(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1信号と前記第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、前記第2信号と前記第3信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である、
請求項1から3のいずれかに記載の伝送線路。
前記第3信号と前記第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、前記第3信号と前記第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である、
請求項1から4のいずれかに記載の伝送線路。
前記第1信号と前記第3信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、前記第1信号と前記第4信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である、
請求項6に記載の伝送線路。
前記並走部は、前記第1領域において、同一層で前記第2信号線に並走し、かつ、前記第2信号線を基準にして前記第1信号線とは反対側の位置に配置された第5信号線を備え、
前記並走部において、前記第2信号線と前記第5信号線との間には、前記第1グランド導体と前記第2グランド導体とを接続する導体がなく、
前記第5信号線を通過する第5信号と前記第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、前記第5信号と前記第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である、
請求項1から7のいずれかに記載の伝送線路。
前記第2信号と前記第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差、及び前記第2信号と前記第5信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差、は、前記第1信号と前記第5信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差より大きい、
請求項8に記載の伝送線路。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0013】
《第1の実施形態》
第1の実施形態では、3つの信号線を有する伝送線路について例示する。
【0014】
図1は第1の実施形態に係る伝送線路101の断面図である。
図2は伝送線路101の、積層前の絶縁基材状態での断面図である。
図3は伝送線路101の平面図である。
図1、
図2は、
図3におけるA−A部分の断面図である。
【0015】
本実施形態の伝送線路101は、
図2に表れているように、導体パターンと、その導体パターンが形成されて積層される絶縁基材L1,L2,L3と、で構成される。絶縁基材L1には第1グランド導体G1及びビア導体V1が形成されている。絶縁基材L2には第1信号用の第1信号線SL1、第2信号用の第2信号線SL2、第3信号用の第3信号線SL3、ビア導体V2及びビア接続導体VPが形成されている。また、絶縁基材L3には第2グランド導体G2及びビア導体V3が形成されている。
【0016】
図1に表れているように、上記絶縁基材L1,L2,L3が積層されて絶縁基材の積層体LLが構成される。第1グランド導体G1と第2グランド導体G2とは、絶縁基材L1,L2,L3の積層方向に互いに対向する。第1信号線SL1、第2信号線SL2及び第3信号線SL3は、第1グランド導体G1と第2グランド導体G2との間に配置されている。第1グランド導体G1及び第2グランド導体G2は、積層方向(Z軸方向)に視て第1信号線SL1、第2信号線SL2及び第3信号線SL3に重なる。
【0017】
ビア導体V1,V2,V3及びビア接続導体VPはグランド接続導体GCを構成している。第1グランド導体G1及び第2グランド導体G2はグランド接続導体GCを介して接続されている。
【0018】
上記絶縁基材L1,L2,L3は、例えばポリイミドや液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂シートであり、各絶縁基材L1,L2,L3を一括積層し、加熱プレスによって積層体LLが構成される。信号線SL1,SL2,SL3やグランド導体G1,G2は、銅等の金属箔をフォトリソグラフィー及びエッチングによってパターニングしたものである。ビア導体V1,V2,V3は絶縁基材L1,L2,L3に形成したビアホール導体用孔に錫等を主成分とする金属材料を充填したものである。
【0019】
図2、
図3に表れているように、第1信号線SL1、第2信号線SL2及び第3信号線SL3は、互いに同一層で並走する並走部PSを構成する。グランド接続導体GCは、並走部をこの並走部における信号線SL1,SL2,SL3の幅方向(Y軸方向)で第1領域R1と第2領域R2とに区分する。
【0020】
第1信号線SL1及び第2信号線SL2は第1領域R1に配置され、第3信号線SL3は第2領域R2に配置される。並走部PSにおいて、第1信号線SL1と第2信号線SL2との間には、第1グランド導体G1と第2グランド導体G2とを接続する導体はない。また、並走部PSにおいて、第1信号線SL1は第2信号線SL2に比べてグランド接続導体GC寄りに位置する。
【0021】
