特許第6962499号(P6962499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962499バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962499
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20211025BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20211025BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20211025BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   B32B27/32 Z
   B65D65/40 D
   B32B27/00 H
【請求項の数】16
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2021-508013(P2021-508013)
(86)(22)【出願日】2020年9月29日
(86)【国際出願番号】JP2020036838
(87)【国際公開番号】WO2021065887
(87)【国際公開日】20210408
【審査請求日】2021年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2019-180675(P2019-180675)
(32)【優先日】2019年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】奥村 昌平
(72)【発明者】
【氏名】古谷 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】金村 行倫
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/087976(WO,A1)
【文献】 特開2001−191462(JP,A)
【文献】 特表2014−531341(JP,A)
【文献】 特開2006−256626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00−43/00
B65D65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層基材と、蒸着膜とを備え、
前記多層基材は、延伸処理が施されており、
さらに、前記多層基材が、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面樹脂層とを備え、
前記表面樹脂層が、融点180℃以上の樹脂材料を含み、
前記表面樹脂層の厚さは、5μm以下であり、
前記蒸着膜は、前記多層基材の表面樹脂層上に設けられており、
前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、
前記蒸着膜上に、バリアコート層をさらに備え
前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であることを特徴とする、バリア性積層体。
【請求項2】
前記樹脂材料の融点が、265℃以下である、請求項1に記載のバリア性積層体。
【請求項3】
前記樹脂材料の融点と、前記ポリプロピレン樹脂層に含まれるポリプロピレンの融点と、の差が20〜80℃である、請求項1または2に記載のバリア性積層体。
【請求項4】
前記樹脂材料が極性基を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項5】
前記樹脂材料が、ポリアミドである、請求項1〜のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項6】
前記樹脂材料が、エチレンビニルアルコール共重合体である、請求項1〜のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項7】
前記多層基材の総厚さに対する、前記表面樹脂層の厚さの割合が、1%以上10%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項8】
前記多層基材が、共押フィルムである、請求項1〜のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項9】
前記表面樹脂層は、前記ポリプロピレン樹脂層上に設けられている、請求項1〜のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項10】
前記多層基材は、ポリプロピレン樹脂層と表面樹脂層との間に接着性樹脂層を備え請求項1〜8のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項11】
前記接着性樹脂層は、前記ポリプロピレン樹脂層上に設けられており、
前記表面樹脂層は、前記接着性樹脂層上に設けられている、請求項1に記載のバリア性積層体。
【請求項12】
包装容器用途に用いられる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項13】
前記無機酸化物が、シリカ、酸化炭化珪素またはアルミナである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のバリア性積層体と、シーラント層とを備えることを特徴とする、ヒートシール性積層体。
【請求項15】
前記シーラント層が、前記ポリプロピレン樹脂層と同一の材料により構成され、
前記同一材料は、ポリプロピレンである、請求項14に記載のヒートシール性積層体。
【請求項16】
請求項14または15に記載のヒートシール性積層体を備えることを特徴とする、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからなるフィルム(以下、ポリエステルフィルムともいう)は、機械的特性、化学的安定性、耐熱性および透明性に優れると共に、安価である。そのため、従来、ポリエステルフィルムは、包装容器の作製に使用される積層体を構成する基材として使用されている。
【0003】
包装容器に充填される内容物によっては、包装容器には高い酸素バリア性および水蒸気バリア性などのガスバリア性が要求される。この要求を満たすべく、包装容器は、ポリエステルフィルム表面に、アルミナやシリカなどを含む蒸着膜を形成することが広く行われている(特許文献1)。
【0004】
近年、ポリエステルフィルムに代わる樹脂材料が模索されており、ポリオレフィンフィルム、特にポリプロピレンフィルムを基材に適用することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−053223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来のポリエステルフィルム基材に代えて、ポリプロピレンの延伸フィルム(以下、延伸ポリプロピレンフィルムともいう)を使用することを検討した。検討の結果、本発明者らは、延伸ポリプロピレンフィルムの表面に蒸着膜を形成しても、満足するガスバリア性を得ることができないという新たな課題を見出した。
【0007】
そして、本発明者らが検討を進めたところ、該延伸ポリプロピレンフィルムに蒸着膜を設けた積層フィルムを使用した包装容器では、ポリエステルフィルム基材を使用する従来のバリア性積層体には見られない特有の現象、即ち、延伸ポリプロピレンフィルムと蒸着膜との層間で剥離が生じていることを見出し、その現象がガスバリア性を不十分なものとしているとの知見を得た。
【0008】
そして、本発明者らは、延伸ポリプロピレンフィルム表面に、180℃以上の融点を有する樹脂材料を含む表面樹脂層を設けることにより、当該表面樹脂層上に、形成される蒸着膜の密着性が改善されると共に、ガスバリア性も向上するとの知見を得た。
【0009】
本発明はかかる知見に基づいてなされ、その解決しようとする課題は、蒸着膜との層間の密着性に優れる多層基材を備え、高いガスバリア性を有する、バリア性積層体を提供することである。
【0010】
本発明の解決しようとする課題は、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体を提供することである。
本発明の解決しようとする課題は、該ヒートシール性積層体を備える包装容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のバリア性積層体は、多層基材と、蒸着膜とを備え、
前記多層基材は、延伸処理が施されており、
さらに、前記多層基材が、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面樹脂層とを備え、
前記表面樹脂層が、融点180℃以上の樹脂材料を含み、
前記蒸着膜が、無機酸化物から構成されることを特徴とする。
【0012】
上記バリア性積層体は、蒸着膜上に、バリアコート層をさらに備えてもよい。
【0013】
上記バリア性積層体において、樹脂材料の融点が、265℃以下であってもよい。
【0014】
上記バリア性積層体において、樹脂材料の融点と、ポリプロピレン樹脂層に含まれるポリプロピレンの融点と、の差が20〜80℃であってもよい。
【0015】
上記バリア性積層体において、樹脂材料が極性基を有してもよい。
【0016】
上記バリア性積層体において、樹脂材料が、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6、MXDナイロンおよびアモルファスナイロンから選択される1以上の樹脂材料であってもよい。
【0017】
上記バリア性積層体において、樹脂材料が、ポリアミドであってもよい。
【0018】
上記バリア性積層体において、樹脂材料が、エチレンビニルアルコール共重合体であってもよい。
【0019】
上記バリア性積層体において、多層基材の総厚さに対する、表面樹脂層の厚さの割合が、1%以上10%以下であってもよい。
【0020】
上記バリア性積層体において、多層基材が、共押フィルムであってもよい。
【0021】
上記バリア性積層体は、包装容器用途に用いられてもよい。
【0022】
上記バリア性積層体において、無機酸化物が、シリカ、酸化炭化珪素またはアルミナであってもよい。
【0023】
本発明のヒートシール性積層体は、上記バリア性積層体と、シーラント層とを備えることを特徴とする。
【0024】
上記ヒートシール積層体において、シーラント層が、ポリプロピレン樹脂層と同一の材料により構成され、同一材料は、ポリプロピレンであってもよい。
【0025】
