【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/空間多重フォトニックノード基盤技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図面における矢印の向きは、方向の一例を表示するものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
<第1の実施形態>
【0028】
図1は、本発明の第1の実施形態による光増幅装置の構成を示すブロック図である。光増幅装置10は、複数の光増幅器(光増幅手段)20、複数のレーザー光源(レーザー光生成手段)30、少なくとも1つの光結合装置(光結合手段)40、および制御器(制御手段)50を有する。
【0029】
複数の光増幅器20は、複数の光信号を増幅する。複数の光増幅器20のそれぞれは、利得媒体を含む。複数のレーザー光源30は、複数のレーザー光線を生成する。
【0030】
少なくとも1つの光結合装置40は、結合係数に従って可変的に複数のレーザー光を結合し、複数の励起光を出力する。複数の励起光のそれぞれは利得媒体を励起する。制御器50は、結合係数、および複数のレーザー光源30のそれぞれの出力パワーを制御する。
【0031】
上述したように、本実施形態による光増幅装置10は、複数のレーザー光源30を有し、光増幅装置10が備える光結合装置40は、結合係数に従って可変的に複数のレーザー光を結合する。その結果、複数の光増幅器の間で必要な励起パワーに相違がある場合であっても、複数の光増幅器の電力消費を低減することができる。
【0032】
少なくとも1つの光結合装置40は、複数の光結合装置を含むこととしてもよい。この場合、制御器50は、複数の光結合装置のそれぞれの結合係数を制御する。
【0033】
利得媒体は、マルチコアファイバに含まれるコアとすることができる。この場合、複数のレーザー光源30のそれぞれは、複数の励起光のそれぞれによって利得媒体を直接励起することができる。
【0034】
あるいは、利得媒体は、マルチコアファイバとすることができる。この場合、複数のレーザー光源30のそれぞれは、マルチコアファイバのクラッドを励起することにより利得媒体を励起することができる。複数の励起光のそれぞれは、マルチモード光とすることができる。
【0035】
さらに、正の整数Nで表される複数の光増幅器20の個数、正の整数Mで表される少なくとも1つの光結合装置40の個数、および、正の整数Lで表される複数のレーザー光源30の個数は、次の関係式を満たすことができる。
【0036】
この場合、L=N=M
2/4という関係式を満たすことができる。あるいは、L=N=M/2という関係式を満たすことができる。
【0037】
次に、本実施形態による光信号増幅方法について説明する。
【0038】
光信号増幅方法において、複数のレーザー光が生成される。複数のレーザー光は、結合係数に従って可変的に結合され、それによって複数の励起光が生成される。複数の励起光により、複数の光信号が通過する複数の利得媒体が励起される。
【0039】
さらに、結合係数と、複数のレーザー光のそれぞれの出力パワーが制御される。
【0040】
上述したように、本実施形態の光増幅装置10および光信号増幅方法によれば、複数の光増幅器の間で必要な励起パワーに相違がある場合であっても、複数の光増幅器の電力消費を低減することができる。
<第2の実施形態>
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0042】
図2は、本発明の第2の実施形態による光増幅装置100の構成を示すブロック図である。光増幅装置100は、2つの光増幅器を有する。2つの光増幅器は、それぞれの利得媒体110および利得媒体111から構成される。利得媒体110および利得媒体111のそれぞれは、エルビウム添加シングルモードファイバで構成されてもよい。光増幅器は、アイソレータ、WDMカプラー、および等化フィルタを備えてもよい。
【0043】
利得媒体110は、光ファイバ101を通して供給され、パワーモニタ141を通過した光信号を増幅する。パワーモニタ141は、光ファイバ101からの光の小部分を取りだし、フォトダイオードを用いてそれを電気モニタ信号に変換する。典型的には、パワーモニタ141は、生成した電気モニタ信号によって入ってくる光パワーをモニタするために、利得媒体110に入力される光の1%を取り出すこととしてもよい。同様に、パワーモニタ148は、利得媒体110の出力光パワーに応じた電気モニタ信号を生成する。利得媒体110によって増幅され、モニタ148によってモニタされた光信号は、光ファイバ108に出力される。
【0044】
同じように、利得媒体111は、光ファイバ102から入力され、パワーモニタ142によってモニタされた光信号を増幅する。利得媒体111によって増幅された光信号は、パワーモニタ149によってモニタされ、光ファイバ109に出力される。
【0045】
それぞれの利得媒体110および利得媒体111による光増幅のための励起光は、それぞれのファイバ133およびファイバ134を通して供給される。励起光は、可変結合装置130から出力される。可変結合装置130は、それぞれのファイバ133およびファイバ134が接続される2つの入力ポートを有する。ファイバ131およびファイバ132は、それぞれの励起レーザー120および励起レーザー121の出力に接続される。
【0046】
それぞれのファイバ131、132、133、および134におけるそれぞれの光パワーは、P
131、P
132、P
133、およびP
134と表される。可変結合装置130の結合係数をCで表わし、透過率をTで表わすと、パワー間の関係は典型的には以下のようになる。
【0047】
透過率Tは低損失デバイスでは高く、典型的には0.98を上回る。結合係数Cは、可変結合装置130に対して制御され、0と1との間に調整される。パワーP
131およびP
132は、励起レーザー120および励起レーザー121のそれぞれの出力パワーである。利得媒体110および利得媒体111に供給される励起パワーは、それぞれパワーP
133およびP
134である。
【0048】
制御装置140は、可変結合装置130の結合係数Cだけではなく、励起レーザー120および励起レーザー121も制御する。この制御は、インタフェース150によって提供される増幅器設定パラメータに従って、励起レーザー120および励起レーザー121の動作情報に従って、およびパワーモニタ141、142、148、149によって提供されるパワーモニタ情報に従って行われる。
【0049】
