特許第6962660号(P6962660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962660
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】エンジン部品の取付構造およびエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/04 20060101AFI20211025BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20211025BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   F02M35/04 B
   F16F1/38 S
   F16F15/08 K
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-29316(P2018-29316)
(22)【出願日】2018年2月22日
(65)【公開番号】特開2019-143559(P2019-143559A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009896
【氏名又は名称】愛知機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】水谷 英生
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 将基
(72)【発明者】
【氏名】寺田 良
【審査官】 池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−285262(JP,A)
【文献】 特開2017−213985(JP,A)
【文献】 米国特許第05823514(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第110925121(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/04
F02M 35/112
F16F 1/38
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体および/または車体にエンジン部品を取り付けるエンジン部品の取付構造であって、
前記エンジン本体および/または車体、または、前記エンジン部品の一方には、貫通孔が形成された取付部が設けられており、
前記貫通孔は、挿通孔が形成された弾性部材を取り付け可能に構成されており、
該弾性部材は、前記挿通孔の軸中心線と前記貫通孔の軸中心線とが平行となる態様で前記貫通孔に取付けられ、
前記エンジン本体および/または車体、または、前記エンジン部品の他方には、前記弾性部材を介して前記取付部に係止可能に構成された係止突起が設けられており、
前記係止突起は、前記挿通孔に挿通可能に構成された軸部と、少なくとも一部が前記挿通孔の内径よりも大きい寸法を有する形状に形成された係止部と、を有しており、
前記軸部の延在方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における前記軸部の投影の図心を通る第1仮想直線が該軸部の投影の外縁および前記仮想投影面上における前記係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、前記軸部の投影の図心を通る第2仮想直線が該軸部の投影の外縁および前記係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、が異なるような態様で、前記係止部が前記軸部の先端に一体にされており、
前記係止部は、前記軸部の軸中心線と同軸上に配置された軸中心線を有する仮想円錐体の少なくとも底面の所定の周縁部を、該仮想円錐体の軸中心線から離れる方向に変形させた変形円錐体として構成されており、該変形円錐体の先端が前記係止突起の突出方向の前側を向くように前記軸部に一体にされていると共に、該変形円錐体における前記係止突起の突出方向の前側を向く面の表面積が、前記仮想円錐体における前記係止突起の突出方向の前側を向く面の表面積と略同じになるよう構成されており、
前記係止突起を前記挿通孔に挿入することによって、前記エンジン部品が前記エンジン本体および/または前記車体に取り付けられるよう構成されている
エンジン部品の取付構造。
【請求項2】
前記係止部は、前記仮想円錐体の軸中心線に関して前記所定の周縁部の反対側に位置する前記底面の対面周縁部を前記仮想円錐体の軸中心線に近づく方向に変形させることによって、前記変形円錐体の前記表面積と前記仮想円錐体の前記表面積とが略同じとなるよう構成されている
請求項に記載のエンジン部品の取付構造。
【請求項3】
エンジン本体および/または車体にエンジン部品を取り付けるエンジン部品の取付構造であって、
前記エンジン本体および/または車体、または、前記エンジン部品の一方には、貫通孔が形成された取付部が設けられており、
前記貫通孔は、挿通孔が形成された弾性部材を取り付け可能に構成されており、
該弾性部材は、前記挿通孔の軸中心線と前記貫通孔の軸中心線とが平行となる態様で前記貫通孔に取付けられ、
前記エンジン本体および/または車体、または、前記エンジン部品の他方には、前記弾性部材を介して前記取付部に係止可能に構成された係止突起が設けられており、
前記係止突起は、前記挿通孔に挿通可能に構成された軸部と、少なくとも一部が前記挿通孔の内径よりも大きい寸法を有する形状に形成された係止部と、を有しており、
