(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外周被膜の前記複数の被覆電線側に位置する内表面から0.1mmの範囲における、前記外周被膜の樹脂材料の−30℃での貯蔵弾性率が、前記外周被膜の外表面の−30℃での貯蔵弾性率よりも低い、請求項1に記載の多芯ケーブル。
前記第1の被膜層の−30℃での貯蔵弾性率が、前記外周被膜の外表面の−30℃での貯蔵弾性率よりも低い請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多芯ケーブル。
前記第1の被膜層と前記第2の被膜層に含まれる無機物質の含有量が、前記第1の被膜層と、前記第2の被膜層とで異なる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の多芯ケーブル。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
車輪は、車体に対して変位可能に支持されており、車両の使用時等に、車輪の位置が車体に対して変位するため、車体に搭載された制御装置と、車輪の周囲に設けられた電動パーキングブレーキ等との間を接続する多芯ケーブルは繰り返し曲げられる場合がある。このため、多芯ケーブルについて耐久性を高める観点から、高い耐屈曲性が求められていた。
【0007】
本開示の目的は、耐屈曲性に優れた多芯ケーブルを提供することである。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、耐屈曲性に優れた多芯ケーブルを提供できる。
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
(1)本開示の一態様に係る多芯ケーブルは、複数の被覆電線と、
前記複数の被覆電線の外周を覆う外周被膜とを有しており、
前記被覆電線は、導体と、前記導体を覆う絶縁層とを有し、
前記外周被膜の外表面から0.1mmの範囲における、前記外周被膜の−30℃での弾性率が100MPa以上600MPa以下である。
【0012】
外周被膜の外表面から0.1mmの範囲における、外周被膜の−30℃での弾性率を600MPa以下とすることで、該外周被膜の外表面側について十分な柔軟性を付与することができる。この様に外周被膜の外表面側に十分な柔軟性を付与することで、多芯ケーブルに力が加わった場合でも、多芯ケーブルの外周被膜の外表面側が変形することができる。このため、多芯ケーブルに力が加わった場合に、外周被膜が多芯ケーブル内部の変形を阻害しないため、多芯ケーブル内部の電力線等の被覆電線が断線等することを抑制し、耐屈曲性を高められると考えられる。
【0013】
そして、特に氷点下の環境下においては、外周被膜の弾性率が低下し、多芯ケーブルが外部から加えられた力に追従して変形しにくくなるが、そのような環境下においても耐屈曲性を高めることが求められている。このため、上述のように上記領域の外周被膜の−30℃における弾性率が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0014】
ただし、外周被膜は、飛び石等の飛来物から被覆電線を保護し、被覆電線が破損することを防止する機能も有している。このため、例えば多芯ケーブルの外周に飛び石等が衝突した場合に、内部の電力線等の被覆電線を保護する観点から、外周被膜の外表面から0.1mmの範囲における外周被膜の−30℃での弾性率は100MPa以上であることが好ましい。
【0015】
(2)前記外周被膜の前記複数の被覆電線側に位置する内表面から0.1mmの範囲における、前記外周被膜の樹脂材料の−30℃での弾性率が、前記外周被膜の外表面の−30℃での弾性率よりも低くてもよい。
【0016】
(3)前記外周被膜は、前記複数の被覆電線の側から順に第1の被膜層と、第2の被膜層とを有し、
前記第2の被膜層の−30℃での弾性率が100MPa以上600MPa以下であってもよい。
【0017】
(4)前記第1の被膜層の−30℃での弾性率が、前記外周被膜の外表面の−30℃での弾性率よりも低くても良い。
【0018】
(5)前記第2の被膜層は、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルクから選択された1種類以上を含むポリウレタン樹脂を含有しても良い。
【0019】
(6)本開示の一態様に係る多芯ケーブルは、電力線と、対撚信号線とを含む複数の被覆電線と、
前記複数の被覆電線の外周を覆う外周被膜とを有しており、
前記電力線は、撚り合わされた複数本の導体と、前記複数本の導体を覆う絶縁層とを有し、
前記対撚信号線は撚り合わされた2本の信号線を有し、
前記外周被膜は、前記複数の被覆電線の側から順に第1の被膜層と、第2の被膜層とを有し、
前記第2の被膜層は、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルクから選択された1種類以上を含むポリウレタン樹脂のみからなり、−30℃での弾性率が100MPa以上600MPa以下であり、