モニタ148およびモニタ149の出力パワーに応じた制御は、2つの利得媒体110および111に対して個別に行われる。励起レーザー120および励起レーザー121の制御は、モニタ値および増幅器設定パラメータに応じて個別に行われる。その結果、励起レーザーの1つがオフにされることがある。この場合、制御装置140は更新された動作値を格納し、オフにされた励起レーザーに対して最後に格納された値に従って制御が実行される。
【0050】
あるいは、制御装置140は、インタフェース150によって提供される増幅器設定パラメータに従って、励起レーザー120および励起レーザー121の動作情報に従って、そしてパワーモニタ148およびパワーモニタ149によって提供されるパワーモニタ情報に従って、独自に制御を行うこととしてもよい。この場合、パワーモニタ141およびパワーモニタ142によって提供される情報は、制御のためには使用されない。
【0051】
2つの利得媒体110、111を含み、制御装置140によって制御される2つの増幅器は、典型的には同じ場所に配置されるので、短距離ファイバによって励起パワーを伝送するための損失は無視できる。入力用のそれぞれの光ファイバ101、102、および出力用のそれぞれの光ファイバ108、109を有する2つのファイバは、一方向の態様で構成されることとしてもよい。
【0052】
あるいは、ファイバは双方向の態様で構成されていてもよく、これらのうち光ファイバ101、109はそれぞれ入力用ファイバであり、光ファイバ108、102はそれぞれ出力用のファイバである。この場合、パワーモニタ142は利得媒体111の出力パワーをモニタし、パワーモニタ149は同じ利得媒体への入力パワーをモニタする。利得媒体と、アイソレータやWDMカプラーなどのそれに取り付けられた構成部品は、光信号の伝搬方向に従って構成される。
【0053】
制御装置140による制御に応じて、励起レーザー120および励起レーザー121の励起光は、可変結合装置130によって分けられる。励起レーザー120および励起レーザー121の出力は、励起レーザー120および励起レーザー121の最小電力消費に向けて設定される。
【0054】
制御装置140による制御によれば、利得媒体110および利得媒体111による増幅のために、必要以上の励起パワーを用いることはない。このような制御は、光ファイバ101および光ファイバ102の入力信号が低減したとき、または必要な出力パワーが増加したときでも有効である。
【0055】
本実施形態によれば、利得媒体110、111を有する2つの光増幅器の電力消費は、増幅器の耐用期間の間に低減する。電力消費の低減は、これらの増幅器が異なる帯域幅で使用される場合、またはネットワークの耐用期間にわたって帯域幅が変化する場合に、必要な光励起パワーの相違の原因となるシステムの経年劣化に対して効果がある。
【0056】
図2に示した構成において、励起レーザー120および励起レーザー121はそれぞれ同一種類のレーザーである。それらの特性は類似している。利得媒体110および利得媒体111に必要な合計の励起パワーが中程度である場合、制御装置140はいずれかをオフにし、他方を使用して総励起パワーを生成し、利得媒体110と利得媒体111との間で励起光を適切に分けるように可変結合装置130を構成する。例えば、励起レーザー120がオンであり、励起レーザー121がオフとなる。レーザー120の特性が経年劣化によって低下した場合、使用されていないレーザー121の効率の方が優れることになる。その結果、制御装置140は徐々にレーザー121をオン状態とし、レーザー121からのより多くのパワーを用いる。それらの相対的な効率、および利得媒体110と利得媒体111に対して必要な励起パワーに応じて、励起レーザー120をオフとしてもよいし、レーザー121によってのみ励起パワーを生成することとしてもよい。制御装置140は、可変結合装置130を適切に制御する。
【0057】
あるいは、励起レーザー120は、非常に高い励起パワーを出力することができるレーザーであり、励起レーザー121は、中程度のレーザーパワーだけを出力することができるレーザーである。すなわち、励起レーザー120と励起レーザー121は複数種類のレーザーであり、異なる仕様を有する。例えば、レーザー120は冷却された励起レーザーであってもよく、レーザー121は冷却されていない励起レーザーであってもよい。パッケージおよびチップ構造に応じて、レーザー121の効率はよくなる。
【0058】
利得媒体110および利得媒体111によって増幅される光信号の帯域幅が制限されている場合、低い励起パワーだけが必要となる。この場合、制御装置140は励起レーザー121のみをオンとし、励起レーザー120はオフにされる。可変結合装置130は、制御装置140によって適切に構成される。
【0059】
増幅される光信号の帯域幅が拡大すると、より多くの励起パワーが必要となる。励起レーザー121のパワーが限界に達し、したがって効率がゼロになった場合、制御装置140はより多くの励起パワーを供給するために励起レーザー120をオンにし、励起レーザー120および励起レーザー121を最小電力消費設定に設定し、可変結合装置130の結合係数を適切に調整する。
【0060】
図2に示した構成において、利得媒体110および利得媒体111を有する増幅器は、自動パワー制御方式で用いられる。制御装置140による制御は、インタフェース150によって提供される増幅器設定パラメータに従い、励起レーザー120および励起レーザー121の動作情報に従い、そしてパワーモニタ148およびパワーモニタ149によって提供されるパワーモニタ情報に従って行われる。パワーモニタ141およびパワーモニタ142によって提供される情報は使用されない。
【0061】
あるいは、利得媒体110および利得媒体111を有する増幅器は、自動ゲイン制御方式で用いられる。制御装置140による制御は、インタフェース150によって提供される増幅器設定パラメータに従い、励起レーザー120および励起レーザー121の動作情報に従い、そしてパワーモニタ141、142、148、および149によって提供されるパワーモニタ情報に従って行われる。パワーモニタ141のパワーモニタ148に対する比率についての情報は、利得媒体110による利得に関する情報を提供する。同じように、パワーモニタ142のパワーモニタ149に対する比率についての情報は、利得媒体111による利得に関する情報を提供する。
【0062】
あるいは、利得媒体110および利得媒体111を含む増幅器は、自動電流制御方式で用いられる。制御装置140による制御は、インタフェース150によって提供される増幅器設定パラメータに従い、そして励起レーザー120および励起レーザー121の動作情報に従って行われる。パワーモニタ141、142、148、および149によって提供される情報は、制御には使用されない。増幅の目標値は、励起レーザー120および励起レーザー121の駆動電流の合計を用いて設定される。
