(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0011】
本実施形態では、熱膨張性シート10の表面に、熱膨張層12の隆起によって造形物を表現する。また、本明細書において、「造形物」は、単純な形状、幾何学形状、文字、装飾等、形状を広く含む。ここで、装飾とは、視覚及び/又は触覚を通じて美感を想起させるものである。また、「造形(又は造型)」は、単に造形物を形成することに限らず、装飾を加える加飾、装飾を形成する造飾のような概念をも含む。更に装飾性のある造形物とは、加飾又は造飾の結果として形成される造形物を示す。
【0012】
本実施形態の造形物は、三次元空間内の特定の二次元面(例えば、XY平面)を基準とし、その面に対し垂直な方向(例えばZ軸)に凹凸を有する。このような造形物は、立体(3D)画像の一例であるが、所謂3Dプリンタ技術によって製造される立体画像と区別するため、2.5次元(2.5D)画像又は疑似三次元(Pseudo-3D)画像と呼ぶ。また、このような造形物を製造する技術は、三次元画像印刷技術の一例であるが、所謂3Dプリンタと区別するため、2.5D印刷技術又は疑似三次元(Pseudo-3D)印刷技術と呼ぶ。
【0013】
<熱膨張性シート10>
図1に、実施形態に係る造形物を形成するための熱膨張性シート10の断面構成を示す。熱膨張性シート10は、予め選択された部分が加熱により膨張することによって造形物が形成される媒体である。
【0014】
図1に示すように、熱膨張性シート10は、基材11と、熱膨張層12と、インク受容層13とを、この順に備えている。なお、
図1は、造形物が形成される前、すなわちどの部分も膨張していない状態における熱膨張性シート10の断面を示している。
【0015】
基材11は、熱膨張性シート10の元となるシート状の媒体である。基材11は、熱膨張層12とインク受容層13とを支持する支持体であって、熱膨張性シート10の強度を保持する役割を担う。基材11として、例えば、一般的な印刷用紙を用いることができる。或いは、基材11の材質は、合成紙、キャンバス地等の布、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであっても良く、特に限定されるものではない。
【0016】
熱膨張層12は、基材11の上側に設けられており、規定の温度以上に加熱されることによって膨張する層である。熱膨張層12は、バインダと、バインダ内に分散配置された熱膨張性材料と、を含む。バインダは、エチレン−酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂である。熱膨張性材料は、具体的には、プロパン、ブタン等の低沸点で気化する物質を、熱可塑性樹脂の外殻に内包した、粒径が約5〜50μmの熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロパウダー)である。熱膨張性材料は、例えば80℃から120℃程度の温度に加熱されると、内包している物質が気化し、その圧力によって発泡及び膨張する。このようにして、熱膨張層12は、吸収した熱量に応じて膨張する。熱膨張性材料は、発泡剤とも呼ぶ。
【0017】
インク受容層13は、熱膨張層12の上側に設けられた、インクを吸収して受容する層である。インク受容層13は、インクジェット方式のプリンタに用いられる印刷用のインク、レーザー方式のプリンタに用いられる印刷用のトナー、ボールペン又は万年筆のインク、鉛筆の黒鉛等を受容する。インク受容層13は、これらを表面に定着させるための好適な材料によって形成される。インク受容層13の材料として、例えば、インクジェット用紙に用いられている公知の材料を用いることができる。
【0018】
図2に、熱膨張性シート10の裏面を示す。熱膨張性シート10の裏面は、熱膨張性シート10の基材11側の面であって、基材11の裏面に相当する。
【0019】
図2に示すように、熱膨張性シート10の裏面には、その周縁部に沿って複数のバーコードBが付されている。バーコードBは、熱膨張性シート10を識別するための識別子であって、熱膨張性シート10が造形物を形成するための専用のシートであることを示す識別子である。バーコードBは、膨張装置50によって読み取られ、膨張装置50において熱膨張性シート10が使用可能か否かを判別するために用いられる。
【0020】
造形システム1は、このような熱膨張性シート10に造形物を形成することができる。熱膨張性シート10の表面又は裏面のうち、熱膨張層12を膨張させる部分に、カーボン分子が印刷される。カーボン分子は、黒色(カーボンブラック)又は他の色のインクに含まれ、電磁波を吸収して熱に変換する電磁波熱変換材料(発熱剤)の一種である。カーボン分子は、電磁波を吸収して熱振動することで熱を発生する。熱膨張性シート10において、カーボン分子が印刷された部分が加熱されると、その部分の熱膨張層12が膨張して隆起(バンプ)が形成される。このような熱膨張層12の隆起(バンプ)によって凸若しくは凹凸形状を造ることにより、熱膨張性シート10に造形物が形成される。
【0021】
熱膨張性シート10において、熱膨張層12を膨張させる箇所及び高さを組み合わせることにより、多彩な造形物を得ることができる。また、熱膨張性シート10にカラー印刷を施すことによって、更に多彩な造形物を得ることができる。
【0022】
<造形システム1>
次に、
図3を参照して、熱膨張性シート10に造形物を形成する造形システム1について説明する。
図3に示すように、造形システム1は、端末装置30と、印刷装置40と、膨張装置50と、を備える。
【0023】
端末装置30は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の情報処理装置であって、印刷装置40及び膨張装置50を制御する制御ユニットである。
