特許第6962454号(P6962454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962454
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20211028BHJP
   H02K 5/173 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H02K7/116
   H02K5/173
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-512931(P2020-512931)
(86)(22)【出願日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】IB2018000528
(87)【国際公開番号】WO2019197856
(87)【国際公開日】20191017
【審査請求日】2020年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 卓
(72)【発明者】
【氏名】溝上 良一
(72)【発明者】
【氏名】デレッグ ジャック
(72)【発明者】
【氏名】フキョー アライン
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−291192(JP,A)
【文献】 特開2009−154604(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/146467(WO,A1)
【文献】 特開2014−004895(JP,A)
【文献】 特開昭60−018640(JP,A)
【文献】 特開2014−096964(JP,A)
【文献】 特開2010−081667(JP,A)
【文献】 特開2010−193681(JP,A)
【文献】 特開2007−062477(JP,A)
【文献】 実開平03−102086(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
H02K 5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内にロータ及びステータを備え、前記ロータのロータシャフトが動力伝達装置の動力伝達シャフトに接続される回転電機であって、
前記ハウジングにはベアリングが設けられ、
前記ロータシャフトの一端部は、前記ベアリングを介して支持されており、
前記ロータシャフトの他端部は、前記動力伝達シャフトの端部に形成されたシャフト孔に挿入され、
前記他端部の外周面は、前記シャフト孔の内周面に対して嵌合し、
前記動力伝達シャフトに嵌合する部位とは異なる位置における前記他端部の外周面には、前記シャフト孔の内周面に対してスプライン結合するスプライン部が形成され、
前記動力伝達シャフトに嵌合する部位は、シャフト軸方向において前記スプライン部よりも前記動力伝達シャフト寄りの位置に設けられ、
前記ロータは、筒状のロータコアを内側から支持する筒状のコア支持部と、前記ロータシャフトの外周面からシャフト径方向に突出する円板状部材であって、前記ロータシャフトの外周面と前記コア支持部の内周面とを接続する接続部と、を備え、
前記ハウジングは、当該ハウジングの一部が前記コア支持部の内側に入り込むように形成され、
前記ベアリングは、前記ハウジングにおける前記コア支持部の内側に入り込んだ部位に設けられる、
回転電機。
【請求項2】
ハウジング内にロータ及びステータを備え、前記ロータのロータシャフトが動力伝達装置の動力伝達シャフトに接続される回転電機であって、
前記ハウジングにはベアリングが設けられ、
前記ロータシャフトの一端部は、前記ベアリングを介して支持されており、
前記ロータシャフトの他端部は、前記動力伝達シャフトの端部が挿入されるシャフト孔を備え、
前記シャフト孔の内周面は、前記動力伝達シャフトの端部の外周面に対して嵌合し、
前記動力伝達シャフトに嵌合する部位とは異なる位置における前記シャフト孔の内周面には、前記動力伝達シャフトの外周面に対してスプライン結合するスプライン部が形成され、
前記動力伝達シャフトに嵌合する部位は、シャフト軸方向において前記スプライン部よりも前記動力伝達シャフト寄りの位置に設けられ、
前記ロータは、筒状のロータコアを内側から支持する筒状のコア支持部と、前記ロータシャフトの外周面からシャフト径方向に突出する円板状部材であって、前記ロータシャフトの外周面と前記コア支持部の内周面とを接続する接続部と、を備え、
前記ハウジングは、当該ハウジングの一部が前記コア支持部の内側に入り込むように形成され、
前記ベアリングは、前記ハウジングにおける前記コア支持部の内側に入り込んだ部位に設けられる、
回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
前記ベアリングは、複列アンギュラボールベアリングとして構成される、
