特許第6962480号(P6962480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6962480-磁性ペースト 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962480
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】磁性ペースト
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/37 20060101AFI20211025BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20211025BHJP
   H01F 1/28 20060101ALI20211025BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20211025BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20211025BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01F1/37
   H01F1/26
   H01F1/28
   H01F17/04 F
   H01F41/02 D
   H05K1/16 B
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-551189(P2020-551189)
(86)(22)【出願日】2019年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2019039777
(87)【国際公開番号】WO2020075745
(87)【国際公開日】20200416
【審査請求日】2021年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2018-191824(P2018-191824)
(32)【優先日】2018年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 一郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 達也
(72)【発明者】
【氏名】依田 正応
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝幸
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−164959(JP,A)
【文献】 特開2009−263645(JP,A)
【文献】 特開2018−178254(JP,A)
【文献】 特開平04−348007(JP,A)
【文献】 特開2004−165217(JP,A)
【文献】 特開平10−229016(JP,A)
【文献】 特開2013−026356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/37
H01F 1/26
H01F 1/28
H01F 17/04
H01F 41/02
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)磁性粉体、及び(B)バインダー樹脂を含み、
(A)成分の粒径分布における10%粒径(D10)が0.2μm以上2.0μm以下、50%粒径(D50)が2.0μm以上4.3μm以下、及び90%粒径(D90)が4.3μm以上8.5μm以下であり、(D90−D10)/D50が、1.5以上2.5以下であり、D90−D10が、4.3以上8.3以下である、磁性ペースト。
【請求項2】
(B)成分が、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の磁性ペースト。
【請求項3】
(A)成分が、軟磁性粉体である、請求項1又は2に記載の磁性ペースト。
【請求項4】
(A)成分が、酸化鉄粉である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項5】
酸化鉄粉が、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトである、請求項4に記載の磁性ペースト。
【請求項6】
(A)成分が、Fe−Mn系フェライトである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項7】
Fe−Mn系フェライト中のMnの含有量は、3.0質量%以上15質量%以下である、請求項6に記載の磁性ペースト。
【請求項8】
(A)成分の含有量が、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項9】
溶剤の含有量が、磁性ペーストの全質量に対して1.0質量%未満である、又は溶剤を含有しない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項10】
インダクタ素子形成用である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の磁性ペーストの硬化物である磁性層を含む、インダクタ素子。
【請求項12】
請求項11に記載のインダクタ素子を含む、回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ペースト、及び磁性ペーストを用いて得られるインダクタ素子、回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性材料は、モーター、インダクタ素子等様々な用途に使用されており、このような用途に対応するため、多くの磁性材料が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の磁性粒子と樹脂とを含む、耐熱性に優れるボンド磁石が提案されており、このボンド磁石はモーター等の部品に好適に使用できることが記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、特定の合金粒子とバインダーとを含む磁性体ペーストを、ベースフィルム上に塗工、乾燥させることでインダクタを作製することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−70102号公報
【特許文献2】特開2012−164959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、インダクタ素子等の機器の小型化、薄型化の要求が高まってきており、より微細なパターンを有する磁性層を形成することが切望されている。このような磁性層を形成する方法として、ディスペンサを用いて磁性ペーストにより磁性層を形成する方法がある。
【0007】
一方、磁性粉体は比重が大きいため、保存等する際に、時間経過に伴い磁性ペースト中の磁性粉体が沈降して偏在化する場合がある。一般に、粒径が大きい磁性粉体は沈降し易い傾向にあり、磁性粉体の含有量の偏在化や、粒径の偏在化が生じ得る。また磁性ペーストを調製する際や磁性ペーストを使用する前に、真空脱泡や遠心分離等の脱泡操作を行う場合があるが、その際も、磁性ペースト中の磁性粉体が偏在化する場合がある。特に遠心分離を伴う脱泡は、磁性粉体の偏在化が生じやすい。
