(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1主面及び前記第1主面に対向する第2主面を有する半導体層と、前記第1主面側に設けられたソース電極と、前記第2主面側に設けられたドレイン電極と、を備え、ゲート電極に印加する電圧により前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に流れる電流を制御する半導体装置であって、
前記ソース電極とは別体に設けられ、前記半導体層の前記第1主面側に設けられたセンスソース電極と、
前記半導体層の主要部を構成する第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の表層に選択的に設けられ、前記センスソース電極に電気的に接続された第2導電型のセンスウェル領域と、
前記センスウェル領域の表層に選択的に設けられ、前記センスソース電極に電気的に接続された第1導電型のセンスソース領域と、
前記センスウェル領域とは別に前記ドリフト層の表層に選択的に設けられ、前記センスソース電極に電気的に接続された、チャネルが形成されない第2導電型のダミーセンスウェル領域と、
前記ダミーセンスウェル領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜と、
前記センスソース電極と前記ドリフト層との間に設けられ、前記センスウェル領域または前記ダミーセンスウェル領域と前記ドリフト層とから構成されるpnダイオードの動作電圧よりも立ち上がり電圧が低く、前記センスソース電極から前記ドレイン電極に向けて流れる電流を通電可能なダイオードと、
を備え、
前記ダミーセンスウェル領域と前記ダイオードとが配置されるダミーセンス領域内において、前記ダイオードは、前記ダミーセンスウェル領域が前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する領域である対向領域と混在するように設けられる、
半導体装置。
前記ダミーセンスウェル領域の表層に選択的に設けられ、前記センスソース電極に電気的に接続され、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向する第1導電型のダミーセンスソース領域をさらに備える、
請求項8に記載の半導体装置。
前記対向領域において、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と対向する位置には前記ダミーセンスソース領域が設けられており、前記ダミーセンスウェル領域は、前記ゲート絶縁膜と接していない、
請求項9に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的に示されたものであり、異なる図面にそれぞれ示されている画像のサイズ及び位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されたものではなく、適宜変更され得る。また、以下の説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称及び機能も同一または同様のものとする。よって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
【0014】
また、各図面においては、特定の領域や各領域間の境界を示すために破線を図示している場合があるが、これらは説明の便宜上、または図面の理解を容易にするために記載しているものであって、各実施の形態の内容を何ら限定するものではない。
【0015】
また、以下の説明では、「上」、「下」、「側」、「底」、「表」及び「裏」などの特定の位置及び方向を意味する用語が用いられる場合があるが、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするため便宜上用いられているものであり、実際に実施される際の方向とは関係しない。
【0016】
本開示において、構成要素の相互関係を「〜上」や「〜下」などの用語を用いて表現する場合、構成要素間に介在物が存在することを妨げるものではない。例えば、「A上に設けられたB」と記載している場合、AとBとの間に他の構成要素Cが設けられたものも、設けられていないものも含む。また、本開示において、「〜上」や「〜下」などの用語を用いて表現する場合、積層構造を念頭に置いた上下の概念も含む。例えば、「溝を覆うA上に設けられたB」と記載している場合、BはAから見た溝面と逆方向に存在することの意味を含み、その意味の範囲内で横方向や斜め方向も含む。
【0017】
以下の記載では、不純物の導電型に関して、第1導電型をn型、第2導電型をp型とした場合について説明するが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。また、MOSFETのドレインからソースに向けて流れる電流を順方向電流、ソースからドレインに向けて流れる電流を還流電流と呼ぶことにする。
【0018】
なお、「MOS」という用語は、古くは金属/酸化物/半導体の接合構造に用いられており、Metal−Oxide−Semiconductorの頭文字を採ったものとされている。しかしながら特にMOS構造を有する電界効果トランジスタ(以下、単に「MOSトランジスタ」と称する)においては、近年の集積化や製造プロセスの改善などの観点からゲート絶縁膜やゲート電極の材料が改善されている。
【0019】
例えばMOSトランジスタにおいては、主としてソース・ドレインを自己整合的に形成する観点から、ゲート電極の材料として金属の代わりに多結晶シリコンが採用されてきている。また電気的特性を改善する観点から、ゲート絶縁膜の材料として高誘電率の材料が採用されるが、この材料は必ずしも酸化物には限定されない。
【0020】
従って「MOS」という用語は必ずしも金属/酸化物/半導体の積層構造のみに限定されて採用されているわけではなく、本明細書でもそのような限定を前提としない。すなわち、技術常識に鑑みて、ここでは「MOS」とはその語源に起因した略語としてのみならず、広く導電体/絶縁体/半導体の積層構造をも含む意義を有する。
【0021】
実施の形態1.
<構成>
図1は、本開示の実施の形態1に係る半導体装置101の全体を模式的に表す上面模式図である。
図1に示すように、実施の形態1の半導体装置101は、メイン領域50と、センス領域60と、境界領域70と、を有する。センス領域60には、活性センス領域61と、ダミーセンス領域62と、が含まれる。
【0022】
図2は、メイン領域50の一部の断面を示す断面模式図である。
図2に示すように、半導体装置101は、メイン領域50において、半導体基板1、ドリフト層2、ウェル領域3、ソース領域4、ショットキー接合部5、ゲート絶縁膜6、ゲート電極7、層間絶縁膜8、ソース電極9、及びドレイン電極10を備えている。なお、以下において、半導体基板1、ドリフト層2、ウェル領域3、ソース領域4などを含む半導体材料からなる領域のことを半導体層と称することがある。
【0023】
n型の半導体基板1上には、n型のドリフト層2が設けられている。ドリフト層2は、半導体層の大部分を占めており、半導体層の主要部を構成する。ドリフト層2の表層には、p型のウェル領域3が選択的に設けられている。ウェル領域3の表層には、n型のソース領域4が選択的に設けられている。
【0024】
ウェル領域3及びソース領域4の上には、ウェル領域3及びソース領域4に面してゲート絶縁膜6が形成されている。ゲート絶縁膜6上には、部分的にゲート電極7が形成されている。ゲート電極7は、ウェル領域3、ソース領域4、及びドリフト層2に対して、ゲート絶縁膜6を介して対向するように設けられている。
【0025】
メイン領域50において、ゲート電極7上には、ゲート電極7を覆うように層間絶縁膜8が設けられている。層間絶縁膜8上には、層間絶縁膜8を覆うようにソース電極9(第1主電極)が設けられている。ソース電極9は、ウェル領域3、ソース領域4、及びドリフト層2に対し、層間絶縁膜8に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続されている。ソース電極9は、ウェル領域3及びソース領域4にオーミック接続している。
【0026】
半導体基板1において、ソース電極9が設けられた面とは反対側の面には、ドレイン電極10(第2主電極)が設けられている。ソース電極9は、半導体層(半導体基板1)のおもて面(第1主面)側に設けられており、ドレイン電極10は、半導体層(半導体基板1)のおもて面に対向する裏面(第2主面)側に設けられる。
【0027】
メイン領域50は、MOSFET構造を有する。すなわち、ソース電極9に対してゲート電極7に一定以上の正電圧を印加したとき、ドリフト層2上のウェル領域3がゲート絶縁膜6を介してゲート電極7と接する領域においてチャネルが形成される。これにより、ソース領域4とドリフト層2との間が導通状態になる。このようにして、半導体装置101は、ゲート電極7に印加する電圧を制御することによりソース電極9とドレイン電極10との間に流れる電流を制御する。
【0028】
メイン領域50には、上述のMOSFET構造を形成する最小の単位構造である単位セルが、複数配置される。単位セルは、ストライプ状(櫛形)に配置されてもよいし、格子形状に配置されてもよい。
