特許第6962494号(P6962494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962494スパンボンド不織布、フィルター積層濾材、集塵機プリーツフィルター用濾材、集塵機プリーツフィルターおよび中風量パルスジェットタイプ集塵機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6962494
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布、フィルター積層濾材、集塵機プリーツフィルター用濾材、集塵機プリーツフィルターおよび中風量パルスジェットタイプ集塵機
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/147 20120101AFI20211025BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   D04H3/147
   B01D39/16 A
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2021-502639(P2021-502639)
(86)(22)【出願日】2020年12月23日
(86)【国際出願番号】JP2020048302
【審査請求日】2021年7月27日
(31)【優先権主張番号】特願2019-232127(P2019-232127)
(32)【優先日】2019年12月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池尻 祐希
(72)【発明者】
【氏名】吉田 潤
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸司
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第97/37071(WO,A1)
【文献】 特開平09−192426(JP,A)
【文献】 特開2021−098196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 − 18/04
B01D 39/00 − 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高融点成分と低融点成分とからなる熱可塑性連続フィラメントから構成され、部分的に融着されてなるスパンボンド不織布であって、
非融着の凸部と、融着されてなる凹部とを有し、
当該スパンボンド不織布のMD方向の剛軟度が20mN以上40mN以下であり、
不織布断面において、前記凸部の一表面から他表面までの厚さtと、前記凹部の一表面から他表面までの厚さtと、前記凸部の一表面から前記凹部の一表面までの距離をそれぞれt、t(t<t)とし、下記式(1)、(2)で表される関係にある、スパンボンド不織布。
0.5≦1−t/t<1.0 ・・・(1)
0.35<t/t<0.65 ・・・(2)
【請求項2】
目付CV値が5%以下である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
前記凹部の融着面積の割合が5%以上20%以下である、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
前記熱可塑性連続フィラメントの平均単繊維直径が12μm以上26μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のスパンボンド不織布にPTFE膜を貼り合わせてなる、フィルター積層濾材。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルター積層濾材を用いてなる、集塵機プリーツフィルター用濾材。
【請求項7】
請求項6に記載の集塵機プリーツフィルター用濾材を用いてなる、集塵機プリーツフィルター。
【請求項8】
請求項7に記載の集塵機プリーツフィルターを使用した中風量パルスジェットタイプ集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性と耐久性に優れかつ後加工性に優れたスパンボンド不織布、フィルター積層濾材、集塵機プリーツフィルター用濾材、集塵機プリーツフィルターおよび中風量パルスジェットタイプ集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、粉塵の発生する作業環境に対し、粉塵の除去および回収を目的とする集塵機が用いられており、中でもフィルターの交換頻度を低減できるパルスジェットタイプの集塵機が知られている。このパルスジェットタイプの集塵機ではフィルターの外側が濾過面となり、フィルターがフィルターゲージに装着されて運転される。パルスジェットタイプの集塵機は、フィルターが一定圧力に達した際にフィルター内部に圧縮空気を送る、逆洗を行うことができる機構を有しており、逆洗によってフィルターの外側表面に堆積した粉塵を払い落とし、繰り返し使用される。このパルスジェットタイプの集塵機のフィルターは、プリーツ状に折りたたまれた形状で使用されることが知られており、プリーツ形状とすることにより濾過面積を大幅に向上させ、圧力損失を低減させたり、捕集効率を高めたりすることを可能としている。また、このパルスジェットタイプの集塵機のフィルターは、高い捕集性能、耐熱性、耐薬品性、および低エネルギー洗浄性等の諸特性を向上し、高性能化するため、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と表記することがある。)からなる多孔質膜と不織布とが貼り合わされた積層濾材が使用されることが一般的である。
【0003】
このような集塵機のフィルター用の材料として使用される不織布の中でも、特にスパンボンド不織布は、短繊維不織布に対してリントフリー性に優れ、強度的性能も優れたものを得やすいため、家庭や事務所用の空調機や産業用の粉塵捕集機等のフィルターとして使用されている。
【0004】
集塵機のフィルターに使用されるスパンボンド不織布として、例えば、特許文献1や特許文献2には、熱可塑性連続フィラメントをあらかじめ一対のフラットロールで加熱融着した後に一対の彫刻が施されたエンボスロールで部分的に融着した不織布が開示されている。また、特許文献3には、高融点成分の熱可塑性連続フィラメントと低融点成分の熱可塑性連続フィラメントとを混繊させた不織布や、高融点成分と低融点成分とからなる多葉型複合繊維からなる不織布が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5422874号公報
【特許文献2】特許第5298803号公報
【特許文献3】特許第4522671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記パルスジェットタイプの集塵機で、粉体の空気輸送、粉体回収など70〜250L/分で空気処理をする粉塵捕集用フィルターでは、粉塵を捕集したフィルターから圧縮エアー等でダストを払い落とし、繰り返し使用される。このため、PTFE膜との貼り合わせ性とプリーツ加工に加えて、圧縮エアー等でのダスト払い落とし時の膜破れを防ぐための剛性が必要とされる。しかしながら、現状貼り合わせ性と剛性とを両立するものが得られていない。すなわち、貼り合わせ性を向上させるために繊維同士の融着を緩くすると不織布の剛性が弱くなり、プリーツ加工性の低下につながる。一方で不織布の剛性を向上させるために繊維同士の融着を強固にすると不織布表面の凹凸が大きくなり、貼り合わせ性の低下、逆洗い時のPTFE膜の剥離や破れにつながる、という課題があった。
【0007】