前記軸部の延在方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における前記軸部の投影の図心を通る第1仮想直線が該軸部の投影の外縁および前記仮想投影面上における前記係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、前記軸部の投影の図心を通る第2仮想直線が該軸部の投影の外縁および前記係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、が異なるような態様で、前記係止部が前記軸部の先端に一体にされており、
前記係止部は、略円錐体として構成されており、該略円錐体の軸中心線が前記軸部の軸中心線に対してオフセットされると共に、該略円錐体の先端が前記係止突起の突出方向の前側を向くように前記軸部に一体にされており、
前記係止突起を前記挿通孔に挿入することによって、前記エンジン部品が前記エンジン本体および/または前記車体に取り付けられるよう構成されている
エンジン部品の取付構造。
【請求項4】
前記エンジン部品は、樹脂製であり、
前記係止突起は、前記エンジン部品に設けられている
請求項1ないしのいずれか1項に記載のエンジン部品の取付構造。
【請求項5】
前記取付部を有する前記エンジン本体としてのシリンダヘッドと、前記係止突起を有する前記エンジン部品としてのエアクリーナと、を備えるエンジンであって、
請求項1ないしのいずれか1項に記載のエンジン部品の取付構造により前記エアクリーナが前記シリンダヘッドに取付けられるよう構成されており、
前記エンジンを搭載した車両の運転に起因して、前記係止突起と前記弾性部材を介した前記取付部との係合が解除される方向に前記エアクリーナを揺動する外力が該エアクリーナに作用した際に、該エアクリーナの揺動を規制可能な方向に前記係止部が前記軸部に対して偏るよう構成されている
エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン本体および/または車体にエンジン部品を取り付けるエンジン部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017−137792号公報(特許文献1)には、エンジン部品としてのエアクリーナに複数の係止ピンを設けると共に、複数の挿通孔が形成された取付基板を車両のエンジンルーム内に設け、グロメットを介して挿通孔に係止ピンを内挿することによって、エアクリーナを車両に取り付けるエンジン部品の取付構造が記載されている。ここで、取付基板には、挿通孔を囲むように複数の突起が設けられている。
【0003】
上述した公報に記載のエンジン部品の取付構造では、エアクリーナを車両に容易に取付けることができると共に、複数の突起によってグロメットの変位を規制することによって、係止ピンが挿通孔から抜け出ることを抑制し、エアクリーナが車両から脱落することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−137792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した公報に記載の構造では、エアクリーナの取付基板からの脱落を抑制するためのみの目的で、取付基板に複数の突起を設ける必要があり、この点でなお改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、エンジン部品をエンジンや車体に取り付けるに際し、取り付け性を維持しながら、エンジン部品がエンジンや車体から外れることを抑制できる合理的な構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンジン部品の取付構造およびエンジンは、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係るエンジン部品の取付構造の好ましい形態によれば、エンジン本体および/または車体にエンジン部品を取り付けるエンジン部品の取付構造が構成される。エンジン本体および/または車体、または、エンジン部品の一方には、貫通孔が形成された取付部が設けられている。貫通孔は、挿通孔が形成された弾性部材を取り付け可能に構成されている。弾性部材は、挿通孔の軸中心線と貫通孔の軸中心線とが略平行となる態様で貫通孔に取付けられる。また、エンジン本体および/または車体、または、エンジン部品の他方には、弾性部材を介して取付部に係止可能な係止突起が設けられている。係止突起は、挿通孔に挿通可能な軸部と、少なくとも一部が挿通孔の内径よりも大きい寸法を有する形状に形成された係止部と、を有している。また、軸部の延在方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における軸部の投影の図心を通る第1仮想直線が当該軸部の投影の外縁および仮想投影面上における係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、軸部の投影の図心を通る第2仮想直線が当該軸部の投影の外縁および係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、が異なるような態様で、係止部が軸部の先端に一体にされている。係止部は、軸部の軸中心線と同軸上に配置された軸中心線を有する仮想円錐体の少なくとも底面の所定の周縁部を、当該仮想円錐体の軸中心線から離れる方向に変形させた変形円錐体として構成されており、当該変形円錐体の先端が係止突起の突出方向の前側を向くように軸部に一体にされていると共に、当該変形円錐体における係止突起の突出方向の前側を向く面の表面積が、仮想円錐体における係止突起の突出方向の前側を向く面の表面積と略同じになるよう構成されている。そして、係止突起を挿通孔に挿入することによって、エンジン部品がエンジン本体および/または車体に取り付けられるように構成されている。
【0009】