本発明の包装容器は、上記ヒートシール性積層体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ポリプロピレンフィルムと蒸着膜との層間の密着性に優れ、高いラミネート強度を有する包装容器を作製でき、高いガスバリア性を有する、バリア性積層体を提供できる。
本発明によれば、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体を提供できる。
本発明によれば、該ヒートシール性積層体を備える包装容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のバリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図2】本発明のバリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図3】本発明のバリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図4】本発明のバリア性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図5】蒸着装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図6】蒸着装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図7】蒸着装置の別の一実施形態を示す概略断面図である。
図8】本発明のヒートシール性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図9】本発明のヒートシール性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図10】本発明のヒートシール性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図11】本発明のヒートシール性積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図12】本発明の包装容器の一実施形態を示す斜視図である。
図13】本発明の包装容器の一実施形態を示す斜視図である。
図14】本発明の包装容器の一実施形態を示す斜視図である。
図15】ラミネート強度の測定方法の一例を示す概略図である。
図16】ラミネート強度の測定方法の一例を示す概略図である。
図17】ラミネート強度を測定するために多層基材側とシーラント層側とを引っ張る一対のつかみ具の間の間隔に対する引張応力の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(バリア性積層体)
本発明のバリア性積層体10は、図1に示すように、多層基材11と、蒸着膜12とを備え、該多層基材11は、ポリプロピレン樹脂層13と、表面樹脂層14とを少なくとも備える。
一実施形態において、本発明のバリア性積層体10は、図2に示すように、蒸着膜12上に、バリアコート層15をさらに備える。
一実施形態において、多層基材11は、図3に示すように、ポリプロピレン樹脂層13と表面樹脂層14との間に、接着性樹脂層16を備える。
一実施形態において、本発明のバリア性積層体10は、図4に示すように、多層基材11と、蒸着膜12と、蒸着膜12上に設けられたバリアコート層15とを備える。該多層基材11は、ポリプロピレン樹脂層13と、接着性樹脂層16と、表面樹脂層14とを備え、接着性樹脂層16は、ポリプロピレン樹脂層13と表面樹脂層14との間に設けられている。
以下、本発明のバリア性積層体が備える各層について説明する。
【0029】
バリア性積層体のヘイズ値は、20%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。これにより、バリア性積層体の透明性を向上できる。
なお、本明細書において、バリア性積層体のヘイズ値は、JIS K 7105:1981に準拠し、ヘイズメーター((株)村上色彩技術研究所)により測定する。
【0030】
(多層基材)
多層基材は、ポリプロピレン樹脂層および表面樹脂層を少なくとも備える。多層基材は、ポリプロピレン樹脂層と表面樹脂層との間に接着性樹脂層を備えることができる。
【0031】
多層基材は、延伸処理が施されている。該延伸処理は、一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよい。
多層基材の縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)への延伸倍率は、2倍以上15倍以下であることが好ましく、5倍以上13倍以下であることが好ましい。
延伸倍率を2倍以上とすることにより、多層基材の強度および耐熱性をより向上できる。また、多層基材への印刷適性を向上できる。
多層基材の破断限界という観点からは、延伸倍率は15倍以下であることが好ましい。
【0032】
多層基材が備える表面樹脂層は、表面処理が施されていてもよい。これにより、隣接する層との密着性を向上できる。
表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
【0033】
(ポリプロピレン樹脂層)
ポリプロピレン樹脂層は、ポリプロピレンにより構成される。ポリプロピレン樹脂層は、単層構造を有しても、多層構造を有してもよい。
多層基材が、ポリプロピレンにより構成される層を備えることにより、該多層基材を使用して作製される包装容器の耐油性を向上できる。
【0034】
ポリプロピレン樹脂層に含まれるポリプロピレンは、ホモポリマー、ランダムコポリマーおよびブロックコポリマーのいずれであってもよい。
ポリプロピレンホモポリマーとは、プロピレンのみの重合体である。ポリプロピレンランダムコポリマーとは、プロピレンとプロピレン以外の他のα−オレフィン(例えばエチレン、ブテン−1、4−メチル−1−ペンテンなど)などとのランダム共重合体である。ポリプロピレンブロックコポリマーとは、プロピレンからなる重合体ブロックと、上記したプロピレン以外の他のα−オレフィンからなる重合体ブロックを有する共重合体である。
これらポリプロプロピレンの中でも、透明性の観点からは、ホモポリマーまたはランダムコポリマーを使用することが好ましい。包装袋の剛性や耐熱性を重視する場合には、ホモポリマーを使用し、耐衝撃性などを重視する場合にはランダムコポリマーを使用することが好ましい。
バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンを使用することもできる。
【0035】
ポリプロピレン樹脂層におけるポリプロピレンの含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の特性を損なわない範囲において、ポリプロピレン樹脂層は、ポリプロピレン以外の樹脂材料を含んでいてもよい。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂などが挙げられる。
本発明の特性を損なわない範囲において、ポリプロピレン樹脂層は、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料および改質用樹脂などが挙げられる。
【0037】
ポリプロピレン樹脂層の厚さは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上40μm以下であることがより好ましい。
ポリプロピレン樹脂層の厚さを10μm以上とすることにより、多層基材の強度および耐熱性をより向上できる。
ポリプロピレン樹脂層の厚さを50μm以下とすることにより、多層基材の製膜性および加工適性をより向上できる。
【0038】
ポリプロピレン樹脂層は、その表面に印刷層を有していてもよい。印刷層に形成される画像は、特に限定されず、文字、柄、記号およびこれらの組み合わせなどが表される。
基材への印刷層形成は、バイオマス由来のインキを用いて行うこともできる。これにより環境負荷を低減できる。
印刷層の形成方法は、特に限定されず、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法などの従来公知の印刷法を挙げることができる。
【0039】
(接着性樹脂層)
一実施形態において、多層基材は、ポリプロピレン樹脂層と、表面樹脂層との間に、接着性樹脂層を備えることができる。これにより、これら層間の密着性を向上できる。
【0040】
接着性樹脂層は、ポリエーテル、ポリエステル、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン、およびポリオレフィンの酸変性物などの接着性樹脂を使用することにより形成できる。
上記した中でも、後述するように、本発明のバリア性積層体と、ポリプロピレンからなるシーラント層との積層体を用いて作製される包装容器のリサイクル適性という観点からは、ポリオレフィンおよびこの酸変性物が好ましく、ポリプロピレンおよびこの酸変性物が特に好ましい。
接着性ポリプロピレンとしては、市販品を使用でき、例えば、三井化学(株)製、アドマーシリーズを使用できる。
【0041】
接着性樹脂層の厚さは特に限定されないが、例えば、1μm以上15μm以下とすることができる。接着性樹脂層の厚さを1μm以上とすることにより、ポリプロピレン樹脂層と、表面樹脂層との密着性をより向上できる。接着層の厚さを15μm以下とすることにより、多層基材の加工適性を向上できる。
【0042】
一実施形態において、多層基材は、共押フィルムであり、Tダイ法またはインフレーション法などを利用して製膜し、積層フィルムとした後、延伸することにより作製できる。
インフレーション法により製膜することにより、積層フィルムの延伸を同時に行うことができる。
【0043】
(表面樹脂層)
多層基材は、ポリプロピレン樹脂層上に、180℃以上の融点を有する樹脂材料(以下、高融点樹脂材料ともいう)を含む表面樹脂層を備え、該表面樹脂層上には高い密着性を有する蒸着膜を形成でき、ガスバリア性を向上できる。
後述するように、該表面樹脂層を備えるバリア性積層体を使用して作製される包装容器は高いラミネート強度を有する。
【0044】
高融点樹脂材料の融点は、185℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることがさらに好ましく、205℃以上であることが特に好ましい。
高融点樹脂材料の融点を185℃以上とすることにより、蒸着膜の密着性をより向上でき、ガスバリア性をより向上できる。また、包装容器のラミネート強度をより向上できる。
