(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の振とう装置10の構成を表わす図である。
【0019】
図1を参照して、振とう装置10は、振とうケース1と、電磁弁2と、流量調整バルブ7と、振とう機構6と、制御部40とを備える。
【0020】
振とうケース1内に振とう機構6が収納される。振とうケース1は、吸入口4と、排出口5と、開閉扉8とを有する。振とうケース1は、吸入口4、排出口5、および開閉扉8以外の箇所では、壁となるガラス板で構成されている。
【0021】
吸入口4は、配管を通じて流量調整バルブ7と接続する。吸入口4から窒素が振とうケース1に流入する。
【0022】
排出口5は、細いチューブ31と接続する。排出口5から窒素が振とうケース1からチューブ31へ排出される。チューブ31は、細い円柱状の構成を有するため、振とうケース1のパージの終了後でも、振とうケース1の外部の気体が排出口5を介して振とうケース1へ流入することがないようにすることができる。
【0023】
振とう機構6の台座の上にマイクロプレート30が載置可能である。振とう機構6が、制御部40による制御によって、振とうすることによって、マイクロプレート30が振とうし、マイクロプレート30のウェル内の試料が撹拌する。振とう機構6による振とうの回転数は、制御部40によって調整することができる。
【0024】
電磁弁2は、窒素供給源20と配管を通じて接続される。窒素供給源20は、窒素ジェネレータ、窒素ボンベ、または窒素集中配管などで構成される。窒素供給源20は、乾燥気体として窒素を供給する。電磁弁2が開いたときに、窒素供給源20から放出される窒素が振とうケース1に送られる。
【0025】
流量調整バルブ7は、配管を通じて電磁弁2と接続される。流量調整バルブ7は、たとえば、ニードルバルブ付フローメータで構成される。流量調整バルブ7は、窒素供給源20から振とうケース1へ送られる窒素の流量速度を調整する。これによって、振とうケース1内の湿度が目標の湿度へ到達する時間を調整することができる。
【0026】
制御部40は、電磁弁2、流量調整バルブ7、振とう機構6、および開閉扉8を制御する。
【0027】
図2は、マイクロプレート30を表わす図である。
マイクロプレート30は、96個のウェルを有する。各ウェルに試料が注入される。たとえば、早期大腸がんのスクリーニング解析時には、試料は、細胞または代謝物と吸湿性の高いピリジンなどを含む。
【0028】
図3は、第1の実施形態の振とう装置10の動作手順を表わすフローチャートである。
ステップS101において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を開き、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入させて、マイクロプレート30を振とう機構6に載置する。
【0029】
ステップS102において、制御部40は、流量調整バルブ7の開度をデフォルト値またはユーザが指定した値に設定することによって、窒素供給源20から振とうケース1への窒素の流量速度を調整する。振とうケース1の大きさ、および制約時間などを考慮して、流量速度を調整することとしてもよい。
【0030】
ステップS103において、制御部40は、電磁弁2を開く。これによって、振とうケース1内の気体が窒素に置き換えられる。その結果、振とうケース1を低湿度に保つことができる。
【0031】
ステップS104において、制御部40は、振とう機構6の振とうを開始させる。
ステップS105において、制御部40は、振とう開始からの経過時間が閾値THA以上かどうかを判定する。振とう開始からの経過時間が閾値THA以上のときには、処理がステップS106に進む。振とう開始からの経過時間が閾値THA未満のときには、処理がステップS105に戻る。
【0032】
ステップS106において、制御部40は、振とう機構6の振とうを終了させる。
以上のように、本実施の形態によれば、窒素で振とうケース1をパージした後、振とうケース1内のマイクロプレート30を振とうするので、高湿度の環境で試料が撹拌されるのを防止することができる。
【0033】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入する前に、振とうケース1を窒素でプレパージする。
【0034】
図4は、第2の実施形態の振とう装置10の動作手順を表わすフローチャートである。
ステップS201において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を閉じる。
【0035】
ステップS202において、制御部40は、流量調整バルブ7の開度をデフォルト値またはユーザが指定した値に設定することによって、窒素供給源20から振とうケース1への窒素の流量速度を調整する。
【0036】
ステップS203において、制御部40は、電磁弁2を開く。
ステップS204において、制御部40は、電磁弁2を開いてからの経過時間が閾値THB以上かどうかを判定する。電磁弁2を開いてからの経過時間が閾値THB以上のときには、処理がステップS205に進む。電磁弁2を開いてからの経過時間が閾値THB未満のときには、処理がステップS204に戻る。
【0037】
