特許第6962498号(P6962498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6962498-コンバータ 図000002
  • 特許6962498-コンバータ 図000003
  • 特許6962498-コンバータ 図000004
  • 特許6962498-コンバータ 図000005
  • 特許6962498-コンバータ 図000006
  • 特許6962498-コンバータ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6962498
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】コンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   H02M3/28 Y
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-507717(P2021-507717)
(86)(22)【出願日】2020年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2020036458
【審査請求日】2021年3月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】國井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 成治
(72)【発明者】
【氏名】立崎 真輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸伯
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/053139(WO,A1)
【文献】 特開2010−153724(JP,A)
【文献】 特開2016−031963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 − 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子を有する第一回路と、
出力端子を有する第二回路と、
前記第一回路と前記第二回路とを電磁気的に結合するトランスとを備えるコンバータであって、
前記第二回路が設けられる多層基板と、
前記多層基板における前記第二回路が設けられる領域に配置され、前記多層基板を厚み方向に貫通する貫通部材とを備え、
前記第二回路は、
前記トランスから前記出力端子に至る第一導電ラインと、
前記第一導電ラインとは異なる経路で、前記トランスから前記出力端子に至る第二導電ラインとを備え、
前記第二導電ラインは、
前記多層基板に設けられ、前記トランスに接続される第一導体パターンと、
前記多層基板に、前記貫通部材を避けるように設けられ、前記出力端子に接続される第二導体パターンと、
前記第一導体パターンと前記第二導体パターンとに直列に接続されるブリッジ導体とを備え、
前記ブリッジ導体の中間部が、前記多層基板の外部に配置され、かつ前記領域を平面視したとき、前記第一導電ライン及び前記貫通部材の少なくとも一方に重複する、
コンバータ。
【請求項2】
前記第二回路は、前記多層基板に実装されるデバイスを備え、
前記貫通部材は、前記デバイスを冷却するためのサーマルビア又はインレイを含む請求項1に記載のコンバータ。
【請求項3】
前記貫通部材は、前記第二回路を接地するグランドネジを含む請求項1に記載のコンバータ。
【請求項4】
前記トランスは、センタータップ型である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコンバータ。
【請求項5】
前記第二回路は、フィルタ回路を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンバータ。
【請求項6】
前記フィルタ回路は、
筒状のフィルタコアと、
前記フィルタコアを貫通する前記ブリッジ導体とを含む請求項5に記載のコンバータ。
【請求項7】