例えば、特許文献1および2に開示された技術では不織布の表面凹凸が大きくなりすぎ、PTFE膜との貼り合わせ性が劣り、特許文献3に開示された技術では混繊不織布からなり繊維同士の融着部の繊維同士の融着が少なく、剛性が劣っており、十分な剛性と貼り合わせ性とを両立することが困難であった。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記課題を鑑み、PTFE膜の貼り合わせ性、プリーツ加工性に優れ、高い剛性を有したスパンボンド不織布、フィルター積層濾材、集塵機プリーツフィルター用濾材、集塵機プリーツフィルターおよび中風量パルスジェットタイプ集塵機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、部分的に融着した熱可塑性連続フィラメントからなる不織布の断面より得られる凸部の厚みと凹部の厚みの比および凸部の表面から凹部の表面までの距離の比が特定の値の範囲とすることで、PTFE膜貼り合わせ加工、プリーツ加工に優れかつ剛性とのバランスを両立したスパンボンド不織布が得られるという知見を得た。
【0010】
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
すなわち、本発明のスパンボンド不織布は、高融点成分と低融点成分とからなる熱可塑性連続フィラメントから構成され、部分的に融着されてなるスパンボンド不織布であって、非融着の凸部と、融着されてなる凹部とを有し、当該スパンボンド不織布のMD方向の剛軟度が20mN以上40mN以下であり、不織布断面において、前記凸部の一表面から他表面までの厚さtと、前記凹部の一表面から他表面までの厚さtと、前記凸部の一表面から前記凹部の一表面までの距離をそれぞれt、t(t<t)とし、下記式(1)、(2)で表される関係にある。
0.5≦1−t/t<1.0 ・・・(1)
0.35<t/t<0.65 ・・・(2)
【0011】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、目付CV値が5%以下である。
【0012】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記凹部の融着面積の割合が5%以上20%以下である。
【0013】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記熱可塑性連続フィラメントの平均単繊維直径が12μm以上26μm以下である。
【0014】
本発明のスパンボンド不織布は、PTFE膜を貼り合わせることによってフィルター積層濾材として使用される。
【0015】
本発明のフィルター積層濾材は集塵機プリーツフィルター用濾材に使用される。
【0016】
本発明の集塵機プリーツフィルター用濾材は集塵機プリーツフィルターに使用される。
【0017】
本発明の集塵機プリーツフィルターは中風量パルスジェットタイプ集塵機に使用される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、PTFE膜の貼り合わせ性、プリーツ加工性に優れ、かつ高い剛性を有するスパンボンド不織布が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施の形態にかかるスパンボンド不織布の断面写真である。
図2図2は、本発明の集塵機プリーツフィルター用濾材の一例を示す概要斜視図である。
図3図3は、本発明の実施例にかかる捕集性能試験を実施する試験システムの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0021】
本発明のスパンボンド不織布は、熱可塑性連続フィラメントからなる不織布である。該熱可塑性連続フィラメントは、高融点成分と低融点成分とからなる。図1は、本発明の一実施の形態にかかるスパンボンド不織布の断面写真である。なお、図1に示すスパンボンド不織布は、使用時、上から下に向かって通気する。スパンボンド不織布は、部分的に融着されたものであって、前記不織布のMD方向の剛軟度が20mN以上40mN以下である。スパンボンド不織布は、非融着の凸部11(非融着部)と、融着されてなる凹部12(融着部)とを有し、不織布断面において、凸部の一表面から他表面までの厚み(t)と、凹部の一表面から他表面までの厚み(t)と、凸部の一表面から凹部の一表面までの距離をそれぞれ(t)、(t)(t<t)とし、下記式の関係にあるスパンボンド不織布である。
0.5≦1−t/t<1.0 ・・・(1)
0.35<t/t<0.65 ・・・(2)
ここで、本発明において、MD方向とはスパンボンド不織布製造時のシート搬送方向、すなわち不織布ロールにおける巻き取り方向を指すものであり、後述するCD方向はシート搬送方向、すなわち不織布ロールにおける巻き取り方向に対して垂直に交差する方向を指すものである。なお、スパンボンド不織布が切断された場合などでロール状態にない場合は、以下の手順によってMD方向、CD方向を決定することとする。
(a) スパンボンド不織布の面内において、任意の1方向を定め、その方向に沿って、長さ38.1mm、幅25.4mmの試験片を採取する。
(b) 採取した方向から30度、60度、90度回転させた方向においても、同様に長さ38.1mm、幅25.4mmの試験片を採取する。
(c) 各方向の試験片について後述するスパンボンド不織布の剛軟度の測定方法に基づいて、各試験片の剛軟度を測定する。
(d) 測定により得られた値が最も高い方向をそのスパンボンド不織布のMD方向とし、これに直交する方向をCD方向とする。
【0022】
また、本発明のスパンボンド不織布は、フィルター、例えば集塵機プリーツフィルター用濾材に使用される。図2は、本発明の集塵機プリーツフィルター用濾材の一例を示す概要斜視図である。図2に示す集塵機プリーツフィルター用濾材21は、スパンボンド不織布を折り返してなる山部22および谷部23を有する。集塵機プリーツフィルター用濾材などからMD方向、CD方向を決定するときにおいて、図2に例示するような集塵機プリーツフィルター用濾材の場合には、山部22の稜線と平行な方向(破線矢印25)がCD方向、CD方向と直交する方向(破線矢印24)がMD方向であるとする。
【0023】
(熱可塑性連続フィラメント)
本発明のスパンボンド不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの原料となる熱可塑性樹脂としては、特に、ポリエステルが好ましく用いられる。ポリエステルは、酸成分とアルコール成分とをモノマーとする高分子重合体である。酸成分としては、フタル酸(オルト体)、イソフタル酸およびテレフタル酸等の芳香族カルボン酸、アジピン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を用いることができる。また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびポリエチレングリコール等を用いることができる。
【0024】
また、ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸およびポリブチレンサクシネート等が挙げられる。後述する高融点重合体として用いられるポリエステルとしては、融点が高く耐熱性に優れ、かつ剛性にも優れたPETが最も好ましく用いられる。
【0025】
これらのポリエステル原料には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤、艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、金属酸化物、脂肪族ビスアミドおよび/または脂肪族モノアミド、ならびに親水剤等の添加材を添加することができる。中でも、酸化チタン等の金属酸化物は、繊維の表面摩擦を低減し繊維同士の融着を防ぐことにより紡糸性を向上し、また不織布の熱ロールによる融着成形の際、熱伝導性を増すことにより不織布の融着性を向上させる効果がある。また、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドは、熱ロールと不織布ウェブとの間の離型性を高め、搬送性を向上させる効果がある。
