特許第6962643号(P6962643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962643
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20211025BHJP
   H01F 1/153 20060101ALI20211025BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20211025BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20211025BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20211025BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F1/153 108
   H01F1/153 133
   H01F1/153 175
   H01F17/00 B
   H01F27/255
   H01F41/02 D
   H01F41/04 C
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-196179(P2019-196179)
(22)【出願日】2019年10月29日
(65)【公開番号】特開2021-22717(P2021-22717A)
(43)【公開日】2021年2月18日
【審査請求日】2019年10月29日
【審判番号】不服2021-300(P2021-300/J1)
【審判請求日】2021年1月8日
(31)【優先権主張番号】10-2019-0075757
(32)【優先日】2019年6月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クォン、サン キュン
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】シム、チュル ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー、セオン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ハン ウール
(72)【発明者】
【氏名】ムーン、ビョン チョル
【合議体】
【審判長】 清水 稔
【審判官】 畑中 博幸
【審判官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/019576(WO,A1)
【文献】 特開2018−056505(JP,A)
【文献】 特開2013−247214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F1/22
H01F17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部が内設された本体と、
前記コイル部と接続された外部電極と、を含み、
前記本体は複数の金属磁性粒子を含み、
前記複数の金属磁性粒子のうち少なくとも一部の粒子の表面には複数の溝が形成され、前記複数の溝を連結する前記金属磁性粒子の表面は球面であり、
前記溝はデンドライト状であり、
前記金属磁性粒子の表面には結晶粒が存在しない、コイル部品。
【請求項2】
前記溝は、前記金属磁性粒子の表面において測定した幅が30nm〜1μmである、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記複数の金属磁性粒子はD50が20〜40μmである、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記金属磁性粒子は、前記複数の溝が形成された領域を除いて、全体的に球状である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記複数の溝のうち少なくとも一部はサイズが互いに異なる、請求項1から4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記複数の溝のうちサイズが互いに異なるものは相似形である、請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記複数の溝のうち少なくとも一部は形状が互いに異なる、請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記金属磁性粒子の表面には前記金属磁性粒子をなす金属の酸化物が存在しない、請求項1からのいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記金属磁性粒子の表面に形成されたコーティング層をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記金属磁性粒子はFe系合金を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記Fe系合金はFe含有量が75at%以上である、請求項10に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記Fe系合金は、(Fe(1−a)a)100−b−c−d−e−f−gCuの組成式で表され、且つ、Mは、Co及びNiのうち少なくとも一つの元素、Mは、Nb、Mo、Zr、Ta、W、Hf、Ti、V、Cr、及びMnで構成される群より選択された少なくとも一つの元素、Mは、C、Si、Al、Ga、及びGeで構成される群より選択された少なくとも一つの元素であり、a、b、c、d、e、gはそれぞれ、原子%を基準に、0≦a≦0.5、0<b≦3、7≦c≦11、0<d≦2、0.6≦e≦1.5、7≦g≦15である含有量条件を有する、請求項10または11に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルTV、モバイルフォン、ノートブックなどのような電子機器の小型化及び薄型化に伴い、かかる電子機器に適用されるコイル部品にも小型化及び薄型化が求められている。また、このようなニーズに符合するために、多様な形態の巻線型又は薄膜型のコイル部品に対する研究開発が活発に行われている。
