(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車外側に突出する前記ハブリング本体の先端側とホイールキャップとの間には、前記ホイールキャップをハブリング本体に固定するホイールキャップ装着手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のハブリング。
前記ハブリング本体は、前記ホイールの外面から車外側に向かって起立するように伸びるベース筒部と、前記ベース筒部の車外側の端部に、先端に向かうに連れて先細り状に形成された絞り部と、を有しており、
前記ホイールキャップ装着手段が前記ハブリング本体の絞り部に配備されており、
前記ベース筒部の外周面に、前記嵌合面と、前記非嵌合面とが設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のハブリング。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のホイールの中心にはホイールナット取付部が形成されており、このホイールナット取付部に複数設けられたボルト孔に、車軸の端部のハブ(車軸ハブ)に設けられたハブボルトを挿入し固定することで、ホイールは車軸に固定されている。上述した複数のボルト孔およびハブボルトはホイールの回転軸心と車軸とが同軸となる位置に配備されているため、理論的にはハブボルトをボルト孔に通してナットなどで締め付ければ、ホイールの回転軸心と車軸の軸心とは一致するはずである。
【0003】
しかし、現実には、ハブボルトを挿通するボルト穴とハブボルトとの間にはある程度のクリアランスが存在している。また、ハブボルトの締め付け強さも、ボルト間で完全に同じにすることは困難を極めることがあり、これらが原因となって実際のホイールの回転軸心と車軸の軸心との間には微妙なズレが生じてしまうことがある。このような軸心のズレは非常に小さいものであるが、高速道路などを走行する際には運転性能(いわゆる高速安定性)を低下させる可能性がある。そのため、高速安定性への品質要求が高い高級車やスポーツ車では、上述した軸心のズレの発生を防止するハブリングという部材が好適には設けられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、タイヤがホイールに組み付けられたタイヤ・ホイール組立体を車両のハブに固定する際に用いられる固定補助器具が開示されている。この特許文献1の
図2には、ハブと、ホイールの回転軸心部に設けられたハブ孔との間に、ハブカラーを挟み込むように配備することが記載されている。そして、
図3などを参照すると、このハブカラーは、ハブガイドという部材と、上述した「ハブリング」に相当するハブリング部とで構成されている。
【0005】
また、特許文献2には、電動モータにより回転する出力軸(ギヤカップリング軸)の回転駆動力を車輪に伝達可能な車軸支持構造が開示されている。この特許文献2には、ギヤカップリング軸の軸端に、この軸端を内側に内挿可能とするホイールハブが設けられることが記載されている。このホイールハブは上述した「ハブリング」に相当する部材であり、両端開放状のハブ軸と、フランジとで構成されるものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図13及び
図14に示したように、従来のハブリング101が設けられたホイール102では、ハブリング101のさらに車外側(車軸の軸心方向の外側)に、ホイールキャップ114という装飾部材が取り付けられることがある。このホイールキャップ114は、見栄えが良くない車軸103の端部などを車外側から目隠しするカバーとなっており、ドレスアップされた自動車のホイール102などにはよく用いられている。
【0008】
例えば、上述した特許文献1の固定補助器具では、ハブリング部は、同文献の
図1などに示されるように、ホイールの外面にホイールキャップを備えておらず、ホイールキャップをどのように設けるかは不明となっている。
しかし、特許文献2の車軸支持構造では、
図1及び