【0026】
次に、本発明のスパンボンド不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントは、高融点成分と低融点成分とからなる。熱可塑性連続フィラメントは、高融点成分であるポリエステル系高融点重合体の周りに、そのポリエステル系高融点重合体の融点に対して、10℃以上140℃以下低い融点を有する低融点成分であるポリエステル系低融点重合体を配した複合型フィラメントである態様が好ましい。このようにすることで、融着によりスパンボンド不織布を形成した際、スパンボンド不織布を構成する複合型ポリエステル繊維(フィラメント)同士が強固に融着するため、スパンボンド不織布は機械強度に優れ、高風量下での粉塵処理にも十分耐えることができる。
【0027】
なお、本発明において、熱可塑性樹脂の融点は、示差走査型熱量計(例えば、株式会社パーキンエルマージャパン製「DSC−2」型)を用い、昇温速度20℃/分、測定温度範囲30℃から300℃の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を当該熱可塑性樹脂の融点とする。また、示差走査型熱量計において融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が溶融した温度を融点とする。
【0028】
熱可塑性樹脂がポリエステルの場合、対となるポリエステル系高融点重合体とポリエステル系低融点重合体との組み合わせ(以下、ポリエステル系高融点重合体/ポリエステル系低融点重合体の順に記載することがある)としては、例えば、PET/PBT、PET/PTT、PET/ポリ乳酸、およびPET/共重合PET等の組み合わせを挙げることができ、これらの中でも、紡糸性に優れることからPET/共重合PETの組み合わせが好ましく用いられる。また、共重合PETの共重合成分としては、特に紡糸性に優れることから、イソフタル酸共重合PETが好ましく用いられる。
【0029】
複合型フィラメントの複合形態については、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型および海島型等が挙げられ、なかでも、フィラメント同士を均一かつ強固に融着させることができることから同心芯鞘型のものが好ましい。さらにその複合型フィラメントの断面形状としては、円形断面、扁平断面、多角形断面、多葉断面および中空断面等の形状が挙げられる。なかでも、フィラメントの断面形状としては円形断面の形状のものを用いることが好ましい態様である。
【0030】
ところで、前記の複合型フィラメントの形態には、例えば、ポリエステル系高融点重合体からなる繊維とポリエステル系低融点重合体からなる繊維とを混繊させる方法もあるが、混繊させる方法の場合、均一な融着が難しく、例えば、ポリエステル系高融点重合体からなる繊維が密集しているところでは融着が弱くなり、機械的強度や剛性が劣り、スパンボンド不織布として適さないものとなる。一方、ポリエステル系高融点重合体からなる繊維に対し、低融点重合体を浸漬やスプレー等で付与する方法もあるが、いずれも表層や厚さ方向で均一な付与が難しく、機械的強度や剛性が劣り、スパンボンド不織布として好ましくないものとなる。
【0031】
本発明におけるポリエステル系低融点重合体の融点は、ポリエステル系高融点重合体の融点に対し、10℃以上140℃以下低いことが好ましい。10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上低くすることで、スパンボンド不織布において適度な融着性を得ることができる。一方、ポリエステル系低融点重合体の融点を、ポリエステル系高融点重合体の融点より140℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下低くすることで、スパンボンド不織布の耐熱性の低下を抑制することができる。
【0032】
なお、ポリエステル系高融点重合体の融点は、200℃以上320℃以下の範囲であることが好ましい。ポリエステル系高融点重合体の融点を好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上とすることにより、耐熱性に優れるフィルターを得ることができる。一方、ポリエステル系高融点重合体の融点を好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下とすることにより、不織布製造時に溶融するための熱エネルギーを多大に消費し生産性が低下することを抑制することができる。
【0033】
また、ポリエステル系低融点重合体の融点は、160℃以上250℃以下の範囲であることが好ましい。ポリエステル系低融点重合体の融点を好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上とすることにより、プリーツ加工時の熱セット等、プリーツフィルター製造時に熱が加わる工程を通過しても形状保持性に優れる。一方、ポリエステル系低融点重合体の融点を好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下とすることにより、不織布製造時の融着性に優れ、機械的強度に優れるフィルターを得ることができる。
【0034】
また、ポリエステル系高融点重合体とポリエステル系低融点重合体との含有比率は、質量比で90:10〜60:40の範囲であることが好ましく、85:15〜70:30の範囲がより好ましい態様である。ポリエステル系高融点重合体を60質量%以上90質量%以下とすることにより、スパンボンド不織布の剛性と耐熱性を優れたものとすることができる。一方、低融点ポリエステルを10質量%以上40質量%以下とすることにより、融着によりスパンボンド不織布を形成し使用した際、スパンボンド不織布を構成する複合型ポリエステル繊維(フィラメント)同士を強固に融着でき、機械強度に優れ、中風量下での粉塵捕集に十分耐えることができる。
【0035】
複合型ポリエステル繊維の複合形態についても、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型および海島型等が挙げられ、なかでも、フィラメント同士を均一かつ強固に融着させることができることから同心芯鞘型のものが好ましい。さらにそのフィラメント(単繊維)の断面形状としては、円形断面、扁平断面、多角形断面、多葉断面および中空断面等の形状が挙げられる。なかでも、フィラメント(単繊維)の断面形状としては円形断面の形状のものを用いることが好ましい態様である。
【0036】
本発明のスパンボンド不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントの平均単繊維直径は、12μm以上26μm以下の範囲であることが好ましい。熱可塑性連続フィラメントの平均単繊維直径を12μm以上、好ましくは13μm以上、より好ましくは14μm以上とすることで、スパンボンド不織布の通気性を向上させ、圧力損失を低減させることができる。また、熱可塑性連続フィラメントを形成する際に糸切れ回数を低下させ、生産時の安定性を向上させることもできる。一方、熱可塑性連続フィラメントの平均単繊維直径が26μm以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは24μm以下とすることで、スパンボンド不織布の均一性を向上させ、不織布表面を緻密なものとすることができ、ダストを表層で濾過しやすくするなど、捕集性能を向上させることができる。
【0037】
なお、本発明において、スパンボンド不織布の平均単繊維直径(μm)は、以下の方法によって求められる値を採用することとする。