【0063】
あるいは、増幅の目標値は、結合係数Cとその補完である(1−C)を考慮して、励起レーザー120および励起レーザー121の駆動電流の合計を用いて設定される。
【0064】
Nを正の整数としたときの2N個の増幅器を制御する場合、
図2に示した構成を並列して用いることができることは明らかである。この場合、それぞれが
図2に記載した装置と同様であるN個の増幅システムが用いられる。
【0065】
図3は、
図2に示した可変結合装置130として用いることができる可変光カプラー200の構成を示すブロック図である。可変光カプラー200は、2つの入力ファイバ201および202と、2つの出力ファイバ203および204を有する。可変光カプラー200は、そのコアがエバネッセント結合しうる2本の結合ファイバ210および211を備える。
【0066】
結合係数は、外部信号によって作動する制御器220によって調整される。可変光カプラー200が
図2に示した可変結合装置130として用いられる場合、制御器220は
図2の制御装置140によって作動させられる。制御器220は、結合ファイバ210および211を変位させるステップモータによって構成することができる。このようなファイバは典型的には0.1dBのオーダの非常に低い挿入損失を有する。結合係数の制御は、結合係数を変更する場合のみに、非常に低い電力消費を必要とする。
【0067】
図4は、
図2に示した可変結合装置130として用いることができる可変結合器300の構成を示すブロック図である。可変結合器300は、偏光ビーム結合器310、偏光制御器311、および偏光ビームスプリッタ312を有する。可変結合器300は、偏光ビーム結合器310の入力である2つの入力ファイバ301と302とを有する。可変結合器300は、偏光ビームスプリッタ312の出力ファイバである2本の出力ファイバ303と304とを有する。
【0068】
2つの直線偏光は、偏光ビーム結合器310によって直交して結合される。可変結合器300が
図2に示した可変結合装置130として用いられる場合、入力ファイバ301と302は偏波保持ファイバであり、そのため励起レーザー120と励起レーザー121の直線偏光出力は保持され、その後に結合される。可変結合器300の結合係数は、外部信号によって作動させられる偏光制御器311によって調整される。可変結合器300が
図2に示した可変結合装置130として用いられる場合、偏光制御器311は
図2の制御装置140によって作動させられる。偏光制御器311は、偏光ビーム結合器310の出力光の偏光を、偏光ビームスプリッタ312の軸に対して回転させる。その結果、2つの入力光を結合させた結果生じる光は、偏光ビームスプリッタ312の2つの直交偏光軸上にマッピングされる。
【0069】
図5は、マッハ・ツェンダー干渉計400の構成を示すブロック図であり、マッハ・ツェンダー干渉計400は
図2に示した可変結合装置130として用いることができる。マッハ・ツェンダー干渉計400は、2つの入力ファイバ401、402と、強め合う干渉および弱め合う干渉の出力が伝搬する2つの出力ファイバ403、404を有する。マッハ・ツェンダー干渉計400は、干渉計構造410、および干渉計構造410の片方のアームに配置されたヒータ411を有する。干渉計構造410は、挿入損失を低減するために、ファイバで作られたものでもよい。結合係数は制御器412によって調整される。制御器412は、外部信号によって作動させられ、それに応じてヒータ411を制御する。ヒータ411の設定に応じて、干渉計構造410の両アーム間に位相差が現れる。
【0070】
マッハ・ツェンダー干渉計400が
図2に示した可変結合装置130として用いられる場合、制御器412は
図2の制御装置140によって作動させられる。この場合、励起レーザー120および励起レーザー121は、それらの波長が互いに異なるように選択される。制御を容易にするために、波長間隔が干渉計のフリースペクトルレンジの半分より大きくなるように波長を設定することができる。ヒータ411によって調整された位相差に応じて、2つの入力パワーの結合されたものが、強め合う干渉出力として出力ファイバ403を通して出力され、その相補成分が弱め合う干渉出力として出力ファイバ404を通して出力される。
【0071】
図6は、
図2に示した励起レーザー120および励起レーザー121のいずれかとして用いることができるレーザー装置500の構成を示すブロック図である。レーザー装置500は、2つの励起レーザーダイオード520および521を有する。励起レーザーダイオード520および励起レーザーダイオード521の出力光は、偏光ビーム結合器522によって結合され、ファイバ530を通して出力される。制御器510は、外部信号に従って励起レーザーダイオード520および励起レーザーダイオード521の両方の出力を制御し、励起レーザーダイオード520および励起レーザーダイオード521のモニタ値を外部制御システムに戻す。
【0072】
制御器510および偏光ビーム結合器522だけでなく、励起レーザーダイオード520、521もパッケージ501に集積することとしてもよい。レーザー装置500が
図2に示した励起レーザー120として用いられる場合、制御器510は、
図2の制御装置140による制御に従って励起レーザーダイオード520および励起レーザーダイオード521の両方を駆動する。このようにして、冗長構成とした励起レーザーダイオードを本実施形態における単一のレーザーとして制御することができ、これによって
図2の光増幅装置100の信頼性も高められる。
【0073】
図7は、
図2に示した可変結合装置130だけではなく励起レーザー120および励起レーザー121の代わりにも用いることができる励起装置600の構成を示すブロック図である。励起装置600は、2つのレーザーダイオードチップ610、611、および可変結合装置620を有する。励起装置600は、パッケージ603内に取り付けられる。励起装置600は、2つの出力601、602を備え、これらが可変結合装置620の出力である。
【0074】
レーザーダイオードチップ610およびレーザーダイオードチップ611は外部制御システムによって駆動される。レーザーダイオードチップ610およびレーザーダイオードチップ611の駆動条件は、外部制御システムによって設定される。可変結合装置もまた、励起装置600の外部から制御される。例えば、可変結合装置620は可変カプラーで実現することができるが、可変カプラーはレーザーダイオードチップ610およびレーザーダイオードチップ611と集積することができ、外部制御システムからの電流によって作動させられる。
