特許第6962658号(P6962658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962658
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】外観検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   G01N21/84 B
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-5507(P2018-5507)
(22)【出願日】2018年1月17日
(65)【公開番号】特開2019-124588(P2019-124588A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】山本 征英
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−140316(JP,U)
【文献】 特開2005−291871(JP,A)
【文献】 特開平04−259807(JP,A)
【文献】 特開2009−201670(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0124927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
G01B 11/00 − G01B 11/30
B07C 5/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの外観を検査する外観検査装置であって、
回転して前記ワークの周囲を移動する回転体と、
前記ワークを撮像するために前記回転体に設けられた撮像装置とを備え、
前記回転体は、その周方向の一部の領域において前記ワークを検査ポジションに対して搬入及び搬出するための開口部を有し、
前記開口部が所定の方向を向いた状態において、前記ワークが前記開口部を通って前記回転体内の前記検査ポジションに搬入され、前記撮像装置による前記ワークの撮像後、前記ワークは前記所定の方向とは異なる方向を向く前記開口部を通って前記検査ポジションから搬出されることを特徴とする外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外観を検査する外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの外観を検査する外観検査装置として、多軸ロボットのアームの先端にカメラを取り付けたものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−75534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような多軸ロボットを検査ラインに設置し、検査対象物を周囲から外観検査しようとすると、設備が大型化し、メンテナンス性もよくないといった課題がある。また、多軸ロボットに所望の動作をさせるために、予めカメラの移動経路や作業動作(作業手順)を学習させるティーチングと称される作業を行わなければならず、操作が複雑化するといった課題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、構造を簡素化して小型化を図れると共に、メンテナンス性や操作性が向上する外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、ワークの外観を検査する外観検査装置であって、回転して前記ワークの周囲を移動する回転体と、前記ワークを撮像するために回転体に設けられた撮像装置とを備え、回転体は、その周方向の一部の領域においてワークを検査ポジションに対して搬入及び搬出するための開口部を有し、開口部が所定の方向を向いた状態において、ワークが開口部を通って回転体内の検査ポジションに搬入され、撮像装置によるワークの撮像後、ワークは所定の方向とは異なる方向を向く開口部を通って検査ポジションから搬出される外観検査装置を提供する。
【0007】
ワークの周囲を移動する回転体に撮像装置が設けられていることで、回転体を回転させることにより、撮像装置を所望の位置に配置してワークの検査箇所を撮像することができる。このように、本発明に係る外観検査装置によれば、回転体に撮像装置を設ける簡単な構成で、ワークをその周囲から効率良く撮像することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外観検査装置の構成を簡素化することができ、装置の小型化を実現できる。また、メンテナンス性や操作性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る外観検査装置の正面図である。
