特許第6962455号(P6962455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962455
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】機器保護装置及び機器保護方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20211025BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20211025BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   B60L3/00 A
【請求項の数】16
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-513000(P2020-513000)
(86)(22)【出願日】2018年4月11日
(86)【国際出願番号】JP2018015297
(87)【国際公開番号】WO2019198184
(87)【国際公開日】20191017
【審査請求日】2020年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】並木 一茂
(72)【発明者】
【氏名】阿部 圭太
(72)【発明者】
【氏名】江積 匡彦
(72)【発明者】
【氏名】川口 真司
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−55533(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/203693(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/037472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を含む機器の冷却に使用される冷媒の温度を検出する冷媒温度センサと、
前記機器の温度を検出する複数の機器温度センサと、
前記冷媒温度センサにより検出された冷媒検出温度及び前記機器温度センサにより検出された検出温度に基づき、前記機器に対して駆動制限をかけるコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記複数の機器温度センサにより検出された温度の中から、最も低い前記検出温度よりも高い前記検出温度を機器検出温度として特定し、
前記冷媒検出温度と前記機器検出温度との温度差を演算し、
前記温度差が所定の温度差閾値より高い場合に、前記機器に対して前記駆動制限をかけ、
前記機器検出温度が所定の温度閾値より高い場合に、前記機器に対して前記駆動制限をかける機器保護装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記機器温度センサにより検出された温度に基づき、前記機器温度センサに異常が生じているか否かを判定し、
前記複数の機器温度センサのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、異常が生じてない前記機器温度センサにより検出された温度の中から前記機器検出温度を特定する請求項1記載の機器保護装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記複数の機器温度センサのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、前記温度差閾値及び前記温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を初期の設定値よりも低くする、又は、異常が生じてない前記機器温度センサの検出値を通常の検出値より高くする請求項2に記載の機器保護装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
異常が生じている前記機器温度センサの検出温度と、異常が生じていない前記機器温度センサの検出温度との温度差に応じて、前記温度差閾値及び前記温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を設定する請求項2に記載の機器保護装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記複数の機器温度センサのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、モータ回転数に応じて、前記温度差閾値及び前記温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を設定する請求項2に記載の機器保護装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記複数の機器温度センサのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、モータ角度に応じて、前記温度差閾値及び前記温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を設定する請求項2に記載の機器保護装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記複数の機器温度センサのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、モータトルクに応じて、前記温度差閾値及び前記温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を設定する請求項2に記載の機器保護装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記複数の機器温度センサのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、キャリア周波数に応じて、前記温度差閾値及び前記温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を設定する請求項2に記載の機器保護装置。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記複数の機器温度センサのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、前記冷媒の温度に応じて、前記温度差閾値及び前記温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を設定する請求項2に記載の機器保護装置。
【請求項10】
前記機器の冷却に使用される冷媒の温度を検出する冷媒温度センサを備え、
前記コントローラは、
前記複数の機器温度センサのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、前記冷媒の流量に応じて、前記温度差閾値及び前記温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を設定する請求項2に記載の機器保護装置。
【請求項11】
前記所定の温度閾値は第1温度閾値と第2温度閾値とを含み、
前記コントローラは、
前記機器検出温度が前記第1温度閾値より高い場合には、第1保護動作で前記機器に対して駆動制限をかけ、
前記第1保護動作で前記機器に対して駆動制限をかけた後に、前記機器検出温度が前記第2温度閾値より高い場合には、第2保護動作で前記機器に対して駆動制限をかける請求項1〜10のいずれか一項に記載の機器保護装置。
【請求項12】
前記所定の温度差閾値は第1温度差閾値と第2温度差閾値とを含み、
前記コントローラは、
前記温度差が前記第1温度差閾値より高い場合には、第1保護動作で前記機器に対して駆動制限をかけ、
前記第1保護動作で前記機器に対して駆動制限をかけた後に、前記温度差が前記第2温度差閾値より高い場合には、第2保護動作で前記機器に対して駆動制限をかける請求項1〜10のいずれか一項に記載の機器保護装置。
【請求項13】
前記コントローラは、