回転電機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
前記ベアリングは、シャフト軸方向に複数並設された単列ボールベアリングにより構成される、
回転電機。
【請求項5】
請求項4に記載の回転電機であって、
前記ボールベアリングの内輪又は外輪は、前記ハウジングに設けられたばねによりシャフト軸方向に付勢される、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2014−225971Aには、ロータシャフトを有するロータと、ロータを取り囲むように設けられるステータと、ロータ及びステータを収容するモータハウジングと、を備える電動モータが開示されている。電動モータのロータシャフトの一端は、変速機の回転軸に連結されている。変速機は、ロータシャフトの回転動力を減速させてドライブシャフトに伝達するよう構成されている。
【発明の概要】
【0003】
上述した電動モータにおいては、ロータシャフトの一端を支持するボールベアリングと、ロータシャフトの他端を支持するボールベアリングとがモータハウジングに設けられている。つまり、この電動モータは、シャフト軸方向に離間して配置された一端側ボールベアリングと他端側ボールベアリングのそれぞれによりロータシャフトが回転自在に軸受けされる構成となっている。このような構成の電動モータ(回転電機)では、ロータシャフトの一端側と他端側にボールベアリングが配置されるため、電動機の全体構成が複雑となるだけなく、モータ駆動時に一端側及び他端側のボールベアリングによる摩擦損失が発生してしまう。
【0004】
本発明は、簡素な構成で摩擦損失の発生を抑制可能な回転電機を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の一態様によれば、ハウジング内にロータ及びステータを備え、ロータのロータシャフトが動力伝達装置の動力伝達シャフトに接続される回転電機が提供される。回転電機のハウジングにはベアリングが設けられ、ロータシャフトの一端部はベアリングを介して支持される。ロータシャフトの他端部は、動力伝達シャフトに対して嵌合するインロー継手構造により動力伝達シャフトに支持される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態によるモータと、変速機とを備えるモータシステムの一部縦断面図である。
図2図2は、第2実施形態によるモータと、変速機とを備えるモータシステムの一部縦端面図である。
図3図3は、第3実施形態によるモータと、変速機とを備えるモータシステムの一部縦端面図である。
図4図4は、第4実施形態によるモータと、変速機とを備えるモータシステムの一部縦端面図である。
図5図5は、第5実施形態によるモータと、変速機とを備えるモータシステムの一部縦端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、説明する。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態によるモータ50と、変速機60とを備えるモータシステム100の一部縦断面図である。
【0009】
図1に示すように、モータシステム100(回転電機システム)は、モータ50と、変速機60とを備え、例えば電気自動車用の駆動装置を構成する。本実施形態のモータシステム100は、自動車用システムとして説明するが、車両以外の機器、例えば各種電気機器又は産業機械の駆動装置として用いられてもよい。
【0010】
モータ50は、車両に搭載されたバッテリ等の電源から電力の供給を受けて回転し、車両の車輪を駆動する電動機として機能する。モータ50は、外力により駆動されて発電する発電機としても機能する。したがって、モータ50は、電動機及び発電機として機能する、いわゆるモータジェネレータ(回転電機)として構成されている。本実施形態では、モータ50は、電気自動車用のモータジェネレータとして構成されているが、各種電気機器又は産業機械に用いられるモータジェネレータとして構成されてもよい。
【0011】
モータ50は、ロータ10と、ロータ10を取り囲むように配置されるステータ20と、ロータ10及びステータ20を収容するハウジング30と、を備えている。
【0012】
ロータ10は、円筒状のロータコア11と、ロータコア11の挿入孔11A内に固定されるロータシャフト12と、を備える。ロータ10は、ステータ20の内部に、当該ステータ20に対して回転可能に配置されている。ロータシャフト12は、ロータコア11の両端面から軸方向外側に突出する軸部材として構成されている。ロータシャフト12の一端部121(左端)はハウジング30に設けられたベアリング40により回転自在に支持されており、ロータシャフト12の他端部122(右端)は変速機60の回転軸61に連結されている。ロータシャフト12及び回転軸61は、それらの回転中心が同一線上に位置するように配置される。
【0013】
