【課題を解決するための手段】
【0008】
前記電子部品に発生した不都合がトレイに起因していたとは、最初は、全く、考えられなかった。トレイ交換が行われる場合があっても、トレイ交換はトレイが劣化した時であった。トレイが新品の場合(トレイ使用が初期段階の場合)には、収容されている電子部品に問題が認められてなかった。従って、前記問題点はトレイが長時間に亘って使用されていたからであろうと推察されるに至った。新品のトレイに交換すれば良いであろうと考えられた。
【0009】
本発明者による検討が更に鋭意推し進められて行った。本発明者は、トレイ構成材料(帯電防止剤含有樹脂組成物)中の帯電防止剤が、時間の経過につれて、前記材料(前記樹脂組成物)中から流出(漏出;滲出)して行き、前記問題が起きるのだろうと想像するに至った。本発明者は樹脂組成物中から滲出し難い帯電防止剤の開発を目指した。しかし、この方向における開発は苦難の連続であった。
【0010】
本発明者は考え方を改めた。本発明者は、トレイの構成素材(帯電防止剤含有樹脂組成物)中から帯電防止剤が滲出して帯電防止性能が低下した場合には、この帯電防止性能が低下したトレイを新規なトレイ(帯電防止性能が優れたトレイ)に取り換えれば良いであろうと考えた。
【0011】
問題は如何なる時点でトレイを交換すれば良いかである。収容されている電子部品に問題が認められてからトレイを交換したのでは遅すぎる。トレイ交換を如何なる時点で行うべきかの検討は、是まで、なされてなかった。
【0012】
使用中のトレイを新品のトレイに交換する時点(時期)を考えなければならない。しかし、何に着目して交換時期を決定すれば良いかが全く判らなかった。前記交換時期が簡単に判れば非常に好都合な事は言うまでも無い。
【0013】
本発明者は収容されている製品(特に、電気製品)に何が悪影響を与えるかを考えた。本発明者が思索を続けて行く中で、本発明者は、それは、トレイの表面電気抵抗であろうと考えるに至った。前記交換時期は前記トレイの表面電気抵抗値の大幅な悪化(増大)時(厳密には、前記表面電気抵抗が大幅に増大する前)である事が本発明者によって究明されるに至った。トレイの表面電気抵抗値を測定する事は容易ではない。連続的に(常に)前記表面電気抵抗値を測定する事は困難である。電子部品の輸送中(或いは特性検査中、又は実装中)に、前記トレイの表面電気抵抗を常に測定する事は不可能であろう。前記連続測定が不可能ならば、如何なる時点で表面電気抵抗値を測定するかを決定しなければならない。しかし、それが判らないのである。
【0014】
本発明者は何を知れば良いかの思索を続けて行った。特に、格別な測定装置を用いずとも、表面電気抵抗の悪化(増大)を知るには何を知れば良いかの検討を本発明者は進めた。本発明者は、表面電気抵抗値を測定しなくても、何を知れば、表面電気抵抗特性を知る事が出来るかの検討を進めた。その結果、トレイの色とトレイの表面電気抵抗特性とが密接な関連を有している事が判って来た。前記トレイが変色した場合には、前記トレイの静電特性(表面電気抵抗)が変化したであろうと見做す事は合理的である。なぜならば、前記トレイが変色したと言う事は前記トレイの材料(樹脂)が変質したと見做しても差支えが無いであろう。前記樹脂が変質したとなれば、前記材料(樹脂)に含有されている帯電防止剤が滲出したと考えても不思議ではないであろう。と言う事は、トレイの色が変色した事は前記トレイの表面電気抵抗が変化したと考えても差支えが無いであろう。本発明者は、加熱によって起きた前記トレイの変色から前記トレイの交換時期が判定(決定)できると考えた。本発明者は、前記トレイ(又は、樹脂組成物)に変色が認められた場合、その変色内容に応じて前記トレイの表面電気抵抗が変化したと考え、その変色内容(色)によって前記トレイの交換時期が判定(決定)できると考えた。
【0015】
本発明者は、前記トレイを構成する樹脂組成物製の板を加熱し、前記板の表面電気抵抗値の変化と前記板の色の変化との関係を調べた。その結果、前記板の変色と前記板の表面電気抵抗特性とがリンクしている事が突き止められた。本発明者は、前記トレイの表面電気抵抗値の変化は前記トレイの色の変化に相当すると捉え(即ち、前記トレイの色が規定の色になった時は前記トレイの表面電気抵抗値が閾値に到達した時と見做し)、前記トレイの交換時期を判定できると考えた。この場合、格別な装置は不要である。目視で判断できる。
【0016】
本発明は前記知見に基づいて達成された。
【0017】
本発明は、
容器が別の容器に交換される時期が判定される方法であって、
前記容器は製品の収容部を具備してなり、
前記容器の構成材料は樹脂組成物であり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
加熱により変色した前記容器の色によって前記容器の交換時期が判定される
方法を提案する。
【0018】
本発明は、
容器が別の容器に交換される方法であって、
前記容器は製品の収容部を具備してなり、
前記容器の構成材料は樹脂組成物であり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
加熱により変色した前記容器の色が規定の色の場合に前記容器が交換される
方法を提案する。
【0019】
本発明は、前記方法であって、前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる方法を提案する。本発明は、前記方法であって、前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った実装時に用いられる方法を提案する。
【0020】
