特許第6962426号(P6962426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962426ポリオレフィンフィルム、および離型用フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962426
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ポリオレフィンフィルム、および離型用フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20211025BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   B32B27/00 L
   C08L23/12
   C08L23/00
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-137991(P2020-137991)
(22)【出願日】2020年8月18日
(62)【分割の表示】特願2019-555044(P2019-555044)の分割
【原出願日】2019年9月27日
(65)【公開番号】特開2020-203486(P2020-203486A)
(43)【公開日】2020年12月24日
【審査請求日】2020年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2018-189785(P2018-189785)
(32)【優先日】2018年10月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一馬
(72)【発明者】
【氏名】大倉 正寿
(72)【発明者】
【氏名】山中 康平
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−141122(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/147355(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/147334(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/077752(WO,A1)
【文献】 特開2015−107612(JP,A)
【文献】 特開平07−214660(JP,A)
【文献】 特開平01−230641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00− 43/00
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
表層と内層のうち少なくとも一つの層に分岐鎖状ポリプロピレン樹脂を含有し、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下であり、
130℃で測定した場合のフィルム主収縮方向の直交方向の最大点強度が80MPa以上である、ポリオレフィンフィルム。
【請求項2】
少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
表層と内層のうち少なくとも一つの層に分岐鎖状ポリプロピレン樹脂を含有し、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のホモポリプロピレン樹脂、及び230℃、21.18Nの荷重で測定したメルトフローレートが5g/10分以上30g/10分以下のポリプロピレン樹脂の少なくとも一方を含有し、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下である、ポリオレフィンフィルム。
【請求項3】
前記A面の山高さSp、及び、前記A面の平均粗さSaの比であるSp/Saの値が、13未満である、請求項1または2に記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項4】
厚み方向の弾性率が2.3GPa以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項5】
示差操作熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項6】
フィッシュアイの個数が5.0個/m以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項7】
主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項8】
130℃で測定した場合のフィルム主収縮方向の直交方向の最大点強度が70MPa以
上である、請求項〜7のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリオレフィンフィルムを用いてなる離型用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型性、品位に優れた、離型用フィルムとして好適に用いることのできるポリオレフィンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、離型用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。特に、表面の離型性や機械特性に優れることから、プラスチック製品や建材や光学部材など、様々な部材の離型用フィルムや工程フィルムとして好適に用いられる。
【0003】
離型用フィルムへの要求特性は、その使用用途によって適宜設定されるが、近年、感光性樹脂などの粘着性を有する樹脂層のカバーフィルムとして用いられる場合がある。粘着性を有する樹脂層をカバーする場合、カバーフィルムの離型性が悪いと、剥がす際にきれいに剥離できず、保護面である樹脂層の形状が変化したり、保護面に剥離痕が残る場合がある。そこで、フィルム表面を粗面化し、樹脂層との接触面積を低減することで、離型性を向上させる手法が用いられる場合がある。しかしながら、カバーフィルム表面の粗度を高めていくと、粗大突起が形成しやすく、たとえば光学用部材の離型フィルムとして用いた際に、フィルムの表面凹凸が光学用部材に転写して製品の視認性に影響を及ぼす場合があった。以上のことから、光学部材など要求特性の高い離型フィルムで用いるためには、粗大突起を形成せずに、均一かつ微細に粗面化した、離型性、品位を兼ね備えたフィルムが求められる場合がある。
【0004】
粗面化の手段としては、たとえば特許文献1、2には、ポリプロピレンの結晶形態の一つであるβ晶の球晶を形成し延伸することで、フィルム表面にクレーターを形成することで粗面化し、工程搬送性を高めた例が記載されている。また、特許文献3には、フィルム内に粒子を添加し、一軸延することで、粗面化し、工程搬送性を高めた例が記載されている。また、特許文献4には、フィルムの内層に粒子を添加し、延伸することで粗面化した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/006578号
【特許文献2】特開2017−125184号公報
【特許文献3】特開2005−138386号公報
【特許文献4】特許第6115687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前述の特許文献1、2に記載の方法では、表面粗度が不十分である問題があった。また特許文献3に記載の方法も、同様に表面粗度が不十分であった。さらに特許文献4に記載の方法は、硬度の高い粒子によって粗大突起が形成され、光学用部材の樹脂層に凹凸転写する場合があった。