前記機器検出温度に基づき、前記機器の機器温度を推定し、
推定された前記機器温度と前記所定の閾値とを比較し、比較結果に基づき前記機器に対して駆動制限をかける請求項1〜10のいずれか一項に記載の機器保護装置。
【請求項14】
前記所定の閾値は第1温度閾値と第2温度閾値とを含み、
前記コントローラは、
推定された前記機器温度が前記第1温度閾値より高い場合には、第1保護動作で前記機器に対して駆動制限をかけ、
前記第1保護動作で前記機器に対して駆動制限をかけた後に、前記推定された機器温度が前記第2温度閾値より高い場合には、第2保護動作で前記機器に対して駆動制限をかける請求項13に記載の機器保護装置。
【請求項15】
前記コントローラは、
推定された前記機器温度に応じて、前記温度差閾値及び前記温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を設定する請求項13又は14に記載の機器保護装置。
【請求項16】
発熱体を含む機器の冷却に使用される冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ、前記機器の温度を検出する複数の機器温度センサ、及びコントローラを用いて、前記機器を保護する保護方法であって、
前記複数の機器温度センサにより検出された温度の中から、最も低い検出温度よりも高い検出温度を機器検出温度として特定し、
前記冷媒温度センサにより検出された冷媒検出温度と前記機器検出温度との温度差を演算し、
前記温度差が所定の温度差閾値より高い場合に、前記機器に対して駆動制限をかけ、
前記機器検出温度が所定の温度閾値より高い場合に、前記機器に対して駆動制限をかける機器保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器保護装置及び機器保護方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度センサでインバータ温度を検出し、温度変化量を計算し、温度変化量が閾値より大きいときには、インバータ温度の修正を行う。さらに修正後のインバータ温度になまし処理を行い、なまし処理の処理済み温度が上限温度より大きい場合には、負荷制限率設定し、モータのトルクに制限をかける方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−230037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、周辺温度が高温の時には、トルク制限が適切なタイミングにかからず、発熱部分が高温になるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、発熱部分の温度上昇を抑制できる機器保護装置及び機器保護方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の機器温度センサにより検出された温度の中から、最も低い前記検出温度よりも高い検出温度を機器検出温度として特定し、冷媒検出温度と機器検出温度との温度差を演算し、温度差が所定の温度差閾値より高い場合に機器に対して駆動制限をかけ、機器検出温度が所定の温度閾値より高い場合に機器に対して前記駆動制限をかけることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発熱部分の温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る機器保護装置を含む駆動システムのブロック図である。
図2図2は、電源、負荷、及び電力変換装置に含まれるインバータ回路の回路図である。
図3図3は、機器保護装置の制御フローを示すフローチャートである。
図4A図4Aは、環境温度が低温(T)であるときの温度特性を示すグラフである。
図4B図4Bは、環境温度が低温(T)であるときの温度特性を示すグラフである。
図5A図5Aは、環境温度が高温(T)であるときの温度特性を示すグラフである。
図5B図5Bは、環境温度が高温(T)であるときの温度特性を示すグラフである。
図6A図6Aは、環境温度が低温(T)であるときの温度特性を示すグラフである。
図6B図6Bは、環境温度が低温(T)であるときの温度特性を示すグラフである。
図7A図7Aは、環境温度が高温(T)であるときの温度特性を示すグラフである。
図7B図7Bは、環境温度が高温(T)であるときの温度特性を示すグラフである。
図8図8は、発明の他の実施形態に係る機器保護装置のコントローラの制御フローを示すフローチャートである。
図9図9は、機器温度センサ21u、21v、21wに異常が生じた場合の、時間に対する温度推移を示すグラフである。
図10図10は、モータ回転数と温度差(ΔTp)との関係を示すグラフである。
図11図11は、モータ角度と温度差(ΔTp)との関係を示すグラフである。
図12図12は、モータトルクと温度差(ΔTp)との関係を示すグラフである。
図13図13は、発明の他の実施形態に係る機器保護装置のコントローラの制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る機器保護装置は、発熱体を含む機器の温度上昇を抑制する装置である。機器保護装置は、例えば車両に搭載される駆動システムに設けられ、駆動システムに含まれる機器の温度を管理しつつ、機器の温度上昇を抑制している。
【0010】
以下の説明では、機器保護装置が車両用の駆動システムに設けられた例を説明する。なお、機器保護装置は、必ずしも駆動システムに設けられる必要はなく、発熱部分を含んだ他のシステムに設けられてよい。また機器保護装置は、車両に限らず他の装置に設けられてもよい。
【0011】
図1は、本実施形態に係る機器保護装置を含む駆動システムのブロック図である。図2は、電源1、負荷2、及びインバータ回路の回路図である。駆動システムは、電源1、負荷2、電力変換装置3、冷却装置4、及びコントローラ10を備えている。
【0012】
電源1は、車両の電力源であって、リチウムイオン電池などの二次電池を並列又は直列に接続した電池群である。負荷2は、モータ(電動機)であり、車輪に対して回転力を与えるように車輪と連結されている。負荷2には、例えば三相交流モータが用いられる。
【0013】
電力変換装置3は、電源1と負荷2との間に接続されている。電力変換装置3は、インバータ回路及び制御回路等を有している。インバータ回路は、IGBT等のスイッチング素子をブリッジ状に接続した、2相3相変換を可能とする回路である。インバータ回路は、負荷2と電源1との間に接続されている。インバータ回路は、複数のスイッチング素子を直列に接続した直列回路を、3相分並列に接続している。図2に示すように、インバータ回路において、上アームのスイッチング素子(Q1、Q3、Q5)と下アームのスイッチング素子(Q2、Q4、Q6)との各接続点は、モータ2側のUVW相の出力端子に接続されている。また、インバータ回路は、平滑コンデンサCを有している。平滑コンデンサCは、電源1の入出力電圧を平滑し、ブリッジ状のスイッチング素子の回路と電源1側の接続端子との間に接続されている。
【0014】
電力変換装置3は、装置の内部温度を検出するための温度センサ21を有している。電力変換装置3は、インバータ回路に含まれるスイッチング素子のオン、オフを切り換えることで電力変換を行う。スイッチング素子がオン、オフ動作を行うと、スイッチング損失等により発熱する。スイッチング素子はパワーモジュールとしてモジュール化されており、電力変換装置3の内部に設けられている。
【0015】