(i)スパンボンド不織布からランダムに小片サンプル10個を採取する。
(ii)採取した小片サンプルの表面を走査型電子顕微鏡等で500〜2000倍の範囲で繊維の太さを計測することが可能な写真を撮影する。
(iii)各小片サンプルから撮影した写真から10本ずつ、計100本の繊維を任意に選び出して、その太さを測定する。繊維は断面が円形と仮定し、太さを繊維直径とする。
(iv)それらの算術平均値の小数点以下第一位を四捨五入して算出した値を平均単繊維直径とした。
【0038】
(スパンボンド不織布の製造方法)
次に、本発明のスパンボンド不織布、および、その製造方法について説明する。本発明のスパンボンド不織布は、下記(a)〜(c)の工程を順次施すことによって製造される。
(a)熱可塑性重合体を紡糸口金から溶融押出した後、これをエアサッカーにより牽引、延伸して熱可塑性連続フィラメントを得る工程。
(b)得られたフィラメントを開繊し、移動するネットコンベアー上に堆積させ繊維ウェブを形成する工程。
(c)得られた繊維ウェブに部分的融着を施す工程。
以下に上記の各工程について、さらに詳細を説明する。
【0039】
(a)熱可塑性連続フィラメント形成工程
まず、熱可塑性重合体を紡糸口金から溶融押出する。特に、熱可塑性連続フィラメントとして、ポリエステル系高融点重合体の周りに当該ポリエステル系高融点重合体の融点よりも低い融点を有するポリエステル系低融点重合体を配した複合型フィラメントを用いる場合には、ポリエステル系高融点重合体と、ポリエステル系低融点重合体を、それぞれ融点以上、(融点+70℃)以下で溶融し、ポリエステル系高融点重合体の周りに、そのポリエステル系高融点重合体の融点に対して、10℃以上140℃以下低い融点を有するポリエステル系低融点重合体を配した複合型フィラメントとして、口金温度が融点以上(融点+70℃)以下の紡糸口金で細孔から紡出した後、エアサッカーにより紡糸速度4000m/分以上、6000m/分以下で牽引、延伸して円形断面形状のフィラメントを紡糸する。
【0040】
(b)繊維ウェブ形成工程
本発明のスパンボンド不織布は、紡糸した熱可塑性連続フィラメントを開繊、噴射した後、移動するネットコンベアー上に堆積させ繊維ウェブを得る工程を有する。開繊方法としては、例えば帯電開繊による開繊方法や開繊板を使用する方法があり、特に開繊板によるものが好ましい。開繊板を使用することで不織布の均一性が高くなり、フィルター性能に優れる。
【0041】
なお、複合型ポリエステル繊維を用いた場合であっても、前記のフィラメント(長繊維)からなるスパンボンド不織布であることが重要である。このようにすることで、非連続の繊維で構成された短繊維不織布の場合に比べて、剛性や機械的強度を高めることができ、プリーツフィルターとして好ましいものとすることができる。
【0042】
本発明のスパンボンド不織布の製造方法では、ネットコンベアー上に捕集した繊維ウェブを、仮融着することも好ましい態様である。仮融着は、捕集した繊維ウェブを一対のフラットロールにより融着したり、ネットコンベアー上にフラットロールを設置し、ネットコンベアーと当該フラットロールとの間で融着したりする方法が好ましく用いられる。フラットロールによる融着は、フラットロールからなるカレンダーロールにS字で添わせて行うことが好ましい。そうすることで、不織布の厚さを担保でき、高通気量であるフィルターを得ることができる。
また、仮融着するための線圧は30kg/cm以上70kg/cm以下であることが好ましい。仮融着するための線圧を30kg/cm以上、より好ましくは40kg/cm以上とすることでスパンボンド不織布として用いた際にプリーツ加工性に必要な強度を不織布に付与することができる。融着するための線圧を70kg/cm以下、より好ましくは60kg/cm以下とすることで、適度な厚さとなり、フィルターとしての通気性を確保できる。
【0043】
仮融着するための融着の温度は、ポリエステル系低融点重合体の融点に対して70℃以上120℃以下低い温度であることが好ましい。このように温度設定することにより、繊維同士を過度に融着させることなく、搬送性を改善することができる。
【0044】
(c)部分的融着工程
本発明のスパンボンド不織布は部分的に融着されたものであるが、部分的に融着する方法は特に限定されるものではない。ここで、スパンボンド不織布の融着されている部分を融着部、それ以外の融着されていない部分を非融着部と称する。熱エンボスロールによる融着、あるいは超音波発振装置とエンボスロールとの組み合わせによる融着が好ましいものである。特に熱エンボスロールによる融着は、不織布の強度を向上させる点から最も好ましいものである。部分的融着工程は前記ウェブ形成工程から続けて加工されることが好ましい。前記ウェブ形成工程から続けて加工することで、融着部の密度を高くし、スパンボンド不織布としてプリーツ成型性に優れた腰強度の不織布を得ることができる。熱エンボスロールによる融着の温度は、不織布の繊維表面に存在する最も融点の低いポリマーの融点に対して5℃以上60℃以下低いことが好ましく、10℃以上50℃以下低いことがより好ましい。熱エンボスロールによる不織布の繊維表面に存在する最も融点の低いポリマーの融点の温度差を5℃以上、より好ましくは10℃以上とすることで、過度の融着を防ぐことができる。一方、融点の温度差を60℃以下、より好ましくは50℃以下とすることによって、不織布内において均一な融着を行うことができる。
【0045】
また、融着するための線圧は30kg/cm以上90kg/cm以下であることが好ましい。融着するための線圧を30kg/cm以上、より好ましくは40kg/cm以上とすることでスパンボンド不織布として用いた際にプリーツ加工性に必要な強度を不織布に付与することができる。融着するための線圧を90kg/cm以下、より好ましくは80kg/cm以下とすることで、過度の融着を防ぐことができる。
【0046】
本発明のスパンボンド不織布の部分的な融着の融着面積の割合(以下、単に融着面積率と記載することがある)は、融着部(凹部)の不織布全体の面積に占める割合のことであり、不織布全面積に対して5%以上20%以下が好ましい範囲である。前記融着面積率が5%以上、より好ましくは6%以上、さらに好ましくは8%以上であれば、不織布の機械的強度が十分に得られ、さらに表面が毛羽立ちやすくなることがない。一方、融着面積率が20%以下、より好ましくは19.5%以下、さらに好ましくは19%以下であれば、繊維間の空隙が少なくなって圧力損失が上昇し、捕集性能が低下することもない。
【0047】
なお、スパンボンド不織布の融着面積率の測定には、デジタルマイクロスコープ(例えば、株式会社キーエンス製「VHX−5000」)を用い、スパンボンド不織布の任意の部分から、マイクロスコープの倍率20倍で不織布のMD方向およびCD方向に平行な1.0cm×1.0cmの矩形枠を100箇所とり、100箇所それぞれについて当該面積に対する矩形枠内の融着部の面積を測定して平均値をとり、百分率にして小数点以下第一位を四捨五入したものを融着面積率(%)とする。なお、百分率として表記しない場合は、前記矩形枠内の融着部の面積(cm)を矩形枠の面積である1.0cmで除した後、小数点以下第三位を四捨五入することで融着面積率を算出することができる。
【0048】