図4に示すように、端末装置30は、制御部31と、記憶部32と、操作部33と、表示部34と、記録媒体駆動部35と、通信部36と、を備える。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
【0024】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。制御部31において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、端末装置30全体の動作を制御する。
【0025】
記憶部32は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部32は、制御部31によって実行されるプログラム又はデータ、及び、印刷装置40によって印刷されるカラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを記憶する。
【0026】
操作部33は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備えており、ユーザから操作を受け付ける。ユーザは、操作部33を操作することによって、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを編集する操作、印刷装置40又は膨張装置50に対する操作等を入力することができる。
【0027】
表示部34は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置と、表示装置に画像を表示させる表示駆動回路と、を備える。例えば、表示部34は、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを表示する。また、表示部34は、必要に応じて、印刷装置40又は膨張装置50の現在の状態を示す情報を表示する。
【0028】
記録媒体駆動部35は、可搬型の記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す。可搬型の記録媒体とは、CD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、USB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリ等である。例えば、記録媒体駆動部35は、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを、可搬型の記録媒体から読み出して取得する。
【0029】
通信部36は、印刷装置40及び膨張装置50を含む外部の装置と通信するためのインタフェースを備える。端末装置30は、フレキシブルケーブル、有線LAN(Local Area
Network)等の有線、又は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線を介して印刷装置40及び膨張装置50と接続されている。通信部36は、制御部31の制御の下、これらのうちの少なくとも1つの通信規格に従って、印刷装置40及び膨張装置50と通信する。
【0030】
<印刷装置40>
印刷装置40は、熱膨張性シート10の表面又は裏面に画像を印刷する印刷ユニットである。例えば、印刷装置40は、インクを微滴化し、被印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で画像を印刷するインクジェットプリンタである。
【0031】
図5に、印刷装置40の詳細な構成を示す。
図5に示すように、印刷装置40は、熱膨張性シート10が搬送される方向である副走査方向D1(Y方向)に直交する主走査方向D2(X方向)に往復移動可能なキャリッジ41を備える。
【0032】
キャリッジ41には、印刷を実行する印刷ヘッド42と、インクを収容したインクカートリッジ43(43k,43c,43m,43y)が取り付けられている。インクカートリッジ43k,43c,43m,43yには、それぞれ、ブラックK、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの色インクが収容されている。各色のインクは、印刷ヘッド42の対応するノズルから吐出される。
【0033】
キャリッジ41は、ガイドレール44に滑動自在に支持されており、駆動ベルト45に挟持されている。キャリッジ41は、モータ45mの回転により駆動ベルト45が駆動することで、印刷ヘッド42及びインクカートリッジ43と共に、主走査方向D2に移動する。
【0034】
フレーム47の下部には、印刷ヘッド42と対向する位置に、プラテン48が設けられている。プラテン48は、主走査方向D2に延在しており、熱膨張性シート10の搬送路の一部を構成している。熱膨張性シート10の搬送路には、給紙ローラ対49a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対49b(下のローラは不図示)とが設けられている。給紙ローラ対49aと排紙ローラ対49bとは、プラテン48に支持された熱膨張性シート10を副走査方向D1に搬送する。
【0035】
印刷装置40は、フレキシブル通信ケーブル46を介して端末装置30と接続されている。端末装置30は、フレキシブル通信ケーブル46を介して、印刷ヘッド42、モータ45m、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御する。具体的に説明すると、端末装置30は、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御して、熱膨張性シート10を搬送させる。また、端末装置30は、モータ45mを回転させてキャリッジ41を移動させ、印刷ヘッド42を主走査方向D2の適切な位置に搬送させる。