ステータ20は電磁鋼板を複数枚積層して形成された円筒状部材であって、ステータ20のティースにはU相、V相及びW相のコイルが巻き回されている。ステータ20は、その外周面がハウジング30の内周面に対して接触した状態でハウジング30に固定されている。
【0014】
ハウジング30は、ロータ10及びステータ20を収容するケース部材である。モータ50と変速機60とは隣接して配置されており、ハウジング30の右側面はボルト等の締結手段により変速機60の変速機ケース62の左側面に固定されている。ハウジング30右側面には、ロータシャフト12の他端部122をハウジング30の外側に通過させる貫通孔31が形成されている。
【0015】
変速機60は、変速機ケース62内に回転軸61と図示しない複数のギアとを備え、ロータシャフト12の回転動力を変速してドライブシャフトに伝達する動力伝達装置として構成されている。回転軸61は、変速機ケース62に設けられたボールベアリング63により回転自在に支持されている。
【0016】
なお、変速機ケース62の左側面には、回転軸61の左端部(先端部位)を変速機ケース62の外側に通過させる貫通孔64が形成されている。変速機ケース62の貫通孔64は、ハウジング30の貫通孔31と連通するように配置されている。
【0017】
本実施形態によるモータ50においてはロータ10のロータシャフト12の支持構造に特徴があり、以下ではロータシャフト12の支持構造について説明する。
【0018】
図1に示すように、モータ50のロータシャフト12は、ロータコア11の挿入孔11Aに固定される中央部123と、中央部123から変速機60側とは反対側に延設される一端部121と、中央部123から変速機60側に延設される他端部122とから構成されている。一端部121及び他端部122の外径は中央部123の外径よりも小さく形成されており、一端部121及び他端部122は中央部123よりも細い軸部材となっている。
【0019】
ハウジング30の左側面内側にはベアリング40を支持する円筒状の軸受支持部32が突出形成されており、ロータシャフト12の一端部121は軸受支持部32の内周面に固定されたベアリング40により回転自在に支持されている。ベアリング40は、例えば単列のボールベアリング(深溝玉軸受)である。ベアリング40の内輪は一端部121の外周面に取り付けられ、ベアリング40の外輪は軸受支持部32の内周面に取り付けられる。このように、モータ50単体で見れば、ロータ10のロータシャフト12は一端部121のみがベアリング40により支持された状態となっている。
【0020】
ロータシャフト12の他端部122は、先端に向かって段階的に小径となる軸部材として構成されている。変速機60の回転軸61は左側の端部に軸方向に窪むように形成されたシャフト孔61Aを有しており、ロータシャフト12の他端部122の先端部位は回転軸61の端部に形成されたシャフト孔61A(インロー孔)に挿入され、他端部122の外周面がシャフト孔61Aの内周面に対して嵌合している。このように、ロータシャフト12の他端部122は、変速機60の回転軸61に対して嵌合するインロー継手構造により回転軸61と接続されている。なお、回転軸61のシャフト孔61Aは、回転軸61の左端部を構成する部位に直線的に形成されているが、左先端面から回転軸61の中央部又は中央部よりも右端部寄りの位置まで直線的に形成されてもよい。したがって、ロータシャフト12の他端部122は、回転軸61の中央部又は中央部よりも右端寄りの位置で当該回転軸61のシャフト孔61Aに対してインロー接続するよう構成されてもよい。
【0021】
ロータシャフト12の他端部122は、先端よりも中央部123寄りの位置、つまり回転軸61に嵌合する部位(インロー接続部位)とは異なる位置における外周面に、シャフト孔61Aの内周面に対してスプライン結合するスプライン部122Aを備えている。このスプライン部122Aを介してロータシャフト12と回転軸61とがスプライン結合することにより、ロータシャフト12と回転軸61との間における相対回転が規制されている。なお、ロータシャフト12において、スプライン部122Aを他端部122の先端寄りの位置に設け、回転軸61に嵌合する部位(インロー接続部位)をスプライン部122Aよりも中央部123寄りの位置に設けてもよい。
【0022】
本実施形態では、ロータシャフト12と回転軸61との相対回転の規制は、スプライン継手構造により実現されているが、スプライン継手構造以外の継手構造により実現されてもよい。スプライン継手構造以外の継手構造としては、フランジ継手構造、オルダム継手構造、及びローテックス継手構造等が挙げられる。
【0023】
上記した本実施形態によるモータ50(回転電機)によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0024】