多層基材の製膜性という観点からは、高融点樹脂材料の融点は、265℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、融点は、JIS K7121:2012(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠して測定できる。具体的には、示差走査熱量測定(DSC)装置を用いて、10℃/分の昇温速度でDSC曲線を測定し、融点を求めることができる。
【0045】
表面樹脂層に含まれる高融点樹脂材料の融点と、ポリプロピレン樹脂層に含まれるポリプロピレンの融点の差は、20〜80℃であることが好ましく、20〜60℃であることがより好ましい。
表面樹脂層に含まれる高融点樹脂材料の融点と、ポリプロピレン樹脂層に含まれるポリプロピレンの融点の差が、20℃以上であることにより、蒸着膜の密着性をより向上でき、ガスバリア性をより向上できる。また、包装容器のラミネート強度をより向上できる。
表面樹脂層に含まれる高融点樹脂材料の融点と、ポリプロピレン樹脂層に含まれるポリプロピレンの融点の差が、80℃以下であることにより、多層基材の製膜性をより向上できる。
【0046】
高融点樹脂材料は、極性基を有することが好ましい。
本発明において、極性基とは、ヘテロ原子を1個以上含む基を指し、例えば、エステル基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸無水物基、スルフォン基、チオール基およびハロゲン基などが挙げられる。
これらの中でも、包装容器のラミネート強度の観点からは、水酸基、エステル基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基およびカルボニル基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0047】
高融点樹脂材料は、融点が180℃以上であれば特に限定されることなく使用できる。高融点樹脂材料としては、例えば、ビニル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂およびアイオノマー樹脂などが挙げられる。
【0048】
本発明においては、高融点樹脂材料は、融点が180℃以上であり、極性基を有する樹脂材料が特に好ましく、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6、MXDナイロン、アモルファスナイロンなどのポリアミドが好ましく、エチレンビニルアルコール共重合体およびポリビニルアルコールがより好ましい。
このような樹脂材料を使用することにより、表面樹脂層上に形成される蒸着膜の密着性を顕著に改善でき、そのガスバリア性を効果的に向上できる。
【0049】
一実施形態において、高融点樹脂材料は、エチレンビニルアルコール共重合体がより好ましい。高融点樹脂材料としてエチレンビニルアルコール共重合体を使用することにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。
【0050】
一実施形態において、高融点樹脂材料は、ポリアミドが好ましい。高融点樹脂材料としてポリアミドを使用することにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制でき、バリア性積層体を加熱してもガスバリア性の低下を抑制できる。高融点樹脂材料は、ナイロン6がより好ましい。
【0051】
表面樹脂層における高融点樹脂材料の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明の特性を損なわない範囲において、表面樹脂層は、高融点樹脂材料以外の樹脂材料を含んでいても良い。
本発明の特性を損なわない範囲において、表面樹脂層は、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料および改質用樹脂などが挙げられる。
【0053】
多層基材の総厚さに対する、表面樹脂層の厚さの割合は、1%以上10%以下であることが好ましく、1%以上5%以下であることがより好ましい。
多層基材の総厚さに対する、表面樹脂層の厚さの割合を、1%以上とすることにより、蒸着膜の密着性をより向上でき、ガスバリア性をより向上できる。また、包装容器のラミネート強度をより向上できる。
多層基材の総厚さに対する、表面樹脂層の厚さの割合を、10%以下とすることにより、多層基材の製膜性および加工適性をより向上できる。また、後述するように、本発明のバリア性積層体と、ポリプロピレンからなるシーラント層との積層体を用いて作製される包装容器のリサイクル適性を向上できる。
【0054】
表面樹脂層の厚さは、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上4μm以下であることがより好ましい。
表面樹脂層の厚さを0.1μm以上とすることにより、蒸着膜の密着性をより向上でき、ガスバリア性をより向上できる。また、包装容器のラミネート強度をより向上できる。
表面樹脂層の厚さを5μm以下とすることにより、多層基材の製膜性および加工適性をより向上できる。また、後述するように、本発明のバリア性積層体と、ポリプロピレンからなるシーラント層との積層体を用いて作製される包装容器のリサイクル適性を向上できる。
【0055】
(蒸着膜)
本発明のバリア性積層体は、表面樹脂層上に無機酸化物から構成される蒸着膜を備える。これにより、バリア性積層体のガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上できる。本発明のバリア性積層体を用いて作製した包装容器は、包装容器内に充填された内容物の質量減少を抑えることができる。
【0056】
無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化珪素(シリカ)、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム、酸化炭化珪素(炭素含有酸化珪素)などを挙げることができる。
上記した中でも、シリカ、酸化炭化珪素およびアルミナが好ましい。
一実施形態において、蒸着膜形成後のエージング処理が必要ないため、無機酸化物は、シリカがより好ましい。
一実施形態において、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できることから観点から、無機酸化物は、炭素含有酸化珪素がより好ましい。
【0057】
蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、バリア性積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上できる。
蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を防止できる。さらに、後述するように、本発明のバリア性積層体と、ポリプロピレンからなるシーラント層との積層体を用いて作製される包装容器のリサイクル適性を向上できる。
【0058】
蒸着膜の形成は、従来公知の方法を用いて行うことができる。蒸着膜の形成方法は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを挙げることができる。
【0059】
蒸着膜は、1回の蒸着工程により形成される単層であっても、複数回の蒸着工程により形成される多層であってもよい。多層である場合、各層は同一の材料であっても、異なる材料であってもよい。各層は、同一の方法により形成しても、異なる方法により形成してもよい。
【0060】
PVD法による蒸着膜の形成方法に使用される装置として、プラズマアシスト付きの真空成膜装置を使用できる。
プラズマアシスト付きの真空成膜装置を使用した蒸着膜の成膜方法の一実施形態を以下に記載する。
一実施形態において、真空成膜装置は、図5および6に示すように、真空容器A、巻出し部B、成膜用ドラムC、巻取り部D、搬送ロールE、蒸発源F、反応ガス供給部G、防着箱H、蒸着材料IおよびプラズマガンJを備える。
なお、図5は、真空成膜装置のXZ平面方向の概略断面図であり、図6は、真空成膜装置のXY平面方向の概略断面図である。
図5に示すように、真空容器A内の上部に、成膜用ドラムC法に巻き取られている多層基材11が、その表面樹脂層面を下向きに配置され、真空容器A内の成膜用ドラムCより下に、電気的に接地された防着箱Hが配置される。防着箱Hは底面に、蒸発源Fが配置される。蒸発源Fの上面と一定の間隔を空けて対向する位置に、成膜用ドラムCに巻き取られた多層基材11の表面樹脂層面が位置するように、真空容器A内に成膜用ドラムCが配置される。
巻出し部Bと成膜用ドラムCとの間、および成膜用ドラムCと巻き取り部Dとの間に、搬送ロールEが配置される。
なお、真空容器は、真空ポンプと連結している(図示せず)。
蒸発源Fは、蒸着材料Iを保持するためのものであり、加熱装置を備える(図示せず)。
反応ガス供給部Gは、蒸発した蒸着材料と反応する反応ガス(酸素、窒素、ヘリウム、アルゴンおよびこれらの混合ガスなど)を供給する部位である。
蒸発源Fから加熱され、蒸発した蒸着材料Iが、多層基材11の表面樹脂層上に、向けて照射され、これと同時に、プラズマガンJからも表面樹脂層に向けてプラズマが照射され、蒸着膜は形成される。
本形成方法の詳細は、特開2011−214089号公報において開示される。
【0061】
プラズマ化学気相成長法に使用されるプラズマ発生装置としては、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマなどの発生装置を使用できる。また2室以上の成膜室を有する装置を使用してもよい。該装置は、真空ポンプを備え、各成膜室を真空に保持できることが好ましい。
各成膜室における真空度は、1×10〜1×10−6Paであることが好ましい。
プラズマ発生装置を使用した蒸着膜の成膜方法の一実施形態を以下に記載する。
まず、多層基材を成膜室へ送り出し、補助ロールを介して、所定の速度で、冷却・電極ドラム上に搬送する。
次いで、ガス供給装置から、成膜室内へ、無機酸化物を含む成膜用モノマーガス、酸素ガスおよび不活性ガスなどを含む混合ガス組成物を供給し、表面樹脂層上に、グロー放電によりプラズマを発生させ、これを照射し、表面樹脂層上に無機酸化物を含む蒸着膜を形成する。
本形成方法の詳細は、特開2012−076292号公報において開示される。
【0062】
図7は、CVD法に使用されるプラズマ化学気相成長装置を示す概略的構成図である。
【0063】