前記第1の被膜層の−30℃での弾性率が、前記外周被膜の外表面の−30℃での弾性率よりも低い。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係る多芯ケーブルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許の請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0021】
まず、本実施形態の多芯ケーブルの構成について、
図1〜
図3に基づき説明する。
【0022】
図1に本実施形態の多芯ケーブル10の長手方向と垂直な面での断面図を示す。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の多芯ケーブル10は、複数の被覆電線を有することができる。被覆電線は、導体と、導体を覆う絶縁層を有している。
図1では複数の被覆電線として、2本の電力線11と、2本の信号線121を含む対撚信号線12と、を有する場合を例に示しているが、本実施形態の多芯ケーブルが有する複数の被覆電線の構成は、係る形態に限定されるものではない。
【0024】
また、本実施形態の多芯ケーブル10は、複数の被覆電線の外周を覆う外周被膜14を有することができる。そして、外周被膜14の外表面14Aから0.1mmの範囲における、外周被膜14の−30℃での弾性率を100MPa以上600MPa以下とすることができる。
【0025】
上述のように本実施形態の多芯ケーブルが有する複数の被覆電線は
図1に示した構成例に限定されるものではなく、多芯ケーブルを接続する機器等に応じて、任意の構成の被覆電線を、任意の本数有することができる。本実施形態の多芯ケーブルが有する複数の被覆電線の他の構成例について以下に説明する。
【0026】
図2に本実施形態の他の構成例の多芯ケーブル20の長手方向と垂直な面での断面図を、
図3に本実施形態の他の構成例の多芯ケーブル30の長手方向と垂直な面での断面図をそれぞれ示す。
【0027】
例えば
図2に示した多芯ケーブル20は、2本の電力線11と、2本の信号線121を含む対撚信号線12とに加えて、1本の電線21をさらに有している。また、例えば
図3に示した多芯ケーブル30は、2本の電力線11と、2本の信号線121を含む対撚信号線12を2本有している。このように、多芯ケーブルは、任意の構成の被覆電線を、任意の本数有することができる。
【0028】
以下、本実施形態の多芯ケーブルが有する各種部材について説明する。
【0029】
(1)被覆電線
上述のように本実施形態の多芯ケーブルは、複数の被覆電線を有することができる。複数の被覆電線の構成は特に限定されず、接続する機器や印加する電圧等に応じて任意にその構成を選択できる。本実施形態の多芯ケーブルは、被覆電線としては例えば電力線や、信号線、電線等から選択された1種類以上を含むことができる。
【0030】
被覆電線として、電力線、信号線、電線の構成例について以下に説明する。
【0031】
(1−1)電力線
電力線11は第1の導体111と、第1の導体111を覆う第1の絶縁層112と、を含むことができる。なお、
図1〜
図3に示した多芯ケーブル10、多芯ケーブル20、多芯ケーブル30ではそれぞれ2本の電力線11を含んでおり、該2本の電力線は互いに大きさ及び材料を同じにすることができる。
【0032】
2本の電力線11は、例えば電動パーキングブレーキ(Electric Parking Brake:EPB)と、電子制御装置(Electric Control Unit:ECU)とを接続するために用いることができる。EPBは、ブレーキキャリパーを駆動するモータを有している。例えば、一方の電力線11はこのモータへ電力を供給する給電線として用い、他方の電力線11は該モータのアース線として用いることができる。
【0033】
第1の導体111は、複数本の導体を撚り合わされて構成できる。導体は、銅又は銅合金から構成された線を用いることができる。導体は、銅や銅合金の他に、錫めっき軟銅線や軟銅線等のような所定の導電性と柔軟性を有する材料で構成することができる。導体を硬銅線で構成してもよい。第1の導体111の断面積は、1.4mm
2以上3mm
2以下とすることができる。なお、電力線11は複数の第1の導体111を有することもできる。
【0034】
第1の絶縁層112は、合成樹脂を主成分とする組成物により形成でき、第1の導体111の外周に積層されることで第1の導体111を被覆する。第1の絶縁層112の平均厚みとしては、特に限定されないが、例えば0.1mm以上5mm以下とすることができる。ここで「平均厚み」とは、任意の十点において測定した厚みの平均値をいう。なお、以下において他の部材等に対して「平均厚み」という場合にも同様に定義される。
【0035】
第1の絶縁層112の主成分は、絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、低温下における耐屈曲性向上の観点から、エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体(以下、主成分樹脂ともいう)が好ましい。上記主成分樹脂のカルボニル基を有するαオレフィン含有量の下限としては、14質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。一方、上記カルボニル基を有するαオレフィン含有量の上限としては、46質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記カルボニル基を有するαオレフィン含有量を上記下限以上とすることで、低温での耐屈曲性を特に高めることができるため好ましい。また、上記カルボニル基を有するαオレフィン含有量を上記上限以下とすることで、第1の絶縁層112の強度等の機械的特性を高めることができ、好ましい。