【0029】
メイン領域50において、ソース電極9とドリフト層2との間には、ソース電極9とドリフト層2とが接する部分にショットキー接合部5が設けられている。このショットキー接合部5により、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)が形成されている。このSBD(第2ダイオード)は、ウェル領域3とドリフト層2とから構成されるpnダイオードの動作電圧よりも立ち上がり電圧が低いダイオードである。また、SBDは、順方向電流を流さずに還流電流だけを流す、一方向のみに通電可能なユニポーラ型のダイオードである。SBDは、メイン領域50内において分散するように複数箇所に形成されていてもよい。
【0030】
図3(a)は、センス領域60の一部の断面を示す断面模式図である。
図3(a)に示すように、半導体装置101は、活性センス領域61において、半導体基板1、ドリフト層2、センスウェル領域13、センスソース領域14、ショットキー接合部15、センスゲート絶縁膜16、ゲート電極7、センス層間絶縁膜18、センスソース電極19、及びドレイン電極10を備えている。また、ダミーセンス領域62には、半導体基板1、ドリフト層2、ダミーセンスウェル領域23、ショットキー接合部25、ダミーセンスゲート絶縁膜26、ゲート電極7、ダミーセンス層間絶縁膜28、センスソース電極19、及びドレイン電極10が配置されている。
【0031】
なお、以下において、センスウェル領域13及びダミーセンスウェル領域23のことや、これにウェル領域3を含めて各ウェル領域などと称することがある。ゲート絶縁膜6、センスゲート絶縁膜16、及びダミーセンスゲート絶縁膜26のことを纏めて各ゲート絶縁膜などと称することがある。層間絶縁膜8、センス層間絶縁膜18、及びダミーセンス層間絶縁膜28のことを纏めて各層間絶縁膜などと称することがある。ソース電極9及びセンスソース電極19のことを纏めて各ソース電極などと称することがある。
【0032】
図3(a)に示すように、ドリフト層2の表層には、ウェル領域3とは別に、p型のセンスウェル領域13(第1半導体領域)が選択的に設けられている。センスウェル領域13の表層には、n型のセンスソース領域14(第2半導体領域)が選択的に設けられている。また、ドリフト層2の表層には、ウェル領域3及びセンスウェル領域13とは別に、p型のダミーセンスウェル領域23(第3半導体領域)が選択的に設けられている。センスウェル領域13は、ダミーセンスウェル領域23によって分断されず、平面視においてひとかたまりに、すなわち1箇所にかたまって配置されている。ダミーセンスウェル領域23は、センスウェル領域13の周囲に、このセンスウェル領域13を挟む若しくは取り囲むように配置されている。平面視において、ダミーセンスウェル領域23は、センスウェル領域13よりも総面積が大きい。
【0033】
センスウェル領域13及びセンスソース領域14の上には、センスウェル領域13及びセンスソース領域14に面してセンスゲート絶縁膜16が形成されている。ダミーセンスウェル領域23上には、ダミーセンスウェル領域23に面してダミーセンスゲート絶縁膜26が形成されている。
【0034】
センスゲート絶縁膜16及びダミーセンスゲート絶縁膜26の上には、部分的にゲート電極7が形成されている。活性センス領域61において、ゲート電極7は、センスウェル領域13、センスソース領域14、及びドリフト層2に対して、センスゲート絶縁膜16を介して対向するように設けられている。また、ダミーセンス領域62において、ゲート電極7は、ダミーセンスウェル領域23及びドリフト層2に対して、ダミーセンスゲート絶縁膜26を介して対向するように設けられている。
【0035】
なお、ゲート電極7は、メイン領域50、センス領域60、及び境界領域70においてそれぞれ繋がっている。すなわち、ゲート電極7はそれぞれ、
図2や
図3(a)で図示しない断面において互いに接続されている。
【0036】
活性センス領域61において、ゲート電極7上には、ゲート電極7を覆うようにセンス層間絶縁膜18が設けられている。また、ダミーセンス領域62においては、ゲート電極7上にこのゲート電極7を覆うようにダミーセンス層間絶縁膜28が設けられている。
【0037】
センス層間絶縁膜18及びダミーセンス層間絶縁膜28の上には、これらの層間絶縁膜を覆うようにセンスソース電極19(第3主電極)が設けられている。センスソース電極19は、ソース電極9とは別体に形成されている。具体的には、センスソース電極19は、ソース電極9とは物理的に分離して形成されている。平面視において、センスソース電極19は、ソース電極9よりも総面積が小さい。
【0038】
センスソース電極19は、センスウェル領域13、センスソース領域14、ダミーセンスウェル領域23、及びドリフト層2に対し、センス層間絶縁膜18またはダミーセンス層間絶縁膜28に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続されている。センスソース電極19は、センスウェル領域13、センスソース領域14、及びダミーセンスウェル領域23にオーミック接続している。
【0039】
なお、ダミーセンスウェル領域23は、ソース電極9とオーミック接続されていない。好ましくは、ダミーセンスウェル領域23は、ソース電極9と接続されていない。
【0040】
半導体基板1において、センスソース電極19が設けられた面とは反対側の面には、ドレイン電極10が設けられている。センスソース電極19は、半導体層(半導体基板1)のおもて面(第1主面)側に設けられており、ドレイン電極10は、半導体層(半導体基板1)のおもて面に対向する裏面(第2主面)側に設けられる。ドレイン電極10は、メイン領域50からセンス領域60に延びるようにして、すなわち半導体基板1の裏面全体に亘って設けられる。
【0041】
活性センス領域61は、MOSFET構造を有する。すなわち、センスソース電極19に対してゲート電極7に一定以上の正電圧を印加したとき、センスウェル領域13がセンスゲート絶縁膜16を介してゲート電極7と接する領域においてチャネルが形成される。これにより、センスソース領域14とドリフト層2との間が導通状態になる。一方、ダミーセンス領域62において、ダミーセンスウェル領域23内には、ソース領域が形成されていない。そのため、センスソース電極19に対してゲート電極7に一定以上の正電圧が印加されても、ダミーセンス領域62においてドレイン電極10からセンスソース電極19に流れる電流経路は形成されない。
【0042】
活性センス領域61には、上述のMOSFET構造を形成する最小の単位構造である単位セルが、複数配置される。ダミーセンス領域62においては、ダミーセンスウェル領域23等を含む最小の単位構造である単位セルが、複数配置される。単位セルは、ストライプ状(櫛形)に配置されてもよいし、格子形状に配置されてもよい。
【0043】
活性センス領域61において、センスソース電極19とドリフト層2との間には、センスソース電極19とドリフト層2とが接する部分にショットキー接合部15が設けられている。また、ダミーセンス領域62において、センスソース電極19とドリフト層2との間には、センスソース電極19とドリフト層2とが接する部分にショットキー接合部25が形成されている。このショットキー接合部15またはショットキー接合部25により、SBDが形成されている。このSBDは、センスウェル領域13またはダミーセンスウェル領域23とドリフト層2とから構成されるpnダイオードの動作電圧よりも立ち上がり電圧が低いダイオードである。また、SBDは、順方向電流は流さずに還流電流だけを流す、一方向のみに通電可能なユニポーラ型のダイオードである。SBDは、センス領域60内において分散するように複数箇所に形成されていてもよい。
【0044】
なお、ショットキー接合部15とショットキー接合部25は、便宜上、形成位置に応じて呼び分けているが、実質的には同一の構成及び機能を果たすものである。そのため、ショットキー接合部15とショットキー接合部25とを合わせてショットキー接合部25などと称することがある。また、活性センス領域61とダミーセンス領域62との境界に形成されるのは、ショットキー接合部15であってもショットキー接合部25であってもよい。
【0045】
ダミーセンス領域62は、
図3(a)に示すように、ダミーセンスウェル領域23がダミーセンスゲート絶縁膜26を介してゲート電極7に対向する領域である対向領域FAを有する。ショットキー接合部25と対向領域FAとは、ダミーセンス領域内62内に混在するようにして設けられる。
【0046】
図1に示すように、センス領域60の周囲には、センス領域60を取り囲むように境界領域70が設けられている。境界領域70は、メイン領域50及びセンス領域60とは異なる領域である。
図2及び
図3(a)には図示していないが、境界領域70には、ドリフト層2の表層に設けられた境界ウェル領域33が配置されている。
【0047】
なお、半導体装置101の断面は、
図3(a)に示すものに限られず、例えば
図3(b)に示すような構造であってもよい。
【0048】
図4は、
図1に示すセンス領域60及びその周辺部分の拡大図であって、センス領域60内における各領域の配置パターンの一例を示す図である。なお、