第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第1信号線SL1によって第1ストリップラインが構成され、第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第2信号線SL2によって第2ストリップラインが構成され、第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第3信号線SL3によって第3ストリップラインが構成される。
【0022】
図3に表れているように、第1信号線SL1を備える第1ストリップラインの一方端には接続部CC11、他方端には接続部CC12がそれぞれ形成されている。第2信号線SL2を備える第2ストリップラインの一方端には接続部CC21、他方端には接続部CC22がそれぞれ形成されている。また、第3信号線SL3を備える第3ストリップラインの一方端には接続部CC31、他方端には接続部CC32がそれぞれ形成されている。
【0023】
上記接続部CC11,CC12,CC21,CC22,CC31,CC32の下面にはそれぞれ同軸コネクタが設けられている。
【0024】
第1信号、第2信号はそれぞれ所定周波数帯の信号であるが、それぞれ基本波だけでなく、高調波を含む場合がある。したがって、第1信号と第2信号とについて、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との周波数差が存在する。これら周波数差のうち最も小さな周波数差を以下「最近接の周波数差」という。
【0025】
なお、基本波は、信号を構成する複数の周波数成分における最も低い周波数成分の周波数を意味する。そして、高調波は、基本波以外の周波数成分である。基本波及び高調波は、FFT(高速フーリエ変換)等の周波数アナライザなどを用いて測定することができる。
【0026】
また、上述の「最近接の周波数」とは、例えば、具体的には、次の例のような場合である。一方の基本波をf2の基本波(850MHz)とし、他方の基本波をf1の基本波(210MHz)とする。f2の基本波(850MHz)とf1の基本波(2100MHz)との差は、1250MHzとなる。f2の2倍高調波(1700MHz)とf1の基本波(2100MHz)との差は、400MHzとなる。f2の3倍高調波(2550MHz)とf1の基本波(2100MHz)との差は、450MHzとなる。f2の基本波(850MHz)とf1の2倍高調波(4200MHz)との差は、3350MHzとなる。
【0027】
したがって、この場合、「最近接の周波数」は、400MHzとなる。なお、他の周波数の関係、例えば、後述のf1、f2、f3、f4、f5等の関係についても、同様の定義で規定される。
【0028】
本実施形態の伝送線路101において、第1ストリップラインを伝搬する第1信号と、第2ストリップラインを伝搬する第2信号とについての一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第1信号と第3信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である。言い換えると、グランド接続導体GCが介して隣接する第1信号線SL1と第3信号線SL3を伝搬する第1信号と第3信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に小さいのに対し、グランド接続導体GCが介在せずに隣接する第1信号線SL1と第2信号線SL2を伝搬する第1信号と第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に大きい。
【0029】
また、第1信号と、第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第2信号と第3信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である。言い換えると、間にグランド接続導体GCが介在する、第2信号線SL2と第3信号線SL3を伝搬する第2信号と第3信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に小さいのに対し、グランド接続導体GCが介在せずに隣接する第1信号線SL1と第2信号線SL2を伝搬する第1信号と第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に大きい。
【0030】
例えば、第1信号の基本波周波数をf1、第2信号の基本波周波数をf2、第3信号の基本波周波数をf3、でそれぞれ表すと、
f1:2100MHz
f2:850MHz
f3:900MHz
である。この場合、f1とf2とについての最近接の周波数差は、f1の基本波とf2の2次高調波との周波数差400MHz(2100−850×2=400)、である。また、f1とf3とについての最近接の周波数差は、f1の基本波とf3の2次高調波との周波数差300MHz(2100−1800=300)、である。さらに、f2とf3とについての最近接の周波数差は、f2の基本波とf3の基本波との周波数差50MHz(900−850=50)、である。したがって、上記条件を満足する。
【0031】
つまり、|f1−2f2|>|f1−2f3|を満たし、
また、|f1−2f2|>|f2−f3|を満たす。
【0032】