図2などに示されるように、ホイールハブの外方に、ホイールキャップが設けられている。このホイールキャップはホイールハブ(ハブリング)の外方に距離を開けて配備されており、ホイールに直に取り付けられるものとなっている。つまり、特許文献2のホイールキャップは、ハブリングとは全く別部材としてホイールの異なる箇所に取り付けられている。
【0009】
つまり、上述した特許文献の車軸構造では、ハブリングをホイールに取り付けるための構造と、ホイールキャップをホイールに取り付けるための構造とが、ホイールのボア孔の両側にそれぞれ形成されており、取付構造を2つ設けなくてはならない分だけ、加工が煩雑となり加工コストも嵩むものとなっており、また部材の取り付けや取り外しに手間がかかるものとなっていた。
【0010】
また、ホイールはハブリングに比べると部材が大きく、加工設備も大掛かりなものになるし、加工ミスなどが生じると高価なホイールの廃棄に繋がる虞があるため、この点でも製造コストの高騰に繋がりやすいという問題を備えていた。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、ハブリングにホイールキャップを保持する機能を付加することで、ホイールキャップを容易にホイールに装着可能とし、ホイールキャップを取り付ける構造がなくなる分だけホイールの製造コストも低く抑えることができるハブリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のハブリングは以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のハブリングは、
外周側にタイヤが取り付けられる
と共に中央側にホイールナット取付部を有するホイール
を、軸端に車両ハブが設けられた車軸に取り付ける際に用いるハブリングであって、
前記ハブリングは、前記ホイールナット取付部に複数形成されたボルト孔に、前記車両ハブに形成された複数のハブボルトを差し込んだ上で、前記ホイールナット取付部に形成されたボア孔に、前記車両ハブの表面から車外側に向かって突出する円凸部を挿入する際に、前記円凸部とボア孔との隙間を埋め、且つ、前記ホイールの中心出しを行う
構成とされており、前記ハブリングは、前記ボア孔の口径に対応した外径を有すると共に、ボア孔の孔内を通って車外側に突出状態となっている筒状のハブリング本体を備えており、前記ハブリング本体は、前記ボア孔から車外側に向かって突出した先端側に、前記車軸を車外側から目隠しするホイールキャップが装着可能とされており、前記ハブリング本体の外周面は、前記ボア孔の内周面に対して嵌合する嵌合面と、前記ボア孔の内周面から離間した非嵌合面と、を有していることを特徴とする。
【0012】
なお、好ましくは、車外側に突出する前記ハブリング本体の先端側とホイールキャップとの間には、前記ホイールキャップをハブリング本体に固定するホイールキャップ装着手段が設けられているとよい。
なお、好ましくは、前記ハブリング本体は、前記ホイールの外面から車外側に向かって起立するように伸びるベース筒部と、前記ベース筒部の車外側の端部に、先端に向かうに連れて先細り状に形成された絞り部と、を有しており、前記ホイールキャップ装着手段が前記ハブリング本体の絞り部に配備されており、前記ベース筒部の外周面に、前記嵌合面と、前記非嵌合面とが設けられているとよい。
【0013】
なお、好ましくは、前記ホイールキャップの外周側には、外側に向かって突出するように形成された第1係合部が設けられており、前記ホイールキャップ装着手段は、前記絞り部の開口端に、内側に向かって突出するように形成され、且つ、前記第1係合部と係合可能とされた第2係合部を有しているとよい。
なお、好ましくは、前記非嵌合面が、前記ベース筒部の外周面に複数設けられているとよい。
【0014】
