特許第6962661号(P6962661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962661
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両のシートフレーム
(51)【国際特許分類】
   B62K 11/02 20060101AFI20211025BHJP
   B62J 7/04 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B62K11/02
   B62J7/04 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-62896(P2018-62896)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-172095(P2019-172095A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】浜口 大樹
(72)【発明者】
【氏名】三倉 圭太
(72)【発明者】
【氏名】原本 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小数賀 巧
(72)【発明者】
【氏名】兼村 祐気
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−122494(JP,U)
【文献】 中国特許出願公開第102464072(CN,A)
【文献】 特開2017−071376(JP,A)
【文献】 特開平06−239274(JP,A)
【文献】 実開昭60−192985(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 1/00 − 11/14
B62K 19/00 − 19/02
B62J 1/28
B62J 7/04
F16B 2/00 − 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(F)の後部から車体後方に向かって延設する鞍乗型車両(1)のシートフレーム(SF)において、
前記シートフレーム(SF)は、車体後方側で、前記車体フレーム(F)に固定される前部分(A)と、該前部分(A)に対して着脱可能に取り付けられる後部分(B)とに分割されており、
前記前部分(A)と前記後部分(B)とが、車幅方向内側から係合される締結部材(43)によって固定されており、
前記締結部材(43)がボルトであり、
前記前部分(A)の後端部(Ar)が中空構造とされており、
前記後部分(B)の前端に、中実部材からなる係合部(39)が設けられており、
前記締結部材(43)は、前記後端部(Ar)の側壁(36b)を貫通して、前記後端部(Ar)に挿入された前記係合部(39)に螺合されることを特徴とする鞍乗型車両のシートフレーム。
【請求項2】
前記後部分(B)が、前記係合部(39)と該係合部(39)の後部に接続されるパイプ部材(40,40a)とからなることを特徴とする請求項に記載の鞍乗型車両のシートフレーム。
【請求項3】
前記前部分(A)の後端部(Ar)が左右一対で設けられており、
左右の前記後端部(Ar)が、車幅方向に指向するクロスプレート(36)で互いに連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗型車両のシートフレーム。
【請求項4】
前記前部分(A)の後端部(Ar)が、前記クロスプレート(36)の車幅方向両端部に形成される平板状の側壁(36b)と、該側壁(36b)の車幅方向外側を覆う略半円断面の湾曲壁(44)とで構成されており、
前記側壁(36b)に、前記締結部材(43)が通る貫通孔(36c)が形成されていることを特徴とする請求項に記載の鞍乗型車両のシートフレーム。
【請求項5】
前記湾曲壁(44)は、前記前部分(A)を構成する丸パイプ部材(F5)の車幅方向内側の一部を切り取ることで形成されていることを特徴とする請求項に記載の鞍乗型車両のシートフレーム。
【請求項6】
前記係合部(39)が、円柱状の中実部材の一部を切り取って車幅方向内側に平面部(39b)を設けた構成とされていることを特徴とする請求項に記載の鞍乗型車両のシートフレーム。
【請求項7】
前記クロスプレート(36)は、車幅方向に延びる平板状の中央部(36a)と、該中央部(36a)の両端から下方に延びる側壁(36b)とを含む板部材であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の鞍乗型車両のシートフレーム。
【請求項8】
前記前部分(A)の後端部(Ar)の前方に、リヤクッション(18)の上端を支持するリヤクッション支持部(37)が設けられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の鞍乗型車両のシートフレーム。
【請求項9】