前記ブリッジ導体は、前記多層基板の表面に当接する位置決め部を備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバータとして、交流を直流に変換するAC/DCコンバータ、直流の電圧を変換するDC/DCコンバータなどが知られている。コンバータは、入力端子を有する第一回路と、出力端子を有する第二回路と、両回路を電磁気的に結合するトランスとを備える。例えば、特許文献1には、DC/DCコンバータが開示されている。特許文献1のコンバータは、スイッチング回路を含む第一回路と、整流回路を含む第二回路とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−153722号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のコンバータは、
入力端子を有する第一回路と、
出力端子を有する第二回路と、
前記第一回路と前記第二回路とを電磁気的に結合するトランスとを備えるコンバータであって、
前記第二回路が設けられる多層基板と、
前記多層基板における前記第二回路が設けられる領域に配置され、前記多層基板を厚み方向に貫通する貫通部材とを備え、
前記第二回路は、
前記トランスから前記出力端子に至る第一導電ラインと、
前記第一導電ラインとは異なる経路で、前記トランスから前記出力端子に至る第二導電ラインとを備え、
前記第二導電ラインは、
前記多層基板に設けられ、前記トランスに接続される第一導体パターンと、
前記多層基板に設けられ、前記出力端子に接続される第二導体パターンと、
前記第一導体パターンと前記第二導体パターンとに直列に接続されるブリッジ導体とを備え、
前記ブリッジ導体の中間部が、前記多層基板の外部に配置され、かつ前記領域を平面視したとき、前記第一導電ライン及び前記貫通部材の少なくとも一方に重複する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施形態1に示されるコンバータの回路図である。
図2図2は、実施形態1に示されるコンバータに備わる多層基板の概略平面図である。
図3図3は、実施形態1に示されるコンバータに備わる多層基板の概略断面図である。
図4図4は、実施形態2に示されるコンバータに備わる多層基板の概略断面図である。
図5図5は、実施形態3に示されるコンバータに備わる多層基板の概略部分断面図である。
図6図6は、実施形態4に示されるコンバータに備わる多層基板の概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
コンバータの小型化が求められている。コンバータの一部、例えば第二回路が多層基板上に設けられることで、コンバータが小型化される。この場合、第二回路の導電ラインは、多層基板に設けられる複数の導体パターンによって構成される。しかし、トランスに流れる電流の大きさに応じて各導体パターンの幅が大きくなり易い。その結果、多層基板を上面視したときの平面面積が大きくなり易い。
【0007】
多層基板において多層基板の厚み方向に貫通する貫通部材が設けられる場合がある。貫通部材としては、例えば多層基板を筐体などに固定するネジ、及び第二回路を構成するデバイスを冷却するサーマルビアなどが挙げられる。複数の導体パターンのうち、この貫通部材を避けるように配置される必要がある導体パターンは、多層基板の平面面積を大きくする。従って、貫通部材を有する多層基板の平面面積は大きくなり易い。
【0008】
本開示は、上面視したときの平面面積が小さいコンバータを提供することを目的の一つとする。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
<1>実施形態に係るコンバータは、
入力端子を有する第一回路と、
出力端子を有する第二回路と、
前記第一回路と前記第二回路とを電磁気的に結合するトランスとを備えるコンバータであって、
前記第二回路が設けられる多層基板と、
前記多層基板における前記第二回路が設けられる領域に配置され、前記多層基板を厚み方向に貫通する貫通部材とを備え、
前記第二回路は、
前記トランスから前記出力端子に至る第一導電ラインと、
前記第一導電ラインとは異なる経路で、前記トランスから前記出力端子に至る第二導電ラインとを備え、
前記第二導電ラインは、
前記多層基板に設けられ、前記トランスに接続される第一導体パターンと、
前記多層基板に設けられ、前記出力端子に接続される第二導体パターンと、
前記第一導体パターンと前記第二導体パターンとに直列に接続されるブリッジ導体とを備え、
前記ブリッジ導体の中間部が、前記多層基板の外部に配置され、かつ前記領域を平面視したとき、前記第一導電ライン及び前記貫通部材の少なくとも一方に重複する。
【0011】
実施形態に係るコンバータは、従来よりも小さい平面面積を有する。