【0003】
コイル電子部品の小型化及び薄型化による主なイシューは、かかる小型化及び薄型化にもかかわらず、従来と同一の特性を実現することである。このような要求を満たすためには、磁性物質が充填されるコアにおける磁性物質の割合を増加させる必要があるが、インダクタ本体の強度、絶縁性に応じた周波数特性の変化などの理由でその割合を増加させるには限界がある。
【0004】
コイル部品を製造する一例として、磁性粒子と樹脂などを混合したシートをコイルに積層してから加圧して本体を実現する方法が用いられている。磁性粒子の例としては、飽和磁束密度を高めるために、Fe系合金などが用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的のうちの一つは、金属磁性粒子を含むコイル部品の透磁率を向上させることである。また、本発明の目的のうちの他の一つは、本体内における金属磁性粒子の充填率を向上させることで、コイル部品の磁気的特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための方法として、本発明は、一実施形態を通じてコイル部品の新規な構造を提案する。具体的には、コイル部が内設された本体と、上記コイル部と接続された外部電極と、を含み、上記本体は複数の金属磁性粒子を含み、上記複数の金属磁性粒子のうち少なくとも一部の粒子の表面には複数の溝が形成され、上記複数の溝を連結する上記金属磁性粒子の表面は球面である。
【0007】
一実施形態において、上記溝は、上記金属磁性粒子の表面から測定した長さが30nm〜1μmであってもよい。
【0008】
一実施形態において、上記複数の金属磁性粒子はD50が20〜40μmであってもよい。
【0009】
一実施形態において、上記溝はデンドライト状であることができる。
【0010】
一実施形態において、上記金属磁性粒子は、上記複数の溝が形成された領域を除いて、全体的に球状であることができる。
【0011】
一実施形態において、上記複数の溝のうち少なくとも一部はサイズが互いに異なってもよい。
【0012】
一実施形態において、上記複数の溝のうちサイズが互いに異なるものは相似形であってもよい。
【0013】
一実施形態において、上記複数の溝のうち少なくとも一部は形状が互いに異なってもよい。
【0014】
一実施形態において、上記金属磁性粒子の表面には結晶粒が存在しなくてよい。
【0015】
一実施形態において、上記金属磁性粒子の表面には上記金属磁性粒子をなす金属の酸化物が存在しなくてよい。
【0016】
一実施形態において、上記金属磁性粒子の表面に形成されたコーティング層をさらに含むことができる。
【0017】
一実施形態において、上記金属磁性粒子はFe系合金を含むことができる。
【0018】
一実施形態において、上記Fe系合金はFe含有量が75at%以上であってもよい。
【0019】
一実施形態において、上記Fe合金は、(Fe(1−a)a)100−b−c−d−e−f−gCuの組成式で表される。ここで、Mは、Co及びNiのうち少なくとも一つの元素、Mは、Nb、Mo、Zr、Ta、W、Hf、Ti、V、Cr、及びMnで構成される群より選択された少なくとも一つの元素、Mは、C、Si、Al、Ga、及びGeで構成される群より選択された少なくとも一つの元素であり、a、b、c、d、e、gはそれぞれ、原子%を基準に、0≦a≦0.5、0<b≦3、7≦c≦11、0<d≦2、0.6≦e≦1.5、7≦g≦15である含有量条件を有することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によるコイル部品の場合、酸化物、及びサイズが大きい結晶粒が効果的に除去された金属磁性粒子を用いることにより、透磁率を向上させるとともに、本体内における金属磁性粒子の充填率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】電子機器に適用されるコイル部品の例を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるコイル部品を示す概略的な斜視図である。
図3図2のコイル部品の概略的なI−I'面に沿った切断断面図である。
図4図3のコイル部品における本体領域を拡大して示す図である。
図5】金属磁性粒子の形状を概略的に示す図である。
図6】金属磁性粒子の形状を概略的に示す図である。
図7】金属磁性粒子の形状を概略的に示す図である。
図8】金属磁性粒子の製造過程のうち一部を示す図である。
図9】金属磁性粒子の製造過程のうち一部を示す図である。
図10】金属磁性粒子の製造過程のうち一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0023】
