(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962600
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】MTOR遺伝子およびSTAT3遺伝子の発現を同時に抑制する核酸
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20211025BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20211025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20211025BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20211025BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20211025BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20211025BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20211025BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20211025BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20211025BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20211025BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20211025BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20211025BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
A61P35/00ZNA
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K45/00
A61K33/24
A61K31/337
A61K31/513
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/113 Z
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-562531(P2019-562531)
(86)(22)【出願日】2018年1月29日
(65)【公表番号】特表2020-509782(P2020-509782A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(86)【国際出願番号】KR2018001231
(87)【国際公開番号】WO2018143626
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年11月22日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0013661
(32)【優先日】2017年1月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0005860
(32)【優先日】2018年1月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519275685
【氏名又は名称】キュリジン カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジン−ウ
【審査官】
松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第09487785(US,B2)
【文献】
Int. J. Med. Sci.,2012年,vol.9, p.216-224
【文献】
Asian Pacific Journal or Tropical Medicine,2014年,p.368-372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
mTOR(mammalian target of rapamycin)遺伝子およびSTAT3(signal transducer and activator of transcription 3)遺伝子発現を同時に抑制する核酸分子であって、
前記核酸分子は、配列番号1および2;配列番号3および4;配列番号5および6;配列番号7および8;配列番号9および10;配列番号11および12;配列番号13および14;配列番号15および16;または配列番号17および18;の塩基配列を含み、
前記配列番号1は配列番号2と、配列番号3は配列番号4と、配列番号5は配列番号6と、配列番号7は配列番号8と、配列番号9は配列番号10と、配列番号11は配列番号12と、配列番号13は配列番号14と、配列番号15は配列番号16と、配列番号17は配列番号18と部分的に相補的に結合を成している二本鎖(double strand)siRNAまたは一本鎖shRNA(short hairpin RNA)であることを特徴とする、核酸分子。
【請求項2】
前記配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、および17にて表示される塩基配列は、RNA干渉によってmTOR遺伝子発現を抑制することを特徴とする請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18で表示される塩基配列は、RNA干渉によってSTAT3遺伝子発現を抑制することを特徴とする請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記核酸分子は、配列番号20または配列番号21の塩基配列で表されるshRNA(short hairpin RNA)であることを特徴とする請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項1の核酸分子をコードするDNA配列を含む組換え発現ベクター。
【請求項6】
請求項5の組換え発現ベクターを導入した組換え微生物。
【請求項7】
請求項1の核酸分子を有効成分として含む、抗がん用薬学的組成物。
【請求項8】
前記核酸分子は、抗がん剤をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の抗がん用薬学的組成物。
【請求項9】