本発明における「エンジン本体」とは、典型的には、エンジンの骨格を構成する主要部品、例えば、シリンダヘッドやシリンダブロック、オイルパンなどがこれに該当する。また、本発明における「挿通孔の軸中心線と貫通孔の軸中心線とが略平行」とは、文字通り挿通孔の軸中心線と貫通孔の軸中心線とが平行となる態様のみならず、挿通孔の軸中心線と貫通孔の軸中心線とが概ね平行である態様を好適に包含する。なお、「平行」には、挿通孔の軸中心線と貫通孔の軸中心線とが同軸上に配置される場合を含む概念である。また、本発明における「一体にされている」とは、軸部と係止部とが一体成形される態様の他、軸部と係止部とが別体に成形された後に一体にされる態様を好適に包含する。
【0010】
一般に、エンジン部品には、車両の運転に起因した様々な外力が作用する。当該外力によって、係止突起と弾性体を介した取付部との係合解除が助長される方向にエンジン部品が揺動される場合がある。本発明によれば、当該エンジン部品の揺動を規制可能な方向と一致する方向に延在する仮想直線上の点間距離(当該仮想直線と軸部の投影の外縁および係止部の投影の外縁のそれぞれとが交差する点同士の距離)が最も長くなるような態様で係止部を軸部に一体にする構成とすることによって、係止突起と取付部との係合解除を良好に抑制することができる。即ち、係止部の軸部に対する形状あるいは係止部の軸部に対する位置関係を変更するのみという簡易な構成で、エンジン部品がエンジンや車体から外れることを抑制できる。もとより、係止突起を弾性体の挿通孔に挿通させるのみでエンジン部品をエンジンや車体に取り付けることができるため、取り付け性も確保できる。また、係止部が変形円錐体に構成されるため、係止突起を弾性体の挿通孔に挿入する際の挿入性を確保しながら、エンジン部品がエンジンや車体から外れることを抑制することができる。さらに、係止部の軸部に対する形状や係止部の軸部に対する位置関係が変更された場合であっても、係止部の軸部に対する形状や係止部の軸部に対する位置関係が変更されていない場合と同等の挿入性を確保することができる。
【0015】
本発明に係るエンジン部品の取付構造の更なる形態によれば、係止部は、仮想円錐体の軸中心線に関して所定の周縁部の反対側に位置する底面の対面周縁部を仮想円錐体の軸中心線に近づく方向に変形させることによって、変形円錐体の表面積と仮想円錐体の表面積とが略同じとなるように構成されている。
【0016】
本形態、変形円錐体の表面積と仮想円錐体の表面積とが略同じとなる構成を簡易に実現できる。
【0017】
本発明に係るエンジン部品の取付構造の好ましい形態によれば、エンジン本体および/または車体にエンジン部品を取り付けるエンジン部品の取付構造が構成される。エンジン本体および/または車体、または、エンジン部品の一方には、貫通孔が形成された取付部が設けられている。貫通孔は、挿通孔が形成された弾性部材を取り付け可能に構成されている。弾性部材は、挿通孔の軸中心線と貫通孔の軸中心線とが略平行となる態様で貫通孔に取付けられる。また、エンジン本体および/または車体、または、エンジン部品の他方には、弾性部材を介して取付部に係止可能な係止突起が設けられている。係止突起は、挿通孔に挿通可能な軸部と、少なくとも一部が挿通孔の内径よりも大きい寸法を有する形状に形成された係止部と、を有している。また、軸部の延在方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における軸部の投影の図心を通る第1仮想直線が当該軸部の投影の外縁および仮想投影面上における係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、軸部の投影の図心を通る第2仮想直線が当該軸部の投影の外縁および係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、が異なるような態様で、係止部が軸部の先端に一体にされている。係止部は、略円錐体として構成されている。そして、当該略円錐体の軸中心線が軸部の軸中心線に対してオフセットされると共に、略円錐体の先端が係止突起の突出方向の前側を向くように軸部に一体にされている。そして、係止突起を挿通孔に挿入することによって、エンジン部品がエンジン本体および/または車体に取り付けられるように構成されている。
【0018】
一般に、エンジン部品には、車両の運転に起因した様々な外力が作用する。当該外力によって、係止突起と弾性体を介した取付部との係合解除が助長される方向にエンジン部品が揺動される場合がある。本発明によれば、当該エンジン部品の揺動を規制可能な方向と一致する方向に延在する仮想直線上の点間距離(当該仮想直線と軸部の投影の外縁および係止部の投影の外縁のそれぞれとが交差する点同士の距離)が最も長くなるような態様で係止部を軸部に一体にする構成とすることによって、係止突起と取付部との係合解除を良好に抑制することができる。即ち、係止部の軸部に対する形状あるいは係止部の軸部に対する位置関係を変更するのみという簡易な構成で、エンジン部品がエンジンや車体から外れることを抑制できる。もとより、係止突起を弾性体の挿通孔に挿通させるのみでエンジン部品をエンジンや車体に取り付けることができるため、取り付け性も確保できる。また、係止部を略円錐体として構成し、その軸中心線を軸部の軸中心線に対してオフセットさせるのみであるため、係止突起を弾性体の挿通孔に挿入する際の挿入性を確保したまま、係止部が軸部に対して偏った構造を簡易に実現できる。

【0019】
本発明に係るエンジン部品の取付構造の更なる形態によれば、エンジン部品は、樹脂製である。そして、係止突起は、エンジン部品に設けられている。
【0020】
本形態、樹脂製であるエンジン部品側に係止突起を設ける構成であるため、係止突起を金属製で成形する場合に比べて係止突起を容易に成形できる。
【0021】