【0007】
そこで本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、離型性、品位に優れたポリオレフィンフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のポリオレフィンフィルムは、少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜500nmであり、A面の山高さSp、及び谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、フィルムのヘイズが30%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリオレフィンフィルムは、離型性、耐熱性、品位に優れることから、離型用フィルムとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリオレフィンフィルムは、少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、前記A面の山高さSp及びA面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下である。
本発明のポリオレフィンフィルムの少なくとも片面(A面)の平均粗さSaは、より好ましくは150〜480nm、さらに好ましくは200〜400nmである。Saが65nm未満の場合、表面保護用の離型フィルムとして用いたとき、被着体との接触面積が大きく、被着体の粘着が強い場合、きれいに剥離できず、被着体表面の形状が変化したり、被着体表面に剥離痕が残る場合がある。また、Saが600nmを超えると、表面保護用の離型フィルムとして用いたとき、被着体との接触面積が小さく、貼り合わせの搬送中に剥離してしまう場合がある。Saを65〜600nmの範囲とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に、フィルム表層に融点の低い樹脂を添加し、その融点以上の温度で、延伸することで、フィルム表面を部分的に溶融させることで粗面化することが効果的である。また、背面の打痕転写や、フィルムの搬送性の観点から、フィルムの両面共にSaが65〜600nmであることが好ましい。
【0011】
なお、フィルムの両面共に、Saが65〜600nmである場合は、Saの値が小さい方の面をA面と定義する。両面のSaが同一であった場合は、山高さSpの値が小さい方の面をA面と定義する。両面のSa、Spが共に同一であった場合は、谷深さSvの値が小さい方の面をA面と定義する。
【0012】
本発明のポリオレフィンフィルムにおいて、前記A面の山高さSp及びA面の谷深さSvの比であるSp/Svの値は、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。Sp/Svの値は、谷深さに対する山高さの比を表す指標であり、Sp/Svの値が低いということは、面内の最大高さが低く、粗大突起の突起高さが低いことを意味する。また、谷深さが深く、貼り合わせる被着体との接触面積が低くなるため、離型性が高まることを意味する。Sp/Svの値が2.5を超えると、例えば光学用部材の離型フィルムとして用いた際に、離形性が不足したり、フィルムの表面凹凸が光学用部材に転写する場合があり、特に被着体の粘着が強い場合、きれいに剥離できず、被着体表面の形状が変化したり、被着体表面に剥離痕が残る場合がある。Sp/Svの値の下限は、特に限定されないが、実質的には0.05程度が下限である。また、背面の打痕転写や、フィルムの搬送性の観点から、フィルムの両面共にSp/Svの値が2.5以下であることが好ましい。Sp/Svの値を2.5以下とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に表層の厚みや、低融点樹脂の割合、延伸温度を制御して、フィルム表面の低融点樹脂を部分溶融させながら延伸することで、均一に凹みを形成しながら、突起高さを一定に抑えることが効果的である。
【0013】
本発明のポリオレフィンフィルムのヘイズは、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。ヘイズ値が30%を超えると、フィルムの透明性が低いため、感光性樹脂と貼り合わせ後、欠点観察などの工程検査を行う際に妨げとなる場合がある。ヘイズ値の下限は、特に限定されないが、実質的には0.1%程度が下限である。ヘイズ値を30%以下とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に表層に添加する低融点樹脂と、フィルムの主成分を構成するポリオレフィン樹脂との相溶性を高めることが効果的である。
【0014】
本発明のポリオレフィンフィルムは、前記A面の山高さSp、及び、前記A面の平均粗さSaの比であるSp/Saの値が13未満であることが好ましい。Sp/Saの値は、平均粗さに対する山高さの比を表す指標であり、Sp/Saの値が低いということは、面内の最大高さが低く、粗大突起の突起高さが低いことを意味する。Sp/Saの値が13未満の場合、例えば光学用部材の離型フィルムとして用いた際に、フィルムの表面凹凸の光学用部材への転写が起こりにくく、粘着性の高い被着体でも、良好な剥離性を実現できる。Sp/Saの値の下限は特に限定されないが、実質的には0.1程度である。また、背面の打痕転写やフィルムの搬送性の観点から、フィルムの両面共にSp/Saの値が13未満であることが好ましい。Sp/Saの値を13未満とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に、表層の厚みや、低融点樹脂の割合を制御することで、フィルム表面で部分溶融する樹脂量を均一に制御することが効果的である。
【0015】
本発明のポリオレフィンフィルムは、厚み方向の弾性率が2.3GPa以下であることが好ましい。より好ましくは2.0GPa以下、さらに好ましくは1.8GPa以下である。厚み方向の弾性率が2.3GPa以下の場合、例えば光学用部材の離型フィルムとして用いた際に、硬度の低い被着体でも打痕転写がしにくく、品位の点で好ましい。厚み方向の弾性率の下限は特に限定されないが、実質的に0.5GPaである。厚み方向の弾性率を2.3GPa以下とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に、表層に低融点樹脂を添加し、表面を軟化させることが効果的である。
【0016】
本発明のポリオレフィンフィルムは、示差操作熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有することが好ましい。より好ましくは168℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。本発明のポリオレフィンフィルムが165℃以上に融解ピークを有する場合、例えば離型フィルムとして用いた際に、被着体と貼り合わせた後に高温の熱のかかる工程を通過する際でも、フィルムの軟化により変形せず、品位の点で好ましい。融解ピーク温度の上限は特に限定されないが、実質的に180℃である。融解ピーク温度を165℃以上とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に、フィルム内層に高融点の樹脂を使用し、内層の耐熱性を高めることが効果的である。
【0017】