本実施形態によるモータ50はハウジング30内にロータ10及びステータ20を備え、ハウジング30にはベアリング40が設けられいる。そして、ロータシャフト12の一端部121はベアリング40を介して回転自在に支持されており、ロータシャフト12の他端部122は変速機60(動力伝達装置)の回転軸61(動力伝達シャフト)に対して嵌合するインロー継手構造により回転軸61に連結されている。より具体的には、モータ50では、ロータシャフト12の他端部122が変速機60の回転軸61の端部に形成されたシャフト孔61Aに挿入され、他端部122の外周面がシャフト孔61Aの内周面に対して嵌合することで、ロータシャフト12と回転軸61とがインロー接続されている。
【0025】
このように、ロータシャフト12の他端部122が変速機60の回転軸61にインロー接続されることで、ロータシャフト12の他端部122を支持するためのベアリングをハウジング30に設ける必要がない。モータ50においては、ハウジング30に設けられた一端部121用のベアリング40と、変速機60の回転軸61とによりロータシャフト12を回転自在に両端支持することができるため、ロータシャフト12の他端部122用のベアリングを省略することが可能となる。その結果、モータ50の全体構成を簡素化することができる。さらに、他端部122用のベアリングの配置しない分だけ、ロータシャフト12の回転時における摩擦抵抗を低減することができ、モータ50の製造コストも低減することができる。
【0026】
また、本実施形態によるモータ50のロータシャフト12では、変速機60の回転軸61に嵌合する部位とは異なる位置における他端部122の外周面に、シャフト孔61Aの内周面に対してスプライン結合するスプライン部122Aが形成されている。このように、ロータシャフト12の他端部122には、回転軸61にインロー接続される部位と、回転軸61にスプライン結合される部位とが形成されることとなる。そのため、回転軸61に対するロータシャフト12の接続範囲が広くなり、ロータシャフト12の他端部122をより安定的に支持することが可能となる。
【0027】
さらに、ロータシャフト12の他端部122において、回転軸61のシャフト孔61Aに嵌合する部位は、スプライン部122Aよりも回転軸61寄りの位置、例えば他端部122の先端部位に設けられる。これにより、ロータシャフト12において、ベアリング40により支持される部位と回転軸61により支持される部位とをできる限り離して配置することができる。このような構成により、ロータシャフト12の傾きをより抑制した状態でロータシャフト12を両端支持することができ、ロータシャフト12を安定的に支持することが可能となる。
【0028】
<第2実施形態>
次に、図2を参照して、第2実施形態によるモータ50と、変速機60とを備えるモータシステム100について説明する。第2実施形態のモータ50と第1実施形態のモータとは、ロータシャフト12の他端部122と変速機60の回転軸61とのインロー接続の仕方において相違する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態によるモータ50においては、ロータシャフト12の他端部122は中央部123より小径に形成された軸部材であり、他端部122の先端部位には軸方向に窪むシャフト孔122Bが形成されている。ロータシャフト12の他端部122のシャフト孔122B(インロー孔)には変速機60の回転軸61の左端部(先端部位)が挿入され、他端部122の先端面寄りに位置するシャフト孔122Bの内周面は回転軸61の端部外周面に対して嵌合している。このように、ロータシャフト12の他端部122は、変速機60の回転軸61に対して嵌合するインロー継手構造により回転軸61と接続されている。
【0030】
なお、ロータシャフト12のシャフト孔122Bは、他端部122を構成する部位に直線的に形成されているが、右先端面からロータシャフト12の中央部123又は中央部123よりも一端部121寄りの位置まで直線的に形成されてもよい。したがって、ロータシャフト12は、中央部123又は中央部123よりも一端部121寄りの位置で変速機60の回転軸61とインロー接続されるように構成されてもよい。
【0031】
ロータシャフト12の他端部122に形成されるシャフト孔122Bは、先端よりも中央部123寄りの位置、つまり回転軸61に嵌合する部位(インロー接続部位)とは異なる位置における内周面に、回転軸61の外周面に対してスプライン結合するスプライン部122Cを備えている。このスプライン部122Cを介してロータシャフト12と回転軸61とがスプライン結合することにより、ロータシャフト12と回転軸61との間における相対回転が規制されている。なお、ロータシャフト12において、スプライン部122Cを他端部122の先端寄りの位置に設け、回転軸61に嵌合する部位(インロー接続部位)をスプライン部122Cよりも中央部123寄りの位置に設けてもよい。
【0032】
本実施形態では、ロータシャフト12と回転軸61との相対回転の規制は、スプライン継手構造により実現されているが、スプライン継手構造以外の継手構造により実現されてもよい。スプライン継手構造以外の継手構造としては、フランジ継手構造、オルダム継手構造、及びローテックス継手構造等が挙げられる。