ステップS205において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を開き、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入させて、マイクロプレート30を振とう機構6に載置する。
【0038】
ステップS206において、制御部40は、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入してからの経過時間が閾値THC以上かどうかを判定する。マイクロプレート30を振とうケース1に搬入してからの経過時間が閾値THC以上のときには、処理がステップS207に進む。マイクロプレート30を振とうケース1に搬入してからの経過時間が閾値THC未満のときには、処理がステップS206に戻る。
【0039】
ステップS207において、制御部40は、振とう機構6の振とうを開始させる。
ステップS208において、制御部40は、振とう開始からの経過時間が閾値THA以上かどうかを判定する。振とう開始からの経過時間が閾値THA以上のときには、処理がステップS209に進む。振とう開始からの経過時間が閾値THA未満のときには、処理がステップS208に戻る。
【0040】
ステップS209において、制御部40は、振とう機構6の振とうを終了させる。
以上のように、本実施の形態によれば、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入する前に、振とうケース1を窒素で定められた時間(THC)だけプレパージするので、試料を振とうするときだけでなく、試料を振とうする前においても、試料を高湿度の環境にさらすのを防止することができる。
【0041】
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、振とうケース1内に湿度センサを設けることによって、振とうケース1内の湿度を測定する。
【0042】
図5は、第3の実施形態の振とう装置110の構成を表わす図である。
第3の実施の形態の振とう装置110が、
図1の第1の実施の形態の振とう装置10と相違する点は、第3の実施の形態の振とう装置110が、湿度センサ3を備える点である。
【0043】
湿度センサ3は、振とうケース1内に収納される。湿度センサ3は、振とうケース1内の湿度を測定して、測定結果を制御部40へ出力する。
【0044】
図6は、第3の実施形態の振とう装置110の動作手順を表わすフローチャートである。
【0045】
ステップS301において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を閉じる。
ステップS302において、制御部40は、流量調整バルブ7の開度をデフォルト値またはユーザが指定した値に設定することによって、窒素供給源20から振とうケース1への窒素の流量速度を調整する。
【0046】
ステップS303において、制御部40は、電磁弁2を開く。
ステップS304において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度のログの記録を開始する。湿度のログを記録することによって、分析結果に不明瞭な点があったときに、振とう工程での湿度が適切であったかどうかを調べることができる。
【0047】
ステップS305において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度が閾値THD以下であるかどうかを判定する。振とうケース1内の湿度度が閾値THD以下の場合に、処理がステップS306に進む。振とうケース1内の湿度度が閾値THDを超える場合に、処理がステップS305に戻る。
【0048】
ステップS306において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を開き、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入させて、マイクロプレート30を振とう機構6に載置する。
【0049】
ステップS307において、制御部40は、振とう機構6の振とうを開始させる。
ステップS308において、制御部40は、振とう開始からの経過時間が閾値THA以上かどうかを判定する。振とう開始からの経過時間が閾値THA以上のときには、処理がステップS309に進む。振とう開始からの経過時間が閾値THA未満のときには、処理がステップS308に戻る。
【0050】
ステップS309において、制御部40は、振とう機構6の振とうを終了させる。
以上のように、本実施の形態によれば、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入する前に、振とうケース1の湿度が定められた値(閾値THD)になるまで、振とうケース1を窒素でプレパージするので、試料を振とうするときだけでなく、試料を振とうする前においても、試料を高湿度の環境にさらすのを防止することができる。
【0051】
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入するために振とうケース1の開閉扉8を開くことによって増加した振とうケース1内の湿度を減少させる。
【0052】
