッチ8のスイッチング動作が再開されたとき、蓄電池5への突入電流の流入が抑制される。
【0044】
また、第一のスイッチ8をオフ動作させた瞬間の電流ILの値をサンプリング・ホールドし、第一のスイッチ8のスイッチング動作の再開時には、コイル7に流れる充電電流Icがサンプリング・ホールドされた電流値より大きくならないように、第一及び第二のスイッチ8,9のスイッチング動作を制御するようにしてもよい。
【0045】
上記のように構成された蓄電装置では、次に示す効果を得ることができる。
(1)蓄電池5の充電時に、蓄電池5のセル電圧が上限値に達すると、昇降圧回路2の第一のスイッチ8を不導通として、蓄電池5への充電電流の供給を遮断することができる。従って、過充電による蓄電池5の劣化を防止することができる。
【0046】
(2)蓄電池5のセル電圧をBMU6で検出し、そのBMU6の検出信号Xに基づいて第一のスイッチ8を不導通とすることができるので、蓄電池5の過充電を確実に防止することができる。
【0047】
(3)極低温あるいは高温での蓄電池5の充電による故障を防止することができる。
(4)昇降圧回路2の第一のスイッチ8を不導通とすることにより、蓄電池5への充電電流の供給を確実に遮断することができる。
【0048】
(5)第一のスイッチ8を不導通とした状態において、高圧直流バスライン10の電圧が低下したとき、あるいはパワーコンディショナ11から高圧直流バスライン10への昇圧電圧の供給を要請する指令信号CSが出力されると、第一及び第二のスイッチ8,9を通常のPWM制御に復帰させることができる。従って、高圧直流バスライン10の電圧の低下、あるいはパワーコンディショナ11からの指令信号CSの入力に基づいて、蓄電池5からの放電モードすなわち昇降圧回路2から昇圧電圧を高圧直流バスライン10に供給する昇圧モードに直ちに移行することができる。
【0049】
(6)第一のスイッチ8を不導通とした状態では、蓄電池5からコイル7及び第一のスイッチ8のボディダイオードD1を介して高圧直流バスライン10に放電電流が供給される。このとき、ボディダイオードD1では一定の順方向電圧降下が発生するため、順方向電流の電流値に応じた電力消費が発生する。従って、高圧直流バスライン10の電圧の低下、あるいはパワーコンディショナ11からの指令信号CSの入力に基づいて、第一及び第二のスイッチ8,9を直ちにPWM制御することにより、電力消費を抑制しながら、高圧直流バスライン10に昇圧電圧を供給することができる。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図2に示すステップS3で、SOC値が上限値に達したか否かを検出するようにしてもよい。
【0051】
・充放電制御部4は、例えば、実施形態で説明した種々の制御を実現するように構成されたコンピュータ可読命令を格納した1つ以上のメモリと、そのコンピュータ可読命令を実行するように構成された1つ以上のプロセッサとを備えてもよい。または、充放電制御部4は、特定用途向けIC(ASIC)等の集積回路であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
2…昇降圧回路、4…制御部(充放電制御部)、5…蓄電池、6…検出装置(バッテリーマネジメントユニット)、7…インダクタ(コイル)、8…ハイサイドスイッチ(第一のスイッチ)、9…ローサイドスイッチ(第二のスイッチ)、10…高圧直流バスライン、11…外部機器(パワーコンディショナ)。
図1
図2
図3