一実施形態において、プラズマ化学気相成長装置は、図7に示すように、真空容器A1内に配置された巻出し部B1から、多層基材11を繰り出し、さらに、多層基材11を、搬送ロールE1を介して所定の速度で冷却・電極ドラムC1周面上に搬送する。反応ガス供給にG1から酸素、窒素、ヘリウム、アルゴンおよびこれらの混合ガスを供給し、および原料ガス供給部I1から成膜用モノマーガスなどを供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しながら原料供給ノズルH1を通して真空容器A1内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラムC1周面上に搬送された、多層基材11の表面樹脂層の上に、グロー放電プラズマF1によってプラズマを発生させ、これを照射して、蒸着膜を形成する。その際に、冷却・電極ドラムC1は、真空容器A1の外に配置されている電源K1から所定の電力が印加されており、冷却・電極ドラムC1の近傍には、マグネットJ1を配置してプラズマの発生を促進している。次いで、多層基材11は、蒸着膜を形成した後、所定の巻き取りスピードで搬送ロールE1を介して巻取り部D1に巻き取られる。なお、図中、L1は真空ポンプを表す。
【0064】
蒸着膜の形成方法に使用される装置として、プラズマ前処理室、成膜室を備える、連続蒸着膜成膜装置を使用できる。
該装置を使用した蒸着膜の成膜方法の一実施形態を以下に記載する。
まず、プラズマ前処理室において、プラズマ供給ノズルから、多層基材が備える表面樹脂層にプラズマが照射される。次いで、成膜室において、プラズマ処理された表面樹脂層上に、蒸着膜が成膜される。
本形成方法の詳細は、国際公開WO2019/087960号パンフレットにおいて開示される。
【0065】
蒸着膜の表面は、上記表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上できる。
【0066】
本発明のバリア性積層体において、蒸着膜は、CVD法により形成された蒸着膜が好ましく、CVD法により形成された炭素含有酸化珪素蒸着膜がより好ましい。これにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。
【0067】
炭素含有酸化珪素蒸着膜は、珪素、酸素、および炭素を含む。炭素含有酸化珪素蒸着膜において、炭素の割合Cは、珪素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、3%以上50%以下であることが好ましく、5%以上40%以下であることがより好ましく、10%以上35%以下であることがさらに好ましい。
炭素含有酸化珪素蒸着膜において、炭素の割合Cを上記範囲とすることにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。
なお、本明細書において、各元素の割合は、モル基準である。
【0068】
炭素含有酸化珪素蒸着膜の一実施形態において、珪素の割合Siは、珪素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、1%以上45%以下であることが好ましく、3%以上38%以下であることがより好ましく、8%以上33%以下であることがさらに好ましい。酸素の割合Oは、珪素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、10%以上70%以下であることが好ましく、20%以上65%以下であることがより好ましく、25%以上60%以下であることがさらに好ましい。
炭素含有酸化珪素蒸着膜において、珪素の割合Siおよび酸素の割合Oを上記範囲とすることにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下をより抑制できる。
【0069】
炭素含有酸化珪素蒸着膜の一実施形態において、酸素の割合Oは、炭素の割合Cよりも高いことが好ましく、珪素の割合Siは、炭素の割合Cよりも低いことが好ましい。酸素の割合Oは、珪素の割合Siよりも高いことが好ましい、即ち、各割合は、割合O、割合C、割合Siの順に低くなることが好ましい。これにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下をより抑制できる。
【0070】
炭素含有酸化珪素蒸着膜における割合C、割合Siおよび割合Oは、X線光電子分光法(XPS)により、以下の測定条件のナロースキャン分析によって測定できる。
(測定条件)
使用機器:「ESCA−3400」(Kratos製)
[1]スペクトル採取条件
入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)
X線出力:150W(10kV・15mA)
X線走査面積(測定領域):約6mmφ
光電子取込角度:90度
[2]イオンスパッタ条件
イオン種:Ar
加速電圧:0.2(kV)
エミッション電流:20(mA)
etch範囲:10mmφ
イオンスパッタ時間:30秒で実施し、スペクトルを採取
【0071】
(バリアコート層)
本発明のバリア性積層体は、蒸着膜上にバリアコート層をさらに備えることができる。これにより、バリア性積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上できる。
【0072】
一実施形態において、バリアコート層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、並びに(メタ)アクリル樹脂などのガスバリア性樹脂を含む。これらの中でも、酸素バリア性および水蒸気バリア性という観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
バリアコート層にポリビニルアルコールを含有させることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止できる。
【0073】
バリアコート層におけるガスバリア性樹脂の含有量は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、75質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。バリアコート層におけるガスバリア性樹脂の含有量を50質量%以上とすることにより、酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上できる。
【0074】
バリアコート層は、本発明の特性を損なわない範囲において、上記添加剤を含むことができる。
【0075】
バリアコート層の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
バリアコート層の厚さを0.01μm以上とすることにより、バリア性積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上できる。バリアコート層の厚さを10μm以下とすることにより、バリア性積層体の加工適性を向上できる。また、本発明のバリア性積層体と、ポリプロピレンからなるシーラント層との積層体を用いて作製される包装容器のリサイクル適性を向上できる。
【0076】
バリアコート層は、上記ガスバリア性樹脂を水または適当な溶剤に、溶解または分散させ、塗布、乾燥することにより形成できる。市販されるバリアコート剤を塗布、乾燥することによってもバリアコート層を形成できる。
【0077】
他の実施形態において、バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水および有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物などの樹脂組成物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜である。
このようなバリアコート層を蒸着膜上に設けることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止できる。
【0078】
一実施形態において、金属アルコキシドは、下記一般式で表される。
M(OR
(ただし、式中、R、Rは、それぞれ、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す。)
【0079】
金属原子Mとしては、例えば、珪素、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムなどを使用できる。
およびRで表される有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基およびi−ブチル基などのアルキル基を挙げることができる。
【0080】
上記一般式を満たす金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン(Si(OCH)、テトラエトキシシラン(Si(OC)、テトラプロポキシシラン(Si(OC)、テトラブトキシシラン(Si(OC)などが挙げられる。
【0081】
上記金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤が使用されることが好ましい。
シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができるが、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好ましい。エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランおよびβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0082】
上記のようなシランカップリング剤は、2種以上を使用してもよく、シランカップリング剤は、上記金属アルコキシドの合計量100質量部に対して、1〜20質量部程度の範囲内で使用することが好ましい。
【0083】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましく、酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐候性という観点からは、これらを併用することが好ましい。
【0084】
ガスバリア性塗布膜における水溶性高分子の含有量は、金属アルコキシド100質量部に対して5質量部以上500質量部以下であることが好ましい。
ガスバリア性塗布膜における水溶性高分子の含有量を、金属アルコキシド100質量部に対して5質量部以上とすることにより、バリア性積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上できる。ガスバリア性塗布膜における水溶性高分子の含有量を、金属アルコキシド100質量部に対して500質量部以下とすることにより、ガスバリア性塗布膜の製膜性を向上できる。
【0085】