図4においては、簡略化のために各ゲート絶縁膜、ゲート電極7、各層間絶縁膜、及びセンスソース電極19などを取り除いた半導体層の上面を示している。また、
図4のA−A’断面が
図3(a)に相当する。
【0049】
図4においては、活性センス領域61及びダミーセンス領域62を構成する単位セルが、ストライプ状(櫛形)に配置されている。活性センス領域61において、ショットキー接合部15は、センスウェル領域13及びセンスソース領域14に取り囲まれている。また、ダミーセンス領域62において、ショットキー接合部25は、ダミーセンスウェル領域23に取り囲まれている。
【0050】
図5は、
図1に示すセンス領域60及びその周辺部分の拡大図であって、センス領域60内における各領域の配置パターンの他の例を示す図である。なお、
図5においても、簡略化のために各ゲート絶縁膜、ゲート電極7、各層間絶縁膜、及びセンスソース電極19などを取り除いた半導体層の上面を示している。また、
図5のB−B’断面が
図3(b)に相当する。
【0051】
図5においては、
図4と同様に、活性センス領域61及びダミーセンス領域62を構成する単位セルが、ストライプ状(櫛形)に配置されている。一方、
図4と異なり、活性センス領域61において、センスウェル領域13及びセンスソース領域14は、ショットキー接合部15に取り囲まれている。また、ダミーセンス領域62において、ダミーセンスウェル領域23は、ショットキー接合部25に取り囲まれている。
【0052】
図6は、
図1に示すセンス領域60及びその周辺部分の拡大図であって、センス領域60内における各領域の配置パターンの他の例を示す図である。なお、
図6においても、簡略化のために各ゲート絶縁膜、ゲート電極7、各層間絶縁膜、及びセンスソース電極19などを取り除いた半導体層の上面を示している。また、
図6のA−A’断面が
図3(a)に相当する。
【0053】
図6においては、活性センス領域61及びダミーセンス領域62を構成する単位セルが、格子形状に配置されている。活性センス領域61において、ショットキー接合部15は、センスウェル領域13及びセンスソース領域14に取り囲まれている。また、ダミーセンス領域62において、ショットキー接合部25は、ダミーセンスウェル領域23に取り囲まれている。
【0054】
図7は、
図1に示すセンス領域60及びその周辺部分の拡大図であって、センス領域60内における各領域の配置パターンの他の例を示す図である。なお、
図7においても、簡略化のために各ゲート絶縁膜、ゲート電極7、各層間絶縁膜、及びセンスソース電極19などを取り除いた半導体層の上面を示している。また、
図7のA−A’断面が
図3(a)に相当する。
【0055】
図7において、センス領域60の構造は
図4に示す構造とほぼ同様である。
図4と異なる点として、
図4〜
図6では、センス領域60のセンスウェル領域13及びダミーセンスウェル領域23が境界領域70の境界ウェル領域33と分離されていた。これに対し、
図7では、センス領域60のセンスウェル領域13及びダミーセンスウェル領域23が境界領域70の境界ウェル領域33と接続されている点が異なる。
【0056】
図4〜
図7において、ショットキー接合部25は、ダミーセンス領域62内において周期的に設けられている。また、
図4、
図6、及び
図7において、ショットキー接合部25は、ダミーセンス領域62内において分散するように複数箇所に設けられている。
【0057】
ダミーセンスウェル領域23上には、
図3に示すようにゲート電極7が形成される。そのため、
図3に示す対向領域FAは、
図4〜
図7に示すように、平面視において、ショットキー接合部25と交互に繰り返し設けられる。好ましくは、ショットキー接合部25は、ダミーセンス領域62内において、境界領域70から活性センス領域61に向かう方向に交互に繰り返し設けられる。また、ショットキー接合部25は、メイン領域50におけるショットキー接合部5の配置間隔の2倍以下となるようにダミーセンス領域62内に配置されている。好ましくは、ショットキー接合部25は、ダミーセンス領域62内において1[μm]以上100[μm]以下の間隔で配置される。
【0058】
半導体装置101は、センス領域60内における各領域の配置パターンが
図4〜
図7のいずれであってもよい。なお、
図4〜
図7はあくまで例示であるため、配置パターンは
図4〜
図7に示すものに限られず、これらと同様の他の配置パターンであってもよい。
【0059】
半導体基板1、ドリフト層2、ウェル領域3、ソース領域4、センスウェル領域13、センスソース領域14、及びダミーセンスウェル領域23は、それぞれ炭化珪素(SiC)で形成されている。ゲート絶縁膜6、層間絶縁膜8、センスゲート絶縁膜16、センス層間絶縁膜18、ダミーセンスゲート絶縁膜26、及びダミーセンス層間絶縁膜28の材料としては、例えば二酸化珪素(SiO2)を用いればよい。ゲート電極7の材料としては、例えばポリシリコンを使用することができる。ソース電極9、センスソース電極19、及びドレイン電極10の材料としては、ニッケル、チタン、アルミ、金、白金、銅、及びモリブデン、並びにこれらの合金を使用することができる。
【0060】
<製造方法>
次に、半導体装置101の製造方法について説明する。まず、半導体基板1と、半導体基板1の上面にエピタキシャル結晶成長させたドリフト層2と、を有する基板を用意する。ドリフト層2は、n型の不純物濃度が半導体基板1のn型の不純物濃度よりも低い。ドリフト層2の厚みと不純物濃度は、半導体装置101の設計耐圧に応じて任意に設定する。例えば、ドリフト層2の厚みを1[um]〜200[um]、不純物濃度を1.0×10
14[cm
3]〜1.0×10
16[cm
3]とすることができる。
【0061】
次に、写真製版処理によりパターニングした注入マスク(例えばフォトレジストやシリコン酸化膜)を用いて、ドリフト層2の表面へと不純物(ドーパント)のイオン注入を行う。これにより、p型のウェル領域3、センスウェル領域13、及びダミーセンスウェル領域23と、n型のソース領域4及びセンスソース領域14と、を形成する。各領域を形成するためのイオン注入は、任意の順序で行ってよい。
【0062】
各領域の厚みと不純物濃度は、例えば以下のように設定できる。すなわち、ウェル領域3、センスウェル領域13、及びダミーセンスウェル領域23の厚みは、例えば0.1[um]〜2[um]とすることができる。また、これらの領域のp型の不純物濃度は、ドリフト層2のn型の不純物濃度を超えるものとし、その最大不純物濃度を例えば1.0×10
15[cm
3]〜1.0×10
19[cm
3]とすることができる。
【0063】
ソース領域4の厚みは、ウェル領域3の厚みよりも小さく設定し、センスソース領域14の厚みは、センスウェル領域13の厚みよりも小さく設定する。ソース領域4及びセンスソース領域14の厚みは、例えば0.05[um]〜1[um]とすることができる。ソース領域4のn型の不純物濃度は、ウェル領域3のp型の不純物濃度を超えるものとし、センスソース領域14のn型の不純物濃度は、センスウェル領域13のp型の不純物濃度を超えるものとする。ソース領域4及びセンスソース領域14の最大不純物濃度は、例えば1.0×10
16[cm
3]〜1.0×10
20[cm
3]とすることができる。
【0064】
上記のイオン注入後、ドリフト層2に注入した不純物を電気的に活性化させるために、基板の熱処理(活性化アニールと呼称される)を行う。
【0065】
次に、半導体層の上面に、ゲート絶縁膜6、センスゲート絶縁膜16、及びダミーセンスゲート絶縁膜26のもととなる絶縁膜を、例えば熱酸化法または堆積法により形成する。その後、例えば高温熱処理、窒化処理、酸化処理などを行ってもよい。これらの処理を行うことにより、各ゲート絶縁膜の特性や、チャネルが形成される部分である各ウェル領域と各ゲート絶縁膜との界面の特性を向上させることができる。
【0066】
続いて、上記のようにして形成した絶縁膜の上に、例えばポリシリコンなどの導電性層を堆積する。そして、写真製版処理により導電性層上にパターニングして形成したエッチングマスクを用いて、導電性層を選択的にエッチングする。これにより、ゲート電極7を形成する。
【0067】
次に、ゲート電極7の上に、層間絶縁膜8、センス層間絶縁膜18、及びダミーセンス層間絶縁膜28のもととなる絶縁膜を、例えばCVD法により形成する。そして、例えばドライエッチング法により各絶縁膜を選択的に除去することにより、ゲート絶縁膜6、センスゲート絶縁膜16、及びダミーセンスゲート絶縁膜26、並びに層間絶縁膜8、センス層間絶縁膜18、及びダミーセンス層間絶縁膜28を形成する。このとき、各ゲート絶縁膜及び各層間絶縁膜の間にコンタクトホールが形成される。
【0068】
続いて、層間絶縁膜8、センス層間絶縁膜18、及びダミーセンス層間絶縁膜28の上に、ソース電極9及びセンスソース電極19のもととなる金属材料を、例えばスパッタリングにより堆積する。そして、例えばリフトオフやウェットエッチングによりパターニングすることにより、ソース電極9及びセンスソース電極19を形成する。
【0069】
