特許第6962668号(P6962668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962668
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】切断工具
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/22 20060101AFI20211025BHJP
   B25B 7/22 20060101ALI20211025BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B26B13/22
   B25B7/22
   H02G1/02
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-33072(P2016-33072)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-148221(P2017-148221A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年12月7日
【審判番号】不服2020-15925(P2020-15925/J1)
【審判請求日】2020年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】水取 賢祐
【合議体】
【審判長】 河端 賢
【審判官】 貞光 大樹
【審判官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−111827(JP,A)
【文献】 特開2003−170364(JP,A)
【文献】 特許第4862982(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B13/00-17/02
B26B27/00
B25B 1/00-11/02
H02G 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物切断部と、
対象物把持部と、
前記対象物切断部と前記対象物把持部とを連結する連結部材と、
付勢部材と
を具備し、
前記対象物切断部は、第1穴を有する第1刃体と、第2穴を有する第2刃体とを備え、
前記対象物把持部は、長穴である第3穴を有する第1把持部材と、第4穴を有する第2把持部材とを備え、
前記連結部材は、前記第1穴、前記第2穴、前記第3穴、および、前記第4穴に挿入される第1軸部材を備え、
前記第1軸部材は、前記長穴内の第1位置と前記長穴内の第2位置との間で移動可能であり、
前記付勢部材は、前記第1軸部材が前記第1位置に移動するように前記第1把持部材を付勢し(但し、前記付勢部材が、前記第2把持部材を付勢することを除く。)、
前記付勢部材の付勢により、前記第1軸部材が前記第1位置にある時は、前記第1軸部材が前記第2位置にある時と比較して、前記第1把持部材の第1把持面と前記第2把持部材の第2把持面との間の隙間が小さくなる
切断工具。
【請求項2】
前記第1把持部材と前記第1刃体とは、互いに連動して動くように構成され、
前記第2把持部材と前記第2刃体とは、互いに連動して動くように構成されている
請求項1に記載の切断工具。
【請求項3】
前記第1刃体と前記第2刃体とが、切断位置である閉位置にあり、かつ、前記第1軸部材が前記第1位置にある時、前記第1把持部材の第1把持面と前記第2把持部材の第2把持面との間には第1隙間が形成され、
前記第1刃体と前記第2刃体とが、切断位置である閉位置にあり、かつ、前記第1軸部材が前記第2位置にある時、前記第1把持部材の第1把持面と前記第2把持部材の第2把持面との間には第2隙間が形成され、
前記第1隙間の大きさは、前記第2隙間の大きさよりも小さい
請求項1または2に記載の切断工具。
【請求項4】
前記第1把持部材と前記第1刃体とは、前記連結部材とは異なる第2連結部材を介して連結されており、
前記第2把持部材と前記第2刃体とは、前記連結部材とは異なる第3連結部材を介して連結されている
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の切断工具。
【請求項5】
前記対象物切断部と前記対象物把持部との間に配置され、貫通穴を有する第1スペーサ部材を備え、
前記第1軸部材は、前記第1スペーサ部材の前記貫通穴に挿通されている