【0036】
カルボニル基を有するαオレフィンとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸;メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン;(メタ)アクリル酸アミド等から選択された1種類以上を含むことが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びビニルエステルから選択された1種類以上がより好ましく、アクリル酸エチル及び酢酸ビニルから選択された1種類以上がさらに好ましい。
【0037】
上記主成分樹脂としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)等の樹脂が挙げられ、これらの中でもEVA及びEEAから選択された1種類以上が好ましい。
【0038】
第1の絶縁層112は、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、反射付与剤、隠蔽剤、加工安定剤、可塑剤等の添加剤を含有していてもよい。また、第1の絶縁層112は、上記主成分樹脂以外のその他の樹脂を含有してもよい。
【0039】
その他の樹脂の含有量の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。また、第1の絶縁層112は、その他の樹脂を実質的に含有しなくてもよい。
【0040】
上記難燃剤としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤、金属水酸化物、窒素系難燃剤、リン系難燃剤等のノンハロゲン系難燃剤等が挙げられる。難燃剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
臭素系難燃剤としては、例えばデカブロモジフェニルエタン等が挙げられる。塩素系難燃剤としては、例えば塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェノール、パークロルペンタシクロデカン等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。窒素系難燃剤としては、例えばメラミンシアヌレート、トリアジン、イソシアヌレート、尿素、グアニジン等が挙げられる。リン系難燃剤としては、例えばホスフィン酸金属塩、ホスファフェナントレン、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム、リン酸エステル、ポリホスファゼン等が挙げられる。
【0042】
難燃剤としては、環境負荷低減の観点からノンハロゲン系難燃剤が好ましく、金属水酸化物、窒素系難燃剤及びリン系難燃剤がより好ましい。
【0043】
第1の絶縁層112が難燃剤を含有する場合、第1の絶縁層112における難燃剤の含有量の下限としては、樹脂成分100質量部に対し、10質量部が好ましく、50質量部がより好ましい。一方、難燃剤の含有量の上限としては、樹脂成分100質量部に対し、200質量部が好ましく、130質量部がより好ましい。難燃剤の含有量が上記下限より小さいと、難燃効果を十分に付与できないおそれがある。逆に、難燃剤の含有量が上記上限を超えると、第1の絶縁層112の押出成型性を損なうおそれ、及び伸びや引張強さ等の機械的特性を損なうおそれがある。
【0044】
第1の絶縁層112は、樹脂成分が架橋されていることが好ましい。第1の絶縁層112の樹脂成分を架橋する方法としては、電離放射線を照射する方法、熱架橋剤を用いる方法、シラングラフトマーを用いる方法等が挙げられ、電離放射線を照射する方法が好ましい。また、架橋を促進するため、第1の絶縁層112を形成する組成物にはシランカップリング剤を添加することが好ましい。
【0045】
(1−2)信号線
信号線121は、第1の導体111より細い第2の導体1211と、第2の導体1211を覆う第2の絶縁層1212と、を含んでいる。信号線121は2本一組で撚り合わされて対撚信号線12として構成することができる。長手方向に沿って撚り合わされる2本の信号線121は、互いに大きさ及び材料を同じとすることができる。対撚信号線12の撚りピッチは特に限定されないが、例えば対撚信号線12の撚り径(対撚信号線12の外径)の4倍以上10倍以下とすることができる。
【0046】
多芯ケーブルが、電力線11と、対撚信号線12とを有する場合、対撚信号線12の外径は、電力線11の外径とほぼ同じ大きさとすることができる。
【0047】
