(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ソース領域において前記第2の主面から前記第2の主面の垂直方向に延設され、前記第2の主面と平行で、前記ソース電極から前記ドレイン電極に向く方向に対して直交する方向に、前記ソース領域を貫通するように形成されたソース溝
を更に備え、
前記ソース溝の下端部は、前記第2ウェル領域の下端部よりも浅いこと
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。また、本発明の実施の形態において、「第1導電型」と「第2導電型」とは互いに反対導電型である。即ち、第1導電型がN型であれば、第2導電型はP型であり、第1導電型がP型であれば、第2導電型はN型である。以下の説明では第1導電型がN型、第2導電型がP型の場合を説明するが、第1導電型がP型、第2導電型がN型でもあっても良い。N型とP型を入れ替える場合には、印加電圧の極性も逆転する。
また、図面の記載において、半導体装置の高さ方向、縦方向、横方向の長さは、理解を促進するため誇張して記載している。即ち、各方向の長さの比率は、実際の装置と一致していない。
【0011】
[第1実施形態の説明]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1Aは、第1実施形態に係る半導体装置の構造を示す斜視図、
図1Bは、
図1AにおけるA−A’断面図である。また、
図1Cは、
図1Aにおいて層間絶縁膜10及びコンタクトホール11を取り除いた状態を示す斜視図、
図1Dは、
図1CにおけるB−B’断面図である。また、
図1A〜
図1Dでは、図示のように、x軸、y軸、z軸を定義している。
【0012】
図1Cに示すように、第1実施形態に係る半導体装置101は、絶縁性半導体の基板1と、該基板1の主面(図中、上側の主面)の上に配置されたN型のドリフト領域4と、ドリフト領域4の、基板1の主面と接する第1の主面に対向する第2の主面(図中、上側の主面)から、第2の主面の垂直方向に延設され、且つ、基板1内に到達する底部を有するP型の第1ウェル領域21を備えている。
【0013】
第1ウェル領域21は、ドリフト領域4の第1の主面に対して平行な一方向(
図1Cのx軸方向)の一方の端部側(図中、左側)に形成されている。
【0014】
更に、半導体装置101は、第1ウェル領域21の底部に接し、且つ、第1ウェル領域21の底部よりも下方の基板1内に配置されたP型の第2ウェル領域22を備えている。第2ウェル領域22は、第1ウェル領域21よりも横幅(前記一方向の距離)が短く形成されている。即ち、
図1Cに示す距離L2は、距離L1よりも短い。なお、以下では第1ウェル領域21と第2ウェル領域22を総称して「ウェル領域」という場合がある。
【0015】
第1ウェル領域21の内部には、該第1ウェル領域21の表面(第2の主面)から垂直方向に延設されたN+型のソース領域3が形成されている。ソース領域3は、第1ウェル領域21の底部よりも深く、且つ第2ウェル領域22の底部よりも浅い位置まで形成されている。即ち、ソース領域3は、第2の主面のうち、第1ウェル領域21が形成された領域から垂直方向に延設され、且つ、第2ウェル領域22に達している。
【0016】
第2の主面に対して平行な一方向の、ソース領域3とは反対側となる端部(図中、右側の端部)には、ドリフト領域4の第2の主面から垂直に延設されたN+型のドレイン領域5が形成(配置)されている。即ち、ドリフト領域4内にて、第1ウェル領域21及び第2ウェル領域22から離間して、第2の主面から垂直方向に延設されたN+型のドレイン領域5が形成されている。
【0017】
ドリフト領域4、第1ウェル領域21、及びソース領域3の一部を跨ぐ領域に、z軸方向から見て矩形状をなすゲート溝8が形成されている。
図1Dに示すように、ゲート溝8の下端部は、第2ウェル領域22に達している。即ち、ゲート溝8は、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3、及びドリフト領域4が表出する側面を有している。更に、ゲート溝8の側面には、ゲート絶縁膜6が設けられている。また、ゲート溝8の下端部は、ソース領域3、及び第2ウェル領域22の下端部よりも浅い位置とされている。従って、ゲート溝8の側面に設けられたゲート絶縁膜6は、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3、及びドリフト領域4に接している。
【0018】
また、ソース領域3、及び第2ウェル領域22の底面は、ゲート溝8の下端部よりも深い。従って、ゲート溝8と、第1ウェル領域21及び第2ウェル領域22とが接する面積は、ゲート溝8の深さに比例する。
【0019】
ゲート溝8の内部には、ゲート絶縁膜6を介してゲート電極7が形成(配置)されている。従って、ゲート電極7はゲート絶縁膜6を介して、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3、及びドリフト領域4に接している。
【0020】
更に、基板1の主面と平行な方向において、第1ウェル領域21とゲート溝8の側面に設けられたゲート絶縁膜6が接する面の長さが、第2ウェル領域22とゲート溝8の側面に設けられたゲート絶縁膜6が接する面の長さよりも長い。即ち、
図1Iは、半導体装置101の断面の、ゲート溝8のx軸方向の側面に接する第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22を示す説明図であり、第2ウェル領域22とゲート溝8が接するx軸方向の距離Lch2は、第1ウェル領域21とゲート溝8が接するx軸方向の距離Lch1よりも短い。なお、図中の符号21aは、第1ウェル領域21がx軸方向でゲート溝8に重複する領域を示し、符号22aは、第2ウェル領域22がx軸方向でゲート溝8に重複する領域を示している。