融着部はくぼみを形成しており、不織布を構成する熱可塑性連続フィラメント同士が熱と圧力とによって融着して形成されている。すなわち、他の部分に比べて熱可塑性連続フィラメントが融着して凝集している部分が融着部である。融着する方法として熱エンボスロールによる融着を採用した場合には、エンボスロールの凸部により熱可塑性連続フィラメントが融着して凝集している部分が融着部となる。例えば、上側または下側のみに所定のパターンの凹凸を有するロールを用いて、他のロールは凹凸の無いフラットロールを用いる場合においては、融着部とは凹凸を有するロールの凸部とフラットロールとで融着されて不織布の熱可塑性連続フィラメントが凝集された部分をいう。また、例えば、表面に複数の平行に配置された直線的溝が形成されている一対の上側ロールと下側ロールからなり、その上側ロールの溝とその下側ロールの溝とがある角度で交叉するように設けられているエンボスロールを用いる場合、融着部とは上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とで融着されて不織布の熱可塑性連続フィラメントが凝集された部分をいう。この場合、上側の凸部と下側の凹部あるいは上側の凹部と下側の凸部とで融着される部分はここでいう融着部には含まれない。
【0049】
融着部の1個あたりの面積としては、0.3mm以上5.0mm以下が好ましい。0.3mm以上とすることで、スパンボンド不織布として十分な機械的強度が得られ、さらに不織布表面の毛羽立ちを押さえることができる。5.0mm以下とすることで、スパンボンド不織布としての機械的強度に加え通気性を保持することができ、十分な捕集性能が得られる。
【0050】
融着部の形状は特に規定されるものではなく、上側または下側のみに所定のパターンの凹凸を有するロールを用いて、他のロールは凹凸の無いフラットロールを用いる場合や表面に複数の平行に配置された直線的溝が形成されている一対の上側ロールと下側ロールとからなり、その上側ロールの溝とその下側ロールの溝とがある角度で交叉するように設けられているエンボスロールにおいて、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とで融着された場合においても、その融着部の形状は円形、三角形、四角形、平行四辺形、楕円形、菱形などでもよい。これらの融着部分の配列は、特に規定されるものではなく、等間隔に規則的に配されたもの、ランダムに配されたもの、異なる形状が混在したものでもよい。なかでも、不織布の均一性の点から、融着部分が等間隔に配されるものが好ましい。さらに不織布を剥離することなく部分的な融着をする点で、表面に複数の平行に配置された直線的溝が形成されている一対の上側ロールと下側ロールとからなり、その上側ロールの溝とその下側ロールの溝とがある角度で交叉するように設けられているエンボスロールを用い、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とで融着され形成される平行四辺形の融着部が好ましい。
【0051】
(スパンボンド不織布)
本発明のスパンボンド不織布は、不織布のMD方向で20mN以上40mN以下の剛軟度を有する。剛軟度が20mN以上、より好ましくは22mN以上、さらに好ましくは25mN以上であれば、不織布の強度や形態保持性を保ちつつプリーツ加工ができる。一方、40mN以下、より好ましくは38mN以下、さらに好ましくは36mN以下であれば、プリーツ加工時の折たたみ抵抗を緩和し、プリーツの山谷型形状がシャープに仕上がる。
【0052】
本発明における剛軟度は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」6.7「剛軟度(JIS法及びISO法)」の6.7.4「ガーレ法(JIS法)」に準じて、以下のようにされて得られた値とする。
(i)試料から長さ38.1mm(有効試料長L=25.4mm)、幅d=25.4mmの試験片を試料の任意の5点から採取する。ここで本発明においては、不織布の長手方向を試料のMD方向とする。
(ii)採取した試験片をそれぞれチャックに取り付け、可動アームA上の目盛り1−1/2”(1.5インチ=38.1mm)に合わせてチャックを固定する。この場合、試料長の1/2”(0.5インチ=12.7mm)はチャックに1/4”(0.25インチ=6.35mm)、試料の自由端にて振子の先端に1/4”(0.25インチ=6.35mm)がかかるため測定にかかる有効試料長Lは試験片長さから1/2”(0.5インチ=12.7mm)差し引いたものとなる。
(iii)次に振り子Bの支点から下部のおもり取付孔a、b、c(mm)に適当なおもりW、W、W(g)を取り付けて可動アームAを定速回転させ、試験片が振り子Bから離れるときの目盛りRG(mgf)を読む。目盛りは小数点以下第一位の桁で読む。ここでおもり取付孔に取り付けるおもりは適宜選択できるものであるが、目盛りRGが4〜6になるよう設定するのが好ましい。
(iv)測定は試験片5点につき表裏各5回、合計50回実施する。
(v)得られた目盛りRGの値から下記式(3)を用いて剛軟度の値を小数点以下第二位で四捨五入してそれぞれ求める。50回の測定の平均値を、小数点以下第二位を四捨五入して算出した値をMD方向の剛軟度とした。
【数1】
【0053】
本発明におけるスパンボンド不織布は不織布断面における凸部の一表面から他表面までの厚さ(t)と、凹部の一表面から他表面までの厚み(t)が上式(1)の関係にあるスパンボンド不織布である。上式(1)の値が0.50以上、より好ましくは0.52以上、さらに好ましくは0.54以上であれば、繊維同士の融着が強固になり、集塵機プリーツフィルターとして使用した場合に高風量下でも優れた形状保持性が得られる。一方、上式(1)の値が1.00以下、より好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.80以下であれば、繊維同士の融着が緩くなり、優れた通気性が得られる。
【0054】
本発明におけるスパンボンド不織布は不織布断面における凸部の一表面から凹部の一表面までの距離をそれぞれ(t)、(t)(t<t)とし、上式(2)の関係にあるスパンボンド不織布である。上式(2)の値が0.35以上、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.45以上あれば、不織布の凹凸が小さくなり、不織布へのPTFE膜の貼り合わせ性が良好である。一方、上式(2)の値が0.65以下、より好ましくは0.63以下、さらに好ましくは0.61以下であれば、不織布内に融着部と非融着部が共存し、通気性と剛性とのバランスがとれたスパンボンド不織布が得られる。
【0055】
ここで本発明における、本発明における凸部の一表面から他表面までの厚さ(t)と、凹部の一表面から他表面までの厚さ(t)と上式(1)の値、ならびに、凸部の一表面から凹部の一表面までの距離をそれぞれ(t)、(t)(t<t)と上式(2)の値とは以下のようにして求めた値を採用することとする。
【0056】
(i)任意の融着部(凹部)において、MD方向の中心線とCD方向の中心線との交点を融着部(凹部)の中心点とする。
(ii)前記の融着部(凹部)の中心点を通り、CD方向と平行な直線を引く。
(iii)前記の融着部(凹部)の中心点から0.5cm離れた当該直線上の2点を起点として、MD方向に沿って直線を1.0cm引き、その端点同士を結ぶ直線を引く。
(iv)(i)〜(iii)で形成された1.0cm×1.0cmの正方形によって囲まれた領域をカミソリ刃で切り取る。
(v)同様にして、スパンボンド不織布内の任意の場所から1.0cm×1.0cmの測定サンプルを計100個採取する。
(vi)走査型電子顕微鏡(SEM)(例えば、株式会社キーエンス製「VHX−D500」)を用いて、測定サンプル内の融着部を中心として、断面を倍率100倍に調節して観察し撮影する。
(vii)隣接する非融着部(凸部)の最頂部2点より接線を引き、その接線に対する平行線間の距離より、下記のスパンボンド不織布の断面厚さt〜tの長さ(t<t)を測定する。
:一表面から他表面までの非融着部(凸部)最頂部間距離
:一表面から他表面までの融着部(凹部)最頂部間距離
、t:一表面の非融着部(凸部)最頂部−融着部(凹部)最頂部間距離(t<t
(viii)測定結果からt/t、t/tの比率を算出する。
(ix)各測定サンプルから得られるt/t、t/tの算術平均値を算出し、小数点以下第三位を四捨五入して得られた値を採用する。