【0036】
印刷装置40は、端末装置30から画像データを取得し、取得した画像データに基づいて印刷を実行する。具体的に説明すると、印刷装置40は、画像データとして、カラー画像データと表面発泡データと裏面発泡データとを取得する。カラー画像データは、熱膨張性シート10の表面に印刷するカラー画像を示すデータである。印刷装置40は、印刷ヘッド42に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを熱膨張性シート10に向けて噴射させて、カラー画像を印刷する。
【0037】
表面発泡データは、熱膨張性シート10の表面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。また、裏面発泡データは、熱膨張性シート10の裏面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。印刷装置40は、印刷ヘッド42に、カーボンブラックを含むブラックKの黒色インクを熱膨張性シート10に向けて噴射させて、黒色による濃淡画像(濃淡パターン、熱変換層)を印刷する。カーボンブラックを含む黒色インクは、電磁波を熱に変換する材料の一例である。
【0038】
<膨張装置50>
膨張装置50は、熱膨張性シート10の表面又は裏面に電磁波を照射し、熱膨張性シート10の表面又は裏面に印刷された熱変換層を発熱させて、熱膨張性シート10のうちの熱変換層が印刷された部分を膨張させる膨張ユニットである。
【0039】
図6に、膨張装置50の構成を模式的に示す。
図6において、X方向は、膨張装置50の幅方向に相当し、Y方向は、膨張装置50の長手方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。
【0040】
膨張装置50は、照射部60を移動させながら、トレイ100に載置された熱膨張性シート10に向けて照射部60に電磁波を照射させることにより、熱膨張性シート10を膨張させる。照射部60は、第1の位置P1と第2の位置P2との間で往復移動する。第1の位置P1は、照射部60の初期位置(ホームポジション)である。照射部60は、膨張装置50が動作していない時には第1の位置P1で待機している。
【0041】
膨張装置50は、箱型の筐体51を備える。筐体51の内部は、上側筐体51aと下側筐体51bとの2室に仕切られている。これは、照射部60からの電磁波の照射により上側筐体51a内の温度が上昇した際に、下側筐体51b内の基板等に与える影響を抑制するものである。膨張装置50は、上側筐体51aの内部に、換気部54と、搬送モータ55と、搬送レール56と、照射部60と、トレイ100と、を備える。また、膨張装置50は、下側筐体51bの内部に、電源部69と、制御部70と、を備える。
【0042】
トレイ100は、熱膨張性シート10を筐体51内の適正な位置に設置するための機構である。熱膨張性シート10の変形を抑制するため、トレイ100の押圧部材及び補助部材により熱膨張性シート10の周縁部が押圧されることで、熱膨張性シート10は、トレイ100に固定される。このように熱膨張性シート10がトレイ100に安定して固定された状態で、膨張処理が実行される。
【0043】
熱膨張性シート10をトレイ100に載置すると、ユーザは、トレイ100を+X方向にスライドさせて、筐体51内に送り込む。これにより、熱膨張性シート10は、照射部60によって電磁波を照射可能な位置に配置される。その後、熱膨張性シート10の膨張処理が終了すると、ユーザは、再びトレイ100を−X方向に引き出して、トレイ100から熱膨張性シート10を取り出す。
【0044】
図6に示した膨張装置50の説明に戻る。照射部60は、トレイ100に配置された熱膨張性シート10に向けて電磁波を照射する機構である。
図6に示すように、照射部60は、箱型のカバーの内部に、ランプヒータ61と、反射板62と、温度センサ63と、冷却部64と、ランプガード66と、を備える。
【0045】
ランプヒータ(ランプ)61は、例えば照射源としてハロゲンランプを備えており、電磁波として、熱膨張性シート10に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)、又は、中赤外領域(波長1400〜4000nm)の光を照射する。照射部60及びランプヒータ61は、このような波長域の光を照射することにより、熱膨張性シート10にエネルギーを照射する照射手段として機能する。
【0046】
カーボンブラックを含む黒色インクによる熱変換層(濃淡画像、変換層)が印刷された熱膨張性シート10に光(エネルギー)を照射すると、熱変換層が印刷された部分では、熱変換層が印刷されていない部分に比べて、より効率良く光が熱に変換される。そのため、熱膨張性シート10のうちの熱変換層が印刷された部分が主に加熱され、熱膨張性材料が膨張を開始する温度に達すると膨張する。照射部60は、搬送モータ55によって搬送されながら光(エネルギー)を照射することにより、熱膨張性シート10を熱膨張させる熱膨張手段として機能する。なお、ランプヒータ61によって照射される光は、電磁波であれば良く、上記波長域の光であることに限らない。
【0047】
反射板62は、ランプヒータ61の上側を覆うように配置されており、ランプヒータ61から照射された光を熱膨張性シート10に向けて反射する機構である。これにより、熱膨張性シート10以外の方向へ照射される光も熱膨張性シート10に照射することができるので、エネルギーのロスを低減させることができる。また、ランプヒータ61以外の方向から光を照射することができるので、熱膨張性シート10の照射ムラを低減することができる。温度センサ63は、熱電対、サーミスタ等であって、反射板62の温度を測定する測定手段として機能する。冷却部64は、照射部60に給気するための少なくとも1つのファンを備え、外気を吸入し、吸入した外気を反射板62に送って冷却する。反射板62に送られた外気は、更に下方に流れることで、照射部60及び筐体51の内部が冷却される。
