(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(C−1)成分または前記(C−2)成分の各々において、ホウ素化コハク酸イミド化合物の質量に対するホウ素の含有量が0.1〜3質量%である、請求項1〜3のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、低粘度化した場合においても金属間摩擦係数を低下させることなくシャダー防止寿命を延長された潤滑油組成物を提供することを第一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を進めた結果、無灰分散剤として、特定の質量平均分子量を有する2種類のコハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物を組合せ、さらにリン系極圧剤を併用することにより、低粘度化した場合においても金属間摩擦係数を低下させることなくシャダー防止寿命を延長できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(A)潤滑油基油、
(C)(C−1)質量平均分子量4,000〜7,000のコハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物、
(C−2)質量平均分子量7,000超〜10,000のコハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物、及び
(D)リン系極圧剤を含むことを特徴とする潤滑油組成物であって
該潤滑油組成物はジチオリン酸亜鉛を含まず、かつ硫黄系極圧剤を任意で含んでいてもよく、但し該硫黄系極圧剤の含有量は潤滑油組成物中に0.1質量%以下である、前記潤滑油組成物である。
【0009】
また、燃費向上のためには、高温(例えば100℃)での粘度をできるだけ維持しつつ、燃費に影響する低温(例えば40℃)の粘度を低減すること、すなわち高い粘度指数が求められるが、従来の無段変速機潤滑油組成物では、機械的せん断により基油や粘度指数向上剤の高分子鎖が切断され、走行に伴い高温粘度の低下を招くという問題がある。
【0010】
本発明者らは上記潤滑油組成物においてさらに潤滑油基油と粘度指数向上剤の構成を特定することにより、金属間摩擦係数を低下させることなくシャダー防止寿命を延長する効果に加えて、せん断安定性を向上することができることを見出した。
すなわち、本発明はさらに、
(A)潤滑油基油、
(C)(C−1)質量平均分子量4,000〜7,000のコハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物、
(C−2)質量平均分子量7,000超〜10,000のコハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物、及び
(D)リン系極圧剤を含むことを特徴とする潤滑油組成物であって
該潤滑油組成物はジチオリン酸亜鉛を含まず、かつ硫黄系極圧剤を任意で含んでいてもよく、但し該硫黄系極圧剤の含有量は潤滑油組成物中に0.1質量%以下であり、
前記(A)成分の一部又は全部として、100℃での動粘度6〜80mm
2/sを有するポリα−オレフィン又はα−オレフィン共重合体を、潤滑油組成物全体の質量に対して5〜30質量%で含有し、及び
(B)質量平均分子量15,000〜40,000を有するポリメタクリレートをさらに含む、潤滑油組成物を提供する。
【0011】
さらに本発明の潤滑油組成物の好適な態様は、下記(1)〜(10)の少なくとも1の特徴を有する。
(1)(C−1)成分及び(C−2)成分の一部または全部がホウ素化コハク酸イミド化合物である。
(2)前記(C−1)成分及び前記(C−2)成分が、各々、ホウ素を前記(C−1)成分または前記(C−2)成分の質量に対して0.1〜3質量%の量で含有する。
(3)コハク酸イミド化合物が下記式(1)又は(2)で表される。
【化1】
【化2】
上記式において、R
1は互いに独立に炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基であり、mは1〜20の整数であり、nは0〜20の整数である。
(4)100℃における動粘度3〜10mm
2/sを有する。
(5)粘度指数150以上を有する。
(6)(D)リン系極圧剤が、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、及びこれらのアミン塩、リン酸、及び亜リン酸から選ばれる少なくとも1種以上である。
(7)(D)リン系極圧剤が、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、及びこれらのアミン塩の中から選ばれる少なくとも1種以上と、リン酸及び亜リン酸から選ばれる少なくとも1種以上との組合せである。
(8)さらに、(E)金属清浄剤を含有する。
(9)さらに、(F)エーテルスルホラン化合物を含有する。