図7は、第4の実施形態の振とう装置110の動作手順を表わすフローチャートである。
【0053】
ステップS401において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を閉じる。
ステップS402において、制御部40は、流量調整バルブ7の開度をデフォルト値またはユーザが指定した値に設定することによって、窒素供給源20から振とうケース1への窒素の流量速度を調整する。
【0054】
ステップS403において、制御部40は、電磁弁2を開く。
ステップS404において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度のログを記録を開始する。
【0055】
ステップS405において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度が閾値THD以下であるかどうかを判定する。振とうケース1内の湿度度が閾値THD以下の場合に、処理がステップS406に進む。振とうケース1内の湿度度が閾値THDを超える場合に、処理がステップS405に戻る。
【0056】
ステップS406において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を開き、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入させて、マイクロプレート30を振とう機構6に載置する。
【0057】
ステップS407において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度が閾値THE以下であるかどうかを判定する。振とうケース1内の湿度度が閾値THE以下の場合に、処理がステップS408に進む。振とうケース1内の湿度度が閾値THEを超える場合に、処理がステップS407に戻る。閾値THEは、プレパージにおけるステップS405の閾値THDと同一であってもよい。
【0058】
ステップS408において、制御部40は、振とう機構6の振とうを開始させる。
ステップS409において、制御部40は、振とう開始からの経過時間が閾値THA以上かどうかを判定する。振とう開始からの経過時間が閾値THA以上のときには、処理がステップS410に進む。振とう開始からの経過時間が閾値THA未満のときには、処理がステップS409に戻る。
【0059】
ステップS410において、制御部40は、振とう機構6の振とうを終了させる。
以上のように、ステップS406までに、振とうケース1が窒素でプレパージされているが、ステップS406において、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入するために、振とうケース1の開閉扉8を開くことによって、振とうケース1内の湿度が増加する。本実施の形態では、ステップS407によって、振とうケース1を振とうする前に、振とうケース1内の増加した湿度を減少させることができる。
【0060】
[第5の実施形態]
図8は、第5の実施形態の振とう装置110の動作手順を表わすフローチャートである。
【0061】
ステップS501において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を閉じる。
ステップS502において、制御部40は、流量調整バルブ7の開度をデフォルト値またはユーザが指定した値に設定することによって、窒素供給源20から振とうケース1への窒素の流量速度を調整する。
【0062】
ステップS503において、制御部40は、電磁弁2を開く。
ステップS504において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度のログを記録を開始する。
【0063】
ステップS505において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度が閾値THD以下であるかどうかを判定する。振とうケース1内の湿度度が閾値THD以下の場合に、処理がステップS506に進む。振とうケース1内の湿度度が閾値THDを超える場合に、処理がステップS505に戻る。
【0064】
ステップS506において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を開き、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入させて、マイクロプレート30を振とう機構6に載置する。
【0065】
ステップS507において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度が閾値THE以下であるかどうかを判定する。振とうケース1内の湿度度が閾値THE以下の場合に、処理がステップS508に進む。振とうケース1内の湿度度が閾値THEを超える場合に、処理がステップS507に戻る。
【0066】
ステップS508において、制御部40は、電磁弁2を閉じる。これによって、窒素供給源20からの窒素の放出が停止される。排出口5が細い円柱状のチューブ31に接続されているので、パージを停止しても、振とうケース1の外部の気体が振とうケース1に流入することがない。窒素供給源20の窒素の放出を停止することによって、窒素の消費を低減することができる。