前記前部分(A)を構成する丸パイプ部材(F5)の直径(φ1)より、前記後部分(B)のパイプ部材(40,40a)の直径(φ2)の方が小さいことを特徴とする請求項5または6に記載の鞍乗型車両のシートフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のシートフレームに係り、特に、乗員が着座するシート等を支持するために車体の後部寄りの位置に設けられる鞍乗型車両のシートフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員が着座するシート等を支持するため、車体フレームの後部から車体後方に延出するシートフレームを設けた鞍乗型車両が知られている。
【0003】
特許文献1には、車体フレームに揺動自在に軸支されるスイングアームを有する自動二輪車において、シートフレームの一部を分割式とし、この分割部分をリヤクッションの取付部とした構成が開示されている。このシートフレームによれば、組立時に所定の取付部を選択することで、左右のリヤクッションの間隔が異なる車種を作り分けることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−129337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シートフレームが車体外方に露出する車両において、その後端部をグラブバーやリヤキャリアとして構成することがある。この場合、特許文献1のように、シートレールの後端部を分割式として他の部品と換装可能に構成することが考えられるが、特に、シートフレームが車体外方に露出してデザインの一部をなす車両では、十分な結合剛性を確保すると共に結合部の外観性にも配慮する必要が生じる。特許文献1のシートフレームでは、後端部を着脱自在としたり結合部の外観性を向上させることに関しては、検討されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、分割式の後端部の結合剛性を高めると共に良好な外観性を得ることができる鞍乗型車両のシートフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、車体フレーム(F)の後部から車体後方に向かって延設する鞍乗型車両(1)のシートフレーム(SF)において、前記シートフレーム(SF)は、車体後方側で、前記車体フレーム(F)に固定される前部分(A)と、該前部分(A)に対して着脱可能に取り付けられる後部分(B)とに分割されており、前記前部分(A)と前記後部分(B)とが、車幅方向内側から係合される締結部材(43)によって固定されている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記締結部材(43)がボルトであり、前記前部分(A)の後端部(Ar)が中空構造とされており、前記後部分(B)の前端に、中実部材からなる係合部(39)が設けられており、前記締結部材(43)は、前記後端部(Ar)の側壁(36b)を貫通して、前記後端部(B)に挿入された前記係合部(39)に螺合される点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記後部分(B)が、前記係合部(39)と該係合部(39)の後部に接続されるパイプ部材(40,40a)とからなる点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記前部分(A)の後端部(Ar)が左右一対で設けられており、左右の前記後端部(Ar)が、車幅方向に指向するクロスプレート(36)で互いに連結されている点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記前部分(A)の後端部(Ar)が、前記クロスプレート(36)の車幅方向両端部に形成される平板状の側壁(36b)と、該側壁(36b)の車幅方向外側を覆う略半円断面の湾曲壁(44)とで構成されており、前記側壁(36b)に、前記締結部材(43)が通る貫通孔(36c)が形成されている点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記湾曲壁(44)は、前記前部分(A)を構成する丸パイプ部材(F5)の車幅方向内側の一部を切り取ることで形成されている点に第6の特徴がある。
【0013】
また、前記係合部(39)が、円柱状の中実部材の一部を切り取って車幅方向内側に平面部(39b)を設けた構成とされている点に第7の特徴がある。
【0014】
また、前記クロスプレート(36)は、車幅方向に延びる平板状の中央部(36a)と、該中央部(36a)の両端から下方に延びる側壁(36b)とを含む板部材である点に第8の特徴がある。
【0015】
また、前記前部分(A)の後端部(Ar)の前方に、リヤクッション(18)の上端を支持するリヤクッション支持部(37)が設けられている点に第9の特徴がある。
【0016】
さらに、前記前部分(A)を構成する丸パイプ部材(F5)の直径(φ1)より、前記後部分(B)のパイプ部材(40,40a)の直径(φ2)の方が小さい点に第10の特徴がある。
【発明の効果】
【0017】