【0057】
本発明におけるスパンボンド不織布の目付は、150g/m以上300g/m以下の範囲であることが好ましい。目付が150g/m以上であれば、プリーツに必要な剛性を得ることができ好ましい。一方、目付が300g/m以下、好ましくは270g/m以下、より好ましくは260g/m以下であれば、圧力損失が上昇するのを抑制でき、さらにはコスト面でも好ましい。
【0058】
ここでいう目付は、縦50cm×横50cmのサイズの試料を、3個採取して各質量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値(g)を単位面積(1m)当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入することにより求められる。
【0059】
また、本発明のスパンボンド不織布の目付CV値は5%以下であることが好ましい。より好ましくは4.5%以下であり、さらに好ましくは4.0%以下であれば、不織布の均一性向上に伴って不織布を緻密なものとすることができるため、捕集効率が向上し、満足するフィルター寿命が得られやすくなるため、好ましい。一方、スパンボンド不織布の通気量を一定量確保し、圧力損失を小さくすることでフィルター寿命を長くするために、目付CV値が1%以上であることがより好ましい。
【0060】
本発明において、スパンボンド不織布の目付CV値(%)は、次のようにして測定されて得られる値を採用することとする。
(i)スパンボンド不織布から5cm×5cmの小片を計100個採取する。
(ii)各小片の質量(g)をそれぞれ測定し、単位面積(1m)当たりに換算する。
(iii)(ii)の換算結果の平均値(Wave)、標準偏差(Wsdv)をそれぞれ算出する。
(iv)(i)〜(iii)の結果を基に、以下の式により目付CV値(%)を計算し、小数点以下第二位を四捨五入する。
目付CV値(%)=Wsdv/ave×100
【0061】
本発明におけるスパンボンド不織布の厚さは、0.50mm以上0.80mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.51mm以上0.78mm以下である。厚さを0.50mm以上とすることにより、剛性を向上させ、フィルターとしての使用に適したスパンボンド不織布とすることができる。また、厚みを0.80mm以下とすることにより、フィルターとしてのハンドリング性や加工性に優れたスパンボンド不織布とすることができる。
【0062】
なお、本発明において、スパンボンド不織布の厚さ(mm)は、以下の方法によって測定されて得られる値を採用することとする。
(i)厚さ計(例えば、株式会社テクロック製“TECLOCK”(登録商標)SM−114等)を使用して、不織布の厚さをCD方向の等間隔に10点測定する。
(ii)上記算術平均値から小数点以下第3位を四捨五入し、不織布の厚さ(mm)とする。
【0063】
本発明におけるスパンボンド不織布の見掛け密度は、0.25g/cm以上0.40g/cm以下であることが好ましい。見掛け密度が0.25g/cm以上0.40g/cm以下であると、スパンボンド不織布は緻密な構造となりダストが内部に入りにくく、ダスト払い落とし性に優れる。より好ましい見掛け密度の範囲は、0.26g/cm以上0.38g/cm以下の範囲である。
【0064】
なお、本発明において、スパンボンド不織布の見かけ密度(g/cm)は、前記のスパンボンド不織布の目付、厚さの値から以下の式によって求められる値を採用することとする。
見掛け密度(g/cm)=目付(g/m)/厚さ(mm)/1000
【0065】
本発明におけるスパンボンド不織布の通気量は、10(cm/(cm・秒))以上130(cm/(cm・秒))以下であることが好ましい。通気量が10(cm/(cm・秒))以上、好ましくは、13(cm/(cm・秒))以上であると、圧力損失が上昇するのを抑制できる。また、通気量が130(cm/(cm・秒))以下、好ましくは、105(cm/(cm・秒))以下であると、ダストが内部に滞留しにくいことによりフィルターとして捕集性能が良好である。
【0066】
なお、本発明において、スパンボンド不織布の通気量(cm/(cm・秒))は、以下のとおりJIS L1913:2010「一般不織布試験方法」6.8「通気性(JIS法)」の6.8.1「フラジール形法」に基づいて測定される値を採用することとする。
(i)スパンボンド不織布のCD方向に等間隔で縦150mm×横150mmの試験片を10枚採取する。
(ii)試験機の円筒の一端に試験片を取り付けた後、下限抵抗器によって傾斜型気圧計が125Paの圧力を示すように、吸込みファン及び空気孔を調整し、その時の垂直型気圧計の示す圧力を測る。
(iii)測定した圧力と使用した空気孔の種類とから、試験機に付属の換算表によって試験片を通過する空気量(cm/(cm・秒))を求める。
(iv)10点の試験片の通気量から得られた値の平均値の小数点以下第一位を四捨五入した値を、スパンボンド不織布の通気量(cm/(cm・秒))を算出とした。
【0067】
以上説明したように、本発明のスパンボンド不織布は、粉塵の捕集性能と通気性のバランスを両立し、かつ剛性、およびプリーツ加工性に優れるため、フィルター積層濾材、集塵機プリーツフィルター用濾材、集塵機用フィルターとして好適に用いることができる。
【0068】
本発明のスパンボンド不織布は、その剛性、PTFE膜の貼り合わせ性、およびプリーツ加工性に優れるため、フィルター積層濾材、集塵機プリーツフィルター用濾材、集塵機プリーツフィルターとして好適に用いることができる。中でも、不織布単体で流量が70〜250L/分での粉塵捕集と繰り返しの逆洗とに耐えうるPTFE膜との貼り合わせ性が必要とされる、中風量パルスジェットタイプ集塵機用フィルター積層濾材、中風量パルスジェットタイプ集塵機用プリーツフィルター用濾材、中風量パルスジェットタイプ集塵機用フィルターとして好適に用いることができる。このような集塵機用プリーツフィルター用濾材は、例えば前記のスパンボンド不織布をPTFE膜と貼り合わせることでフィルター積層濾材を形成し、その後プリーツ形状とすることで得られる。また、この集塵機プリーツフィルター用濾材は、その全体を円筒状にした後に、円筒の上端と下端とが固定されてなる、円筒型集塵機フィルター、または、金属材料や高分子樹脂材料からなる角型や丸型といった枠材の内壁に集塵機プリーツフィルター用濾材の端部が固定されてなる、パネル型集塵機フィルターとすることができる。
【0069】
本発明のパルスジェットタイプ集塵機は、前記の集塵機用プリーツフィルターを使用したものであり、特に、流量が70〜250L/分である中風量下での粉塵捕集と繰り返しの逆洗を行う、中風量パルスジェットタイプ集塵機である。この中風量パルスジェットタイプの集塵機において前記の集塵機フィルターは、1つの集塵機フィルターあたりの流量が2.0L/分以上4.0L/分以下、1つの集塵機フィルターにかかる処理空気の圧力が0.5MPa以下の雰囲気下で用いられる。
【0070】
本発明のパルスジェットタイプ集塵機は、集塵対象設備からの粉塵を濾過する少なくとも1つの集塵機フィルターを備え、集塵機フィルターの内側面に圧縮空気をパルス状に噴射してフィルターの外側面に付着した粉塵を払い落とすパルスジェット機構を備えている。なお、このパルスジェット機構は、集塵機の送風機用モーターが運転している間に稼働することができる、オンラインパルス方式の機構としてもよいし、集塵を中断した状態の間稼働することができる、オフラインパルス方式の機構としてもよい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例によって、さらに本発明の詳細を説明する。なお、本実施例により本発明が限定して解釈されるわけではない。
【0072】
[測定方法]