なお、好ましくは、前記非嵌合面が、前記ベース筒部の外周面に環状に連続して形成されているとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハブリングによれば、ハブリングにホイールキャップを保持できる機能を付加することで、ホイールキャップを安価にホイールに装着可能とし、またホイールキャップをホイールに対して簡単に取り付けや取り外しでき、ホイールの製造コストをも低く抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明のハブリング1の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、第1実施形態のハブリング1が取り付けられたホイール2を正面(車外側)から見た図である。
図1に示すように、第1実施形態のハブリング1が設けられたホイール2は、自動車の車軸3に同軸となるように取り付け可能な、タイヤ自体と略同幅(ほぼ同じリム幅)の短尺円筒状の部材であり、外周側にタイヤが取付可能とされている。上述したホイール2は、スチール、アルミニウム、マグネシウムなどの金属またはこれらの合金などを用いて形成されており、鋳造、鍛造、切削などの工程を経て製造されている。
【0018】
具体的には、第1実施形態のホイール2は、タイヤが取り付けられるリム部4と、車両のハブ(車軸ハブ5)に取り付けられると共に中央に車軸3の先端(円凸部7)を挿入可能なボア孔6が形成されたホイールナット取付部8と、ホイールナット取付部8から径外側に向かって放射状に伸びて当該ホイールナット取付部8とリム部4とを連結する複数のスポーク部9と、を備えている。
【0019】
リム部4は、ホイール2の外周側に、タイヤの内径(リム径)に合わせた外径を備える円筒状に形成された部分である。リム部4には、車軸3の軸心と同軸となるようにタイヤが外側から装着可能となっている。リム部4におけるリム幅方向の両端側には、ホイール2の径外側に突出したフランジ部10が形成されている。リム部4の内周側には、リム部4と後述するホイールナット取付部8とを連結するスポーク部9が形成されている。
【0020】
スポーク部9は、上述したリム部4とホイールナット取付部8とを結ぶ部分であり、本実施形態のホイール2では軸心から径外側に向かって放射状に伸びる長尺な棒状に形成されている。本実施形態の場合、スポーク部9は、ホイール2の軸心回りに等角度(60°の角度)をあけて6本形成されている。なお、本実施形態ではスポーク部9は長尺な棒状とされているが、スポーク部9がディスク状に形成されたホイール2や網目状に形成されたホイール2に、本発明のハブリング1を設けても良い。本実施形態のホイール2では、周方向に隣り合ったスポーク部9、9の間に、ホイール2を幅方向に貫通する略扇状の開口11が形成されている。
【0021】
図1及び
図2に示すように、ホイールナット取付部8は、上述したスポーク部9が交差するホイール2の中央に形成されており、上述した自動車の車軸3の周囲に設けられている。ホイールナット取付部8の中央には、ホイール2を幅方向(リム幅方向)に貫通するボア孔6が形成されている。このボア孔6は、車軸3の外径に対応した口径を有しており、車軸3の軸端(円凸部7)を挿入可能となっている。また、ホイールナット取付部8におけるボア孔6の周囲には、ホイール2の軸心回りに等角度をあけてボルト孔12が形成されている。本実施形態の場合であれば、ホイール2の軸心回りに60°の角度をあけて6個のボルト孔12が形成されている。このボルト孔12には、後述する車軸ハブ5のハブボルトが差し込み可能となっている。
【0022】
次に、上述したホイール2が装着される車軸3について説明する。
車軸3は、車両の中央側から車外側に向かって水平に伸びており、軸端には車軸ハブ5が設けられている。この車軸ハブ5は、車軸3の軸端に設けられた円盤状の部材であり、上述したホイール2のホイールナット取付部8と略同径かやや大きな径に形成されている。より正確には、
図2に2点鎖線で示されるように、車軸3の車外側の軸端には円凸部7が設けられており、この円凸部7は車軸ハブ5の表面から車外側に向かって突出しており、円凸部7をボア孔に差し込んだ状態でホイール2は車軸3(車軸ハブ5)に取り付けられている。
【0023】