第1の特徴によれば、車体フレーム(F)の後部から車体後方に向かって延設する鞍乗型車両(1)のシートフレーム(SF)において、前記シートフレーム(SF)は、車体後方側で、前記車体フレーム(F)に固定される前部分(A)と、該前部分(A)に対して着脱可能に取り付けられる後部分(B)とに分割されており、前記前部分(A)と前記後部分(B)とが、車幅方向内側から係合される締結部材(43)によって固定されているので、シートフレームの後部分が前部分に対して着脱可能とされることで、例えば、後部分のみを、デザイン性を重視したショートタイプや積載性を重視したロングタイプに容易に換装することが可能となる。これにより、シートフレームを一体成形する場合に比してシートフレームの設計自由度を高めることができる。また、ボルト等からなる締結部材が車幅方向内側から係合されることで、シートフレームの分割部分が外方に露出する場合でも締結部材が視認されることがなく、鞍乗型車両の外観性を向上させることができる。
【0018】
第2の特徴によれば、前記締結部材(43)がボルトであり、前記前部分(A)の後端部(Ar)が中空構造とされており、前記後部分(B)の前端に、中実部材からなる係合部(39)が設けられており、前記締結部材(43)は、前記後端部(Ar)の側壁(36b)を貫通して、前記後端部(B)に挿入された前記係合部(39)に螺合されるので、中実部材によって係合部を構成することで、ボルトを係合部に直接螺合して前部分と後部分との結合剛性を高めることが可能となる。
【0019】
第3の特徴によれば、前記後部分(B)が、前記係合部(39)と該係合部(39)の後部に接続されるパイプ部材(40,40a)とからなるので、係合部の剛性を高めつつ、後部分の軽量化を図ることが可能となる。また、成形が容易なパイプ部材を適用することで、後部分のデザイン自由度を高めることができる。
【0020】
第4の特徴によれば、前記前部分(A)の後端部(Ar)が左右一対で設けられており、左右の前記後端部(Ar)が、車幅方向に指向するクロスプレート(36)で互いに連結されているので、シートフレームの前部分の強度を高めることが可能となる。
【0021】
第5の特徴によれば、前記前部分(A)の後端部(Ar)が、前記クロスプレート(36)の車幅方向両端部に形成される平板状の側壁(36b)と、該側壁(36b)の車幅方向外側を覆う略半円断面の湾曲壁(44)とで構成されており、前記側壁(36b)に、前記締結部材(43)が通る貫通孔(36c)が形成されているので、後端部の一部をクロスプレートで構成することで、部品点数を低減しつつ剛性を高めることが可能となる。
【0022】
第6の特徴によれば、前記湾曲壁(44)は、前記前部分(A)を構成する丸パイプ部材(F5)の車幅方向内側の一部を切り取ることで形成されているので、パイプフレームの一部を切り取る簡単な加工によって湾曲壁を構成して、生産工数を低減することが可能となる。
【0023】
第7の特徴によれば、前記係合部(39)が、円柱状の中実部材の一部を切り取って車幅方向内側に平面部(39b)を設けた構成とされているので、係合部に設けられた平面部をクロスプレートの側壁に面接触させることで、ボルトを螺合した際の結合剛性をより一層高めることが可能となる。
【0024】
第8の特徴によれば、前記クロスプレート(36)は、車幅方向に延びる平板状の中央部(36a)と、該中央部(36a)の両端から下方に延びる側壁(36b)とを含む板部材であるので、単一部品であるクロスプレートに、後端部の中空構造を構成する機能と、左右の後端部を連結する機能とを与えることで、部品点数を低減することができる。また、後端部の上端寄りの位置にクロスプレートの中央部が位置するので、シートを保持するシートキャッチ等を設けやすい。
【0025】
第9の特徴によれば、前記前部分(A)の後端部(Ar)の前方に、リヤクッション(18)の上端を支持するリヤクッション支持部(37)が設けられているので、リヤクッションの支持部を、シートフレームの前部分と後部分との結合部とは異なる位置に配設することで、結合部の剛性を最低限に抑えてデザイン自由度を高めることが可能となる。
【0026】
第10の特徴によれば、前記前部分(A)を構成する丸パイプ部材(F5)の直径(φ1)より、前記後部分(B)のパイプ部材(40,40a)の直径(φ2)の方が小さいので、前部分の剛性を確保すると共に、グラブバーやリヤキャリア等を構成するパイプ部材を小径化することでデザイン性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両のシートフレームを適用した自動二輪車の左側面図である。
図2】車体フレームの斜視図である。
図3】シートフレームの左側面図である。
図4】シートフレームを後方下方から見た斜視図である。
図5】前部分と後部分との結合状態を示す断面図である。
図6】後端部の構造を示す分解斜視図である。
図7図5のVII−VII線断面図である。
図8】後部分を別部品に換装した状態のシートフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両のシートフレームを適用した自動二輪車1の左側面図である。自動二輪車1の車体フレームFは、ヘッドパイプF2から車体後方下方に延びる左右一対のメインフレームF1と、メインフレームF1の下方でヘッドパイプF2から車体後方下方に延びる左右一対のハンガフレームF3と、メインフレームF1の後方下部に連結される左右一対のピボットフレームF4とを含む。メインフレームF1の後部には、左右一対の上側パイプF5および下側パイプF6を含んで後方上方に延出するシートフレームSFが連結されている。