前記抗がん剤は、シスプラチン、パクリタキセル、5−FU(5−fluorouracil)、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノールビシン、シトシンアラビノシド、エトポシド、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ビンデンシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェンおよびタキソールからなる群から選択された1種以上の抗がん剤であることを特徴とする請求項8に記載の抗がん用薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、mTOR遺伝子およびSTAT3遺伝子の発現を同時に抑制する核酸分子と、これを含む抗癌用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、世界的に最も多い死亡者を出す疾病の一つで、革新的な癌治療剤の開発は、これに対する治療時に発生する医療費を節減できると同時に高付加価値を創り出すことができる。また、2008年度の統計によれば、既存の抗がん剤耐性を克服できる分子治療剤は、主要7カ国(US、Japan、France、Germany、Italy、Spain、UK)で$17.5billionを占め、2018年度の場合、約$45billion程度のmarket sizeを占め、2008年比で9.5%の成長率を示すものと予測されている。癌の治療は、手術、放射線治療、化学療法、生物学的治療に区分されるが、この中で化学療法は、化学物質で癌細胞の増殖を抑制し殺す治療法であり、抗癌剤によって現れる毒性は、相当部分正常細胞でも現れるため、一定程度の毒性を示し、抗癌剤の効果が現れるものの、一定期間使用後には効果が喪失する耐性が発生するので、癌細胞に選択的に作用して耐性が現れない抗癌剤の開発が切に望まれる(癌征服の現住所Biowave 2004.6(19))。近年、癌に対する分子遺伝情報の確保により癌の分子的特性を標的にした新しい抗癌剤の開発が進行されており、癌細胞だけが持っている特徴的な分子的標的(molecular target)をねらう抗癌剤は、薬剤の耐性が現れないとの報告もある。
【0003】
遺伝子の発現を抑制する技術は、疾病治療のための治療剤の開発および標的検証における重要な道具である。干渉RNA(RNA interference、以下「RNAi」という)は、その役割が発見された以後、多様な種類の哺乳動物細胞(mammalian cell)で、配列特異的mRNAに作用することが明らかになった(非特許文献1)。RNAiは、21〜25個のヌクレオチドの大きさの二本鎖構造を有する小さな干渉リボ核酸、短干渉RNA(small interfering RNA、以下siRNAという)が、相補配列を有する転写体(mRNA transcript)に特異的に結合して、該転写体を分解することによって、特定の蛋白質の発現を抑制する現象である。細胞内では、RNA二本鎖がDicerと呼ばれるエンドヌクレアーゼ(endonuclease)によりプロセッシングされ、21〜23個の二本鎖(base pair、bp)のsiRNAへと変換され、siRNAは、RISC(RNA−induced silencing complex)と結合してガイド(アンチセンス)鎖が、標的mRNAを認識して分解する過程を通じて標的遺伝子の発現を配列特異的に阻害する(非特許文献2)。ベルトラン(Bertrand)研究グループによれば、同じ標的遺伝子に対するsiRNAがアンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense oligonucleotide,ASO)に比べて生体内/外(in vitroおよびin vivo)でmRNA発現の阻害効果が優れて、該当効果が長く持続される効果があることが明らかになった(非特許文献3)。siRNAを含むRNAi技術基盤の治療剤市場は、今後、世界市場規模が、2020年頃には計12兆ウォン以上を形成するものと分析されており、当該技術を適用できる対象が大幅に拡大され、従来の抗体、化合物基盤の医薬品では治療し難い疾病を治療できる次世代の遺伝子治療技術として評価されている。また、siRNAの作用機序は、標的mRNAと相補的に結合して配列特異的に標的遺伝子の発現を調節するため、従来の抗体基盤の医薬品や化学物質(small molecule drug)が、特定の蛋白質標的に最適化されるまでの長い間、開発期間と開発コストがかかることに対し、適用できる対象が画期的に拡大され得、開発期間が短縮され、かつ医薬化が不可能な標的物質を含むすべての蛋白質標的に対して最適化されたリード化合物を開発することができるという利点がある(非特許文献4)。これに、最近、このリボ核酸媒介干渉現象が既存の化学合成医薬開発にて発生する問題への解決策を提示し、かつ転写体レベルで特定蛋白質の発現を選択的に抑制し、様々な疾病の治療剤、特に腫瘍治療剤の開発に利用しようとする研究が進められている。また、siRNA治療剤は、既存の抗癌剤とは異なり、標的が明確なため、副作用の予測が可能であるという長所があるが、これらの標的特異性は、様々な遺伝子の問題によって発生する病気である腫瘍の場合には、むしろ、これらの標的特異性は、治療効果が高くない原因にもなる。
【0004】
mTOR(哺乳類のラパマイシン標的;mammalian Target of rapamycin)は、サイトカイン−刺激細胞増殖、細胞周期の位相、G1期を調節するいくつかの重要な蛋白質のためのmRNAの翻訳(translation)、およびインターロイキン−2(IL−2)誘導転写(transcription)を含む、様々な信号変換経路において重要な酵素である。mTORの阻害は、細胞周期のG1期からS期までの進行の抑制を引き起こす。mTOR阻害剤は、免疫抑制、抗増殖および抗癌活性を示すので、これらの疾患の治療のためにmTORが標的とされている(非特許文献5)。また、mTORは、自己消化(autophage)調節に重要な因子であって、自己消化経路を調節するmTORを標的として、様々な疾患、例えば、癌、神経変性疾患、心臓疾患、老化、免疫疾患、感染症疾患、クローン病などを治療することができる(非特許文献6)。
【0005】
STAT3(signal transducer and activator of transcription 3)は、細胞の外部の様々な成長因子(growth factor)とサイトカイン(cytokine)の信号を核に伝達して転写を促進する転写調節因子(transcription factor)であり、細胞内不活性状態で転写活性ドメイン(transactivation domain)のチロシン残基がリン酸化されて活性化されると、核内に流入される(非特許文献7)。リン酸化されたSTAT3(p−STAT3)は、核のDNAと結合して細胞の成長(proliferation)と分化(differentiation)などの腫瘍形成(tumorigenesis)に関連する広範囲な標的遺伝子の発現を誘導し、固形癌および血液癌患者の約70%から常時活性化している(非特許文献8)。しかし、STAT3のような転写因子は、蛋白の3次構造により、活性を阻害できる標的を見つけるのが困難なため、伝統的な合成新薬開発の分野において、乱開発(undruggable)とされてきた(非特許文献9)。したがって、STAT3の発現を阻害できるsiRNA治療剤及びこれの伝達技術に対する市場の需要は、非常に高い状況である。
【0006】