温度センサ21は、スイッチング素子のスイッチング動作によって上昇するパワーモジュールの温度を検出している。温度センサ21はパワーモジュールに設置されている。温度センサ21は、複数の機器温度センサ21u、21w、21vを有している。機器温度センサ21uはu相のスイッチング素子(Q1、Q2)の温度を検出する。機器温度センサ21vはv相のスイッチング素子(Q3、Q4)の温度を検出する。機器温度センサ21wはw相のスイッチング素子(Q5、Q6)の温度を検出する。機器温度センサ21u、21v、21wは、パワーモジュール内部のサーミスタ、又は、パワーモジュール内半導体チップ上のオンチップ温度センサ等により構成される。機器温度センサ21uがオンチップ温度センサで構成される場合には、機器温度センサ21uはスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2上にそれぞれ設置される。機器温度センサ21u、21v、21wは、検出周期を同期させることで、同じタイミングで三相の温度を検出している。すなわち、複数の機器温度センサ21u、21v、21wは、それぞれの検出タイミングを同期しつつ、同期されたタイミングで、複数の検出値をコントローラ10に出力する。なお、温度センサ21の検出値は、電力変換装置3内のコントローラを介して、コントローラ10に出力されてもよい。
【0016】
冷却装置4は、電力変換装置3内に冷媒を循環させることで、電力変換装置3を冷却する。冷却装置4は、冷媒を出力するためのポンプ、冷媒量を調整するための調整弁、熱交換器等を有している。冷却装置4と電力変換装置3との間は、冷媒を通す流路で接続されている。流路は、冷却装置4から出て、電力変換装置の内部を通り、冷却装置4に戻るように形成されている。冷媒は、パワーモジュールの冷却に使用され、水などの液体、冷媒ガス等である。
【0017】
冷却装置4は、冷媒の温度を検出するための温度センサ(冷媒温度センサ)22を有している。温度センサ22は流路に設けられている。温度センサ22は、検出値をコントローラ10に出力する。
【0018】
コントローラ10は、機器保護装置の制御処理を実行するコンピュータであり、温度センサ21の検出温度及び温度センサ22の検出温度に基づき電力変換装置3を制御することで、電力変換装置3を保護する。コントローラ10は、電力変換装置3を保護するための制御を実行させるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するためのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備える。コントローラ10は、電力変換装置3内のコントローラと信号線で接続されている。なお、コントローラ10は、電力変換装置3内に設けられて、コントローラ10が、スイッチング動作を制御する機能を有してもよい。また、コントローラ10は、パワーモジュール内のスイッチング素子を直接制御してもよい。
【0019】
次に、コントローラ10による電力変換装置3を保護するための制御フローを、図2を用いて説明する。コントローラ10は、電力変換装置3の駆動中、以下の制御フローを所定の周期で実行している。
【0020】
ステップS1にて、コントローラ10は、温度センサ22を用いて、冷媒の温度(T1)を検出する。ステップS2にて、コントローラ10は、機器温度センサ21u、21v、21wを用いて、電力変換装置3のパワーモジュールの各相の温度(機器温度:T2u、T2v、T2w)を検出する。
【0021】
ステップS3にて、コントローラ10は、機器温度センサ21u、21v、21wにより検出された検出温度のうち最も高い温度(最大機器温度:T2)を演算する。ステップS4にて、コントローラ10は、検出された冷媒温度(T1)と演算された最大機器温度(T2)との差分を求めることで、温度差(ΔT=T2−T1)を演算する。
【0022】
ステップS5にて、コントローラ10は、温度差と所定の温度差閾値(ΔT_th1)とを比較し、最大機器温度(T2)と温度閾値(T_th1)とを比較する。温度差閾値(ΔT_th1)は予め設定された閾値である。後述するように環境温度が低い場合には、機器の温度上昇の速さは、冷媒の温度上昇の速さよりも速く、温度差の上昇も速くなる。温度差閾値(ΔT_th1)は、低温状態で電力変換装置3の温度が上昇する状態で、電力変換装置3の温度が許容温度に達する前に、電力変換装置3に対して駆動制限を加えるタイミングを、温度差で示している。また、温度閾値(T_th1)は、後述する第1保護処理を実行するか否かを判定するための閾値であり、温度差閾値(ΔT_th)よりも高い温度に設定されている。温度差閾値(ΔT_th1)は低温環境用の閾値であり、温度閾値(T_th1)は高温環境用の閾値である。
【0023】
温度差(ΔT)が温度差閾値(ΔT_th1)より高い場合、又は、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th1)より高い場合には、コントローラ10はステップS6の制御フローを実行する。一方、温度差(ΔT)が温度差閾値(ΔT_th1)以下である場合、及び、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th1)以下である場合には、コントローラ10はステップS8の制御フローを実行する。
【0024】
ステップS6にて、コントローラ10は、現在のモータの駆動状態に基づき、スイッチング周波数の制限が可能であるか否かを判定する。コントローラ10は、電力変換装置3から、モータ回転数を取得することで、モータの駆動状態を確認する。スイッチング周波数は、スイッチング素子のオン、オフを制御する際のキャリア周波数である。温度差(ΔT)が温度差閾値(ΔT_th)より高い場合、又は、最大機器温度(T2)が温度閾値(T1_th1)より高い場合には、パワーモジュールの温度上昇を抑制するために、パワーモジュールに対して駆動制限をかける。パワーモジュールに駆動制限をかけることで、モータの駆動にも制限がかかる。駆動制限は、キャリア周波数を現在の周波数より低くすることで実行される。しかしながら、モータの回転数が高い状態でスイッチング周波数を低く設定した場合には、制御発散する可能性がある。そこで、ステップS6の制御フローでは、モータの駆動状態が、スイッチング周波数を低く設定できる状態にあるか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、現在のモータ回転数と回転数閾値とを比較し、現在のモータ回転数(N)が回転数閾値(Nth)より低い場合にはスイッチング周波数を制限できると判定し、現在のモータ回転数が回転数閾値以上である場合にはスイッチング周波数を制限できないと判定する。回転数閾値は予め設定されており、モータのトルクに応じた値にしてもよい。
【0025】
スイッチング周波数を制限できると判定された場合には、ステップS7にて、コントローラ10は第1保護処理を実行する。第1保護処理は、スイッチング周波数に制限をかけることで、モータ2に対して駆動制限をかける。具体的には、コントローラ10は、電力変換装置3から現在のモータの出力トルク及びモータ回転数を取得する。選択可能なスイッチング周波数は予め設定されており、モータの駆動状態に応じて、選択可能なスイッチング周波数が異なる。
【0026】
例えば、選択可能なスイッチング周波数として、3つの周波数(fsw1、fsw2、fsw3)が予め設定されている。ただし、周波数(fsw3)が最も高く、周波数(fsw1)が最も低い。また、回転数閾値より低い回転数閾値(Nth_L)が予め設定されている。そして、モータの現在の回転数に応じて、選択可能なスイッチング周波数が決まる。モータの現在の回転数Nが回転数閾値(Nth)より高い場合には、選択可能なスイッチング周波数はfsw3のみであり、スイッチング周波数の制限ができない状態に相当する。モータの現在の回転数が回転数閾値(Nth)以下で、回転数閾値(Nth_L)より高い場合には、選択可能なスイッチング周波数は、周波数(fsw3)及び周波数(fsw2)である。そして、例えば、現在のキャリア周波数が周波数(fsw2)より高く周波数(fsw3)より低い場合には、コントローラ10は、キャリア周波数を周波数(fsw2)に設定し、キャリア周波数に対して制限をかける。また、モータの現在の回転数が回転数閾値(Nth_L)以下である場合には、選択可能なスイッチング周波数は、周波数(fsw1)、周波数(fsw2)、周波数(fsw3)である。例えば、現在のキャリア周波数が周波数(fsw3)より高い場合は、コントローラ10は、キャリア周波数を周波数(fsw3)に設定し、キャリア周波数に対して制限をかける。すなわち、コントローラ10は、モータの現在の回転数に応じて選択可能なスイッチング周波数が複数ある場合には、現在のキャリア周波数よりも低いキャリア周波数に設定する。これにより、損失が抑制され、パワーモジュールの発熱を抑制できる。なお、選択可能なスイッチング周波数は、モータ回転数に限らず、モータのトルクにより決定してもよい。