(10)無段変速機用である。
【0012】
特には、上記潤滑油組成物は、前記(A)成分の一部又は全部として、100℃での動粘度6〜80mm
2/sを有するポリα−オレフィン又はα−オレフィン共重合体を、潤滑油組成物全体の質量に対して5〜30質量%で含有し、且つ、(E)エーテルスルホラン化合物を含有するのが好ましい。合成基油は鉱物油に比べてパッキンやガスケットと呼ばれるオイルシールゴムとの親和性が低く、また、高分子量(高粘度)基油ほどその親和性は低くなる。親和性が低いとシールゴムの膨潤が低下し、逆に収縮しやすくなる。これによりシール性が低下し油漏れを起こすという問題がある。本発明の潤滑油組成物を当該構成とすることにより、シールゴムの膨潤性をより確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の潤滑油組成物は、金属間摩擦係数を低下させることなくシャダー防止寿命を延長することができる。当該効果は潤滑油組成物の100℃での動粘度を5.0程度にまで下げたとしても達成できる。また本発明によれば、当該効果に加えてさらに、せん断安定性を向上した潤滑油組成物を提供することができる。さらには、シールゴムの膨潤性を確保することもできる。本発明の潤滑油組成物は無段変速機用潤滑油組成物として特に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)潤滑油基油
本発明における潤滑油基油としては従来公知の潤滑油基油を使用でき、鉱油、合成油、あるいはこれらの混合油がある。特には、潤滑油基油の一部又は全部として、100℃での動粘度6〜80mm
2/sを有するポリα−オレフィン又はα−オレフィン共重合体を、潤滑油組成物全体の質量に対して5〜30質量%含有するのが好ましく、より好ましくは、下限は6質量%、より好ましくは8質量%であり、上限は25質量%、より好ましくは20質量%である。前記基油の含有量が前記下限値未満では十分な粘度指数、すなわち省燃費性と機械要素への保護性能の両立が得られず、前記上限値超ではせん断安定性の低下やゴムの適合性の悪化(ゴムの収縮)が起きるおそれがある。
【0016】
ポリα−オレフィン及びα−オレフィン共重合体は、100℃での動粘度6〜80mm
2/sを有するのがよく、好ましくは8〜80mm
2/sであり、より好ましくは8〜60mm
2/sであり、さらに好ましくは9〜40mm
2/sであるのがよい。100℃での動粘度が前記下限値未満では、粘度指数、すなわち省燃費性と機械要素への保護性能の両立が得られず、100℃での動粘度が前記上限値超では、せん断安定性やゴムの適合性が悪化(ゴムの収縮)するため好ましくない。
【0017】
ポリα−オレフィン又はα−オレフィン共重合体は、α−オレフィンの(コ)ポリマー又は(コ)オリゴマーであり、上記動粘度を有するものであればよく、潤滑油基油として従来公知のものを使用できる。α−オレフィンは、例えば、炭素数2〜14、好ましくは炭素数4〜12の直鎖又は分岐のオレフィン炭化水素から選ばれるものである。例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー、イソブテンオリゴマー並びにこれらの水素化物が挙げられる。また、ポリα−オレフィン又はα−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を用いて製造されたものであってもよい。該(コ)ポリマー又は(コ)オリゴマーの質量平均分子量は、100℃での動粘度が上記範囲を満たすものであればよい。例えば質量平均分子量1,000〜10,000、好ましくは1,100〜7,000を有するものである。ポリα−オレフィン又はα−オレフィン共重合体は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明の潤滑油組成物は、上記ポリα−オレフィン又はα−オレフィン共重合体と併用して他の潤滑油基油を含んでよい。これらの潤滑油基油は特に制限されるものでなく、従来公知の鉱油系基油及び上記ポリα−オレフィン及びα−オレフィン共重合体以外の合成系基油が使用できる。
【0019】
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製した、パラフィン系、ナフテン系等の潤滑油基油や、溶剤脱ロウで得たワックスを異性化、脱ろうして得られる潤滑油基油が挙げられる。該鉱油系基油の動粘度は特に制限されるものでないが、低粘度を有する潤滑油組成物を得るためには、1〜5mm
2/sであるのが好ましい。
【0020】
合成系基油としては、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル並びにGTL基油等が使用できる。該合成系基油の動粘度は特に制限されるものでない。また、100℃での動粘度が6mm
2/s未満又は80mm
2/s超であるポリα−オレフィン又はα−オレフィン共重合体を使用することも可能である。低粘度を有する潤滑油組成物を得るためには、合成系基油の動粘度は1〜6mm