ソース電極9は、コンタクトホールを介して、ウェル領域3及びソース領域4とオーミック接触により接続し、ドリフト層2とはショットキー接触により接続する。また、センスソース電極19は、コンタクトホールを介して、センスウェル領域13、センスソース領域14、及びダミーセンスウェル領域23とオーミック接触により接続し、ドリフト層2とはショットキー接触により接続する。これにより、ソース電極9とドリフト層2とが接する部分にショットキー接合部5が形成され、センスソース電極19とドリフト層2とが接する部分にショットキー接合部15及びショットキー接合部25が形成される。
【0070】
次に、半導体基板1の裏面に、半導体基板1とオーミック接触するドレイン電極10を形成する。なお、半導体基板1を研磨などで削り取り、その後、ドリフト層2の裏面にこれとオーミック接触するドレイン電極10を形成するようにしてもよい。
【0071】
以上の工程により、
図1等に示される実施の形態1の半導体装置101を得ることができる。
【0072】
<特徴>
次に、半導体装置101における電流検出動作等を説明する。
図8は、半導体装置101の構成を電気回路として模式的に示す回路図である。
図8から自明なように、ドレイン電極10から流入する順方向電流は、メイン領域50を通ってソース電極9に流れると同時に、センス領域60を通ってセンスソース電極19にも流れる。そのため、センスソース電極19に検流計を接続してセンス領域60に流れる電流を測定し、この測定結果から、メイン領域50を含む半導体装置101全体に流れる電流を計算することで推定できる。また、ドレイン電極10から流れ込む電流の一部をセンス領域60に分流し、センス領域60における電流の測定結果を用いることで、メイン領域50に流れる電流を直接測定する場合に比べて、半導体装置101に流れる電流を低損失に検出できる。
【0073】
なお、従来の半導体装置において、センス領域に流れる電流による損失を抑えるためには、センス領域の面積を小さくしてセンス領域に分流する割合を小さくする必要がある。しかし、センス領域の面積を小さくすると静電容量も小さくなるため、例えばハンドリング時に人体の静電気等のサージ電圧がかかることで半導体装置が破壊されてしまう恐れがある。
【0074】
そこで、実施の形態1の半導体装置101は、
図3等に示すように、センスウェル領域13よりも総面積が大きいダミーセンスウェル領域23を有するダミーセンス領域62を設けている。ダミーセンスウェル領域23とゲート電極7とがダミーセンスゲート絶縁膜26を介して対向する領域である対向領域FAには、センスソース電極19とゲート電極7との間でキャパシタが形成される。したがって、ダミーセンス領域62の面積を大きく設計することにより、このキャパシタの静電容量を大きくでき、静電気が加わった際のセンスゲート絶縁膜16及びダミーセンスゲート絶縁膜26における電界を緩和し、これらのゲート絶縁膜の絶縁破壊を抑制できる。すなわち、半導体装置101の静電耐量を向上させることができる。
【0075】
また、ダミーセンス領域62において、センスソース電極19に対してゲート電極7に一定以上の正電圧を印加すると、ダミーセンスウェル領域23がダミーセンスゲート絶縁膜26を介してゲート電極7と接する領域に反転層が形成される。したがって、この反転層を形成する少数キャリアの電荷分だけ、静電容量をさらに増加させることができる。
【0076】
図3等に示すように、ダミーセンスウェル領域23には、ソース領域が形成されていない。そのため、ゲート電極7への電圧印加時においても、上記の通りダミーセンスウェル領域23とゲート電極7との界面に反転層が形成されるものの、ドリフト層2からセンスソース電極19まで繋がる導通経路の形成には至らない。そのため、センス領域60においては、順方向電流はダミーセンス領域62に流れず、活性センス領域61にのみ流れる。したがって、活性センス領域61の大きさを小さく設計することで、半導体装置101の全体の中でセンス領域60に流れる電流の割合をメイン領域50よりも小さくして、損失を抑えることができる。
【0077】
よって、ダミーセンス領域62を設けることにより、センス領域60における電流損失を抑制しつつ、所望の静電容量を確保して半導体装置101の静電耐量を向上させることができる。
【0078】
なお、炭化珪素を用いた半導体装置に特有の問題として、以下のようなものが挙げられる。MOSFET等の半導体装置には、ウェル領域とドリフト層とから構成されるpnダイオードが内蔵されている。MOSFET構造には、順方向電流が流れるのに対し、pnダイオードには、逆方向の電流である還流電流が流れることがある(以下、バイポーラ通電と称する)。pnダイオードがバイポーラ通電すると、ドリフト層に注入された少数キャリアがドリフト層中の多数キャリアと再結合することでエネルギーが発生する。これにより、半導体の周期構造の乱れ、すなわち結晶欠陥がエネルギーを得て拡張して素子が劣化する、いわゆるバイポーラ劣化が発生する可能性がある。バイポーラ劣化が発生すると、順方向電流に対する素子抵抗が大きくなり、同じ電流密度を通電させた場合の導通損失が大きくなってしまう。炭化珪素などのワイドバンドギャップ半導体では、上記の再結合時に発生するエネルギーがシリコンよりも大きい等の理由により、バイポーラ劣化の発生が問題となりやすい。
【0079】
バイポーラ劣化の抑制に関しては、同期整流という技術がある。これは、半導体装置に還流電流が流れるタイミングに合わせてゲート電極に電圧を印加し、形成されたチャネルに還流電流を流す技術である。同期整流により、チャネルが形成されるMOSFET構造が存在する領域(半導体装置101のメイン領域50、活性センス領域61など)においては、pnダイオードのバイポーラ通電を抑制することができる。
【0080】
しかし、チャネルが形成されない領域(半導体装置101のダミーセンス領域62など)においては、上記の同期整流を行ってもpnダイオードがバイポーラ通電してしまう。ダミーセンス領域62は、上記の通り、センス領域60に流れる電流を低く抑えるために、チャネルを通して電流が流れないように設計する。そのため、同期整流では、ダミーセンス領域62におけるバイポーラ通電を抑制することができない。さらに、ダミーセンスウェル領域23は、センスウェル領域13と比較して大きな面積に形成されるため、ダミーセンスウェル領域23においてpnダイオードが通電した場合に素子がバイポーラ劣化してしまう確率も高い。
【0081】
そこで、実施の形態1の半導体装置101は、
図3等に示すように、センスソース電極19とドリフト層2とが接する部分に形成したショットキー接合部25からなるSBDを設けている。このSBDは、ダミーセンスウェル領域23とドリフト層2とから構成されるpnダイオードの動作電圧よりも立ち上がり電圧が低い。これにより、還流電流がSBDに流れ、pnダイオードには流れにくくなるため、バイポーラ劣化を抑制することができる。
【0082】
上記の通り、SBDを設けた付近の部分ではバイポーラ劣化を抑制できるが、SBDから遠い部分においてはバイポーラ劣化が生じる可能性が残る。一方、SBDを設ける箇所や面積を増やしすぎると、ダミーセンス領域62における静電容量が低下してしまう。そこで、実施の形態1の半導体装置101は、
図3に示す対向領域FAとSBD(ショットキー接合部25)とが、ダミーセンス領域内62内に混在するようにして設けられる。好ましくは、SBD(ショットキー接合部25)は、
図4〜
図7に示すように、平面視において、対向領域FAと交互に繰り返し設けられる。これにより、対向領域FAにおいてセンスソース電極19とゲート電極7との間に形成されるキャパシタと、SBDと、がダミーセンス領域62内にそれぞれバランスよく配置されることになる。したがって、ダミーセンス領域62における静電容量の低下を抑制しつつ、バイポーラ劣化を抑制できる。
【0083】
好ましくは、SBDは、ダミーセンス領域62内において、境界領域70から活性センス領域61に向かう方向に交互に繰り返し設けられる。これにより、ダミーセンス領域62内の必要な箇所にSBDがまんべんなく配置されることになるため、ダミーセンス領域62における静電容量の低下を抑制しつつ、バイポーラ劣化を抑制できる。
【0084】
半導体装置101において、メイン領域50にはショットキー接合部5が形成され、活性センス領域61にはショットキー接合部15が形成されている。すなわち、半導体装置101においては、ダミーセンス領域62だけでなく、メイン領域50及び活性センス領域61にもSBDが設けられている。これにより、同期整流を行わなくても、半導体装置101の全域でpnダイオードのバイポーラ通電を抑制できる。
【0085】
好ましくは、SBDを設ける間隔は以下のように設定される。メイン領域50において、最寄りのSBD(ショットキー接合部5)までの距離が最も遠いpn接合(ウェル領域3とドリフト層2とが接する部分)と、その最寄りのSBDと、の間の距離を距離xと定義する。また、ダミーセンス領域62において、最寄りのSBD(ショットキー接合部25)までの距離が最も遠いpn接合(ダミーセンスウェル領域23とドリフト層2とが接する部分)と、その最寄りのSBDと、の間の距離を距離yと定義する。このとき、ダミーセンス領域62における距離yは、メイン領域50における距離xの2倍以下となるように設計する。すなわち、ダミーセンス領域62において、SBDは、メイン領域50におけるSBDの配置間隔の2倍以下となるように配置される。
【0086】