【0048】
換気部54は、膨張装置50における奥側の端部に設けられており、膨張装置50の内部を換気する。換気部54は、少なくとも1つのファンを備えており、筐体51の内部の空気を外部に排出することで筐体51の内部を換気する。
【0049】
搬送モータ55は、例えばパルス電力に同期して動作するステッピングモータであって、照射部60をトレイ100に載置された熱膨張性シート10に沿って移動させる。筐体51の内部には、Y方向に、すなわちトレイ100に載置された熱膨張性シート10の表面又は裏面に平行な方向に搬送レール56が設けられている。照射部60は、搬送レール56に沿って移動することができるように搬送レール56に取り付けられている。搬送モータ55は、制御部70からの指令に基づいて、軸方向から見て時計回り又は反時計回りに回転数を制御されて回転する。このような搬送モータ55の回転に伴う駆動力を動力源として、照射部60は、熱膨張性シート10との距離を一定に保ちながら、搬送レール56に沿って往復移動する。搬送モータ55は、熱膨張性シート10に沿って照射部60を移動させる駆動部(駆動手段)として機能する。
【0050】
ランプガード66は、
図7に示すように、外形が矩形状の金属製のメッシュ状(網状、格子状)の保護部材である。ランプガード66は、反射板62のランプヒータ61の開口部分に設けられ、反射板62とランプガード66とでランプヒータ61を取り囲んでいる。ランプガード66は、反ったり歪んだりした熱膨張性シート10が光源ランプに接触して光源ランプが損傷したり発煙等する可能性を低減させる。ランプガード66のメッシュ状の格子によって画定される開口Aの形状は、正方形である。なお、ランプガード66の周縁に位置する開口Aの形状は、正方形に限らない。例えば、
図9に示すように、ランプガード66の周縁に位置する開口Aは、正方形の一部を欠いた形状である。ランプガード66の開口Aが連続する方向である開口連続方向(連続方向)Uは、搬送モータ55による照射部60の移動方向である照射部移動方向(移動方向)Gに対して、所定の角度θ(0°<θ<45°)を有している。
【0051】
電源部69は、電源IC(Integrated Circuit)等を備え、膨張装置50内の各部に必要な電源を作り出して供給する。例えば、換気部54、搬送モータ55、ランプヒータ61及び冷却部64は、電源部69から電力を得て動作する。
【0052】
制御部70は、筐体51の下部に配置された基板上に設けられている。制御部70は、CPU等のプロセッサと、ROM、RAM等のメモリと、を備えており、命令やデータを転送するための伝送経路であるシステムバスを介して膨張装置50の各部と接続されている。また、制御部70は、いずれも図示しないが、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリと、RTC(Real Time Clock)等の計時デバイスと、端末装置30と通信するための通信インタフェースと、を備える。
【0053】
制御部70において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、膨張装置50全体の動作を制御する。具体的に説明すると、制御部70は、搬送モータ55を制御して、照射部60を指定された向きである移動方向Gに指定された移動速度で移動させる。また、制御部70は、照射部60による電磁波を照射のオンとオフとを切り替え、バーコードリーダ65にバーコードBを読み取らせる。
【0054】
バーコードリーダ65は、熱膨張性シート10の周縁部に設けられたバーコードBを読み取る読取部(読取手段)として機能する。バーコードリーダ65は、光を発する光源と光を検知する光学センサとを備え、レーザー方式等の周知の方式でバーコードBを光学的に読み取る。バーコードリーダ65は、照射部60のカバーの外側に取り付けられており、照射部60と共に、トレイ100に載置された熱膨張性シート10に沿って移動しながら、バーコードBを光学的に読み取る。
【0055】
バーコードBは、熱膨張性シート10の1辺の周縁部に設けられている。一方で、熱膨張性シート10がトレイ100に載置されて押圧部材が閉じられると、押圧部材は、バーコードBが設けられた1辺の周縁部を含む少なくとも3辺の周縁部に被さり、少なくとも3辺の周縁部を上から押圧する。このような押圧部材によってバーコードBが隠されて読めなくなることを回避するため、トレイ100及び押圧部材には、バーコードリーダ65がバーコードBを読み取るための開口が設けられている。
【0056】
<膨張処理>
制御部70は、照射部60に、印刷装置40によって熱変換層が印刷された熱膨張性シート10に電磁波を照射させることにより、熱膨張性シート10を膨張させる。
【0057】
図8に、膨張装置50が膨張処理を実行する様子を示す。制御部70は、バーコードリーダ65によってトレイ100に載置された熱膨張性シート10に設けられたバーコードBが読み取られた場合、照射部60に電源電圧を供給してランプヒータ61を点灯させる。そして、制御部70は、照射部60に電磁波を照射させている状態で搬送モータ55を駆動させる。これにより、制御部70は、照射部60を、第1の位置P1から第2の位置P2に向けた方向(第1の方向、所定の方向)に、規定の距離だけ移動させる。このように、制御部70は、照射部60を熱膨張性シート10の一端から他端まで移動させることで、熱膨張性シート10の表面又は裏面に広く電磁波を照射させる。
【0058】