すなわち、Stat3およびmTORは、発現の程度に応じて肺癌、前立腺癌、頭頸部癌などにおいて、予後が決定づけられる主要な癌関連の遺伝子であって、抗癌剤開発の標的となっているものの、細胞質に存在するので、今まで多く用いられていた抗体の治療薬では接近が不可能であり、また、薬物で伝達するには全身性副作用が予想され、これらを抑制するための新薬開発が難しいのが実情である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Molecular Medicine、「Silence of the transcripts:RNA interference in medicine」2005,Vol.83、p.764−773
【非特許文献2】Nature Reviews Drug Discovery、「NUCLEIC−ACID THERAPEUTICS:BASIC PRINCIPLES AND RECENT APPLICATIONS」2002、1、p.503−514
【非特許文献3】Biochem.Biophys.Res.Commun、「Comparison of antisense oligonucleotides and siRNAs in cell culture and in vivo」、2002、Vol.296、p.1000−1004
【非特許文献4】MOLECULAR THERAPY、「Progress Towards in Vivo Use of siRNAs」、2006、Vol.13、No.4、p.664−670
【非特許文献5】Current Opinion in Lipidology、2005、Vol.16、p.317−323
【非特許文献6】Immunology、7:767−777; Nature 451:1069−1075、2008
【非特許文献7】Jak−Stat、「STAT3 inhibitors for cancer therapy:Have all roads been explored」、2013、1;2(1):e22882
【非特許文献8】Role of STAT3 in cancer metastasis and translational advances。BioMed research international。2013;2013:421821
【非特許文献9】Transcription Factor STAT3 as a Novel Molecular Target for Cancer Prevention 。Cancers。2014;16;6(2):926−57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、mTOR遺伝子およびSTAT3遺伝子の発現を同時に抑制する核酸を提供するものであって、本発明では、siRNAの標的特異性に起因する治療効果が高くない欠点を克服するために、癌に関連するmTOR遺伝子およびSTAT3遺伝子の発現を同時に抑制するsiRNAおよびshRNAを作製し、これらの抗癌活性と抗癌剤との相乗的な抗癌活性を確認することによって、これを癌の予防または治療用薬学的組成物として用いることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、mTORおよびSTAT3遺伝子の発現を同時に抑制する核酸分子を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0011】
また、本発明は、前記組換え発現ベクターを導入した組換え微生物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記核酸分子を有効成分として含む、抗癌用薬学的組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、薬学的に有効な量の請求項1の核酸分子を個体に投与する段階を含む、癌の予防と治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、本願発明の二本鎖siRNAまたはshRNAは、センス鎖は、mTOR遺伝子の発現を抑制し、アンチセンス鎖は、STAT3遺伝子の発現を抑制し、それぞれのsiRNAまたはshRNAを別々に処理しなくても二つの遺伝子を同時に抑制することができる。これにより、癌細胞の死滅を促進し、抗癌剤との併用処理において、癌細胞の死滅を相乗的に向上させる効果があり、局所的に伝達が可能で、選択性に優れているので、様々な癌の種類に抗癌用組成物または抗癌サプリメントとして有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の二本鎖siRNA配列をループ配列と共に一本鎖に含まれるshRNAを、細胞内で発現するためのベクターのマップを示す図である。
【
図2】本発明の二重標的の二本鎖siRNAによるmTORまたはSTAT3遺伝子の発現抑制効果を確認した図である。
【
図3】mTOR遺伝子およびSTAT3遺伝子の発現が相互影響を及ぼすのかを確認するために、mTOR遺伝子またはSTAT3遺伝子のsiRNAをそれぞれまたは一緒に処理してmTORとSTAT3の発現量を確認した図である(nc2は、対照群siRNA;simTORは、mTORのみを標的化するsiRNA;siSTAT3は、STAT3のみを標的化するsiRNA;simTOR&STAT3は、mTOR標的化siRNAおよびSTAT3標的化siRNA併用処理)。
【
図4】本発明の二重標的siRNAでmTORおよびSTAT3を同時に抑制したときのヒト肺癌細胞株A549細胞の細胞生存率を確認した図である。
【
図5】シスプラチン処理後、本発明の二重標的siRNAでmTORおよびSTAT3を同時に抑制したときのヒト肺癌細胞株A549細胞の細胞生存率を確認した図である。
【
図6】パクリタキセル処理後、本発明の二重標的siRNAでmTORおよびSTAT3を同時に抑制したときのヒト肺癌細胞株A549細胞の細胞生存率を確認した図である。
【
図7】5−FU(5−fluorouracil)処理後、本発明の二重標的siRNAでmTORおよびSTAT3を同時に抑制したときのヒト肺癌細胞株A549細胞の細胞生存率を確認した図である。
【
図8】配列番号20のTTGGATCCAAループshRNA配列または配列番号21のTTCAAGAGAGループshRNAを含むベクターによるmTORおよびSTAT3の発現量をshRNAのDNA量に応じて確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、mTORおよびSTAT3遺伝子の発現を同時に抑制する核酸分子を提供する。
【0017】
前記核酸分子は、配列番号1および2;配列番号3および4;配列番号5および6;配列番号7および8;配列番号9および10;配列番号11および12;配列番号13および14;配列番号15および16;または配列番号17および18;の塩基配列を含むことができる。
【0018】