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の切断工具。
【請求項6】
前記付勢部材は、前記第1把持部材の背面に接触する板ばねを含む
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の切断工具。
【請求項7】
前記第1把持部材及び前記第1刃体のうちの少なくとも一方は、第1操作部によって回動自在に支持されており、
前記第2把持部材及び前記第2刃体のうちの少なくとも一方は、第2操作部によって回動自在に支持されている
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の切断工具。
【請求項8】
前記第1操作部には、他の工具を着脱自在に連結するための第1連結機構が設けられ、
前記第2操作部には、他の工具を着脱自在に連結するための第2連結機構が設けられている
請求項7に記載の切断工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物切断部と対象物把持部とを備える切断工具に関する。対象物は、例えば、高圧引下用架橋ポリエチレン絶縁電線(PDC:Plane transformer Drop wire Crosslinked polyethylene、以下、PD線と記載することがある。)等の線条類である。
【背景技術】
【0002】
架空敷設された線条類を切断するための切断工具が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特許第4862982号公報)には、一対の切断刃を有する切断部と、該一対の切断刃を開閉操作する操作部と、線条類を挟み付ける方向にばね付勢された一対の把持片を含む把持部とを有する切断工具が開示されている。特許文献1に記載の切断工具では、一対の切断刃の切断間隔の中央位置と、一対の把持片の把持間隔の中央位置とが略心合わせされた状態で切断操作が実行される。線条類の切断に際しては、まず、開放レバーの操作により、一対の把持片が互いに離間される。次に、一対の把持片間に、切断すべき線条類が配置される。続いて、開放レバーから手を離すことにより、一対の把持片によって、切断すべき線条類が把持される。その後、一対の把持片によって線条類が把持された状態で、操作部が操作され、一対の切断刃によって、線条類が切断される。切断刃によって切断された線条類の一方側が、一対の把持片によって保持され、切断刃によって切断された線条類の他方側が、片手で把持されているため、切断時に、線条類が跳ね返ることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4862982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、一対の切断刃を開閉操作する操作部と、開放レバー(第2の操作部)とが記載されている。2つの操作部を備える場合、片手で一方の操作部を持ち、他の片手で他方の操作部を操作する等の作業が必要となる可能性がある。また、特許文献1には、切断時に、線条類を片手で把持する例が記載されているが、線条類の種類によっては、線条類を直接、手で把持することができない場合もある。例えば、高電圧ケーブル等は、直接、手で把持することができない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、より簡易な操作で、対象物を把持しつつ、対象物を切断可能な切断工具を提供することにある。また、本発明の他の目的は、種々のサイズの対象物に対応可能な把持部を備えた切断工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す、切断工具に関する。
【0008】
(1)切断工具であって、
対象物切断部と、
対象物把持部と、
前記対象物切断部と前記対象物把持部とを連結する連結部材と、
付勢部材と
を具備し、
前記対象物切断部は、第1穴を有する第1刃体と、第2穴を有する第2刃体とを備え、
前記対象物把持部は、長穴である第3穴を有する第1把持部材と、第4穴を有する第2把持部材とを備え、
前記連結部材は、前記第1穴、前記第2穴、前記第3穴、および、前記第4穴に挿入される第1軸部材を備え、
前記第1軸部材は、前記長穴内の第1位置と前記長穴内の第2位置との間で移動可能であり、
前記付勢部材は、前記第1軸部材が前記第1位置に移動するように前記第1軸部材または前記第1把持部材を付勢する
切断工具。
(2)前記第1把持部材と前記第1刃体とは、互いに連動して動くように構成され、