【0075】
励起装置600が、
図2の可変結合装置130だけでなく励起レーザー120および励起レーザー121の代わりに用いられる場合、可変結合装置620だけでなくレーザーダイオードチップ610およびレーザーダイオードチップ611も、制御装置140によって同じように制御される。レーザーダイオードチップ610およびレーザーダイオードチップ611の駆動状態は、制御装置140によってモニタされる。励起装置600を用いることにより、増幅器を制御することによる電力削減に加えて、集積化によるコスト低減を図ることができる。
【0076】
上述したように、本実施形態の光増幅装置100によれば、複数の光増幅器の間で必要な励起パワーに相違がある場合であっても、複数の光増幅器の電力消費を低減することができる。
<第3の実施形態>
【0077】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態による光増幅装置700の構成を示すブロック図である。
【0078】
光増幅装置700は、710、711、712、および713と表示された4つの受動利得ブロックを有する。これらの受動利得ブロック710から713のそれぞれは、利得媒体110が
図2に示したパワーモニタ141および148と集積された装置と同様である。受動利得ブロックのそれぞれは、シングルモードファイバ入力とシングルモードファイバ出力を有する。各受動利得ブロックのパワーモニタは制御装置740に備えられている。
【0079】
制御装置740は、制御装置140と同様の態様で制御を実行する。しかしながら、制御装置740はより多くの受動利得ブロック、励起レーザー、および可変結合装置とともに動作するように構成されている。制御装置740は、受動利得ブロック710から713を用いる増幅器を設定するためのパラメータをも所持している。
【0080】
受動利得ブロック710および711に対する光励起は、可変結合装置732の2つの出力によって提供される。受動利得ブロック712および713に対する光励起は、可変結合装置733の2つの出力によって提供される。可変結合装置732の2つの入力は、可変結合装置730の1つの出力と可変結合装置731の1つの出力に接続されている。可変結合装置733の2つの入力は、可変結合装置730の1つの出力と可変結合装置731の1つの出力に接続されている。可変結合装置730の2つの入力は、励起レーザー720および721に接続されている。可変結合装置731の2つの入力は、励起レーザー722および723に接続されている。
【0081】
励起レーザー720から723は、
図2に示した励起レーザー120および121と同じである。可変結合装置730から733は、
図2の可変結合装置130と同じである。
【0082】
制御装置740は、可変結合装置730から733の結合係数Cだけでなく、励起レーザー720から723も制御する。この制御は、制御装置740の内部に備えられた増幅器設定パラメータに従い、励起レーザー720から723の動作情報に従い、そして受動利得ブロック710から713によって提供されるパワーモニタ情報に従って実行される。出力パワーに応じた制御は、4つの受動利得ブロック710から713に対して個別に実行される。
【0083】
励起レーザー720から723の制御は、モニタ値および増幅器設定パラメータに応じて個別に行われる。励起レーザーの少なくとも1つはオフにされてもよい。この場合、制御装置740は更新された動作値を格納し、オフにされた励起レーザーに対して最後に格納された値に従って制御を行う。
【0084】
4つの励起レーザー720から723の励起光は、可変結合装置の2x2の交差構造によって、4つの受動利得ブロック710から713のそれぞれに分配される。
図8に記載したものと同じ構造を、2N個の受動利得ブロックに適用することができる。ここで、Nは正の整数であり、2N個のレーザーと、N個の可変結合装置をN列に格子状に構成したN
2個の可変結合装置とを有する。
【0085】
あるいは、コスト低減のために、励起レーザー720から723のうち最大3個のレーザーを、
図8に示した構成から取り除いてもよい。この場合、このような構成としても、4個の受動利得ブロック710から713に対して励起光を正しく提供することが可能である。
【0086】
制御装置740による制御に従って、励起レーザー720から723の励起光は、可変結合装置によって分けられる。励起レーザー720から723の各出力は、励起レーザーの電力消費が最小になるように設定される。
【0087】
制御装置740による制御によれば、受動利得ブロック710から713の増幅のために、必要以上の励起パワーを必要としない。入力光ファイバの入力信号が減少したとき、または必要な出力パワーが増加したときでも、このような制御は有効である。
【0088】
本実施形態の光増幅装置700によれば、受動利得ブロックを含む4つの光増幅器の電力消費が、増幅器の耐用期間の間に低減する。電力消費の低減は、増幅器が種々の帯域幅で使用される場合、または帯域幅がネットワークの耐用期間にわたって変化する場合に、必要な光励起パワーの相違の原因となるシステムの経年劣化に対して有効である。
【0089】
上述したように、本実施形態の光増幅装置700によれば、複数の光増幅器の間で必要な励起パワーに相違がある場合であっても、複数の光増幅器の電力消費を低減することができる。
<第4の実施形態>
【0090】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図9は、本発明の第4の実施形態による光増幅装置800の構成を示すブロック図である。
【0091】
光増幅装置800は、C01からC07と表示された7コアを備えたマルチコアエルビウム添加ファイバ(MC−EDF)810を有する。各コアは、個別の利得媒体であり、同じファイバ810に含まれる。入力信号は、コアC01からC07に対して801から807と表示されている。それぞれの出力信号は891から897と表示されている。
【0092】
7コアを有するパワーモニタ841は、MC−EDF810への入力信号のパワーを個別にモニタする。モニタ信号は、パワーモニタ841によって入力コア毎に個別に生成される。7コアを有するパワーモニタ842は、MC−EDF810からの出力信号のパワーを個別にモニタする。モニタ信号は、パワーモニタ842によって出力コア毎に個別に生成される。パワーモニタの情報は、制御装置840に提供される。
【0093】
制御装置840は、