【0027】
ステップS8にて、コントローラ10は、温度差と所定の温度差閾値(ΔT_th2)とを比較し、機器温度(T2)と温度閾値(T_th1)とを比較する。温度差閾値(ΔT_th2)は、後述する第2保護処理を実行するか否かを判定するための閾値であり、温度差閾値(ΔT_th1)よりも高い温度に設定されている。温度閾値(T_th2)は、後述する第2保護処理を実行するか否かを判定するための閾値であり、温度閾値(T_th1)よりも高い温度に設定されている。
【0028】
温度差(ΔT)が温度差閾値(ΔT_th2)より高い場合、又は、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th2)より高い場合には、コントローラ10はステップS6の制御フローを実行する。一方、温度差(ΔT)が温度差閾値(ΔT_th2)以下である場合、及び、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th2)以下である場合には、コントローラ10はステップS10の制御フローを実行する。
【0029】
ステップS9にて、コントローラ10は、第2保護処理を実行する。最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th2)以下となることで、コントローラ10がステップS8の制御フローを「Yes」と判定した場合には、第2保護処理は、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th2)に達した時点の要求トルクを、モータからの最大出力に設定することで、モータからの出力トルクに制限をかける。温度差(ΔT)が温度差閾値(ΔT_th2)以下となることで、コントローラ10がステップS8の制御フローを「Yes」と判定した場合には、第2保護処理は、温度差(ΔT)が温度差閾値(ΔT_th2)に達した時点の要求トルクを、モータからの最大出力に設定することで、モータからの出力トルクに制限をかける。
【0030】
具体的には、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th2)に達した場合を例とすると、コントローラ10は、電力変換装置3のコントローラに対して、要求トルクに応じたトルク指令値の上限を現在のトルク指令値にするよう、指令信号を送信する。電力変換装置3のコントローラは、指令信号を受信したとき、現在のトルク指令を上限値に設定する。上限値が設定された後に、ドライバーのアクセル操作により、トルク指令の上限値を超えるような要求トルクが入力された場合でも、コントローラは、トルク指令値を上限値に制限した上で、モータの現在の回転数、モータの現在の電流に応じたスイッチング信号を生成し、スイッチング素子を制御する。これにより、要求トルクに制限が加わるため、モータの出力トルクが抑制され、その結果として、パワーモジュールの温度が抑制される。
【0031】
ステップS10にて、コントローラ10は、温度差(ΔT)と所定の上限温度差閾値(ΔT_th3)とを比較し、機器温度(T2)と上限温度(T_th3)とを比較する。上限温度差温度(ΔT_th3)は、パワーモジュールに許容される温度の上限値を示しており、温度差閾値(ΔT_th1)及び温度差閾値(ΔT_th2)よりも高い温度に設定されている。上限温度(T_th3)は、パワーモジュールに許容される温度の上限値を示しており、温度閾値(T_th1)及び温度閾値(T_th2)よりも高い温度に設定されている。
【0032】
温度差(ΔT)が上限温度差閾値(ΔT_th3)より高い場合、又は、最大機器温度(T2)が上限温度閾値(T_th3)より高い場合には、コントローラ10はステップS11の制御フローを実行する。一方、温度差(ΔT)が上限温度差閾値(ΔT_th3)以下である場合、及び、最大機器温度(T2)が上限温度閾値(T_th3)以下である場合には、コントローラ10は制御フローを終了する。
【0033】
ステップS11にて、コントローラ10は、電力変換装置3内のコントローラに対して、モータを強制的に停止させる旨のフェールセーフ信号を送信する。電力変換装置3内のコントローラは、フェールセーフ信号を受信した場合には、電力変換装置3の動作を停止させる(フェールセーフ処理)。これにより、パワーモジュールが上限値を超えることを防止できる。
【0034】
次に、図4A図4B図5A図5Bを用いて、第1保護処理と温度の関係について説明する。図4A図4Bは環境温度が低温(T)であるときの温度特性を示し、図5A図5Bは環境温度が高温(T)であるときの温度特性を示す。図4A図4B図5A図5Bにおいて、グラフаは温度差(ΔT)の特性を示し、グラフbは温度センサ22で検出される冷媒温度(T1)を示し、グラフcは温度センサ21で検出される検出温度のうち最大機器温度(T2)を示し、グラフdはスイッチング素子の実際の温度(Tsw)を示す。また横軸は時間を示し、縦軸は温度の大きさを示す。図4A及び図5Aは、本実施形態に係る機器保護装置を駆動システムに設けない時の特性(比較例)を示している。図4B及び図5Bは、本実施形態に係る機器保護装置を駆動システムに設けたときの特性を示している。
【0035】
図4Aに示すように、環境温度が低い時には、最大機器温度(T2)は、時刻t2の時点で温度閾値(T_th1)に達する。一方、温度差(ΔT)は、時刻t2よりも早い時刻t1の時点で、温度差閾値(ΔT_th)に達する。すなわち、低温時には、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th1)に達する前に、冷媒温度と機器温度との温度差が広がり、温度差(ΔT)は温度差閾値(ΔT_th)に達する。そして、図4Bに示すように、本実施形態では、温度差(ΔT)が温度差閾値(ΔT_th)に達した時点で、第1保護処理が実行されるため、スイッチング素子の温度が高温になる前に損失が低減され、スイッチング素子温度(Tsw)を抑制できる。一方、第1保護処理を実行しない比較例では、時刻t1以降も、スイッチング素子温度(Tsw)は上昇し続ける。
【0036】
図5Aに示すように、環境温度が高い時には、温度差(ΔT)が温度差閾値(ΔT_th)に達する時点(時刻t)よりも先に、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th1)に達する(時刻t)。そして、図5Bに示すように、本実施形態では、温度差(T2)が温度閾値(T_th1)に達した時点で、第1保護処理が実行されるため、スイッチング素子の温度が高温になる前に損失が低減され、スイッチング素子温度(Tsw)を抑制できる。
【0037】
次に、図6A図6B図7A図7Bを用いて、第2保護処理と温度の関係について説明する。図6A図6Bは環境温度が低温(T)であるときの温度特性を示し、図7A図7Bは環境温度が高温(T)であるときの温度特性を示す。図6A図6B図7A図7Bにおいて、グラフаは温度差(ΔT)の特性を示し、グラフbは温度センサ22で検出される冷媒温度(T1)を示し、グラフcは温度センサ21で検出される検出温度のうち最大機器温度(T2)を示し、グラフdはスイッチング素子の実際の温度(Tsw)を示す。また横軸は時間を示し、縦軸は温度の大きさを示す。図6A及び図7Aは、本実施形態に係る機器保護装置が第1保護処理のみをした場合の特性を示しており、図6B及び図7Bは、本実施形態に係る機器保護装置が第1保護処理及び第2保護処理をした場合の特性を示している。
【0038】
図6Aに示すように、第1保護処理後に、パワーモジュールの温度が上昇し続けた場合には、最大機器温度(T2)が時刻(t)の時点で上限温度(T_th3)に達するため、フェールセーフ処理が実行される。一方、本実施形態では、図6Bに示すように、最大機器温度(T2)が上限温度(T_th3)に達する前に、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th2)に達した時点で、第2保護処理が実行され、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th2)に達した時点の出力を上限として、トルク制限がかかる。これにより、スイッチング素子の温度上昇を抑制し、電力変換装置3の動作可能な時間を延ばすことができる。