このような磁性粉体の偏在化が生じた場合、例えば、形成された磁性層において、磁性粉体の含有量が少なくなった磁性ペースト部分では、所望の比透磁率が得られない場合や、粘度やチキソトロピーが低下し磁性層の形成が困難になる場合がある。また、ディスペンサを用いて磁性層を形成する場合、ディスペンサからの磁性ペーストの吐出性が低下することがある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、磁性粉体の偏在化が抑制された磁性ペースト、及び当該磁性ペーストを使用したインダクタ素子、回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究をした結果、所定の粒径分布を有する磁性粉体を磁性ペーストに含有させることにより磁性粉体の偏在化が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)磁性粉体、及び(B)バインダー樹脂を含み、
(A)成分の粒径分布における10%粒径(D10)が0.2μm以上2.0μm以下、50%粒径(D50)が2.0μm以上4.3μm以下、及び90%粒径(D90)が4.3μm以上8.5μm以下である、磁性ペースト。
[2] (B)成分が、エポキシ樹脂を含む、[1]に記載の磁性ペースト。
[3] (A)成分が、軟磁性粉体である、[1]又は[2]に記載の磁性ペースト。
[4] (A)成分が、酸化鉄粉である、[1]〜[3]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[5] 酸化鉄粉が、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトである、[4]に記載の磁性ペースト。
[6] (A)成分が、Fe−Mn系フェライトである、[1]〜[5]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[7] Fe−Mn系フェライト中のMnの含有量は、3.0質量%以上15質量%以下である、[6]に記載の磁性ペースト。
[8] (A)成分の含有量が、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上である、[1]〜[7]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[9] (D90−D10)/D50が、2.5以下である、[1]〜[8]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[10] インダクタ素子形成用である、[1]〜[9]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[11] [1]〜[10]のいずれかに記載の磁性ペーストの硬化物である磁性層を含む、インダクタ素子。
[12] [11]に記載のインダクタ素子を含む、回路基板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁性粉体の偏在化が抑制された磁性ペースト、及び当該磁性ペーストを使用したインダクタ素子、回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るインダクタ素子の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の実施形態によって限定されるものではなく、各構成要素は適宜変更可能である。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置により、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
【0014】
[磁性ペースト]
本発明の磁性ペーストは、(A)磁性粉体、及び(B)バインダー樹脂を含み、(A)成分の粒径分布における10%粒径(D10)が0.2μm以上2.0μm以下、50%粒径(D50)が2.0μm以上4.3μm以下、及び90%粒径(D90)が4.3μm以上8.5μm以下である。
【0015】
本発明では、所定の粒径分布を有する磁性粉体を含有させることにより、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化が抑制され、その結果ディスペンサからの吐出性等にも優れる磁性ペーストを得ることができる。さらには、この磁性ペーストの硬化物は、周波数が10〜200MHzで比透磁率の向上が可能である。
【0016】
磁性ペーストは、必要に応じて、さらに(C)硬化促進剤、(D)分散剤、(E)その他の添加剤を含み得る。以下、本発明の磁性ペーストに含まれる各成分について詳細に説明する。
【0017】
<(A)磁性粉体>
磁性ペーストは、(A)磁性粉体を含有する。(A)磁性粉体は、この粒径分布における10%粒径(D10)が0.2μm以上2.0μm以下、50%粒径(D50)が2.0μm以上4.3μm以下、及び90%粒径(D90)が4.3μm以上8.5μm以下である。このような粒径分布を有する(A)磁性粉体を磁性ペーストに含有させることで、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制することが可能となる。また、このような粒径分布を有する(A)磁性粉体を磁性ペーストに含有させることで、磁性ペーストの硬化物における比透磁率を向上させることが可能になる。なお上記粒径分布は磁性ペースト中に含まれる(A)磁性粉体全体の粒径分布を表す。
【0018】
(A)磁性粉体の粒径分布は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、(A)磁性粉体の粒径分布を体積基準で作成し、10%粒径(D10)、50%粒径(D50)、及び90%粒径(D90)を測定することができる。測定サンプルは、(A)磁性粉体を超音波により純水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA−960」、島津製作所社製「SALD−2200」等を使用することができる。
【0019】
粒径分布における10%粒径(D10)とは、上記の方法により粒径分布を測定した結果、粒径分布曲線において、粒径の小さい側から累積した体積の積算量が10%となるときの粒径をいう。50%粒径(D50)とは、上記の方法により粒径分布を測定した結果、粒径分布曲線において、粒径の小さい側から累積した体積の積算量が50%となるときの粒径をいう。また、90%粒径(D90)とは、上記の方法により粒径分布を測定した結果、粒径分布曲線において、粒径の小さい側から累積した体積の積算量が90%となるときの粒径をいう。ここで(A)磁性粉体の平均粒径は、50%粒径(D50)の粒径を意味する。以下、10%粒径(D10)をD10、50%粒径(D50)をD50、及び90%粒径(D90)をD90ということがある。
【0020】
粒径分布におけるD10としては、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、0.2μm以上であり、好ましくは0.25μm以上、より好ましくは0.3μm以上である。上限は2.0μm以下であり、好ましくは2.0μm未満、より好ましくは1.95μm以下、さらに好ましくは1.9μm以下である。
【0021】