規定の距離は、熱膨張性シート10のサイズに応じて決定される。例えば、熱膨張性シート10のサイズがA3サイズ(297mm×420mm)であれば、規定の距離は、第1の位置P1から第2の位置P2までの距離である。これに対して、熱膨張性シート10のサイズがA4サイズ(210mm×297mm)であれば、規定の距離は、第1の位置P1から第2の位置P2までの半分の距離である。
【0059】
照射部60によって電磁波が照射されると、熱膨張性シート10のうちの、カーボンブラックを含む黒色インクで熱変換層が印刷された部分は発熱する。熱膨張層12中の熱膨張性材料は、膨張開始温度に達するまで加熱されると膨張する。これにより、熱膨張層12が隆起する。
【0060】
膨張開始温度は、熱膨張性材料によって異なり、熱膨張性材料が膨張を開始する温度である。膨張開始温度は、例えば約80℃〜約120℃である。制御部70は、所定の強度で電磁波を照射している照射部60を所定の速度で移動させることによって、熱膨張性シート10のうちの熱変換層が印刷された部分を加熱する。所定の強度及び所定の速度は、熱膨張層12中の熱膨張性材料を膨張開始温度以上に加熱できるように予め設定されている。
【0061】
このように、制御部70は、搬送モータ55によって照射部60を第1の方向に移動させながら、照射部60に電磁波を照射させる。これにより、熱膨張性シート10の熱膨張層12を膨張させる。熱膨張性シート10のうちの熱変換層が印刷された部分は、熱変換層における黒色の濃さに応じた高さに膨張する。これによって、熱膨張性シート10に所望の造形物が形成される。
【0062】
ここで、照射部60にはランプガード66が取り付けられているので、ランプガード66のメッシュ状の格子の交点(格子交点または結節点)Vの直下にある熱膨張性シート10上の点では、到達する電磁波が減少し照射ムラが発生するおそれがある。ここで、交点Vは、開口Aによって画定される交点とも呼べる。
【0063】
照射ムラを低減するため、本実施形態では、
図7に示すように、ランプガード66において、開口Aの連続する方向である連続方向Uは、照射部60の移動方向である照射部移動方向Gに対して、所定の角度θを有している。このため、ランプガード66の全ての交点Vは、移動方向Gから見て、
図9に細線H上に円Rで囲って示すように、互いに離間している(重複していない)。
図9に示す細線Hは、移動方向Gと平行であり、1つの交点Vを通過する線である。他の表現をすると、ランプガード66は、ランプガード66に形成されている交点Vが移動方向Gに二つ以上存在することを避けるように構成または配置されている。また、移動方向Gと平行であり、1つの交点Vを通過する細線H上に他の交点Vが位置しない(他の交点Vを通過しない)、とも言える。
【0064】
また、ランプガード66は、ランプガード66に形成されている交点Vの照射部60の移動による通過位置が各交点V間で互いに異なるように構成または配置されているとも言える。これにより、開口Aの外形により形成される総数N個の交点Vの軌跡Lは、
図10に示すように、熱膨張性シート10上に重複すること無く照射部移動方向Gに延びる総数N本の直線となる。言い換えると、ランプガード66が通過可能な熱膨張性シート10上の任意の位置において、交点Vが直上を通過する回数が1回以下となる。従って、熱膨張性シート10上において、メッシュの開口Aにより画定される交点Vの通過により生じる電磁波の到達の減少を抑え、照射ムラを低減することができる。なお、ランプガード66の外枠67と開口Aとにより形成される端点90は、交点Vに含まれない。
【0065】
なお、ランプガードにおいて、θ=0°(
図11(a)に示す)の場合、及びθ=45°(
図11(b)に示す)の場合、移動方向Gから見て、いくつかの交点Vは、他の交点Vと重複している(円Rで囲っている位置において1本の細線Hが複数の交点Vを通過している)。従って、熱膨張性シート10上のいくつかの位置において、交点Vが直上を通過する回数が2回以上となり、照射ムラが大きくなる。よって、本実施形態においては、0°<θ<45°とする。また、
図9に示す開口Aによって画定される格子の幅Wは、一定とする。
【0066】
このような膨張処理によって、照射部60は、熱膨張性シート10の第2の位置P2側の端部に到達する。膨張処理を実行した後、制御部70は、図示しないが、照射部60を第2の位置P2から第1の位置P1への方向(第2の方向)に移動させながら、すなわち照射部60をホームポジションに戻しながら、必要に応じて、換気部54による換気処理、又は冷却部64による冷却処理を実行する。具体的に説明すると、制御部70は、換気部54を駆動させて、膨張処理によって加熱された筐体51内の空気を外部に排出する。また、制御部70は、冷却部64を駆動させて、膨張処理によって加熱された照射部60及び熱膨張性シート10を冷却する。
【0067】
次に、
図12に示すフローチャート及び
図13(a)〜(e)に示す熱膨張性シート10の断面図を参照して、印刷装置40及び膨張装置50において実行される造形物の製造処理の流れについて説明する。
【0068】
第1に、ユーザは、造形物が製造される前の熱膨張性シート10を準備し、端末装置30を介して、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを指定する。そして、熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の表面に熱変換層(表側変換層81)を印刷する(ステップS1)。表側変換層81は、電磁波熱変換材料を含むインク、例えばカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された表面発泡データに従って、熱膨張性シート10の表面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、