下記の実施例における各特性値は、次の方法で測定したものである。ただし、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0073】
(1)ポリエステルの融点(℃)
示差走査型熱量計として、株式会社パーキンエルマー製「DSC−2型」を用いた。
【0074】
(2)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステルの固有粘度(IV)は、次の方法で測定した。
オルソクロロフェノール100mLに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηを、下記式により求めた。
η=η/η=(t×d)/(t×d
(ここで、ηはポリマー溶液の粘度、ηはオルソクロロフェノールの粘度、tは溶液の落下時間(秒)、dは溶液の密度(g/cm)、tはオルソクロロフェノールの落下時間(秒)、dはオルソクロロフェノールの密度(g/cm)を、それぞれ表す。)
次いで、相対粘度ηから、下記式により固有粘度(IV)を算出した。
固有粘度(IV)=0.0242η+0.2634
【0075】
(3)スパンボンド不織布の断面の厚さ(mm)
走査型電子顕微鏡として、株式会社キーエンス製「VHX−D500」を用い、前記の方法で測定を行った。
【0076】
(4)スパンボンド不織布の厚さ(mm)
厚さ計として、株式会社テクロック製“TECLOCK”(登録商標)SM−114を使用した。
【0077】
(5)スパンボンド不織布の見かけ密度(g/cm
スパンボンド不織布の見かけ密度(g/cm)は、前記のスパンボンド不織布の目付、厚さの値から以下の式によって算出した。
見掛け密度(g/cm)=目付(g/m)/厚さ(mm)/1000
【0078】
(6)スパンボンド不織布の通気量(cm/(cm・秒))
通気量の測定には、スイス・テクステスト社製通気性試験機「FX3300−III」を用いて測定した。
【0079】
(7)スパンボンド不織布のMD方向の剛軟度(mN)
剛軟度は、株式会社大栄精機製作所製ガーレ・柔軟度試験機「GAS−10」を用いて測定した。
【0080】
(8)スパンボンド不織布の捕集効率(%)
図3は本発明の実施例にかかる捕集性能試験を実施する試験システムの構成を説明するための図である。図3に示す試験システム31は、試験サンプルMをセットするサンプルホルダー32と、流量計33と、流量調整バルブ34と、ブロワ35と、ダスト供給装置36と、切替コック37と、パーティクルカウンター38とを備える。流量計33と、流量調整バルブ34、ブロワ35およびダスト供給装置36は、サンプルホルダー32と連結している。流量計33は、流量調整バルブ34を介してブロワ35に接続している。サンプルホルダー32には、ブロワ35の吸気によって、ダスト供給装置36からダストが供給される。サンプルホルダー32にパーティクルカウンター38を接続し、切替コック37を介して、試験サンプルMの上流側のダスト個数と下流側のダスト個数をそれぞれ測定することができる。まず、不織布の任意の部分から、15cm×15cmのサンプルを3個採取し、採取した試験サンプルMをサンプルホルダー32にセットする。試験サンプルの評価面積は、115cmとした。捕集性能の測定にあたっては、ポリスチレン0.309U 10重量%溶液(ナカライテスク株式会社製)を蒸留水で200倍まで希釈し、ダスト供給装置36に充填した。風量をフィルター通過速度が3.0m/minになるように流量調整バルブ34で調整し、ダスト濃度を2万〜7万個/(2.83×10−4(0.01ft))の範囲で安定させ、試験サンプルMの上流のダスト個数および下流のダスト個数をパーティクルカウンター38(リオン株式会社製、KC−01D)でダスト粒径0.3〜0.5μmの範囲についてそれぞれ測定した。得られた値を下記計算式に代入して求めた数値の小数点以下第一位を四捨五入し捕集性能(%)を求めた。
捕集性能(%)=〔1−(D1/D2)〕×100
ここで、D1:下流のダスト個数(3回の合計)、D2:上流のダスト個数(3回の合計)である。
【0081】
(9)圧力損失(Pa)
上記捕集性能測定時の試験サンプルMの上流と下流との静圧差を圧力計39で読み取り、3サンプルから得られた値の平均値の小数点以下第1位を四捨五入して算出した。
【0082】
(10)PTFE膜剥がれの有無
スパンボンド不織布にPTFE膜加工を貼り合わせた積層不織布を10cm×10cmに切り取り、圧縮エアーを10cmの距離から0.25MPaで当て、目視確認によりPTFE膜剥がれの有無を確認した。
【0083】
(11)プリーツ成形性・プリーツ成形時のPTFE膜浮きの有無
スパンボンド不織布にPTFE膜を貼り合わせた積層不織布の100mmの試料をプリーツ加工機で、ピッチ25mmのプリーツ加工を行い、加工後のプリーツ成形性とそのPTFE膜浮きの有無を目視確認し、下記2段階で評価した。
(プリーツ成形性)
○:プリーツが鋭角で均一である
×:プリーツが不均あるいは成形できない
(プリーツ成形性のPTFE膜浮きの有無)
有:折り目の融着部上でPTFE膜浮きがある
無:折り目の融着部上でPTFE膜浮きがない
【0084】
(12)スパンボンド不織布の目付(g/m
スパンボンド不織布の目付は、前記の方法で算出した。
【0085】
(13)スパンボンド不織布の目付CV値(%)
スパンボンド不織布の目付CV値は、前記の方法で算出した。
【0086】
(14)熱可塑性連続フィラメントの平均単繊維直径(μm)
熱可塑性連続フィラメントの平均単繊維直径は、キーエンス社製「VHX−D500」の走査型電子顕微鏡を用いて前記の方法で算出した。
【0087】
[使用した樹脂]
次に、実施例・比較例において使用した樹脂は下記の通りである。
・ポリエステル系樹脂A:水分率50質量ppm以下に乾燥した、固有粘度(IV)が0.65で融点が260℃の、ポリエチレンテレフタレート(PET)
・ポリエステル系樹脂B:水分率50質量ppm以下に乾燥した、固有粘度(IV)が0.64、イソフタル酸共重合率が11mol%で融点が230℃の、共重合ポリエチレンテレフタレート(CO−PET)
【0088】
[実施例1]
前記のポリエステル系樹脂Aと前記のポリエステル系樹脂Bとを、それぞれ295℃と280℃の温度で溶融させた。その後、ポリエステル系樹脂Aを芯成分とし、ポリエステル系樹脂Bを鞘成分として、口金温度が300℃で、芯:鞘=80:20の質量比率で細孔から紡出した後、エアサッカーにより紡糸速度4400m/分で円形断面形状のフィラメントを紡糸し、移動するネットコンベアー上に開繊板により繊維配列を規制し堆積させ、平均単繊維直径が14.8μmの繊維からなる繊維ウェブを捕集した。捕集した繊維ウェブを、温度が140℃で線圧が50kg/cmの条件で、一対のフラットロールからなるカレンダーロールにS字で沿わせ、さらに引き続いて、融着面積率18%、融着部1個あたりの面積が0.7mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールによって、上下とも温度205℃で、線圧が70kg/cmの条件で融着し、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.61、0.57、シート厚さは0.51mm、MD方向の剛軟度は25mNであった。結果を表1に示す。
【表1】
【0089】
[実施例2]
上下のエンボスロールの温度をともに205℃から180℃に変更し、融着したこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.54、0.55、シート厚さは0.82mm、MD方向の剛軟度は28mNであった。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例3]