還流電流について、pnダイオードを通電させることなくSBDに流すことの出来る最大値(以下、最大ユニポーラ電流値と呼称する)は、上記の距離xや距離yのようにして定義される距離に応じて決定される。ダミーセンス領域62において、所望の最大ユニポーラ電流値を実現する距離yの最大値Yとするとき、距離yを最大値Yからさらに増加させるとpnダイオードが通電し始め、pnダイオードを通過する電流が加速度的に増加する。このような理由に鑑みて、SBDの配置間隔は上記のように設定される。
【0087】
好ましくは、SBDは、ダミーセンス領域62内において1[μm]以上100[μm]以下の間隔で配置される。このような間隔で配置することにより、ダミーセンス領域62における静電容量の低下を抑制しつつ、バイポーラ劣化を抑制できる。
【0088】
SBDは、
図4〜
図7に示すように、ダミーセンス領域62内において周期的に設けられてもよい。また、SBDは、
図4、
図6、及び
図7に示すように、ダミーセンス領域62内において分散するように複数箇所に設けられてもよい。好ましくは、SBDは、ダミーセンス領域62内において、最寄りのSBDまでの距離が最も遠いpn接合(すなわち、SBDから最も遠いpn接合)とその最寄りのSBDとの間の距離が、SBDの配置間隔の半分以下となるように設けられる。このような配置とすることで、ダミーセンス領域62における静電容量の低下を抑制しつつ、バイポーラ劣化を抑制できる。
【0089】
実施の形態1の半導体装置101は、
図1に示すように、活性センス領域61(センスウェル領域13)が、平面視においてダミーセンス領域62(ダミーセンスウェル領域23)によって分断されずにひとかたまりに設けられていることが好ましい。この理由は、以下の通りである。活性センス領域61を流れる順方向電流は、その周囲のダミーセンス領域62にも一部が流れ広がる。そのため、活性センス領域61がダミーセンス領域62によって分断されるように配置すると、順方向電流がダミーセンス領域62にも流れ広がる部分が増加し、あたかもセンス領域60の抵抗が低いように見えてしまい、メイン領域50を流れる電流を正確に知ることができなくなる可能性があるので、これを避けるためである。
【0090】
実施の形態1の半導体装置101は、ダミーセンスウェル領域23が、ソース電極9とオーミック接続されていない。この理由は、以下の通りである。ダミーセンスウェル領域23は、センスソース電極19とオーミック接続している。そのため、ダミーセンスウェル領域23とソース電極9とがオーミック接続されていると、ダミーセンスウェル領域23を介してセンスソース電極19とソース電極9とが電気的に繋がることになり、両電極間に電流が流れてしまい、半導体装置101に流れる電流を正確に検出できなくなる可能性があるので、これを避けるためである。
【0091】
以上の通り、本実施の形態1によれば、ダミーセンス領域62において静電容量の低下を抑制しつつバイポーラ劣化を抑制できるため、ダミーセンス領域62において所望の静電容量を確保しつつ、結晶欠陥の拡張による導通損失の増大を抑制できる。よって、半導体装置101の信頼性を向上させることができる。
【0092】
<変形例>
次に、実施の形態1に係る半導体装置101の変形例を説明する。
図9(a)は、実施の形態1の変形例に係るセンス領域60の一部の断面を示す断面模式図である。
図9(a)に示す構造は、ダミーセンスウェル領域23を除き、
図3(a)に示す構造と同様である。
図9(a)の構造では、ゲート電極7の下方において、ダミーセンスウェル領域23が間隔を空けずに設けられており、ドリフト層2がダミーセンスゲート絶縁膜26と接していない。なお、半導体装置101の断面は、
図9(a)に示すものに限られず、例えば
図9(b)に示すような構造であってもよい。
【0093】
図10は、
図1に示すセンス領域60及びその周辺部分の拡大図であって、センス領域60内における各領域の配置パターンの一例を示す図である。なお、
図10においては、簡略化のために各ゲート絶縁膜、ゲート電極7、各層間絶縁膜、及びセンスソース電極19などを取り除いた半導体層の上面を示している。また、
図10のC−C’断面が
図9(a)に相当する。
【0094】
図10においては、活性センス領域61及びダミーセンス領域62を構成する単位セルが、ストライプ状(櫛形)に配置されている。活性センス領域61において、ショットキー接合部15は、センスウェル領域13及びセンスソース領域14に取り囲まれている。また、ダミーセンス領域62において、ショットキー接合部25は、ダミーセンスウェル領域23に取り囲まれている。
【0095】
図11は、
図1に示すセンス領域60及びその周辺部分の拡大図であって、センス領域60内における各領域の配置パターンの他の例を示す図である。なお、
図11においても、簡略化のために各ゲート絶縁膜、ゲート電極7、各層間絶縁膜、及びセンスソース電極19などを取り除いた半導体層の上面を示している。また、
図11のD−D’断面が
図9(b)に相当する。
【0096】
図11においては、
図10と同様に、活性センス領域61及びダミーセンス領域62を構成する単位セルが、ストライプ状(櫛形)に配置されている。一方、
図10と異なり、活性センス領域61において、センスウェル領域13及びセンスソース領域14は、ショットキー接合部15に取り囲まれている。また、ダミーセンス領域62において、ダミーセンスウェル領域23は、ショットキー接合部25に取り囲まれている。
【0097】
図12は、
図1に示すセンス領域60及びその周辺部分の拡大図であって、センス領域60内における各領域の配置パターンの他の例を示す図である。なお、
図12においても、簡略化のために各ゲート絶縁膜、ゲート電極7、各層間絶縁膜、及びセンスソース電極19などを取り除いた半導体層の上面を示している。また、
図12のC−C’断面が
図9(a)に相当する。
【0098】
図12においては、活性センス領域61及びダミーセンス領域62を構成する単位セルが、格子形状に配置されている。活性センス領域61において、ショットキー接合部15は、センスウェル領域13及びセンスソース領域14に取り囲まれている。また、ダミーセンス領域62において、ショットキー接合部25は、ダミーセンスウェル領域23に取り囲まれている。
【0099】
図10〜
図12において、ショットキー接合部25は、ダミーセンス領域62内において周期的に設けられている。また、
図10及び
図12において、ショットキー接合部25は、ダミーセンス領域62内において分散するように複数箇所に設けられている。
【0100】
変形例の構造では、
図10〜
図12に示されるように、ゲート電極7と対向するダミーセンスウェル領域23の面積が、
図4〜
図7に示した構造よりも大きい。すなわち、ゲート電極7と対向するダミーセンスウェル領域23の面積を広げることができるため、センスソース電極19とゲート電極7との間の単位面積当たりの静電容量をさらに増加させることができる。
【0101】
変形例に係る
図10〜
図12においても、
図4〜
図7と同様に、SBD(ショットキー接合部25)が、平面視において、
図9に示す対向領域FAと交互に繰り返し設けられている。そのため、ダミーセンス領域62における静電容量の低下を抑制しつつ、バイポーラ劣化を抑制できる。その他、
図4〜
図7に示す構造の場合と同様の効果を得ることができる。
【0102】
なお、上記においては、センス領域60内における各領域の配置パターンとして、実施の形態1やその変形例である
図4〜
図7、
図10〜
図12について説明したが、これらに限られるものではない。例えば、各配置パターンにおいて、単位セルの個数はいくつであってもよい。また、配置パターンは、これらと同様の他の配置パターンであってもよい。例えば、
図6や
図12に示す格子形状の単位セルが列ごとに互いにずれて配置されたような形状や、六角形状の単位セルが複数並んだハチの巣形状などであってもよい。
【0103】
また、各領域の配置パターンは、
図4〜
図7、
図10〜
図12のような周期的な構造にも限られない。例えば、ドリフト層2とセンスソース電極19との接続部分をすべてショットキー接合させるのではなく、SBDを一つ置きに配置するようにしたり、一つ置きと二つ置きとを混在させて変則的なパターンとしたりなど、種々のものが考えられる。このような配置パターンであっても、SBDと対向領域FAとがダミーセンス領域内62内に混在して設けられたり、SBDと対向領域FAとが交互に繰り返し設けられたりすることで、上述のような効果を得ることができる。
【0104】
なお、本実施の形態においては、
図2に示すように、ゲート電極7の下方であってウェル領域3の間には、ドリフト層2がゲート絶縁膜6と接するように設けられている。また、
図3や
図9に示すように、ゲート電極7の下方であってセンスウェル領域13の間には、ドリフト層2がセンスゲート絶縁膜16と接するように設けられている。ウェル領域の間であってゲート絶縁膜と接するドリフト層2からなる領域は、JFET領域などと呼称される。実施の形態1の半導体装置101において、これらのJFET領域は、ドリフト層2と同じn型で、ドリフト層2と同じ不純物濃度を有するものとしている。JFET領域の不純物濃度は、これに限られず、ドリフト層2のn型不純物濃度よりも高くなるように設定してもよい。
【0105】
実施の形態2.