一実施例において、前記配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、および17で表示される塩基配列は、RNA干渉によりmTOR遺伝子発現を抑制し、前記配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18で表示される塩基配列は、RNA干渉によりSTAT3遺伝子の発現を抑制することができ、本発明の核酸分子は、mTOR遺伝子とSTAT3遺伝子の発現を同時に抑制することができる。
【0019】
一実施例において、前記配列番号1は配列番号2と、配列番号3は配列番号4と、配列番号5は配列番号6と、配列番号7は配列番号8と、配列番号9は配列番号10と、配列番号11は配列番号12と、配列番号13は配列番号14と、配列番号15は配列番号16と、配列番号17は配列番号18と部分的に相補的結合を成している二本鎖(double strand)siRNAをなすように作製し、二本鎖siRNAがそれぞれmTORおよびSTAT3遺伝子を標的化して発現を抑制することを確認することによって、二重標的siRNAセットであることを確認した。
【0020】
本発明において、mTORまたはSTAT3を標的とするsiRNAは、ヒト(Homo sapiens)のmTOR遺伝子またはSTAT3遺伝子の一部と100%相補的な配列を有し、mTOR遺伝子またはSTAT3遺伝子のmRNAを分解したり、翻訳を抑制することができる。
【0021】
本発明にて用いられる用語、「発現抑制」とは、標的遺伝子の発現または翻訳の低下を惹起することを意味し、好ましくは、これにより標的遺伝子の発現が検出不可能になり、無意味なレベルで存在することを意味する。
【0022】
本発明にて用いられる用語、「siRNA(small interfering RNA)」とは、特定のmRNAの切断(cleavage)を通じてRNAi(RNA interference)現象を誘導することができる短い二重鎖RNAを意味する。一般的に、siRNAは、標的遺伝子のmRNAと相同な配列を有するセンスRNA鎖と、これと相補的な配列を有するアンチセンスRNA鎖で構成されるが、本発明の二本鎖siRNAは、センスRNA鎖が配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、および17の塩基配列で表示されるsiRNA(mTOR遺伝子のアンチセンス鎖)であり、アンチセンスRNA鎖が配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18の塩基配列からなるsiRNA(STAT3遺伝子のアンチセンス鎖)であるので、二本鎖siRNAがそれぞれ同時にmTORおよびSTAT3遺伝子の発現を抑制することができるので、効率的な遺伝子ノックダウン(knock−down)法として、または、遺伝子治療(gene therapy)法として提供される。
【0023】
一実施例において、セット1の配列番号1および2のsiRNAは、21merのうち17merが、セット2の配列番号3および4のsiRNAは、20merのうち16merが、セット3の配列番号5および6のsiRNAは19merのうち15merが、セット4の配列番号7および8のsiRNAは18merのうち14merが、セット5の配列番号9および10のsiRNAは17merのうち16merが相補的に結合する。また、セット6の配列番号11および12のsiRNAは、20merのうち17merが、セット7の配列番号13および14のsiRNAは、19merのうち16merが、セット8の配列番号15および16のsiRNAは、18merのうち15merが、セット9の配列番号17および18のsiRNAは、17merのうち15merが相補的に結合する。
【0024】
前記塩基配列の変異体が、本発明の範囲内に含まれる。本発明のmTORおよびSTAT3遺伝子発現を同時に抑制する核酸分子は、これを構成する核酸分子の作用性等価物、例えば、核酸分子の一部の塩基配列が欠失(deletion)、置換(substitution)または挿入(insertion)により変形されたが、核酸分子と機能的に同様の作用をすることができる変異体(variants)を含む概念である。具体的には、前記遺伝子は、配列番号1〜18の塩基配列とそれぞれ70%以上、さらに好ましくは80%、より一層好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含むことができる。核酸分子の「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域とを比較することにより確認され、比較領域における核酸分子の配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(つまり、ギャップ)を含むことができる。
【0025】
また、本発明は、前記核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0026】
本発明にてmTORおよびSTAT3を標的とする二本鎖siRNAが伝達された細胞において適宜転写されるようにするためにはこれを含むshRNA、特に、配列番号1〜18の塩基配列が一部変形されたshRNAを少なくともプロモーターに作動可能に連結されるのが好ましい。前記プロモーターは、真核細胞において機能することができるプロモーターであれば如何なるものでも差し支えない。mTORおよびSTAT3を標的とする二本鎖siRNAまたはshRNAの効率的な転写のために必要に応じてリーダー配列、ポリアデニル化配列、プロモーター、エンハンサー、上流活性化配列、シグナルペプチド配列及び転写終結因子をはじめとする調節配列をさらに含むこともできる。前記shRNAは、配列番号20または配列番号21の塩基配列で表示されることができる。
【0027】
本発明の用語「shRNA(short hairpin RNA)」とは、一本鎖RNAにおいて部分的に回文状の塩基配列を含むことにより、3’領域に二本鎖構造を有するヘアピンと同様の構造を形成し、細胞内で発現された後、細胞内に存在するRNaseの一種であるdicerによって切断され、siRNAに変換することができるRNAを意味するが、前記二本鎖構造の長さは、特に限定されないが、好ましくは10ヌクレオチド以上であり、より好ましくは20ヌクレオチド以上である。本発明において、前記shRNAは、ベクターに含まれることができる。
【0028】
本明細書において、用語「ベクター」は、宿主細胞において目的とする遺伝子を発現させるための手段として、プラスミドベクター;ファージミドベクター;コスミドベクター;そしてバクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、およびアデノ−随伴ウイルスベクターなどのようなウイルスベクターなどを含むことができる。
【0029】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のベクターにおいて遺伝子は、プロモーターと作動的に結合(operatively linked)されている。
【0030】