上下のエンボスロールの温度をともに、205℃からそれぞれ180℃、210℃に変更し、融着したこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.58、0.65、シート厚さは0.73mm、MD方向の剛軟度は31mNであった。結果を表1に示す。
【0091】
[実施例4]
捕集したウェブを1対のカレンダーロールに沿わせなかったことと、上下のエンボスロールを、融着面積率18%、融着部1個あたりの面積が0.7mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールから融着面積率15%、融着部1個あたりの面積が0.5mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールによって、上下の温度をそれぞれ210℃、200℃で融着したこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.61、0.37、シート厚さは0.62mm、MD方向の剛軟度は25mNであった。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例5]
上下のエンボスロールを、融着面積率18%、融着部1個あたりの面積が0.7mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールから融着面積率6%、融着部1個あたりの面積が0.5mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールに替えて、融着したこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.79、0.65、シート厚さは1.20mm、MD方向の剛軟度は39mNであった。結果を表1に示す。
【0093】
[実施例6]
平均単繊維直径が25.4μmとなるよう吐出量、紡出速度を変更した一方、目付を実施例1と同じにするためネットコンベアーの速度を変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.52、0.58、シート厚さは0.93mm、MD方向の剛軟度は37mNであった。結果を表1に示す。
【0094】
[実施例7]
平均単繊維直径が14.2μmとなるよう吐出量、紡出速度を変更した一方、目付を実施例1と同じにするためネットコンベアーの速度を変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.63、0.57、シート厚さは0.54mm、MD方向の剛軟度は24mNであった。結果を表1に示す。
【0095】
得られた不織布の特性は表1に示したとおりであり、実施例1〜7のスパンボンド不織布は、いずれもMD方向剛軟度が20mN以上、目付CV値が5.0%以下、圧力損失が50Pa以下であり、剛性や目付均一性に優れており、スパンボンド不織布として良好な特性を示したものであった。また、これらのスパンボンド不織布とPTFE膜との貼り合わせ性においても膜との剥離がなく、プリーツ加工性も良好であった。
【0096】
[比較例1]
上下のエンボスロールを、融着面積率18%、融着部1個あたりの面積が0.7mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールから融着面積率10%、融着部1個あたりの面積が1.6mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールに替えて、上下の温度をそれぞれ240℃で融着したこと以外は、実施例1と同様にして目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.36、0.25、シート厚さは0.51mm、MD方向の剛軟度は18mNであった。結果を表2に示す。
【表2】
【0097】
[比較例2]
上下のエンボスロールを、融着面積率18%、融着部1個あたりの面積が0.7mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールから融着面積率3%、融着部1個あたりの面積が0.5mmとなる彫刻ロールとフラットロールからなるエンボスロールに替えて、融着したこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.83、0.66、シート厚さは1.30mm、MD方向の剛軟度は45mNであった。結果を表2に示す。
【0098】
[比較例3]
上下のエンボスロールを、融着面積率18%、融着部1個あたりの面積が0.7mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールから融着面積率24%、融着部1個あたりの面積が0.5mmとなる一対の彫刻ロールからなるエンボスロールに替えて、融着したこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.61、0.50、シート厚さは0.62mm、MD方向の剛軟度は17mNであった。結果を表2に示す。
【0099】
[比較例4]
平均単繊維直径が29.2μmとなるよう吐出量、紡出速度を変更した一方、目付を実施例1と同じにするためネットコンベアーの速度を変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.45、0.57、シート厚さは1.21mm、MD方向の剛軟度は43mNであった。結果を表2に示す。
【0100】
[比較例5]
捕集したウェブを1対のカレンダーロールにS字に沿わせなかったこと以外は、実施例1と同じ条件で、目付が260g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布のシート断面厚さの1−t/tとt/tはそれぞれ0.48、0.67、シート厚さは0.43mm、MD方向の剛軟度は24mNであった。結果を表2に示す。
【0101】
得られた不織布の特性は、表1に示したとおりであるが、比較例1は、シート断面厚さ(1−t/t)が低く、剛軟度が低くなり、プリーツ成形性が劣位であった。比較例2、4は剛軟度が高く、これらのスパンボンド不織布とPTFE膜との貼り合わせ性が劣位であった。比較例3は剛軟度が低くなり、プリーツ加工性が劣位であった。比較例5は、シート断面厚さ(t/t)が低く、スパンボンド不織布とPTFE膜との貼り合わせ性が劣位であった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のスパンボンド不織布、フィルター積層濾材、集塵機プリーツフィルター用濾材、集塵機プリーツフィルターおよび中風量パルスジェットタイプ集塵機は、PTFE膜の貼り合わせ性、プリーツ加工性に優れ、高い剛性を有するものとして好ましく適用できるが、適用範囲はこれに限られない。
【符号の説明】
【0103】
11 凸部
12 凹部
21 集塵機プリーツフィルター用濾材
22 山部
23 谷部
24 MD方向を示す矢印(破線矢印)
25 CD方向を示す矢印(破線矢印)
M 試験サンプル
31 試験システム
32 サンプルホルダー
33 流量計
34 流量調整バルブ
35 ブロワ
36 ダスト供給装置
37 切替コック
38 パーティクルカウンター
39 圧力計
【要約】
本発明のスパンボンド不織布は、高融点成分と低融点成分とからなる熱可塑性連続フィラメントから構成され、部分的に融着されてなり、非融着の凸部と、融着されてなる凹部とを有し、MD方向の剛軟度が20mN以上40mN以下であり、不織布断面において、凸部の一表面から他表面までの厚さtと、凹部の一表面から他表面までの厚さtと、凸部の一表面から凹部の一表面までの距離をそれぞれt、t(t<t)とし、下記式(1)、(2)で表される関係にある。
0.5≦1−t/t<1.0 ・・・(1)
0.35<t/t<0.65 ・・・(2)
図1
図2
図3