本発明は、前記方法であって、前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる方法であり、(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)≦10にあっては前記加熱による前記容器の変色が認識可能である方法を提案する。
【0021】
本発明は、前記方法であって、前記変色は加熱による前記樹脂の変色である方法を提案する。
【0022】
本発明は、前記方法であって、前記製品が電気製品である方法を提案する。
【0023】
本発明は、前記方法であって、前記組成物は、カーボンブラック及びカーボンファイバーを、実質的にも、含有していない方法を提案する。
【0024】
本発明は、前記方法であって、前記樹脂としてポリフェニレンエーテル系樹脂が用いられてなる方法を提案する。
【0025】
本発明は、前記方法であって、前記樹脂としてスチレン系樹脂が更に用いられてなる方法を提案する。
【0026】
本発明は、前記方法であって、前記スチレン系樹脂がアクリロニトリル−スチレン系樹脂である方法を提案する。
【0027】
本発明は、前記方法であって、前記スチレン系樹脂は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、4質量部〜70質量部である方法を提案する。
【0028】
本発明は、前記方法であって、前記帯電防止剤が界面活性剤である方法を提案する。
【0029】
本発明は、前記方法であって、前記帯電防止剤が高分子型の帯電防止剤である方法を提案する。
【0030】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、、
前記組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0031】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂とが用いられてなり、
前記組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0032】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は、
前記容器が空気中で135℃で加熱された場合、加熱開始から288時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器が空気中で150℃で加熱された場合、加熱開始から192時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記樹脂組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂が用いられてなり、
前記樹脂組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
前記樹脂組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0033】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は、
前記容器が空気中で135℃で加熱された場合、加熱開始から288時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器が空気中で150℃で加熱された場合、加熱開始から192時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記樹脂組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂とが用いられてなり、
前記樹脂組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
前記樹脂組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0034】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は、
前記容器が空気中で135℃で加熱された場合、加熱開始から288時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器が空気中で150℃で加熱された場合、加熱開始から192時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記樹脂組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂とが用いられてなり、
前記スチレン系樹脂がアクリロニトリル−スチレン系樹脂であり、
前記樹脂組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
前記樹脂組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0035】
本発明は、前記容器であって、前記スチレン系樹脂は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、4質量部〜70質量部である容器を提案する。
【0036】
本発明は、前記容器であって、前記帯電防止剤が高分子型の帯電防止剤である容器を提案する。
【0037】
本発明は、前記容器であって、前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる容器であり、(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)≦10にあっては前記加熱による前記容器の変色が目視で認識可能である容器を提案する。