【0039】
図7Aに示すように、第1保護処理後に、パワーモジュールの温度が上昇し続けた場合には、最大機器温度(T2)が時刻(t)の時点で上限温度(T_th3)に達するため、フェールセーフ処理が実行される。一方、本実施形態では、図7Bに示すように、機器温度(T2)が上限温度(T_th3)に達する前に、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th2)に達した時点で、第2保護処理が実行され、最大機器温度(T2)が温度閾値(T_th2)に達した時点の出力を上限として、トルク制限がかかる。これにより、環境温度の高温時も、スイッチング素子の温度上昇を抑制し、電力変換装置3の動作可能な時間を延ばすことができる。
【0040】
また本実施形態では、保護処理を行う実行するか否かを判定するために、複数の機器温度センサ21u、21v、21wのうち最大の検出温度を比較対象としている。例えば、モータが低回転時には、各相での温度差が大きくなる。例えば、モジュール化されたスイッチング素子(Q1〜Q6)のうち、1つのセンサを用いて特定の部分のみを検出した場合には、1相分の温度が検出温度に反映され、他の相の温度は検出温度に反映され難くなる。そして、モータが低回転時の時には、温度センサで検出された相よりも、他の相の温度が高くなる可能性がある。本実施形態では、複数の機器温度センサ21u、21v、21wを用いて、相毎の機器温度を検出し、最大機器温度に基づき保護処理を実行する。これにより、例えば、モータ低回転時に生じる各相での温度差を考慮しつつ、発熱機器の温度保護を実行できる。
【0041】
上記のように本実施形態に係る機器保護装置は、複数の機器温度センサ21u、21v、21wにより検出された温度の中から、最も高い検出温度を機器検出温度として特定し、冷媒検出温度と機器検出温度との温度差を演算し、温度差が所定の温度差閾値より高い場合に、機器に対して前記駆動制限をかけ、機器検出温度が所定の温度閾値より高い場合に、機器に対して駆動制限をかける。これにより、温度バラつきが発生するような状態においても、保護機能の低下を抑制できる。また、発熱部分の温度上昇を抑制でき、発熱体又は機器に加える熱負荷を抑制できる。さらに、機器の動作時間を延ばすことができる。
【0042】
また本実施形態では、機器検出温度(T2)が第1温度閾値より高い場合には、第1保護動作(第1保護処理)で機器に対して駆動制限をかけ、第1保護動作で前記機器に対して駆動制限をかけた後に、機器検出温度が第2温度閾値より高い場合には、第2保護動作で機器に対して駆動制限をかける。これにより、発熱体の温度を上げる直接の原因となっている出力を制限し、機器の動作可能な時間を拡大することができる。なお、第1温度閾値は温度閾値(T_th1)又は温度閾値(T_th2)に相当し、第2温度閾値は温度閾値(T_th2)又は温度閾値(T_th3)に相当し、第1保護動作は第1保護処理又は第2保護処理に相当し、第2保護動作は第2保護処理又は第3保護処理に相当する。
【0043】
また本実施形態では、温度差(ΔT)が第1温度差閾値より高い場合には、第1保護動作で機器に対して駆動制限をかけ、第1保護動作で機器に対して駆動制限をかけた後に温度差が第2温度差閾値より高い場合には、第2保護動作で機器に対して駆動制限をかける。これにより、発熱体の温度を上げる直接の原因となっている出力を制限し、機器の動作可能な時間を拡大することができる。なお、第1温度差閾値は温度差閾値(ΔT_th1)又は温度差閾値(ΔT_th2)に相当し、第2温度差閾値は温度差閾値(ΔT_th2)又は温度差閾値(ΔT_th3)に相当し、第1保護動作は第1保護処理又は第2保護処理に相当し、第2保護動作は第2保護処理又は第3保護処理に相当する。
【0044】
なお、本実施形態において、モータ2に対して駆動制限をかけるか否かを判定するために、最大機器温度を用いたが、必ずしも最大機器温度でなくてもよい。例えば、コントローラ10は、機器温度センサ21u、21v、21wにより検出された検出温度のうち、最も低い検出温度よりも高い検出温度を、比較対象となる機器検出温度として特定し、特定された機器検出温度に基づいて、モータ2に対して駆動制限をかけてもよい。このときのコントローラ10の制御フローは図3に示す制御フローと同様である。
【0045】
《第2実施形態》
図8は、発明の他の実施形態に係る機器保護装置のコントローラの制御フローを示すフローチャートである。本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、制御フローの一部が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、機器保護装置の構成及びコントローラの制御フローは、その記載を援用する。
【0046】
図8を用いて、コントローラ10の制御フローを説明する。ステップS21、S22の制御フローは、第1実施形態で示したステップS1、S2の制御フローと同様であるため、説明を省略する。
【0047】
ステップS23にて、コントローラ10は、機器温度センサ21u、21v、21wにより検出された検出温度(T2u、T2v、T2w)に基づき、機器温度センサ21u、21v、21wに異常が生じているか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、機器温度センサ21uの検出温度が所定の正常範囲内であるか否かを判定し、検出温度が正常範囲内である場合には機器温度センサ21uは正常であると判定し、検出温度が正常範囲外である場合には機器温度センサ21uは正常であると判定する。正常範囲は、予め設定された範囲である。正常範囲の下限値は、例えば、センサの検出値が下限値で張り付いている等の故障原因を想定した上で、予め設定されている。また、正常範囲の上限値は、例えば、センサの検出値が上限値で張り付いている等の故障原因を想定した上で、予め設定されている。コントローラ10は、U相だけではなく、V相及びW相についても、同様に、機器温度センサ21v、21wに異常が生じているか否かを判定する。そして、全ての機器温度センサ21u、21v、21wが正常であると判定した場合には、コントローラ10はステップS25の制御フローを実行する。機器温度センサ21u、21v、21wのうち少なくとも1つのセンサが異常であると判定した場合には、コントローラ10はステップS24の制御フローを実行する。
【0048】
ステップS24にて、コントローラ10は、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を初期の設定値(T_th1_1、T_th2_1、T_th3_1)から、設定値(T_th1_2、T_th2_2、T_th3_2)に変更する。設定値(T_th1_2、T_th2_2、T_th3_2)は、初期の設定値(T_th1_1、T_th2_1、T_th3_1)より低い値である。また、コントローラ10は、3つの機器温度センサ21u、21v、21wのうち2つのセンサに異常が生じている場合には、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を設定値(T_th1_3、T_th2_3、T_th3_3)に変更する。設定値(T_th1_3、T_th2_3、T_th3_3)は、設定値(T_th1_2、T_th2_2、T_th3_2)よりも低い値である。
【0049】
ステップS25にて、コントローラ10は、コントローラ10は、機器温度センサ21u、21v、21wにより検出された検出温度のうち最も高い温度(最大機器温度:T2)を演算する。機器温度センサ21u、21v、21wのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じている場合には、コントローラ10は、異常が生じているセンサの検出値を除外し、異常が生じていない、機器温度センサ21u、21v、21wにより検出された検出温度の中から、最大機器温度(T2)を演算する。例えば、u相の機器温度センサ21uに異常が生じている場合には、コントローラ10は、v相及びw相の機器温度センサ21v、21wの検出温度の中から、最大機器温度(T2)を演算する。これにより、ある相の検出機能が故障しても、他の相のセンサを用いて、継続して機器を保護できる。