図2】外観検査装置の平面図である。
図3】外観検査装置の制御系を示すブロック図である。
図4】外観検査装置の動作のフローチャートである。
図5】エンジンを検査ポジションに搬入した状態を示す平面図である。
図6】外観検査をするために回転体を回転させた状態を示す平面図である。
図7】外観検査をするために回転体を上昇させた状態を示す正面図である。
図8】回転体を搬出姿勢に切り換えた状態を示す平面図である。
図9】エンジンを検査ポジションから搬出した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る外観検査装置の実施形態について、自動車用エンジンの外観を検査する外観検査装置を例に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る外観検査装置の正面図であり、図2は、その平面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、外観検査装置1は、搬送手段としてのコンベア2と、撮像装置としての複数のカメラ3と、回転体4と、回転体4を回転させる回転機構5と、回転体4を昇降させる昇降機構6と、基台7とを主な構成としている。
【0013】
コンベア2は、水平に設置された2本のレール8と、これらのレール8に沿って移動する搬送台9とを有している。搬送台9は、レール8上で移動可能に設けられた板状部分10と、板状部分10の上に設けられた柱状部分11とで構成されている。ワーク(検査対象物)であるエンジンEが柱状部分11の上部に保持された状態で搬送台9がレール8上を移動することで、エンジンEが搬送経路の上流側(図2における左側)から下流側(図2における右側)へ搬送される。また、コンベア2は、その搬送経路の下流側においてエンジンEを良品と不良品とに振り分ける機構を備えている(図示省略)。
【0014】
回転体4は、C字状(有端環状又は部分円弧状)に形成されたフレーム部材で構成され、コンベア2の搬送経路上で水平状に支持されている。回転体4の長手方向(周方向)の両端部4a,4b側には、それぞれカメラ3が設けられている。各カメラ3は、揺動部材としての揺動アーム12を介して回転体4に取り付けられている。揺動アーム12は、その基端部が回転体4に対して揺動可能に取り付けられ、さらにこの揺動アーム12の先端部にカメラ3が揺動可能に取り付けられている。揺動アーム12及びカメラ3がそれぞれの揺動軸を中心に揺動することで、エンジンEに対するカメラ3の距離や角度が撮像に適した距離及び角度に調整される。
【0015】
本実施形態では、2つのカメラ3が設けられているが、カメラ3の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、回転体4に対するカメラ3の設置箇所も適宜変更可能である。さらに、カメラ3の数や設置個所に応じて、回転体4の長さも変更可能である。例えば、回転体4を、半円状、又は半円よりも短い円弧状としてもよい。
【0016】
昇降機構6は、基台7上に設けられた複数のシリンダ装置13と、複数のシリンダ装置13の上下動するピストンロッド13aの上端部に設けられた一対の昇降板14とで構成されている。一対の昇降板14の上には回転体4がまたがるように支持されており、ピストンロッド13aが上下動することで、昇降板14と一緒に回転体4が上昇又は降下する。
【0017】
回転機構5は、回転体4を回転可能に支持する回転支持部材としての複数のガイドローラ15を有している。複数のガイドローラ15は、各昇降板14上に回転可能に設けられ、回転体4の外周縁又は内周縁に対して接触するように配置されている。このように、ガイドローラ15が回転体4の外周縁又は内周縁に対して接触していることで、回転体4は複数のガイドローラ15によって外周側と内周側とから挟まれるようにして支持されている。また、複数のガイドローラ15の少なくとも一部は、モータ等の駆動源によって回転駆動する駆動ローラとして機能する。駆動ローラが回転駆動することで、その駆動力が回転体4に伝達されて回転体4が図2示す矢印A方向又は矢印B方向に回転する。また、本実施形態とは別の実施形態として、ガイドローラ15に代えてガイドギヤを設け、回転体4の外周縁及び内周縁にガイドギヤと噛み合うギヤ部を設けてもよい。
【0018】
図3は、本実施形態に係る外観検査装置の制御系を示すブロック図である。
【0019】