前記第2把持部材と前記第2刃体とは、互いに連動して動くように構成されている
上記(1)に記載の切断工具。
(3)前記第1刃体と前記第2刃体とが、切断位置である閉位置にあり、かつ、前記第1軸部材が前記第1位置にある時、前記第1把持部材の第1把持面と前記第2把持部材の第2把持面との間には第1隙間が形成され、
前記第1刃体と前記第2刃体とが、切断位置である閉位置にあり、かつ、前記第1軸部材が前記第2位置にある時、前記第1把持部材の第1把持面と前記第2把持部材の第2把持面との間には第2隙間が形成され、
前記第1隙間の大きさは、前記第2隙間の大きさよりも小さい
上記(1)または(2)に記載の切断工具。
(4)前記第1把持部材と前記第1刃体とは、前記連結部材とは異なる第2連結部材を介して連結されており、
前記第2把持部材と前記第2刃体とは、前記連結部材とは異なる第3連結部材を介して連結されている
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の切断工具。
(5)前記対象物切断部と前記対象物把持部との間に配置され、貫通穴を有する第1スペーサ部材を備え、
前記第1軸部材は、前記第1スペーサ部材の前記貫通穴に挿通されている
上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の切断工具。
(6)前記付勢部材は、前記第1把持部材の背面に接触する板ばねを含む
上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の切断工具。
(7)前記第1把持部材及び前記第1刃体のうちの少なくとも一方は、第1操作部によって回動自在に支持されており、
前記第2把持部材及び前記第2刃体のうちの少なくとも一方は、第2操作部によって回動自在に支持されている
上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の切断工具。
(8)前記第1操作部には、他の工具を着脱自在に連結するための第1連結機構が設けられ、
前記第2操作部には、他の工具を着脱自在に連結するための第2連結機構が設けられている
上記(7)に記載の切断工具。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、より簡易な操作で、対象物を把持しつつ、対象物を切断可能な切断工具を提供できる。また、種々のサイズの対象物に対応可能な把持部を備えた切断工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態における切断工具の使用状態の一例を示す概略側面図である。
図2図2は、実施形態における切断工具の概略の分解斜視図である。
図3図3(A)は、実施形態における切断工具の概略側面図である。図3(B)は、実施形態における切断工具の概略正面図である。
図4図4は、実施形態における切断工具の概略側面図である。図4において、一対のジョーは開状態である。
図5図5(A)は、実施形態における切断工具の概略側面図である。図5(A)において、一対のジョーは、細径のケーブルを把持している。図5(B)は、実施形態における切断工具の概略正面図である。
図6図6(A)は、実施形態における切断工具の概略側面図である。図6(A)において、一対のジョーは、太径のケーブルを把持している。図6(B)は、実施形態における切断工具の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施形態における切断工具について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0012】
(実施形態)
図1乃至図6(B)を参照して、実施形態について説明する。図1は、実施形態における切断工具の使用状態の一例を示す概略側面図である。図1を参照して、切断工具1は、例えば、架空敷設されたPD線等の線条類W1を切断するために使用される。図1には、線条類W1の下方から鉛直上方に向けて、一対のジョーを移動させることにより、一対のジョー間に線条類W1が配置された様子が示されている。
【0013】
(切断工具1の概要)
図2は、切断工具1の概略の分解斜視図であり、図3(A)は、切断工具1の概略側面図であり、図3(B)は、切断工具1の概略正面図である。
【0014】