実施形態に係るコンバータでは、第二導電ラインの一部を構成するブリッジ導体が、多層基板の外部に配置され、かつ第一導電ライン及び貫通部材の少なくとも一方に重複している。つまり、第二回路の第一導電ラインと第二導電ラインの一部とが、多層基板と多層基板の外部の空間とに立体的に配置されている。そのため、多層基板に貫通部材が存在しても、多層基板の平面面積が大きくならない。ここで、コンバータが複数の貫通部材を備える場合、ブリッジ導体は、複数の貫通部材の少なくとも一つに重複し、残りの貫通部材に重複していなくてもよい。
【0012】
実施形態に係るコンバータでは、貫通部材によって種々の効果が得られる。例えば、貫通部材がネジであれば、多層基板を筐体に固定し易い。その他、貫通部材が放熱部材であれば、多層基板の放熱性が向上する。
【0013】
<2>実施形態に係るコンバータの一形態として、
前記第二回路は、前記多層基板に実装されるデバイスを備え、
前記貫通部材は、前記デバイスを冷却するためのサーマルビア又はインレイを含む形態が挙げられる。
【0014】
コンバータが、デバイスを冷却するサーマルビア又はインレイを備えることで、コンバータの動作時においてデバイスが高温になることが抑制される。そのため、デバイスの動作が向上するので、デバイスを備えるコンバータの動作が安定する。
【0015】
<3>実施形態に係るコンバータの一形態として、
前記貫通部材は、前記第二回路を接地するグランドネジを含む形態が挙げられる。
【0016】
グランドネジは、第二回路の一部の導電ラインを接地するネジである。グランドネジは多層基板にネジ結合される。このグランドネジは、多層基板を筐体などに固定することに利用される場合もある。この場合、多層基板の固定と、第二回路の接地とが同時に行われる。
【0017】
<4>実施形態に係るコンバータの一形態として、
前記トランスは、第一の二次コイルと第二の二次コイルとを備えるセンタータップ型である形態が挙げられる。
【0018】
センタータップ型のトランスに接続される第二回路は、例えば全波整流型の整流回路である。全波整流型の第二回路を備えるコンバータは、整流出力のリップルを小さくできる。また、センタータップ型のトランスに接続される全波整流型の第二回路は、ブリッジ回路を含む全波整流型の整流回路に比べて、整流素子の数が少なくて済む。従って、多層基板の平面面積が小さくて済む。
【0019】
<5>実施形態に係るコンバータの一形態として、
前記第二回路は、フィルタ回路を含む形態が挙げられる。
【0020】
第二回路がフィルタ回路を含むことで、出力側のノイズが低減される。フィルタ回路によって、整流出力のリップルが小さくなる。
【0021】
<6>上記<5>のコンバータの一形態として、
前記フィルタ回路は、
筒状のフィルタコアと、
前記フィルタコアを貫通する前記ブリッジ導体とを含む形態が挙げられる。
【0022】
上記構成は、ブリッジ導体がフィルタ回路の導電部分を兼ねる構成である。この構成では、フィルタ回路の導電部分の一部が、ブリッジ導体として多層基板の外部に配置される。従って、多層基板におけるフィルタ回路の導電部分の大きさが小さくなるので、多層基板の平面面積が小さくなる。
【0023】
<7>実施形態に係るコンバータの一形態として、
前記ブリッジ導体は、前記多層基板の表面に当接する位置決め部を備える形態が挙げられる。
【0024】
ブリッジ導体が位置決め部を備えることで、多層基板に対するブリッジ導体の位置が一義的に決まる。そのため、ブリッジ導体の取付け性が向上する。また、多層基板におけるブリッジ導体と、第一導体パターン及び第二導体パターンとの接続性が向上する。多層基板に対するブリッジ導体の固定状態が安定するので、ブリッジ導体が多層基板が外れ難くなる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態に係るコンバータの具体例を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
<実施形態1>
実施形態1では、コンバータとして、センタータップを用いた全波整流型のDC/DCコンバータを説明する。本例のコンバータ100の電気的な回路構成を図1の回路図に基づいて説明する。次いで、本例のコンバータ100の構造的な構成を図2,3に基づいて説明する。本例のコンバータ100は、その構造に特徴がある。
【0027】
≪回路構成≫