ガスバリア性塗布膜において、水溶性高分子に対する金属アルコキシドの比(金属アルコキシド/水溶性高分子)は、質量基準において、4.5以下であることが好ましく、1.0以上4.5以下であることがより好ましく、1.7以上3.5以下であることがさらに好ましい。
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの比を4.5以下とすることにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの比を1.0以上とすることにより、バリア性積層体を加熱してもガスバリア性の低下を抑制できる。
なお、上記比は、固形分比である。
【0086】
ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、1.60以下であることが好ましく、0.50以上1.60以下であることがより好ましく、0.90以上1.35以下であることがさらに好ましい。
珪素原子と炭素原子の比を1.60以下とすることにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。
珪素原子と炭素原子の比を0.50以上とすることにより、バリア性積層体を加熱してもガスバリア性の低下を抑制できる。
珪素原子と炭素原子の比の上記範囲は、水溶性高分子に対する金属アルコキシドの比を適宜調整することにより達成できる。
なお、本明細書において、珪素原子と炭素原子の比は、モル基準である。
【0087】
X線光電子分光法(XPS)による珪素原子と炭素原子の比は、以下の測定条件のナロースキャン分析によって測定できる。
(測定条件)
使用機器:「ESCA−3400」(Kratos製)
[1]スペクトル採取条件
入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)
X線出力:150W(10kV・15mA)
X線走査面積(測定領域):約6mmφ
光電子取込角度:90度
[2]イオンスパッタ条件
イオン種:Ar
加速電圧:0.2(kV)
エミッション電流:20(mA)
etch範囲:10mmφ
イオンスパッタ時間: 30秒+30秒+60秒(トータル120秒)で実施し、スペクトルを採取
【0088】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがより好ましい。これにより、リサイクル性を維持しつつ、酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上できる。
ガスバリア性塗布膜の厚さを0.01μm以上とすることにより、バリア性積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上できる。また、蒸着膜におけるクラックの発生を防止できる。
ガスバリア性塗布膜の厚さを100μm以下とすることにより、本発明のバリア性積層体と、ポリプロピレンからなるシーラント層との積層体を用いて作製される包装容器のリサイクル適性を向上できる。
【0089】
ガスバリア性塗布膜は、上記材料を含む組成物を、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータなどの従来公知の手段により、塗布し、その組成物をゾルゲル法により重縮合することにより形成させることができる。
ゾルゲル法触媒としては、酸またはアミン系化合物が好適である。アミン系化合物としては、水に実質的に不溶であり、且つ有機溶剤に可溶な第3級アミンが好適であり、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミンなどが挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルべンジルアミンが好ましい。
ゾルゲル法触媒は、金属アルコキシド100質量部当り、0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲で使用することが好ましく、0.03質量部以上0.3質量部以下の範囲で使用することがより好ましい。
ゾルゲル法触媒の使用量を金属アルコキシド100質量部当り、0.01質量部以上とすることにより、その触媒効果を向上できる。ゾルゲル法触媒の使用量を金属アルコキシド100質量部当り、1.0質量部以下とすることにより、形成されるガスバリア性塗布膜の厚さを均一にできる。
【0090】
上記組成物は、さらに酸を含んでいてもよい。酸は、ゾル−ゲル法の触媒、主として金属アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。
酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに酢酸、酒石酸などの有機酸が用いられる。酸の使用量は、金属アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.001モル以上0.05モル以下であることが好ましい。
酸の使用量を金属アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.001モル以上とすることにより、触媒効果を向上できる。酸の使用量を金属アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.05モル以下とすることにより、形成されるガスバリア性塗布膜の厚さを均一にできる。
【0091】
上記組成物は、金属アルコキシドの合計モル量1モルに対して、好ましくは0.1モル以上100モル以下、より好ましくは0.8モル以上2モル以下の割合の水を含んでなることが好ましい。
水の含有量を金属アルコキシドの合計モル量1モルに対して、0.1モル以上とすることにより、本発明のバリア性積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上できる。水の含有量を金属アルコキシドの合計モル量1モルに対して、100モル以下とすることにより、加水分解反応を速やかに行うことができる。
【0092】
上記組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどを用いることができる。
【0093】
以下、ガスバリア性塗布膜の形成方法の一実施形態について以下に説明する。
まず、金属アルコキシド、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、水、有機溶剤および必要に応じてシランカップリング剤などを混合し、組成物を調製する。該組成物中では次第に重縮合反応が進行する。
次いで、蒸着膜上に、上記従来公知の方法により、該組成物を塗布、乾燥する。この乾燥により、金属アルコキシドおよび水溶性高分子(組成物が、シランカップリング剤を含む場合は、シランカップリング剤も)の重縮合反応がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。
最後に、該組成物を、例えば、20〜250℃、好ましくは50〜220℃の温度で、1秒〜10分間加熱することにより、ガスバリア性塗布膜を形成できる。
【0094】
バリアコート層は、その表面に印刷層が形成されていてもよい。印刷層の形成方法などについては上記した通りである。
【0095】
(ヒートシール性積層体)
本発明のヒートシール性積層体20は、図8〜11に示すように、上記バリア性積層体10と、シーラント層21とを備えることを特徴とする。
一実施形態において、図8に示すように、ヒートシール性積層体20のバリア性積層体10は、多層基材11と、蒸着膜12とを備え、該多層基材11は、ポリプロピレン樹脂層13と、ト層14とを少なくとも備える。
一実施形態において、図9に示すように、ヒートシール性積層体20のバリア性積層体10は、多層基材11と、蒸着膜12と、蒸着膜12上に設けられたバリアコート層15とを備え、該多層基材11は、ポリプロピレン樹脂層13と、表面樹脂層14とを少なくとも備える。
一実施形態において、図10に示すように、ヒートシール性積層体20のバリア性積層体10は、多層基材11と、蒸着膜12とを備える。該多層基材11は、ポリプロピレン樹脂層13と、接着性樹脂層16と、表面樹脂層14とを備え、接着性樹脂層16は、ポリプロピレン樹脂層13と表面樹脂層14との間に設けられている。
一実施形態において、図11に示すように、ヒートシール性積層体20のバリア性積層体10は、多層基材11と、蒸着膜12と、蒸着膜12上に設けられたバリアコート層15とを備える。該多層基材11は、ポリプロピレン樹脂層13と、接着性樹脂層16と、表面樹脂層14とを備え、接着性樹脂層16は、ポリプロピレン樹脂層13と表面樹脂層14との間に設けられている。
【0096】
ヒートシール性積層体において、多層基材と蒸着膜と間のラミネート強度は、15mm幅において、3N以上が好ましく、4N以上がより好ましく、5.5N以上が更に好ましい。ヒートシール性積層体のラミネート強度の上限は、20N以下であってもよい。
なお、ヒートシール性積層体のラミネート強度の測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0097】
以下、ヒートシール性積層体が備える各層について説明する。なお、バリア性積層体については上述したため、ここでは記載を省略する。
【0098】
(シーラント層)
一実施形態において、シーラント層は、熱によって相互に融着し得る樹脂材料により形成できる。
熱によって相互に融着し得る樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、メチルペンテンポリマーおよび環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィンが挙げられる。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン・α−オレフィン共重合体、エチレンおよびプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体等のエチレン−プロピレン共重合体が挙げられる。
熱によって相互に融着し得る樹脂材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、ヒートシール性エチレン−ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィンをアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂なども挙げられる。
【0099】
従来、基材と、シーラント層とを異種の樹脂材料により構成した積層体が包装容器の作製に使用されている。しかしながら、使用済みの包装容器を回収した後、基材とシーラント層とを分離するのが困難であるため、積極的にはリサイクルされていないという現状がある。