本発明において、用語「作動的に結合された」とは、遺伝子発現調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と他の遺伝子配列間との機能的な結合を意味し、これにより前記調節配列は、前記他の遺伝子配列の転写および/または解読を調節することになる。
【0031】
本発明のベクターシステムは、当業界に公知の様々な方法により構築されることができ、これに対する具体的な方法は、Sambrook et al。(2001)、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに開示されており、この文献は、本明細書に参照として挿入される。
【0032】
本発明のベクターは、典型的にクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築することができる。また、本発明のベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主にして構築することができる。本発明のベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させることができる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター、およびT7プロモーターなど)、解読開始のためのリボソーム結合部位および転写/解読終結配列を含むのが一般的である。宿主細胞として、E.coli(例えば、HB101、BL21、DH5αなど)が用いられる場合、E.coliトリプトファン生合成経路のプロモーター及びオペレーター部位(Yanofsky、C.(1984)、J.Bacteriol.、158:1018−1024)、そしてファージλの左向きプロモーター(pLλプロモーター、Herskowitz、I.and Hagen、D.(1980)、Ann.Rev.Genet.、14:399−445)を調節部位として用いることができる。
【0033】
一方、本発明に用いることができるベクターは、当業界でよく用いられているプラスミド(例えば、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ、pUC19等)、ファージミド(例えば、pComb3X)、ファージまたはウイルス(例えば、SV40など)を操作して作製することができる。
【0034】
なお、本発明のベクターが発現ベクターであり、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例:メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーターおよびHSV TKプロモーター)が用いられることができ、転写終結配列として、ポリアデニル化配列を、一般的に有する。
【0035】
本発明のベクターは、タンパク質の精製を容易にするために、必要に応じて他の配列と融合されることもでき、融合される配列は、いわゆる、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(Pharmacia、USA)、マルトース結合タンパク質(NEB、USA )、FLAG(IBI、USA)および6x His(hexahistidine;Quiagen、USA)などが用いられることができるが、これに限定されるものでない。また、本発明の発現ベクターは、選択標識として、当業界で通常的に用いられる抗生物質耐性遺伝子を含むことができ、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ケネチシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0036】
また、本発明は、前記組換え発現ベクターを導入した組換え微生物を提供する。
【0037】
本発明のベクターを安定、かつ連続的にクローニングおよび発現させることができる宿主細胞は、当業界に公知された如何なる宿主細胞も用いることができ、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バチルスサブチリスおよびバチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、またはスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカスカルノス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を含むが、これに制限されるものではない。前記宿主細胞は、好ましくはE.coliであり、より好ましくはE.coli ER2537、E.coli ER2738、E.coli XL−1 Blue、E.coli BL21(DE3)、E.coli JM109、E.coli DHシリーズ、E.coli TOP10、E.coli TG1およびE.coli HB101である。
【0038】
本発明のベクターを宿主細胞内に運ぶ方法は、CaCl
2方法(Cohen、SN et al.(1973)、Proc。Natl.Acac.Sci.USA、9:2110−2114)は、ハナハンの方法(Cohen、SN et al.(1973)、Proc.Natl.Acac.Sci.USA、9:2110−2114;およびHanahan、D.(1983)、J. Mol.Biol.、166:557−580)、および電気穿孔法(Dower、WJ et al.(1988)、Nucleic.Acids Res.、16:6127−6145)などにより実施することができる。
【0039】
また、本発明は、前記核酸分子を有効成分として含む、抗がん用薬学的組成物を提供する。
【0040】
前記核酸分子は、抗がん剤をさらに含むことができ、例えば、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール、アクロニン、アドゼレシン、アラノシン、アルデスロイキン、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アモナフィド、アムプリゲン、アムサクリン、アンドロゲン、アングイジン、アフィジコリングシネート、アサリー、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、バチルス・カルメット−グエリン(BCG)、Bakerのアンチホル、ベタ−2−ジオキシチオグアノシン、ビサントレンHCl、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、BWA 773U82、BW 502U83/HCl、BW 7U85メシレート、セラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシル、クロロキノキサリン−スルホンアミド、クロロゾトシン、クロモマイシンA3、シスプラチン、クラドリビン、コルチコステロイド、コリネバクテリウム・パルブム、CPT−11、クリスナトル、シクロシチジン、シクロホスファミド、シタラビン、シテムベナ、ダビスマレエート、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、デアザウリジン、デクスラゾキサン、ジアンハイドロガラクチトール、ジアジクオン、ジブロモズルシトール、ジデムニンB、ジジエチルジチオカルバメート、ジクリコアルデヒド、ジヒドロ−5−アザシチジン、ドキソルビシン、エキノマイシン、エダトレキセート、エセルホシン、エフロルニチン、エリオット溶液、エルサミトルシン、エピルビシン、エソルビシン、リン酸エストラムスチン、エストロゲン、エタニダゾール、エチオホス、エトポシド、ファドラアゾール、ファザラビン、ペンレチニド、フィルグラスチム、フィナステライド、フラボン酢酸、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、5’−フルオロウラシル、Fluosol