電子機器
図1は電子機器に適用されるコイル部品の例を概略的に示す図である。
【0024】
図面を参照すると、電子機器には多様な種類の電子部品が用いられることが分かる。例えば、アプリケーションプロセッサ(Application Processor)を中心に、DC/DC、Comm.Processor、WLAN BT/WiFi FM GPS NFC、PMIC、バッテリー、SMBC、LCD AMOLED、オーディオコーデック、USB 2.0/3.0 HDMI(登録商標)、CAMなどが用いられることができる。このとき、このような電子部品の間にはノイズの除去などを目的に多様な種類のコイル部品がその用途に応じて適切に適用されることができ、例えば、パワーインダクタ(Power Inductor)1、高周波インダクタ(HF Inductor)2、通常のビーズ(General Bead)3、高周波用ビーズ(GHz Bead)4、コモンモードフィルター(Common Mode Filter)5などを挙げることができる。
【0025】
具体的には、パワーインダクタ(Power Inductor)1は、電気を磁場の形態で貯蔵し出力電圧を維持して電源を安定させる用途などで用いられることができる。また、高周波インダクタ(HF Inductor)2は、インピーダンスをマッチングして必要な周波数を確保したり、ノイズ及び交流成分を遮断するなどの用途で用いられることができる。また、通常のビーズ(General Bead)3は、電源ライン及び信号ラインのノイズを除去したり、高周波リップルを除去するなどの用途で用いられることができる。また、高周波用ビーズ(GHz Bead)4は、オーディオと関連した信号ライン及び電源ラインの高周波ノイズを除去するなどの用途で用いられることができる。また、コモンモードフィルター(Common Mode Filter)5は、ディファレンシャルモードでは電流を通過させ、コモンモードノイズだけを除去するなどの用途で用いられることができる。
【0026】
電子機器は、代表的にスマートフォン(Smart Phone)であってよく、これに限定されるものではないが、例えば、個人用情報端末(personal digital assistant)、デジタルビデオカメラ(digital video camera)、デジタルスチルカメラ(digital still camera)、ネットワークシステム(network system)、コンピュータ(computer)、モニター(monitor)、テレビ(television)、ビデオゲーム(video game)、スマートウォッチ(smart watch)であってもよい。これらの他にも、通常の技術者によく知られている他の多様な電子機器などであってもよいことは言うまでもない。
【0027】
コイル部品
以下では、本発明のコイル部品を説明するにあたり、便宜上、インダクタ(Inductor)の構造を例に挙げて説明するが、上述の通り、他の多様な用途のコイル部品にも適用できることは言うまでもない。
【0028】
図2は本発明の一実施形態によるコイル部品の外形を示す概略的な斜視図であり、図3図2のコイル部品の概略的なI−I'面に沿った切断断面図であり、図4図3のコイル部品における本体領域を拡大して示す図である。
【0029】
図2及び図3を参照すると、本発明の一実施形態によるコイル部品100は、主に、コイル部103及び支持部材102を含む本体101と、外部電極120、130と、を含む構造である。ここで、本体101は、複数の金属磁性粒子111を含み、複数の金属磁性粒子111のうち少なくとも一部の粒子の表面には複数の溝Hが形成される。
【0030】
本体101は、コイル部103を封止してこれを保護し、図4に示された形のように、複数の金属磁性粒子111を含む。この場合、本体101は、金属磁性粒子111が樹脂などからなる絶縁体112に分散した形であることができる。絶縁体112は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ワックス系、無機系などの物質を用いることができる。金属磁性粒子111は、磁気特性に優れたFe系合金を含むことができる。具体的には、金属磁性粒子111は、鉄(Fe)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、ホウ素(B)、及びニッケル(Ni)からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含むことができ、例えば、Fe−Si−B−Cr系非晶質金属であることができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。より具体的な例として、金属磁性粒子は、Fe−Si−B−Nb−Cr組成の合金、Fe−Ni系合金などで形成されることができる。
【0031】
上述のように、本体101に含まれる複数の金属磁性粒子111のうち少なくとも一部は表面に複数の溝Hが形成される。かかる構造により、本体101の透磁率を向上させるとともに、本体101内で金属磁性粒子111の充填率を増加させることもできる。金属磁性粒子111の表面に形成された溝Hと関連した具体的な説明は後述する。
【0032】