図3に示すように、本実施形態に係る外観検査装置1は、コンベア2、回転機構5、昇降機構6、カメラ3及び揺動アーム12の動作を制御する制御部20と、検査対象となるエンジンの種類やその検査箇所等の情報が入力される入力部21と、良否判定の基準となる情報を記憶する基準情報記憶部22と、エンジンの良否を判定する判定部23と、判定部23による判定結果を記憶する判定結果記憶部24とを備えている。
【0020】
制御部20は、入力部21で入力された検査箇所をカメラ3で撮像できるように、回転機構5、昇降機構6及び揺動アーム12の動作を制御し、カメラ3を所望の位置に配置する。また、制御部20は、判定部23から得られた良否判定結果に基づいてコンベア2の振り分け機能を制御する。判定部23は、基準情報記憶部22に記憶されている基準情報とカメラ3で撮像された画像とを比較して、エンジンに組み付けられるべき部品の有無や、組付けられた部品の個数、向き、配置等を確認し、エンジンの良否を判定する。基準情報記憶部22に記憶される情報は、例えば、検査箇所に相当する部分を撮像した良品の画像情報等である。
【0021】
以下、図4のフローチャートを参照しつつ、本実施形態に係る外観検査装置の動作について説明する。
【0022】
各種部品が組み付けられたエンジンが搬送台の上に設置され、コンベアによってエンジンの搬送が開始されると、当該エンジンを外観検査可能な検査ポジションへと搬入する搬入工程が行われる(図4のStep1)。
【0023】
搬入工程では、図2に示すように、まず、回転体4がその開口部4c(環状の一部が途切れた箇所)をワーク搬送方向の上流側を向けた搬入姿勢で待機する。また、このとき回転体4は、エンジンEが搬送されても、エンジンE及び搬送台9と干渉しない高さ、具体的には図1に示す最も降下した位置に配置される。この状態で、エンジンEが下流へと搬送されることで、エンジンE及び搬送台9が回転体4の開口部4cを通過し、図5に示すように、エンジンEが回転体4の内周領域上の検査ポジションに搬入される。
【0024】
エンジンが検査ポジションに搬入されると、コンベアの駆動は一旦停止し、カメラによる検査箇所の撮像工程に移行する(図4のStep2)。撮像工程では、図6に示すように、回転体4を時計回りに回転させる、又は、図7に示すように、回転体4を上昇させる、あるいは、回転体4の回転と上昇の両方を行うことにより、カメラ3を所望の検査位置に対応する位置へ移動させる。そして、カメラが所望の検査箇所に対応する位置に配置されると、揺動アームによって2つのカメラ又はそれらの一方が動かされて適切な距離及び角度に調整され、カメラによる検査箇所の撮像が行われる。なお、エンジンの検査箇所は、外観検査を開始する前に予め作業者によって上記入力部(図3参照)に入力されており、入力された検査箇所の情報に基づいて、制御部が回転体や揺動アームの動きを制御する。
【0025】
さらに、他にも検査箇所がある場合(図4のStep3において「NO」の場合)は、回転体を回転又は上昇あるいは降下させて、カメラを所望の位置に配置し、同様にカメラによる検査箇所の撮像を行う。そして、このような撮像工程を、全ての検査箇所の撮像が完了するまで繰り返し行う。
【0026】
全ての検査箇所の撮像が完了すると(図4のStep3において「YES」の場合)、エンジンを検査ポジションから搬出する搬出工程を行う(図4のStep4)。搬出工程では、図8に示すように、回転体4を、搬入工程の待機姿勢から180°反転した位置、すなわち開口部4cがワーク搬送方向の下流側を向く搬出姿勢となるまで回転させる。また、回転体4を、搬入工程のときと同様の高さまで降下させる(図1参照)。この状態で、コンベアの駆動が再開され、図9に示すように、エンジンEが回転体4の内周領域上(検査ポジション)から下流側へ搬出される。本実施形態では、エンジンの搬入経路と搬出経路とが直線状に構成されているが、搬入経路と搬出経路とが相対的に角度をもって配置されている場合であってもよい。
【0027】
搬出されたエンジンは、外観検査の結果に基づき、コンベア上で良品か不良品かに振り分けられる。外観検査の結果は、上記判定部(図3参照)によって判定された良否判定である。カメラによる撮像が完了した時点で、その画像情報が判定部へと送られ、判定部では撮像された画像情報と基準情報記憶部に記憶されている良品画像情報とが比較されてエンジンの良否が判定される。その結果、エンジンが良品と判定された場合(図4のStep5において「YES」の場合)は、当該エンジンはコンベアによって良品搬送経路へ搬送される(図4のStep6)。反対に、エンジンが不良品と判定された場合(図4のStep5において「NO」の場合)は、当該エンジンはコンベアによって良品とは振り分けられて不良品搬送経路へ搬送される(図4のStep7)。