粒径分布におけるD50としては、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、2.0μm以上であり、好ましくは2.05μm以上、より好ましくは2.1μm以上である。上限は4.3μm以下であり、好ましくは4.3μm未満であり、より好ましくは4.25μm以下、さらに好ましくは4.2μm以下である。
【0022】
粒径分布におけるD90としては、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、4.3μm以上であり、好ましくは4.35μm以上、より好ましくは4.4μm以上である。上限は8.5μm以下であり、好ましくは8.45μm以下、より好ましくは8.4μm以下である。
【0023】
50−D10としては、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは1.6μm以上、さらに好ましくは1.7μm以上、1.8μm以上、1.9μm以上である。上限は、好ましくは4.1μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下である。
【0024】
90−D10としては、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、好ましくは4.3μm以上、より好ましくは4.4μm以上、さらに好ましくは4.5μm以上、4.6μm以上である。上限は、好ましくは8.3μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは6.5μm以下である。
【0025】
90/D50としては、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、好ましくは2.7以下、より好ましくは2.6以下、さらに好ましくは2.5以下である。下限は、好ましくは1以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.5以上である。
【0026】
90/D10としては、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、好ましくは14以下、より好ましくは13.5以下、さらに好ましくは13以下である。下限は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、4以上、4.5以上である。
【0027】
(D90−D10)/(2×D50−D10)としては、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。下限は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上である。
【0028】
(D90−D10)/D50としては、磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.4以下、さらに好ましくは2.3以下である。下限は、好ましくは1以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.7以上である。
【0029】
(A)磁性粉体としては、軟磁性粉体、硬磁性粉体のいずれであってもよいが、磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、軟磁性粉体であることが好ましい。
【0030】
(A)磁性粉体としては、例えば、Fe−Mn系フェライト、Mg−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Mg−Mn−Sr系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Ba−Zn系フェライト、Ba−Mg系フェライト、Ba−Ni系フェライト、Ba−Co系フェライト、Ba−Ni−Co系フェライト、Y系フェライト、酸化鉄粉(III)、四酸化三鉄などの酸化鉄粉;純鉄粉末;Fe−Si系合金粉末、Fe−Si−Al系合金粉末、Fe−Cr系合金粉末、Fe−Cr−Si系合金粉末、Fe−Ni−Cr系合金粉末、Fe−Cr−Al系合金粉末、Fe−Ni系合金粉末、Fe−Ni−Mo系合金粉末、Fe−Ni−Mo−Cu系合金粉末、Fe−Co系合金粉末、あるいはFe−Ni−Co系合金粉末などの鉄合金系金属粉;Co基アモルファスなどのアモルファス合金類等が挙げられる。
【0031】
中でも、(A)磁性粉体としては、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化を抑制する観点から、酸化鉄粉が好ましい。酸化鉄粉としては、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトであることが好ましく、Fe−Mn系フェライトであることがより好ましい。Fe−Mn系フェライトとしては、Fe−Mn系フェライト中のMnの含有量は、Fe−Mn系フェライトを100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であることが好ましい。
【0032】
(A)磁性粉体としては、市販品を用いることができ、2種以上を併用してもよい。用いられ得る市販の磁性粉体の具体例としては、パウダーテック社製「M05S」等のMシリーズ;山陽特殊製鋼社製「PST−S」;エプソンアトミックス社製「AW2−08」、「AW2−08PF20F」、「AW2−08PF10F」、「AW2−08PF3F」、「Fe−3.5Si−4.5CrPF20F」、「Fe−50NiPF20F」、「Fe−80Ni−4MoPF20F」;JFEケミカル社製「LD−M」、「LD−MH」、「KNI−106」、「KNI−106GSM」、「KNI−106GS」、「KNI−109」、「KNI−109GSM」、「KNI−109GS」;戸田工業社製「KNS−415」、「BSF−547」、「BSF−029」、「BSN−125」、「BSN−125」、「BSN−714」、「BSN−828」、「S−1281」、「S−1641」、「S−1651」、「S−1470」、「S−1511」、「S−2430」;日本重化学工業社製「JR09P2」;CIKナノテック社製「Nanotek」;キンセイマテック社製「JEMK−S」、「JEMK−H」:ALDRICH社製「Yttrium iron oxide」等が挙げられる。
【0033】
(A)磁性粉体は、球状であることが好ましい。磁性粉体の長軸の長さを短軸の長さで除した値(アスペクト比)としては、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下であり、好ましくは1を超え、より好ましくは1.05以上である。一般に、磁性粉体は球状ではない扁平な形状であるほうが、比透磁率を向上させやすいが、本発明においては、磁気損失を低くする観点、また好ましい粘度を有する磁性ペーストを得る観点から、球状の磁性粉体を用いる方が好ましい。
【0034】
(A)磁性粉体の比表面積は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.05m/g以上、より好ましくは0.1m/g以上、さらに好ましくは0.3m/g以上である。また、好ましくは15m/g以下、より好ましくは12m/g以下、さらに好ましくは10m/g以下である。(A)磁性粉体の比表面積は、BET法によって測定できる。