【0021】
また、
図1A、
図1Bに示すように、ドリフト領域4、第1ウェル領域21、及びソース領域3の第2の主面には、層間絶縁膜10が配置されている。
層間絶縁膜10の表面には、ソース電極15と、ゲート配線71と、ドレイン電極16が形成されており、ソース電極15は、層間絶縁膜10に形成されたコンタクトホール11を介してソース領域3と第1ウェル領域21に接続されている。ゲート配線71は、コンタクトホール11を介してゲート電極7に接続されている。ドレイン電極16は、コンタクトホール11を介してドレイン領域5に接続されている。
【0022】
即ち、ドレイン電極16は、ドレイン領域5に電気的に接続され、ソース電極15は、ソース領域3及び第1ウェル領域21に電気的に接続されている。また、ソース領域3と第1ウェル領域21は共にソース電極15に接続されているので、ソース領域3と第1ウェル領域21は同電位とされる。
【0023】
第1実施形態では、半導体装置101がオン時のチャンネル抵抗を低減するために、第2ウェル領域22の横幅を第1ウェル領域21の横幅よりも短くしている。以下、その理由について説明する。
【0024】
チャンネル抵抗を低減するためには、オン時のチャンネル幅を広くすることが望まれる。従って、ゲート溝8を深くし、且つ、ウェル領域を深くまで形成すれば、ゲート電極7とウェル領域が接触する面積が大きくなり、チャンネル幅を広くすることができる。しかし、イオン注入により、半導体装置101の表面から深い位置に達するまで、横幅(図中、x軸方向の幅)の広いウェル領域を形成する場合には、高い注入エネルギーが必要となり、注入時の電圧に対する耐圧が維持できないことが有る。そこで、深い位置に設ける第2ウェル領域22の横幅を狭くし、浅い位置に設ける第1ウェル領域21の横幅を広くする。こうすることで、低い注入エネルギーで、より深くまでウェル領域を形成することができる。
【0025】
また、第2ウェル領域22は、絶縁性の基板1に接しているので、オフ時に加えられる電界が小さく、横幅が狭くても十分な耐圧を得ることができる。
【0026】
[第1実施形態の製造方法の説明]
次に、
図1A、
図1Bに示した第1実施形態に係る半導体装置101の製造方法について説明する。本実施形態では、絶縁性半導体の基板1が炭化珪素(SiC)である場合を例に挙げて説明する。ここで示す絶縁性半導体は、抵抗率が数kΩ/cm以上のことを言う。炭化珪素にはいくつかのポリタイプ(結晶多形)が存在するが、ここでは代表的な4Hとして説明する。
【0027】
初めに、ノンドープの炭化珪素絶縁半導体基板(基板1)上にゲート溝8を形成するため、基板1上にマスク材(図示省略)を形成し、パターニングする。マスク材としてはシリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。
【0028】
パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィー法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、マスク材をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウエットエッチングや、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることができる。
【0029】
そして、マスク材をマスクにして、ゲート溝8を形成する。ゲート溝8を形成する方法としては、ドライエッチング法を用いることができる。ゲート溝8を形成した後、マスク材を除去する。例えば、マスク材がシリコン酸化膜の場合はフッ酸洗浄で除去する。その結果、
図1Eに示すように、ゲート溝8が形成された基板1を得ることができる。
【0030】
次に、基板1の上面にドリフト領域4を形成する。N型の不純物イオンを注入することにより、ドリフト領域4を形成することができる。不純物の注入濃度は、1×10
14〜1×10
18cm
−3とするのがよい。注入エネルギーは、ドリフト領域4の必要な深さで設定することができる。例えば、ドリフト領域4の深さが1μmの場合は、MeV(メガエレクトロンボルト)台の電圧が必要となる。その結果、
図1Fに示すように、基板1の上面にドリフト領域4が形成される。
【0031】
その後、ドリフト領域4の表面(第2の主面)からイオン注入によって、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、N型のソース領域3、N型のドレイン領域5を形成する。ソース領域3とドレイン領域5は同時に形成する。この際、イオン注入領域をパターニングするために、ドリフト領域4上にマスク材を形成する。
マスク材としてはシリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。
【0032】
次に、マスク材上にレジストをパターニングする(図示省略)。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィー法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、マスク材をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウエットエッチングや、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることができる。
【0033】
その後、レジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。マスク材をマスクにして、P型、及びN型不純物をイオン注入し、P型の第1ウェル領域21、P型の第2ウェル領域22、及びN+型のソース領域3を形成する。