信号線121は、センサからの信号を伝送するために用いることもできるし、ECUからの制御信号を伝送するために用いることもできる。2本の信号線121は、例えばアンチロックブレーキシステム(Anti−lock Brake System:ABS)の配線に用いることができる。2本の信号線121はそれぞれ、例えば、差動式の車輪速センサと車両のECUとを接続する線として用いることができる。2本の信号線121を他の信号の伝送に用いてもよい。
【0048】
第2の導体1211は、1本の導体から構成しても良いし、電力線11と同様に複数本の導体を撚り合わされて構成してもよい。第2の導体1211は、既述の第1の導体111を構成する導体と同じ材料で構成してもよいし、異なる材料を用いてもよい。第2の導体1211の断面積は特に限定されないが、例えば0.13mm
2以上0.5mm
2以下とすることができる。なお、信号線121は複数の第2の導体1211を有することもできる。
【0049】
第2の絶縁層1212の材料は特に限定されないが、例えば、難燃剤が配合されることで難燃性が付与された架橋ポリエチレン等の難燃性のポリオレフィン系樹脂で形成することができる。第2の絶縁層1212を構成する材料としては、難燃性のポリオレフィン系樹脂に限られず、架橋フッ素系樹脂等の他の材料で形成しても良い。第2の絶縁層1212の外径は、例えば1.0mm以上2.2mm以下とすることができる。
【0050】
(1−3)電線
図2の多芯ケーブル20に示したように、本実施形態の多芯ケーブルは、被覆電線として、電線21を有することもできる。
【0051】
電線21は、第1の導体111より細い第3の導体211と、第3の導体211を覆う第3の絶縁層212と、を含んでいる。電線21は、大きさ及び材料が信号線121と同じであってもよい。
【0052】
電線21は、センサからの信号を伝送するために用いることもできるし、ECUからの制御信号を伝送するために用いることもできるし、電子機器へ電力を供給する給電線としても用いることができる。電線21をアース線として利用することもできる。
【0053】
第3の導体211は、1本の導体から構成してもよいし、電力線11と同様に複数本の導体を撚り合わせて構成してもよい。第3の導体211は、第1の導体111や第2の導体1211を構成する導体と同じ材料で構成してもよいし、異なる材料を用いてもよい。第3の導体211の断面積は特に限定されないが、例えば0.13mm
2以上0.5mm
2以下とすることができる。なお、電線21は複数の第3の導体211を有することもできる。
【0054】
第3の絶縁層212は、第2の絶縁層1212と同じ材料を用いることができるし、異なる材料を用いてもよい。第3の絶縁層212の外径は、1.0mm以上2.2mm以下とすることができる。
【0055】
2本の電線21が用いられ、これらが撚り合わされて対撚電線が構成されてもよい。この場合、撚り合わされる2本の電線21は、大きさ及び材料が同じであることが好ましい。電線を対撚電線とし、対撚信号線と共に多芯ケーブルに配置する場合、対撚電線は、対撚信号線12と同じ方向に撚られていることが好ましい。また、この場合、対撚電線は、対撚信号線12と撚りピッチが等しいことが好ましい。対撚電線の外径は、対撚信号線12の外径とほぼ同じ大きさとすることができる。対撚電線の外径は、電力線11の外径とほぼ同じ大きさとすることができる。
【0056】
既述の様に、本実施形態の多芯ケーブルが有する複数の被覆電線の構成は特に限定されず、多芯ケーブルを接続する機器等に応じて、任意の構成の被覆電線を、任意の本数有することができる。ただし、
図1〜
図3に示した多芯ケーブル10、20、30の様に、多芯ケーブルは、電力線11と、対撚信号線12とを含む複数の被覆電線を有することが好ましい。電力線11と、対撚信号線12とを備えた多芯ケーブルとすることで、各種用途で使用することができる、汎用性の高い多芯ケーブルとすることができるからである。
【0057】
電力線11、対撚信号線12は、既述の構成を有することができ、例えば電力線は撚り合わされた複数本の導体と、該複数本の導体を覆う絶縁層とを有することができる。また、対撚信号線12は、撚り合わされた2本の信号線を有することができる。
【0058】
なお、ここまで被覆電線の例として、電力線、信号線、電線を説明したが、上記説明中の第1の導体111、第2の導体1211、第3の導体211が、既述の被覆電線の導体に当たる。また、第1の絶縁層112、第2の絶縁層1212、第3の絶縁層212が、既述の被覆電線の絶縁層に当たる。
【0059】
(2)外周被膜
ここまで説明したように、本実施形態の多芯ケーブルでは、電力線11や、信号線121、電線21等から選択された複数の被覆電線を含むことができる。そして、複数の被覆電線は、長手方向に沿って、一体に撚り合わされてコアを構成することができる。
【0060】
具体的には例えば、
図1に示した多芯ケーブル10の場合であれば、2本の電力線11と、1本の対撚信号線12を撚り合せてコア13を構成できる。また、
図2に示した多芯ケーブル20の場合、2本の電力線11と、1本の対撚信号線12と、電線21とを撚り合せてコア23を構成できる。
図3に示した多芯ケーブル30の場合、2本の電力線11と、2本の対撚信号線12とを撚り合せてコア33を構成できる。
【0061】