本発明に係るエンジンの好ましい形態によれば、取付部を有するエンジン本体としてのシリンダヘッドと、係止突起を有するエンジン部品としてのエアクリーナと、を備えるエンジンが構成される。当該エンジンは、上述したいずれかの態様の本発明に係るエンジン部品の取付構造によりエアクリーナがシリンダヘッドに取付けられるように構成されている。そして、エンジンを搭載した車両の運転に起因して、係止突起と弾性体を介した取付部との係合が解除される方向にエアクリーナを揺動する外力が当該エアクリーナに作用した際に、当該エアクリーナの揺動を規制可能な方向に係止部が軸部に対して偏るように構成されている。
【0022】
本発明によれば、上述したいずれかの態様の本発明に係るエンジン部品の取付構造によってエアクリーナがシリンダヘッドに取付けられる構成であるため、上述したいずれかの態様の本発明に係るエンジン部品の取付構造が奏する効果と同様の効果、例えば、簡易な構成でありながらエンジン部品がエンジンや車体から外れることを抑制できる効果や、エンジン部品のエンジンや車体への取付性の維持を図ることができる効果などを奏することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エンジン部品をエンジンまたは車体に取り付けるに際し、取り付け性を維持しながら、エンジン部品がエンジンまたは車体から外れることを抑制できる合理的な構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係るエンジン1の構成の概略を示す概略構成図である。
図2】ブラケットBR1,BR2,BR3がシリンダヘッド2に取り付けられる位置を示す説明図である。
図3】シリンダヘッド2にブラケットBR1,BR2,BR3が取り付けられた状態を示す説明図である。
図4】エアクリーナ8の構成の概略を示す外観図である。
図5】エアクリーナ8を図4の矢印D方向から見た矢視図である。
図6】エアクリーナ8を図4の矢印E方向から見た矢視図である。
図7】エアクリーナ8の取付突起60,62が接続された部分を拡大して示す拡大図である。
図8】取付突起60を図7の矢印F方向から見た側面図である。
図9】取付突起60を軸部60aの軸中心線C1に沿う方向の一方側から見た正面図である。
図10】取付突起60を図9の矢印G方向から見た矢視図である。
図11】取付突起62を図7の矢印K方向から見た側面図である。
図12】取付突起62を図11の矢印T方向から見た矢視図である。
図13】取付突起62を軸部62aの軸中心線C2に沿う方向の一方側から見た正面図である。
図14】エアクリーナ8に力のモーメントMが作用する様子を示す説明図である。
図15】本発明の実施の形態に係るエンジン1を排気側から見た説明図である。
図16図15のA−A線断面の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
図17図15のB−B線断面の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
図18】取付突起60の係止部60bが円錐体として構成されたと仮定した場合に、回転力RFによって、取付突起60が挿通孔20aから抜け始めた状態を示す説明図である。
図19】取付突起60の係止部60bが仮想円錐体VCとして構成されたと仮定した場合に、回転力RFによって、取付突起60が挿通孔20aから抜け出た状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0026】
本発明の実施の形態に係るエンジン1は、図1に示すように、シリンダヘッド2と、シリンダヘッド2の上部に取り付けられたロッカーカバー4と、シリンダヘッド2の下部に取り付けられたシリンダブロック6と、ロッカーカバー4の上方に配置されたエアクリーナ8と、シリンダブロック6の下部に取り付けられたオイルパン10と、を備えている。
【0027】
エンジン1は、気筒が直列に配置された直列気筒型エンジンとして構成されており、気筒配列方向が車両進行方向に対して垂直となるように車両に横置きに搭載される。なお、エンジン1は、吸気側(図示しないインテークマニホールドが配置されるが側であって、図1の左側)が車両前側を向くように設置される。また、エンジン1は、エアクリーナ8を通って図示しない燃焼室に供給される空気と、図示しないインジェクターから燃焼室(図示せず)に供給されるガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料と、の混合気を点火することによって生じる燃焼圧力を図示しないピストンを介してクランクシャフトの回転運動に変換して動力を出力する。
【0028】
シリンダヘッド2は、アルミニウム合金製の鋳造品であって、エンジン1の骨格を構成する主要部品の一つとして構成されている。シリンダヘッド2には、図2および図3に示すように、エアクリーナ8を支持するための3つのブラケットBR1,BR2,BR3がボルトBLTによって締結されている。シリンダヘッド2は、本発明における「エンジン本体」に対応し、ブラケットBR1,BR2,BR3は、本発明における「取付部」に対応する実施構成の一例である。
【0029】
ブラケットBR1は、図2および図3に示すように、気筒配列方向に沿って延在するシリンダヘッド2の側面のうち排気側となる側面(図示しないエキゾーストマニホールドが取り付けられる側であって、エンジン1が車両に搭載された際に車両後側を向く面)に締結され、ブラケットBR2,BR3は、気筒配列方向に直交す方向に延在するシリンダヘッド2の両側面にそれぞれ締結されている。なお、ブラケットBR2は、エンジン1が車両に搭載された際に車両左側を向く側面に設置され、ブラケットBR3は、エンジン1が車両に搭載された際に車両右側を向く側面に設置される。