図8に示した制御装置740と同様の方法で制御を実行するが、より多くの利得ブロック、励起レーザー、および可変結合装置と共に動作するように構成されている。制御装置840は、コアC01からC07を含む増幅器を設定するためのパラメータも所持している。
【0094】
MC−EDF810は個別コア励起方式で励起される。コアC01からC07の光励起は、可変結合装置833、834、835、および836によって提供される。他の3つの可変結合装置830から832は、820から822と表示された3つの励起レーザーによって生成された励起光を結合して分配するために、可変結合装置833から836と組み合わせて用いられる。
【0095】
各励起レーザーは、可変結合装置の入力に接続される。各可変結合装置830、832および833は、励起レーザーまたは他の可変結合装置の出力のいずれかに接続される2つの入力ポートを有する。各可変結合装置831、834、835、および836は、励起レーザーまたは別の可変結合装置の出力のいずれかに接続される1つの入力ポートを有しているが、他方の入力ポートは非接続のままである。830から836と表示された可変結合装置の各出力ポートは、MC−EDF810のコアまたは別の可変結合装置の入力ポートのいずれかに接続される。
【0096】
ここで、励起レーザーの個数(3)は1より大きいが、個々の利得媒体の個数(7)よりも小さい。可変結合装置の個数(7)は利得媒体の個数の半分(3.5)より大きいが、その二乗(49)よりは小さい。
【0097】
制御装置840は、830から836と表示された可変結合装置の結合係数Cだけでなく、820から822と表示された励起レーザーも制御する。この制御は、制御装置840に内部に備えられた増幅器設定パラメータに従い、励起レーザー820から822の動作情報に従い、そして、パワーモニタ841および842によって提供されるパワーモニタ情報に従って実行される。MC−EDF810の7個の利得媒体C01からC07に対して、出力パワーに応じた制御が個別に行われる。820から822と表示された励起レーザーの制御は、モニタ値および増幅器設定パラメータに応じて個別に行われる。励起レーザーの少なくとも1つはオフにされてもよい。この場合、制御装置840は更新された動作値を格納し、オフにされる励起レーザーに対して最後に格納された値に従って制御を実行する。
【0098】
制御装置840による制御に応じて、820から822と表示された励起レーザーの励起光は、可変結合装置によって分けられる。励起レーザー820から822の出力は、励起レーザーの最小電力消費に設定される。制御装置840による制御によれば、MC−EDF810のコアC01からC07の増幅のために、必要以上の励起パワーを必要としない。入力ファイバの入力信号が減少したとき、または必要な出力パワーが増加したときでも、このような制御は有効である。
【0099】
本実施形態によれば、MCF光増幅器の電力消費が、増幅器の耐用期間の間に低減する。電力消費の低減は、増幅器が種々の帯域幅で使用される場合、またはネットワークの耐用期間にわたって帯域幅が変化する場合に、必要な光励起パワーの相違の原因となるシステムの経年劣化に対して有効である。
【0100】
上述したように、本実施形態の光増幅装置800によれば、複数の光増幅器の間で必要な励起パワーに相違がある場合であっても、複数の光増幅器の電力消費を低減することができる。
<第5の実施形態>
【0101】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
図10は、本発明の第5の実施形態による光増幅装置900の構成を示すブロック図である。
【0102】
光増幅装置900は、910および911と表示された2個のマルチコアエルビウム添加ファイバ(MC−EDF)を有する。例えば、MC−EDFは10個のコアを有することとしてもよい。MC−EDF910および911は、入力信号と出力信号のパワーを個別にモニタするマルチコア・パワーモニタを備える。パワーモニタに関する情報は制御装置940に提供される。制御装置940は、第4の実施形態の制御装置840と同様の方法で制御を実行する。
【0103】
MC−EDF910および911は、共通クラッド励起方式で励起される。クラッド励起のためのマルチモード光励起は、可変結合装置930によって提供される。可変結合装置930は、マルチモード励起レーザー920および921に接続される2つの入力ポートを備える。
【0104】
制御装置940は、可変結合装置930の結合係数Cだけでなく、マルチモード励起レーザー920および921も制御する。この制御は、制御装置940の内部に備えられた増幅器設定パラメータに従い、マルチモード励起レーザー920および921に関する動作情報に従い、そしてMC−EDF910および911内に集積されたパワーモニタによって提供されるパワーモニタ情報に従って実行される。出力パワーに応じた制御が、MC−EDF910および911に対して実行される。
【0105】
マルチモード励起レーザー920および921の制御は、モニタ値および増幅器設定パラメータに応じて個別に行われる。したがって、マルチモード励起レーザーの1つはオフにされてもよい。この場合、制御装置940は更新された動作値を格納し、オフにされたマルチモード励起レーザーに対して最後に格納された値に従って制御を行う。制御装置940による制御によれば、マルチモード励起レーザー920および921の励起光は、可変結合装置930によって分けられ、マルチモード励起レーザー920および921の出力は、マルチモード励起レーザーの電力消費が最小になるように設定される。
【0106】
本実施形態の光増幅装置900によれば、上述した実施形態と同様に、複数の光増幅器の間で必要な励起パワーに相違がある場合であっても、複数の光増幅器の電力消費を低減することができる。
<第6の実施形態>
【0107】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態では、第2の実施形態による
図2の光増幅装置100の動作例を、
図11に示したフローチャートを参照して説明する。
【0108】
図11は、光増幅装置100を用いた光信号増幅方法を示すフローチャートである。
【0109】
制御装置140は、まず、パワーモニタ148、149によって提供されるモニタ情報を用い、それらのモニタ情報を、インタフェース150によって提供される自動パワー制御目標とそれぞれ比較する。制御装置140は、両方のパワーモニタに対して、モニタされたパワーの目標パワーに対する比率を算出する(ステップ1001)。
【0110】