複数の被覆電線を撚り合せたコアの全体の撚り径は、例えば5.5mm以上9mm以下とすることができる。
【0062】
また、複数の被覆電線を撚り合せたコアの撚りピッチについても特に限定されないが、例えばコアの撚り径の12倍以上24倍以下とすることができる。コアの撚りピッチをコアの撚り径の24倍以下とすることで、撚りがゆるくなることを抑制し、耐屈曲性を特に高めることができる。また、コアの撚りピッチをコアの撚り径の12倍以上とすることで、多芯ケーブルの生産性を特に高めることができる。
【0063】
なお、コアが対撚信号線12を含む場合、コアの撚りピッチのコアの撚り径に対する比率は、対撚信号線12の撚りピッチの対撚信号線12の撚り径に対する比率より大きいことが好ましい。コアの撚り方向は、特に限定されないが、対撚信号線12の撚り方向と同方向であることが好ましい。
【0064】
本実施形態の多芯ケーブルは、複数の被覆電線、すなわちコアの外周を覆う外周被膜14を有することができる。この際、外周被膜14は、複数の被覆電線、すなわちコアを完全に覆うように配置することができる。
【0065】
そして、本発明の発明者らの検討によれば、外周被膜14の外表面14Aから0.1mmの範囲における、外周被膜14の−30℃での弾性率を100MPa以上600MPa以下とすることで、多芯ケーブルの耐屈曲性を特に高めることができる。
【0066】
図1〜
図3中に示したように、外周被膜14の外表面14Aと、外表面14Aからの距離L1が0.1mmである点線Aとの間を領域Xとする。多芯ケーブルの長手方向と垂直な断面において、通常、多芯ケーブルの外表面14Aは円形状となり、外表面14Aからの距離L1が0.1mmである点線Aは該外表面14Aに沿って外表面14Aと同様の形状となるため、領域Xは円環形状となる。なお、多芯ケーブルの長手方向と垂直な断面における多芯ケーブルの外表面14Aの形状についての「円」は、厳密な意味での円、すなわち真円のみを意味するものではなく、多芯ケーブルに許容される公差を含み、例えば楕円等の真円以外の円も含む。
【0067】
そしてこの場合、領域Xにおける外周被膜14の−30℃での弾性率が100MPa以上600MPa以下であることが好ましく、300MPa以上500MPa以下であることがより好ましい。
【0068】
既述の様に、多芯ケーブルは、例えば自動車等の車両で用いられているが、車両の使用時等に、多芯ケーブルは繰り返し曲げられる場合がある。このため、多芯ケーブルについて耐久性を高める観点から、高い耐屈曲性が求められていた。なお、高い耐屈曲性を有する多芯ケーブルとは、多芯ケーブルを繰り返し曲げた場合に、多芯ケーブルが有する被覆電線に亀裂や断線等が生じて抵抗値が高くなるまでに要する繰り返し曲げ回数が多い多芯ケーブルを意味する。
【0069】
そこで、本発明の発明者らが鋭意検討を行ったところ、上述の領域Xにおける外周被膜の−30℃での弾性率を600MPa以下とすることで、該外周被膜の外表面側について十分な柔軟性を付与することができる。この様に外周被膜の外表面側に十分な柔軟性を付与することで、多芯ケーブルに力が加わった場合でも、多芯ケーブルの外周被膜の外表面側が変形することができる。このため、多芯ケーブルに力が加わった場合に、多芯ケーブル内部の変形を阻害しないため、多芯ケーブル内部の電力線等の被覆電線が断線等することを抑制し、耐屈曲性を高められると考えられる。
【0070】
そして、特に氷点下の環境下においては、外周被膜の弾性率が低下し、多芯ケーブルが外部から加えられた力に追従して変形しにくくなるが、そのような環境下においても耐屈曲性を高めることが求められている。このため、上述のように領域Xの外周被膜の−30℃における弾性率が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0071】
ただし、外周被膜は、飛び石等の飛来物から被覆電線を保護し、被覆電線が破損することを防止する機能も有している。このため、例えば多芯ケーブルの外周に飛び石等が衝突した場合に、内部の電力線等の被覆電線を保護する観点から、上述の領域Xでの外周被膜の−30℃における弾性率は100MPa以上であることが好ましい。
【0072】
なお、外周被膜14は、上記領域Xだけではなく、外周被膜14全体が、上記弾性率の好適な範囲を充足しても良い。
【0073】
ただし、本実施形態の多芯ケーブルでは、外周被膜14の複数の被覆電線側に位置する内表面14Bから0.1mmの範囲における、外周被膜14の樹脂材料の−30℃での弾性率が、外周被膜14の外表面14Aの−30℃での弾性率よりも低いことが好ましい。
【0074】
図1〜
図3中に示したように、外周被膜14の複数の被覆電線側に位置する内表面14Bと、内表面14Bからの距離L2が0.1mmである点線Bとの間を領域Yとする。この場合、領域Yにおける外周被膜14の樹脂材料の−30℃での弾性率が、外周被膜14の外表面14Aの−30℃での弾性率よりも低いことが好ましい。
【0075】
これは、外周被膜14の内、電力線11等の複数の被覆電線側に位置する領域Yにおける外周被膜14の樹脂材料の−30℃での弾性率を、外周被膜14の外表面14Aの−30℃での弾性率よりも低くすることで、領域Yの外周被膜14の柔軟性を特に高くすることができる。このため、電力線11等の複数の被覆電線が変位や、変形をした場合であっても、領域Yの外周被膜14が係る変位等を吸収することができる。従って、複数の被覆電線が断線等することを特に抑制し、多芯ケーブルの耐屈曲性を特に高めることができる。