【0050】
ステップS26〜S33の制御フローは、第1実施形態で示したステップS4〜S11の制御フローと同様であるため、説明を省略する。ただし、ステップS24の制御フローで、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を変更した場合には、コントローラ10は、変更後の温度閾値と最大機器温度(T2)とを比較して、比較結果に応じて第1〜第3の保護処理を実行する。
【0051】
次に、図9を用いて、機器温度センサ21u、21v、21wに異常が生じた場合の温度推移と、温度閾値(T_th1_1、T_th1_2、T_th1_3)との関係について説明する。例えば、モータ2のu相がロックした状態の時に、パワーモジュールの最大となる温度(Tj)が図9のグラフаのように変化したとする。このとき、最大温度となるパワーモジュールの位置がu相のスイッチング素子(Q1、Q2)の付近である場合には、機器温度センサ21uの検出温度が、v、w相の機器温度センサ21v、21wよりも早く上昇する。そのため、機器温度センサ21uが正常であれば、機器温度センサ21uの検出温度(T2u)が温度閾値(T_th1_1)に達した時点(時刻t)で、第1保護処理が実行される。一方、機器温度センサ21uに異常が生じている場合には、機器温度センサ21uの検出値は正常な値を示さないため、最大機器温度(T2)はv相の検出温度となる。そして、機器温度センサ21vの検出温度(T2v)が温度閾値(T_th1_1)に達した時点(時刻t)で、第1保護処理が実行される。さらに、機器温度センサ21u及び機器温度センサ21vに異常が生じている場合には、最大機器温度(T2)はw相の検出温度となり、機器温度センサ21wの検出温度(T2w)が温度閾値(T_th1_1)に達した時点(時刻t)で、第1保護処理が実行される。
【0052】
すなわち、機器温度センサ21u、21v、21wに異常が生じた場合に、温度閾値を初期の設定値(T_th1_1)にした状態で、機器の保護処理を実行した場合には、駆動制限をかけるタイミングが遅れるおそれがある。本実施形態では、機器温度センサ21u、21v、21wに異常が生じた場合には、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を低くしているため、モータ2の保護を図ることができる。
【0053】
上記のように、本実施形態では、機器温度センサ21u、21v、21wにより検出された温度に基づき、機器温度センサ21u、21v、21wに異常が生じているか否かを判定し、複数の機器温度センサ21u、21v、21wのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、異常が生じてない前記機器温度センサ21u、21v、21wにより検出された温度の中から機器検出温度(T2)を特定する。これにより、ある相の温度センサに異常が生じた場合に、他の相の温度センサを用いて、機器を保護できる。
【0054】
また本実施形態では、複数の機器温度センサ21u、21v、21wのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を初期の設定値(T_th1_1、T_th2_1、T_th3_1)よりも低くする。これにより、センサに異常が生じた場合に、適切に機器を保護できる。また、保護可能な温度範囲を広げることができる。
【0055】
なお本実施形態の変形例では、複数の機器温度センサ21u、21v、21wのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合に、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を初期の設定値よりも低くしてもよい。これにより、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)の変更と同様に、センサに異常が生じた場合でも、適切に機器を保護できる。
【0056】
なお本実施形態の変形例では、複数の機器温度センサ21u、21v、21wのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合に、異常が生じていない機器温度センサ21u、21v、21wの検出値を通常の検出値(正常時の検出値)よりも高くしてもよい。これにより、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)の変更と同様に、センサに異常が生じた場合でも、適切に機器を保護できる。
【0057】
《第3実施形態》
本発明の他の実施形態に係る機器保護装置及び機器保護方法を説明する。本実施形態では、上述した第2実施形態に対して、ステップS24の制御フローが異なる。これ以外の構成及びコントローラ10の制御は上述した第2実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0058】
機器温度センサ21u、21v、21wのうち少なくとも1つのセンサが異常であると判定した場合には、コントローラ10は、ステップS24の制御フローにおいて、以下の制御を行う。コントローラ10は、異常が生じている機器温度センサ21u、21v、21wと異常が生じていない機器温度センサ21u、21v、21wとの温度差(ΔTp)を演算する。演算された温度差(ΔTp)が大きいほど、コントローラ10は、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を低い温度に設定する。そして、コントローラ10は、設定された温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を用いて、ステップS25以降の制御フローを実行する。
【0059】
図10は、モータ回転数と温度差(ΔTp)との関係を示すグラフである。図10に示すように、温度差(ΔTp)とモータ回転数との間には相関性があり、モータ回転数が低いほど、温度差(ΔTp)が大きくなる。温度差(ΔTp)が高いほど、正常な機器温度センサ21u、21v、21wの検出値と、モジュールの中で最も温度が高い部分の温度との差が大きくなる可能性がある。そのため、本実施形態では、温度差(ΔTp)が大きいほど、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を低い値にすることで、モジュールの温度が高くなる場合に、より早いタイミングで駆動制限をかけている。
【0060】
一方、温度差(ΔTp)が低い場合には、正常な機器温度センサ21u、21v、21wの検出値と、モジュールの中で最も温度が高い部分の温度との差も小さい。そのため、本実施形態では、温度差(ΔTp)が小さいほど、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を初期値の値に近づけることで、保護不要な領域を広げている。
【0061】
上記のように本実施形態では、異常が生じている機器温度センサの検出温度と、異常が生じていない機器温度センサの検出温度との温度差に応じて、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を設定する。これにより、機器の動作領域に対して、制限をかける領域と制限をかけない領域を適切に設定できる。なお、コントローラ10は、温度差(ΔTp)が大きいほど、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を小さい値にしてもよく、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を低い値にしてもよい。
【0062】