【0035】
(A)磁性粉体の真比重は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは3.5g/cm以上、より好ましくは4.0g/cm以上、さらに好ましくは4.5g/cm以上である。また、好ましくは6.5g/cm以下、より好ましくは6.0g/cm以下、さらに好ましくは5.5g/cm以下である。真比重は、ピクノメーター法によって測定できる。
【0036】
(A)磁性粉体の含有量(体積%)は、比透磁率を向上させ及び磁性損失を低減させる観点から、磁性ペースト中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは30体積%以上である。また、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下である。
【0037】
(A)磁性粉体の含有量(質量%)は、比透磁率を向上させ及び磁性損失を低減させる観点から、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
なお、本発明において、磁性ペースト中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0038】
(A)磁性粉体は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。(A)磁性粉体は、例えば分級を行うことで所定の粒径分布に調整することが可能である。また、上記粒径分布は磁性ペースト中に含まれる(A)成分全体の粒径分布を表す。よって、2種以上の磁性粉体を混合してなる(A)成分が所定の粒径分布を有するように調整すればよく、例えば、所定の粒径分布を有さない磁性粉体を複数混合し、(A)成分全体として所定の粒径分布を有すればよい。
【0039】
<(B)バインダー樹脂>
磁性ペーストは、(B)バインダー樹脂を含有する。(B)バインダー樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等の熱硬化性樹脂;フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。(B)バインダー樹脂としては、配線板の絶縁層を形成する際に使用される熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、中でもエポキシ樹脂が好ましい。(B)バインダー樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以下、各樹脂について説明する。
ここで、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、及び酸無水物系樹脂のように、エポキシ樹脂と反応して磁性ペーストを硬化させられる成分をまとめて「硬化剤」ということがある。
【0040】
−熱硬化性樹脂−
熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂は、例えば、グリシロール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環構造を有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、エポキシ樹脂は、芳香族構造を有することが好ましく、2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0042】
エポキシ樹脂には、温度25℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。(B)成分としてエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ樹脂を組み合わせて含んでいてもよいが、比透磁率を高くするために磁性粉体を多く含有させる場合等に、磁性ペーストの粘度が高くなりすぎるのを防ぎ、ペースト状にし易くする観点から、液状エポキシ樹脂のみを含むことが好ましい。
【0043】
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、ADEKA社製の「ED−523T」(グリシロール型エポキシ樹脂(アデカグリシロール))、「EP−3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、「EP−4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」、「HP−7200HH」、「HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(B)成分として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1〜1:4、より好ましくは1:0.3〜1:3.5、さらに好ましくは1:0.6〜1:3である。
【0046】
(B)成分としてのエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.〜5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.〜3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.〜2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.〜1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい磁性層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0047】
(B)成分としてのエポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0048】
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
【0049】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0050】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0051】
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0052】
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L−65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB9416−70BK」、「EXB−8150−65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0053】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
【0054】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN−495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」等が挙げられる。
【0055】