【0076】
領域Yにおける外周被膜14の樹脂材料の−30℃での弾性率の具体的な範囲は特に限定されないが、例えば500MPa以下であることが好ましく、400MPa以下であることがより好ましい。
【0077】
なお、既述の様に、外周被膜14は、複数の被覆電線を保護する機能も有することから、領域Yにおける外周被膜14の樹脂材料の−30℃での弾性率は、10MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましい。
【0078】
外周被膜14の構成は特に限定されず、所望の弾性率となるように異なる材料からなる複数の層から構成することもできる。また、外周被膜14は1つの層から構成することもできる。
【0079】
具体的には例えば、外周被膜14は、電力線11等の複数の被覆電線の側から順に第1の被膜層141と、第2の被膜層142とを有することもできる。
【0080】
このように外周被膜14を複数の層から構成することにより、外周被膜14の場所に応じてその弾性率を調整し易くなるため好ましい。
【0081】
上述のように外周被膜14が第1の被膜層141と、第2の被膜層142とを有する場合、例えば、第2の被膜層142の−30℃での弾性率を100MPa以上600MPa以下とすることが好ましく、300MPa以上500MPa以下とすることがより好ましい。
【0082】
これは第2の被膜層142の弾性率を上記範囲とすることで、例えば既述の領域Xにおける外周被膜の弾性率を容易に所望の範囲とすることができるからである。なお、この場合、第2の被膜層142が、例えば外周被膜14の外表面14Aを含むように構成することが好ましい。すなわち、第2の被膜層142は、外周被膜14の最外周側に配置されていることが好ましい。
【0083】
また、第2の被膜層142の厚みは特に限定されないが、例えば0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。なお、第2の被膜層142の厚みの上限は特に限定されないが、例えば1.0mm以下とすることが好ましく、0.8mm以下とすることがより好ましい。
【0084】
また、上述のように外周被膜14が第1の被膜層141と、第2の被膜層142とを有する場合、例えば、第1の被膜層141の−30℃での弾性率が、外周被膜14の外表面14Aの−30℃での弾性率よりも低いことが好ましい。
【0085】
これは第1の被膜層141の弾性率を上記範囲とすることで、例えば既述の領域Yの弾性率を容易に所望の範囲とすることができるからである。なお、この場合、第1の被膜層141が、例えば外周被膜14の内表面14Bを含むように構成することが好ましい。すなわち、第1の被膜層141は外周被膜14の最内周側、言い換えると複数の被覆電線の側に配置されていることが好ましい。
【0086】
また、第1の被膜層141の厚みは特に限定されないが、例えば0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。なお、第1の被膜層141の厚みの上限は特に限定されないが、例えば1.0mm以下とすることが好ましく、0.8mm以下とすることがより好ましい。
【0087】
第1の被膜層141の−30℃での弾性率の具体的な範囲は特に限定されないが、例えば500MPa以下であることが好ましく、400MPa以下であることがより好ましい。第1の被膜層141の−30℃での弾性率の下限値は特に限定されないが、例えば10MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましい。
【0088】
外周被膜14の材料は特に限定されないが、例えばポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、またはこれらの少なくとも2種を混合して形成される組成物で形成することができる。また、外周被膜14は、例えば耐摩耗性に優れた架橋/非架橋熱可塑性ポリウレタン(TPU)で構成することもできる。耐熱性に優れることから、外周被膜14は架橋熱可塑性ポリウレタンで構成することが好ましい。
【0089】
外周被膜14の−30℃での弾性率を所望の範囲とする具体的な方法は特に限定されず、例えば外周被膜14を構成する材料を選択することにより所望の弾性率とすることができる。また、外周被膜14の樹脂材料に、例えば難燃剤等の無機物質を配合することでその弾性率を調整することもできる。外周被膜14の樹脂材料に難燃剤等の無機物質を配合する場合、その配合割合は特に限定されないが、例えば樹脂材料100質量部に対して、難燃剤等の無機物質を12質量部以下となるように添加することが好ましく、10質量部以下となるように添加することがより好ましい。
【0090】
樹脂材料100質量部に対する無機物質の添加量が過剰になると弾性率が増加する恐れがあることから、その添加量は12質量部以下とすることが好ましい。
【0091】
