特許第6962635号(P6962635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6962635-容器 図000014
  • 6962635-容器 図000015
  • 6962635-容器 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6962635
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/86 20060101AFI20211025BHJP
   B65D 85/90 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B65D85/86 100
   B65D85/90 100
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2021-519897(P2021-519897)
(86)(22)【出願日】2020年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2020032391
【審査請求日】2021年4月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503288381
【氏名又は名称】株式会社秋本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 正徳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一正
【審査官】 武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−246461(JP,A)
【文献】 特開2007−320590(JP,A)
【文献】 特開2007−285930(JP,A)
【文献】 特開2012−202695(JP,A)
【文献】 特開昭61−59242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/86
B65D 85/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器が別の容器に交換される時期が判定される方法であって、
前記容器は収容部を具備してなり、
前記収容部には電気製品が収容されており、
前記容器の構成材料は樹脂組成物であり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
前記容器の樹脂組成物を加熱して前記樹脂組成物が変色した際の色と表面電気抵抗値との関係を予め調べておいた情報に基づいて、前記容器が規定の色に変色した時が、前記容器が許容される表面電気抵抗値を越えると見做されて、前記容器の交換時期であると判定される
方法。
【請求項2】
容器が別の容器に交換される方法であって、
前記容器は収容部を具備してなり、
前記収容部には電気製品が収容されており、
前記容器の構成材料は樹脂組成物であり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
前記容器の樹脂組成物を加熱して前記樹脂組成物が変色した際の色と表面電気抵抗値との関係を予め調べておいた情報に基づいて、前記容器が規定の色に変色した時が、前記容器が許容される表面電気抵抗値を越えると見做されて、前記容器が交換される
方法。
【請求項3】
前記方法は、
前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる
請求項1又は請求項2の方法。
【請求項4】
前記方法は、
前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる方法であり、
(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)≦10にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能である
請求項1又は請求項2の方法。
【請求項5】
前記変色は加熱による前記樹脂の変色である
請求項1又は請求項2の方法。
【請求項6】
容器は120℃以上の温度下で使用される
請求項1又は請求項2の方法。
【請求項7】
前記組成物は、カーボンブラック及びカーボンファイバーを、実質的にも、含有していない
請求項1又は請求項2の方法。
【請求項8】
前記樹脂としてポリフェニレンエーテル系樹脂が用いられてなる
請求項1又は請求項2の方法。
【請求項9】
前記樹脂としてスチレン系樹脂が更に用いられてなる
請求項8の方法。
【請求項10】
前記スチレン系樹脂がアクリロニトリル−スチレン系樹脂である
請求項9の方法。
【請求項11】
前記スチレン系樹脂は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、4質量部〜70質量部である
請求項9の方法。
【請求項12】
前記帯電防止剤が界面活性剤である
請求項1又は請求項2の方法。
【請求項13】
前記帯電防止剤が高分子型の帯電防止剤である
請求項1又は請求項2の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器に関する。例えば、電気製品(例えば、半導体素子(トランジスタ又はIC等)、その他の電子部品など)の保管、或いは前記電気製品の輸送、又は前記電気製品を実装装置(又は検査装置)等にセットする際に用いられる容器(トレイとも称される。)に関する。特に、特に多数の電気製品を並べて収容できる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工程の或る工程Aから次の工程Bに電子部品を輸送する場合、電子部品を特性検査装置(又は自動実装装置)にセットする場合には、前記電子部品は多数の電子部品収容室を有する合成樹脂製のトレイに収容されている。JP1993−16984A(特許文献1)は前記トレイの一例を開示している。図1は複数枚のトレイが積み重なった状態での斜視図である。図2図1のI−I線での断面図である。図1,2中、1はトレイ、2は製品(部品)収容室、3は凸縁部、4は凹縁部、6は電子部品である(特許文献1参照)。JP2005−88995A(特許文献2)は前記トレイの一例を開示している。図3はトレイの平面図である。このトレイも使用時には複数枚が積み重ねられて使用される場合がある。図3中、1はトレイ、2は製品収容室、3は凸縁部、4は凸部である(特許文献2参照)。