また、本実施形態の伝送線路101において、第3信号と第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第3信号と第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である。言い換えると、近接しない第3信号線SL3と第2信号線SL2を伝搬する第3信号と第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に小さく、近接して隣接する第3信号線SL3と第1信号線SL1を伝搬する第3信号と第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に大きい。
【0033】
本実施形態では、f3とf1とについての最近接の周波数差は上記のとおり300MHzであり、f3の基本波とf2の基本波との周波数差は上記のとおり50MHzであり、この条件も満足する。
【0034】
つまり、|f1−2f3|>|f2−f3|を満たす。
【0035】
以上の例において、第1信号の基本波周波数をf1と第2信号の基本波周波数をf2とを入れ替えても同様に成り立つ。
【0036】
つまり、
f1:850MHz
f2:2100MHz
f3:900MHz
としても、
|2f1−f2|>|f1−f3|を満たす。
【0037】
また、|2f1−f2|>|f2−2f3|を満たす。
【0038】
なお、
図1、
図2に示した例では、第1信号線SL1、第2信号線SL2及び第3信号線SL3のすべてが同一層で並走する例を示したが、第1信号線SL1、第2信号線SL2及び第3信号線SL3は異なる層に形成されて並走していてもよい。例えば、第1信号線SL1及び第2信号線SL2の形成層と第3信号線SL3の形成層が異なっていてもよい。また、例えば、第1信号線SL1と第2信号線SL2の形成層が異なっていてもよい。ただし、このように異なる層に形成された信号線間にグランド導体は形成されていない。つまり、このように信号線間にグランド導体が無い構造においては、隣接する信号線間のアイソレーションが問題となるが、本実施形態の構造によれば、この信号線間のアイソレーションが確保される。
【0039】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0040】
・第1信号線SL1、第2信号線SL2、第3信号線SL3が積層方向に配置されず、同一層に形成されるため、伝送線路の厚み方向(Z軸方向)のサイズを小さくできる。
【0041】
・第1信号線SL1、第2信号線SL2及び第3信号線SL3の並走部PSにおいて、第1信号線SL1と第2信号線SL2との間に、第1グランド導体G1と第2グランド導体G2とを接続する導体がないため、伝送線路の幅方向(Y軸方向)のサイズを小さくできる。
【0042】
・並走部PSにおいて、第1信号線SL1は第2信号線SL2に比べてグランド接続導体GC寄りに位置するため、つまり、第2信号線SL2と第3信号線SL3とは相対的に離れているので、第2信号線SL2と第3信号線SL3とのアイソレーションが確保される。
【0043】
・第1信号線SL1と第3信号線SL3との間にはグランド接続導体GCが存在するので、このグランド接続導体GCによって、第1信号線SL1と第3信号線SL3とのアイソレーションが確保される。
【0044】
・第1信号と第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第1信号と第3信号とについての一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差より大きいので、第1信号と第2信号との干渉が効果的に抑制される。
【0045】
・第1信号と第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第2信号と第3信号とについての一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上であるので、第1信号と第2信号との干渉が効果的に抑制される。
【0046】
・第3信号と第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第3信号と第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上であるので、第3信号と第2信号とのアイソレーションを保ちつつ、第3信号と第1信号とのアイソレーションも確保される。
【0047】
なお、
図3では、それぞれ独立した複数のビア接続導体VPを設けた例を示したが、このビア接続導体VPは、第1信号線SL1及び第3信号線SL3に沿った単一の線状の導体パターンであってもよい。その構成であれば、第1信号線SL1と第3信号線SL3とのアイソレーションをより高めることができる。
【0048】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、4つの信号線を有する伝送線路について例示する。
【0049】
図4は第2の実施形態に係る伝送線路102の断面図である。この伝送線路102は、第1の実施形態で示した伝送線路101において、第3信号線SL3に隣接する第4信号線SL4を更に備えるものである。各絶縁基材の構成、並走部の構成などは第1の実施形態で示した伝送線路101と同様である。
【0050】