図13(a)に示すように、インク受容層13上に表側変換層81が形成される。なお、理解を容易にするため、インク受容層13上に表側変換層81が形成されているように図示しているが、より正確には黒色インクはインク受容層13中に受容されているため、インク受容層13中に表側変換層81が形成されている。
【0069】
第2に、ユーザは、表側変換層81が印刷された熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート10へ表面から電磁波を照射する(ステップS2)。具体的に説明すると、膨張装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10の表面に電磁波を照射する。熱膨張性シート10の表面に印刷された表側変換層81に含まれる熱変換材料は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、表側変換層81が発熱し、
図13(b)に示すように、熱膨張性シート10の熱膨張層12のうちの表側変換層81が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0070】
第3に、熱膨張層12の一部が膨張した熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の表面にカラー画像(カラーインク層82)を印刷する(ステップS3)。具体的には、印刷装置40は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート10の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、
図13(c)に示すように、インク受容層13上にカラーインク層82が形成される。なお、インク受容層13上にカラーインク層82が形成されているように図示しているが、より正確にはカラーインク層82はインク受容層13中に受容されている。
【0071】
第4に、カラーインク層82の形成後、カラーインク層82を乾燥させる(ステップS4)。例えば、ユーザは、カラーインク層82が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入し、膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート10を裏面から加熱し、熱膨張性シート10の表面に形成されたカラーインク層82を乾燥させる。具体的に説明すると、膨張装置50は、照射部60によって熱膨張性シート10の裏面に電磁波を照射させ、カラーインク層82を加熱し、カラーインク層82中に含まれる溶媒を揮発させる。なお、ステップS4は省略することも可能である。
【0072】
第5に、ユーザは、カラーインク層82が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の裏面に熱変換層(裏側変換層83)を印刷する(ステップS5)。裏側変換層83は、熱膨張性シート10の表面に印刷された表側変換層81と同様に、電磁波を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷装置40は、指定された裏面発泡データに従って、熱膨張性シート10の裏面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、
図13(d)に示すように、基材11の裏面に裏側変換層83が形成される。
【0073】
第6に、ユーザは、裏側変換層83が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて膨張装置50に挿入する。膨張装置50は、挿入された熱膨張性シート10へ裏面から電磁波を照射して加熱する(ステップS6)。具体的に説明すると、膨張装置50は、照射部(図示せず)によって熱膨張性シート10の裏面に電磁波を照射させる。熱膨張性シート10の裏面に印刷された裏側変換層83は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、
図13(e)に示すように、熱膨張性シート10の熱膨張層12のうち、裏側変換層83が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0074】
以上のような手順によって、熱膨張性シート10の表面上に造形物が形成される。
【0075】
なお、熱変換層は表側のみ又は裏側のみに形成されてもよい。表側変換層81のみを利用して熱膨張層12を膨張させる場合、上記の処理のうちステップS1〜S4を実施する。一方、裏側変換層83のみを利用して熱膨張層12を膨張させる場合、上記の処理のうち、ステップS3〜S6を実施する。
【0076】
また、ステップS5,S6における裏面発泡の処理を、ステップS1,S2における表面発泡の処理よりも前に実施しても良いし、ステップS3,S4におけるカラーインク層82の印刷及び乾燥処理を、ステップS1,S2における表面発泡の処理よりも前に実施しても良い。或いは、ステップS1における表側変換層81の印刷と、ステップS3におけるカラーインク層82の印刷を実施した後で、ステップS2における表面発泡の処理を実施しても良い。このように、上記ステップS1〜S6の処理の順番は、様々に入れ替えて実施しても良い。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る膨張装置50のランプガード66の交点Vを、移動方向Gから見ると、全ての交点Vは、互いに離間している(重複していない)。他の表現をすると、ランプガード66は、ランプガード66に形成されている交点Vが移動方向Gに二つ以上存在することを避けるように構成または配置されている。また、移動方向Gと平行であり、1つの交点Vを通過する線上に他の交点Vが位置しない(他の交点Vを通過しない)、とも言える。
【0078】