車軸ハブ5における車外側を向く表面には、車外側に向かって水平に伸びるハブボルト(図示略)が形成されている。このハブボルトは、ホイールナット取付部8のボルト孔12に対応した位置の車軸ハブ5に設けられており、ボルト孔12の設置数と同数(本実施形態の場合は6孔)だけ配備されていて、ハブボルトをボルト孔12に通してナットなどで締め付けることでホイール2の回転軸心と車軸3の軸心とが一致する構成となっている。
【0024】
ところで、上述した「発明が解決しようとする課題」でも説明したように、ハブボルトをボルト孔12に通してナットなどで締め付ければ、理論的にはホイール2の回転軸心と車軸3の軸心とが一致した状態でホイール2の取り付けが行われるはずである。しかし、実際にはボルト穴12とハブボルトとのクリアランスや各ナットの締め付け強さのばらつきに起因して、軸心のズレが発生する。このような軸心のズレは運転性能(いわゆる高速安定性)を低下させる原因となるため、上述した軸心のズレの発生を防止する目的(言い換えればホイール2の中心出しを行う目的)で本発明のハブリング1が設けられている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、第1実施形態のハブリング1は、ホイールナット取付部8のボア孔6と円凸部7(車軸3)との間に挟み込まれた状態で装着可能とされており、ボア孔6と円凸部7との隙間を埋めることで円凸部7(車軸3)に対してホイール2の中心出し(センターリング)を行うことができるようになっている。
具体的には、上述したハブリング1は、ボア孔6の口径に対応した外径を有する筒状のハブリング本体13を備えている。このハブリング本体13は、幅方向に沿ったボア孔6の孔長よりも長尺に形成されており、車内側からボア孔6内に全長がすべて入り込むまでハブリング本体13を差し込むと、先端側(車外側の軸端)がボア孔6から車外側に向かって突出するようになっている。一方、ハブリング本体13の基端側(車内側の軸端側)はボア孔6の内周面に面状態で接触するようになっている。
【0026】
一方、上述したハブリング本体13の内側には、車軸3の車外側の軸端に設けられた円凸部7が挿入されている。具体的には、このハブリング本体13の内径は円凸部7の外径に対応した寸法に形成されており、この円凸部7に対してハブリング本体13は車外側から差し込み可能となっていて、差し込まれた状態ではハブリング本体13の基端(車内側の軸端)は円凸部7(車軸3)の外周面に対して面状態で接触するようになっている。
【0027】
また、ハブリング本体13は、ボア孔6から車外側に向かって突出した先端に、車軸3を車外側から目隠しするホイールキャップ14が装着可能とされている。より詳しく言えば、本発明のハブリング1は、車外側に突出するハブリング本体13の先端側とホイールキャップ14との間に設けられて、ホイールキャップ14をハブリング本体13に固定するホイールキャップ装着手段15を備えたものとなっている。
【0028】
次に、ハブリング本体13、ホイールキャップ14、及びホイールキャップ装着手段15について説明する。
まず、ハブリング本体13に装着されるホイールキャップ14について説明する。
図5〜
図7に示すように、ホイールキャップ14は、正面から見た外観が円盤状の部材であり、ハブリング本体13の車外側の端部に、筒状とされたハブリング本体13の車外側の開口を塞ぐように取り付け可能となっており、見栄えの悪い車軸3の目隠しを可能としている。
【0029】
具体的には、ホイールキャップ14は、車外側を向く表面が、装飾性に優れる表面形状に加工されている。このような装飾性に優れる表面形状としては、転写加工や研削加工により表面に筋模様や網目模様などの幾何学パターンを形成したものや、研磨加工や研削加工によって表面を光輝状態(表面を平滑にして反射により金属光沢を持つようにした状態)にしたもの、あるいは電解着色や塗装などによって着色や文字、ロゴなどの装飾を表示可能にしたもの等が挙げられる。
【0030】
ホイールキャップ14の表面中央側には、ハブリング本体13の軸心に直交する方向(図の例では上下方向)に長尺で、角が丸まった長方形状に形成された表示部16が形成されている。この表示部16は、幅方向の中央側に向かって凹んで形成されており、ロゴなどを表示したプレートを嵌め込み可能とされている。このような表示部16にプレートを設けることで、ロゴなどの取り換えが簡単に行えるようになり、ホイールキャップ14の意匠性や装飾性を高めることが容易となる。