本発明のポリオレフィンフィルムは、フィッシュアイの個数が5.0個/m以下であることが好ましい。より好ましくは4.0個/m以下、さらに好ましくは3.0個/m以下である。フィッシュアイの個数が5.0個/m以下の場合、ディスプレイ部材など高品位が求められる製品の保護フィルムや製造用基材フィルムとして用いた際に歩留まり低下を抑えられ、品位、生産性の点で好ましい。フィッシュアイの個数は少ないほど好ましく、その下限は0個/mである。フィッシュアイの個数を5.0個/m以下とするためには、原料の組成や調整方法、フィルムの積層構成を後述する範囲内とし、原料中の添加剤成分や熱劣化してフィッシュアイの原因となるような樹脂の使用量を低減させることが効果的である。また、フィルム製膜時の条件を後述する範囲内とし、原料を溶融してシート化するまでにろ過により異物を除去することや、樹脂の滞留部を低減させることが効果的である。
【0018】
本発明のポリオレフィンフィルムは、主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下であることが好ましく、6.0%以下がより好ましく。4.0%以下が更に好ましい。なお、本発明における主収縮方向とはフィルム面内において、任意の方向を0°とした場合に、該任意の方向に対して15°、30°、45°、60°、75°、90°、105°、120°、135°、150°、165°の角度をなす各々の方向で熱収縮率を測定したとき、最も高い値を示す方向をいう。
【0019】
本発明においては、フィルムを製膜する方向に平行な方向を製膜方向、長手方向あるいはMD方向と称し、フィルム面内で製膜方向に直交する方向を幅方向あるいはTD方向と称する。主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下の場合、例えば離型フィルムとして用いた際に、被着体と貼り合わせた後に高温の熱のかかる工程を通過する際に、フィルムが変形せず、被着体から剥がれたり、シワが入るなどの不具合が起こりにくく好ましい。熱収縮率の下限は特に限定されないが、フィルムが膨張する場合もあり、実質的には−2.0%程度が下限である。熱収縮率の和を8.0%以下とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に、フィルム内層に高融点の樹脂を使用することや、二軸延伸後の熱固定、弛緩条件を後述する範囲とすることが効果的である。
【0020】
本発明のポリオレフィンフィルムは、130℃で測定した場合の主収縮方向の直交方向の最大点強度が70MPa以上であることが好ましく、75MPa以上がより好ましく、80MPa以上が更に好ましい。主収縮方向の直交方向の最大点強度が70MPa未満の場合、例えば、熱のかかる工程でフィルムを搬送する際に、フィルムが破断してしまう場合がある。破断強度の上限は特に限定されないが、実質的に200MPa程度である。130℃で測定した場合の主収縮方向の直交方向の最大点強度を70MPa以上とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に、フィルム内層に高融点の樹脂を使用することや、二軸延伸時の延伸条件、延伸後の熱固定、弛緩条件を後述する範囲とすることが効果的である。
【0021】
本発明のポリオレフィンフィルムの厚みは用途によって適宜調整されるものであり特に限定はされないが、0.5μm以上100μm以下であることがハンドリング性の観点から好ましい。フィルムの厚みは、1μm以上40μm以下であることがより好ましく、1μm以上30μm以下であることがさらに好ましく、1μm以上15μm以下であることが特に好ましい。厚みは他の物性を低下させない範囲内で、押出機のスクリュー回転数、未延伸シートの幅、製膜速度、延伸倍率などにより調整可能である。
【0022】
次に本発明のポリオレフィンフィルムの原料について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
本発明のポリオレフィンフィルムは、少なくとも表層と内層からなる積層構成であって、少なくとも一方の表層に、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂(以下、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を、ポリプロピレン原料Iともいう)を含有することが好ましい。より好ましくは60℃以上130℃以下、さらに好ましくは60℃以上120℃以下、最も好ましくは60℃以上100℃以下のポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。予熱/延伸ロールを搬送する際に、フィルム表面の溶融、ロールへの粘着を起こさない観点から、ポリプロピレン原料Iの融点は50℃以上が好ましい。また、延伸時にフィルム表面を部分的に溶融し粗面化する観点から、ポリプロピレン原料Iの融点は135℃以下が好ましい。ポリプロピレン原料Iの含有量は、ポリプロピレン原料Iが含まれる表層を100質量%とした際に、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上60質量%以下であることが更に好ましい。
【0023】
また、ポリプロピレン原料Iは、ホモポリプロピレン樹脂であることが好ましい。つまり本発明のポリオレフィンフィルムは、前述の融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂として、ホモポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。少なくとも一方の表層に含有されるポリプロピレン原料Iがランダムコポリマーやブロックコポリマーなどの共重合体である場合、エチレンなどのモノマー成分がフィッシュアイ発生の要因となる場合がある。
【0024】
少なくとも一方の表層に含有されるポリプロピレン原料Iとして好ましく用いられるホモポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体であって、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて製造されたものが好ましい。ホモポリプロピレン樹脂の重量平均分子量は4万〜20万であることが好ましい(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)。以上のような特徴を有するホモポリプロピレン樹脂としては、低立体規則性ポリプロピレン樹脂である出光興産(株)製“エルモーデュ”などの市販品を適宜選択の上、使用することができる。
【0025】
本発明のポリオレフィンフィルムは、単層構成であってもよい。単層構成の本発明のポリオレフィンフィルムの主成分、並びに、積層構成の本発明のポリオレフィンフィルムの内層の主成分は、ポリオレフィン樹脂(以下、ポリオレフィンフィルムの内層の主成分のポリオレフィン樹脂を、ポリオレフィン原料IIともいう)が好ましい。本発明において「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上100質量%以下であることを意味し、より好ましくは90質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下、より一層好ましくは96質量%以上100質量%以下、特に好ましくは97質量%以上100質量%以下、最も好ましくは98質量%以上100質量%以下である。
【0026】
本発明のポリオレフィンフィルムに用いるポリオレフィン原料IIは、強度や耐熱性の観点からポリプロピレン原料が好ましく、その中でもホモポリプロピレンが好ましく用いられる。
【0027】