また、ランプガード66は、ランプガード66に形成されている交点Vの照射部60の移動による通過位置が各交点V間で互いに異なるように構成または配置されているとも言える。これにより、開口Aの外形により形成される総数N個の交点Vの軌跡Lは、熱膨張性シート10上に重複すること無く移動方向Gに延びる総数N本の直線となる。言い換えると、ランプガード66が通過可能な熱膨張性シート10上の任意の位置において、交点Vが直上を通過する回数が1回以下となる。
【0079】
従って、照射対象物である熱膨張性シート10上の任意の位置において、保護部材であるランプガード66のメッシュの開口Aの外形により形成される交点Vの通過により生じる電磁波の到達の減少を抑え、照射ムラを低減することができる。
【0080】
(その他の実施形態)
以上に説明した実施形態は一例であり、適用範囲はこれに限られない。すなわち、本実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0081】
例えば、上記実施形態では、ランプガード66の開口Aは、正方形である。しかしながら、ランプガード66の開口Aの形状はこれに限らない。例えば、ランプガード66の開口Aの形状は、平行四辺形、菱形、長方形、正六角形や二等辺三角形などであってもよい。例えば、開口Aの形状が主に平行四辺形であると、ランプガード66の長辺と開口Aの2辺を同方向に固定して、交点Vの検討ができる。また、開口Aの形状が主に長方形であると、開口Aの各交点Vは鋭角にならずランプガード66の製造が容易になる。開口Aの形状が主に正方形であると、θが0°から45°まで検討すれば済む。なお、開口Aの形状を正方形以外にする場合も、ランプガード66の周縁に位置する開口Aは、ランプガード66の中心に位置する開口Aの形状の一部を欠く形となることがある。
【0082】
また、上述した実施形態では、ランプガード66の開口Aは同じピッチで配置される場合を例に挙げたが、これに限らない。例えば、ランプガード66は、
図14に示すように、開口Aを半ピッチずらして配置することもできる。また、本明細書において「格子状」又は「格子」は、
図9のように開口Aを配置するピッチが同じ場合に限らず、
図14のように開口Aが配置されるピッチを異ならせた場合も含む。「網状」又は「網」も同様である。
図14のランプガード66でも、開口Aによって画定される交点Vは、移動方向Gに二つ以上存在することを避けるように構成または配置されている。また、移動方向Gと平行であり、1つの交点Vを通過する線上に他の交点Vが位置しない(他の交点Vを通過しない)、とも言える。
【0083】
上記実施形態では、開口Aによって画定される格子の幅Wは、一定であった。しかしながら、ランプガード66の構成はこれに限らない。例えば、
図15に示すように、ランプガード66は、移動方向Gに対してθ1の角度を有して延びる第1の格子と、第1の格子に直交する第2の格子とを備える。第1の格子は、ランプガード66の照射部移動方向Gに垂直な1辺からこれに対向する他の1辺に向かって延びる。ここで、開口Aは第1の格子と第2の格子とで画定される。
図15に示すように、第1の格子の幅W1は、第2の格子の幅W2と比較して小さくともよい。また、第1の格子と移動方向Gとがなす角θ1は、0°<θ1<45°とする。また、第1の格子の線分200と、線分200に隣接する線分210は、照射部移動方向Gから見て、互いに離間していても良い。換言すると、移動方向Gへの線分200の軌跡は、線分210と交わらない。
図15に示すように、第1の格子の幅W1を第2の格子の幅W2より大きくすると、交点Vに加え、第1の格子も照射ムラに影響を及ぼすことがある。これを低減するため、移動方向Gへの線分200の軌跡は、線分210と交わらないことが好適である。
【0084】
上記実施形態では、
図7に示すように、ランプガード66は、照射部移動方向Gに平行な辺110と照射部移動方向Gに垂直な辺120とを有している。ランプガード66の複数の開口Aの外形によって、辺110に略平行な線分150,160が形成されている。線分150,160は、辺120から辺120と対向する辺130まで延設されている。この場合、
図7とは異なり隣接する線分150,160は、照射部移動方向Gから見て、重複していないようにするとよい。移動方向Gと平行であり線分150の辺120側の一端を通過する線と、移動方向Gと平行であり線分150の辺130側の他端を通過する線とは、線分160を通過しないとも言える。また、線分150,160の間隔Sをより大きく確保することで、更に照射ムラを低減することができる。
【0085】
また、上記実施形態では、ランプガード66は、照射部60の下方の開口部に取り付けられていたが、ランプガード66に相当する保護部材は、ランプヒータ61を保護することができれば、照射部60に取り付けられていなくてもよい。例えば、照射部60と熱膨張性シート10等の照射対象物との間を仕切るように保護部材が配置されることにより、ランプヒータ61を保護してもよい。
【0086】
上記実施形態では、照射対象物である熱膨張性シート10は固定され、照射部60を移動させる構成であったが、照射対象物を移動させて照射部60が固定される構成であってもよい。或いは、照射対象物及び照射部60をともに移動させる構成であってもよく、照射対象物と照射部との間で所定の方向に相対移動させる構成であればよい。また、上記実施形態では、照射部60を照射対象物との間で直線的に相対移動させていたが、直線的でない相対移動をさせる構成、例えば、円状、楕円状や正弦曲線状等に相対移動させる構成であってもよい。これにより、開口Aの外形により形成される総数N個の交点Vの相対移動軌跡Lは、熱膨張性シート10上に重複すること無く照射部移動方向Gに延びる総数N本の直線となればよい。
【0087】