TM、フルタミド、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、酢酸ゴセレリン、ヘプスルファム、ヘキサメチレンビスアセタミド、ホモハリントニン、硝酸ヒドラジン、4−ヒドロキシアンドロステンジオン、ヒドロキシ尿素、イダルビシンHCl、イフォスファミド、4−イポメアノール、イプロプラチン、イソトレチノイン、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レバミソール、リポソーマルダウオルビシン、リポソーム被包性ドキソルビシン、ロムスチン、ロニダミン、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、メノガリル、メルバロン、6−メルカプトプリン、メスナ、バチルス・カルメット−グエリンのメタノール抽出物、メトトレキサート、N−メチルホルムアミド、ミフェプリストン、ミトグアゾン、ミトマイシン−C、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、単核細胞/大食細胞コロニ−刺激因子、ナビロン、ナフォキシジン、ネオカルジノスタチン、酢酸オクトレオチド、オルマプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラ、ペントスタチン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、PIXY−321、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プレドニムスチン、プロカルバジン、プロゲスチン、ピラゾフリン、ラゾキサン、サルグラモスチム、セムスチン、スピロゲルマニウム、スピロムスチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌール、スラミンナトリウム、タモキシフェン、タキソテール、テガフール、テニポシド、テレフタルアミジン、テロキシロン、チオグアニン、チオテパ、チミジン注射、チアゾフリン、トポテカン、トレミフェン、トレチノイン、塩酸トリフルオペラジン、トリフルリジン、トリメトレキセート、TNF(tumor necrosis factor)、ウラシルマスタード、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンゾリジン、Yoshi 864、ゾルビシン、サイトシンアラビノシド、エトポシド、メルファラン、タキソール及びこれらの混合物を含むことができる。好ましくはシスプラチン、パクリタキセル、5−FU(5−fluorouracil)、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シトシンアラビノシド、エトポシド、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ビンデシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェンおよびタキソールであり、より好ましくは、シスプラチン、パクリタキセルまたは5−FU(5−fluorouracil)であるが、本発明の核酸分子と併用して処理し、抗がん効果に相乗効果が奏されるように目的を達成するためなら、これに制限されるものでない。
【0041】
前記癌は、大腸癌、乳癌、子宮がん、子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がん、脳腫瘍、頭頸部癌、悪性黒色腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、胃癌、肺癌、膵臓癌、非小細胞性肺癌、肝臓癌、食道癌、小腸癌、肛門付近がん、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、陰門癌、ホジキン病、膀胱癌、腎臓癌、尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、骨癌、皮膚癌、頭部癌、頸部癌、皮膚黒色腫、眼内黒色種、内分泌腺癌、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、中枢神経系(central nervous system;CNS)腫瘍、1次CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、多形膠芽細胞腫と下垂体腫瘍からなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0042】
本発明の薬学的組成物には、単一のドメイン抗体に加えて、サプリメント(adjuvant)をさらに含むことができる。前記サプリメントは、当該技術分野で知られているものであれば、何ら制限なく使用することができるが、例えば、フロイント(Freund)の完全サプリメントまたは不完全サプリメントをさらに含み、その効果を増加させることができる。
【0043】
本発明に係る薬学的組成物は、有効成分を薬学的に許容された担体に混入させた形態で製造することができる。ここで、薬学的に許容された担体は、製薬分野で通常用いられる担体、賦形剤、および希釈剤を含む。本発明の薬学的組成物に利用できる薬学的に許容された担体は、これらに限定されるものではないが、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱物油を挙げることができる。
【0044】
本発明の薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用することができる。
【0045】
製剤化する場合には、通常用いられる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、有効成分に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤することができる。また、単純な賦形剤に加えて、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、一般的に使用される希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれることができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水溶性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤が含まれる。非水溶性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されることができる。坐剤の基剤としては、ウィテプソル(witepsol)、トゥイーン(tween)61、カカオ脂、ラノリン脂、グリセロールゼラチンなどが使用されることができる。