ポリオレフィン原料IIは、融点が155℃以上であることが好ましく、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは165℃以上である。融点が155℃未満である場合、耐熱性に乏しく、例えば離型フィルムとして用いた際に、被着体と貼り合わせた後に熱のかかる工程を通過する際に、本フィルムが軟化し、張力方向に伸びてしまい、被着体が変形する場合がある。
【0028】
ポリオレフィン原料IIは、好ましくは冷キシレン可溶部(以下CXS)が4質量%以下であり、かつメソペンタッド分率が0.90以上であることが好ましい。これらを満たさないと製膜安定性に劣ったり、フィルムの強度が低下したり、寸法安定性および耐熱性の低下が大きくなる場合がある。
【0029】
ここで冷キシレン可溶部(CXS)とは、試料をキシレンで完全溶解せしめた後、室温で析出させたときに、キシレン中に溶解しているポリオレフィン成分のことをいい、立体規則性の低い、分子量が低い等の理由で結晶化し難い成分に該当しているものと考えられる。このような成分が多く樹脂中に含まれているとフィルムの熱寸法安定性に劣ることがある。従って、CXSは4質量%以下であることが好ましいが、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。CXSは低いほど好ましいが、0.1質量%程度が下限である。このようなCXSとするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはオレフィンモノマー自身で洗浄する方法が使用できる。
【0030】
ポリオレフィン原料IIとしてポリプロピレン原料を用いる場合は、メソペンタッド分率は0.90以上であることが好ましく、更に好ましくは0.94以上である。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、高温での寸法安定性が高くなるので好ましい。メソペンタッド分率の上限については特に規定するものではない。このように立体規則性の高い樹脂を得るには、得られた樹脂パウダーをn−ヘプタン等の溶媒で洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、組成の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。
【0031】
また、ポリオレフィン原料IIとしては、より好ましくはメルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分(230℃、21.18N荷重)、より好ましくは1〜8g/10分(230℃、21.18N荷重)であり、特に2〜5g/10分(230℃、21.18N荷重)の範囲のものが、製膜性やフィルム強度の観点から好ましい。メルトフローレート(MFR)を上記の値とするためには、ポリオレフィン原料IIの平均分子量や分子量分布を制御する方法などが採用される。
【0032】
ポリオレフィン原料IIとしては、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素による共重合成分などを含有してもよいし、重合体がブレンドされていてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として例えばエチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテンー1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。共重合量またはブレンド量は、寸法安定性の点から、共重合量では1mol%未満とし、ブレンド量では10質量%未満とするのが好ましい。
【0033】
ポリオレフィン原料IIがエチレン成分を含む場合、ポリオレフィン原料II中に含まれるエチレン成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。エチレン成分の含有量が多いほど、結晶性が低下して、透明性を向上させやすいが、エチレン成分の含有量が10質量%を超えると、強度が低下したり、耐熱性が低下して熱収縮率が悪化したりする場合がある。また、押出工程中で樹脂が劣化しやすくなり、フィルム中のフィッシュアイが生じやすくなる場合がある。
【0034】
本発明のポリオレフィンフィルムは、透明性、耐熱性の観点からフィルムを構成するポリマー中に含まれるポリプロピレンポリマーの含有量が95質量%以上であることが好ましい。より好ましくは96質量%以上、更に好ましくは97質量%以上であり、特に好ましくは98質量%以上である。
【0035】
本発明のポリオレフィンフィルムの表層は、ポリエチレン原料の含有量が3%未満であることが好ましい。より好ましくは2%未満、さらに好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満である。マット粗面のポリオレフィンフィルムは、ポリプロピレン原料とポリエチレン原料をブレンドすることにより粗面表面を形成する場合が多い。しかしながら、この方法では、ポリエチレン起因のフィッシュアイが多くなる場合があること、フィルム表面が削れることによる異物が増加する場合があるなど、品位が悪化する場合があり、好ましくない。
【0036】
本発明のポリオレフィンフィルムが二層構成である場合、少なくとも一方の表層は、低粘度のポリオレフィン原料IIIを含有することが好ましい。ポリオレフィン原料IIIとしては、好ましくはMFRの下限が5g/10分(230℃、21.18N荷重)以上、より好ましくは、6g/10分以上、さらに好ましくは、10g/10分以上である。MFRの上限は、好ましくは60g/10分以下、さらに好ましくは30g/10分以下である。粘度の異なるポリプロピレン原料をブレンドすることによって、ある種の微細混合状態を形成することができ、品位を損ねること無く、均一微細な粗面構造を形成することが可能となる。
【0037】
本発明のポリオレフィンフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることもできる。
【0038】
これらの中で、酸化防止剤の種類および添加量の選定は酸化防止剤のブリードアウトの観点から重要である。かかる酸化防止剤としては、立体障害性を有するフェノール系のものが好ましく、複数種類の酸化防止剤を併用する場合、少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。その具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)とともに1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)またはテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)等を併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量は、ポリオレフィン原料全量に対して0.03〜1.0質量%の範囲が好ましい。酸化防止剤が少なすぎると押出工程でポリマーが劣化してフィルムが着色したり、長期耐熱性に劣る場合がある。酸化防止剤が多すぎるとこれら酸化防止剤のブリードアウトにより透明性が低下する場合がある。より好ましい含有量は0.05〜0.9質量%であり、特に好ましくは0.1〜0.8質量%である。
【0039】
本発明のポリオレフィンフィルムに用いるポリオレフィン原料I、及びポリオレフィンIIには、本発明の目的に反しない範囲で、結晶核剤を添加することができる。また、それ自身でα晶またはβ晶の結晶核剤効果を有する分岐鎖状ポリプロピレンを含有してもよいが、別種のα晶核剤(ジベンジリデンソルビトール類、安息香酸ナトリウム等)、β晶核剤(1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド等のアミド系化合物、キナクリドン系化合物等)等を含有してもよい。但し、上記別種の核剤の過剰な添加は、フィルムの延伸性の低下やボイド形成等による透明性や強度の低下を引き起こす場合があるため、添加量は通常0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。