本例のコンバータ100は、第一回路1と第二回路2とトランス3とを備える。本例の第一回路1には直流が入力される。本例の第一回路1は、接地電位の入力端子1Aにつながる低圧側導電ライン11と、正電位の入力端子1Bにつながる高圧側導電ライン12とを備える。低圧側導電ライン11は、入力端子1Aからトランス3の一次コイル31の一方の端部に至る。高圧側導電ライン12は、入力端子1Bからトランス3の一次コイル31の他方の端部に至る。
【0028】
本例の第一回路1は、入力側のコンデンサ1Cと、スイッチング回路1Dとを備える。入力側のコンデンサ1Cは、低圧側導電ライン11と高圧側導電ライン12との間に設けられるデバイスであって、帰還ノイズを低減する。
【0029】
低圧側導電ライン11と高圧側導電ライン12との間に設けられる本例のスイッチング回路1Dは、直流を交流に変換する変換回路である。スイッチング回路1Dには公知の構成が利用できる。本例のスイッチング回路1Dは、ブリッジ接続される4つの整流素子13によって構成される。整流素子13は、第一回路1の一部を構成するデバイスである。本例の整流素子13は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)である。整流素子13はダイオードであっても良い。
【0030】
トランス3は、交流の電圧を変換する。トランス3は、一次コイル31と二次コイル32とコア33とを備える。一次コイル31は、第一回路1に接続される。二次コイル32は、後述する第二回路2に接続される。コア33は、一次コイル31と二次コイル32とに貫通される。
【0031】
本例のトランス3はセンタータップ型である。センタータップ型のトランス3では、二次コイル32が、第一の二次コイル321と、第二の二次コイル322とを備える。本例では、第一の二次コイル321と第二の二次コイル322との間に、後述する第二回路2の第二導電ライン22が接続されている。この第二導電ライン22がセンタータップとして機能する。
【0032】
本例の第二回路2は、第一導電ライン21と第二導電ライン22とを備える。第一導電ライン21は、トランス3の二次コイル32の両端から接地電位である出力端子2Aにつながる。より具体的には、第一の二次コイル321から出力端子2Aに至る第一導電ライン21と、第二の二次コイル322から出力端子2Aに至る第一の導電ライン21とがある。両導電ライン21は接点21bにおいてつながる。第一導電ライン21はアース29によって接地されている。一方、センタータップとして機能する第二導電ライン22は、第一導電ライン21とは異なる経路で、トランス3の二次コイル32から正電位である出力端子2Bに至る。二次コイル32から出力端子2A,2Bに至るまでの間、第一導電ライン21と第二導電ライン22とはつながっていない。
【0033】
本例の第二回路2では、第一導電ライン21と第二導電ライン22との間に整流回路2Cとフィルタ回路2Dとが設けられている。本例の整流回路2Cは、交流を直流に変換する公知の変換回路が利用できる。本例の整流回路2Cは、二つの整流素子211,212を備える。整流素子211,212は、第一導電ライン21に含まれるデバイスである。整流素子211は、第一の二次コイル321から接点21bの間に設けられている。整流素子212は、第二の二次コイル322から接点21bの間に設けられている。本例の整流素子211,212は、電界効果トランジスタである。本例とは異なり、整流素子211,212はダイオードでも良い。
【0034】
本例のフィルタ回路2Dは、ローパスフィルタである。フィルタ回路2Dは、デバイスとしてインダクタ23と出力側のコンデンサ24とを備える。インダクタ23は、第二導電ライン22に設けられている。出力側のコンデンサ24は、第一導電ライン21における接点21bよりも下流側の部分と、第二導電ライン22におけるインダクタ23よりも下流側の部分との間に設けられている。本例のフィルタ回路2Dは、L形フィルタであるが、π形フィルタであっても良いし、T形フィルタであっても良い。
【0035】
≪構造的な構成≫
図1に示されるコンバータ100のうち、少なくとも第二回路2は多層基板上に設けられている。本例では、図2,3に示されるように、第二回路2とトランス3とが多層基板4上に設けられている。本例では便宜上、多層基板4における第二回路2が設けられる領域を第一領域4A、トランス3が設けられる領域を第二領域4Bと呼ぶ。本例とは異なり、第一回路1(図1)も多層基板4上に設けられていても良い。
【0036】