【0030】
また、3つのブラケットBR1,BR2,BR3には、図2および図3に示すように、ゴム製のグロメット20(図16および図17参照)を取り付けるための貫通孔H1,H2,H3がそれぞれ形成されている。グロメット20は、図16および図17に示すように、挿通孔20aが形成された略円筒形状に構成されており、外周面に挿通孔20aと同心状の環状溝20bが形成されている。グロメット20は、環状溝20bにブラケットBR1,BR2,BR3の貫通孔H1,H2,H3の内周面が嵌合されるようにしてブラケットBR1,BR2,BR3に取付けられる。これにより、貫通孔H1,H2,H3の軸中心線と挿通孔20aの軸中心線とがほぼ一致した状態となる。グロメット20は、本発明における「弾性部材」に対応する実施構成の一例である。
【0031】
なお、ブラケットBR1は、図2図3および図17に示すように、当該ブラケットBR1がシリンダヘッド2に取り付けられた際に、気筒軸線方向(鉛直方向、図17の上下方向)の上側に向かうほどシリンダヘッド2の排気側となる側面から遠ざかる方向に傾斜状に延在する傾斜部ICP1を有しており(図17のみに記載)、当該傾斜部ICP1に貫通孔H1が穿設されている。即ち、ブラケットBR1に形成された貫通孔H1は、その軸中心線がシリンダヘッド2の排気側となる側面側からシリンダヘッド2の吸気側となる側面側を見たときに、斜め上方を向く方向に向かって延在するように構成されている。
【0032】
また、ブラケットBR2,BR3は、図2および図3に示すように、ブラケットBR2,BR3がシリンダヘッド2に取り付けられた際に、気筒軸線方向(鉛直方向、図16の上下方向)に対して直交する方向(水平方向、図16の左右方向)に延在する水平部HP2,HP3を有しており、当該水平部HP2,HP3に貫通孔H2,H3が穿設されている。即ち、ブラケットBR2,BR3に形成された貫通孔H2,H3は、その軸中心線が気筒軸線方向(鉛直方向、図16の上下方向)と平行な方向に延在するように構成されている。
【0033】
エアクリーナ8は、樹脂により成形されており、図4ないし図6に示すように、主に、エアクリーナケース80と、外気を取り入れるためにエアクリーナケース80に一体に成形された入口ダクト部82(図5のみに記載)と、取り入れた空気を図示しないインテークマニホールドに供給するためにエアクリーナケース80に一体に成形された出口ダクト部84と、エアクリーナ8をシリンダヘッド2に取付けるためにエアクリーナケース80に一体に成形された3つの取付突起60,62,64と、を備えている。エアクリーナ8は、本発明における「エンジン部品」に対応し、3つの取付突起60,62,64は、本発明における「係止突起」に対応する実施構成の一例である。
【0034】
取付突起60は、エアクリーナ8がシリンダヘッド2に取り付けられた際に、シリンダヘッド2の排気側となる側面側に配置されることになるエアクリーナケース80の壁面に突出状に一体成形されている(図4および図7参照)。取付突起60は、図8および図10に示すように、一端がエアクリーナケース80に一体に接続された軸部60aと、当該軸部60aの先端に一体に接続された係止部60bと、を有する略キノコ状に形成されている。
【0035】
軸部60aは、先端(突出端)に向かうほどエアクリーナケース80の底面80aから遠ざかる方向の傾斜をもってエアクリーナケース80に接続されている。また、軸部60aは、基本的には円柱状に形成されており、グロメット20の挿通孔20aの内径よりも小さい外径を有するように構成されている。
【0036】
係止部60bは、当該係止部60bを軸部60aの軸中心線C1の延在方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における軸部60aの投影(図9の破線で記された円)の図心(軸中心線C1の投影に相当)を通る任意の第1仮想直線VL1が当該軸部60aの投影の外周線および上述した仮想投影面上における係止部60bの投影の外周線のそれぞれと交差する点CP1,CP2同士の距離D1と、軸部60aの投影の図心(軸中心線C1の投影に相当)を通る任意の第2仮想直線VL2が当該軸部60aの投影の外周線および係止部60bの投影の外周線のそれぞれと交差する点CP3,CP4同士の距離D2と、が異なるような形状に形成されている。
【0037】
具体的には、係止部60bは、軸部60aの軸中心線C1と同軸上に配置された軸中心線C1’を有する仮想円錐体VCであって、その底面がグロメット20の挿通孔20aの内径よりも大きい直径を有する円形に形成されたものの当該軸中心線C1’を所定方向、具体的には、係止部60bを軸部60aの軸中心線C1の延在方向に沿う方向の一方側から見たときに、下側(エアクリーナ8がシリンダヘッドに取り付けられた状態においてオイルパン10側、図9の下側)となる方向に平行移動させることにより得られる変形円錐体として形成されている。
【0038】
換言すると、係止部60bは、上述した仮想投影面上における仮想円錐体の投影(円形、図9の二点鎖線)の上側(エアクリーナ8がシリンダヘッドに取り付けられた状態においてロッカーカバー4側、図9の上側)の外周縁部を、仮想円錐体VCの軸中心線C1’から離れる方向に変形させると共に、仮想円錐体VCの軸中心線C1’に関して仮想円錐体VCの投影(円形、図9の二点鎖線)の上側の外周縁部の反対側に位置する仮想円錐体VCの投影(円形)の外周縁部(下側周縁部)を、仮想円錐体VCの軸中心線C1’に近づく方向に変形させることにより得られる変形円錐体として形成されている。なお、係止部60bは、係止部60bにおける軸部60aの突出方向を向く面(変形円錐体の底面を除く面(側面))の表面積が、仮想円錐体VCにおける軸部60aの突出方向を向く面(変形円錐体の底面を除く面(側面))の表面積と同じかそれよりも小さくなるように設定されている。