【0040】
本発明のポリオレフィンフィルムは、有機粒子および無機粒子を含まないことが好ましい。本発明のポリオレフィンフィルムに使用するポリプロピレンは、有機粒子や無機粒子との親和性が低いため、粒子が脱落して工程や製品を汚染する場合や、硬度の高い粒子によって、粗大突起が形成し、光学用部材の樹脂層に凹凸転写する場合があり、ディスプレイ部材など高品位が求められる製品の保護フィルムや製造用基材フィルムとして用いる際は、有機粒子や無機粒子等の滑剤を含有しないことが好ましい。
【0041】
本発明のポリオレフィンフィルムは、上述した原料を用い、二軸延伸することが好ましい。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、ステンター同時二軸延伸法、ステンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、製膜安定性、厚み均一性、フィルムの高剛性と寸法安定性を制御する点においてステンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0042】
次に本発明のポリオレフィンフィルムの製造方法の一態様を、例として説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0043】
まず、ポリプロピレン原料Iを50質量部とポリオレフィン原料IIを50質量部をドライブレンドしてA層(表層)用の単軸押出機に供給し、ポリオレフィン原料IIをB層(内層)用の単軸押出機に供給し、200〜280℃、より好ましくは220〜280℃、更に好ましくは240〜270℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、マルチマニホールド型のA層/B層/A層複合Tダイにて積層し、キャスティングドラム上に吐出し、A層/B層/A層の層構成を有する積層未延伸シートを得る。この際、積層厚み比は、1/8/1〜1/60/1の範囲が好ましい。上記範囲とすることで、ポリプロピレン原料Iを含有する表層がフィルム表面に薄く均一に形成され、延伸時に形成される突起の高さの均一性が増し、粗大突起の形成を抑制することができる。
【0044】
また、キャスティングドラムは表面温度が40〜100℃、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは75〜100℃である。また、A層/B層の2層積層構成としても構わない。2層積層構成とする場合は、表層であるA層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。キャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、フィルムの平面性が良好でかつ表面粗さの制御が可能なエアナイフ法が好ましい。エアナイフのエア温度は、40〜80℃で、吹き出しエア速度は130〜150m/sが好ましい。また、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアが流れるようにエアナイフの位置を適宜調整することが好ましい。
【0045】
得られた未延伸シートは、縦延伸工程に導入される。縦延伸工程では、まず80℃以上130℃以下、好ましくは90℃以上120℃以下、更に好ましくは100℃以上110℃以下に保たれた複数の金属ロールに未延伸シートを接触させて予熱し、周速差を設けたロール間で長手方向に3〜8倍に延伸した後、室温まで冷却する。延伸温度は130℃以上160℃以下、好ましくは140℃以上155℃以下、更に好ましくは145℃以上150℃以下である。縦延伸の予熱工程は低温で搬送し、一気に高温で延伸することで、縦延伸後の一軸延伸フィルム表面に高融点部と低融点部を形成することができ、フィルムを粗面化する上で重要となる。予熱温度と延伸温度が大きく異なる場合、フィルムが高温の延伸ロールに触れた際に幅方向に収縮する。その際に、不均一にフィルムが収縮することで、流れ方向のシワが入る場合がある。その対策として、延伸ロールにセラミックロールを用いることができる。セラミックロール上では、フィルムが滑りやすくなり、フィルムが均一に収縮することでシワ無く延伸が可能であることを見出した。延伸倍率は3倍未満であるとフィルムの配向が弱くなり、強度が低下する場合があることから、3倍以上6倍以下が好ましく、4倍以上5.5倍以下が更に好ましい。
【0046】
次いで縦一軸延伸フィルムをテンターに導いてフィルムの端部をクリップで把持し予熱後、幅方向に7〜13倍に横延伸する。縦一軸延伸フィルム表面の低融点部を部分的に溶融しながら延伸することで、低融点部は延伸倍率が高くなり、フィルム表面の実質的な延伸倍率に差が生まれることで、フィルム表面が粗面化する。このことから、予熱、及び延伸温度は165〜180℃であり、より好ましくは170〜180℃、更に好ましくは173〜180℃である。この様に、非常に高温で横延伸するには、内層は高融点の樹脂を主成分とし、フィルムの表層にのみ低融点樹脂を添加することで達成可能となる。
【0047】
続く熱処理および弛緩処理工程では、クリップで幅方向を緊張把持したまま幅方向に2〜20%の弛緩率で弛緩を与えつつ、160℃以上170℃度未満の温度で熱固定し、クリップで幅方向を緊張把持したまま80〜100℃での冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、ワインダ工程にてフィルムエッジ部をスリットし、フィルム製品ロールを巻き取る。高温で熱固定を行うことで、フィルム内の残留応力を緩和させ、熱収縮率を低下させることができる。
【0048】
以上のようにして得られたポリオレフィンフィルムは、包装用フィルム、表面保護フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途で用いることができるが、特に表面平滑性に優れることから、表面保護フィルム、工程フィルム、離型用フィルムとして好ましく用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)フィルム厚み
マイクロ厚み計(アンリツ社製)を用いて測定した。フィルムを10cm四方にサンプリングし、任意に5点測定し、平均値を求めた。
【0050】
(2)平均粗さ(Sa)、山高さ(Sp)、谷深さ(Sv)
測定は(株)菱化システムVertScan2.0 R5300GL−Lite−ACを使用して行い、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似にて面補正して表面形状を求めた。測定条件は下記のとおり。測定は、フィルムの両面について、それぞれn=3で行い、それぞれの面の平均値を求めることにより、各面のSa、Sp、Svとして採用した。なお、表1にはA面の値を記す。
製造元 :株式会社菱化システム
装置名 :VertScan2.0 R5300GL−Lite−AC
測定条件:CCDカメラ SONY HR−57 1/2インチ
対物レンズ:5x
中間レンズ:0.5x
波長フィルタ:530nm white
測定モード:Wave
測定ソフトウェア:VS−Measure Version5.5.1
解析ソフトウェア:VS−Viewer Version5.5.1
測定領域:1.252mm×0.939mm