多層基板4は、絶縁部材40の内部に積層される複数の導体パターン41を備える(特に図3を参照)。導体パターン41は薄膜によって構成される。薄膜には導電性に優れる銅などの金属が好適である。複数の導体パターン41のうち、一部の導体パターン41が、多層基板4の表面に配置されていても良い。各導体パターン41が、トランス3の一次コイル31、トランス3の二次コイル32、第二回路2の第一導電ライン21、第二回路2の第二導電ライン22の一部を構成する。
【0037】
・トランス
本例の多層基板4には、二つの貫通孔42,43が設けられている。紙面左側の貫通孔42には、トランス3のコア33が貫通されている。本例のコア33は、環状の磁性体である。環状の磁性体には、環形状の一部が繋がっていない磁性体も含まれる。そのような磁性体として、例えば概略C字形状の磁性体が挙げられる。本例のコア33の軸方向から見た形状は矩形環状である。もちろん、コア33の軸方向から見た形状は円環状であっても良い。
【0038】
コア33は、例えばフェライトコアなどの焼結体である。その他、コア33は、圧粉成形体、複合材料の成形体、又は積層鋼板であっても良い。圧粉成形体は、軟磁性粉末が圧縮成形されてなる磁性部材である。複合材料は、軟磁性粉末が分散された流動性の樹脂を硬化させた材料である。積層鋼板は、電磁鋼板が積層された積層体である。
【0039】
本例のコア33は、第一コア部材331と第二コア部材332との組物である(図3)。第一コア部材331は、概略C字形状の磁性体である。第一コア部材331の一方の脚片が貫通孔42の内部に配置されている。第二コア部材332は、概略I字形状の磁性体である。第二コア部材332は、第一コア部材331の両脚片をつなぐように配置される。
【0040】
一次コイル31と二次コイル32は、図2,3に示されるように、導体パターン41として多層基板4に設けられている。これら一次コイル31と二次コイル32は、貫通孔42を取り囲むように配置される。一次コイル31と二次コイル32とは多層基板4の厚み方向に積層されている。一次コイル31と二次コイル32との間には絶縁部材40が介在されている。ここで、一次コイル31と二次コイル32は、多層基板4の表面に露出しないことが好ましい。これは、両コイル31,32とコア33との絶縁を確実にするためである。
【0041】
・貫通部材
多層基板4は、図3に示されるように、多層基板4を厚み方向に貫通する少なくとも一つの貫通部材5を備える。貫通部材5は、多層基板4における第二回路2が設けられる第一領域4Aに配置される。本例の貫通部材5は、図1の整流素子211,212を冷却するサーマルビア50(図3)と、図1のアースを構成するグランドネジ51を含む。
【0042】
サーマルビア50は、多層基板4に設けられる貫通孔と、貫通孔の内周面に設けられるめっき層とで構成される。貫通孔は、多層基板4における整流素子212に接触する部分から多層基板4の厚み方向に延びる。めっき層は熱伝導性に優れる材質、例えば銅などで構成される。本例では、このサーマルビア50は、多層基板4の導体パターン41に電気的に接続されていない。本例とは異なり、サーマルビア50は、導体パターン41に電気的に接続される場合もある。サーマルビア50によって、整流素子212で発生した熱が多層基板4の外部に放出される。その結果、整流素子212が効果的に冷却される。
【0043】
めっき層の代わりに、貫通孔に嵌め込まれるインレイが設けられていても良い。インレイは熱伝導性に優れる材質、例えば銅などで構成される。インレイによっても、整流素子212が効果的に冷却される。
【0044】
グランドネジ51は、第二回路2の第一導電ライン21を接地する部材である。従って、グランドネジ51は、第二回路2の一部とみなすこともできる。このグランドネジ51は、図示しない筐体などに多層基板4を固定する部材として利用することもできる。この場合、グランドネジ51によって、筐体への多層基板4の固定と、第二回路2の第一導電ライン21の接地とが同時に行われる。
【0045】
・第二回路
第二回路2は、図2に示されるように、多層基板4の第一領域4Aに設けられる。本例では、第一領域4Aは、多層基板4におけるトランス3が設けられる第二領域4Bを除くの領域である。
【0046】
第二回路2に備わる第一導電ライン21は、多層基板4の第一領域4Aにおける多層基板4の内部に配置される。この第一導電ライン21に備わる整流素子211,212は、多層基板4に実装されている。
【0047】