【0033】
本実施形態によるモータ50(回転電機)によれば、ロータシャフト12の一端部121はベアリング40を介して回転自在に支持されており、ロータシャフト12の他端部122は変速機60(動力伝達装置)の回転軸61(動力伝達シャフト)に対して嵌合するインロー継手構造により回転軸61に接続されている。より具体的には、ロータシャフト12の他端部122は回転軸61が挿入されるシャフト孔122Bを備え、シャフト孔122Bの内周面が回転軸61の端部外周面に対して嵌合することで、ロータシャフト12と回転軸61とがインロー接続されている。
【0034】
このように、ロータシャフト12の他端部122が変速機60の回転軸61にインロー接続されることで、ロータシャフト12の他端部122を支持するためのベアリングをハウジング30に設ける必要がなく、第1実施形態と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【0035】
第1実施形態によるモータにおいてはロータシャフトの他端部が回転軸のシャフト孔に挿入されるため、ロータシャフトの軸太さを回転軸よりも太くすることはできない。しかしながら、本実施形態のモータ50は、ロータシャフト12の他端部122のシャフト孔122Bが回転軸61の端部に外嵌めされる構成であるため、回転軸61の軸太さによらず他端部122を任意の太さに形成することができる。その結果、ロータシャフト12の他端部122と変速機60の回転軸61との接続強度を必要に応じて高めることが可能となる。特に、ロータシャフト12においては中央部123が太く形成されているため、他端部122を中央部123よりも外径が大きくならない範囲で容易に任意の太さに形成することができる。例えば、ロータシャフト12の他端部122と中央部123とを同じ外径とすれば、一端部121のみを他の部分によりも小径に形成するだけでよく、ロータシャフト12の製造コストを低減することができる。一方、接続強度を高めるため、外径がほぼ一定の回転軸61において当該回転軸61の端部のみを太く形成する場合には製造コストが増加してしまう。したがって、本実施形態によるロータシャフト12によれば、製造コストの増加を招くことなく、ロータシャフト12と回転軸61との接続強度を高めることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態によるモータ50では、ロータシャフト12の他端部122のシャフト孔122Bは、回転軸61に嵌合する部位とは異なる位置における内周面に、回転軸61の外周面に対してスプライン結合するスプライン部122Cを備えている。このように、ロータシャフト12の他端部122には、回転軸61にインロー接続される部位と、回転軸61にスプライン結合される部位とが形成されることとなる。そのため、回転軸61に対するロータシャフト12の接続範囲が広くなり、ロータシャフト12の他端部122をより安定的に支持することが可能となる。
【0037】
さらに、ロータシャフト12の他端部122において、回転軸61に嵌合する部位は、スプライン部122Cよりも回転軸61寄りの位置、例えば他端部122の先端部位におけるシャフト孔122Bに設けられる。これにより、ロータシャフト12において、ベアリング40により支持される部位と回転軸61により支持される部位とをできる限り離して配置することができる。このような構成により、ロータシャフト12の傾きをより抑制した状態でロータシャフト12を両端支持することができ、ロータシャフト12を安定的に支持することが可能となる。
【0038】
<第3実施形態>
次に、図3を参照して、第3実施形態によるモータ50と、変速機60とを備えるモータシステム100について説明する。第3実施形態のモータ50と第1実施形態のモータとは、ロータシャフト12の一端部121を支持するベアリング40の構造において相違する。
【0039】
本実施形態によるモータ50では、ロータシャフト12の一端部121を支持するベアリング40は、単列ボールベアリングではなく、複列アンギュラボールベアリングとして構成されている。複列アンギュラボールベアリングでは、内輪と外輪との間に設けられる転動体(玉)がシャフト軸方向に複数列(例えば2列)設けられ、各列において内輪、転動体、及び外輪の接触点を結ぶ直線(線A及びB)がシャフト径方向に対して傾きを有している。外側列の線Aは内輪から外輪に向かうにつれて他端部122側に傾斜し、内側列の線Bは内輪から外輪に向かうにつれて一端部121側に傾斜する。
【0040】
本実施形態によるモータ50によれば、ロータシャフト12の一端部121を支持するベアリング40が複列アンギュラボールベアリングとして構成されるため、ロータシャフト12に軸方向の力が作用した場合であっても、複列アンギュラボールベアリングによりその力を受けることが可能となる。これにより、ロータシャフト12をより安定的に支持することができる。