【0051】
(3)フィルムのヘイズ
フィルムを、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH−5000)を用いて、JIS K7136(2000)に準じて23℃でのヘイズ値(%)を3回測定し、平均値を用いた。
(4)原料、フィルムの融点
原料チップ、及びポリオレフィンフィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から260℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、20℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される最も高温側に出現する溶融カーブの頂上の温度を融解ピーク温度とした。
【0052】
(5)厚み方向の弾性率
測定には(株)エリオニクス製のナノインデンター「ENT−2100」を用いて、ISO 14577(2002)に規定された方法に準じて測定した。ポリオレフィンフィルムに、東亞合成株式会社製「“アロンアルファ”(登録商標)プロ用耐衝撃」を1滴塗布し、瞬間接着剤を介してポリオレフィンフィルムを専用のサンプル固定台に固定して測定を行った。測定には稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用いた。測定データは「ENT−2100」の専用解析ソフト(version 6.18)により処理され、押込み弾性率EIT(GPa)を測定した。測定は、フィルムの両面について、それぞれn=10で行い、その平均値を求め、小さい方の値をフィルムの厚み方向の弾性率として採用した。そのため、表には両面の測定値の平均値の内、小さい方の値を記載した。
測定モード:負荷−除荷試験
最大荷重:0.5mN
最大荷重に達した時の保持時間:1秒
荷重速度、除荷速度:0.05mN/sec
【0053】
(6)フィッシュアイの個数
A4版に切り出したポリオレフィンフィルムを黒色の紙上におき、蛍光灯下で目視により、光の透過度合いが弱い部分をマーキングした。それらの部分を光学顕微鏡で観察し、最大長さが50μm以上の部分をフィッシュアイと判断し、フィッシュアイの個数をカウントした。評価はA4サンプルで8枚分実施し、1m四方当たりに換算した。
【0054】
(7)主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率(150℃熱収縮率)
ポリオレフィンフィルムの主収縮方向、及び、その直交方向について、幅10mm、長さ200mm(測定方向)の試料を5本切り出し、両端から25mmの位置に標線として印しを付けて、万能投影機で標線間の距離を測定し試長(l)とする。次に、試験片を紙に挟み込み荷重ゼロの状態で150℃に保温されたオーブン内で、15分間加熱後に取り出して、室温で冷却後、寸法(l)を万能投影機で測定して下記式にて求め、5本の平均値を主収縮方向、及び、その直交方向それぞれの熱収縮率とし、その和を求めた。
熱収縮率={(l−l)/l}×100(%)
【0055】
(8)粘着テープとの離型性評価
積層構成のポリオレフィンフィルムに日東電工(株)製ポリエステル粘着テープNO.31Bをローラーで貼付し、それを19mm幅にカットしてサンプルを作製した。そのサンプルを、引っ張り試験機を用いて500mm/minの速度で剥離し、以下の基準で評価した。
○:表層と内層間で層間剥離が生じず、
一定速度で剥離が可能
△:表層と内層間で層間剥離が生じないが、
剥離抵抗がやや強く、剥離時に速度が上下する
×:表層と内層間で層間剥離が生じる、
または、剥離が非常に重く、被着体表面に剥離痕が残る
【0056】
(9)被着体への転写評価
ポリオレフィンフィルムおよび厚み40μmの日本ゼオン株式会社製“ゼオノアフィルム”(登録商標)を幅100mm、長さ100mmの正方形にサンプリングし、ポリオレフィンフィルムのA面と“ゼオノアフィルム”とが接触するように重ねて、それを2枚のアクリル板(幅100mm、長さ100mm)に挟んで、2kgの荷重をかけ、23℃の雰囲気下で24時間静置した。24時間後に、“ゼオノアフィルム”の表面(ポリオレフィンフィルムが接していた面)を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:きれいであり、荷重をかける前と同等
△:弱い凹凸が確認される
×:強い凹凸が確認される
【0057】
(10)130℃での最大点強度
ポリオレフィンフィルムの主収縮方向の直交方向について、幅10mm、長さ50mm(測定方向)の試料を切り出し、矩形のサンプル引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)に、初期チャック間距離20mmでセットし、130℃に加熱されたオーブン中へチャックごと投入し、1分間加熱した後、引張速度を300mm/分としてフィルムの引張試験を行った。サンプルが破断するまでの最大荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値を最大点強度の応力として算出し、測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。なお、最大点強度算出の為に用いるフィルム厚みは上記(1)で測定した値を用いた。
【0058】
(実施例1)
A層(表層)用の原料として、ポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)60質量部と、ポリプロピレン原料I(出光興産(株)社製、エルモーデュS901、MFR:50g/10分、融点:80℃)40質量部とをドライブレンドして表層用の単軸の一軸押出機に供給し、B層(内層)用の原料として、上記ポリオレフィン原料IIを99.5質量部、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(Basell社製)0.5質量部とをドライブレンドして内層用の単軸の一軸溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/34/1の厚み比で積層し、90℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフによりキャスティングドラムに密着させた。その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、圧空エアを噴射させて冷却し、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて108℃に予熱し、周速差を設けた148℃のロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、180℃で3秒間予熱後、176℃で8.5倍に延伸し、幅方向に12%の弛緩を与えながら167℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み18μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例2)