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ−OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ−OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA−BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P−d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F−a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
【0056】
シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL−950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0057】
カルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V−03(カルボジイミド基当量:216、V−05(カルボジイミド基当量:262)、V−07(カルボジイミド基当量:200);V−09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0058】
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C−200S」、「KAYABOND C−100」、「カヤハードA−A」、「カヤハードA−B」、「カヤハードA−S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0059】
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0060】
(B)成分としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01〜1:5の範囲が好ましく、1:0.5〜1:3がより好ましく、1:1〜1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、磁性ペースト中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、磁性ペースト中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。
【0061】
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、さらに好ましくは10万以上である。また、好ましくは100万以下、より好ましくは75万以下、さらに好ましくは50万以下である。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製「LC−9A/RID−6A」を、カラムとして昭和電工社製「Shodex K−800P/K−804L/K−804L」を、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0062】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、およびトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0063】
アクリル樹脂としては、熱膨張率および弾性率をより低下させる観点から、官能基含有アクリル樹脂が好ましく、ガラス転移温度が25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂がより好ましい。
【0064】
官能基含有アクリル樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10000〜1000000であり、より好ましくは30000〜900000である。
【0065】
官能基含有アクリル樹脂の官能基当量は、好ましくは1000〜50000であり、より好ましくは2500〜30000である。
【0066】
ガラス転移温度が25℃以下のエポキシ基含有アクリル樹脂としては、ガラス転移温度が25℃以下のエポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましく、その具体例としては、ナガセケムテックス社製「SG−80H」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:350000g/mol、エポキシ価0.07eq/kg、ガラス転移温度11℃))、ナガセケムテックス社製「SG−P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂(数平均分子量Mn:850000g/mol、エポキシ価0.21eq/kg、ガラス転移温度12℃))が挙げられる。
【0067】
ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の電化ブチラール「4000−2」、「5000−A」、「6000−C」、「6000−EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、「KS−1」などのKSシリーズ、「BL−1」などのBLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0068】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0069】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0070】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のビニル基を有するオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE−2St 1200」等が挙げられる。
【0071】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0072】
中でも、熱可塑性樹脂としては、重量平均分子量が3万以上100万以下の、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、及びアクリル樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0073】
(B)バインダー樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す磁性層を得る観点から、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0074】
また、(B)バインダー樹脂はエポキシ樹脂であることが好ましく、液状エポキシ樹脂であることがより好ましい。液状エポキシ樹脂は、(A)成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、20質量%以下である。
【0075】
<(C)硬化促進剤>
磁性ペーストは、任意の成分として、さらに(C)硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0076】
硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、磁性ペーストの粘度を低下させる観点から、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
【0078】
アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「PN−50」、「PN−23」、「MY−25」等が挙げられる。
【0079】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
【0080】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「2P4MZ」、「2PHZ−PW」、三菱ケミカル社製の「P200−H50」等が挙げられる。
【0081】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0082】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
【0083】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0084】
(C)硬化促進剤としては、本発明の所望の効果を得る観点から、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤、アミン系硬化促進剤、及びイミダゾール系硬化促進剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アミン系硬化促進剤、及びイミダゾール系硬化促進剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0085】
(C)硬化促進剤の含有量は、磁性ペーストの硬化促進を促す観点から、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0086】
<(D)分散剤>
磁性ペーストは、任意の成分として、さらに(D)分散剤を含んでいてもよい。
【0087】
(D)分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等のリン酸エステル系分散剤;ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性分散剤;オルガノシロキサン系分散剤、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性分散剤等が挙げられる。これらの中でも、アニオン性分散剤が好ましい。分散剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0088】
リン酸エステル系分散剤は、市販品を用いることができる。市販品として、例えば東邦化学工業社製「フォスファノール」シリーズの「RS−410」、「RS−610」、「RS−710」等が挙げられる。
【0089】
オルガノシロキサン系分散剤としては、市販品として、ビックケミー社製「BYK347」、「BYK348」等が挙げられる。
【0090】
ポリオキシアルキレン系分散剤としては、市販品として、日油株式会社製「マリアリム」シリーズの「AKM−0531」、「AFB−1521」、「SC−0505K」、「SC−1015F」及び「SC−0708A」、並びに「HKM−50A」等が挙げられる。
【0091】
アセチレングリコールとしては、市販品として、Air Products and Chemicals Inc.製「サーフィノール」シリーズの「82」、「104」、「440」、「465」及び「485」、並びに「オレフィンY」等が挙げられる。
【0092】
(D)分散剤の含有量は、本発明の効果を顕著に発揮させる観点から、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0093】
<(E)その他の添加剤>
磁性ペーストは、さらに必要に応じて、(E)その他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、ポットライフ向上のためのホウ酸トリエチル等の硬化遅延剤、無機充填材(但し、磁性粉体に該当するものは除く)、難燃剤、有機充填材、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0094】
上述した磁性ペースト中に含まれる溶剤の含有量は、磁性ペーストの全質量に対して、好ましくは1.0質量%未満、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。下限は、特に制限はないが0.001質量%以上、又は含有しないことである。有機溶剤の含有量を斯かる範囲内とすることにより、有機溶剤の揮発による問題(例えばボイドの発生等)を抑制することができ、また取扱い性、作業性にも優れたものとすることができる。
【0095】
<磁性ペーストの製造方法>
磁性ペーストは、例えば、配合成分を、3本ロール、回転ミキサー、高速回転ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌する方法によって製造できる。本発明の磁性ペーストは、製造後等に脱泡を行ってよい。例えば、静置による脱泡、遠心分離による脱泡、真空脱泡、撹拌脱泡、およびこれらの組合せ等による脱泡が挙げられる。
【0096】
<磁性ペーストの物性等>
本発明の磁性ペーストは、所定の粒径分布を有する磁性粉体を含有するので、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化が抑制されるという特性を示す。具体的には、例えば、磁性ペーストを遠心分離機(例えば、シンキー社製、自転公転攪拌機「あわとり錬太郎」ARE−250やARE−310等)を使用し、回転数2000rpmで5分間遠心分離し、遠心分離前の磁性ペーストと遠心分離後の容器最上層の磁性ペーストの粘度を、例えば、E型粘度計(東機産業社製「RE−80U」等)を用い、3°×R9.7コーンロータ、サンプル温度25±2℃の条件で、回転数が0.5rpmの場合及び5rpmの場合にて測定する。(0.5rpmの粘度)/(5rpmの粘度)より、チキソトロピーインデックスT.I.を算出し、遠心分離前の磁性ペーストのチキソトロピーインデックスT.I.をT.I.(α)、遠心分離後の容器最上層の磁性ペーストのチキソトロピーインデックスT.I.をT.I.(β)とし、チキソトロピーインデックスの比(T.I.(β)/T.I.(α))を算出する。その結果、T.I.(β)/T.I.(α)としては、好ましくは0.7以上1.0以下、より好ましくは0.8以上1.0以下、さらに好ましくは0.9以上1.0以下である。T.I.(β)/T.I.(α)の測定の詳細は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0097】