コイル部103は、コイル部品100のコイルから発現される特性を介して、電子機器内の様々な機能を行う役割を果たす。例えば、コイル部品100は、パワーインダクタであってもよい。この場合、コイル部103は、電気を磁場の形で保存して出力電圧を維持することで、電源を安定させる役割などを果たすことができる。この場合、コイル部103をなすコイルパターンは、支持部材102の両面上にそれぞれ積層された形であることができ、支持部材102を貫通する導電性ビアを介して電気的に連結されることもできる。コイル部103は、らせん(spiral)状に形成されてもよいが、このようならせん状の最外側には、外部電極120、130との電気的連結のために本体101の外部に露出する引出部Tを含むことができる。コイル部103をなすコイルパターンの場合、当技術分野で用いられるめっき工程、例えば、パターンめっき、異方めっき、等方めっきなどの方法を用いて形成してもよく、これら工程のうち複数の工程を用いて多層構造として形成してもよい。
【0033】
コイル部103を支持する支持部材102の場合、ポリプロピレングリコール(PPG)基板、フェライト基板、または金属系軟磁性基板などで形成されることができる。この場合、支持部材102の中央領域には、貫通孔が形成されることができる。また、上記貫通孔には、磁性材料が充填されてコア領域Cを形成することができる。かかるコア領域Cは、本体101の一部を構成する。このように、磁性材料で充填された形でコア領域Cを形成することにより、コイル部品100の性能を向上させることができる。
【0034】
外部電極120、130は、本体101における引出部Tとそれぞれ連結されるように形成される。外部電極120、130は、電気導電性に優れた金属を含むペーストを用いて形成することができ、上記ペーストは、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、または銀(Ag)などの単独またはこれらの合金などを含む導電性ペーストであることができる。また、外部電極120、130上にめっき層(不図示)をさらに形成することができる。この場合、上記めっき層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びスズ(Sn)からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含むことができ、例えば、ニッケル(Ni)層とスズ(Sn)層が順に形成されたものであってもよい。
【0035】
図4図7を参照して、本体101について詳細に説明する。ここで、図5図7は、採用可能な金属磁性粒子の形を概略的に示すものであり、図5は斜視図、図6は断面図、図7図6の上部から見た平面図に該当する。
【0036】
上述のように、本体101は、複数の金属磁性粒子111を含む。この場合、金属磁性粒子111は、Fe系合金を含むことができる。複数の金属磁性粒子111の表面には複数の溝Hが形成される。これは、後述のように、金属磁性粒子111を酸溶液などで処理して得られたエッチング溝に該当する。本実施形態の場合、金属磁性粒子111の表面全体がエッチングされるのではなく、一部の領域、例えば、表面のうち結晶粒が存在していた領域が選択的に除去される。これにより、複数の溝Hを連結する金属磁性粒子111の表面は球面状である。ここで、球面状とは、完璧な球面だけを意味するものではなく、球面と類似したり、または実質的に球面を形成するようにみなすことができる場合を含む。一方、図4には、複数の金属磁性粒子111がすべて溝Hを有するように示されているが、これらのうち一部は溝Hを有さなくてもよい。
【0037】
金属磁性粒子111は、アトマイズ法などで製造されることができる。ここで、飽和磁束密度を高めるために、Fe含有量を増加させることができる。具体的には、金属磁性粒子111はFe系合金を含む。この場合、上記Fe系合金は、Fe含有量が75at%以上であることができる。
【0038】
より具体的に上記Fe系合金の組成について説明すると、上記Fe合金は、(Fe(1−a)a)100−b−c−d−e−f−gCuの組成式で表される。ここで、Mは、Co及びNiのうち少なくとも一つの元素、Mは、Nb、Mo、Zr、Ta、W、Hf、Ti、V、Cr、及びMnで構成される群より選択された少なくとも一つの元素、Mは、C、Si、Al、Ga、及びGeで構成される群より選択された少なくとも一つの元素であり、a、b、c、d、e、gはそれぞれ、原子%を基準に、0≦a≦0.5、0<b≦3、7≦c≦11、0<d≦2、0.6≦e≦1.5、7≦g≦15である含有量条件を有することができる。
【0039】
上述した組成を有するFe系合金によって得られた金属磁性粒子111の場合には、直径が比較的大きい粒子として実現される場合でも、母相の非晶質性が高くてよい。さらに、このように非晶質性の高い合金を熱処理する場合には、ナノ結晶粒のサイズを効果的に制御することができる。この場合、金属磁性粒子111のサイズ、すなわち、直径Dに関連し、複数の金属磁性粒子111は、D50が20〜40μmであることができる。
【0040】
一方、Fe系合金のうちFe含有量が比較的多い場合、これにより得られた粒子の表面には結晶粒が形成されたり、表面酸化による酸化物が形成されたりする。このような表面結晶粒や表面酸化物が金属磁性粒子111に残存する場合、本体101の磁気的特性が低下する可能性がある。本実施形態では、金属磁性粒子111から表面結晶粒及び表面酸化物を除去して、金属磁性粒子111の透磁率特性を改善させた。この場合、金属磁性粒子111の表面結晶粒が除去され、複数の溝Hが形成されることができる。複数の溝Hを有する金属磁性粒子111は、高純度を有し、さらには、外部に突出した形の凹凸を有する粒子に比べて本体101内において高充填率を有することができることから、本体101の磁気的特性を向上させるとともに、損失を低くすることができる。