P型不純物としては、アルミニウムやボロン(ホウ素)を用いることができる。また、N型不純物として窒素を用いることができる。この際、基体温度を600℃程度に加熱した状態でイオン注入することで、注入領域に結晶欠陥が生じることを抑制できる。
【0034】
第2ウェル領域22を形成する際の注入エネルギーを、第1ウェル領域21を形成する際の注入エネルギーよりも高く設定することにより、第1ウェル領域21より深い位置に第2ウェル領域22を形成できる。
【0035】
また、前述したように、第2ウェル領域22の横幅を、第1ウェル領域21の横幅よりも狭くしていることにより、ウェル領域を形成する際の注入エネルギーを低くすることができる。例えば、第1ウェル領域21の横幅で、第2ウェル領域22の底部までウェル領域を形成すると、注入エネルギーが高くなる。しかし、第2ウェル領域22の横幅を狭く設定することにより、高い注入エネルギーとすることなく深い位置までウェル領域を形成することができる。
【0036】
第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22の不純物濃度は、1×10
16〜5×10
18cm
−3とするのがよい。イオン注入後、マスク材をフッ酸等を用いたエッチングによって除去する。
図1Gは、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3、及びドレイン領域5を形成した状態の断面図を示している。
【0037】
また、上記の方法で形成されたソース領域3、及びドレイン領域5は、不純物濃度が1×10
18〜1×10
21cm
−3とするのがよい。更に、第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22は、不純物濃度を1×10
15〜1×10
19cm
−3とするのがよい。第2ウェル領域22の深さはゲート溝8の下端部よりも深くすることが好ましい。
その後、イオン注入した不純物を熱処理することで活性化する。熱処理温度としては、1700℃程度の温度とするのがよい。雰囲気としては、アルゴンや窒素を用いることがよい。
【0038】
次に、ゲート溝8の内面にゲート絶縁膜6を形成する。ゲート絶縁膜6の形成方法として、熱酸化法、堆積法を採用することができる。一例として、熱酸化法の場合、基体を酸素雰囲気中に、温度を1100℃程度に加熱することで、基体が酸素に触れるすべての部分において、シリコン酸化膜を形成することができる。
【0039】
ゲート絶縁膜6を形成した後、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ゲート絶縁膜6の界面の界面準位を低減するために、窒素、アルゴン、N
2O等の雰囲気中で1000℃程度のアニールを行っても良い。また、直接NO、またはN
2O雰囲気中で熱酸化を行うことも可能である。その場合の温度は、1100℃〜1400℃とするのがよい。形成されるゲート絶縁膜6の厚さを数十nmとするのが好ましい。
【0040】
次に、ゲート溝8の内部にゲート電極7を堆積する。ゲート電極7となる材料はポリシリコンが一般的であり、本実施形態ではポリシリコンを用いる場合について説明する。
【0041】
ポリシリコンの堆積方法として、減圧CVD法を用いることができる。ポリシリコンを堆積する厚さは、ゲート溝8の幅の二分の一より大きいな値にする。こうすることで、ゲート溝8をポリシリコンで完全に埋めることができる。
例えば、ゲート溝8の幅が2μmの場合は、ポリシリコンの厚さを1μmより厚くする。また、ポリシリコン堆積後に、950℃でPOC13中にアニールすることで、N型のポリシリコンが形成され、ゲート電極7に導電性を持たせることができる。
【0042】
次に、ゲート電極7のポリシリコンをエッチングする。エッチング方法は、等方性エッチング、及び異方性エッチングを採用することができる。ゲート溝8内にポリシリコンが残るように、エッチング量を設定する。例えば、ゲート溝8の幅が2μmの場合には、ポリシリコンの厚さは1.5μmにして堆積した場合、エッチング量は1.5μmにすることが望ましい。また、エッチングの制御上1.5μmに対し、数%のオーバーエッチングであってもよい。ポリシリコンをエッチングした後の断面構造を、
図1Hに示す。
【0043】
次に、層間絶縁膜10を形成し、更に、電極用のコンタクトホール11を形成する。層間絶縁膜10として、シリコン酸化膜を用いることができる。層間絶縁膜10の堆積方法として、熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。層間絶縁膜10の厚さは、1μm以上とするのが好ましい。層間絶縁膜10を堆積した後、該層間絶縁膜10の表面からコンタクトホール11を形成する。
【0044】
コンタクトホール11を形成するために、層間絶縁膜10上にレジストをパターニングする(図示省略)。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィー法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、層間絶縁膜10をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウエットエッチングや、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることができる。次に、レジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。ソース電極15用のコンタクトホール11は、第1ウェル領域21とソース領域3を同時が露出するように形成する。
【0045】