本発明の磁性ペーストは、所定の粒径分布を有する磁性粉体を含有するので、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化が抑制されるという特性を示す。この結果、磁性ペーストは吐出性等に優れるという特性を示す。具体的には、例えば磁性ペーストをシリンジに充填し、遠心分離機による遠心脱泡を行う。シリンジにニードルを接続し、ディスペンサにて吐出試験(10分ごとにガラスプレート上に100点を吐出、1mm×1mm、クリアランスギャップ100μm)を行うと、磁性ペーストが詰まることなくシリンジから吐出が可能である。吐出性の詳細は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0098】
磁性ペーストを熱硬化させた硬化物(例えば180℃で90分間熱硬化させた硬化物)は、通常周波数100MHzにおける比透磁率が高いという特性を示す。例えば、シート状の磁性ペーストを180℃で90分間熱硬化し、シート状の硬化物を得る。この硬化物の周波数100MHzにおける比透磁率は、好ましくは5以上、より好ましくは7以上、さらに好ましくは7.5以上である。また、上限は通常20以下等とし得る。
【0099】
[インダクタ素子]
本発明のインダクタ素子は、本発明の磁性ペーストの硬化物である磁性層を含む。ここで、インダクタ素子には、電子部品としてのインダクタ素子だけでなく、回路基板に含まれるインダクタ素子が包含される。図1は、本発明の一実施形態に係るインダクタ素子の模式的な平面図である。インダクタ素子1は、基板11と、磁性層12と、導体で形成された配線13とを備え、配線13は、磁性層12に覆われるとともに、配線13はコア部14を中心として渦巻状に形成されている。また、コア部14は、磁性層12が埋め込まれている。
【0100】
以下、インダクタ素子の製造方法を通してインダクタ素子及びその製造方法について説明する。
【0101】
インダクタ素子の製造方法は、
(1)磁性ペーストを基板上に吐出させ、該磁性ペーストを熱硬化させ、第1の磁性層を形成する工程、
(2)第1の磁性層上に配線を形成する工程、
(3)第1の磁性層、コア部及び配線上に磁性ペーストを吐出し、該磁性ペーストを熱硬化させ、第2の磁性層を形成する工程、
を含む。ここで、磁性層12は、第1及び第2の磁性層を含めたものである。
【0102】
<工程(1)>
工程(1)は、磁性ペーストを基板上に吐出させ、該磁性ペーストを熱硬化させ、第1の磁性層を形成する。工程(1)を行うにあたって、磁性ペーストを準備する工程を含んでいてもよい。磁性ペーストは、上記において説明したとおりである。
【0103】
基板は、通常、絶縁性の基板である。基板の材料としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。基板は、その厚さ内に配線等が作り込まれた内層回路基板であってもよい。
【0104】
磁性ペーストは、シリンジ、ニードル及びカートリッジ等に充填され、ディスペンサ等の吐出装置にて磁性ペーストを吐出することで基板上に塗布される。また、磁性ペーストは、全面印刷又はパターン印刷により、基板上に塗布されてもよい。塗布後に熱硬化され、第1の磁性層が得られる。
【0105】
磁性ペーストの熱硬化条件は、磁性ペーストの組成や種類によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。磁性ペーストの硬化時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは120分以下、より好ましくは100分以下、さらに好ましくは90分以下である。
【0106】
磁性ペーストを熱硬化させる前に、磁性ペーストに対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。予備加熱処理の温度は、好ましくは50℃以上、好ましくは60℃、より好ましくは70℃以上、好ましくは120℃未満、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以である。予備加熱処理の時間は、通常好ましくは5分以上、より好ましくは15分以上であり、好ましくは150分以下、より好ましくは120分以下である。
【0107】
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で形成した第1の磁性層上に配線を形成する。配線の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって第1の磁性層の表面にめっきして、渦巻状の配線パターンを有する配線を形成する。
【0108】
配線の材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ、インジウム等の単金属;金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムの群から選択される2種以上の金属の合金が挙げられる。中でも、汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金、銅ニッケル合金、銅チタン合金を用いることが好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金を用いることがより好ましく、銅を用いることがさらに好ましい。
【0109】
ここで、第1の磁性層上に配線を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。第1の磁性層の面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成し、必要に応じて、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する配線を形成できる。配線を形成後、配線のピール強度を向上させる等の目的で、必要によりアニール処理を行ってもよい。アニール処理は、例えば、基板を150〜200℃で20〜90分間加熱することにより行うことができる。
【0110】
配線を形成後、形成されためっきシード層上に、渦巻状のパターンに対応して、めっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。この場合、露出しためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望のパターンを有する配線を形成する。
【0111】
配線の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。下限は好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
【0112】
<工程(3)>
工程(3)は、第1の磁性層、コア部及び配線上に磁性ペーストを吐出し、該磁性ペーストを熱硬化させ、第2の磁性層を形成する。第2の磁性層の形成方法は、第1の磁性層と同様である。第1の磁性層を形成する磁性ペーストと、第2の磁性層を形成する磁性ペーストとは、同一でも相異なっていてもよい。
【0113】
工程(1)後、第1の磁性層上に絶縁層を形成する工程を設けてもよい。また、工程(2)後、配線上に絶縁層を形成する工程を設けてもよい。絶縁層は、プリント配線板の絶縁層と同様に形成してもよく、該プリント配線板の絶縁層と同様の材料を用いてもよい。
【0114】
[回路基板]
回路基板は、本発明のインダクタ素子を含む。回路基板は、半導体チップ等の電子部品を搭載するための配線板として用いることができ、かかる配線板を内層基板として使用した(多層)プリント配線板として用いることもできる。また、かかる配線板を個片化したチップインダクタ部品として用いることもでき、該チップインダクタ部品を表面実装したプリント配線板として用いることもできる。