多層基材が備えるポリプロピレン樹脂層とシーラント層とを同一材料によって構成することにより、多層基材とシーラント層とを分離する必要がなく、そのリサイクル適正を向上できる。即ち、上記した樹脂材料の中でも、ヒートシール性積層体を用いて作製した包装容器のリサイクル適性という観点からは、シーラント層は、ポリプロピレンから構成されることが好ましい。
シーラント層をポリプロピレンにより構成することにより、ヒートシール性積層体を用いて作製される包装容器の耐油性を向上できる。
【0100】
本発明の特性を損なわない範囲において、シーラント層は、上記添加剤を含むことができる。
【0101】
シーラント層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
【0102】
シーラント層の厚さは、20μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上70μm以下であることがより好ましい。
シーラント層の厚さを20μm以上とすることにより、本発明のヒートシール性積層体を備える包装容器のラミネート強度をより向上できる。
シーラント層の厚さを100μm以下とすることにより、本発明のヒートシール性積層体の加工適性をより向上できる。
【0103】
(包装容器)
本発明の包装容器は、上記ヒートシール性積層体を備えることを特徴とする。包装容器としては、例えば、包装製品(包装袋)、蓋材およびラミネートチューブなどを挙げることができる。
【0104】
包装袋として、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。
【0105】
図12は、包装容器の一例である、スタンディングパウチの構成の一例を簡略に示す図である。図12に示すように、包装製品30は、胴部(側面シート)31と、底部(底面シート)32とで構成されている。スタンディングパウチ30が備える、側面シート31と底面シート32とは、同一部材により構成されていてもよく、別部材により構成されていてもよい。
【0106】
一実施形態において、包装製品30が備える胴部31は、本発明のヒートシール性積層体が備えるヒートシール層が最内層となるように製袋することにより形成できる。
他の実施形態において、側面シート31は、本発明のヒートシール性積層体を2枚準備し、これらをヒートシール層が向かい合うようにして重ね合わせ、重ね合わせ合わせたヒートシール性積層体の両端から、ヒートシール層が外側となるように、V字状に折った2枚の積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。このような作製方法によれば、図13に示すようなガセット33付きの胴部を有する包装製品30とすることができる。
【0107】
一実施形態において、包装製品30が備える底面シート32は、製袋された側面シートの間に本発明の積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。より具体的には、ヒートシール性積層体を、ヒートシール層が外側となるように、V字状に折り、V字状に折った積層体を製袋された側面シートの間に挿入し、ヒートシールすることにより、底面シート32を形成できる。
【0108】
一実施形態において、包装製品30は、図14に示すように、底部を有しない平状の包装袋であってもよい。
【0109】
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができる。
【0110】
包装容器に充填される内容物は、特に限定されず、内容物は、液体、粉体およびゲル体であってもよい。内容物は、食品であっても、非食品であってもよい。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0112】
実施例1−1
ポリアミド(宇部興産(株)製、ポリアミド6、融点:220℃)と、接着性樹脂(三井化学(株)製、アドマーQF500、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)と、ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、ノバテックFL203D、融点:160℃)とを共押出した後、逐次二軸延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍、横方向(TD方向)に10倍延伸して、多層基材を作製した。
上記のようにして作製した多層基材は、ポリアミドからなる表面樹脂層と、接着性樹脂からなる接着性樹脂層と、ポリプロピレンからなるポリプロピレン樹脂層とを備え、総厚さ20μmであった。
多層基材の層厚さに対するポリアミドからなる表面樹脂層の厚さの割合は、2%であった。
【0113】
上記のように作製した多層基材の表面樹脂層上に、実機である低温プラズマ化学気相成長装置を用いて、Roll to Rollにより、多層基材にテンションを与えながら、厚さ12nmの炭素含有酸化珪素蒸着膜を形成した(CVD法)。なお、蒸着膜形成条件は以下の通りとした。
(形成条件)
・ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1:10:10(単位:slm)
・冷却・電極ドラム供給電力:22kw
・ライン速度:100m/min
【0114】
炭素含有酸化珪素蒸着膜において、炭素の割合C、珪素の割合Si、および酸素の割合Oは、珪素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、それぞれ、32.7%、29.8%、および37.5%であった。各元素の割合は、X線光電子分光法(XPS)により、下記の測定条件のナロースキャン分析によって測定した。
(測定条件)
使用機器:「ESCA−3400」(Kratos製)
[1]スペクトル採取条件
入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)
X線出力:150W(10kV・15mA)
X線走査面積(測定領域):約6mmφ
光電子取込角度:90度
[2]イオンスパッタ条件
イオン種:Ar
加速電圧:0.2(kV)
エミッション電流:20(mA)
etch範囲:10mmφ
イオンスパッタ時間:30秒で実施し、スペクトルを採取
【0115】
水385g、イソプロピルアルコール67gおよび0.5N塩酸9.1gを混合し、調製したpH2.2の溶液を得た。この溶液に、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン175gと、シランカップリング剤としてグリシドキシプロピルトリメトキシシラン9.2gとを10℃となるように、冷却しながら混合し、溶液Aを得た。
水溶性高分子としてケン価度99%以上、重合度2400のポリビニルアルコール14.7g、水324gイソプロピルアルコール17gを混合し、溶液Bを得た。
溶液Aと、溶液Bとを、質量基準において、6.5:3.5となるように、混合し、バリアコート剤を得た。
【0116】
多層基材上に形成した蒸着膜上に、バリアコート剤をスピンコート法によりコーティングし、80℃で60秒間オーブンにて加熱処理を施し、厚さ300nmのバリアコート層を形成し、本発明のバリア性積層体を得た。
【0117】
実施例1−2
ポリアミドを、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ボパール(株)製、ボパールJC−33、融点:200℃)に変更し、表面樹脂層を形成した以外は、実施例1−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
【0118】
実施例1−3
ポリアミドを、エチレンビニルアルコール(クラレ(株)製、エバール F171B、融点:183℃)に変更し、表面樹脂層を形成した以外は、実施例1−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
【0119】
実施例1−4
ポリアミドを、非結晶性ポリエステル(東洋紡(株)製、バイロン RN−9300、融点:198℃)に変更し、表面樹脂層を形成した以外は、実施例1−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
【0120】
比較例1−1
ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、ノバテックFL203D、融点:160℃)を共押出した後、逐次二軸延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍、横方向(TD方向)に10倍延伸して、厚さ20μmの基材を作製した。
多層基材を上記のようにして作製した基材に変更した以外は、実施例1−1と同様にして、基材上に、蒸着膜およびバリアコート層を形成し、積層体を得た。
【0121】
実施例2−1
蒸着膜の形成を以下のように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
表面樹脂層上に、実機である、プラズマガンを備える誘導加熱式真空成膜装置を用いて、Roll to Rollにより、多層基材にテンションを与えながら、厚さ20nmの酸化珪素(シリカ)蒸着膜を形成した(PVD法)。なお、蒸着膜形成条件は以下の通りとした。
(形成条件)
(プラズマ照射条件)
・ライン速度:30m/分
・真空度:1.7×10−2Pa
・出力:5.7kw
・加速電圧:151V
・Arガス流量:7.5sccm
(成膜条件)
・蒸着材料:SiO
・反応ガス:O
・反応ガス流量:100sccm
【0122】
実施例2−2
ポリアミドを、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ボパール(株)製、ボパールJC−33、融点:200℃)に変更し、表面樹脂層を形成した以外は、実施例2−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
【0123】
実施例2−3
ポリアミドを、エチレンビニルアルコール(クラレ(株)製、エバール F171B、融点:183℃)に変更し、表面樹脂層を形成した以外は、実施例2−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
【0124】
実施例2−4
ポリアミドを、非結晶性ポリエステル(東洋紡(株)製、バイロン RN−9300、融点:198℃)に変更し、表面樹脂層を形成した以外は、実施例2−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