コンタクトホール11を形成した後、ソース電極15、ドレイン電極16を形成する。電極材料として、チタンTi、ニッケルNi、モリブデンMoを用いることができる。また、Ti/Ni/Ag等の積層メタルを用いることもできる。電極材料としてチタンTiを用いる場合には、まず、層間絶縁膜10の表面にチタンTiを堆積する。堆積方法としてスパッタ法を用いることができる。堆積したチタンTiを、レジストマスクによる選択エッチングすることにより、
図1A、
図1Bに示したソース電極15、ドレイン電極16、及びゲート配線71を形成することができる。こうして、
図1A、
図1Bに示した半導体装置101を製造することができる。
【0046】
[第1実施形態の動作説明]
次に、第1実施形態に係る半導体装置101の動作について説明する。
図1Aに示す構成の半導体装置101は、ソース電極15の電位を基準として、ドレイン電極16に正の電位を印加した状態でゲート電極7の電位を制御することで、トランジスタとして機能する。
【0047】
即ち、ゲート電極7、ソース電極15間の電圧を所定の閾値電圧以上にすると、ゲート電極7の側面にゲート絶縁膜6を介して接する第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22のチャンネルに反転層が形成されるため、半導体装置101はオン状態となる。
【0048】
従って、ドレイン電極16からソース電極15へ電流が流れる。具体的には、電子がソース電極15からソース領域3に流れ、更に、該ソース領域3から、第1ウェル領域21及び第2ウェル領域22に形成されたチャンネルを経由して、ドリフト領域4に流れる。更に、ドリフト領域4からドレイン領域5を経由して、ドレイン電極16に流れる。
この際、第2ウェル領域22は、ゲート溝8よりも深くまで形成されているので、チャンネル幅を広くすることができ、チャンネル抵抗を低減できる。
【0049】
一方、ゲート電極7とソース電極15間の電圧を所定の閾値電圧以下にすると、反転層が消滅し、半導体装置101はオフ状態となる。従って、ドレイン電極16からソース電極15へ流れる電流は遮断される。半導体装置101のオフ時には、ドレイン電極16とソース電極15の間に、数百〜数千ボルトの高電圧が印加される。
【0050】
この際、第2ウェル領域22は、第1ウェル領域21よりも横幅が狭いので、第2ウェル領域22とドレイン領域5の距離は、第1ウェル領域21とドレイン領域5の距離よりも長くなる。このため、第2ウェル領域22に印可される電界は、第1ウェル領域21に印可される電界よりも小さい。また、第2ウェル領域22に形成される空乏層領域の幅は、第1ウェル領域21に形成される空乏層領域の幅より狭く、パンチスルーが起こり難い。従って、第2ウェル領域22の横幅を狭くても、耐圧の低下を回避できる。
【0051】
[第1実施形態の効果の説明]
第1実施形態に係る半導体装置101では、以下に示す効果を得ることができる。
第1ウェル領域21及び第2ウェル領域22を有し、第2ウェル領域22の横幅(
図1Aのx軸方向の距離)は、第1ウェル領域21の横幅よりも狭く形成されている。従って、高い注入エネルギーを必要とせずに、イオン注入によりウェル領域を形成することができる。
【0052】
また、第1ウェル領域21及び第2ウェル領域22を設けることにより、ゲート電極7とウェル領域との深さ方向(z軸方向)の接触面積を大きくすることができ、チャンネル幅を広げることができる。従って、チャンネル抵抗を低減できる。
更に、
図1Iに示したように、第2ウェル領域22とゲート電極7が接する距離Lch2は、第1ウェル領域21とゲート電極7が接する距離Lch1よりも短いので、第2ウェル領域22のチャンネル抵抗を低減でき、半導体装置101全体のオン抵抗を低減できる。
【0053】
また、半導体装置101のオフ時には、第2ウェル領域22に印可される電界は、第1ウェル領域21に印可される電界よりも小さい。また、第2ウェル領域22に形成される空乏層領域の幅は、第1ウェル領域21に形成される空乏層領域の幅より狭く、パンチスルーが起こり難い。従って、第2ウェル領域22の横幅を狭くても、オフ時における耐圧の低下を回避できる。
【0054】
炭化珪素の半導体装置においては、チャンネル界面の状態密度が高く、半導体装置のオン抵抗が、チャンネル抵抗全体の大部分を占めている。このため、炭化珪素の半導体装置に適用する場合には、より高い効果が得られる。
【0055】
第1ウェル領域21の底部は、ドリフト領域4よりも深い位置に達しているので、第2ウェル領域22は絶縁性の基板1に形成されることになる。従って、第2ウェル領域22とドレイン領域5との距離を更に離すことができ、半導体装置101がオフ時において第2ウェル領域22に印可される電界を低減できる。従って、耐圧性能を高めることができる。
【0056】
[第1実施形態の第1変形例の説明]
次に、第1実施形態の変形例について説明する。半導体装置の構造は、
図1A〜
図1Dと同様である。第1変形例では、
図1A〜
図1Dに示した第2ウェル領域22の不純物濃度が、第1ウェル領域21の不純物濃度よりも低く設定されている点で、前述した第1実施形態と相違する。製造方法は、第1実施形態で示した製造方法と同様であるので製造方法の説明を省略する。
【0057】
第1変形例に係る半導体装置では、第2ウェル領域22の不純物濃度が第1ウェル領域21の不純物濃度よりも低いことにより、チャンネルをオンとするためのゲート電圧の閾値を低減でき、損失を低減することができる。
【0058】
[第1実施形態の第2変形例の説明]
図2は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置102の構成を示す斜視図である。前述した第1実施形態で示した