図4に表れているように、複数の絶縁基材が積層されて絶縁基材の積層体LLが構成される。第1グランド導体G1と第2グランド導体G2とは、絶縁基材の積層体LLの積層方向に互いに対向する。第1信号用の第1信号線SL1、第2信号用の第2信号線SL2、第3信号用の第3信号線SL3及び第4信号用の第4信号線SL4は、第1グランド導体G1と第2グランド導体G2との間に配置されている。第1グランド導体G1及び第2グランド導体G2は、積層方向(Z軸方向)に視て第1信号線SL1、第2信号線SL2、第3信号線SL3及び第4信号線SL4に重なる。第1グランド導体G1及び第2グランド導体G2はグランド接続導体GCを介して接続されている。
【0051】
第1信号線SL1、第2信号線SL2、第3信号線SL3及び第4信号線SL4は、互いに同一層で(幅方向に)並走する並走部を構成する。グランド接続導体GCは、並走部をこの並走部における信号線SL1,SL2,SL3,SL4の幅方向(Y軸方向)で第1領域R1と第2領域R2とに区分する。
【0052】
上記並走部において、第3信号線SL3と第4信号線SL4との間には、第1グランド導体G1と第2グランド導体G2とを接続する導体はない。
【0053】
第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第1信号線SL1によって第1ストリップラインが構成され、第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第2信号線SL2によって第2ストリップラインが構成され、第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第3信号線SL3によって第3ストリップラインが構成され、第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第4信号線SL4によって第4ストリップラインが構成される。
【0054】
本実施形態の伝送線路102において、第3信号と第4信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第3信号と第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である。言い換えると、グランド接続導体GCが介して隣接する第3信号線SL3と第1信号線SL1を伝搬する第3信号と第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に小さいのに対し、グランド接続導体GCが介在せずに隣接する第2信号線SL2と第4信号線SL4を伝搬する第3信号と第4信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に大きい。
【0055】
例えば、第1信号の基本波周波数をf1、第2信号の基本波周波数をf2、第3信号の基本波周波数をf3、第4信号の基本波周波数をf4、でそれぞれ表すと、
f1:2100MHz
f2:850MHz
f3:900MHz
f4:2100MHz
である。この場合、f3とf4とについての最近接の周波数差は、f3の2次高調波とf4の基本波との周波数差300MHz(2100−900×2=300)、である。また、f3とf1とについての最近接の周波数差は、f3の2次高調波とf1の基本波との周波数差300MHz(2100−900×2=300)、である。したがって、上記条件を満足する。
【0056】
また、本実施形態の伝送線路102において、第1信号と第3信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第1信号と第4信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である。言い換えると、間にグランド接続導体GCが介在する、第1信号線SL1と第3信号線SL3を伝搬する第1信号と第3信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に小さいのに対し、グランド接続導体GCが介在せずに隣接する第1信号線SL1と第4信号線SL4を伝搬する第1信号と第4信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は相対的に大きい。
【0057】
本実施形態では、f1とf3とについての最近接の周波数差は上記のとおり300MHzであり、f1の基本波とf4の基本波との周波数差は上記のとおり0MHzであり、この条件も満足する。
【0058】
本実施形態によれば、第1の実施形態で述べた効果以外に次のような効果を奏する。
【0059】
・互いに隣接する信号線を伝搬する信号の周波数差(一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差)が、互いに隣接しない信号線についての信号の周波数差(一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差)より大きいので、互いに隣接する信号線間のアイソレーションを効果的に確保できる。
【0060】
図4に示した例では、信号線SL2−SL1間のアイソレーション、信号線SL1−SL3間のアイソレーション、信号線SL3−SL4間のアイソレーション、がそれぞれ確保される。信号線SL1−SL3間のアイソレーションはグランド接続導体GCによって、さらに確保される。
【0061】
《第3の実施形態》
第3の実施形態でも、4つの信号線を有する伝送線路について例示する。
【0062】