【0125】
比較例2−1
ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、ノバテックFL203D、融点:160℃)を共押出した後、逐次二軸延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍、横方向(TD方向)に10倍延伸して、厚さ20μmの基材を作製した。
多層基材を上記のようにして作製した基材に変更した以外は、実施例2−1と同様にして、基材上に、蒸着膜およびバリアコート層を形成し、積層体を得た。
【0126】
実施例3−1
蒸着膜の形成を以下のように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
表面樹脂層上に、実機である、酸素プラズマ前処理装置を配置した前処理区画と、成膜区画とを隔離して備える連続蒸着膜成膜装置を用いて、前処理区画において、Roll to Rollにより、多層基材にテンションを与えながら、下記条件下でプラズマ供給ノズルからプラズマを導入し、酸素プラズマ前処理を施し、連続搬送した成膜区画において、酸素プラズマ処理面に、下記条件で、真空蒸着法の加熱手段として反応性抵抗加熱方式を用い、厚さ12nmの酸化アルミニウム(アルミナ)蒸着膜を形成した(PVD法)。
(形成条件)
(酸素プラズマ前処理条件)
・プラズマ強度:200W・sec/m
・プラズマ形成ガス比:酸素:アルゴン=2:1
・前処理ドラム−プラズマ供給ノズル間印加電圧:340V
(成膜条件)
・搬送速度:400m/min
・酸素ガス供給量:20000sccm
【0127】
実施例3−2
ポリアミドを、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ボパール(株)製、ボパールJC−33、融点:200℃)に変更し、表面樹脂層を形成した以外は、実施例3−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
【0128】
実施例3−3
ポリアミドを、エチレンビニルアルコール(クラレ(株)製、エバール F171B、融点:183℃)に変更し、表面樹脂層を形成した以外は、実施例3−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
【0129】
実施例3−4
ポリアミドを、非結晶性ポリエステル(東洋紡(株)製、バイロン RN−9300、融点:198℃)に変更し、表面樹脂層を形成した以外は、実施例3−1と同様にして、バリア性積層体を作製した。
【0130】
比較例3−1
ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、ノバテックFL203D、融点:160℃)を共押出した後、逐次二軸延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍、横方向(TD方向)に10倍延伸して、厚さ20μmの基材を作製した。
多層基材を上記のようにして作製した基材に変更した以外は、実施例3−1と同様にして、基材上に、蒸着膜およびバリアコート層を形成し、積層体を得た。
【0131】
<<ガスバリア性評価>>
上記実施例および比較例において得られたバリア性積層体および積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、酸素透過度(cc/m・day・atm)および水蒸気透過度(g/m・day)を、以下の方法により測定した。その結果を表1〜3にまとめた。
【0132】
[酸素透過度]
酸素透過度測定装置(MOCON社製、OX−TRAN2/20)を用いて、試験片の多層基材側が酸素供給側になるようにセットして、JIS K 7126準拠して、23℃、相対湿度90%RH環境下における酸素透過度を測定した。
[水蒸気透過度]
水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、PERMATRAN―w 3/33)を用いて、試験片の多層基材側が水蒸気供給側になるようにセットして、JIS K 7129に準拠して、40℃、相対湿度90%RH環境下における水蒸気透過度を測定した。
【0133】
<<ラミネート強度試験>>
上記実施例および比較例において得られたバリア性積層体および積層体が備えるバリアコート層上に、厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネートしてシーラント層を形成、ヒートシール性積層体を作製した。
このヒートシール性積層体を15mm巾の短冊状にカットした試験片を、引張試験機((株)オリエンテック製、テンシロン万能材料試験機)を用いて、JIS K6854−2に準拠し、蒸着膜と表面樹脂層との間、および蒸着膜とポリプロピレンフィルムとの間のラミネート強度(N/15mm)を、剥離速度50mm/minで90°剥離(T字剥離法)を用いて測定した。
具体的には、まず、ヒートシール性積層体を切り出して、図15に示すように、多層基材側41と、シーラント層側42とを長辺方向において15mm剥離させた短冊状の試験片40を準備した。その後、図16に示すように、多層基材側41およびシーラント層側42のうち既に剥離されている部分をそれぞれ、測定器のつかみ具43で把持した。つかみ具43をそれぞれ、多層基材側41とシーラント層側42とがまだ積層されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域(図17参照)における引張応力の平均値を測定した。引っ張りを開始する際の、つかみ具43間の間隔Sは30mmとし、引っ張りを終了する際の、つかみ具43間の間隔Sは60mmとした。図17は、つかみ具43間の間隔Sに対する引張応力の変化を示す図である。図17に示すように、間隔Sに対する引張応力の変化は、第1領域を経て、第1領域よりも変化率の小さい第2領域(安定領域)に入る。
5個の試験片40について、安定領域における引張応力の平均値を測定し、その平均値をラミネート強度とした。測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%とした。測定結果を表1〜3にまとめた。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
実施例4−1
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、5.1となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例1−1と同様にしてバリア性積層体を作製した。
次いで、バリア性積層体が備えるバリアコート層上に、厚さ70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを2液硬化型ポリウレタン系接着剤でドライラミネートしてシーラント層を形成し、ヒートシール性積層体を作製した。
【0138】
実施例4−2
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、4.1となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例4−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0139】
実施例4−3
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、3.3となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例4−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0140】
実施例4−4
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、2.7となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例4−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0141】
実施例4−5
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、1.9となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例4−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0142】
実施例4−6
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、1.5となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例4−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0143】
実施例5−1
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、5.1となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例3−1と同様にしてバリア性積層体を作製した。
次いで、バリア性積層体が備えるバリアコート層上に、厚さ70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを2液硬化型ポリウレタン系接着剤でドライラミネートしてシーラント層を形成し、ヒートシール性積層体を作製した。
【0144】
実施例5−2
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、4.1となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例5−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0145】
実施例5−3
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、3.3となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例5−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0146】
実施例5−4
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、2.7となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例5−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0147】