図1Aと対比して、ソース領域3のy軸方向に向けて、該ソース領域3を貫通するようにソース溝17が形成されている点で相違する。即ち、ソース溝17は、ソース領域3において、第2の主面から第2の主面の垂直方向に延設され、第2の主面と平行で、ソース電極15からドレイン電極16に向く方向に対して直交する方向に、ソース領域3を貫通するように形成されている。
ソース溝17の下端部は、第2ウェル領域22の下端部よりも浅い位置まで形成されている。ソース溝17の内部には、Ti、Ni、Mo等のメタルを材料とするソース電極15が形成されている。
【0059】
第2変形例に係る半導体装置102の製造方法は、前述した
図1Aに示した半導体装置101と比べて、ソース溝17、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3を形成する工程が相違する。以下、詳細に説明する。
【0060】
第2変形例では、ドリフト領域4の形成後に、前述したゲート溝8を形成する方法と同様の方法で、ソース溝17を形成する。その後、ソース溝17の側壁への斜めイオン注入により、第2ウェル領域22を形成する。このときの注入角度をθ2とする。
【0061】
次に、第2ウェル領域22を形成する方法と同様の方法で、ソース溝17の側壁への斜めイオン注入で、第1ウェル領域21を形成する。このときの注入角度をθ1とする。ここで、第1ウェル領域21と第2ウェル領域22の注入エネルギーを同一とし、注入角度は、θ1をθ2よりも大きくするのがよい。注入する不純物と不純物濃度は、前述した第1実施形態と同様である。
【0062】
この際、ウェル領域の表面(第2の主面)の法線方向から見て、第1ウェル領域21のうち、第2ウェル領域22と重複する領域は、第2ウェル領域22と同時に形成する。第1ウェル領域21の形成は、第2ウェル領域22と同時に形成された領域以外の領域のみイオン注入で形成する。このような手順でウェル領域を形成することにより、イオン注入を容易に実施でき、コストを低減できる。
【0063】
次に、ソース領域3を、ソース溝17の側壁への斜めイオン注入で形成する。注入する不純物と不純物濃度は、前述した第1実施形態と同様である。
【0064】
第2変形例に係る半導体装置102では、ソース溝17を設けることにより、第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22を、斜めイオン注入により形成することができる。従って、基板1の表面から垂直方向にイオン注入する場合と比較して、より深くまでウェル領域を形成することができる。従って、チャンネル幅を広げることができ、チャンネル抵抗を低減することができる。
また、ソース溝17の内部に、Ti、Ni、Mo等のメタルのソース電極15を形成することにより、ソース抵抗を低減することができ、より低損失な半導体装置を提供できる。
【0065】
また、第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22を形成する際に、第2の主面の法線方向から見て、第1ウェル領域21のうち、第2ウェル領域22と重複する領域を、第2ウェル領域22と同時に形成するので、低い注入エネルギーでウェル領域を形成することが可能となる。更に、ウェル領域を容易に形成でき、コストを低減できる。
【0066】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図3Aは、第2実施形態に係る半導体装置103の構成を示す斜視図、
図3Bは、
図3AにおけるC−C’断面図である。前述した
図1C、
図1Dと同様に、
図3A、
図3Bでは、煩雑さを避けるため層間絶縁膜10、及びコンタクトホール11の記載を省略している。
【0067】
第2実施形態に係る半導体装置103は、炭化珪素等の絶縁性半導体からなる基板1を備える。基板1の主面(
図3Aで上側の主面)には、N型の第1ドリフト領域41が形成され、更に、第1ドリフト領域41と接してP型の第1ウェル領域21が形成されている。第1ウェル領域21の底部は、第1ドリフト領域41よりも深くまで形成されている。
【0068】
また、第1ウェル領域21は、第1ドリフト領域41の第2の主面に対して平行な一方向(
図3Aのx軸方向)の一方の端部側(図中、左側)に形成されている。更に、第1ウェル領域21の底部よりも下方の基板1内に配置された第2ウェル領域22を備えている。第2ウェル領域22は、第1ウェル領域21よりも横幅が短く形成されている。
【0069】
第1ドリフト領域41の、第1ウェル領域21と接する位置の近傍には、N型の第2ドリフト領域42が形成されている。
図3Bに示すように、第2ドリフト領域42は、第1ドリフト領域41よりも深くまで形成されている。第2ドリフト領域42の下端部は、ゲート溝8よりも深くまで形成されている。
【0070】
第1ウェル領域21の内部には、該第1ウェル領域21の表面(第2の主面)から垂直方向に延設されたN+型のソース領域3が形成されている。ソース領域3は、第1ウェル領域21の底部よりも深く、且つ第2ウェル領域22の底部よりも浅い位置まで形成されている。即ち、ソース領域3は、第2の主面のうち、第1ウェル領域21が形成された領域から垂直方向に延設され、且つ、第2ウェル領域22に達している。
【0071】
第2の主面に対して平行な一方向の、ソース領域3とは反対側となる端部(図中、右側の端部)には、第1ドリフト領域41の第2の主面から垂直に延設されたN+型のドレイン領域5が形成(配置)されている。即ち、第1ドリフト領域41内にて、第1ウェル領域21及び第2ウェル領域22から離間して、第2の主面から垂直方向に延設されたN+型のドレイン領域5が形成されている。
【0072】