【0041】
モータ50と変速機60の組み付け前においては、ロータシャフト12は、ベアリング40を介してハウジング30に対して片持ち支持された状態となっている。ロータシャフト12の一端部121がベアリング40によりしっかりと支持されていない場合、ロータシャフト12の他端部122側が振れて、ロータシャフト12に取り付けられたロータコア11がステータ20に干渉してしまう可能性がある。
【0042】
しかしながら、本実施形態のモータ50では、ベアリング40は複列アンギュラボールベアリングとして構成されているため、ロータシャフト12の他端部122が振れることなく一端部121をしっかりと支持することができる。そのため、ロータシャフト12が変速機60の回転軸61に連結される前の状態において、ロータコア11とステータ20との干渉を抑制することが可能となる。
【0043】
<第4実施形態>
次に、図4を参照して、第4実施形態によるモータ50と、変速機60とを備えるモータシステム100について説明する。第4実施形態のモータ50と第1実施形態のモータとは、ロータシャフト12の一端部121を支持するベアリング40の構成において相違する。
【0044】
図4に示すように、本実施形態によるモータ50では、ロータシャフト12の一端部121を支持するベアリング40は、2つの単列ボールベアリング41,42(深溝玉軸受)により構成されている。
【0045】
ボールベアリング41,42は、それぞれの内輪がロータシャフト12の一端部121の外周面に接するように設けられ、シャフト軸方向に並んで配置されている。ボールベアリング41,42間におけるロータシャフト12の外周面には、ボールベアリング41,42間に所定の隙間を形成するための間隔調整部材70が設けられている。間隔調整部材70は、ボールベアリング42の内輪の右側面(内側面)とボールベアリング41の内輪の左側面(外側面)とに接触するように配置されている。なお、ボールベアリング41の内輪の右側面(内側面)は、ロータシャフト12の一端部121に形成された段部124に当接している。
【0046】
一方、ボールベアリング41,42のそれぞれの外輪は、ハウジング30の軸受支持部32の内周面に形成された収容溝32A内に収容されている。ボールベアリング41の外輪とボールベアリング42の外輪との間には、間隔調整部材70の幅分の隙間が存在している。なお、ボールベアリング41の外輪の右側面(内側面)は収容溝32Aの側面に当接している。
【0047】
さらに、軸受支持部32の収容溝32A内には、ボールベアリング41,42に予圧を付与するための円環状の皿ばね80が設けられている。皿ばね80は、収容溝32Aの側面とボールベアリング42の外輪とにより挟み込まれており、ボールベアリング42の外輪の左側面をシャフト軸方向右側に向かって付勢している。この皿ばね80の付勢力により、ボールベアリング42の外輪には右方向に向かう予圧が付与される。なお、皿ばね80によりボールベアリング42の外輪が付勢されると、ボールベアリング41の外輪には、収容溝32Aの側面からの反力が作用し、左方向に向かう予圧が付与されることとなる。このように、皿ばね80を用いてボールベアリング41,42の外輪に予圧を付与することで、ボールベアリング41,42における内部すきまを減少させることができる。
【0048】
本実施形態によるモータ50によれば、ロータシャフト12の一端部121は、シャフト軸方向に並設された単列ボールベアリング41,42により支持される。第3実施形態において説明したように、モータ50と変速機60の組み付け前においては、ロータシャフト12の他端部122側が振れてロータコア11とステータ20とが干渉する可能性がある。しかしながら、モータ50では、ロータシャフト12の一端部121を支持するボールベアリング41,42が軸方向に並設されるため、ロータシャフト12の他端部122の振れを抑制するようにロータシャフト12をしっかりと支持することができる。そのため、ロータシャフト12が変速機60の回転軸61に連結される前の状態において、ロータコア11とステータ20との干渉を抑制することが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態では、ベアリング40は、軸方向に並設される2つの単列ボールベアリング41,42により構成されているが、軸方向に並設される3つ以上の単列ボールベアリングにより構成されてもよい。
【0050】
さらに、本実施形態のモータ50では、ハウジング30に皿ばね80を設け、この皿ばね80によりボールベアリング41,42の外輪をシャフト軸方向に付勢している。このようにボールベアリング41,42の外輪に予圧を付与することで、ボールベアリング41,42における内部すきまを減少させることができる。これにより、ロータシャフト12の軸方向におけるガタつきを抑制することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態では、皿ばね80は、ボールベアリング42の外輪を付勢するように構成されているが、ボールベアリング42の内輪を付勢するように構成されてもよい。このように構成される場合には、間隔調整部材70は、ボールベアリング41の外輪とボールベアリング42の外輪との間に挟まれるように配置される。また、ボールベアリング42等を付勢する部材は、皿ばね80ではなく、コイルばね等の弾性部材であってもよい。