図5は第3の実施形態に係る伝送線路103の断面図である。この伝送線路103は、第1の実施形態で示した伝送線路101において、第2信号線SL2に隣接する第5信号線SL5を更に備えるものである。各絶縁基材の構成、並走部の構成などは第1の実施形態で示した伝送線路101と同様である。
【0063】
図5に表れているように、複数の絶縁基材が積層されて絶縁基材の積層体LLが構成される。第1グランド導体G1と第2グランド導体G2とは、絶縁基材の積層体LLの積層方向に互いに対向する。第1信号用の第1信号線SL1、第2信号用の第2信号線SL2、第3信号用の第3信号線SL3及び第5信号用の第5信号線SL5は、第1グランド導体G1と第2グランド導体G2との間に配置されている。第1グランド導体G1及び第2グランド導体G2は、積層方向(Z軸方向)に視て第1信号線SL1、第2信号線SL2、第3信号線SL3及び第5信号線SL5に重なる。第1グランド導体G1及び第2グランド導体G2はグランド接続導体GCを介して接続されている。
【0064】
第1信号線SL1、第2信号線SL2、第3信号線SL3及び第5信号線SL5は、互いに同一層で(幅方向に)並走する並走部を構成する。第5信号線SL5は、第2信号線SL2を基準にして第1信号線SL1とは反対側の位置に配置されている。グランド接続導体GCは、並走部をこの並走部における信号線SL1,SL2,SL3,SL5の幅方向(Y軸方向)で第1領域R1と第2領域R2とに区分する。
【0065】
上記並走部において、第2信号線SL2と第5信号線SL5との間には、第1グランド導体G1と第2グランド導体G2とを接続する導体はない。
【0066】
第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第1信号線SL1によって第1ストリップラインが構成され、第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第2信号線SL2によって第2ストリップラインが構成され、第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第3信号線SL3によって第3ストリップラインが構成され、第1グランド導体G1、第2グランド導体G2及び第5信号線SL5によって第5ストリップラインが構成されている。
【0067】
本実施形態の伝送線路103において、第5信号と第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第5信号と第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上である。
【0068】
例えば、第1信号の基本波周波数をf1、第2信号の基本波周波数をf2、第3信号の基本波周波数をf3、第5信号の基本波周波数をf5、でそれぞれ表すと、
f1:2100MHz
f2:850MHz
f3:2100MHz
f5:2100MHz
である。この場合、f5とf2とについての最近接の周波数差は、f5の基本波とf2の2次高調波との周波数差400MHz(2100−850×2=400)、である。また、f5とf1とについての最近接の周波数差は、f5の基本波とf1の基本波との周波数差0MHz(2100−2100=0)、である。したがって、上記条件を満足する。つまり、|f5−2f2|>|f5−f1|を満たす。
【0069】
また、本実施形態の伝送線路103において、第2信号と第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差、及び第2信号と第5信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差、は、第1信号と第5信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差より大きい。本実施形態では、f2とf1とについての最近接の周波数差は上記のとおり400MHzであり、f2とf5とについての最近接の周波数差は上記のとおり400MHzであり、f1の基本波とf5の基本波との周波数差は上記のとおり0MHzであり、この条件も満足する。つまり、
|2f2−f1|>|f1−f5| かつ、
|2f2−f5|>|f1−f5|を満たす。
【0070】
以上の例では、三つの信号が同一周波数であって、2種の周波数信号を扱う例を示したが、3種の周波数信号を扱う場合にも、次に示すように、同様に適用できる。
【0071】
例えば、
f1:2100MHz
f2:850MHz
f3:900MHz
f5:2100MHz
の場合、f5とf2とについての最近接の周波数差は、f5の基本波とf2の2次高調波との周波数差400MHz(2100−850×2=400)、である。また、f5とf1とについての最近接の周波数差は、f5の基本波とf1の基本波との周波数差0MHz(2100−2100=0)、である。したがって、上記条件を満足する。つまり、
|f5−2f2|>|f5−f1|を満たす。
【0072】
また、f2とf1とについての最近接の周波数差は上記のとおり400MHzであり、f2とf5とについての最近接の周波数差は上記のとおり400MHzであり、f1の基本波とf5の基本波との周波数差は上記のとおり0MHzであり、この条件も満足する。つまり、
|2f2−f1|>|f1−f5| かつ、
|2f2−f5|>|f1−f5|を満たす。
【0073】
本実施形態によれば、第1の実施形態で述べた効果以外に次のような効果を奏する。
【0074】
・第3信号線SL3、第1信号線SL1、第2信号線SL2及び第5信号線SL5の並走部において、第2信号線SL2と第5信号線SL5との間に、第1グランド導体G1と第2グランド導体G2とを接続する導体がないため、幅方向(Y軸方向)のサイズを小さくできる。