第2ドリフト領域42、第1ウェル領域21、及びソース領域3の一部を跨ぐ領域に、真上から見て矩形状をなすゲート溝8が形成されている。ゲート溝8の下端部は、第2ウェル領域22に達している。即ち、ゲート溝8は、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3、第1ドリフト領域41、第2ドリフト領域42が表出する側面を有している。更に、ゲート溝8の側面には、ゲート絶縁膜6が設けられている。また、ゲート溝8の下端部は、ソース領域3、及び第2ウェル領域22の下端部よりも浅い位置とされている。従って、ゲート溝8の側面に設けられたゲート絶縁膜6は、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3、第1ドリフト領域41、第2ドリフト領域42に接している。
【0073】
ゲート溝8の内部には、ゲート絶縁膜6を介してゲート電極7が形成されている。従って、ゲート電極7はゲート絶縁膜6を介して、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3、第1ドリフト領域41、及び第2ドリフト領域42に接している。
【0074】
前述した第1実施形態と同様に、ゲート溝8と第1ウェル領域21及び第2ウェル領域22とが接する面積は、ゲート溝8の深さが深いほど大きい。更に、基板1の主面と平行な方向(図中x軸方向)において、第1ウェル領域21とゲート溝8の側面に設けられたゲート絶縁膜6が接する面の長さが、第2ウェル領域22とゲート溝8の側面に設けられたゲート絶縁膜6が接する面の長さよりも長い(
図1IのLch1、Lch2参照)。
【0075】
第1ウェル領域21、及びソース領域3の表面に接するように、ソース電極15が形成されている。即ち、第1ウェル領域21とソース領域3は同電位となる。第1ドリフト領域41の端部(図中、右側の端部)には、N+型のドレイン領域5が形成され、更に、該ドレイン領域5の表面に接するように、ドレイン電極16が形成されている。なお、上述したように、
図3A、
図3Bでは、層間絶縁膜10、コンタクトホール11(
図1A参照)の記載を省略している。
【0076】
[第2実施形態に係る半導体装置の製造方法]
次に、第2実施形態に係る半導体装置103の製造方法について説明する。まず、ノンドープの炭化珪素絶縁半導体基板(基板1)上にゲート溝8を形成するため、基板1上にマスク材(図示省略)を形成し、パターニングする。マスク材としてはシリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。
【0077】
パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィー法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、マスク材をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウエットエッチングや、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることができる。
【0078】
そして、マスク材をマスクにしてゲート溝8を形成する。ゲート溝8を形成する方法としては、ドライエッチング法を用いることができる。ゲート溝8を形成した後、マスクを除去する。例えば、マスク材をシリコン酸化膜の場合はフッ酸洗浄で除去する。その結果、
図3Cに示すように、ゲート溝8が形成された基板1を得ることができる。
【0079】
次に、基板1に第1ドリフト領域41、及び第2ドリフト領域42を形成する。斜めイオン注入でN型の不純物イオンを注入することにより、第1ドリフト領域41と第2ドリフト領域42を同時に形成することができる。
【0080】
不純物イオンの注入濃度は、1×10
14〜1×10
18cm
−3とするのがよい。注入エネルギーは、第1ドリフト領域41と第2ドリフト領域42の深さに応じて設定する。例えば、第1ドリフト領域41の深さが1μmの場合は、MeV台でのN型不純物イオンの注入が必要となる。その結果、
図3Dに示すように、基板1の上面に第1ドリフト領域41、及び第2ドリフト領域42が形成される。
【0081】
その後、第1ドリフト領域41の表面(第2の主面)からイオン注入によって、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、N型のソース領域3、及びN型のドレイン領域5を形成する。ソース領域3とドレイン領域5は同時形成する。この際、イオン注入領域をパターニングするために、第1ドリフト領域41、及び第2ドリフト領域42上にマスク材を形成する。
【0082】
マスク材としてはシリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。
【0083】
次に、マスク材の上にレジストをパターニングする(図示せず)。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィー法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、マスク材をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウエットエッチングや、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることができる。
【0084】
その後、レジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。マスク材をマスクにして、P型及びN型不純物をイオン注入し、P型の第1ウェル領域21、P型の第2ウェル領域22、及びN+型のソース領域3を形成する。
P型不純物としては、アルミやボロン(ホウ素)を用いることができる。また、N型不純物としては窒素を用いることができる。この際、基体温度を600℃程度に加熱した状態でイオン注入することで、注入領域に結晶欠陥が生じることを抑制できる。