【0031】
また、ホイールキャップ14の裏面(車内側に面する表面)には、ホイールキャップ14をハブリング本体13に係合するための第1係合部17が設けられている。なお、第1係合部17については、ホイールキャップ装着手段15や第2係合部18と一緒に後ほど詳しく説明する。
図8〜
図10に示すように、ハブリング本体13は、ホイール2のホイールナット取付部8に形成されたボア孔6に対して、車外側に向かって突出した状態となるように挿入されている。
【0032】
ハブリング本体13は、幅方向に沿ったボア孔6の長さ(孔長)よりも長尺に形成されており、車内側からボア孔6内に全長すべてが入り込むまでハブリング本体13を差し込むと、車外側の端部がボア孔6の外側に突出するようになっている。例えば、本実施形態のハブリング本体13の場合であれば、車内側の端部はボア孔6の孔端と面一になっているが、車外側の端部は孔内を通って車外側に突出状態となっている。
【0033】
具体的には、上述したハブリング本体13は、ホイール2の外面から車外側に向かって起立するように伸びるベース筒部19と、ベース筒部19の車外側の端部に、先端が基端より絞られて小径とされた絞り部20と、を有している。
本発明のベース筒部19は、基端側から先端側に向かって外径が一定とされたストレート筒状、基端側から先端側に向かって外径が連続的(漸化的)に変化するテーパ筒状、または基端側から先端側に向かって外径が段階的(ステップ状)に変化するテレスコピック状に形成されている。ベース筒部19の基端側には、径外側に向かって突出する係止端21が形成されており、この係止端21をボア孔6の車内側の開口端に係止させることでハブリング本体13はボア孔6の車内側の開口端と面一となる状態に位置決めされる。
【0034】
本実施形態のベース筒部19は、基端側から先端側に向かって、全長の2/3程度の範囲がストレート筒状となっており、内径と外径とが一定となるように形成されている。このストレート筒状の部分には、外側からボア孔6の内周面が面接触しており、内側から円凸部7(車軸3の軸端側)の外周面が面接触している。
具体的には、ボア孔6の内周面との接触関係について言えば、ベース筒部19の外周面のうち、基端側の外周面は、ボア孔6の内周面とほぼ同じ外径の円筒面として形成されており、ボア孔6の内周面に対して面状態で接触可能となっている。一方、先端側の外周面は、基端側の外周面よりやや小さい外径の円筒面として形成されており、ボア孔6の内周面から少し距離をあけた(接触しない)構成となっている。このように先端側の外周面を基端側の外周面よりやや小さい外径に形成すれば、ベース筒部19の外周面がボア孔6の内周面に接触しなくなるため、ボア孔6からベース筒部19を抜き取る際に抜き取り作業が容易なものとなる。
【0035】
一方、円凸部7(車軸3の軸端側)との接触関係について言えば、ベース筒部19の内周面のうち、基端側から約1/3までの内周面は、上述した円凸部7の外周面とほぼ同じ内径の円筒面として形成されており、円凸部7に対して面状態で接触可能となっている。
つまり、上述したベース筒部19は、ボア孔6の内周面及び円凸部7の外周面によって内外から隙間なく挟まれており、これら3つの部材が面接触し合うことによって車軸3に対するガタツキを防止しつつホイール2が車軸3に固定可能となっている。
【0036】
また、上述した絞り部20は、基端側から先端側までの全長のうち、先端側の1/3程度の範囲をすぼめたような形状を有しており、先端に向かうにつれて内径と外径とが一度に小さくなる構造となっている。言い換えれば、上述した絞り部20は、先端に向かうに連れて口径が急に小さくなる絞り形状に加工されており、車内側の端部に比べて車外側の端部は径小となっている。このベース筒部19より径小に形成されたハブリング本体13の絞り部20の先端側に、ホイールキャップ装着手段15の第2係合部18が配備されている。
【0037】