【0075】
・第5信号と第2信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差は、第5信号と第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差以上であるので、第2信号と第5信号との干渉が効果的に抑制される。
【0076】
・第2信号と第1信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差、及び第2信号と第5信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差、は、第1信号と第5信号とについての、一方の基本波と他方の基本波又は高調波との最近接の周波数差より大きいので、第1信号と第5信号との干渉が効果的に抑制される。
【0077】
《第4の実施形態》
第4の実施形態でも、4つの信号線を有する伝送線路について例示する。
【0078】
図6は第4の実施形態に係る伝送線路104の断面図である。各絶縁基材の構成、並走部の構成などは第1の実施形態で示した伝送線路101と同様である。
【0079】
図6に表れているように、複数の絶縁基材が積層されて絶縁基材の積層体LLが構成される。第1グランド導体G1と第2グランド導体G2とは、絶縁基材の積層体LLを介して互いに対向する。信号線SLa,SLb,SLc,SLdは、第1グランド導体G1と第2グランド導体G2との間に配置されている。第1グランド導体G1及び第2グランド導体G2は、積層方向(Z軸方向)に視て、信号線SLa,SLb,SLc,SLdに重なる。第1グランド導体G1及び第2グランド導体G2はグランド接続導体GCa,GCbを介して接続されている。
【0080】
図6において、信号線SLa,SLb,SLc、グランド導体G1,G2及びグランド接続導体GCaによって構成される部分は、第1の実施形態で示した伝送線路101と同じである。つまり、信号線SLa,SLb,SLcは第1の実施形態で示した伝送線路101における信号線SL1,SL2,SL3にそれぞれ対応し、グランド接続導体GCaは、第1の実施形態で示した伝送線路101におけるグランド接続導体GCに対応する。
【0081】
また、この
図6において、信号線SLb,SLa,SLd、グランド導体G1,G2及びグランド接続導体GCbによって構成される部分は、第1の実施形態で示した伝送線路101と同じである。つまり、信号線SLb,SLa,SLdは第1の実施形態で示した伝送線路101における信号線SL1,SL2,SL3にそれぞれ対応し、グランド接続導体GCbは、第1の実施形態で示した伝送線路101におけるグランド接続導体GCに対応する。
【0082】
本実施形態で示すように、3つの信号線及び1つのグランド接続導体を備える伝送線路部を複数備えることで伝送線路を構成してもよい。
【0083】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、本発明に係る電子機器の構成例について例示する。
【0084】
図7は第5の実施形態に係る電子機器201の断面図である。この電子機器201は、所定の回路が構成された回路基板10と、この回路基板10を収納する筐体20とを備える。
図8は回路基板10の主要部の平面図である。
【0085】
回路基板10には、伝送線路101が搭載されている。この伝送線路101は第1の実施形態で示した伝送線路101である。また、回路基板10には、実装部品11,12,13,14,15が実装されている。これら実装部品は集積回路、高周波モジュール部品、チップコンデンサ等である。
【0086】
回路基板10には、伝送線路101の下面に設けられている接続部CC11,CC12,CC21,CC22,CC31,CC32の同軸コネクタ(プラグ)がそれぞれ接続されるレセプタクルが設けられている。伝送線路101は、その接続部CC11,CC12,CC21,CC22,CC31,CC32のプラグが回路基板10のレセプタクルに取り付けられることによって、回路基板10に搭載される。
【0087】
図9は本実施形態の別の電子機器202の主要部の正面図である。この電子機器202は、段差部を有する回路基板10と、この回路基板10に搭載される伝送線路101とを備える。
【0088】
回路基板10にはレセプタクルCRが設けられていて、伝送線路101のプラグCPが接続される。伝送線路101は、絶縁基材の積層方向に曲げられた曲げ部BSを有する。このように、伝送線路101が曲げ部BSを有することで、回路基板10の段差部に沿って伝送線路101を搭載できる。
【0089】
本発明によれば、伝送線路101の厚み方向(Z軸方向)のサイズが小さい(薄く形成できる)ので、厚み方向の曲げ加工が容易となり、段差部に沿った形状の伝送線路を容易に形成できる。
【0090】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0091】
例えば、各実施形態で示した伝送線路において、信号線の数はその実施形態で示した例に限るものではなく、さらに別の信号線を増設して、多芯化してもよい。
【0092】
また、各実施形態では、複数の信号線と、それら信号線を挟む第1グランド導体G1及び第2グランド導体G2とで複数のストリップラインを構成した例を示したが、積層方向にさらに別のグランド導体及び信号線を設けて多芯化してもよい。