図2乃至図3(B)を参照して切断工具1の概要を説明する。切断工具1は、対象物切断部2と、対象物把持部4と、対象物切断部2と対象物把持部4とを連結する連結部材5と、付勢部材6とを具備する。図2には、対象物切断部2と、対象物把持部4と、連結部材5と、付勢部材6以外の任意付加的な部材も記載されている。なお、「対象物」は、「切断対象物」を意味し、「対象物」には、例えば、PD線等の線条類が含まれる。
【0015】
対象物切断部2は、第1刃体12と、第2刃体22とを備える。第1刃体12が、第1軸まわりに、第2刃体22に対して相対的に回動することにより、第1刃体12と第2刃体22とが閉状態(切断位置)、または、開状態(開放位置)になる。
【0016】
対象物把持部4は、第1把持部材32と第2把持部材42とを備える。第1把持部材32が、第1軸まわりに、第2把持部材42に対して相対的に回動することにより、第1把持部材32と第2把持部材42とが閉状態(把持位置)、または、開状態(開放位置)になる。
【0017】
対象物切断部2と対象物把持部4とは、第1軸に沿って配置される連結部材5によって連結される。対象物把持部4の第1把持部材32には、長穴33が設けられている。対象物把持部4が対象物を把持していない時、または、対象物把持部4が小径の対象物を把持している時、連結部材5は、長穴33の第1位置にある。他方、対象物把持部4が大径の対象物を把持している時、連結部材5は、長穴33の第2位置にある。当該長穴33の存在により、対象物把持部4は、対象物の径に依存することなく、対象物を効果的に把持することが可能である。また、当該長穴33の存在により、対象物が対象物把持部4に把持される際に、対象物が過剰に潰れるおそれがない。これらの効果が生じるメカニズムの詳細については、後述される。
【0018】
図2乃至図3(B)を参照して、切断工具1の各構成要素について、さらに詳細に説明する。
【0019】
(対象物切断部2)
対象物切断部2は、第1穴13を有する第1刃体12と、第2穴23を有する第2刃体22とを備える。第1刃体12は、第1刃部15(第1穴13よりも遠位側の部分)と、第1アーム14(第1穴13よりも近位側の部分)とを備える。第1刃体12の第1アーム14には、後述の第2軸部材71が挿入される第5穴16、および/または、後述の第1操作部110に回動自在に連結するための第9穴17が設けられてもよい。なお、図2に記載の例では、第9穴17は、第5穴16よりも近位側(第1刃部15から遠い側)に設けられている。
【0020】
第2刃体22は、第2刃部25(第2穴23よりも遠位側の部分)と、第2アーム24(第2穴23よりも近位側の部分)とを備える。第2刃体22の第2アーム24には、後述の第3軸部材81が挿入される第6穴26、および/または、後述の第2操作部120に回動自在に連結するための第10穴27が設けられてもよい。なお、図2に記載の例では、第10穴27は、第6穴26よりも近位側(第2刃部25から遠い側)に設けられている。
【0021】
(対象物把持部4)
対象物把持部4は、長穴である第3穴33を有する第1把持部材32と、第4穴43を有する第2把持部材42とを備える。第1把持部材32は、第1ジョー35(第3穴33よりも遠位側の部分)と、第1アーム34(第3穴33よりも近位側の部分)とを備える。第1ジョー35は、対象物を把持するための第1把持面37を備える。また、第1把持部材32の第1アーム34には、第2軸部材71が挿入される第7穴36が設けられてもよい。なお、第1刃体12の第1アーム14に第9穴17を設ける代わりに、第1把持部材32の第1アーム34に第9穴17が設けられてもよい。
【0022】
第2把持部材42は、第2ジョー45(第4穴43よりも遠位側の部分)と、第2アーム44(第4穴43よりも近位側の部分)とを備える。第2ジョー45は、対象物を把持するための第2把持面47を備える。また、第2把持部材42の第2アーム44には、第2軸部材81が挿入される第8穴46が設けられてもよい。なお、第2刃体22の第2アーム24に第10穴27を設ける代わりに、第2把持部材42の第2アーム44に第10穴27が設けられてもよい。
【0023】
長穴(第3穴33)の長軸は、第1把持部材32の背面39(第1ジョー35の第1把持面37とは反対側の面)から前面(第1ジョー35の第1把持面37が設けられる側の面)に向かう方向に沿って延びている。図2に記載の例では、第1把持部材32には、背面39とは反対側に突出する突出部38が設けられており、長穴(第3穴33)の一部は、突出部38の内部に達している。
【0024】
(連結部材5)