図13は、実施の形態2に係る半導体装置201のセンス領域60の一部の断面を示す断面模式図である。実施の形態2の半導体装置201は、実施の形態1の半導体装置101と異なり、ダミーセンスソース領域24を有する。ダミーセンスソース領域24は、ダミーセンスウェル領域23の表層に選択的に形成されたn型の領域である。ダミーセンスソース領域24は、センスソース電極19とオーミック接続している。ダミーセンスソース領域24は、ダミーセンスゲート絶縁膜26に面しており、ダミーセンスゲート絶縁膜26を介してゲート電極7と対向する。その他の構成は、実施の形態1の半導体装置101と同様である。
【0106】
なお、以下において、センスソース領域14及びダミーセンスソース領域24のことや、これにソース領域4を含めて各ソース領域などと称することがある。
【0107】
次に、半導体装置201の製造方法について説明する。ダミーセンスソース領域24は、実施の形態1で説明した半導体装置101の製造方法において、ソース領域4及びセンスソース領域14を形成するのと同時に、同じ方法を用いて形成することができる。なお、ダミーセンスソース領域24は、ソース領域4及びセンスソース領域14を形成する工程とは別の工程で形成してもよい。その他の部分については、半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0108】
実施の形態2の半導体装置201は、ダミーセンス領域62において、ゲート電極7の下に配置されたダミーセンスソース領域24を備えている。これにより、センスソース電極19とゲート電極7との間に形成されるキャパシタの静電容量が増加する。静電容量は、おおよそ、ダミーセンスソース領域24を配置した領域にチャネルが形成された程度に増加する。この静電容量は、ゲート電位の変化に対して大きく変動しないため、ダミーセンス領域62における静電容量を安定して確保することができる。
【0109】
次に、実施の形態2に係る半導体装置201の変形例を説明する。
図14は、実施の形態2の変形例に係るセンス領域60の一部の断面を示す断面模式図である。
図13の構造では、ゲート電極7の下方であってダミーセンスソース領域24の間には、ダミーセンスウェル領域23がセンスゲート絶縁膜16と接するように設けられていた。これに対し、
図14の構造では、ゲート電極7の下方において、ダミーセンスソース領域24が間隔を空けずに設けられており、ダミーセンスウェル領域23がダミーセンスゲート絶縁膜26と接していない。すなわち、
図14の構造では、対向領域FAにおいて、ダミーセンスゲート絶縁膜26を介してゲート電極7と対向する位置には、ダミーセンスソース領域24が設けられており、ダミーセンスウェル領域23は、ダミーセンスゲート絶縁膜26と接していない。その他の部分については、
図13に示す構造と同様である。
【0110】
変形例の構造では、
図14に示されるように、ダミーセンスゲート絶縁膜26を介してゲート電極7と接する部分をダミーセンスソース領域24で埋めている。そのため、変形例の構造は、ダミーセンスソース領域24の面積が
図13の構造よりも大きい。したがって、センスソース電極19とゲート電極7との間における単位面積当たりの静電容量をさらに増加させることができる。
【0111】
なお、実施の形態2の半導体装置201やその変形例においても、実施の形態1において説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0112】
実施の形態3.
図15は、実施の形態3に係る半導体装置301の境界領域70の断面を示す断面模式図である。半導体装置301は、
図15に示すように、半導体装置101または半導体装置201の構成に加えて、境界領域70に設けられたソース電極間領域31、境界ウェル領域33、及びショットキー接合部35をさらに備える。
【0113】
境界領域70において、ソース電極9とセンスソース電極19とは分離されており、ソース電極9とセンスソース電極19との間には、ソース電極間領域31が形成されている。ソース電極間領域31の下方であってドリフト層2の表層には、p型の境界ウェル領域33が設けられている。境界ウェル領域33は、複数の領域に分かれて形成されていてもよい。
【0114】
実施の形態3の半導体装置301において、境界ウェル領域33は、ウェル領域3、センスウェル領域13、及びダミーセンスウェル領域23のいずれとも接続されていない。また、境界ウェル領域33は、ソース電極9及びセンスソース電極19とオーミック接続されておらず、ショットキー接続している。境界ウェル領域33とソース電極9及びセンスソース電極19とが接する部分には、それぞれショットキー接合部35が形成されている。ショットキー接合部35は、複数箇所に形成されていてもよい。その他の構成は、半導体装置101または半導体装置201と同様である。
【0115】
次に、半導体装置301の製造方法について説明する。境界ウェル領域33は、実施の形態1で説明した半導体装置101の製造方法において、ウェル領域3及びセンスウェル領域13を形成するのと同時に、同じ方法を用いて形成することができる。なお、境界ウェル領域33は、ウェル領域3及びセンスウェル領域13を形成する工程とは別の工程で形成してもよい。
【0116】
ソース電極9及びセンスソース電極19は、層間絶縁膜8、センス層間絶縁膜18、及びダミーセンス層間絶縁膜28の上にソース電極9及びセンスソース電極19のもととなる金属材料を形成した後、リフトオフやウェットエッチングによりパターニングすることで、それぞれ離間して形成される。このとき、ソース電極9とセンスソース電極19との間には、ソース電極間領域31が形成される。
【0117】
ソース電極9は、境界ウェル領域33とショットキー接触により接続し、センスソース電極19は、境界ウェル領域33とショットキー接触により接続する。これにより、ソース電極9と境界ウェル領域33とが接する部分、及びセンスソース電極19と境界ウェル領域33とが接する部分にショットキー接合部35が形成される。その他の部分については、半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0118】
境界領域70は、半導体装置にセンス領域60を設ける場合に必ず必要となる領域である。これは、ソース電極9とセンスソース電極19とを分離する必要があるためである。ソース電極9とセンスソース電極19との分離は、上記の通り、リフトオフやウェットエッチングによって行われる。そのため、ソース電極間領域31は、プロセスばらつきを考慮して、比較的大きな面積に設計される。
【0119】
一方、ドリフト層2が半導体層の表面に露出している面積が広すぎる場合、半導体層の表面に高電界が印加されて放電する可能性がある。そのため、ソース電極間領域31の下方には、境界ウェル領域33を配置する必要がある。なお、上記放電の発生を防止できれば十分なため、境界領域70において半導体層の表面を境界ウェル領域33で埋めつくすことまでは必ずしも必要でない。
【0120】
しかし、境界領域70においては、ソース電極9またはセンスソース電極19が設けられていないため、ソース電極間領域31にSBDを設けることができない。ここで、境界領域70において、最寄りのSBD(
図15におけるショットキー接合部5またはショットキー接合部25)までの距離が最も遠いpn接合(境界ウェル領域33とドリフト層2とが接する部分)と、その最寄りのSBDと、の間の距離を距離zと定義する。このとき、距離zは比較的大きな値となり、境界ウェル領域33とドリフト層2とから構成されるpnダイオードが通電してしまう可能性がある。また、半導体装置全体の面積に対する境界ウェル領域33の面積の割合は比較的大きいため、素子がバイポーラ劣化してしまう確率も比較的高い。
【0121】
そこで、実施の形態3の半導体装置301は、
図15に示すように、境界ウェル領域33が、各ウェル領域と接続されず、かつ各ソース電極とオーミック接続されないようにしている。すなわち、境界ウェル領域33は、各ウェル領域及び各ソース電極からフローティングになっている。したがって、境界ウェル領域33とドリフト層2とから構成されるpnダイオードのバイポーラ通電を防止できる。
【0122】
なお、
図15に示すように、境界ウェル領域33に隣接するウェル領域3及びダミーセンスウェル領域23のうち、境界ウェル領域33に近い側の表層には、チャネルが形成されない。言い換えると、境界ウェル領域33に接する位置には、JFET領域が形成されない。このように、境界ウェル領域33付近を順方向電流が流れないことが好ましい。境界ウェル領域33は、フローティングであるため電位が不安定であり、周辺の電気抵抗が変化しやすい。そのため、境界ウェル領域33に順方向電流が流れないようにすることで、素子特性を安定させることができる。
【0123】
実施の形態4.