【0039】
係止部60bを変形円錐体とする構成は、本発明における「前記軸部の延在方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における前記軸部の投影の図心を通る第1仮想直線が該軸部の投影の外縁および前記仮想投影面上における前記係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、前記軸部の投影の図心を通る第2仮想直線が該軸部の投影の外縁および前記係止部の投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、が異なるような態様」に対応する実施構成の一例である。
【0040】
取付突起62は、エアクリーナ8がシリンダヘッド2に取り付けられた際に、シリンダヘッド2の気筒配列方向に直交する側面のうちの一方の側面(エンジン1を搭載した車両の左側に配置される側面)寄りのエアクリーナケース80の底面80aに突出状に一体成形されている(図4ないし図7参照)。取付突起62は、底面80aに対してほぼ直角な方向に延出している。また、取付突起62は、図11および図12に示すように、一端がエアクリーナケース80に一体に接続された軸部62aと、当該軸部62aの先端に一体に接続された係止部62bと、を有する略キノコ状に形成されている。
【0041】
取付突起64は、エアクリーナ8がシリンダヘッド2に取り付けられた際に、シリンダヘッド2の気筒配列方向に直交する側面のうちの他方の側面(エンジン1を搭載した車両の右側に配置される側面)寄りのエアクリーナケース80の壁面に突出状に一体成形されている(図5参照)。取付突起64は、底面80aに対してほぼ直角な方向に延出している。また、取付突起64は、図5に示すように、一端がエアクリーナケース80に一体に接続された軸部64aと、当該軸部64aの先端に一体に接続された係止部64bと、を有する略キノコ状に形成されている。取付突起62と取付突起64とは、基本的に同一の構成を有しているため、以下では、取付突起62について説明し、取付突起64については説明を省略する。
【0042】
取付突起62の軸部62aは、基本的には円柱状に形成されており、グロメット20の挿通孔20aの内径よりも小さい外径を有するように構成されている。取付突起62の係止部62bは、上述した仮想円錐体VCと同一の形状、即ち、図11図12および図13に示すように、軸部62aの軸中心線C2と同軸上に配置された軸中心線C2’を有する円錐体として形成されている。したがって、係止部62bにおける軸部62aの突出方向を向く面(円錐体の底面を除く面(側面))の表面積は、係止部60bにおける軸部60aの突出方向を向く面(変形円錐体の底面を除く面(側面))の表面積と同じかそれよりも大きい。
【0043】
こうして構成されたエアクリーナ8は、取付突起60,62,64の各係止部60b,62b,64bをそれぞれブラケットBR1,BR2,BR3に取り付けたグロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20aに当接させた状態でシリンダヘッド2上に載置(セット)し、当該状態のままエアクリーナ8を上方から押し込むことによって、シリンダヘッド2に取り付けられる。具体的には、エアクリーナ8を上方から押し込むことによって、取付突起60,62,64の係止部60b,62b,64bがグロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20aを弾性変形させながら当該挿通孔20a,20a,20aを貫通し、係止部60b,62b,64bがグロメット20,20,20に係合される。
【0044】
こうして、仮に、グロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20aから抜け出る方向の力が取付突起60,62,64に作用したとしても、図16および図17に示すように、係止部60b,62b,64bの裏面60c,62c,64cがグロメット20,20,20の一方の主面20c,20c,20cに当接されることによって、取付突起60,62,64が挿通孔20a,20a,20aから抜け出ることが抑制された状態(取付突起60,62,64が抜け止めされた状態)で、エアクリーナ8のシリンダヘッド2への取り付けが完了する。
【0045】
なお、本実施の形態では、各係止部60b,62b,64bを変形円錐体および円錐体として構成したため、各係止部60b,62b,64bをブラケットBR1,BR2,BR3のグロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20aへ容易に挿通させることができる。また、各係止部60b,62b,64bにおける軸部60a,62a,64aの突出方向を向く面(変形円錐体および円錐体の底面を除く面(側面))の表面積が同じ大きさとなるように各係止部60b,62b,64bを構成したため、各係止部60b,62b,64bがグロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20aに挿通される際の挿通性をほぼ同じにすることができる。これにより、エアクリーナ8のシリンダヘッド2への取付性を維持することができる。
【0046】
次に、こうして構成された本発明の実施の形態に係るエンジン1を搭載した車両の走行に起因してエアクリーナ8に外力が作用した際のエアクリーナ8の動作、特に、当該車両が急制動された際のエアクリーナ8の動作について説明する。
【0047】