添加する無機物質としては、例えば三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルクから選択された1種類以上が挙げられる。
【0092】
外周被膜14は、既述の様に第1の被膜層141と、第2の被膜層142とを有することもできる。この場合、第1の被膜層141と、第2の被膜層142とを異なる材料で構成することもでき、同じ材料で構成することもできる。また、例えば第1の被膜層141と、第2の被膜層142とで、難燃剤等の無機物質の添加剤の添加量を変え、各層の弾性率を調整することもできる。
【0093】
第1の被膜層141、第2の被膜層142の材料としては特に限定されず、例えば上述の外周被膜14について説明した材料を用いることができる。
【0094】
第1の被膜層141の材料としては、ポリウレタン樹脂、およびポリエチレン樹脂から選択された1種類以上を好適に用いることができる。既述の様に弾性率を調整するため、第1の被膜層141は、必要に応じて難燃剤等の無機物質をさらに含有してもよい。
【0095】
第2の被膜層142の材料としては、耐摩耗性に優れるポリウレタン樹脂を好適に用いることができる。第2の被膜層142は、多芯ケーブルの外側に配置されるため、第2の被膜層142の材料として、ポリウレタン樹脂を用いることで多芯ケーブルの耐久性を特に高めることができる。
【0096】
既述の様に弾性率を調整するため、第2の被膜層142についても、難燃剤等の無機物質をさらに含有してもよい。このため、第2の被膜層142は、例えば三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルクから選択された1種類以上を含むポリウレタン樹脂を含有することが好ましい。第2の被膜層142は、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルクから選択された1種類以上を含むポリウレタン樹脂のみから構成することもできる。
【0097】
第2の被膜層142を上記材料で構成することにより、多芯ケーブルの耐久性を特に高め、第2の被膜層142部分の弾性率を容易に調整できる。
【0098】
本実施形態の多芯ケーブルは、ここまで説明した複数の被覆電線や、外周被膜以外に任意の部材をさらに有することもできる。
【0099】
例えば複数の被覆電線の外周を覆う、抑え巻15を有していてもよい。抑え巻15は、複数の被覆電線を撚り合せたコアを覆っている。抑え巻15を配置することで、コアを構成する複数の被覆電線の撚り合わされた形状を安定的に維持することができる。抑え巻15は、外周被膜14の内側に設けることができる。
【0100】
抑え巻15として、例えば、紙テープや不織布、ポリエステルなどの樹脂製のテープを用いることができる。また、抑え巻15は、コアの長手方向に沿って、螺旋状に巻き付けてもよいし、縦添え、すなわち抑え紙の長手方向をコアの長手方向に沿って配置する構成であっても良い。また、巻き方向は、Z巻きでもS巻きでも良い。またコア13が対撚信号線12等を含む場合、抑え巻15の巻き方向は、コア13に含まれる対撚信号線12等の対撚り方向と同じ方向に巻いてもよいし、反対方向に巻いてもよい。もっとも、抑え巻15の巻き方向と対撚信号線12等の対撚り方向とを反対にすると、抑え巻15の表面に凹凸が生じにくく、多芯ケーブルの外径形状が安定し易いので好ましい。
【0101】
なお、抑え巻15が、緩衝作用を有し屈曲性を高める機能や、外部からの保護機能を有することから、抑え巻15を設けた場合には外周被膜14の層を薄く構成できる。このように抑え巻15を設けることにより、さらに曲げやすくかつ耐摩耗性に優れた多芯ケーブルを提供できる。
【0102】
また、押出被覆で樹脂製の外周被膜14等を設ける場合には、該樹脂が複数の被覆電線の間に入り込んでしまい、多芯ケーブルの末端において複数の被覆電線を分離しにくくなる場合がある。そこで、抑え巻15を設けることにより、該樹脂の複数の被覆電線の間への侵入を防止し、端末において電力線等の複数の被覆電線を取り出しやすくすることができる。
【0103】
また、本実施形態の多芯ケーブルは、例えば外周被膜14と、コアとの間の領域16に介在を有していてもよい。介在は、スフ糸やナイロン糸などの繊維で構成することができる。介在は、抗張力繊維で構成してもよい。
【0104】
介在は、電力線11間や、電力線11と信号線121との間の様に、被覆電線間に形成される隙間に配置することができる。
【0105】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【実施例】
【0106】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
まず、以下の実験例において作製した多芯ケーブルの評価方法について説明する。
(1)外周被膜の弾性率の評価
以下の各実験例で、外周被膜14を形成する際に用いた樹脂(組成物)と同じ樹脂(組成物)を溶融押出して、弾性率測定用の試料を作製した。なお、実験例1では第1の被膜層141、および第2の被膜層142を有する外周被膜14を形成したため、各被膜層を形成する際に用いた樹脂と同じ樹脂を用いて2つの弾性率測定用の試料を作製した。
【0107】