なお本実施形態の変形例において、コントローラ10は、モータ回転数が低いほど、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)をより低い値に設定する。モータ回転数は、レゾルバ等の回転数センサにより検出すればよい。図10に示すように、モータ回転数が低くなるほど、温度差(ΔTp)が大きくなる。そのため、変形例では、モータ回転数が低いほど、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を低い値にすることで、モジュールの温度が高くなる場合に、より早いタイミングで駆動制限をかける。このように、変形例では、複数の機器温度センサ21u、21v、21wのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じていると判定した場合には、モータ回転数に応じて、温度閾値を設定する。これにより、機器の動作領域に対して、制限をかける領域と制限をかけない領域を適切に設定できる。なお、コントローラ10は、回転数が低いほど、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を低い値にしてもよく、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を低い値にしてもよい。
【0063】
なお本実施形態の変形例において、コントローラ10は、モータ角度に応じて、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を設定してもよい。モータ角度は、レゾルバ等の回転数センサにより検出すればよい。
【0064】
図11は、モータ角度と温度差(ΔTp)との関係を示すグラフである。グラフаは、u相の機器温度センサ21uに異常が生じた場合の、u相の機器温度センサ21uの検出値とv、w相の機器温度センサ21v、21wとの温度差(ΔTp)を示す。グラフbは、v相の機器温度センサ21vに異常が生じた場合の、v相の機器温度センサ21vの検出値とu、w相の機器温度センサ21u、21wとの温度差(ΔTp)を示す。グラフcは、w相の機器温度センサ21wに異常が生じた場合の、w相の機器温度センサ21wの検出値とu、v相の機器温度センサ21u、21vとの温度差(ΔTp)を示す。
【0065】
例えばu相の機器温度センサ21uに異常が生じた場合に、モータ角度が0度から90度ぐらいのときには、温度差(ΔTp)が大きくなる。一方、モータ角度が90度から360度ぐらいのときには、温度差(ΔTp)が小さくなる。他の相(v、w)についても、モータ角度が特定の範囲内である場合には、温度差(ΔTp)は大きくなるが、モータ角度が特定の範囲外である場合には、温度差(ΔTp)は小さくなる。すなわち、温度差(ΔTp)とモータ角度との間には相関性がある。
【0066】
コントローラ10は、機器温度センサ21u、21v、21wのうち、異常が生じている相のセンサを特定する。コントローラ10は、モータ角度に対して、温度差(ΔTp)が大きくなる角度領域を、相毎に設定している。そして、コントローラ10は、検出されたモータ角度が角度領域内である場合には、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を初期値より低い値に設定する。また、検出されたモータ角度が角度領域外である場合には、コントローラ10は、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を初期値にする。これにより、機器の動作領域に対して、制限をかける領域と制限をかけない領域を適切に設定できる。なお、コントローラ10は、モータ角度に応じて、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を初期値より小さい値にしてもよく、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を初期値より小さい値にしてもよい。また、コントローラ10は、図11に示す温度差(ΔTp)の特性に合うように、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)を設定してもよい。
【0067】
なお本実施形態の変形例において、コントローラ10は、モータトルクに応じて、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を設定してもよい。モータトルクは、アクセル操作等に応じたトルク指令値から演算によって求めればよい。
【0068】
図12は、モータトルクと温度差(ΔTp)との関係を示すグラフである。図12に示すように、モータトルクが大きいほど、温度差(ΔTp)は小さくなる。すなわち、温度差(ΔTp)とモータトルクとの間には相関性がある。コントローラは、モータトルクが大きいほど、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)をより低い値に設定する。これにより、機器の動作領域に対して、制限をかける領域と制限をかけない領域を適切に設定できる。なお、コントローラ10は、モータトルクが大きいほど、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)をより小さい値にしてもよく、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)をより低い値にしてもよい。
【0069】
なお、本実施形態の変形例において、コントローラ10は、キャリア周波数に応じて、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を設定してもよい。キャリア周波数は、インバータのPWM制御に使用される周波数である。機器温度センサ21u、21v、21wのうち少なくとも1つのセンサに異常が生じている場合には、キャリア周波数が高いほど、温度差(ΔTp)が大きくなる。コントローラ10は、キャリア周波数が高いほど、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)をより低い値に設定する。これにより、機器の動作領域に対して、制限をかける領域と制限をかけない領域を適切に設定できる。なお、コントローラ10は、キャリア周波数が高いほど、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)をより低い値にしてもよく、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)をより低い値にしてもよい。
【0070】
なお、本実施形態の変形例において、コントローラ10は、冷媒温度に応じて、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を設定してもよい。冷媒温度は、温度センサ22から取得すればよい。冷媒温度が低い場合には、冷却性能が高くなるため、温度差(ΔTp)は小さくなる。コントローラ10は、冷媒温度が高いほど、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)をより低い値に設定する。これにより、機器の動作領域に対して、制限をかける領域と制限をかけない領域を適切に設定できる。なお、コントローラ10は、冷媒温度が高いほど、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)をより小さい値にしてもよく、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)をより低い値にしてもよい。
【0071】
なお、本実施形態の変形例において、コントローラ10は、冷媒流量に応じて、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を設定してもよい。冷媒流量は、流量センサを用いて検出すればよい。冷媒流量が大きい場合には、冷却性能が高くなるため、温度差(ΔTp)は小さくなる。コントローラ10は、冷媒流量が小さいほど、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)をより低い値に設定する。これにより、機器の動作領域に対して、制限をかける領域と制限をかけない領域を適切に設定できる。なお、コントローラ10は、冷媒流量が小さいほど、温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)をより小さい値にしてもよく、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)をより低い値にしてもよい。