【0029】
メインフレームF1とハンガフレームF3の間にはエンジンEが支持されており、ハンガフレームF3の前部には、ラジエータ11が配設されている。エンジンEの燃焼ガスは、排気管12を介して車幅方向右側のマフラ12aから排出される。車幅方向左側のピボットフレームF4の下端部には、サイドスタンド15が揺動可能に軸支されており、サイドスタンド15の前方の位置には、左右一対の足乗せステップ13が取り付けられている。
【0030】
ピボットフレームF4は、スイングアーム18の前端部を揺動自在に軸支するピボット14を支持している。エンジンEの駆動力は、ドライブチェーン16を介して、スイングアーム18の後端部に回転自在に軸支される後輪WRに伝達される。スイングアーム18の上部には、ドライブチェーン16の上方を覆うチェーンカバー19が取り付けられており、スイングアーム18の後部は、左右一対のリヤクッション23によってシートフレームSFに吊り下げられている。リヤクッション23の前方の下側パイプF6には、左右一対のピリオンステップホルダ17が取り付けられている。
【0031】
前輪WFを回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク10は、ヘッドパイプF2の上下の位置でトップブリッジ5およびボトムブリッジ8に支持されており、トップブリッジ5とボトムブリッジ8とを上下で連結するステムシャフト(不図示)が、ヘッドパイプF2に対して回転可能に軸支される。トップブリッジ5の上部には、車幅方向に延びる操向ハンドル3が固定されており、操向ハンドル3にはバックミラー4が取り付けられている。メータ装置50はトップブリッジ5に支持されており、ヘッドライト6はボトムブリッジ8に支持されている。左右一対の前側ウインカ装置7は、トップブリッジ5の下部でフロントフォーク10に支持されている。
【0032】
メインフレームF1の上部には燃料タンク2が支持されており、燃料タンク2の後方にはシート24が配設されている。シート24の下方で、メインフレームF1、上側パイプF5および下側パイプF6で囲まれる位置には、サイドカバー70が配設されている。シート24の後方に配設されるリヤフェンダ22には、尾灯装置21および左右一対の後側ウインカ装置20が取り付けられている。
【0033】
図2は、車体フレームFの斜視図である。また、図3はシートフレームSFの左側面図である。主に鋼管材を組み合わせて構成される車体フレームFは、ヘッドパイプF2の上方寄りの後面から後方下方に延びる左右一対のメインフレームF1と、ヘッドパイプF2の下方寄りの位置から後方下方に延びる左右一対のハンガフレームF3とを有する。左右のメインフレームF1の間は、車体前方側から、第1クロスパイプ26、第2クロスパイプ30、第3クロスパイプ32および第4クロスパイプ33によって互いに連結されている。左右のハンガフレームF3の間は、上側クロスパイプ28および下側クロスパイプ31によって互いに連結されている。メインフレームF1とハンガフレームF3との間は、トラス構造を構成する前側トラスパイプ27および後側トラスパイプ29によって互いに連結されている。第3クロスパイプ32と第4クロスパイプ33の間で、メインフレームF1の前面側には、ピボット14を支持する貫通孔14aが形成されたピボットフレームF4が溶着されている。
【0034】
メインフレームF1に溶着されるシートフレームSFは、前部分Aに対して後部分Bが着脱可能な分割式とされている。前部分Aは、左右一対の上側パイプF5および下側パイプF6を有する。左右の上側パイプF5の間は、燃料タンク2の後部ステーが取り付けられる燃料タンク支持部35によって連結されている。一方、下側パイプF6の下面には、タンデムステップホルダ17を支持するステップ支持部38が設けられており、ステップ支持部38の後方側にはリヤクッション23の上端部を支持するリヤクッション支持部37が設けられている。リヤクッション23の揺動軸37aを有するリヤクッション支持部37は、上側パイプF5と下側パイプF6との結合剛性を高めるガセットとしても機能する。
【0035】
本実施形態では、リヤクッション23の支持部を、シートフレームSFの前部分Aと後部分Bとの結合部から前方に離間した位置に設けることで、前部分Aと後部分Bとの結合部の剛性を最低限に抑えてデザイン自由度を高めることを可能としている。
【0036】
前部分Aの後端部Arには、車幅方向に指向するクロスプレート36が溶着されている。後部分Bは、前部分Aの後端部Arに係合する左右一対の係合部39と、係合部39の後端部に接続されるパイプ部材40とからなる。それぞれの係合部39には、車幅方向に指向する2つのねじ孔39aが形成されている。
【0037】