本例の第二導電ライン22は、多層基板4の内部に設けられる第一導体パターン221及び第二導体パターン222と、多層基板4に後付けされるブリッジ導体6とを備える。第一導体パターン221は、トランス3の二次コイル32に接続される導体パターン41である。より具体的には、第一導体パターン221は、図1における第一の二次コイル321と第二の二次コイル322との間に接続される。
【0048】
第二導体パターン222は、図1における出力端子2Bに接続される。本例では、第二導体パターン222が貫通孔43を取り囲むように配置されている。貫通孔43には、筒状のフィルタコア230が貫通されている。フィルタコア230は、図1のフィルタ回路2Dのインダクタ23の一部を構成する。フィルタコア230は、第三コア部材231と第四コア部材232との組物である(特に図3参照)。第三コア部材231は、概略C字形状の磁性体である。第三コア部材231の一方の脚片が貫通孔43の内部にはいちされている。第四コア部材232は、概略I字形状の磁性体である。第四コア部材232は、第三コア部材231の両脚片をつなぐように配置される。
【0049】
ブリッジ導体6は、第一導体パターン221と第二導体パターン222とに直列に接続される。ブリッジ導体6は、中間部60と第一脚部61と第二脚部62とを備える。本例の中間部60は、多層基板4の外部に配置され、多層基板4にほぼ平行に延びている。第一脚部61は、中間部60の端部から多層基板4に向かって延び、第一導体パターン221に電気的に接続されている。第二脚部62は、中間部60の別の端部から多層基板4に向かって延び、第二導体パターン222に電気的に接続されている。電気的な接続はハンダなどで構成される。
【0050】
ブリッジ導体6の中間部60は、図2に示されるように、多層基板4の第一領域4Aを平面視したとき、第一導電ライン21及び整流素子211に重複している。整流素子211の下方には図3に示されるようにサーマルビア50が設けられている。従って、中間部60は、多層基板4の第一領域4Aを平面視したとき、サーマルビア50にも重複している。更に、中間部60は、多層基板4の第一領域4Aを平面視したとき、グランドネジ51にも重複している。つまり、ブリッジ導体6は、第一導電ライン21及び貫通部材5の一方又は双方の少なくとも一部をまたいで、第一導体パターン221と第二導体パターン222とをつないでいる。
【0051】
≪実施形態の効果≫
図2,3に示される本例のコンバータ100を平面視したときの平面面積は、第二導電ライン全体を多層基板に導体パターンによって設けたコンバータに比べて小さい。
本例のコンバータ100では、第二導電ライン22の一部を構成するブリッジ導体6が、多層基板4の外部に配置され、かつ第一導電ライン21及び貫通部材5の少なくとも一方に重複している。つまり、第二回路2の第一導電ライン21と第二導電ライン22の一部とが、多層基板4と、多層基板4の外部の空間とに立体的に配置されている。そのため、多層基板4に貫通部材5が存在しても、多層基板4の第一領域4Aの平面面積が大きくならない。
【0052】
本例のコンバータ100では、貫通部材5によって種々の効果が得られる。具体的には、貫通部材5の一種であるグランドネジ51によって、第一導電ライン21(図1)が確実に接地される。また、貫通部材5の一種であるサーマルビア50によって、第二回路2の整流素子211,212の放熱性が向上する。
【0053】
<実施形態2>
実施形態2では、ブリッジ導体6の一部によってフィルタ回路2D(図1)の導電部分の一部が構成される例を図4に基づいて説明する。
【0054】
図4に示されるように、本例のコンバータ100では、筒状のフィルタコア230の内部をブリッジ導体6の第二脚部62が貫通している。つまり、本例では、ブリッジ導体6がフィルタ回路2D(図1)の導電部分を兼ねる。この構成では、フィルタ回路2Dの導電部分が多層基板4の外部に配置されるので、多層基板4におけるフィルタ回路2Dの導電部分が小さくなる。その結果、多層基板4の平面面積が小さくなる。
【0055】
<実施形態3>
実施形態3では、ブリッジ導体6が、多層基板4に対するブリッジ導体6の位置を決める位置決め部63を備える例を図5に基づいて説明する。
【0056】
図5には、ブリッジ導体6のうち、第一脚部61側の一部のみが図示されている。図示しない第二脚部62(図3,4)も、図5の第一脚部61と同様の構成を備える。
【0057】