【0052】
<第5実施形態>
次に、図5を参照して、第5実施形態によるモータ50と、変速機60とを備えるモータシステム100について説明する。第5実施形態のモータ50と第2実施形態のモータとは、ロータコア11を支持する構造において相違する。
【0053】
図5に示すように、本実施形態によるモータ50では主にロータ10の構造に特徴があり、ロータ10は、ロータコア11と、ロータシャフト12と、コア支持部13と、接続部14とから構成されている。
【0054】
ロータ10のコア支持部13は、円筒形状であって、円筒状のロータコア11を内側から支持する部材である。コア支持部13は、その軸方向長さがロータコア11の軸方向長さよりも僅かに長くなるよう形成されている。コア支持部13はロータコア11の挿入孔11A内に挿入され、ロータコア11はコア支持部13の外周に対して外嵌めされた状態でコア支持部13上に固定される。
【0055】
ロータシャフト12はコア支持部13の内側に配置され、ロータシャフト12とコア支持部13とは接続部14を介して接続されている。接続部14は、ロータシャフト12の中央部123の外周面からシャフト径方向に突出する円板状壁部として形成されており、ロータシャフト12の中央部123の外周面とコア支持部13の内周面とを接続する。接続部14の板厚は、ロータシャフト12及びコア支持部13の軸方向長さと比較して薄く設定されている。
【0056】
ロータシャフト12においては、一端部121がベアリング40に支持され、他端部122が変速機60の回転軸61の端部に外接した状態で当該回転軸61にインロー接続されている。なお、ロータシャフト12と回転軸61との接続については、上述した各実施形態の技術思想を適用することが可能である。
【0057】
本実施形態のモータ50では、ハウジング30は左側ハウジング30Lと右側ハウジング30Rとにより形成されており、左側ハウジング30Lの中央部位33はコア支持部13の内側に入り込むようにシャフト軸方向に窪んでいる。左側ハウジング30Lの中央部位33には軸受支持部32が形成されており、この軸受支持部32にベアリング40が固定されている。つまり、ベアリング40は、ロータコア11及びコア支持部13の内側に位置するように左側ハウジング30Lの中央部位33に設けられている。ベアリング40は、第3実施形態と同様、複列アンギュラボールベアリングとして構成されている。なお、ベアリング40は、複列アンギュラボールベアリングではなく、一以上の単列ボールベアリング(深溝玉軸受)等であってもよい。
【0058】
上述した本実施形態によるモータ50によれば、ロータ10は、ロータコア11を内側から支持するコア支持部13と、ロータシャフト12の外周面からシャフト径方向に突出する円板状部材であって、ロータシャフト12の外周面とコア支持部13の内周面とを接続する接続部14と、を備える。そして、ハウジング30を構成する左側ハウジング30Lは中央部位33(一部)がコア支持部13の内側に入り込むように形成され、ベアリング40はコア支持部13の内側に入り込んだ中央部位33に設けられる。
【0059】
このように、モータ50では、コア支持部13の内側に入り込んだ部位に設けられたベアリング40によりロータシャフト12の一端部121が支持されるため、モータ50自体の軸方向における幅を他の実施形態のモータよりも薄くすることができる。これにより、モータ50のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を、上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上記実施形態に対し、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で様々な変更及び修正が可能である。
【0061】
また、各実施形態で説明した技術的思想は、技術的な矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0062】
上述した各実施形態において説明したロータコア11、ステータ20、及びコア支持部13等は、円筒状の部材としたが、多角形状の筒部材であってもよい。
【0063】
また、上述した各実施形態では、モータ50は動力伝達装置としての変速機60に組み付けられているが、モータ50は減速機等の動力伝達装置に組み付けられてもよい。この場合においても、各実施形態における技術思想を適用することで、モータ50のロータシャフト12と減速機の回転軸とを連結することができる。
図1
図2
図3
図4
図5