上述した第2係合部18は、径内側に向かって突出する爪部18aを有しており、この爪部18aをホイールキャップ側に形成された第1係合部17に係合させることで、ホイールキャップ14をハブリング本体13に固定可能となっている。
ホイールキャップ装着手段15は、ホイールキャップ14をハブリング1に直接係合させるものである。つまり、従来のホイール102では、ホイールキャップ114とハブリング101がボア孔106の異なる箇所にそれぞれ係合していたが、本実施形態のホイールキャップ装着手段15は、ホイールキャップ14の第1係合部17をハブリング本体13の絞り部20に形成された第2係合部18に係合させており、ハブリング1をホイールキャップ14に直接係合する構成となっている。
【0038】
具体的には、本実施形態のホイールキャップ装着手段15は、ホイールキャップ14の第1係合部17と、ハブリング本体13の絞り部20に形成されると共に上述した第1係合部17に係合可能な第2係合部18と、を有している。
図5〜
図7に示すように、第1係合部17は、ホイールキャップ14の外周側の裏面(車内側に面する表面)から、車内側に向かって水平に突出する突片であり、突端には爪部17aが形成されている。この爪部17aは、ホイールキャップ14の内周側から外周側に向かう方向(径外方向)に向かって突出した部分であり、上述したハブリング本体13の第2係合部18に係合可能となっている。
【0039】
また、第1係合部17は、爪部17aの基端側に径内方向に向かって凹んだ凹部17bを有しており、この凹部17bに第2係合部18の爪部18aを嵌め入れ可能となっている。
なお、本実施形態のホイールキャップ14の場合、第1係合部17は、周方向に等間隔をあけて4箇所形成されており、周方向にバランス良く係合力を発生させることでホイールキャップ14に対するハブリング1の係合を強固なものとしている。
【0040】
第2係合部18は、ハブリング本体13の絞り部20に、車外側に向かって突出する突片であり、突端には第1係合部17と同様に爪部18aが形成されている。この第2係合部18の爪部18aは、第1係合部17の凹部17bの形状に対応した先端形状に形成されており、第1係合部17の凹部17bに嵌合可能となっている。つまり、第2係合部18の爪部18aを第1係合部17の凹部17bに嵌合すると、第1係合部17及び第2係合部18の爪部同士が互いに引っ掛かり、ホイールキャップ14がハブリング1に外れないように固定される。
【0041】
上述した第1実施形態のハブリング1は、ホイールキャップ14を保持できる機能(ホイールキャップ14を直接取り付け可能な機能)を備えているため、ホイールキャップ14を装着するための構造をホイール2に設ける必要がない。ホイール2に比べて部材のサイズが小さいハブリング1を加工する方が当然ながら加工コストは低く抑えられるため、ホイールキャップ14をホイール2に装着するための構造を安価に作製することが可能となる。
【0042】
また、従来のハブリング101を取り付けたホイール102では、上述したホイールキャップ114の装着構造を加工する際にミスがあった場合には、ホイール102ごと破棄しなくてはならない可能性がある。しかし、本発明のハブリング1ではハブリング1のみを廃却すれば良く、廃却ロスや廃却コストを低く抑えて、ホイール2の製造コストも低減することができる。
【0043】
さらに、上述したハブリング1であれば、ホイールキャップ14の取り付け構造を有さないホイール2にもホイールキャップ14を取付可能となり、ハブリング1の利便性が向上する。
なお、上述したハブリング1では、ハブリング本体13の一部(先端側、車外側)がボア孔6の外側に突出しているので、この突出した部分を用いて意匠性を向上させることが可能となる。例えば、ボア孔6の外側に突出しているハブリング本体13の外周面にローレット加工などを施したり、ハブリング本体13の外周面をホイールキャップ14とは異なる色や模様に加工したりすれば、従来のホイールキャップ114だけのものより多様性に富むデザインをホイール2に施すことが可能となる。
【0044】