【0028】
また、判定部によって判定された結果は、上記判定結果記憶部(図3参照)に記憶される。判定結果記憶部に記憶される判定結果はエンジンごとに付された個別の識別番号と関連付けされており、作業者は不良品が発生した場合に、判定結果記憶部に記憶されている情報を見ることで、エンジンごとの不良個所や不良内容を確認することができる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る外観検査装置においては、ワーク(エンジン)の周囲を移動する回転体にカメラが設けられていることで、回転体を回転させるだけでカメラを所望の位置に配置して検査箇所を撮像することが可能である。従って、ワークの周囲に多くのカメラを設置したり、複雑に動く多軸ロボットを用いたりしなくても、少ないカメラで多くの検査箇所を効率良く撮像することができる。これにより、外観検査装置の小型化及び構造の簡素化を図ることができるようになり、従来のような多軸ロボットを用いた大掛かりな装置を設置する必要がなくなる。
【0030】
また、本実施形態に係る外観検査装置によれば、構成の簡素化が図れることで、メンテナンス性や操作性も向上する。多軸ロボットを用いた従来の外観検査装置では、予めティーチング作業を行う必要があるが、本実施形態に係る外観検査装置においては、ティーチング作業等の複雑な操作は必要ない。制御盤などを用いた簡単な入力操作で制御でき、熟練した作業者でなくても扱うことができるようになる。
【0031】
また、本実施形態に係る外観検査装置においては、より一層の小型化を図るために、回転体の開口部の大きさを、エンジンの各部分のうち、比較的に幅の大きい上部に対応させるのではなく、比較的に幅の小さい下部や、搬送台の柱状部分に対応させている。すなわち、図1に示すように、回転体4の開口部4cの幅W1を、エンジンEの下部の幅W2や搬送台9の柱状部分11の幅W3よりも大きく設定することで、幅の小さいこれらの部分を少なくとも通過できるようにする一方、エンジンEの上部の幅W4(エンジンの最大幅)よりも小さい幅にすることで、開口部4cの幅を極力小さくし、回転体4の径方向の寸法を小さくしている。これにより、外観検査装置のより一層の小型化を図れるようになる。
【0032】
ところで、一般的にカメラで検査箇所を精度良く撮像するには、外部の光による影響を避けるために、撮像エリアを遮光部材で囲んで暗室を作製し、案室内で撮像することが望ましい。しかしながら、このような暗室を設けると、設備が大型化する上、異常発生時などに内部が見えにくいため、復旧作業に時間がかるなどのメンテナンス上のデメリットがある。
【0033】
そこで、本実施形態に係る外観検査装置においては、揺動アームを用いてカメラを揺動可能に構成することで、ワークに対するカメラの距離や角度を最適な距離及び角度に調整し、暗室を設けなくても検査箇所を精度良く撮像できるようにしている。これにより、撮像エリアの周囲に遮光部材を配置する必要がなくなり、設備の大型化を防止できると共に、メンテナンス性の向上も図れるようになる。
【0034】
さらに、本実施形態に係る外観検査装置においては、設備の小型化を図るために、外観検査装置への作業者の接近を検知する安全対策用のセンサとして、レーザスキャナ(図示省略)を用いている。レーザスキャナは、回転する投光器を有し、投光器から照射される光ビームの反射光が戻ってくる時間を計算することで、所定のエリア内への作業者の侵入を検知する反射型の光学センサであり、例えば、外観検査装置が設置された床面等に配置される。このようなレーザスキャナを用いることで、透過型の光学センサを複数並べたいわゆるライトカーテン・エリアセンサを用いる場合のような囲い(フェンス)が不要となるので、設備のより一層の小型化を図れるようになる。
【0035】
以上、本発明に係る外観検査装置について、自動車用エンジンの外観を検査する外観検査装置を例に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、エンジン以外のワークの外観を検査する装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 外観検査装置
2 コンベア
3 カメラ
4 回転体
5 回転機構
6 昇降機構
7 基台
8 レール
9 搬送台
12 揺動アーム
13 シリンダ装置
14 昇降板
15 ガイドローラ
E エンジン(ワーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9