A層(表層)用の原料として、ポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)50質量部と、ポリプロピレン原料I(出光興産(株)社製、エルモーデュS901、MFR:50g/10分、融点:80℃)50質量部とをドライブレンドして表層用の単軸の一軸押出機に供給し、B層(内層)用の原料として、上記ポリオレフィン原料IIを内層用の単軸の一軸溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/58/1の厚み比で積層し、70℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフによりキャスティングドラムに密着させた。その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、圧空エアを噴射させて冷却し、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて112℃に予熱し、周速差を設けた143℃のロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、176℃で3秒間予熱後、172℃で9.0倍に延伸し、幅方向に9%の弛緩を与えながら160℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み18μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3)
A層(表層)用の原料として、ポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)40質量部と、ポリプロピレン原料I(日本ポリプロ(株)社製、ウェルネックスRFX4V、MFR:6.0g/10分、融点:127℃)60質量部とをドライブレンドして表層用の単軸の一軸押出機に供給し、B層(内層)用の原料として、上記ポリプロピレン原料IIを99.5質量部、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(Basell社製)0.5質量部とをドライブレンドして内層用の単軸の一軸溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、30μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/58/1の厚み比で積層し、45℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフによりキャスティングドラムに密着させた。その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、圧空エアを噴射させて冷却し、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて128℃に予熱し、周速差を設けた132℃のロール間でフィルムの長手方向に4.1倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、179℃で3秒間予熱後、177℃で8.2倍に延伸し、幅方向に13%の弛緩を与えながら168℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み18μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例4)
A層(表層)用の原料として、ポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)80質量部と、ポリプロピレン原料I(出光興産(株)社製、エルモーデュS901、MFR:50g/10分、融点:80℃)20質量部とをドライブレンドして表層用の単軸の一軸押出機に供給し、B層(内層)用の原料として、上記ポリオレフィン原料IIを内層用の単軸の一軸溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/58/1の厚み比で積層し、95℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフによりキャスティングドラムに密着させた。その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、圧空エアを噴射させて冷却し、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて140℃に予熱し、周速差を設けた140℃のロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、167℃で3秒間予熱後、167℃で8.0倍に延伸し、幅方向に9%の弛緩を与えながら140℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み18μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例5)
ポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)を50質量部、ポリオレフィン原料III(住友化学(株)社製、MFR:7.5g/10分、融点:163℃)を45質量部、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(Basell社製)5質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、260℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして、ポリプロピレン原料IVを得た。
A層(表層)用の原料として、ポリオレフィン原料IIを70質量部と、上記ポリプロピレン原料IVを30質量部とをドライブレンドして表層用の単軸の一軸押出機に供給し、B層(内層)用の原料として、上記ポリプロピレン原料IIを80質量部と上記ポリオレフィン原料IIIを20質量部とをドライブレンドして、内層用の単軸の一軸溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/10/1の厚み比で積層し、98℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフから圧空エアを吹きつけ、キャスティングドラムに密着させ、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて95℃に予熱し、周速差を設けた155℃のロール間でフィルムの長手方向に5.2倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、178℃で3秒間予熱後、176℃で8.8倍に延伸し、幅方向に18%の弛緩を与えながら168℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み18μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
A層(表層)用の原料として、ポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)50質量部と、ポリプロピレン原料I(出光興産(株)社製、エルモーデュS901、MFR:50g/10分、融点:80℃)50質量部、とをドライブレンドして表層用の単軸の一軸押出機に供給し、B層(内層)用の原料として、上記ポリオレフィン原料IIを内層用の単軸の一軸溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/88/1の厚み比で積層し、30℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフによりキャスティングドラムに密着させた。その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、圧空エアを噴射させて冷却し、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて140℃に予熱し、周速差を設けた140℃のロール間でフィルムの長手方向に4.6倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、160℃で3秒間予熱後、155℃で8.0倍に延伸し、幅方向に10%の弛緩を与えながら120℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み12μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