また、ボア孔6の外側に突出しているハブリング本体13の外周面に治具などがかかりやすい表面加工(滑り止め加工)を行えば、一旦装着するとボア孔6から外すことが難しかったハブリング1に対して、治具などを用いた取り外しが容易に行えるようになり、ハブリング1の利便性をさらに高めることが可能となる。
ところで、
図2、
図4、及び
図9の拡大図に示すように、上述したハブリング本体13(ベース筒部19)の外周面は、ボア孔6の内周面6aに対して嵌合する嵌合面13aと、ボア孔6の内周面6aから離間した位置に配備される非嵌合面13bとで構成されるのが好ましい。具体的には、第1実施形態の非嵌合面13bは、ベース筒部1の中心側に向かって凹んだ溝としてハブリング本体13の外周面に形成されており、ベース筒部1の軸心回りを周回する連続した環状溝として形成されている。また、第1実施形態の非嵌合面13bは、ボア孔6の内周面と面状態で接触するハブリング本体13の外周面に形成されている。そのため、第1実施形態の非嵌合面13bの内外に隣接するハブリング本体13の外周面には、上述した嵌合面13aがそれぞれ形成されており、ボア孔6の内周面と面状態で接触している。
【0045】
上述した嵌合面13aと非嵌合面13bとをハブリング本体13の外周面に形成すれば、非嵌合面13bが存在する分だけボア孔6の内周面にハブリング本体13の外周面が固着しにくくなる。例えば、従来のハブリングを長期間に亘ってホイールに取り付けると、固着などによりハブリングがボア孔(ホイール)から取り外しにくくなる場合がある。しかし、本実施形態のハブリング1では、非嵌合面13bが設けられているため、ボア孔6の内周面にハブリング本体13の外周面が固着しにくくなる。その結果、本実施形態のハブリング1では、取り外しの作業性が向上し、使用者にとって使い勝手が良いハブリング1を提供することが可能となる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のハブリング1について説明する。
【0046】
図11及び
図12に示すように、第2実施形態のハブリング1は、左右方向に沿った上述した長さが第1実施形態より長いハブリング本体13を用いたものであり、ボア孔6の外側に突出しているハブリング本体13の長さが第1実施形態よりも長い構成を採用している。
すなわち、第2実施形態のハブリング1は、ベース筒部19における基端側から先端側に向かうストレート筒状の部分が、第1実施形態の2倍程度の長さとなっている。そのため、ストレート筒状の部分の長さが長くなった分だけ、ボア孔6の外側に突出しているハブリング本体13の長さも長いものとなり、第2実施形態では第1実施形態の2倍程度の長さとなっている。
【0047】
このような第2実施形態のハブリング1は、四輪駆動車のように、車軸ハブ5が車内側の奥に入り込んだホイール2などにおいて、ハブリング本体13をボア孔6の外側に長く突出させたい場合に用いるものである。第2実施形態のハブリング1は、ハブリング本体13が外側に向かって長く突出した分だけ、第1実施形態よりハブリング本体13の外周面の面積が広くなるので、より意匠性や装飾性を高めることができるものとなっている。
【0048】
図12に拡大して示すように、上述した第2実施形態のハブリング1においても、第1実施形態と同様に、嵌合面13aと、非嵌合面13bとが、ハブリング本体13の外周面に形成されている。第2実施形態のハブリング1が第1実施形態と異なっているのは、非嵌合面13bが内外方向に距離をあけて2箇所形成されており、2箇所の非嵌合面13bに隣接して3箇所の嵌合面13aが形成されている点である。
【0049】
このように非嵌合面13bを複数箇所設ければ、ボア孔6の内周面にハブリング本体13の外周面がより固着し難くなり、取り外しの作業性がさらに向上したハブリング1を提供することが可能となる。
なお、上述した非嵌合面13bは、内外方向に沿って切断した断面がいずれも矩形状となっていたが、本発明の非嵌合面13bの断面形状は矩形状でなくても良い。
【0050】
例えば、
図13に示すように、非嵌合面13bの断面形状を半円状や円弧状にしても良いし、三角形状としても良い。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。