連結部材5は、第1穴13、第2穴23、第3穴33、および、第4穴43に挿入される第1軸部材51を備える。図2に記載の例では、第1軸部材51はボルトであり、当該ボルトと第1ナット55とが螺合することにより、対象物切断部2と対象物把持部4とが連結される。なお、図2に記載の例のように、対象物切断部2と対象物把持部4との間に第2ナット57が配置されてもよい。この場合、第1軸部材51と第2ナット55とは互いに螺合する。
【0025】
図2の破線枠内に図示されているように、第1軸部材51は、長穴内の第1位置から長穴内の第2位置に移動可能である。なお、第1軸部材51が、第2位置にある時には、当該第1軸部材は第1位置に移動するように付勢部材6によって付勢される。第2位置は、第1位置と比較して、第1把持部材32の背面39から遠い位置である。
【0026】
(付勢部材6)
付勢部材6は、第2位置にある第1軸部材51が、第1位置に向かって移動するように、第1軸部材51および/または第1把持部材32を付勢する部材である。図2に記載の例では、付勢部材6は、板ばねを含んでいる。また、付勢部材6には貫通穴63が設けられ、当該貫通穴63に第1軸部材51が挿通される。図2に記載の例では、板ばねが、第1把持部材32の背面39に接触することにより、第1軸部材51および/または第1把持部材32が押圧される。なお、付勢部材6としては、必ずしも板ばねを用いる必要はなく、任意の弾性体を用いることが可能である。
【0027】
(その他の部材)
図2に記載の例では、切断工具1は、対象物切断部2と対象物把持部4との間に配置され、貫通穴53を有する第1スペーサ部材52を備える。第1軸部材51は、第1スペーサ部材52の貫通穴53に挿通される。なお、図2に記載の例では、第1スペーサ52と第1軸部材51とは、互いに螺合されない。換言すれば、貫通穴53の内面には螺条は設けられていない。第1スペーサ部材52を備える場合、対象物切断部2と対象物把持部4との間の間隔が、所望の間隔に維持される。
【0028】
実施形態の切断工具1において、第1把持部材32と第1刃体12とは、互いに連動して動くように構成されることが好ましい。また、第2把持部材42と第2刃体32とは、互いに連動して動くように構成されることが好ましい。第1把持部材32と第1刃体12とが互いに連動して動き、かつ、第2把持部材42と第2刃体22とが互いに連動して動くことにより、切断動作(第1刃部15および第2刃部25の開閉動作)と、把持動作(第1ジョー35および第2ジョー45の開閉動作)とを連動させることが可能となる。その結果、1つの操作によって、対象物を把持するとともに、対象物を切断することが可能となる。また、操作部の数を減少させることが可能となる。
【0029】
図2に記載の例では、第1把持部材32の動きと第1刃体12の動きとを、互いに連動させるために、第1把持部材32と第1刃体12とが、連結部材5とは異なる第2連結部材7を介して連結される。第2連結部材7は、例えば、ボルト等の第2軸部材71を含む。第2軸部材71は、第1軸に平行な第2軸に沿って配置される。図2に記載の例では、第2連結部材7(第2軸部材71)は、第1刃体12に設けられた第5穴16、および、第1把持部材32に設けられた第7穴36に挿通される。また、第2連結部材7(第2軸部材71)に第3ナット75が螺合されることにより、第1把持部材32と第1刃体12とが互いに連結される。
【0030】
図2に記載の例では、切断工具1は、第1把持部材32と第1刃体12との間に配置され、貫通穴を有する第2スペーサ部材72を備える。第2軸部材71は、第2スペーサ部材72の貫通穴に挿通される。なお、図2に記載の例では、第2スペーサ部材72と第2軸部材71とは、互いに螺合されない。換言すれば、第2スペーサ部材72の貫通穴の内面には、螺条は設けられていない。第2スペーサ部材72を備える場合、第1把持部材32と第1刃体12との間の間隔が、所望の間隔に維持される。
【0031】
図2に記載の例では、第2把持部材42の動きと第2刃体22の動きとを、互いに連動させるために、第2把持部材42と第2刃体22とが、連結部材5とは異なる第3連結部材8を介して連結される。第3連結部材8は、例えば、ボルト等の第3軸部材81を含む。第3軸部材81は、第1軸に平行な第3軸に沿って配置される。図2に記載の例では、第3連結部材8(第3軸部材81)は、第2刃体22に設けられた第6穴26、および、第2把持部材42に設けられた第8穴46に挿通される。また、第3連結部材8(第3軸部材81)に第4ナット85が螺合されることにより、第2把持部材42と第2刃体22とが互いに連結される。