2つの算出された比率が等しい場合(ステップ1001/Yes)、制御装置140はステップ1003に直接進む。算出された比率が等しくない場合(ステップ1001/No)、制御装置140は、比率を等しくするために、可変結合装置130の結合係数Cを制御する(ステップ1002)。この時点では、比率が等しいかどうかをさらにチェックする必要はなく、制御装置140はステップ1003に直接進むことができる。パワー制御目標の1つがゼロである場合、ゼロでない目標を有するパワーモニタに基づいて、制御後にC=0およびC=1である結合係数の値だけが可能である。
【0111】
制御装置140は、その電力消費効率に応じて励起レーザー120および121をランク付けする(ステップ1003)。この効率は、励起レーザー120および121内に集積されたモニタフォトダイオードにより制御装置140に提供されたモニタ出力パワーの、励起レーザー120および121に供給される駆動動作電流に対する比率として算出されることとしてもよい。あるいは、モニタ出力パワーを動作電流と励起電流の合計で、またはそれらの二乗値の合計で割ることによって、励起レーザーに対してこの比率を算出することとしてもよい。
【0112】
オフにされた励起レーザーに対しては、励起レーザーの最後の動作値の保存されている値を用いて、効率を算出する。その結果、励起レーザー120および121の1つが最も高いランクを有し、他の1つが低いランクを有することになる。
【0113】
次に、パワーモニタ148によって提供されたモニタパワー情報を、インタフェース150によって提供されるその目標値と比較する(ステップ1004)。モニタ値が目標値よりも大きい場合(ステップ1004/Yes)、効率が最も低い励起レーザーにより出力されるパワーを低下させる(ステップ1005)。最も低いランクの励起レーザーの動作電流がゼロに達した場合、それはオフにされ、その最後の効率値は制御装置140に記憶される。ランクが最も低い励起レーザーが既にオフになっている場合、代わりに次に高いランクのレーザーを制御して、その出力パワーを低下させる。
【0114】
次に、パワーモニタ148によって提供されたモニタパワー情報を、インタフェース150によって提供されるその目標値と再び比較する(ステップ1006)。モニタ値が目標値より小さい場合(ステップ1006/Yes)、最も効率が高い励起レーザーにより出力されるパワーを増加させる(ステップ1007)。最高ランクの励起レーザーの動作電流が上限に達した場合、代わりに次に高いランクのレーザーを制御して、その出力パワーを増加させる。
【0115】
次に、パワーモニタ148によって提供されたモニタパワー情報を、インタフェース150によって提供されたその目標値と再び比較する(ステップ1008)。両者の値が等しい場合(ステップ1008/Yes)、制御ループはステップ1001に戻る。両者の値が等しくないか、または許容範囲外である場合(ステップ1008/No)、制御ループはステップ1004に戻る。
【0116】
このようにして、
図2の制御装置140は、3つのパラメータ、すなわち、可変結合装置130の結合係数C、励起レーザー120の出力、および励起レーザー121の出力を、2つのパワーモニタ148および149に従って制御することができる。これにより、パワーモニタ148および149の出力の目標値と実際の値だけを用いているにもかかわらず、電力消費の低減を実現し維持することができる。
【0117】
上記の説明では、励起レーザーの出力パワーを低下させるステップ(ステップ1005)、および励起レーザーの出力パワーを増加させるステップ(ステップ1007)を、モニタパワーの目標パワーに対する比率を算出するステップ(ステップ1001)、およびこの比率を等しくするために結合係数Cを制御するステップ(ステップ1002)の後に実行することとした。しかしながら、出力パワーを低下させるステップ(ステップ1005)および出力パワーを増加させるステップ(ステップ1007)を、比率を算出するステップ(ステップ1001)および結合係数Cを制御するステップ(ステップ1002)の前に実行することとしてもよい。
【0118】
図8に示した第3の実施形態による制御装置740に対しても、同様の制御方法を適用することができる。この場合、ステップ1001およびステップ1002は、730から733の各可変結合装置について繰り返される。各可変結合装置について、目標値とモニタ値の比率を、制御される可変結合装置の出力が接続される利得媒体の異なる組と比較する。
【0119】
N個の利得媒体に対して最大でN
2個の可変結合装置が存在するため、比較可能な可変結合装置の十分な数のペアが存在する。同じケースでは、励起レーザー120から123の全てがステップ1003でランク付けされる。その結果、4つのランクが作成される。同じモニタ情報を用いて、最高ランクおよび最低ランクのLDを制御することができる。
【0120】
最高ランクの効率を有するレーザーにより出力される光パワーを増加させ、最低ランクの効率を有するレーザーにより出力される光パワーを同じ比率で低下させる追加ステップを、ステップ1008とステップ1001との間に追加することができる。この追加ステップの効果は、光増幅装置の電力消費の低減を効果的に早めることである。
【0121】
次に、
図2の第2の実施形態の光増幅装置100の別の動作例を、
図12に示したフローチャートを参照して説明する。
【0122】
図12は、光増幅装置100を用いた光信号増幅方法を示すフローチャートである。
【0123】
まず、ステップ1101は
図11のステップ1001と同一である。2つの算出された比率が等しい場合(ステップ1101/Yes)、制御装置140はステップ1103に直接進む。算出された比率が等しくない場合(ステップ1101/No)、制御装置140は、その比率を等しくするために、可変結合装置130の結合係数Cを制御する(ステップ1102)。ステップ1101およびステップ1102は、ステップ1101で算出された比率が等しくなるまで繰り返される。
【0124】
ステップ1103、1104、1105、1106、および1107は、
図11のそれぞれのステップ1003、1004、1005、1005、1006、および1007と同じである。しかしながら、ステップ1105およびステップ1107の後に、制御ループはステップ1101にジャンプする。ステップ1106の後に、制御ループはステップ1101にジャンプする。
【0125】
このようにして、
図2の制御装置140は3つのパラメータ、すなわち、可変結合装置130の結合係数C、励起レーザー120の出力、および励起レーザー121の出力を、2つのパワーモニタ148および149に従って制御することができる。これにより、パワーモニタ148および149の出力の目標値と実際の値だけを用いているにもかかわらず、電力消費の低減を実現し、維持することができる。