【0041】
上述のように、金属磁性粒子111の表面には、全体的に凹凸が形成されるのではなく、結晶粒が存在する領域のみが選択的に除去された形であるため、複数の溝Hが形成された領域を除いては全体的に球状であることができる。そして、複数の溝Hのうち少なくとも一部はサイズが互いに異なってよい。この場合、サイズが互いに異なるものは相似形であってよい。これは、複数の溝Hのうち相似形のものが除去され、溝Hが形成されることにより得られる。また、複数の溝Hのうち少なくとも一部は、形状が互いに異なってよい。これは、表面結晶粒の一部が異なる形状に成長することにより得られる。
【0042】
溝Hの形状に関連し、図5に示された形のように、球の一部に該当する形状を有することができる。これとは異なり、図6及び図7に示された形のように、溝Hは、デンドライト(dendrite)状に実現されてもよい。これは、Fe系合金の結晶粒がデンドライト状を有し、エッチングによって除去された場合に得られる。
【0043】
溝Hのサイズは、金属磁性粒子111の表面から測定した長さdを基準に、30nm〜1μmであってもよい。これは、金属磁性粒子111の製造過程で形成される表面の結晶粒サイズに該当することができる。
【0044】
上述のように、金属磁性粒子111の表面に存在していた結晶粒は、エッチング工程によって除去される。これにより、金属磁性粒子111の表面には、結晶粒が存在しなくてよい。また、上記エッチング過程で、金属磁性粒子111の表面酸化物も除去されるため、金属磁性粒子111の表面には、金属磁性粒子111をなす金属、例えば、Fe酸化物が存在しなくてよい。
【0045】
図8図10を参照して、金属磁性粒子の製造過程について説明する。図8の場合、アトマイズ法などで金属磁性粒子211を実現した形を概略的に示し、金属磁性粒子211の表面には、結晶粒213及び酸化物214が形成される。この場合、結晶粒213及び酸化物214は、金属磁性粒子211の表面全体ではなく、一部の領域のみに形成され、結果として、金属磁性粒子211は全体的に球状を維持する。金属磁性粒子211から結晶粒213及び酸化物214を除いたメイン部212の場合には非晶質であることができる。但し、一部の領域にはナノ結晶粒が存在してもよい。この場合にも、メイン部212の表面には結晶粒が存在しなくてよい。
【0046】
図9はエッチング工程後の金属磁性粒子211を示す。金属磁性粒子211を酸溶液などでエッチングすることで結晶粒213及び酸化物214を除去する。これにより、金属磁性粒子211は、表面に形成された複数の溝Hを有し、これらは球面によって連結された形となる。本エッチング工程の場合、例えば、リン酸系、塩酸系、硫酸系溶液などを用いて行うことができる。このうち、リン酸系溶液を用いる場合には、金属磁性粒子211において、他の領域の表面エッチングを最小限に抑えながら結晶粒213及び酸化物214を効果的に除去することができる。金属磁性粒子211のエッチング工程中又はその後に、金属磁性粒子211の表面をレジンや酸化物などでコーティングして金属磁性粒子211を保護することもできる。図10は金属磁性粒子211の表面にコーティング層220が形成された形を示す。図示された形のように、コーティング層220は、金属磁性粒子211の表面に沿って、その形状を追従する形で実現されることができる。但し、図10のコーティング工程は、実施形態に応じて省略してもよい。
【0047】
一方、本発明者らは、比較例と実施例に分けて金属磁性粒子を製造した後、これを用いて実現された本体の酸素含有量、充填率、及び透磁率を測定した。ここで、酸素含有量は、表面の酸化物量についての情報を得るためのものである。また、比較例1及び比較例2は、Fe含有量がそれぞれ79at%及び76at%であり、粒子に対するエッチング工程を行わなかったため表面に結晶粒及び酸化物が存在する。比較例3は、Fe含有量が79at%であり、粒子の製造後、乾式の摩擦方式で粒子を表面処理した。かかる表面処理方法による場合、静電力などの力によって粒子表面には、結晶粒及び酸化物が効果的には除去されずに残っている。一方、比較例1及び比較例3のFe系合金は非晶質であり、比較例2のFe系合金は熱処理を介して一部のナノ結晶粒が析出した状態である。
【0048】
実施例1及び実施例2の場合、Fe含有量はそれぞれ79at%及び76at%である組成を用いており、リン酸系溶液で表面処理したため、粒子の表面には複数の溝が形成されている。実施例1のFe系合金は非晶質であり、実施例2のFe系合金は熱処理を介して一部のナノ結晶粒が析出した状態である。
【0049】
【表1】
【0050】
上記表1の実験結果を検討すると、実施例のように、エッチング工程で金属磁性粒子の表面に複数の溝が形成された場合には、同一の条件の比較例よりも表面酸化物の量が少ないのに対し、充填率及び透磁率には優れることが確認できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0052】
1 パワーインダクタ
2 高周波インダクタ
3 通常のビーズ
4 高周波用ビーズ
5 コモンモードフィルター
100 コイル部品
101 本体
102 支持部材
103 コイル部
111、211 金属磁性粒子
112 絶縁体
120、130 外部電極
212 メイン部
213 結晶粒
214 酸化物
220 コーティング層
C コア領域
H 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10