作製された各試料について、JIS−K7244−1(1998)に準拠し、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社の「DVA200」)を用いて、歪0.08%、周波数10Hz、昇温速度10℃/分の条件で−50℃〜200℃の範囲で貯蔵弾性率を測定した。
【0108】
実験例1では、この測定により得られた、第1の被膜層141を形成する際に用いた樹脂と同じ樹脂についての−30℃での貯蔵弾性率が、第1の被膜層141の−30℃での弾性率となる。また、この測定により得られた、第2の被膜層142を形成する際に用いた樹脂と同じ樹脂についての−30℃での貯蔵弾性率が、第2の被膜層142の−30℃での弾性率となる。
【0109】
実験例2では、この測定により得られた、外周被膜14を形成する際に用いた樹脂と同じ樹脂についての−30℃での貯蔵弾性率が、外周被膜14の−30℃での弾性率となる。
(2)耐屈曲性試験
以下の実験例で得られた多芯ケーブルについて、JIS C 6851(2006)(光ファイバ特性試験方法)に準ずる方法にて耐屈曲性試験を行った。
【0110】
具体的には、
図4に示すように、水平かつ互いに平行に配置された直径60mmの2本のマンドレル411、412の間に、評価を行う多芯ケーブル42を鉛直方向に配置して挟み、上端を一方のマンドレル411の上側に当接するように水平方向に90°屈曲させた後、他方のマンドレル412の上側に当接するように水平方向に90°屈曲させることを−30℃の恒温槽内で繰り返した。この繰り返しは、ケーブル中の2本の導体を接続して抵抗値を測定しながら行い、初期抵抗値の10倍以上まで抵抗が上昇したときの回数(右側に曲げてから、左側に曲げた後、右側に戻ってくるまでを屈曲回数1回とする。)を耐屈曲性試験の指標値とした。なお、耐屈曲性試験の指標値、すなわち屈曲回数が多いほど耐屈曲性に優れることを意味する。
(実験例)
以下、実験条件について説明する。実験例1が実施例、実験例2が比較例となる。
[実験例1]
図1に示した多芯ケーブル10を作製し、評価を行った。具体的には、コア13は、2本の電力線11と、2本の信号線121を含む対撚信号線12とを含む。
【0111】
電力線11は7本の第1の導体111を含む。第1の導体111は48本の導体が撚り合わされて構成されており、第1の導体111の外径は2.7mmであり、断面積は1.7mm
2である。
【0112】
対撚信号線12は、3本の第2の導体1211を含む信号線121を撚り合せて形成されている。第2の導体1211は16本の導体が撚り合わされて構成されており、第2の導体1211の外径は1.6mmであり、断面積は0.25mm
2である。
【0113】
コア13は、上述の2本の電力線11と、対撚信号線12とが長手方向に沿って撚り合せて形成されている。そして、コア13の周りには、抑え巻15として薄紙が配置され、コア13を覆うように外周被膜14が配置されている。
【0114】
外周被膜14は、第1の被膜層141と、第2の被膜層142とを有している。第1の被膜層141は、その厚みが0.65mmであり、ポリエチレン樹脂により形成した。第2の被膜層142は厚みが0.5mmであり、ポリウレタン樹脂に、ポリウレタン樹脂100質量部に対して無機物質である三酸化アンチモンを12質量部の割合で添加した材料により形成した。
【0115】
第1の被膜層141を形成する際に用いたポリエチレン樹脂の−30℃での弾性率を測定したところ、200MPaであった(表1中「第1の被膜層の弾性率」として示している)。このため、
図1の領域Yにおける外周被膜14の−30℃での弾性率は200MPaとなる。
【0116】
また、第2の被膜層142を形成する際に用いたポリウレタン樹脂に、ポリウレタン樹脂100質量部に対して無機物質である三酸化アンチモンを12質量部の割合で添加した材料の−30℃での弾性率を測定したところ、400MPaであった(表1中「第2の被膜層の弾性率」として示している)。このため、
図1の領域X、及び外表面14Aにおける外周被膜14の−30℃での弾性率は400MPaとなる。
【0117】
評価結果を表1に示す。
[実験例2]
外周被膜14を、ポリウレタン樹脂に、ポリウレタン樹脂100質量部に対して無機物質である三酸化アンチモンを15質量部の割合で添加した材料により形成し、1層とした点以外は、実験例1の場合と同様にして多芯ケーブルを作製した。
【0118】
外周被膜14を形成する際に用いたポリウレタン樹脂に、ポリウレタン樹脂100質量部に対して無機物質である三酸化アンチモンを15質量部の割合で添加した材料の−30℃における弾性率を測定したところ、650MPaであった。
【0119】
このため、
図1における外周被膜14の−30℃での弾性率は、外周被膜14のいずれの場所においても650MPaとなる。
【0120】
評価結果を表1に示す。
【0121】
【表1】
表1に示した結果によれば、外周被膜14の外表面14Aから0.1mmの範囲、すなわち領域Xにおける、外周被膜14の−30℃での弾性率が100MPa以上600MPa以下である実験例1の多芯ケーブルは、上記規定を充足しない実験例2の多芯ケーブルと比較して耐屈曲性に優れることを確認できた。