【0085】
第2ウェル領域22を形成する際の注入エネルギーを、第1ウェル領域21を形成する際の注入エネルギーより高く設定することにより、第1ウェル領域21よりも深い位置に第2ウェル領域22を形成できる。
【0086】
また、前述したように、第2ウェル領域22の横幅を、第1ウェル領域21の横幅よりも狭くしていることにより、ウェル領域を形成する際の注入エネルギーを低くすることができる。
【0087】
第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22の不純物濃度は、1×10
16cm
−3〜5×10
18cm
−3とするのがよい。イオン注入後、マスク材をフッ酸等を用いたエッチングによって除去する。
図3Eは、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3、及びドレイン領域5を形成した状態の断面図を示している。
【0088】
また、上記の方法で形成されたソース領域3、及びドレイン領域5は、不純物濃度が1×10
18cm
−3〜1×10
21cm
−3とするのがよい。更に、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22は、不純物濃度を1×10
15cm
−3〜1×10
19cm
−3とするのがよい。深さはゲート溝8より深いことが好ましい。
その後、イオン注入した不純物を熱処理することで活性化する。熱処理温度としては1700℃程度の温度とするのがよい。雰囲気としては、アルゴンや窒素を用いるのがよい。
【0089】
その後、前述した第1実施形態と同様の方法で、ゲート絶縁膜6、ゲート電極7を形成する。
図3Fは、ゲート溝8内にゲート電極7を堆積した状態の断面図を示している。更に、層間絶縁膜10、コンタクトホール11、ソース電極15、ドレイン電極16を形成する。こうして、
図3に示す第2実施形態に係る半導体装置103が完成する。
【0090】
[第2実施形態の動作説明]
次に、第2実施形態に係る半導体装置103の動作について説明する。
図3Aに示す構成の半導体装置103は、ソース電極15の電位を基準として、ドレイン電極16に正の電位を印加した状態でゲート電極7の電位を制御することで、トランジスタとして機能する。
【0091】
即ち、ゲート電極7、ソース電極15間の電圧を所定の閾値電圧以上にすると、ゲート電極7の側面にゲート絶縁膜6を介して接する第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22のチャンネルに反転層が形成されるため、半導体装置103は、オン状態となる。従って、ドレイン電極16からソース電極15へ電流が流れる。
【0092】
具体的には、電子がソース電極15からソース領域3に流れ、更に、該ソース領域3から第1ウェル領域21、第2ウェル領域22に形成されたチャンネルを経由して、第2ドリフト領域42に流れる。更に、第1ドリフト領域41からドレイン領域5を経由して、ドレイン電極16に流れる。
この際、第2ウェル領域22は、ゲート溝8の底部よりも深くまで形成されているので、チャンネル抵抗を低減できる。
【0093】
一方、ゲート電極7とソース電極15との間の電圧を所定の閾値電圧以下にすると、反転層が消滅し、半導体装置103はオフ状態となる。従って、ドレイン電極16からソース電極15へ流れる電流が遮断される。半導体装置103のオフ時には、ドレイン電極16とソース電極15の間には、数百〜数千ボルトの高電圧が印加される。
【0094】
この際、第2ウェル領域22は、第1ウェル領域21よりも横幅が狭いので、第2ウェル領域22とドレイン領域5の距離は、第1ウェル領域21とドレイン領域5の距離よりも長くなる。このため、第2ウェル領域22に印可される電界は、第1ウェル領域21に印可される電界よりも小さい。また、第2ウェル領域22に形成される空乏層領域の幅は、第1ウェル領域21に形成される空乏層領域の幅より狭く、パンチスルーが起こり難い。従って、第2ウェル領域22の横幅を狭くても、耐圧の低下を回避できる。
【0095】
[第2実施形態の効果の説明]
第2実施形態に係る半導体装置103では、前述した第1実施形態と同様の効果を達成することができる。更に、半導体装置103のオン時に、N型の第2ドリフト領域42とP型の第1ウェル領域21の間のPN接合による空乏層が広がる。第2ドリフト領域42の一部に電子が流れない領域ができ、電子が流れる領域が狭くなって抵抗が大きくなる。しかし、第2ドリフト領域42を、第1ドリフト領域41よりも深くまで形成しているので、チャンネルを通過した後の電子の流路が広くなり抵抗が低減する。即ち、第2ドリフト領域42を設けず、第1ドリフト領域41のみとした場合と対比して、オン時の抵抗を低減できる。
【0096】
また、ソース領域3は、ゲート溝8より深い位置まで形成され、第2ウェル領域22よりも浅い位置まで形成されているので、ソース領域3からゲート溝8の底部で形成されるチャンネルまでの距離は、ソース領域3がゲート溝8より浅い場合に比べて短くなる。
【0097】
以下、
図3G、
図3Hを参照して、詳細に説明する。
図3Gは、ソース領域3がゲート溝8の底面よりも深く、第2ウェル領域22の底面よりも浅い場合の断面図を示している。また、
図3Hは、ソース領域3がゲート溝8の底部よりも浅い場合の断面図を示している。図中の符号21aは、第1ウェル領域21がx軸方向でゲート溝8に重複する領域を示している。符号22aは、第2ウェル領域22がx軸方向でゲート溝8に重複する領域を示している。
【0098】
図3Gに示す構成では、
図3Hに示す構成に対して、ソース領域3からゲート溝8の底部に形成されるチャンネル領域までの距離が短くなる。半導体装置の電流は、ソース領域3から、矢印Y1に示すように、チャンネル、第2ドリフト領域42、第1ドリフト領域41、ドレイン領域5の順に流れる。これに対して、