【0046】
本発明に係る薬学的組成物は、個体にさまざまな経路で投与することができる。投与のあらゆる方式が想定されるが、例えば、経口、静脈、筋肉、皮下、腹腔内注射によって投与することができる。
【0047】
本発明による薬学的組成物の投与量は、個体の年齢、体重、性別、身体の状態などを考慮して選択される。前記薬学的組成物の中、含まれるシングルドメイン抗体の濃度は、対象に応じて多様に選択することができることは自明であり、好ましくは薬学的組成物に0.01〜5000μg/mlの濃度で含まれるものである。その濃度が0.01μg/mlの未満の場合には、薬学活性が示されないこともあり、5,000μg/mlを超える場合には、人体に毒性を示すことができる。
【0048】
本発明の薬学的組成物は、癌およびその合併症の予防または治療に用いられることができ、抗がんサプリメントとしても使用することができる。
【0049】
また、本発明は、薬学的に有効な量の請求項1の核酸分子を個体に投与する段階を含む、癌の予防および治療方法を提供する。
【0050】
本発明の薬学的組成物は、治療的有効量または薬学的に有効な量で投与する。用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、個体の種類および重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物への感度、投与時間、投与経路、および排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野でよく知られている要素に応じて決定することができる。
【0051】
下記の実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明の内容を具体化するためのものであって、これにより本発明が限定されるものではない。
【0052】
実施例1.二重標的siRNA作製
STAT3(signal transducer and activator of transcription3)及びmTOR(mammalian target of rapamycin)を同時に抑制することができる二重標的siRNA(double strand)を下記の表1の配列で作製した(Bioneer、Daejeon、Korea)。
【0054】
前記セット1の配列番号1および2のsiRNAは、21merのうち17merが、セット2の配列番号3および4のsiRNAは、20merのうち16merが、セット3の配列番号5および6のsiRNAは、19merのうち15merが、セット4の配列番号7および8のsiRNAは、18merのうち14merが、セット5の配列番号9および10のsiRNAは、17merのうち16merが相補的に結合する。また、セット6の配列番号11および12のsiRNAは、20merのうち17merが、セット7の配列番号13および14のsiRNAは、19merのうち16merが、セット8の配列番号15および16のsiRNAは、18merのうち15merが、セット9の配列番号17および18のsiRNAは、17merのうち14merが相補的に結合する。
【0055】
具体的には、各セットの二つの序列がdouble strand形態で細胞内に入った後は、各セットのantisense_mTORのsiRNAがmTOR mRNA(gi|206725550|ref|NM_004958.3|Homo sapiens mechanistic target of rapamycin(serine/threonine kinase)(MTOR)、mRNA)の標的部位に相補的に結合する。
【0056】
また、各セットのantisense_STAT3のsiRNAがSTAT mRNA(gi|47080104|ref|NM_139276.2|Homo sapiens signal transducer and activator of transcription 3(acute−phase response factor)(STAT3)、transcript variant 1、mRNA)の標的部位に相補的に結合してmTORおよびSTAT3遺伝子発現を減少させる。
【0057】
実施例2.二重標的siRNAを含むshRNA
を発現する組み換え発現ベクターの作製
前記実施例1にて作製したセット1の配列番号1および2の二重標的siRNAを細胞内で
発現するために、前記siRNA二本鎖配列
とループ配列(UUGGAUCCAAループshRNAおよびUUCAAGAGAGループshRNA)を含むshRNA
をコードする核酸分子を作製した(各核酸分子の配列は、それぞれ表2のSEQ ID NO.20および21に示す)。
各核酸分子をpE3.1ベクター(
図1)の制限酵素PstIおよびEcoRV切断位置にU7プロモーター(配列番号19)の後に来るように配置して、mTORおよびSTAT3を標的とする二重標的siRNAを含む2種のshRNAを細胞内で発現することができる組換え発現ベクターを作製した
(各shRNAの配列は、それぞれSEQ ID NO.26および27に示す)。
【0059】
実験例1.二重標的siRNAのmTORおよびSTAT3遺伝子発現抑制効果を確認
12−ウェルプレートにHela細胞を分注した後、細胞confluentが50%になるまで、10%FBS(Hyclone社)が添加されたRPMI培地(Hyclone社)で37℃、5%CO2の条件で培養した。その後、前記細胞に、前記実施例1にて作製した二重標的siRNAをlipofectamine3000(Invitrogen社、Carlsbad、CA、USA)でトランスフェクションしてBcl1、BI1、AR、mTOR、およびSTAT3を同時にノックダウンした。トランスフェクション48時間後、細胞を破砕してGeneJET RNA Purification Kit(Invitrogen)で全RNAを抽出した。抽出した全RNAを鋳型として用い、RevoScriptTM RT PreMix(iNtRON BIOTECHNOLOGY)で逆転写反応を行った。逆転写されたcDNAを25〜200ng含有した試料20μlとAmpONE taq DNA polymerase(GeneAll)およびTaqMan Gene Expression assays(Applied Biosystems)を用いて、mTOR(Hs00234522_m1)、STAT3(Hs01047580_m1)およびGAPDH(Hs02758991_g1)に対し、ABI PRISM 7700 Sequence Detection SystemおよびQS3 Real−time PCR(Biosystems)を用いて反応を行った。Real−time PCR反応条件は、[50℃で2分、95℃で10分、および95℃で15秒および60℃で60秒の二段階のサイクル]を全40サイクル行った。すべての反応は3回ずつ繰り返し実行され、それらの平均値を求めた。このようにして得られた結果は、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHのmRNA値に対して正規化した。