【0032】
図2に記載の例では、切断工具1は、第2把持部材42と第2刃体22との間に配置され、貫通穴を有する第3スペーサ部材82を備える。第3軸部材81は、第3スペーサ部材82の貫通穴に挿通される。なお、図2に記載の例では、第3スペーサ部材82と第3軸部材81とは、互いに螺合されない。換言すれば、第3スペーサ部材82の貫通穴の内面には、螺条は設けられていない。第3スペーサ部材82を備える場合、第2把持部材42と第2刃体22との間の間隔が、所望の間隔に維持される。
【0033】
図3(A)および図3(B)を参照して切断工具1の概要を更に説明する。切断工具1は、第1操作部110、および/または、第2操作部120を備えていてもよい。図3(A)は、切断工具1の概略側面図(図2における第1方向に沿って切断工具1を見た図)であり、図3(B)は、切断工具1の概略正面図(図3(A)における第2方向に沿って切断工具1を見た図)である。
【0034】
切断工具1が第1操作部110を備える場合、第1把持部材32または第1刃体12は、第1アーム(34および/または14)において、第1操作部110によって支持される。図3(A)に記載の例では、第1刃体12の近位端部(第5穴16よりも近位側の部分)が、第1操作部110によって回動自在に支持されている。より具体的には、第1操作部110の軸部材112が、第1刃体12の第9穴17(図2を参照)に挿入されることにより、第1刃体12が第1操作部110によって回動自在に支持されている。代替的に、第1把持部材32の近位端部(第7穴36よりも近位側の部分)が、第1操作部110によって、回動自在に支持されてもよいし、あるいは、第1刃体12の近位端部および第1把持部材32の近位端部の両者が、第1操作部110によって、回動自在に支持されてもよい。
【0035】
切断工具1が第2操作部120を備える場合、第2把持部材42または第2刃体22は、第2アーム(44および/または24)において、第2操作部120によって支持される。図3(A)に記載の例では、第2刃体22の近位端部(第6穴26よりも近位側の部分)が、第2操作部120によって回動自在に支持されている。より具体的には、第2操作部120の軸部材122が、第2刃体22の第10穴27(図2を参照)に挿入されることにより、第2刃体22が第2操作部120によって回動自在に支持されている。代替的に、第2把持部材42の近位端部(第8穴46よりも近位側の部分)が、第2操作部120によって、回動自在に支持されてもよいし、あるいは、第2刃体22の近位端部および第2把持部材42の近位端部の両者が、第2操作部120によって、回動自在に支持されてもよい。
【0036】
第1操作部110と第1アーム(34および/または14)とが互いに回動自在であり、第2操作部120と第2アーム(44および/または24)とが互いに回動自在であることにより、第1操作部110および第2操作部120が操作される際の操作ストロークを小さくすることが可能となる。
【0037】
さらに、図3(A)および図3(B)に記載の例では、第1操作部110には、他の工具を着脱自在に連結するための第1連結機構が設けられ、第2操作部120には、他の工具を着脱自在に連結するための第2連結機構が設けられている。
【0038】
図3(A)に記載の例では、第1連結機構は、他の工具を受け入れるための第1凹部114と、他の工具と第1操作部110との間の係合または係合解除を操作する第1操作摘み116とを含む。例えば、第1操作摘み116を操作することにより、係合ピン(図示せず)が、第1凹部114内に進出するようにしてもよい。この場合、進出した係合ピンと、他の工具の凹部との係合により、他の工具が第1操作部110に連結される。
【0039】
同様に、図3(A)に記載の例では、第2連結機構は、他の工具を受け入れるための第2凹部124と、他の工具と第2操作部120との間の係合または係合解除を操作する第2操作摘み126とを含む。例えば、第2操作摘み126を操作することにより、係合ピン(図示せず)が、第2凹部124内に進出するようにしてもよい。この場合、進出した係合ピンと、他の工具の凹部との係合により、他の工具が第2操作部120に連結される。
【0040】
切断工具1の操作部が、他の工具を着脱自在に連結するための連結機構を備える場合には、他の工具を用いて切断工具1を遠隔操作することが可能となる。このため、対象物の切断位置が、作業者から遠い位置にある場合であっても、的確に、切断作業を遂行することが可能となる。他の工具は、第1操作部110と第2操作部120を操作することができれば特に制限は無く、例えば、間接活線工具(特開2008−206253号公報参照)等が挙げられる。第1操作部110及び第2操作部120を、間接活線工具の固定把持片及び可動把持片に係合すればよい。