図3Hでは、矢印Y2を経由している。従って、
図3Gの構成とすることにより、チャンネル抵抗を低減できる。
【0099】
ゲート溝8の下端部は、第2ウェル領域22の底部よりも浅いので、ゲート溝8の下端部に接する第2ウェル領域22にもチャンネル領域が形成される。従って、より一層チャンネル抵抗を低減することができる。
更に、炭化珪素基板において、ゲート絶縁膜が熱酸化で形成する場合は結晶面による熱酸化レードの違いで、現在、使用される基板ではゲート溝8の底部酸化膜が薄くなる。従って、ゲート溝8の底面を形成するトランジスタの閾値電圧が低く、ゲート溝8の底面では更なる低チャンネル抵抗を実現できる。
【0100】
[第2実施形態の第1変形例の説明]
次に、第2実施形態の第1変形例について説明する。半導体装置の構造は、
図3A〜
図3Bと同様である。第1変形例では、
図3A〜
図3Bに示した第2ウェル領域22の不純物濃度が、第1ウェル領域21の不純物濃度よりも低く設定されている点で、前述した第2実施形態と相違する。製造方法は、第2実施形態で示した製造方法と同様あるので製造方法の説明を省略する。
【0101】
第1変形例に係る半導体装置では、第2ウェル領域22の不純物濃度が第1ウェル領域21の不純物濃度よりも低いことにより、チャンネルをオンとするためのゲート電圧の閾値を低減でき、損失を低減することができる。
【0102】
[第2実施形態の第2変形例の説明]
図4は、第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置104の構成を示す斜視図である。前述した第2実施形態で示した
図3Aと対比して、ソース領域3の図中y軸方向に向けて、該ソース領域3を貫通するようにソース溝17が形成されている点で相違する。即ち、ソース溝17は、ソース領域3において、第2の主面から第2の主面の垂直方向に延設され、第2の主面と平行で、ソース電極15からドレイン電極16に向く方向に対して直交する方向に、ソース領域3を貫通するように形成されている。
【0103】
ソース溝17の下端部は、第2ウェル領域22の下端部よりも浅い位置まで形成されている。ソース溝17の内部には、Ti、Ni、Mo等のメタルを材料とするソース電極15が形成されている。
第2変形例に係る半導体装置
104の製造方法は、前述した
図3Aに示した半導体装置103と比べて、ソース溝17、第1ウェル領域21、第2ウェル領域22、ソース領域3を形成する工程が相違する。以下、詳細に説明する。
【0104】
第2変形例では、第1ドリフト領域41及び第2ドリフト領域42の形成後に、前述したゲート溝8を形成する方法と同様の方法で、ソース溝17を形成する。その後、ソース溝17の側壁への斜めイオン注入により、第2ウェル領域22を形成する。このときの注入角度をθ2とする。
【0105】
次に、第2ウェル領域22を形成する方法と同様の方法で、ソース溝17の側壁への斜めイオン注入で、第1ウェル領域21を形成する。このときの注入角度をθ1とする。ここで、第1ウェル領域21と第2ウェル領域22の注入エネルギーを同一とし、注入角度は、θ1をθ2よりも大きくするのがよい。注入する不純物と不純物濃度は、前述した第2実施形態と同様である。
【0106】
この際、ウェル領域の表面(第2の主面)の法線方向から見て、第1ウェル領域21のうち、第2ウェル領域22と重複する領域は、第2ウェル領域22と同時に形成する。第1ウェル領域21の形成は、第2ウェル領域22と同時に形成された領域以外の領域のみイオン注入で形成する。
【0107】
次に、ソース領域3を、ソース溝17の側壁への斜めイオン注入で形成する。注入する不純物と不純物濃度は、前述した第1実施形態と同様である。
【0108】
第2変形例に係る半導体装置104では、ソース溝17を設けることにより、第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22を、斜めイオン注入により形成することができる。従って、基板1の表面から垂直方向にイオン注入する場合と比較して、より深くまでウェル領域を形成することができる。従って、チャンネル幅を広げることができ、チャンネル抵抗を低減することができる。
また、ソース溝17の内部に、Ti、Ni、Mo等のメタルのソース電極15を形成することにより、ソース抵抗を低減することができ、より低損失な半導体装置を提供できる。
【0109】
また、第1ウェル領域21、及び第2ウェル領域22を形成する際に、第2の主面の法線方向から見て、第1ウェル領域21のうち、第2ウェル領域22と重複する領域を、第2ウェル領域22と同時に形成するので、低い注入エネルギーでウェル領域を形成することが可能となる。
【0110】
上述した各実施形態では、基板1として炭化珪素基板を用いる例について説明したが、本発明は、炭化珪素基板に限らず、GaN,ダイヤモンド、ZnO、AlGaN等の、バンドギャップの広い半導体材料からなる基板を用いることができる。
【0111】
また、ゲート電極7の材料として、N型のポリシリコンを用いる例について説明したが、P型ポリシリコンでもよい。また、P型ポリ炭化珪素、SiGe、Al等の他の半導体材料、メタル材料等の導電性を有する材料を用いても良い。
【0112】
ゲート絶縁膜6として、シリコン酸化膜を用いる例を示したが、シリコンの窒化膜でもよい。或いは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層でもよい。シリコン窒化膜場合には、等方性エッチングの場合において160℃の熱燐酸による洗浄でエッチングすることができる。
【0113】
以上、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。