【0060】
その結果、セット1−9の二重標的siRNAによってmTORおよびSTAT3は、対照群と比較して、残余発現が約20〜40%であることが確認され、二重標的siRNAが両遺伝子共に発現抑制することが分かった(
図2)。
【0061】
実験例2.mTORおよびSTAT3の遺伝子相互発現の影響性を確認
ヒト肺癌細胞株A549に前記実験例1と同様に、lipofectamine3000を利用して、下記表3のmTOR siRNA(bioneer、1058906)(配列番号22および23)、STAT3 siRNA(bioneer、1145658)(配列番号24および25)またはmTOR siRNAとSTAT3 siRNAを同時にトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、前記実験例1と同様にReal time PCR(Taqman)を利用して、mTORとSTAT3遺伝子発現の減少割合を確認した。
【0064】
その結果、それぞれのsiRNAによりmTORおよびSTAT3発現が減少しており、この結果を両siRNAと同時に処理した場合と比較した結果、mTOR遺伝子およびSTAT3遺伝子の発現は、相互間に影響を与えなかった(
図3及び表4)。
【0065】
実験例3.二重標的siRNAによる癌細胞死滅効果を確認
本発明のセット1−9の二重標的siRNAによる癌細胞の死滅効果を確認するために、ヒト肺癌細胞株A549細胞を96ウェルプレートに5×10
3cell/ウェルで分注した後、lipofectamine 3000で二重標的siRNA(mTORおよびSTAT3を同時にノックダウン)をそれぞれ細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、さらに24時間後に5mg/mL MTT(Promega、Ltd.)を細胞に処理し、4時間インキュベーションした。その後、培地を除去し、可溶化溶液(solubilization solution)および停止溶液(stop solution)150μlを処理し、37℃で4時間インキュベーションした。反応溶液の吸光度を570nmで測定し、下記数式を用いて、細胞の生存率を計算した。
【0067】
その結果、本発明のセット1−9の二重標的siRNAでmTORおよびSTAT3を同時に抑制したとき、細胞生存率が対照群と比較して有意に減少したことを確認した。したがって、本発明のセット1−9の二重標的siRNAは、効果的に癌細胞が死滅したことを確認した(
図4)。
【0068】
実験例4.二重標的siRNAと抗がん剤併用処理による癌細胞死滅効果を確認
4−1.シスプラチン(cisplatin)との併用処理
ヒト肺癌細胞株A549細胞を96ウェルプレートに5×10
3cell /ウェルで分注した後、lipofectamine3000で二重標的siRNA(mTORおよびSTAT3を同時にノックダウン)をそれぞれ細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、シスプラチン5μMを処理し、10時間インキュベーションした。その後、前記実験例3と同様にMTT反応を行い、これの吸光度を570nmで測定し、細胞生存率を計算した。
【0069】
その結果、シスプラチンと併用処理し、本発明のセット1−9の二重標的siRNAでmTORおよびSTAT3を同時に抑制したとき、細胞生存率が約50〜70%まで減少し、対照群と比較して有意な相違を示すことが確認された。したがって、抗がん剤との併用処理においても両遺伝子を同時に抑制したとき、細胞死滅効果が著しく向上したことが確認された(
図5)。
【0070】
4−2.パクリタキセル(paclitaxel)との併用処理
ヒト肺癌細胞株A549細胞を96ウェルプレートに5×10
3cell /ウェルで分注した後、lipofectamine3000で二重標的siRNA(mTORおよびSTAT3を同時にノックダウン)をそれぞれ細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、パクリタキセル5μMを処理し、10時間インキュベーションした。その後、前記実験例3と同様にMTT反応を行い、これの吸光度を570nmで測定し、細胞生存率を計算した。
【0071】
その結果、パクリタキセルと併用処理し、本発明のセット1−9の二重標的siRNAでmTORおよびSTAT3を同時に抑制したとき、細胞生存率が約30〜50%まで減少し、対照群と比較して有意な相違を示すことが確認された。したがって、抗がん剤との併用処理でも両遺伝子を同時に抑制したとき、細胞死滅効果が著しく向上することが確認された(
図6)。
【0072】
4−3.5−フルオロウラシル(5−FU、5−fluorouracil)との併用処理
ヒト肺癌細胞株A549細胞を96ウェルプレートに5×10
3cell /ウェルで分注した後、lipofectamine3000で二重標的siRNA(mTORおよびSTAT3を同時にノックダウン)をそれぞれ細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、5−フルオロウラシル1μMを処理し、10時間インキュベーションした。その後、前記実験例3と同様にMTT反応を行い、これの吸光度を570nmで測定し、細胞生存率を計算した。
【0073】
その結果、5−フルオロウラシルと併用処理し、本発明のセット1−9の二重標的siRNAでmTORおよびSTAT3を同時に抑制したとき、細胞生存率が約30%まで減少し、対照群と比較して有意な相違を示すことが確認された。したがって、抗がん剤との併用処理でも両遺伝子を同時に抑制したとき、細胞死滅効果が著しく向上することを確認した(
図7)。
【0074】
実験例5.二重標的siRNAを含むshRNAのmTORおよびSTAT3の抑制効果
前記実施例2にて作製した配列番号20のTTGGATCCAAループshRNA配列または配列番号21のTTCAAGAGAGループshRNAを含むベクターをA549細胞にそれぞれ0、1、および2μgずつlipofectamine3000を利用してトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、実験例1に記載されたReal time PCR分析方法を利用して、mTORおよびSTAT3遺伝子発現の減少程度を確認した。
【0075】
その結果、mTOR、およびSTAT3発現は、本願発明の二重標的siRNAを含む2種のshRNAの両方で減少しており、shRNAのDNA量に比例して、20%程度まで減少する傾向を示した(
図8)。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]