【0003】
電気製品のケースが樹脂で構成された場合には、静電気の発生(帯電)による塵の付着が指摘されている。放電障害も指摘されている。JP1992−246461A(特許文献3)、JP1995−228765A(特許文献4)、JP2010−229348A(特許文献5)、JP2012−31395A(特許文献6)は、前記ケースを帯電防止性樹脂で成形する事を提案している。前記ケースを帯電防止剤含有樹脂組成物で成形する事を提案している。前記特許文献3,4,5は、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂を前記ケース構成材料に用いる事を提案している。帯電防止剤としては、導電性フィラー(カーボンブラック(CP)、カーボンファイバー(CF)、金属粉、金属繊維)、帯電防止機能を有する界面活性剤、高分子系樹脂帯電防止剤などが知られている。前記ケースが帯電防止剤含有樹脂組成物で成形された場合、静電気の発生(帯電)の問題点が改善されると謂われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP1993−16984A
【特許文献2】JP2005−88995A
【特許文献3】JP1992−246461A
【特許文献4】JP1995−228765A
【特許文献5】JP2010−229348A
【特許文献6】JP2012−31395A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーボンブラック含有樹脂組成物で成形されたトレイ(図1,3の如きのトレイ)に電子部品を収容して、製造工程の或る工程Aから次の工程Bに電子部品を輸送(或いは、特性検査装置に電子部品をセットして電子部品の特性を検査、又は自動実装装置に電子部品をセットして電子部品を実装)する場合に、初期段階では問題が起きてなくても、時間(作業)が経過して行く中に、問題が認められた。トレイを構成する樹脂組成物中のカーボンブラックが表面に漏れ出て来た。この現象は「カーボンブラックの粉落ち」と言われている。この漏れ出て来たカーボンブラックが電子部品に付着していた。付着カーボンブラックは洗浄によって除去すれば良いかも知れない。しかし、洗浄には手間が掛かる。洗浄によって電子部品に支障が発生するかも知れない。液体洗浄した後には乾燥工程が必須となる。カーボンファイバーが用いられた場合、カーボンファイバーがトレイ表面から突出している場合も有る。この場合、前記突出したカーボンファイバーが電子部品の金属製端子を傷付ける恐れが有る。前記突出したカーボンファイバーが折れ、是がトレイ表面に付き、電子部品に付着する恐れも有る。カーボンブラック及びカーボンファイバーは黒色である。従って、カーボンブラック(又はカーボンファイバー)含有樹脂製トレイは外観が劣る。
【0006】
前記導電性物質(カーボンブラック又はカーボンファイバー)の代わりに、界面活性剤の使用が考えられた。界面活性剤含有樹脂組成物で構成されたトレイは、カーボンブラック(又はカーボンファイバー)含有樹脂組成物で構成された場合の前記問題点が改善されていた。しかし、界面活性剤は前記トレイ表面に滲み出て来やすい(ブリードアウト現象)。従って、界面活性剤含有樹脂製のトレイが長時間に亘って使用されていると、前記界面活性剤が前記トレイに収容されている電子部品に付着する。この結果は電子部品に不都合を引き起こす恐れが有る。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は前記問題点(長時間に亘って使用されているトレイに収容されている電子部品に発生した不都合)を解決する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記電子部品に発生した不都合がトレイに起因していたとは、最初は、全く、考えられなかった。トレイ交換が行われる場合があっても、トレイ交換はトレイが劣化した時であった。トレイが新品の場合(トレイ使用が初期段階の場合)には、収容されている電子部品に問題が認められてなかった。従って、前記問題点はトレイが長時間に亘って使用されていたからであろうと推察されるに至った。新品のトレイに交換すれば良いであろうと考えられた。
【0009】
本発明者による検討が更に鋭意推し進められて行った。本発明者は、トレイ構成材料(帯電防止剤含有樹脂組成物)中の帯電防止剤が、時間の経過につれて、前記材料(前記樹脂組成物)中から流出(漏出;滲出)して行き、前記問題が起きるのだろうと想像するに至った。本発明者は樹脂組成物中から滲出し難い帯電防止剤の開発を目指した。しかし、この方向における開発は苦難の連続であった。
【0010】
本発明者は考え方を改めた。本発明者は、トレイの構成素材(帯電防止剤含有樹脂組成物)中から帯電防止剤が滲出して帯電防止性能が低下した場合には、この帯電防止性能が低下したトレイを新規なトレイ(帯電防止性能が優れたトレイ)に取り換えれば良いであろうと考えた。
【0011】
問題は如何なる時点でトレイを交換すれば良いかである。収容されている電子部品に問題が認められてからトレイを交換したのでは遅すぎる。トレイ交換を如何なる時点で行うべきかの検討は、是まで、なされてなかった。
【0012】
使用中のトレイを新品のトレイに交換する時点(時期)を考えなければならない。しかし、何に着目して交換時期を決定すれば良いかが全く判らなかった。前記交換時期が簡単に判れば非常に好都合な事は言うまでも無い。
【0013】
本発明者は収容されている製品(特に、電気製品)に何が悪影響を与えるかを考えた。本発明者が思索を続けて行く中で、本発明者は、それは、トレイの表面電気抵抗であろうと考えるに至った。前記交換時期は前記トレイの表面電気抵抗値の大幅な悪化(増大)時(厳密には、前記表面電気抵抗が大幅に増大する前)である事が本発明者によって究明されるに至った。トレイの表面電気抵抗値を測定する事は容易ではない。連続的に(常に)前記表面電気抵抗値を測定する事は困難である。電子部品の輸送中(或いは特性検査中、又は実装中)に、前記トレイの表面電気抵抗を常に測定する事は不可能であろう。前記連続測定が不可能ならば、如何なる時点で表面電気抵抗値を測定するかを決定しなければならない。しかし、それが判らないのである。
【0014】