図16は、実施の形態4に係る半導体装置401の境界領域70の断面を示す断面模式図である。半導体装置401は、
図16に示すように、半導体装置101または半導体装置201の構成に加えて、境界領域70に設けられたソース電極間領域31、境界ウェル領域33、及び絶縁膜38をさらに備える。実施の形態3の半導体装置301とは異なる点として、ショットキー接合部35を形成する代わりに絶縁膜38を追加したものと言うことができる。
【0124】
境界領域70において、絶縁膜38は、境界ウェル領域33及びドリフト層2の上に、境界ウェル領域33を覆うように形成されている。絶縁膜38は、境界ウェル領域33とソース電極9との間、及び境界ウェル領域33とセンスソース電極19との間に形成されている。境界ウェル領域33は、ソース電極9及びセンスソース電極19とショットキー接続されるのではなく、絶縁膜38によって分離される構造となっている。
【0125】
次に、半導体装置401の製造方法について説明する。絶縁膜38は、実施の形態1で説明した半導体装置101の製造方法において、ゲート電極7の上に各層間絶縁膜のもととなる絶縁膜を形成した後、層間絶縁膜8、センス層間絶縁膜18、及びダミーセンス層間絶縁膜28を形成するべく選択的に除去する際に、境界ウェル領域33上に絶縁膜を残すことにより形成することができる。また、絶縁膜38は、活性化アニール後かつソース電極9及びセンスソース電極19を形成するより前に、別途半導体層上にCVD法などによって絶縁膜を堆積した後、パターニングすることにより形成してもよい。その他の部分については、半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0126】
実施の形態4の半導体装置401は、絶縁膜38が、境界ウェル領域33とソース電極9との間、及び境界ウェル領域33とセンスソース電極19との間に形成されている。そのため、半導体装置301と比較して、境界ウェル領域33と、ソース電極9及びセンスソース電極19と、がより電気的に分離されている。したがって、境界ウェル領域33とドリフト層2とから構成されるpnダイオードにおいて、バイポーラ通電の抑制効果を高めることができる。
【0127】
実施の形態5.
図17は、実施の形態5に係る半導体装置501のセンス領域60の一部の断面を示す断面模式図である。実施の形態5の半導体装置501は、実施の形態1の半導体装置101とはSBDの形成位置やゲート構造の形成方法などが異なる。その他の構成は、実施の形態1の半導体装置101と同様である。
【0128】
半導体装置501は、
図17に示すように、活性センス領域61において、半導体層の表層であってセンスウェル領域13及びセンスソース領域14の間に、半導体層の表面からセンスウェル領域13及びセンスソース領域14を貫通してドリフト層2に達する溝(第1の溝)41が形成されている。また、ダミーセンス領域62において、半導体層の表層であってダミーセンスウェル領域23の間に、半導体層の表面からダミーセンスウェル領域23を貫通してドリフト層2に達する溝(第1の溝)41が形成されている。これらの溝41内には、センスソース電極19が設けられている。半導体装置501は、溝41の底面または側面のうち少なくとも一方において、センスソース電極19がドリフト層2とショットキー接続されている。すなわち、溝41の底面または側面のうち少なくとも一方において、センスソース電極19とドリフト層2とが対向する部分にはSBDが形成されている。
【0129】
また、活性センス領域61において、センスゲート絶縁膜16及びゲート電極7は、半導体層の表面からセンスウェル領域13及びセンスソース領域14を貫通してドリフト層2に達する溝内に設けられている。センスゲート絶縁膜16は、溝の側面においてセンスウェル領域13及びセンスソース領域14と接している。ゲート電極7は、センスゲート絶縁膜16を介してセンスウェル領域13及びセンスソース領域14と対向する。
【0130】
次に、半導体装置501の製造方法について説明する。実施の形態1で説明した半導体装置101の製造方法において、ドリフト層2上に各ウェル領域及び各ソース領域を形成した後、パターニングしたエッチングマスクを用いて、半導体層の表面を選択的にエッチングすることにより、センスウェル領域13及びセンスソース領域14を貫通してドリフト層2に達する溝を形成する。その後、活性センス領域61において、この溝の底面及び側面にセンスゲート絶縁膜16を形成し、溝の内部を充填するようにゲート電極7を形成する。
【0131】
また、ドリフト層2上に各ウェル領域及び各ソース領域を形成した後、パターニングしたエッチングマスクを用いて、半導体層の表面を選択的にエッチングすることにより、上記の溝41を形成する。各層間絶縁膜を形成した後、活性センス領域61及びダミーセンス領域62において、溝41の内部に、この溝を埋め込むようにセンスソース電極19を形成する。センスソース電極19は、各ウェル領域及び各ソース領域とオーミック接触により接続し、ドリフト層2とはショットキー接触により接続する。これにより、センスソース電極19とドリフト層2とが接する部分にショットキー接合部15及びショットキー接合部25が形成される。その他の部分については、半導体装置101と同様にして製造することができる。
【0132】
実施の形態5の半導体装置501は、溝41内においてセンスソース電極19とドリフト層2とが接する部分にSBD(ショットキー接合部15またはショットキー接合部25)が形成される。一方、実施の形態1の半導体装置101において、SBDは各ウェル領域に挟まれた位置に形成されていた。そのため、半導体装置501は、半導体装置101と比較して、センスソース電極19からSBDを介してドレイン電極10に至る経路の抵抗が低くなっている。したがって、各ウェル領域とドリフト層2とから構成されるpnダイオードにおいて、バイポーラ通電の抑制効果を高めることができる。
【0133】
なお、半導体装置501は、実施の形態1の半導体装置101と比較して、溝41を形成する工程が増えるというデメリットがある。しかし、
図17において説明したように、活性センス領域61においてMOSFET構造を形成する部分を、いわゆるトレンチ型にする場合、これらの溝を溝41と同時に形成するようにしてもよく、このようにすることで工程増加のデメリットを実質的になくすことができる。また、トレンチ型にすることにより、半導体装置101のようないわゆるプレーナー型と比較して、オン抵抗を下げることができ、メリットを増加させることができる。
【0134】
<変形例>
次に、実施の形態5に係る半導体装置501の変形例を説明する。
図18は、実施の形態5の変形例に係るセンス領域60の一部の断面を示す断面模式図である。
図18に示す構造では、ダミーセンス領域62において、ダミーセンスゲート絶縁膜26及びゲート電極7は、半導体層の表面からダミーセンスウェル領域23を貫通してドリフト層2に達する溝(第2の溝)内に設けられている。ダミーセンスゲート絶縁膜26は、溝の側面においてダミーセンスウェル領域23と接している。ゲート電極7は、この溝の側面において、ダミーセンスゲート絶縁膜26を介してダミーセンスウェル領域23と対向する。その他の構成は、
図17に示す構造と同様である。
【0135】
図18に示す構造では、活性センス領域61だけでなくダミーセンス領域62の構造もトレンチ型にしている。ダミーセンス領域62におけるトレンチ型のゲート構造は、活性センス領域61におけるトレンチ型のゲート構造の形成方法と同様にして、同時または異なるタイミングで形成できる。
【0136】
図18に示す構造は、センスソース電極19とゲート電極7との間に形成されるキャパシタを溝内に作りこむことができるため、
図17に示す構造と比較して、単位面積当たりの静電容量を増加させることができる。
【0137】
図19は、実施の形態5の他の変形例に係るセンス領域60の一部の断面を示す断面模式図である。
図19に示す構造では、
図18に示す構造に加えて、ダミーセンス領域62内において実施の形態2で説明したのと同様のn型のダミーセンスソース領域24を形成している。ダミーセンスソース領域24は、ダミーセンスウェル領域23の表層に選択的に形成されており、センスソース電極19とオーミック接続している。また、ダミーセンス領域62において、ダミーセンスゲート絶縁膜26及びゲート電極7は、半導体層の表面からダミーセンスソース領域24を貫通してダミーセンスウェル領域23に達する溝(第2の溝)内に設けられている。
【0138】
図19の構造では、対向領域FAにおいて、ダミーセンスゲート絶縁膜26を介してゲート電極7と対向する位置には、ダミーセンスソース領域24が存在しており、
図18に示す構造と比較して、単位面積当たりの静電容量を増加させることができる。
【0139】
なお、
図19に示す構造において、ダミーセンスゲート絶縁膜26及びゲート電極7が形成される溝の深さは、ドリフト層2の厚み方向において、ダミーセンスウェル領域23が形成される深さ以下にしている。そのため、ダミーセンスゲート絶縁膜26は、溝の底面及び側面においてドリフト層2と接さない。このため、ダミーセンスソース領域24を設けてもダミーセンス領域62において順方向電流は流れず、センス領域60における損失を増加させない。
【0140】
なお、上記においては、溝41を形成してその内部にセンスソース電極19を埋め込む構造に加えて、活性センス領域61やダミーセンス領域62のゲート構造をトレンチ型にすることについて説明したが、これに限られるものではない。例えば、溝41を形成する構造を採用することなく、実施の形態1から実施の形態4で説明した構造において、活性センス領域61とダミーセンス領域62のうちいずれか一方または両方にトレンチ型のゲート構造を採用することとしてもよい。また、メイン領域50において、溝を形成してその内部にソース電極9を埋め込む構造を採用したり、トレンチ型のゲート構造を採用したりしてもよい。