図5の例では、第一脚部61の端面610から突出する脚片611,612,613が設けられている。脚片611,612は、脚片613よりも長い。脚片611,612の先端側は、多層基板4の内部に配置され、二次コイル32に接続されている。一方、脚片613の先端は、多層基板4の表面に当接し、ブリッジ導体6を支えている。つまり、脚片613は、多層基板4に対するブリッジ導体6の位置を決める位置決め部63として機能している。脚片613がブリッジ導体6を支えることで、第一脚部61の端面610と、多層基板4の表面との間に間隔が形成される。前記間隔の長さは脚片613の長さに等しい。前記間隔によってブリッジ導体6の放熱性が向上する。従って、脚片613の長さが変化することで、ブリッジ導体6の放熱性が調整される。脚片611,612,613の数は特に限定されない。
【0058】
ブリッジ導体6が位置決め部63を備えることで、多層基板4の厚み方向におけるブリッジ導体6の位置が一義的に決まる。そのため、ブリッジ導体6の取付け性が向上する。また、多層基板4におけるブリッジ導体6と、第一導体パターン221及び第二導体パターン222(図3参照)との接続性が向上する。更に、多層基板4に対するブリッジ導体6の固定状態が安定するので、ブリッジ導体6が多層基板4が外れ難くなる。
【0059】
<実施形態4>
実施形態4では、ブリッジ導体6の形状が実施形態3とは異なる例を図6に基づいて説明する。図6においても、ブリッジ導体6における第一脚部61側の一部のみが図示されている。
【0060】
図6に示されるように、本例のブリッジ導体6の第一脚部61は、第一脚部61の端面610から突出する脚片611,612を備える。脚片611,612は、多層基板4の内部に配置され、二次コイル32に接続されている。一方、第一脚部61の端面610は、多層基板4の表面に当接し、ブリッジ導体6を支えている。つまり本例では、端面610が位置決め部63として機能している。
【0061】
本例の構成によっても、実施形態3と同様の効果が得られる。また、本例の構成によれば、多層基板4の厚み方向におけるブリッジ導体6の高さが、実施形態3の構成よりも低くなる。従って、本例のコンバータ100は、実施形態3のコンバータ100よりも多層基板4の厚み方向にコンパクトになる。
【0062】
<その他の実施形態>
実施形態に係るコンバータ100は、AC/DCコンバータでも良いし、AC/ACコンバータでも良い。この場合、コンバータ100に備わる第一回路1と第二回路2の構成は、実施形態1から実施形態4とは異なる。
【0063】
実施形態に係るコンバータ100は、ブリッジ回路を含む全波整流型のコンバータであっても良い。また、実施形態に係るコンバータ100は、半波整流型のコンバータであっても良い。
【符号の説明】
【0064】
100 コンバータ
1 第一回路
1A,1B 入力端子、1C 入力側のコンデンサ、1D スイッチング回路
11 低圧側導電ライン、12 高圧側導電ライン
13 整流素子
2 第二回路
2A,2B 出力端子、2C 整流回路、2D フィルタ回路
21 第一導電ライン、21b 接点、211,212 整流素子
22 第二導電ライン、221 第一導体パターン、222 第二導体パターン
23 インダクタ
230 フィルタコア、231 第三コア部材、232 第四コア部材
24 出力側のコンデンサ、29 アース
3 トランス
31 一次コイル
32 二次コイル、321 第一の二次コイル、322 第二の二次コイル
33 コア、331 第一コア部材、332 第二コア部材
4 多層基板
4A 第一領域、4B 第二領域
40 絶縁部材、41 導体パターン、42,43 貫通孔
5 貫通部材
50 サーマルビア、51 グランドネジ
6 ブリッジ導体
60 中間部、61 第一脚部、62 第二脚部、63 位置決め部
610 端面、611,612,613 脚片
【要約】
第一回路と第二回路とを電磁気的に結合するトランスとを備えるコンバータであって、前記第二回路が設けられる多層基板と、前記多層基板における前記第二回路が設けられる領域に配置され、前記多層基板を厚み方向に貫通する貫通部材とを備え、前記第二回路は、第一導電ラインと、前記第一導電ラインとは異なる第二導電ラインとを備え、前記第二導電ラインは、前記多層基板に設けられる第一導体パターンと、前記多層基板に設けられる第二導体パターンと、前記第一導体パターンと前記第二導体パターンとに直列に接続されるブリッジ導体とを備え、前記ブリッジ導体の中間部が、前記多層基板の外部に配置され、かつ前記領域を平面視したとき、前記第一導電ライン及び前記貫通部材の少なくとも一方に重複するコンバータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6