本発明者は何を知れば良いかの思索を続けて行った。特に、格別な測定装置を用いずとも、表面電気抵抗の悪化(増大)を知るには何を知れば良いかの検討を本発明者は進めた。本発明者は、表面電気抵抗値を測定しなくても、何を知れば、表面電気抵抗特性を知る事が出来るかの検討を進めた。その結果、トレイの色とトレイの表面電気抵抗特性とが密接な関連を有している事が判って来た。前記トレイが変色した場合には、前記トレイの静電特性(表面電気抵抗)が変化したであろうと見做す事は合理的である。なぜならば、前記トレイが変色したと言う事は前記トレイの材料(樹脂)が変質したと見做しても差支えが無いであろう。前記樹脂が変質したとなれば、前記材料(樹脂)に含有されている帯電防止剤が滲出したと考えても不思議ではないであろう。と言う事は、トレイの色が変色した事は前記トレイの表面電気抵抗が変化したと考えても差支えが無いであろう。本発明者は、加熱によって起きた前記トレイの変色から前記トレイの交換時期が判定(決定)できると考えた。本発明者は、前記トレイ(又は、樹脂組成物)に変色が認められた場合、その変色内容に応じて前記トレイの表面電気抵抗が変化したと考え、その変色内容(色)によって前記トレイの交換時期が判定(決定)できると考えた。
【0015】
本発明者は、前記トレイを構成する樹脂組成物製の板を加熱し、前記板の表面電気抵抗値の変化と前記板の色の変化との関係を調べた。その結果、前記板の変色と前記板の表面電気抵抗特性とがリンクしている事が突き止められた。本発明者は、前記トレイの表面電気抵抗値の変化は前記トレイの色の変化に相当すると捉え(即ち、前記トレイの色が規定の色になった時は前記トレイの表面電気抵抗値が閾値に到達した時と見做し)、前記トレイの交換時期を判定できると考えた。この場合、格別な装置は不要である。目視で判断できる。
【0016】
本発明は前記知見に基づいて達成された。
【0017】
本発明は、
容器が別の容器に交換される時期が判定される方法であって、
前記容器は製品の収容部を具備してなり、
前記容器の構成材料は樹脂組成物であり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
加熱により変色した前記容器の色によって前記容器の交換時期が判定される
方法を提案する。
【0018】
本発明は、
容器が別の容器に交換される方法であって、
前記容器は製品の収容部を具備してなり、
前記容器の構成材料は樹脂組成物であり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
加熱により変色した前記容器の色が規定の色の場合に前記容器が交換される
方法を提案する。
【0019】
本発明は、前記方法であって、前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる方法を提案する。本発明は、前記方法であって、前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った実装時に用いられる方法を提案する。
【0020】
本発明は、前記方法であって、前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる方法であり、(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)≦10にあっては前記加熱による前記容器の変色が認識可能である方法を提案する。
【0021】
本発明は、前記方法であって、前記変色は加熱による前記樹脂の変色である方法を提案する。
【0022】
本発明は、前記方法であって、前記製品が電気製品である方法を提案する。
【0023】
本発明は、前記方法であって、前記組成物は、カーボンブラック及びカーボンファイバーを、実質的にも、含有していない方法を提案する。
【0024】
本発明は、前記方法であって、前記樹脂としてポリフェニレンエーテル系樹脂が用いられてなる方法を提案する。
【0025】
本発明は、前記方法であって、前記樹脂としてスチレン系樹脂が更に用いられてなる方法を提案する。
【0026】
本発明は、前記方法であって、前記スチレン系樹脂がアクリロニトリル−スチレン系樹脂である方法を提案する。
【0027】
本発明は、前記方法であって、前記スチレン系樹脂は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、4質量部〜70質量部である方法を提案する。
【0028】
本発明は、前記方法であって、前記帯電防止剤が界面活性剤である方法を提案する。
【0029】
本発明は、前記方法であって、前記帯電防止剤が高分子型の帯電防止剤である方法を提案する。
【0030】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、、
前記組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0031】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂とが用いられてなり、
前記組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0032】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は、
前記容器が空気中で135℃で加熱された場合、加熱開始から288時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器が空気中で150℃で加熱された場合、加熱開始から192時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記樹脂組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂が用いられてなり、
前記樹脂組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
前記樹脂組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0033】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は、
前記容器が空気中で135℃で加熱された場合、加熱開始から288時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器が空気中で150℃で加熱された場合、加熱開始から192時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記樹脂組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂とが用いられてなり、
前記樹脂組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
前記樹脂組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0034】
本発明は、
電気製品収容部を具備してなる容器であって、
前記容器は、
前記容器が空気中で135℃で加熱された場合、加熱開始から288時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器が空気中で150℃で加熱された場合、加熱開始から192時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦10を満たした容器であり、
前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されてなり、
前記樹脂組成物は帯電防止剤を含有してなり、
前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂とが用いられてなり、
前記スチレン系樹脂がアクリロニトリル−スチレン系樹脂であり、
前記樹脂組成物は、
着色物質を含有していないか、
着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)が(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)の10倍の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、
前記樹脂組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない
容器を提案する。
【0035】
本発明は、前記容器であって、前記スチレン系樹脂は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、4質量部〜70質量部である容器を提案する。
【0036】
本発明は、前記容器であって、前記帯電防止剤が高分子型の帯電防止剤である容器を提案する。
【0037】
本発明は、前記容器であって、前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる容器であり、(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)≦10にあっては前記加熱による前記容器の変色が目視で認識可能である容器を提案する。
【発明の効果】
【0038】
使用中の容器を新品(帯電防止機能が優れた)容器に取り換える事が簡単である。目視によって、容器の交換時期を、判断できる。使用中の容器を新品の容器に交換する事によって、容器に収容されている製品に起きていた問題が改善された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】複数枚のトレイ(容器)が積み重なった状態での斜視図
図2図1のI−I線での断面図
図3図1とは別タイプのトレイ(容器)の平面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
第1の発明は方法である。前記方法は容器が別の容器(例えば、新品の容器)に交換される時期が判定される方法である。特に目視で判定できる方法である。別の容器は使用済み(何回か使用)の容器であっても良い。交換に供される容器は問題が無い容器ならば良い。前記容器は製品の収容部を具備している。前記容器の構成材料は樹脂組成物である。前記組成物は帯電防止剤を含有している。前記組成物は着色物質を含有していない。着色物質を含有していても、次の量ならば許される。例えば、{(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)}=10の時点にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量である。好ましくは、{(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)}≦10の場合に、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量である。前記組成物が着色剤を含有してなければ、加熱によって前記容器(前記樹脂組成物)が変色した場合、その色(変色した色)を目視で認識できる。前記組成物が着色剤を含有していても、前記条件が満たされておれば、その条件下にあっては、加熱によって前記容器(前記樹脂組成物)が変色した場合、その色(変色した色)を目視で認識できる。前記容器は前記樹脂組成物を用いて成形される。前記容器の形状(構造)は、例えば図1,3に示される形状(構造)が挙げられる。勿論、これに限定されない。加熱によって変色した前記容器の色によって前記容器の交換時期が判定(決定)される。加熱によって前記容器が規定の色(予め決定された色)に変色した時が、前記容器の表面電気抵抗値が閾値(或る値以上の表面電気抵抗値)になったと見做し、前記容器を別の容器に交換する時であると判定(決定)される。前記容器の交換時期が決定される前記容器の変色(規定の色)は次のようにして求められる。前記容器と同じ樹脂組成物の基板が用意される。前記基板が前記容器の使用条件の温度に加熱される。その温度でX時間保持される。保持時間の経過によって前記基板の色が変色した時、前記基板の表面電気抵抗値が測定される。前記表面電気抵抗値が(加熱開始時における表面電気抵抗値)のW倍(W=10。場合によっては、9。或いは、8。若しくは、7。又は、6。)大きな値になるまで前記作業が繰り返される。{(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)}が10(場合によっては、9。或いは、8。若しくは、7。又は、6。)になった時の前記基板の変色(色)を観察する。前記観察された色が前記規定の色[前記容器の交換時期が判定(決定)される色:予め決定された色]である。
【0041】
第2の発明は方法である。この方法は容器が別の容器(例えば、新品の容器)に交換される方法である。この方法に用いられる容器は前記判定方法で説明した容器と同じである。加熱によって変色した前記容器の色が規定の色の場合に前記容器が交換される。例えば、前記交換は前記判定方法に則って行われる。