本発明の実施の形態に係るエンジン1を搭載した車両が急制動されると、図14に示すように、慣性力に起因した力のモーメントMがエアクリーナ8に作用する。当該力のモーメントMは、出口ダクト部84周辺部、より具体的には、出口ダクト部84が接続された図示しないインテークマニホールド周辺部を中心としてエアクリーナ8を回転させようとする回転力RFとしてエアクリーナ8に作用し、当該回転力RFの分力の一つが、図16および図17に示すように、取付突起60,62,64の係止部60b,62b,64bとブラケットBR1,BR2,BR3(具体的には、ブラケットBR1,BR2,BR3のグロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20a)との係合を解除する方向の力PFとして取付突起60,62,64に作用する。
【0048】
ここで、取付突起62,64においては、図16に示すように、回転力RFの作用方向と、取付突起62,64の軸中心線C2の延在方向(取付突起62,64がブラケットBR2,BR3に取り付けられたグロメット20,20の挿通孔20a,20aから抜け出る方向)と、が大きく異なっているため、取付突起62,64を挿通孔20a,20aから引き抜こうとする力PFを小さく抑えることができる(力PF<<回転力RF)。
【0049】
これにより、係止部62b,64bが軸部62a,64aと同軸上に配置された円錐体として構成されていたとしても、当該力PFが、係止部62b,64bとブラケットBR2,BR3(具体的には、ブラケットBR2,BR3に取り付けられたグロメット20,20の挿通孔20a,20a)との係合力を上回ることがなく、取付突起62,64がブラケットBR2,BR3に取り付けられたグロメット20,20の挿通孔20a,20aから抜け出ることを良好に抑制することができる。
【0050】
一方、取付突起60においては、図17に示すように、回転力RFの作用方向と、取付突起60の軸中心線C1の延在方向(取付突起60がブラケットBR1に取り付けられたグロメット20の挿通孔20aから抜け出る方向)と、がほぼ同じとなるため、取付突起60を挿通孔20aから引き抜こうとする力PFは、ほぼ回転力RFと同等の大きさとなる(力PF≒回転力RF)。
【0051】
これにより、係止部60bが軸部60aと同軸上に配置された円錐体として構成されていると、当該力PFが係止部60bとブラケットBR1(具体的には、ブラケットBR1に取り付けられたグロメット20の挿通孔20a)との係合力を上回ってしまい、図18および図19に示すように、取付突起60がブラケットBR1に取り付けられたグロメット20の挿通孔20aから抜け出てしまう場合がある。
【0052】
しかしながら、本実施の形態では、取付突起60の係止部60bは、当該係止部60bを軸部60aの軸中心線C1の延在方向に沿う方向の一方側から見たときに、上側(エアクリーナ8がシリンダヘッドに取り付けられた状態において上側、図9の上側)、換言すれば、エアクリーナ8(取付突起60)の回転方向先側(図17の右斜め上方側)が膨出された変形円錐体として構成されている。
【0053】
即ち、本実施の形態では、エアクリーナ8(取付突起60)に力PFが作用した際に、グロメット20の一方の主面20cと接触して、取付突起60がグロメット20の挿通孔20aから抜け出ることを抑制し得る方向における係止部60bの裏面60cの面積が大きくなるように構成されている。
【0054】
これにより、エアクリーナ8(取付突起60)に力PFが作用した際に、係止部60bの裏面60cとグロメット20の一方の主面20cとを大きな接触面積をもって当接させることができるため、係止部60bとブラケットBR1(具体的には、ブラケットBR1に取り付けられたグロメット20の挿通孔20a)との係合力が力PFを下回ることがない。この結果、取付突起60がブラケットBR1に取り付けられたグロメット20の挿通孔20aから抜け出ることを良好に抑制することができる。
【0055】
以上説明した本実施の形態に係るエンジン1によれば、当該エンジン1を搭載した車両が急制動された際に、慣性力に起因した力のモーメントMによる回転力RFが作用する取付突起60,62,64のうち、回転力RFの作用方向とほぼ一致する軸中心線C1を有することによって、グロメット20の挿通孔20aから最も抜け出やすい構成とされた取付突起60の係止部60bを変形円錐体として構成し、取付突起60がグロメット20の挿通孔20aから抜け出ることを抑制し得る方向における係止部60bの裏面60cの面積を大きくする構成であるため、回転力RFが取付突起60,62,64に作用したとしても、当該取付突起60,62,64がグロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20aから抜け出ることを良好に抑制することができる。これにより、エアクリーナ8がシリンダヘッド2から外れることを抑制できる。もとより、取付突起60,62,64の係止部60b,62b,64bが変形円錐体および円錐体として構成されているため、取付突起60,62,64がグロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20aに良好に挿通され得る。これにより、エアクリーナ8のシリンダヘッド2への取付性が維持され得る。なお、取付突起60の係止部60bを変形円錐体として構成するのみであるため、取付突起60,62,64が挿通孔20a,20a,20aから抜け出ることを抑制するためのみの機構を別途設ける構成に比べて合理的である。
【0056】
また、本実施の形態に係るエンジン1によれば、各係止部60b,62b,64bにおける軸部62a,62a,64aの突出方向を向く面(変形円錐体および円錐体の底面を除く面(側面))の表面積が同じ大きさとなるように各係止部60b,62b,64bを構成したため、各係止部60b,62b,64bがグロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20aに挿通される際の挿通性をほぼ同じにすることができる。これにより、エアクリーナ8のシリンダヘッド2への取付性を維持することができる。