【0041】
(切断工具1を用いた切断方法)
続いて、図4乃至図6(B)を参照して、実施形態における切断工具1を用いた切断方法(把持および切断動作)について説明する。図4は、切断工具1の概略側面図である。図4において、一対のジョー(35、45)は開状態である。図5(A)は、切断工具1の概略側面図であり、図5(B)は、切断工具1の概略正面図である。図5(A)および図5(B)において、一対のジョー(35、45)は、細径の線条類W1を把持している。図6(A)は、切断工具1の概略側面図であり、図6(B)は、切断工具1の概略正面図である。図6(A)および図6(B)において、一対のジョー(35、45)は、太径の線条類W2を把持している。
【0042】
図4に示すように、第1ステップS1において、第1把持部材32と第2把持部材42とが開状態(開放位置)になり、第1刃体12と第2刃体22とが開状態(開放位置)になるように、切断工具1が操作される。当該操作は、第1アーム34(および/または、第1アーム14)、および、第2アーム44(および/または、第2アーム24)を操作することにより行われてもよいし、第1操作部110および第2操作部120を操作することにより行われてもよいし、操作部(第1操作部110、第2操作部120)に連結された他の工具を操作することにより行われてもよい。
【0043】
第2ステップS2において、第1ジョー35と第2ジョー45との間に対象物(例えば、細径の線条類W1または太径の線条類W2)が配置され、かつ、第1刃部15と第2刃部25との間に対象物(例えば、細径の線条類W1または太径の線条類W2)が配置される。
【0044】
図5(A)および図5(B)、または、図6(A)および図6(B)に示すように、第3ステップS3において、第1把持部材32と第2把持部材42とが閉状態(把持位置)になり、第1刃体12と第2刃体22とが閉状態(切断位置)になるように、切断工具1が操作される。当該操作は、第1アーム34(および/または、第1アーム14)、および、第2アーム44(および/または、第2アーム24)を操作することにより行われてもよいし、第1操作部110および第2操作部120を操作することにより行われてもよいし、操作部(第1操作部110、第2操作部120)に連結された他の工具を操作することにより行われてもよい。なお、切断工具1の操作により、第1アーム34と第2アーム44とは互いに接近する方向に移動し、第1アーム14(および第1操作部110)と第2アーム24(および第2操作部120)とは互いに接近する方向に移動する。第3ステップS3における切断工具1の操作により、対象物(例えば、細径の線条類W1または太径の線条類W2)は、対象物把持部4によって把持されるとともに、対象物切断部2によって切断される。
【0045】
実施形態における切断方法では、第1把持部材32と第2把持部材42とが開状態(開放位置)になり、第1刃体12と第2刃体22とが開状態(開放位置)になるように、切断工具1を操作する第1ステップS1と、第1ジョー35と第2ジョー45との間に対象物(例えば、細径の線条類W1または太径の線条類W2)を配置し、かつ、第1刃部15と第2刃部25との間に対象物を配置する第2ステップS2と、第1把持部材32と第2把持部材42とが閉状態(把持位置)になり、第1刃体12と第2刃体22とが閉状態(切断位置)になるように、切断工具1を操作する第3ステップS3によって、対象物を把持しつつ切断することが可能である。すなわち、実施形態における切断方法では、簡易な操作で、対象物を把持しつつ切断することが可能である。
【0046】
図5(A)および図5(B)は、第3ステップS3の実行後における切断工具1の状態を示す。図5(A)および図5(B)に記載の例では、第1ジョー35の第1把持面37と、第2ジョー45の第2把持面47との間で、細径の線条類W1が把持されている。図5(A)および図5(B)に記載の状態では、細径の線条類W1は、一対の切断刃部(15、25)によって、切断されている(図示されず)。第1ジョー35および第2ジョー45は、一対の切断刃部(15、25)による線条類W1の切断の前後において、切断箇所の一方側の線条類W1を把持する。なお、切断箇所の他方側の線条類W1は、切断工具1とは異なる把持工具によって把持されていてもよい。