【0072】
なお、上記変形例では、温度差(ΔTp)と相関性を有するパラメータとして、モータ移転数等を用いたが、当該パラメータは、センサの検出値に限らず、演算で求められる推定値、システムやユーザ操作に応じた指令値に基づく値としてもよい。また、当該パラメータは、電源電圧でもよい。また、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び/又は温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を変更する際には、ローパスフィルタやヒステリシスにより、変更タイミングを調整してもよい。
【0073】
《第3実施形態》
図13は、発明の他の実施形態に係る機器保護装置のコントローラの制御フローを示すフローチャートである。本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、制御フローの一部が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、機器保護装置の構成及びコントローラの制御フローは、第1実施形態及び第2実施形態の記載を適宜、援用する。
【0074】
図13を用いて、コントローラ10の制御フローを説明する。ステップS41、S42の制御フローは、第1実施形態で示したステップS1、S2の制御フローと同様であるため、説明を省略する。ステップS43にて、コントローラ10は、機器温度センサ21u、21v、21wにより検出された検出温度(T2u、T2v、T2w)に基づき、各相の温度(機器温度:T2ue、T2ve、T2we)を推定する。例えば、機器温度センサ21u、21v、21wとしてチップセンサを使用し、チップセンサをパワーモジュール内の半導体チップ上に設けた場合でも、センサの検出部分以外のチップ接合はんだ部にボイドがある場合は、センサ検出値と実際の最大温度(パワーモジュールの最大温度)との間に温度差が生じる。そのため、本実施形態では、機器温度センサ21u、21v、21wの検出値から実際の温度を推定することで、センサ検出値と実際の温度との差を小さくしている。
【0075】
ステップS44にて、コントローラ10は、モータ回転数などのパラメータを取得し、パラメータの値に応じて、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び/又は温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を変更する。
【0076】
各相の推定温度と実際の温度との温度差は、モータ回転数等のパラメータと相関性を有している。パラメータと温度差との関係は、第2実施形態及び第2実施形態の変形例で示された、温度差(ΔTp)とパラメータ(モータ回転数等)と同様である。例えば、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び/又は温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を変更するためのパラメータとして、モータ回転数を用いる場合には、コントローラ10は以下の制御を実行する。コントローラ10は、レゾルバ等の回転数センサを用いてモータ回転数を取得する。コントローラ10は、モータ回転数が低いほど温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び/又は温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)をより低い値に設定する。これにより、各相の推定温度と実際の温度との温度差が高くなる場合には、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び/又は温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)が低い値に設定されるため、より早いタイミングで駆動制限をかける。
【0077】
なお、モータ角度、モータトルク、キャリア周波数、冷媒温度、冷媒の流量などのパラメータについても、第2実施形態の各変形例と同様に、コントローラ10は、パラメータの値に応じて、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び/又は温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を設定すればよい。
【0078】
ステップS45にて、コントローラ10は、コントローラ10は、推定された機器温度のうち最も高い温度(最大機器温度:T2)を演算する。ステップS46〜S53の制御フローは、第1実施形態で示したステップS4〜S11の制御フローと同様であるため、説明を省略する。ただし、ステップS44の制御フローで、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3))及び/又は温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を変更した場合には、コントローラ10は、変更後の閾値を用いて、第1〜第3の保護処理を実行する。
【0079】
上記のように、本実施形態では、機器検出温度に基づき、機器温度を推定し、推定された機器温度と所定の閾値とを比較し、比較結果に基づき機器に対して駆動制限をかける。これにより、センサの検出値と実際の温度差を抑制しつつ、適切に機器を保護できる。
【0080】
また本実施形態では、推定された機器温度が第1温度閾値より高い場合には、第1保護動作で機器に対して駆動制限をかけ、第1保護動作で前記機器に対して駆動制限をかけた後に、推定された機器温度が第2温度閾値より高い場合には、第2保護動作で機器に対して駆動制限をかける。これにより、発熱体の温度を上げる直接の原因となっている出力を制限し、機器の動作可能な時間を拡大することができる。なお、第1温度閾値は温度閾値(T_th1)又は温度閾値(T_th2)に相当し、第2温度閾値は温度閾値(T_th2)又は温度閾値(T_th3)に相当し、第1保護動作は第1保護処理又は第2保護処理に相当し、第2保護動作は第2保護処理又は第3保護処理に相当する。
【0081】
また本実施形態では、推定された機器温度に応じて、温度差閾値及び温度閾値の少なくともいずれか一方の閾値を設定する。これにより、推定された温度と実際の温度差が大きい場合には、閾値を低い値に設定することで、より早いタイミングで駆動制限をかけることができる。
【0082】
また本実施形態では、モータ回転数のパラメータ等に応じて、温度閾値(T_th1、T_th2、T_th3)及び/又は温度差閾値(ΔT_th1、ΔT_th2、ΔT_th3)を設定する。これにより、機器温度センサ21u、21v、21wの検出値又は各相の推定温度と、実際の最大温度との差が大きくなる場合には、閾値を低い値に設定することで、より早いタイミングで駆動制限をかけることができる。また、機器温度センサ21u、21v、21wの検出値又は各相の推定温度と、実際の最大温度との差が小さくなる場合には、閾値を高くすることで、機器の動作領域に対して、制限をかける領域と制限をかけない領域を適切に設定できる。なお、本実施形態では、閾値を変更する代わりに、センサの検出値を変更してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…電源
2…負荷
3…電力変換装置
4…冷却装置
10…コントローラ
21、22…温度センサ
21u、21v、21w…機器温度センサ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13