【0115】
またかかる配線板を用いて、種々の態様の半導体装置を製造することができる。かかる配線板を含む半導体装置は、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラおよびテレビ等)および乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶および航空機等)等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0117】
(磁性粉体aの調製)
球状の磁性粉体として、軟磁性粒子粉末(Fe−Mn系フェライト、商品名「Mシリーズ」、球状、パウダーテック社製)を用いた。乾式分級器(日清エンジニアリング社製、ターボクラシファイアTC−15NS)を用いて、回転羽根の回転速度1850rpm、風量1.5m/minの条件で、この軟磁性粒子粉末に送風し、重量の軽い粒子を吹き飛ばし、重量の重い粒子を採取することにより、磁性粉体aを得た。
【0118】
レーザー回折式の粒径分布測定器(島津製作所社製、SALD−2200、分散媒:純水、超音波稼働、屈折率1.70−0.50i)を用いて、磁性粉体aの粒径分布を測定した。その結果、磁性粉体aの粒径分布は、D10が0.426μm、D50が2.72μm、及びD90が5.43μmであった。
【0119】
(磁性粉体b〜gの調製)
磁性粉体aを調整する際の回転羽根の回転速度及び風量を適宜変更することで磁性粉体b〜gを調製した。磁性粉体b〜gの粒径分布を実施例1と同様にして測定したところ、下記表1のとおりであった(単位はすべてμm)。
【0120】
【表1】
【0121】
<実施例1:磁性ペースト1の製造>
磁性粉体aを80質量部に対して、エポキシ樹脂(「ZX−1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、日鉄ケミカル&マテリアル社製)を15質量部、硬化促進剤(「2P4MZ」、イミダゾール系硬化促進剤、四国化成社製)を5質量部加え、高速回転ミキサーで均一に分散し磁性ペースト1を得た。
【0122】
<実施例2〜4、比較例1〜3:磁性ペースト2〜7の製造>
下記表2に示す配合割合で各成分を配合し、実施例1と同様にして高速回転ミキサーで均一に分散し、磁性ペースト2〜7を得た。
【0123】
<磁性ペーストのチキソトロピー(T.I.(β)/T.I.(α))の測定>
各磁性ペースト1〜7を25±2℃に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE−80U」、3°×R9.7コーンロータ(測定サンプル0.22ml)、回転数は0.5rpm及び5rpm)を用いて粘度を測定し、(0.5rpmの粘度)/(5rpmの粘度)より、チキソトロピーインデックスT.I.(α)を算出した。次に磁性ペースト1〜7を遠心分離機(シンキー社製、自転公転攪拌機「あわとり錬太郎」ARE−250、150ml容器、2000rpm、5分)により遠心脱泡を行った。サンプル容器最上層の樹脂ペーストを分析用サンプルとして採取し、各磁性ペーストを25±2℃に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE−80U」、3°×R9.7コーンロータ(測定サンプル0.22ml)、回転数は0.5rpm及び5rpm)を用いて粘度を測定し、(0.5rpmの粘度)/(5rpmの粘度)より、各磁性ペーストのチキソトロピーインデックスT.I.(β)を算出した。遠心分離前の磁性ペーストのチキソトロピーインデックスT.I.であるT.I.(α)、遠心分離後の容器最上層の磁性ペーストのチキソトロピーインデックスT.I.であるT.I.(β)について、T.I.(β)/T.I.(α)の値を算出した。
【0124】
遠心分離後の磁性ペーストについては、粒径の大きい磁性粉体ほど沈降する傾向となり、容器上層に相対的に粒径の小さい磁性粉体が偏在化し、粘度が上昇する傾向が見られた。またその場合、0.5rpmの粘度上昇よりも、5rpmの粘度の上昇が高い傾向となり、上層のチキソトロピーが低下する傾向が見られた。
【0125】
<吐出性の評価>
各磁性ペースト1〜7をシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、PSY−10E、プランジャーMLP−B−10E)に充填し、遠心分離機(武蔵エンジニアリング社製、AWATORN3、2000rpm、5分)による遠心脱泡を行った。シリンジにニードル(武蔵エンジニアリング社製、ゲージ22、内径0.42mm)を接続し、ディスペンサ(武蔵エンジニアリング社製、IMAGE MASTER350PC SmartSMΩX、吐出圧力200MPa・s、吐出時間0.2sec)にて吐出試験(10分ごとにガラスプレート上に100点を吐出、1mm×1mm、クリアランスギャップ100μm)を行い、以下の基準で評価した。
○:磁性ペーストが詰まることなくシリンジから吐出が可能。
×:吐出時に磁性ペーストが詰まり、シリンジから吐出することができない。
【0126】
<比透磁率の測定>
支持体として、シリコン系離型剤処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET501010」、厚さ50μm)を用意した。各磁性ペースト1〜7を上記PETフィルムの離型面上に、乾燥後のペースト層の厚みが100μmとなるよう、ドクターブレードにて均一に塗布し、樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを180℃で90分間加熱することによりペースト層を熱硬化し、支持体を剥離することによりシート状の硬化物を得た。得られた硬化物を、幅5mm、長さ18mmの試験片に切断し、評価サンプルとした。この評価サンプルを、アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies社製、「HP8362B」)を用いて、3ターンコイル法にて測定周波数を100MHzとし、室温23℃にて比透磁率(μ’)を測定した。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例1〜4より、磁性粉体とバインダー樹脂とを含有し、磁性粉体の粒径分布が所定の範囲内である磁性ペーストは、遠心分離後も、磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化が抑制されており、遠心分離前後のチキソトロピーの変化が小さくなっている。また磁性粉体の偏在化が抑制された結果、遠心分離前後のチキソトロピーの変化が小さくなったことから、シリンジからの吐出性も良好となっていることが分かる。また本発明の磁性ペーストは得られる硬化物の比透磁率も高くなることが分かる。
一方、比較例1〜3より、磁性粉体の粒径分布が所定の範囲外であると、遠心分離後の磁性ペースト中の磁性粉体の偏在化によりチキソトロピーの変化が顕著となっていることが分かる。また吐出性の評価では、チキソトロピーの増大に起因すると考えられる磁性ペーストの詰まりによってシリンジからの吐出が困難となった。さらに、得られる硬化物の比透磁率も低くなることが分かる。
【符号の説明】
【0129】
1 インダクタ素子
11 基板
12 磁性層
13 配線層
14 コア部
図1