上記実施形態では、熱膨張性シート10は、基材11と熱膨張層12とインク受容層13とを備えていた。しかしながら、熱膨張性シート10の構成はこれに限らない。例えば、熱膨張性シート10は、インク受容層13を備えなくても良いし、表面又は裏面に剥離可能な剥離層を備えていても良い。或いは、熱膨張性シート10は、他の任意の材料による層を備えていても良い。
【0088】
上記実施形態では、端末装置30と印刷装置40と膨張装置50とは、それぞれ独立した装置であった。しかしながら、端末装置30と印刷装置40と膨張装置50とのうちの少なくともいずれか2つが一体となっていても良い。
【0089】
上記実施形態では、熱膨張性シート10及び膨張装置50が照射対象物及び照射装置であったが、照射対象物に電磁波を照射する照射部を備える照射装置であれば、他の照射対象物や照射装置であってもよい。
【0090】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0091】
[付記]
[付記1]
格子状または網状の保護部材越しに電磁波を照射する照射部と、
前記照射部との間で照射対象物を第1の方向に相対移動させながら、前記照射対象物に向けて前記電磁波を前記照射部に照射させる制御部と、
を備え、
前記保護部材は、前記保護部材に形成されている格子交点または結節点が前記第1の方向に二つ以上存在することを避けるように構成または配置されている、
ことを特徴とする照射装置。
【0092】
[付記2]
格子状または網状の保護部材が取り付けられているとともに前記保護部材越しに電磁波を照射する照射部と、
前記照射部との間で照射対象物を第1の方向に相対移動させながら、前記照射対象物に向けて前記電磁波を前記照射部に照射させる制御部と、
を備え、
前記保護部材は、前記保護部材に形成されている格子交点または結節点の前記保護部材と前記照射対象物との間の相対移動による通過位置が各格子交点間または各結節点間で互いに異なるように構成または配置されている、
ことを特徴とする照射装置。
【0093】
[付記3]
格子状または網状の保護部材が取り付けられているとともに前記保護部材越しに電磁波を照射する照射部と、
前記照射部との間で照射対象物を第1の方向に相対移動させながら、前記照射対象物に向けて前記電磁波を前記照射部に照射させる制御部と、
を備え、
前記保護部材は、前記保護部材に形成されている格子交点または結節点の前記保護部材と前記照射対象物との間の相対移動による相対移動軌跡が各格子交点間または各結節点間で重ならないように構成または配置されている、
ことを特徴とする照射装置。
【0094】
[付記4]
前記制御部は、前記照射部との間で前記照射対象物を前記第1の方向に直線的に相対移動させながら、前記照射対象物に向けて前記電磁波を前記照射部に照射させる、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1つに記載の照射装置。
【0095】
[付記5]
熱膨張性シートが配置されるトレイと、
前記トレイに配置された前記熱膨張性シートに向けて電磁波を照射する照射部と、
前記熱膨張性シートを膨張させるために、前記照射部に電磁波を照射させている間に、前記トレイに配置された前記熱膨張性シートに沿って前記照射部を移動させる駆動部と、
を備え、
前記照射部は、複数の開口が設けられたランプガードを有し、
前記複数の開口の外形により形成された全ての交点は、前記駆動部による前記照射部の移動方向である照射部移動方向から見て、重複していない、
ことを特徴とする膨張装置。
【0096】
[付記6]
前記照射部は、電磁波を照射するランプと、
照射された電磁波を前記熱膨張性シートに向けて反射し、前記ランプを上方から覆う反射板と、
前記反射板の開口部に配置されることで、前記反射板とともに前記ランプを取り囲むランプガードと、
を有する、
ことを特徴とする付記5に記載の膨張装置。
【0097】
[付記7]
前記ランプガードの前記開口の形状は、平行四辺形である、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の膨張装置。
【0098】
[付記8]
前記ランプガードの前記開口の形状は、長方形である、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の膨張装置。
【0099】
[付記9]
前記ランプガードの前記開口の形状は、正方形である、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の膨張装置。
【0100】
[付記10]
前記ランプガードは、前記照射部移動方向に垂直な一の辺を有する矩形状であり、
前記ランプガードの複数の前記開口によって画定される線分が、前記一の辺から前記一の辺と対向する他の辺まで延設されており、
前記線分は、前記照射部移動方向に対して0度より大きく且つ45度未満の角度に傾斜している、
ことを特徴とする付記9に記載の膨張装置。
【0101】
[付記11]
前記ランプガードは、前記照射部移動方向に平行な第1辺と前記照射部移動方向に垂直な第2辺とを有する矩形状であり、
前記ランプガードの複数の前記開口によって前記第1辺に略平行な第1線分および第2線分が画定され、
前記第1線分および前記第2線分は、前記第2辺から前記第2辺と対向する辺まで延設されており、
前記第1線分と前記第2線分とは、隣接しており、かつ、前記照射部移動方向から見て、重複していない、
ことを特徴とする付記7乃至9のいずれか1つに記載の膨張装置。
【0102】
[付記12]
付記5乃至11のいずれか1つに記載の膨張装置と、
前記熱膨張性シートに、電磁波を熱に変換する変換層を印刷する印刷装置と、を備え、
前記膨張装置は、前記駆動部によって前記照射部を移動させながら、前記印刷装置によって前記変換層が印刷された前記熱膨張性シートに向けて前記照射部に電磁波を照射させることにより、前記熱膨張性シートを膨張させる、
ことを特徴とする造形システム。