【0067】
ステップS509において、制御部40は、振とう機構6の振とうを開始させる。
ステップS510において、制御部40は、振とう開始からの経過時間が閾値THA以上かどうかを判定する。振とう開始からの経過時間が閾値THA以上のときには、処理がステップS511に進む。振とう開始からの経過時間が閾値THA未満のときには、処理がステップS510に戻る。
【0068】
ステップS511において、制御部40は、振とう機構6の振とうを終了させる。
図9は、振とうケース1内の湿度の時間変化を表わす図である。
【0069】
図9において、プレパージによって、振とうケース1内の湿度が56%から30%まで減少する。その後、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入するために、振とうケース1の開閉扉8を開くことによって、振とうケース1内の湿度が40%弱まで増加する。マイクロプレート30の振とうケース1の搬入後、パージが続行される(本パージと呼ぶ)ことによって、プレパージよりも短時間で振とうケース1内の湿度を30%まで減少させることができる。その後、電磁弁2が閉じて、振とう動作が開始される。
【0070】
[第6の実施形態]
図10は、第6の実施形態の振とう装置110を用いた分析方法の手順を表わすフローチャートである。
【0071】
ステップS601において、遠心機によって、試料が注入されたウェルを有するマイクロプレート30を真空環境下で遠心する。これによって、マイクロプレート30のウェル内の試料は、粉末状になる。
【0072】
ステップS602において、遠心工程(遠心するステップ)と平行して、窒素によって、振とうケース1をプレパージする。プレパージの処理は、
図8のステップS501〜S504の処理と同様である。
【0073】
ステップS603において、遠心するステップが終了したときに、処理がステップS604に進み、遠心するステップが終了していないときには、処理がステップS603に戻る。
【0074】
ステップS604において、遠心の後、マイクロプレート30のウェルに吸湿性の高い薬品であるピリジンを加える。
【0075】
ステップS605において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度が閾値THD以下であるかどうかを判定する。振とうケース1内の湿度度が閾値THD以下の場合に、処理がステップS606に進む。振とうケース1内の湿度度が閾値THDを超える場合に、処理がステップS605に戻る。
【0076】
ステップS606において、制御部40は、振とうケース1内の開閉扉8を開き、マイクロプレート30を振とうケース1に搬入させて、マイクロプレート30を振とう機構6に載置する。
【0077】
ステップS607において、制御部40は、湿度センサ3によって検出された振とうケース1内の湿度が閾値THE以下であるかどうかを判定する。振とうケース1内の湿度度が閾値THE以下の場合に、処理がステップS608に進む。振とうケース1内の湿度度が閾値THEを超える場合に、処理がステップS607に戻る。
【0078】
ステップS608において、制御部40は、電磁弁2を閉じる。
ステップS609において、制御部40は、振とう機構6の振とうを開始させる。
【0079】
ステップS610において、制御部40は、振とう開始からの経過時間が閾値THA以上かどうかを判定する。振とう開始からの経過時間が閾値THA以上のときには、処理がステップS611に進む。振とう開始からの経過時間が閾値THA未満のときには、処理がステップS610に戻る。
【0080】
ステップS611において、制御部40は、振とう機構6の振とうを終了させる。
以上のように、本実施の形態によれば、マイクロプレート30の遠心ステップと平行して、振とうケース1のプレパージを実行するので、遠心ステップを終了した後、即座にマイクロプレート30を振とうさせることができる。
【0081】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、たとえば、以下のような変形例も含む。
【0082】
(1)乾燥気体
上記の実施形態では、窒素によって振とうケース1をパージするものとしたが、これに限定されるものではない。振とうケース1をパージするのは、他の乾燥気体であってもよい。
【0083】
(2)振とう
振とう機構6は、一定の回転数で振とうするものとしてよいし、回転数が変化するものとしてもよい。たとえば、振とう機構は、振とう開始から第1の時間では、高速で回転し、その後の第2の時間では、低速で回転するものとしてもよい。
【0084】
(3)制御部
図11は、制御部40のハードウエア構成の例を表わす図である。制御部40のハードウエアは、プロセッサ1100と、プロセッサ1100とバス1300で接続されたメモリ1200とを備える。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ
1100がメモリ1200に記憶されたプログラムを実行することにより、実現される。また、複数のプロセッサおよび複数のメモリが連携して上記構成要素の機能を実行するものとしてもよい。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。