【0126】
図11に示した制御方法と同じく、
図12に示した制御方法を、
図8、
図9、および
図10に示した制御装置740、840、および940にそれぞれ適用することができる。
【0127】
最高ランクの効率を有するレーザーにより出力される光パワーを増加させ、最低ランクの効率を有するレーザーにより出力される光パワーを同じ比率で低下させる追加ステップを、ステップ1106とステップ1101との間に追加することができる。この追加ステップの効果は、光増幅装置の電力消費の低減を効果的に早めることである。
【0128】
図13Aは、
図2の励起レーザー120の電力消費のシミュレーション結果を示す図であり、出力光励起パワーに対してプロットしたものである。しきい値効果が存在することが明らかである。このことは、利得媒体の光励起に必要なハイパワーが達成される前に、ある程度のエネルギーが消費される必要があることを意味している。したがって、いくつかの利得媒体の間で同じレーザーダイオードを共有することにより、光増幅の電力低減がもたらされる。
【0129】
図13Bは、ネットワークにおけるトラフィックの進展をシミュレーションした結果を示す図である。このシミュレーションにおいては、
図8に示した第3の実施形態による光増幅装置700を用いた。
【0130】
各曲線1211、1212、1213、および1214は、ネットワークの耐用期間の間に各受動利得ブロック710、711、712、および713を通過するトラフィックを表す。最初は、トラフィックは通常程度である。その結果、利用可能なWDM波長の一部のみが受動利得ブロック710を通過する。時間が経過するに従ってトラフィックは増加し、より多くの波長が使用される。すなわち、受動利得ブロック710に加えて、受動利得ブロック711、712、および713によって増幅される波長が徐々に用いられる。
【0131】
図13Cは、
図8に示した第3の実施形態による光増幅装置700の電力消費をシミュレーションした結果を示す図である。シミュレーションは、
図13Bに示したトラフィック条件の下で行った。
【0132】
曲線1223は、
図11に記載したものと同様の制御方法によって制御した、
図8の光増幅装置に対するシミュレーション結果を示す。比較のために、曲線1221が同じグラフ上にプロットされているが、これは、各受動利得ブロックが専用の励起レーザーを備えている従来の増幅と同一条件の下における電力消費を表わしている。比較のためにまた、曲線1222は、固定比の光カプラーを用いた光増幅器の同一条件の下での電力消費を表す。
【0133】
曲線1223は曲線1221および1222よりも常に低いことからわかるように、実施形態の光増幅装置によって、光信号が増幅されるファイバ間でトラフィックが変化する場合であっても、ネットワークの耐用期間にわたって光増幅の電力消費を効率よく低減することが可能になる。
<第7の実施形態>
【0134】
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
図14は、本発明の第7の実施形態による光増幅装置を用いたネットワークシステム1300の構成を示すブロック図である。
【0135】
ネットワークシステム1300は、トランスポンダが集約されているノード装置を有する。ノード装置1310のトランスポンダは、光信号を波長で多重化し、また4本のファイバ線によって空間的にも多重化しており、トランスポンダが集約されている別のノード装置1311と連結している。ノード装置1310とノード装置1311との間には、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)の2つのグループ1321と1322が光ファイバのスパン間に配置されている。
【0136】
EDFA1321および1322のそれぞれは、
図8に示した光増幅装置700と同様の構成としてもよい。あるいは、EDFA1321および1322のそれぞれは、
図2に示した光増幅装置100を2セット並列に用いるのと同様の構成としてもよい。また、ノード装置1310とノード装置1311の間の光ファイバはマルチコアファイバであり、EDFA1321および1322は、
図9に示した光増幅装置800を4セット並列に用いるのと同様の構成としてもよい。あるいは、ノード装置1310とノード装置1311との間の光ファイバはマルチコアファイバであり、EDFA1321および1322は、
図10に示した光増幅装置900を2セット並列に用いるのと同様の構成としてもよい。
【0137】
ノード装置1310および1311に集約されているトランスポンダによって伝送されるトラフィックの変動に応じて、EDFA1321、1322、それらの励起レーザー、および可変結合装置の設定が変更される。
図11に記載した制御方法に従って、この設定を変更してもよい。あるいは、
図12に記載した制御方法に従って、この設定を変更してもよい。ネットワークシステムにおける光増幅の電力消費は、それに応じて低減される。
【0138】
さらに、EDFA1321とEDFA1322の間の光ファイバの一部は修復やスプライスされることがあるが、それによって、さらなるスパン損失が生じる。この場合、EDFAの設定を、
図11または
図12に記載した制御方法に従って再び変更することとしてもよい。ネットワークシステムにおける光増幅の電力消費は、それに応じて低減される。
【0139】
図15は、
図14のネットワークシステム1300をセットアップするために必要な時間をシミュレーションした結果を示す図である。このシミュレーションでは、EDFA1321およびEDFA1322のそれぞれは、
図8に示した第3の実施形態の光増幅装置700と同様である。セットアップ時間は、ノード装置1310および1311のトランスポンダの波長情報を導入してから、EDFA1321および1322が安定化するまでの経過時間を意味する。
【0140】
棒グラフ1410は、EDFA1321および1322を
図11に記載した手順によって制御するのに必要な時間を表す。参考のために示した棒グラフ1411は、ネットワークシステムの同じ条件に対して必要となる時間を表すが、この場合のEDFA1321および1322のセットアップ値は、
図8の可変結合装置とレーザーダイオードの値を、動作を開始する前に取り得る値にわたってスキャンすることによって決定される。本実施形態によって、ネットワークシステムの増幅器をより迅速に設定することができることがわかる。
【0141】