【0141】
また、トレンチ型のゲート構造を構成する各単位セルや溝41は、ストライプ状(櫛形)に配置されてもよいし、格子形状に配置されてもよく、その配置形状を問わない。
【0142】
実施の形態6.
本実施の形態は、上述した実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を電力変換装置に適用したものである。本開示は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態6として、三相のインバータに本開示を適用した場合について説明する。
【0143】
図20は、本実施の形態にかかる電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0144】
図20に示す電力変換システムは、電源700、電力変換装置800、負荷900から構成される。電源700は、直流電源であり、電力変換装置800に直流電力を供給する。電源700は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源700を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0145】
電力変換装置800は、電源700と負荷900の間に接続された三相のインバータであり、電源700から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷900に交流電力を供給する。電力変換装置800は、
図20に示すように、入力される直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路801と、主変換回路801の各スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路802と、駆動回路802を制御する制御信号を駆動回路802に出力する制御回路803とを備えている。
【0146】
負荷900は、電力変換装置800から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷900は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0147】
以下、電力変換装置800の詳細を説明する。主変換回路801は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源700から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷900に供給する。主変換回路801の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態にかかる主変換回路801は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路801の各スイッチング素子と各還流ダイオードの少なくともいずれかに、上述した実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を適用する。このうち、メイン領域50に配置されたMOSFET構造をスイッチング素子として、メイン領域50に配置されたSBDを還流ダイオードとして、それぞれ使用できる。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路801の3つの出力端子は、負荷900に接続される。
【0148】
なお、実施の形態1から5にかかる半導体装置は、スイッチング素子と還流ダイオードが1つのチップ内に内蔵された一体構造となっている。そのため、主変換回路801のスイッチング素子としてメイン領域50に配置されたMOSFET構造を用い、還流ダイオードとしてメイン領域50に配置されたSBDを用いることで、スイッチング素子と還流ダイオードが別個に形成された異なる2つ以上のチップを用いるときと比較して、実装面積を縮小できる。
【0149】
駆動回路802は、主変換回路801のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路801のスイッチング素子のゲート電極に供給する。具体的には、後述する制御回路803からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子のゲート電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0150】
制御回路803は、負荷900に所望の電力が供給されるよう主変換回路801のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷900に供給すべき電力に基づいて主変換回路801の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路801を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、駆動回路802に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路802は、この制御信号に従い、各スイッチング素子のゲート電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0151】
本実施の形態に係る電力変換装置では、主変換回路801のスイッチング素子として実施の形態1から5のいずれかにかかる半導体装置を適用するため、静電容量の低下やバイポーラ劣化が抑制された信頼性の高い半導体装置の使用により、電力変換装置の信頼性向上を実現することができる。
【0152】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本開示を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに本開示を適用することも可能である。
【0153】
また、本開示を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0154】
<最後に>
以上説明した本開示に係る実施の形態1〜6においては、半導体材料が炭化珪素である場合について説明したが、その他の半導体材料を用いてもよい。すなわち、半導体基板1、ドリフト層2、各ウェル領域、及び各ソース領域を含む半導体層は、その他の半導体材料から構成することができる。その他の半導体材料としては、例えば、シリコンと比べてバンドギャップが広い、いわゆるワイドバンドギャップ半導体が挙げられる。炭化珪素以外のワイドバンドギャップ半導体としては、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンドなどが挙げられる。これらのワイドバンドギャップ半導体を用いた場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0155】
上記の実施の形態では、メイン領域50やセンス領域60にSBDを設ける例について説明したが、これに限られるものではない。SBDを設ける代わりに、p型のウェル領域上に、ソース領域とドリフト層とを接続するようにn型のチャネルダイオードを形成してもよい。チャネルダイオードは、しきい値電圧以下のゲート電圧にてユニポーラ型のダイオードとして動作し、かつ、p型のウェル領域とn型のドリフト層とから構成されるpnダイオードの動作電圧よりも立ち上がり電圧が低くなるように、その不純物濃度及び厚さを設計する。チャネルダイオードは、順方向電流は流さずに還流電流だけを流す、一方向のみに通電可能なユニポーラ型のダイオードとして機能する。このように、還流動作時においてMOSFETのウェル領域上に形成したチャネルダイオードに逆通電させる場合でも、SBDを設ける場合と同様の効果を得ることができる。
【0156】
なお、本明細書で説明した上記の各実施の形態では、各構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件等について記載している場合があるが、これらは全ての局面において例示であって、各実施の形態が記載されたものに限られることはない。よって、例示されていない無数の変形例が、各実施の形態の範囲内において想定される。例えば、任意の構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれる。
【0157】
また、矛盾が生じない限り、上記各実施形態において「1つ」備えられるものとして記載された構成要素は、「1つ以上」備えられていても良い。さらに、各構成要素は概念的な単位であって、1つの構成要素が複数の構造物で構成される場合、及び1つの構成要素がある構造物の一部に対応する場合を含む。
【0158】
また、本明細書における説明は、何れも、従来技術であると認めるものではない。
【0159】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
本開示に係る半導体装置は、ソース電極(9)とは別体に設けられたセンスソース電極(19)と、センスソース電極(19)とドリフト層(2)との間に設けられ、センスウェル領域(13)またはダミーセンスウェル領域(23)とドリフト層(2)とから構成されるpnダイオードの動作電圧よりも立ち上がり電圧が低く、センスソース電極(19)からドレイン電極(10)に向けて流れる電流を通電可能なダイオード(25)と、を備え、ダミーセンスウェル領域(23)とダイオード(25)とが配置されるダミーセンス領域(62)内において、ダイオード(25)は、ダミーセンスウェル領域(23)がゲート絶縁膜(26)を介してゲート電極(7)に対向する領域である対向領域(FA)と混在するように設けられる。