図4は、シートフレームSFを後方下方から見た斜視図である。後部分Bは、中実構造の係合部39の後端部に、グラブバーとして機能するパイプ部材40を溶着した構成とされる。一方、前部分Aの後端部Arは、係合部39が挿入可能な中空構造とされている。詳しくは、後端部Arは、平板状をなすクロスプレート36の中央部36aの両端から下方に延びる側壁36bと、この側壁36bに溶着される湾曲壁44とによって構成されている。側壁36bには、締結部材としてのボルト43が通る貫通孔36cが形成されている。本実施形態では、この中空構造の後端部Arに後部分Bの係合部39を挿入し、車幅方向内側からボルト43を螺合することで、前部分Aと後部分Bとを結合するように構成されている。係合部39は、円柱状の中実部材の一部を切り取って車幅方向内側に平面部39bを設けた構成とされている。また、クロスプレート36の中央部36aには、不図示のシートキャッチに係合するフックが通る貫通孔42が形成されている。
【0038】
上記したように、本発明に係るシートフレームSFによれば、シートフレームSFを、車体フレームFに固定される前部分Aと、前部分Aに対して着脱可能に取り付けられる後部分Bとに分割し、前部分Aと後部分Bとを車幅方向内側から係合されるボルト43によって固定するので、シートフレームSFの後部分Bが前部分Aに対して着脱可能とされることで、後部分Bのみを、デザイン性を重視したショートタイプや積載性を重視したロングタイプ等に容易に換装することが可能となる。これにより、シートフレームSFを一体成形する場合に比してシートフレームSFの設計自由度を高めることができる。また、ボルト43が車幅方向内側から係合されることで、ボルト43が外方から視認されることがなく、自動二輪車1の外観性を向上させることができる。
【0039】
図5は、前部分Aと後部分Bとの結合状態を示す断面図である。また、図6は後端部Arの構造を示す分解斜視図であり、図7図5のVII−VII線断面図である。図5では、車幅方向右側の後端部Arを水平方向に切断した状態を示している。
【0040】
前記したように、後部分Bは、中実構造の係合部39の後端部に、パイプ部材40を固定した構成とされる。係合部39の後端部には、小径の嵌合部39cが形成されており、後部分Bは、この嵌合部39cをパイプ部材40に挿入して外周部分を溶接することで構成される。これにより、係合部39の剛性を高めつつ後部分Bの軽量化を図ることを可能としている。また、ボルト43を係合部39に直接螺合することで前部分Aと後部分Bとの結合剛性を高めると共に、成形が容易なパイプ部材40を適用することで、後部分Bのデザイン自由度も高められる。
【0041】
また、後部分Bのパイプ部材40の直径φ2は、前部分Aを構成する上側パイプF5の直径φ1より小さく設定されている。これにより、前部分Aの剛性を確保すると共に、グラブバーやリヤキャリアを構成するパイプ部材40を小径化することでデザイン性を高めることを可能としている。
【0042】
図6に示すように、前部分Aの後端部Arを構成する湾曲壁44は、上側パイプF5の車幅方向内側の一部を切り取ることで形成されている。これにより、丸パイプ材の一部を切り取る簡単な加工によって湾曲壁44を構成して、生産工数を低減することが可能となる。前部分Aの後端部Arは、この湾曲壁44とクロスプレート36の側壁36bとをビード45に溶接することで構成されている。また、クロスプレート36の前壁36dの前側面に対して、上側パイプF5の後端面44bをビード46で溶接することで、さらに両者の結合剛性が高められる。このように、後端部Arの一部をクロスプレート36で構成することで、部品点数を低減しつつ剛性が高められている。
【0043】
また、ボルト43は、クロスプレート36の側壁36bの車幅方向から挿入されて中実構造の係合部39に螺合し、ボルト43を締め付けることで側壁36bの車幅方向外側面と係合部39の平面部39bとが面接触するため、ボルト43を外方に露出させることなく、両者を強固に結合することが可能である。
【0044】
図8は、後部分Bを別部品に換装した状態のシートフレームSFの斜視図である。この図では、パイプ部材40aをロングタイプのリヤキャリアとしているが、リヤボックスのステーや腰部のサポート部材を構成する等の種々の変形が可能である。このように、本発明に係るシートフレームSFによれば、種々の後部形状を有する後部分Bを容易に換装することが可能となる。
【0045】
なお、鞍乗型車両の形態、車体フレームの形状や構造、車体フレームを構成するパイプ材の太さ、シートフレームの前部分および後部分の形状や構造、係合部および後端部の形状や構造、締結部材の形態等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、後部分の後部分のパイプ部材を角パイプ部材としてもよい。本発明に係るシートフレームは、自動二輪車に限られず、低床フロアを有するスクータ型車両、2つの前輪または後輪を有する3輪車および4輪の鞍乗型車両等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、18…リヤクッション、F…車体フレーム、SF…シートフレーム、F5…上側パイプ(丸パイプ部材)、A…前部分、B…後部分、Ar…後端部、29…係合部、36…クロスプレート、36b…側壁、36c…貫通孔、37…リヤクッション支持部、39…係合部、39b…平面部、40,40a…パイプ部材、43…ボルト(締結部材)、44…湾曲壁、φ1…上側パイプの直径、φ2…後部分のパイプ部材の直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8