B層(内層)用の原料としてポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)93.3質量部と、炭酸カルシウム80質量%とポリプロピレン20質量%をコンパウンドしたマスター原料(三共精粉(株)製、2480K、炭酸カルシウム粒子:6μm)6.7質量部とをドライブレンドして内層用の単軸の溶融押出機に供給し、A層(表層)用の原料として、上記ポリオレフィン原料IIを表層用の単軸の溶融押出機に供給し、240℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B複合Tダイにて8/1の厚み比で積層し、30℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、複数のセラミックロールを用いて125℃に予熱を行い、125℃のロール間でフィルムの長手方向に4.6倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、165℃で3秒間予熱後、160℃で8.0倍に延伸した。続く熱処理工程で、幅方向に10%の弛緩を与えながら160℃で熱処理を行ない、その後130℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み19μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
ポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)を単軸の一軸溶融押出機に供給し、240℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、50℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフによりキャスティングドラムに密着させた。その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、圧空エアを噴射させて冷却し、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて140℃に予熱し、周速差を設けた140℃のロール間でフィルムの長手方向に4.6倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、170℃で3秒間予熱後、165℃で8.0倍に延伸し、幅方向に10%の弛緩を与えながら150℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み25μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0066】
(比較例4)
ポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)を50質量部、ポリオレフィン原料III(住友化学(株)社製、MFR:7.5g/10分、融点:163℃)を45質量部、分岐鎖状ポリプロピレン樹脂(Basell社製)5質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、260℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして、ポリプロピレン原料IVを得た。
A層(表層)用の原料として、上記ポリオレフィン原料IIを70質量部と、ポリプロピレン原料IVを30質量部とをドライブレンドして表層用の単軸の一軸押出機に供給し、B層(内層)用の原料として、上記ポリオレフィン原料IIを80質量部と上記ポリオレフィン原料IIIを20質量部とをドライブレンドして、内層用の単軸の一軸溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/34/1の厚み比で積層し、70℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフから圧空エアを吹きつけ、キャスティングドラムに密着させ、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて133℃に予熱し、周速差を設けた138℃のロール間でフィルムの長手方向に3.9倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、173℃で3秒間予熱後、172℃で7.2倍に延伸し、幅方向に4%の弛緩を与えながら145℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み18μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0067】
(比較例5)
エチレン−プロピレン共重合樹脂(三井化学(株)社製、MFR:7g/10min、融点:140℃)を90質量部、高密度ポリエチレン原料(日本ポリエチレン(株)社製、融点:133℃)を10質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして、ポリプロピレン原料Vを得た。
A層(表層)用の原料として、上記ポリプロピレン原料Vを表層用の単軸の一軸押出機に供給し、B層(内層)用の原料として、ポリオレフィン原料II((株)プライムポリマー社製、MFR:2.9g/10分、融点:164℃)を内層用の単軸の一軸溶融押出機に供給し、240℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/34/1の厚み比で積層し、90℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフから圧空エアを吹きつけ、キャスティングドラムに密着させ、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて108℃に予熱し、周速差を設けた148℃のロール間でフィルムの長手方向に4.6倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、180℃で3秒間予熱後、176℃で8.5倍に延伸し、幅方向に12%の弛緩を与えながら167℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み18μmのポリオレフィンフィルムを得た。得られたフィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0069】
上述のとおり、本発明のポリオレフィンフィルムは、包装用フィルム、離型用フィルム、工程フィルム、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品など様々な用途で用いることができる。特に、透明平滑性に優れることから、製品の表面平滑性が要求される用途の離型用フィルム、工程フィルムとして好ましく用いることができ、さらに離型性に優れることから、粘着性樹脂層のカバーフィルムなどの離型フィルムとして好ましく用いられる。