【0042】
前記方法は、例えば前記容器に収容された前記製品の輸送時に実施される。例えば、前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った輸送時に実施される。例えば、前記容器に収容された前記製品の特性検査時に実施される。例えば、前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った特性検査時に実施される。例えば、前記容器に収容された前記製品の実装時に実施される。例えば、前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った実装時に実施される。本明細書において、「加熱を伴った」は「或る温度に保持されている」と言った意味合いで用いられている。前記実施時において、(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)≦10にあっては、前記加熱によって変色した前記容器の色が認識可能である。この要件は次の理由による。例えば、前記製品の特性検査時は、一般的には、加熱状態である。加熱時間が長くなると、樹脂が変質(劣化)する。樹脂の変質(劣化)に伴って帯電防止剤が樹脂中から滲出する。表面電気抵抗が大きくなる。特性検査時においては、前記容器の表面電気抵抗は変動が無い事が好ましいであろう。なぜならば、測定条件が変動していた場合には、得られた特性値の比較は妥当ではないと考えられる。従って、測定条件の同一性が要求される。例えば、製品が収容されている容器の表面電気抵抗値が同じである事は好ましい。しかし、本発明者の検討に拠れば、表面電気抵抗値が1.0×10〜1.0×10n+1の範囲内程度の変動の場合には、前記特性値の比較には問題が少ない事が判って来た。従って、{(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)}>10が満たされるのは、前記加熱で変色した容器の色が如何なる色の時であったかを予め知っておけば、前記製品を収容している容器をそれ以上使用するのは差し控えた方が良い事を知る事が出来る。是は、{(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)}≦10の時点で、前記加熱によって変色した前記容器の色が認識可能で有れば良い事を意味する。{(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)}が、例えば9(或いは8、若しくは7、又は6)の時点で、前記加熱によって変色した前記容器の色が認識可能であっても良い。{(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)}が10の時点よりも、9(8、7、又は6)の時点の方が、表面電気抵抗の変化が少ないからである。
【0043】
第3の発明は容器である。前記容器は電気製品収容部を具備している。前記容器の形状(構造)は前述の通りである。前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されている。前記組成物は帯電防止剤を含有している。前記帯電防止剤は、好ましくは、高分子型の帯電防止剤であった。前記組成物は着色物質を含有していない。着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)=10において、前記加熱によって変色した前記容器の色が認識可能であれば良い。好ましくは、(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)≦10において、前記加熱によって変色した前記容器の色が認識可能であれば良い。前記組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない。前記容器は、例えば前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる容器である。前記容器は、例えば前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った実装時に用いられる容器である。
【0044】
第4の発明は容器である。前記容器は電気製品収容部を具備している。前記容器の形状(構造)は前述の通りである。前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されている。前記組成物は帯電防止剤を含有している。前記帯電防止剤は、好ましくは、高分子型の帯電防止剤であった。前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂が用いられている。好ましくは、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂とが用いられている。前記スチレン系樹脂は、好ましくは、アクリロニトリル−スチレン系樹脂であった。前記組成物は着色物質を含有していない。着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)=10において、前記加熱によって変色した前記容器の色が認識可能であれば良い。好ましくは、(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)≦10において、前記加熱によって変色した前記容器の色が認識可能であれば良い。前記組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない。前記容器は、例えば前記容器に収容された前記製品の輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の実装時に用いられる容器である。前記容器は、例えば前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った輸送時、或いは前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った特性検査時、又は前記容器に収容された前記製品の加熱を伴った実装時に用いられる容器である。
【0045】