【0047】
図5(A)および図5(B)に記載の状態において、第1把持部材32の背面39は、付勢部材6によって、押圧付勢されている。その結果、第1軸部材51は、第1位置に位置する。第1把持部材32と第2把持部材42とが、把持位置である閉位置にあり(換言すれば、第1刃体12と第2刃体22とが、切断位置である閉位置にあり)、かつ、第1軸部材51が第1位置にある時、第1把持部材32の第1把持面37と第2把持部材42の第2把持面47との間には、第1隙間が形成される。第1隙間は、相対的に小さな隙間であり、小径の線条類が効果的に把持されるのに適している。
【0048】
図6(A)および図6(B)は、第3ステップS3の実行後における切断工具1の状態を示す。図6(A)および図6(B)に記載の例では、第1ジョー35の第1把持面37と、第2ジョー45の第2把持面47との間で、太径の線条類W2が把持されている。図6(A)および図6(B)に記載の状態では、太径の線条類W2は、一対の切断刃部(15、25)によって、切断されている(図示されず)。第1ジョー35および第2ジョー45は、一対の切断刃部(15、25)による線条類W2の切断の前後において、切断箇所の一方側の線条類W2を把持する。なお、切断箇所の他方側の線条類W2は、切断工具1とは異なる把持工具によって把持されていてもよい。
【0049】
図6(A)および図6(B)に記載の状態において、第1把持部材32の背面39は、付勢部材6によって、押圧付勢されている。しかし、第1把持面37と第2把持面47との間に太径の線条類W2が介在しているため、第1ジョー35と第2ジョー45とは、付勢部材6による付勢力に抗して、離間されている。その結果、第1軸部材51は、第2位置に位置している。第1把持部材32と第2把持部材42とが、把持位置である閉位置にあり(換言すれば、第1刃体12と第2刃体22とが、切断位置である閉位置にあり)、かつ、第1軸部材51が第2位置にある時、第1把持部材32の第1把持面37と第2把持部材42の第2把持面47との間には、第2隙間が形成される。第2隙間は、相対的に大きな隙間(第1隙間よりも大きな隙間)であり、大径の線条類W2が効果的に把持されるのに適している。そして、線条類が、細径の線条類W1より太く、太径の線条類W2より細い場合は、第1軸部材51は第1位置と第2位置の間に位置する。つまり、線条類の径に応じて、第1軸部材51は、第1位置と第2位置との間で移動することができることから、異なる径の線条類を、効果的に把持することができる。
【0050】
実施形態の切断工具1では、第1把持部材32が、長穴である第3穴33を備える。このため、対象物把持部4が小径の対象物を把持する時には、小さな第1隙間が形成される。その結果、小径の対象物が効果的に把持される。また、対象物把持部4が大径の対象物を把持する時には、大きな第2隙間が形成される。このため、把持に際して、大径の対象物が過剰に潰れることが抑制される。その結果、大径の対象物の損傷が回避される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の切断工具を用いると、より簡易な操作で、対象物を把持しつつ、対象物を切断することが可能である。したがって、対象物の設置業者、対象物の補修業者、あるいは、対象物の撤去業者にとって有用である。
【符号の説明】
【0052】
1…切断工具、2…対象物切断部、4…対象物把持部、5…連結部材、6…付勢部材、7…第2連結部材、8…第3連結部材、12…第1刃体、13…第1穴、14…第1アーム、15…第1刃部、16…第5穴、17…第9穴、22…第2刃体、23…第2穴、24…第2アーム、25…第2刃部、26…第6穴、27…第10穴、32…第1把持部材、33…第3穴、34…第1アーム、35…第1ジョー、36…第7穴、37…第1把持面、38…突出部、39…背面、42…第2把持部材、43…第4穴、44…第2アーム、45…第2ジョー、46…第8穴、47…第2把持面、51…第1軸部材、52…第1スペーサ部材、53…貫通穴、55…第1ナット、57…第2ナット、63…貫通穴、71…第2軸部材、72…第2スペーサ部材、75…第3ナット、81…第3軸部材、82…第3スペーサ部材、85…第4ナット、110…第1操作部、112…軸部材、114…第1凹部、116…第1操作摘み、120…第2操作部、122…軸部材、124…第2凹部、126…第2操作摘み、W1…細径の線条類、W2…太径の線条類
図1
図2
図3
図4
図5
図6