上述したように、第7の実施形態による光増幅装置を用いたネットワークシステム1300によれば、いくつかの光増幅器を用いたネットワークの設定時間を短縮することができる。すなわち、ネットワークの設置から光信号の実際の伝送までの時間を短縮することができる。
【0142】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0143】
(付記1)複数の光信号を増幅する複数の光増幅手段と、前記複数の光増幅手段のそれぞれは利得媒体を含み、複数のレーザー光を生成する複数のレーザー光生成手段と、結合係数に従って可変的に前記複数のレーザー光を結合し、複数の励起光を出力する少なくとも1つの光結合手段と、前記複数の励起光のそれぞれは前記利得媒体を励起し、前記結合係数と、前記複数のレーザー光生成手段のそれぞれの出力パワーとを制御する制御手段、を有する光増幅装置。
【0144】
(付記2)付記1に記載した光増幅装置であって、前記少なくとも1つの光結合手段は、複数の光結合手段を含み、前記制御手段は、前記複数の光結合手段のそれぞれの前記結合係数を制御する。
【0145】
(付記3)付記1または2に記載した光増幅装置であって、前記利得媒体は、マルチコアファイバに含まれるコアであり、前記複数のレーザー光生成手段のそれぞれは、前記複数の励起光のそれぞれによって前記利得媒体を直接励起する。
【0146】
(付記4)付記1または2に記載した光増幅装置であって、前記利得媒体はマルチコアファイバであり、前記複数のレーザー光生成手段のそれぞれは、前記マルチコアファイバのクラッドを励起することによって前記利得媒体を励起し、前記複数の励起光のそれぞれはマルチモード光である。
【0147】
(付記5)付記1から4のいずれか一項に記載した光増幅装置であって、正の整数Nで表される前記複数の光増幅手段の個数、正の整数Mで表される前記少なくとも1つの光結合手段の個数、および、正の整数Lで表される前記複数のレーザー光生成手段の個数は、
という関係式を満たす。
【0148】
(付記6)付記5に記載した光増幅装置であって、L=N=M
2/4という関係式が満たされる。
【0149】
(付記7)付記5に記載した光増幅装置であって、L=N=M/2という関係式が満たされる。
【0150】
(付記8)付記1から7のいずれか一項に記載した光増幅装置であって、前記少なくとも1つの光結合手段は可変光カプラーであり、前記可変光カプラーは、2本の入力ファイバと、2本の出力ファイバと、コアがエバネッセント結合を行うように構成された2本の結合ファイバ、とを有し、前記制御手段は、前記2本の結合ファイバを変位させることによって前記結合係数を制御する。
【0151】
(付記9)付記1から7のいずれか一項に記載した光増幅装置であって、前記少なくとも1つの光結合手段は、直線偏光を有する前記複数のレーザー光を直交して結合させるように構成された偏光ビーム結合器と、前記偏光ビーム結合器によって出力された光の偏光を回転させるように構成された偏光制御器と、前記偏光制御器によって出力された光を分割するように構成された偏光ビームスプリッタ、とを備え、前記制御手段は、前記偏光制御器を制御することによって前記結合係数を制御する。
【0152】
(付記10)付記1から7のいずれか一項に記載した光増幅装置であって、前記少なくとも1つの光結合手段はマッハ・ツェンダー干渉計を有し、前記マッハ・ツェンダー干渉計は、干渉計構造と、前記干渉計構造の一方のアームに配置され、前記干渉計構造の両アーム間の位相差を調整するヒータ、とを有し、前記制御手段は、前記ヒータを制御することによって前記結合係数を制御する。
【0153】
(付記11)付記1から10のいずれか一項に記載した光増幅装置であって、前記複数のレーザー光生成手段のそれぞれは、同一種類のレーザー光源である。
【0154】
(付記12)付記1から10のいずれか一項に記載した光増幅装置であって、前記複数のレーザー光生成手段は、複数種類のレーザー光源であり、異なる仕様を有する。
【0155】
(付記13)複数のレーザー光を生成し、結合係数に従って可変的に前記複数のレーザー光を結合し、複数の励起光を生成し、前記複数の励起光によって、複数の光信号が通過する複数の利得媒体を励起し、前記結合係数と、前記複数のレーザー光のそれぞれの出力パワーとを制御する光信号増幅方法。
【0156】
(付記14)付記13に記載した光信号増幅方法であって、前記結合係数と前記出力パワーとを前記制御することは、前記複数の利得媒体のそれぞれを通過した光信号の出力レベルをモニタし、前記出力レベルの目標値に対する比率を算出し、前記複数の利得媒体のうちの一の利得媒体に対する前記比率を、前記複数の利得媒体のうちの別の利得媒体に対する前記比率と等しくするように、前記結合係数を制御することを含む。
【0157】
(付記15)付記14に記載した光信号増幅方法であって、前記結合係数と前記出力パワーとを前記制御することは、前記複数のレーザー光のそれぞれを生成するための効率を評価し、前記出力レベルが前記目標値よりも大きい場合、前記複数のレーザー光のなかで最低の前記効率を有するレーザー光の光パワーを減少させ、前記出力レベルが前記目標値よりも小さい場合、前記複数のレーザー光のなかで最高の前記効率を有するレーザー光の光パワーを増加させることを含む。
【0158】
(付記16)付記15に記載した光信号増幅方法であって、前記光パワーを減少させること、および前記光パワーを増加させることは、前記比率を算出すること、および前記結合係数を制御することの後に実行される。
【0159】
(付記17)付記15に記載した光信号増幅方法であって、前記光パワーを前記減少させること、および前記光パワーを前記増加させることは、前記比率を前記算出すること、および前記結合係数を前記制御することの前に実行される。
【0160】
(付記18)付記13から17のいずれか一項に記載した光信号増幅方法であって、前記複数の利得媒体は、前記複数の利得媒体のそれぞれから出力される出力信号パワーに従って、自動パワー制御方式で制御される。
【0161】
(付記19)付記13から17のいずれか一項に記載した光信号増幅方法であって、前記複数の利得媒体は、前記複数の利得媒体のそれぞれに入力される入力信号パワー、および前記複数の利得媒体のそれぞれから出力される出力信号パワーに従って、自動利得制御方式で制御される。
【0162】
(付記20)付記13から17のいずれか一項に記載した光信号増幅方法であって、前記複数の利得媒体は、前記複数のレーザー光を生成する電流に従って、自動電流制御方式で制御される。
【0163】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。