第5の発明は容器である。前記容器は電気製品収容部を具備している。前記容器の形状(構造)は前述の通りである。前記容器は樹脂組成物が用いられて成形されている。前記組成物は帯電防止剤を含有している。前記帯電防止剤は、好ましくは、高分子型の帯電防止剤であった。前記樹脂として、少なくとも、ポリフェニレンエーテル系樹脂が用いられている。好ましくは、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂とが用いられている。前記スチレン系樹脂は、好ましくは、アクリロニトリル−スチレン系樹脂である。前記組成物は着色物質を含有していない。着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)=10において、前記加熱によって変色した前記容器の色が認識可能であれば良い。好ましくは、(前記加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記加熱開始時の前記容器の表面電気抵抗値)≦10において、前記加熱によって変色した前記容器の色が認識可能であれば良い。前記組成物はカーボンブラック及びカーボンファイバーを実質的にも含有していない。前記容器は、前記容器が空気中で135℃で加熱された場合、加熱開始から288時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦5を満たした容器である。前記値(比)は、好ましくは、3以下であった。更に好ましくは2.5以下であった。前記容器が空気中で150℃で加熱された場合、加熱開始から192時間までの間は、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)≦5を満たした容器である。前記値(比)は、好ましくは、3以下であった。更に好ましくは2.5以下であった。
【0046】
前記変色は加熱による前記樹脂の変色である。基本的には、加熱によって、前記樹脂が劣化(変質:変性)し、是によって容器の色が変化している。前記樹脂の劣化は、例えば樹脂の酸化(加熱によって促進された酸化)に因る。前記変色は加熱以外によっても起きるであろう。このような場合にも本発明は援用できるであろう。
【0047】
前記製品は電気製品(電子製品(部品)も電気製品の概念に含まれている。)である。
【0048】
前記組成物は、カーボンブラック及びカーボンファイバーを、実質的にも、含有していない。実質的に含有していないとは、カーボンブラック又はカーボンファイバーの色によって、容器(樹脂組成物)の色の変化の認識が邪魔されなければ良いと言う程度の意味合いである。微量のカーボンブラック又はカーボンファイバーが含有されていても、容器(樹脂組成物)の色の変化が認識できれば問題ないからである。カーボンブラック又はカーボンファイバー以外の着色剤が含有されていても、この着色剤による色が容器(樹脂組成物)の色の変化の認識を妨げなければ良い。
【0049】
前記樹脂としては、好ましくは、ポリフェニレンエーテル系樹脂が挙げられる。前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、例えば下記の一般式[I]で表される樹脂である。
【0050】
一般式[I]
(一般式[I]中、R,R,R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基(例えば、アルキル基)、炭化水素オキシ基(例えば、アルコキシ基)、及びハロゲン原子とフェニル環との間に少くとも2個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素基(例えば、ハロゲン化アルキル基)またはハロゲン化炭化水素オキシ基(例えば、ハロゲン化アルコキシ基)である。例えば、第3級α−炭素を含まないものから選ばれた一価置換基である。nは重合度を表わす正の整数である。好ましくは20以上の整数である。更に好ましくは50以上の整数である。)
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、前記一般式[I]で表される重合体のホモポリマーでもコポリマーでも良い。好ましい具体例では、前記R,Rが炭素原子数1〜4のアルキル基、R,Rが水素原子もしくは炭素原子数1〜4のアルキル基である。例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジラウリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジベンジル−1,4−)フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロム−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−ステアリルオキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メトキシ−6−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−クロル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル共重合体としては、前記ポリフェニレンエーテルの繰返し単位中に、アルキル三置換フェノール(例えば、2,3,6−トリメチルフェノール)を一部含有する共重合体が挙げられる。前記ポリフェニレンエーテル系樹脂にスチレン系化合物がグラフトしたコポリマーあっても良い。スチレン系化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等が挙げられる。2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体であっても良い。JP1989-156A,JP1992−246461A,JP1995−228765A,JP2010−229348A等に開示のポリフェニレンエーテル系樹脂であっても良い。
【0051】
前記樹脂は、ポリフェニレンエーテル系樹脂単独でも良いが、更に好ましくは、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂との混合物(ポリマーアロイ)が挙げられる。前記スチレン系樹脂として好ましいのは、アクリロニトリル−スチレン系樹脂であった。前記アクリロニトリル−スチレン系樹脂としては、例えばアクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン樹脂などが挙げられる。特に好ましくはアクリロニトリル−スチレン樹脂である。前記スチレン系樹脂(アクリロニトリル−スチレン系樹脂)は、好ましくは、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、4質量部〜70質量部であった。より好ましくは6質量部以上であった。より好ましくは60質量部以下であった。