実施例5−5
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、1.9となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例5−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0148】
実施例5−6
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、1.5となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例5−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0149】
実施例6−1
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、5.1となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例1−3と同様にしてバリア性積層体を作製した。
次いで、バリア性積層体が備えるバリアコート層上に、厚さ70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを2液硬化型ポリウレタン系接着剤でドライラミネートしてシーラント層を形成し、ヒートシール性積層体を作製した。
【0150】
実施例6−2
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、4.1となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例6−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0151】
実施例6−3
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、3.3となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例6−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0152】
実施例6−4
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、2.7となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例6−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0153】
実施例6−5
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、1.9となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例6−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0154】
実施例6−6
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、1.5となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例6−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0155】
実施例7−1
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、5.1となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例3−3と同様にしてバリア性積層体を作製した。
次いで、バリア性積層体が備えるバリアコート層上に、厚さ70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを2液硬化型ポリウレタン系接着剤でドライラミネートしてシーラント層を形成し、ヒートシール性積層体を作製した。
【0156】
実施例7−2
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、4.1となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例7−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0157】
実施例7−3
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、3.3となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例7−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0158】
実施例7−4
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、2.7となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例7−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0159】
実施例7−5
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、1.9となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例7−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0160】
実施例7−6
水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、1.5となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例7−1と同様してバリア性積層体およびヒートシール性積層体を作製した。
【0161】
<<バリアコート層表面の元素分析>>
実施例4〜7において得られたバリア性積層体について、バリアコート層表面に存在するSi元素とC元素の比を測定した。測定は、X線光電子分光法(XPS)により、下記の測定条件のナロースキャン分析で行った。その結果を表4〜7にまとめた。
(測定条件)
使用機器:「ESCA−3400」(Kratos製)
[1]スペクトル採取条件
入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)
X線出力:150W(10kV・15mA)
X線走査面積(測定領域):約6mmφ
光電子取込角度:90度
[2]イオンスパッタ条件
イオン種:Ar
加速電圧:0.2(kV)
エミッション電流:20(mA)
etch範囲:10mmφ
イオンスパッタ時間:30秒+30秒+60秒(トータル120秒)で実施し、スペクトルを採取
【0162】
<<ガスバリア性評価(ラミネート後)>>
実施例4〜7において得られたバリア性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度(cc/m・day・atm)および水蒸気透過度(g/m・day)を測定した。その結果を表4〜7にまとめた。なお、表4〜7では、酸素透過度および蒸気透過度の単位を省略する。
【0163】
<<ガスバリア性評価(ボイル後)>>
実施例4及び5において得られたバリア性積層体を用いて、図14に示すようなパウチ状包装容器を作製した。パウチ状包装容器の大きさは、B5サイズ(182mm×257mm)である。パウチ状包装容器の内部には、水100mLが充填されている。
パウチ状包装容器を、95℃で30分間ボイル処理した。パウチ状包装容器からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度(cc/m・day・atm)および水蒸気透過度(g/m・day)を測定した。その結果を表4および表5にまとめた。なお、表4および表5では、酸素透過度および蒸気透過度の単位を省略する。
【0164】
<<ガスバリア性評価(レトルト後)>>
実施例4および5において得られたバリア性積層体を用いて、図14に示すようなパウチ状包装容器を作製した。パウチ状包装容器の大きさは、B5サイズ(182mm×257mm)である。パウチ状包装容器の内部には、水100mLが充填されている。
パウチ状包装容器を、121℃で30分間レトルト殺菌処理した。パウチ状包装容器からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度(cc/m・day・atm)および水蒸気透過度(g/m・day)を測定した。その結果を表4および表5まとめた。なお、表4および表5では、酸素透過度および蒸気透過度の単位を省略する。
【0165】
<<ガスバリア性評価(ゲルボフレックス試験後)>>
実施例4〜7において得られたヒートシール性積層体を用いて、筒状の袋を作製した。この袋を用いて、ASTM F392に準拠したゲルボフレックス試験を10回繰り返した。
その後、当該袋からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度(cc/m・day・atm)および水蒸気透過度(g/m・day)を測定した。その結果を表4〜7にまとめた。なお、表4〜7では、酸素透過度および蒸気透過度の単位を省略する。
【0166】
【表4】
【0167】
【表5】
【0168】
【表6】
【0169】
【表7】
【符号の説明】
【0170】
10:バリア性積層体、11:多層基材、12:蒸着膜、13:ポリプロピレン樹脂層、14:表面樹脂層、15:バリアコート層、16:接着性樹脂層、20:ヒートシール性積層体、21:シーラント層、30:包装容器、31:胴部(側面シート)、32:底部(底面シート)、33:ガセット、40:試験片、41:多層基材側、42:シーラント層側、43:つかみ具、A:真空容器、B:巻出し部、C:成膜用ドラム、D:巻取り部、E:搬送ロール、F:蒸発源、G:反応ガス供給部、H:防着箱、I:蒸着材料、J:プラズマガン、A1:真空容器、B1:巻出し部、C1:冷却・電極ドラム、D1:巻取り部、E1:搬送ロール、F1:グロー放電プラズマ、G1:反応ガス供給部、H1:原料供給ノズル、I1:原料ガス供給部、J1:マグネット、K1:電源、L1:真空ポンプ
図1
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