【0057】
本実施の形態では、取付突起60の係止部60bのみを変形円錐体とする構成としたが、これに限らない。例えば、取付突起60の係止部60bに加えて取付突起62の係止部62bおよび/または取付突起64の係止部64bも変形円錐体として構成しても良い。
【0058】
本実施の形態では、取付突起60の係止部60bを変形円錐体とする構成としたが、取付突起60がグロメット20の挿通孔20aから抜け出ることを抑制し得る方向における係止部60bの裏面60cの面積を大きくすることができる形状、即ち、軸部60aの軸中心線C1の延在方向に沿う方向の一方側から見たときの仮想投影面上における軸部60aの投影の図心を通る第1仮想直線が当該軸部60aの投影の外縁(円周)および当該仮想投影面上における係止部60bの投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、軸部60aの投影の図心を通る第2仮想直線が当該軸部60aの投影の外縁(円周)および係止部60bの投影の外縁のそれぞれと交差する点同士の距離と、が異なるような態様であれば、係止部60bは如何なる形状であっても良い。当該形状として、例えば、係止部60bを円錐体として形成し、当該円錐体の軸中心線が軸部60aの軸中心線に対してオフセットされた状態で係止部60bを軸部60aに一体にする構成が考えられる。
【0059】
本実施の形態では、軸部60a,62a,64aは円柱状としたが、これに限らない。軸部60a,62a,64aは、例えば、三角柱状や四角柱状、円錐台形状など如何なる形状であっても良い。
【0060】
本実施の形態では、エンジン1を搭載した車両が急制動された場合におけるエアクリーナ8のシリンダヘッド2からの脱落抑制について説明したが、当該車両が左右旋回された場合や急加速された場合におけるエアクリーナ8のシリンダヘッド2からの脱落抑制に本発明の取付構造を適用しても良い。この場合、車両の走行(左右旋回や急加速など)に起因してエアクリーナ8に外力が作用した際に、取付突起60,62,64がグロメット20,20,20の挿通孔20a,20a,20aから抜け出ることを抑制し得る方向における係止部60b,62b,64bの裏面60c,62c,64cの面積を大きくすることができる形状に係止部60b,62b,64bを形成すれば良い。
【0061】
本実施の形態では、エアクリーナ8をシリンダヘッド2に取り付ける場合を例示したが、これに限らない。例えば、エアクリーナ8をエンジン1を構成する他の部品、例えば、ロッカーカバー4やシリンダブロック6などに取り付ける場合や、エアクリーナ8を車体に取り付ける場合、あるいは、エアクリーナ8をエンジン1を構成する部品と車体の両方に亘って取り付ける場合などに本発明を適用しても良い。なお、エアクリーナ8に限らず、エンジン1や車体に取り付けられる部材(例えば、レゾネータなど)を当該エンジン1や車体に取り付ける場合に本発明を適用しても良いことは言うまでもない。
【0062】
本実施の形態では、取付突起60,62,64をエアクリーナ8に設けると共に、当該取付突起60,62,64を係合するためのブラケットBR1,BR2,BR3をシリンダヘッド2に設ける構成としたが、これとは逆に、シリンダヘッド2に取付突起を設けると共に、エアクリーナ8にブラケットBR1,BR2,BR3を設ける構成としても良い。
【0063】
本実施の形態では、エアクリーナ8に3つの取付突起60,62,64を設ける構成としたが、取付突起の数は3つより少なくても良く、また、3つよりも多くても良い。
【0064】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 エンジン(エンジン)
2 シリンダヘッド(エンジン本体、シリンダヘッド)
4 ロッカーカバー
6 シリンダブロック
8 エアクリーナ(エンジン部品)
10 オイルパン
20 グロメット(弾性部材)
20a 挿通孔(挿通孔)
20b 環状溝
20c 一方の主面
60 取付突起(係止突起)
60a 軸部(軸部)
60b 係止部(係止部)
60c 裏面
62 取付突起(係止突起)
62a 軸部(軸部)
62b 係止部(係止部)
62c 裏面
64 取付突起(係止突起)
64a 軸部(軸部)
64b 係止部(係止部)
64c 裏面
80 エアクリーナケース
80a 底面
82 入口ダクト部
84 出口ダクト部
BR1 ブラケット(取付部)
BR2 ブラケット(取付部)
BR3 ブラケット(取付部)
BLT ボルト
H1 貫通孔(貫通孔)
H2 貫通孔(貫通孔)
H3 貫通孔(貫通孔)
ICP1 傾斜部
HP2 水平部
HP3 水平部
C1 軸中心線(軸部の軸中心線)
C1’ 軸中心線(仮想円錐体の軸中心線)
C2 軸中心線
C2’ 軸中心線
VC 仮想円錐体(仮想円錐体)
M 力のモーメント
RF 回転力
PF 係合を解除する方向の力
VL1 第1仮想直線(第1仮想直線)
VL2 第2仮想直線(第2仮想直線)
CP1 第1仮想直線VL1が軸部60aの投影の外周線と交差する点(第1仮想直線が軸部の投影の外縁と交差する点)
CP2 第1仮想直線VL1が係止部60bの投影の外周線と交差する点(第1仮想直線が係止部の投影の外縁と交差する点)
CP3 第2仮想直線VL2が軸部60aの投影の外周線と交差する点(第2仮想直線が軸部の投影の外縁と交差する点)
CP4 第2仮想直線VL2が係止部60bの投影の外周線と交差する点(第2仮想直線が係止部の投影の外縁と交差する点)
D1 距離(点同士の距離)
D2 距離(点同士の距離)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19