【0052】
前記樹脂以外にも次の樹脂が更に含有されていても良い。例えば、オレフィン系樹脂、カーボネート系樹脂、アクリロニトリル系樹脂(例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル樹脂など)が挙げられる。これ等の樹脂は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、60質量部以下が好ましい。
【0053】
前記組成物は帯電防止剤を含有する。特に、カーボンブラック及びカーボンファイバー以外の帯電防止剤を含有する。加熱による変色の認識が容易な観点から、黒色および褐色以外の帯電防止剤が好ましい。帯電防止剤として界面活性剤が挙げられる。カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤いずれであっても良い。好ましい帯電防止剤は高分子型の帯電防止剤であった。高分子型が好ましいのは、分子量が比較的大きい(長さが長い)為、樹脂組成物中から帯電防止剤が滲出し難いからであった。この意味から高分子型の意味合いは解釈される。プレポリマーと言った概念のものも含まれるであろう。例えば、分子量が500以上(更に好ましくは1000以上)の帯電防止剤は好ましい。高分子型の帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド(例えば、ビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物からなるポリエーテルエステルアミド(JP1995−10989A参照));ポリアミドイミドエラストマー;ポリオレフィンブロックと親水性ポリマーブロックとの結合単位が2〜50の繰り返し構造を有するブロックポリマー(US特許第6552131号参照);ポリオレフィンとポリエーテルとのブロックコポリマー;幹ポリマー(ポリアミド)と枝ポリマー(ポリアルキレンエーテルとポリエステルとのブロックポリマー)とからなるグラフトポリマー;α−オレフィンと無水マレイン酸とポリアルキレンアリルエーテルとの共重合体;ポリエチレンエーテル、イソシアネート及びグリコールからなるポリマー;多価カルボン酸成分と有機ジイソシアネートとポリエチレングリコールとの共重合体;ポリエチレンオキサイド;ポリエチレンオキサイド共重合体;ポリエーテルエステル;ポリエーテルアミド;ポリエーテルエステルアミド;部分架橋ポリエチレンオキサイド共重合体;アイオノマー(例えば、側鎖にカルボン酸のアルカリ金属塩、スルホン酸のアルカリ金属塩、4級アンモニウム塩を有するポリマー);アルキレンオキシドと共役ジエン化合物とのゴム共重合体にビニル(又は、ビニリデン)単量体(例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム)をグラフトさせたグラフトポリマー;ポリフェニレンエーテル樹脂にスルホネート基などの基を核置換させてイオン性誘導体を形成させたポリマー;ポリエーテルエステルイミドとカルボキシル基含有ビニル共重合体とから成る組成物;ポリオキシアルキレン基含有アルキルアミンとアルキルスルホン酸ナトリウムと無機アルカリ金属塩類との組成物;アクリル酸エステル系エラストマー;スチレンーアクリル酸共重合体等が挙げられる。勿論、これ等に限られない。前記帯電防止剤は、前記樹脂100質量部に対して、好ましくは、3質量部〜35質量部の割合であった。更に好ましくは5質量部以上であった。更に好ましくは30質量部以下であった。前記割合の場合に帯電防止効果に優れていたからである。
【0054】
前記容器は加熱雰囲気下で使用される。前記容器は空気雰囲気下で使用される。従って、前記容器を構成する樹脂は耐熱性の観点から決定される必要が有る。樹脂に含有された帯電防止剤が導電性(カーボン系および/または金属系)フィラーの場合、この樹脂組成物のHDT(荷重たわみ温度;熱変形温度(Heat Deflection Temperature)は前記樹脂のHDTよりも高い。しかし、前記導電性フィラーの場合、カーボンブラックの場合と同じ問題が考えられる。従って、帯電防止剤は高分子型の帯電防止剤が好ましかった。しかし、高分子型の帯電防止剤が用いられた場合は、従来では、高いHDTを持つ容器が得られてなかった。本発明者は130℃以上のHDTを持つ容器の検討を進めた結果、樹脂としては前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が好適な事を見出すに至った。更に好ましい樹脂は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂と前記スチレン系樹脂とを含む樹脂組成物であった。
【0055】
以下、具体的な実施例が挙げられる。但し、本発明は以下の実施例にのみ限定されない。本発明の特長が大きく損なわれない限り、各種の変形例や応用例も本発明に含まれる。
【0056】
[実施例]
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)としてPX−100F(三菱エンジニアリングプラスチック社製)が用いられた。
アクリロニトリル−スチレン系樹脂(AS)としてPN−117(台湾奇美實業(Chimei)社製)が用いられた。
ポリカーボネート系樹脂(PC)としてS2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製)が用いられた。
ポリスチレン樹脂(PS)としてMW1C(東洋スチロール社製)が用いられた。
ポリプロピレン系樹脂(PP)としてR250G(プライムポリマー社製)が用いられた。
高分子型の帯電防止剤(ポリエーテル型帯電防止剤)としてペレクトロンAS又はぺレクトロンHS(三洋化成社製)が用いられた。
着色剤として、オレンジ色顔料(PPE3−5304(シンエイカラー社製))、オレンジ色顔料(ES3−5542(シンエイカラー社製))、オレンジ色染料(ES3−5541(シンエイカラー社製))、又はカーボンブラック(ケッチェンブラック)が用いられた。
【0057】
配合例は次の通りである。
No.1:PPE(60質量部)+AS(30質量部)+ペレクトロンAS(10質量部)
No.2:PPE(60質量部)+AS(30質量部)+ペレクトロンAS(10質量部)+PPE3−5304(0.4質量部)
No.3:PPE(60質量部)+AS(30質量部)+ペレクトロンAS(10質量部)+ES3−5541(0.1質量部)
No.4:PC(90質量部)++ペレクトロンAS(10質量部)
No.5:PC(90質量部)++ペレクトロンAS(10質量部)+ES3−5542
(0.4質量部)
No.6:PC(90質量部)++ペレクトロンAS(10質量部)+ES3−5541(0.1質量部)
No.7:PP(94質量部)+ペレクトロンHS(6質量部)
No.8:PPE(70質量部)+PS(22質量部)+カーボンブラック(8質量部)
【0058】
上記組成物(No.1〜No.8)が射出成型機に投入され、溶融射出成形が行われた。8種類の成形板(No.1〜No.8)が得られた。288時間に亘る熱風加熱(加熱空気吹付)が前記板に対して行われた。
【0059】
色差計(Color Meter NR555(日本電色工業社製))が用いられて、熱風乾燥処理前および熱風乾燥処理後の板の色が調べられた。この結果が表−1A,B,C,D,E,Fに示される。
表面電気抵抗測定機(ST−4(SIMCO JAPAN))が用いられて、熱風乾燥処理前後の板の表面電気抵抗値(Rs(単位はΩ))が調べられた。この結果が表−2A,B,C,D,Eに示される。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
この場合(加熱温度が135℃の場合)は、成形板の変形(反り)が大きかった。加熱に際して用いられるトレイとしては欠陥品である。前記成形板が茶褐色に変色(288時間後)していた。
【0065】
*No.8の樹脂組成物はカーボンブラックを含有している。この為、色差表現が不能。色調変化が認められない。
【0066】
この場合(加熱温度が135℃の場合)は、加熱時間が288時間までの間は、表面電気抵抗値のオーダーが10〜10(7.0×10〜3.0×10)である。表面電気抵抗の大幅な変動が起きていない。従って、No.1の樹脂組成物で成形されたトレイは、加熱温度が135℃の場合には、少なくとも、288時間までの間はトレイ交換の必要が無い事が判る。更に長時間に亘って加熱を行い、(加熱後の表面電気抵抗値)/(加熱開始時の表面電気抵抗値)が10になった時の前記トレイの色を観察する。そうすれば、前記トレイが前記観察された色に変色するまでは、前記トレイを使用しても差し支えない事が判る。
【0067】
この場合(加熱温度が150℃の場合)は、加熱時間が192時間までの間は、表面電気抵抗値のオーダーが10〜1010(8.0×10〜1.4×1010)である。加熱時間が288時間の時には、表面電気抵抗値のオーダーが1011である。加熱時間が192時間と288時間との間で、表面電気抵抗値が大幅に大きくなった。この表面電気抵抗値が大幅に大きくなった時点を細かく調べると共に、その時点での色を調べておけば、そのような色に変色する迄は表面電気抵抗値の大幅な増大が無い事が判る。それ迄はトレイをそのまま使用しても差し支えがない。
【0068】
この場合(加熱温度が120℃の場合)は、加熱時間が192時間までの間は、表面電気抵抗値のオーダーが1010〜1011(4.7×1010〜3.5×1011)である。加熱時間が192時間と288時間との間で、表面電気抵抗値が大幅に大きくなったであろう。この表面電気抵抗値が大幅に増大した時点を細かく調べると共に、その時点での色を調べておく。そうすれば、前記色に変色する迄は表面電気抵抗値の大幅な増大が無いであろう事が判る。それ迄はトレイをそのまま使用しても差し支えがない。
【0069】
この場合(加熱温度が135℃の場合)は、加熱時間が192時間で既に表面電気抵抗値が10倍以上となっている。加熱時間が96時間までの時には、表面電気抵抗値のオーダーが1011(1.6×1011〜7.0×1011)である。加熱時間が96時間と192時間との間で、表面電気抵抗値が大幅に大きくなった。この表面電気抵抗値が大幅に大きくなった時点を細かく調べると共に、その時点での色を調べておく。そうすれば、前記色に変色する迄は表面電気抵抗値の大幅な増大が無いであろう事が判る。それ迄はトレイをそのまま使用しても差し支えがない。
【0070】
*表−2A,B,C,D,Eにおける比は{(加熱後の表面電気抵抗値)/(加熱開始時の表面電気抵抗値)}である。

この場合(加熱温度が135℃の場合)は、加熱時間が192時間までの間は、表面電気抵抗値のオーダーが10〜1010(8.0×10〜5.5×1010)である。すなわち、表面電気抵抗の大幅な変動が起きていない。加熱時間が288時間での表面電気抵抗値のオーダーが1011(1.0×1011)である。加熱時間が192時間迄は、表面電気抵抗値の比は10倍未満である。従って、No.7の樹脂組成物で成形されたトレイは、加熱温度が135℃の場合には、少なくとも、192時間までの間はトレイ交換の必要が無い事が判る。しかし、成形板の変形(反り)が大きかった。加熱に際して用いられるトレイとしては欠陥品であった。前記成形板が茶褐色に変色(288時間後)していた。
【0071】
前記トレイを構成する樹脂がPPE(No.1)の場合とPC(No.4)の場合とを比較すると、トレイの表面電気抵抗値の大幅な増大に至るまでの時間は、PPEの場合の方が長い。No.4の樹脂組成物(PC)の加熱温度が120℃であるのに対して、No.1の樹脂組成物(PPE)の加熱温度は135℃(150℃)である。表−2Aと表−2Bとから、加熱温度は高い方がトレイの表面電気抵抗値が増大する時間は速い。そうすると、樹脂組成物がPPEとPCとを対比すると、同じ帯電防止剤が用いられても、PPE製トレイの方が使用可能時間が長い事が判る。PPE製トレイの交換頻度は少ない。PC製トレイは頻繁に交換される必要が有る。
【符号の説明】
【0072】
1 トレイ(容器)
2 収容室(収容部)
6 電子部品(製品)

【要約】
空気中における加熱によって劣化した容器の交換時期を目視で判断できる技術である。前記容器は製品の収容部を具備してなり、前記容器の構成材料は樹脂組成物であり、前記組成物は帯電防止剤を含有してなり、前記組成物は、着色物質を含有していないか、着色物質を含有していても、(前記容器の加熱によって変化した前記容器の表面電気抵抗値)/(前記容器の加熱開始時の表面電気抵抗値)=10にあっては、前記加熱による前記容器の変色が認識可能な量であり、前記加熱によって前記容器が規定の色に変色した場合に前記容器が交換される。
図1
図2
図3