2/sであるのが好ましい。
【0021】
上記併用できる基油は、1種を単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。2種以上を使用する場合、2種以上の鉱油系基油の使用、2種以上の合成系基油の使用、及び1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油の使用が可能である。中でも、鉱油系基油の単独使用、2種以上の鉱油系基油の使用、100℃の動粘度が1〜6mm
2/s未満である合成系基油の単独使用、100℃の動粘度が1〜6mm
2/s未満である2種以上の合成系基油の使用が好適である。
【0022】
また、低粘度を有する潤滑油組成物を得るためには、潤滑油基油全体として、100℃での動粘度2〜7mm
2/s、好ましくは2.3〜6mm
2/s、特には2.5〜5.6mm
2/sを有することが好ましい。
【0023】
(B)粘度指数向上剤
本発明の潤滑油組成物は従来公知の粘度指数向上剤を含有することができる。好ましくは、粘度指数向上剤として質量平均分子量15,000〜40,000を有するポリメタクリレートを含むのが好ましい。質量平均分子量の下限は、好ましくは17,000、より好ましくは18,000であるのがよい。質量平均分子量の上限は、好ましくは38,000、より好ましくは36,000であるのがよい。質量平均分子量が前記下限値未満であると、粘度指数向上の効果が不十分であり、質量平均分子量が前記上限値超である場合には、粘度指数向上の効果は得られるものの、せん断安定性が悪化するため好ましくない。前記ポリメタクリレートの含有量は限定的ではないが、潤滑油組成物中0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%がさらに好ましい。
【0024】
ポリメタクリレートは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の含有量は限定的ではない。ポリメタクリレートの合計含有量が潤滑油組成物中0.1〜20質量%となる量が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%がさらに好ましい。
【0025】
本発明の潤滑油組成物は、上記ポリメタクリレートと併せて他の粘度指数向上剤を含んでもよい。当該他の粘度指数向上剤としては、質量平均分子量が15,000未満のポリメタクリレート、質量平均分子量が40,000超であるポリメタクリレート、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレンが挙げられる。他の粘度指数向上剤を含む場合の配合量は、潤滑油組成物中に0.1〜15質量%となる量が好ましい。
【0026】
(C)コハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物
本発明の潤滑油組成物は、無灰分散剤として、2種類の特定のコハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物を含むことを特徴とする。すなわち本発明は、潤滑油組成物が、(C−1)質量平均分子量4,000〜7,000、好ましくは5,000〜7,000、を有するコハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物と、(C−2)質量平均分子量7,000超〜10,000、好ましくは7,100〜9,600、を有するコハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物とを組合せて含むことを特徴とする。以下において、上記(C−1)成分を第1のコハク酸イミド化合物といい、上記(C−2)成分を第2のコハク酸イミド化合物ということがある。上記(C−1)成分及び上記(C−2)成分のうち少なくとも一方が、その一部又は全部がホウ素化コハク酸イミド化合物であってよい。また(C−1)成分及び(C−2)成分のいずれもがホウ素化コハク酸イミド化合物であってもよい。
【0027】
(C)成分は好ましくは、組成物全体に対し0.5〜3質量%、より好ましくは0.6〜2.5質量%、さらに好ましくは0.9〜2質量%の量で組成物に含有される。上記下限未満では、シャダー防止性が確保できなくなる可能性がある。上記上限超では、低温における粘度が高くなる可能性がある。
【0028】
(C−1)成分と(C−2)成分との質量比は、限定的ではないが、(C−2)/(C−1)=1〜10が好ましく、1.5〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。上記範囲となる比で含有することにより、摩擦係数とシャダー特性との両立を図ることができる。(C−2)の量比が上記上限値超では、(C−1)成分の量が少なすぎ、シャダー防止性において低温、例えば40℃での特性が不十分であり、耐久試験の中で早期に顕在化するという問題が生じる。(C−2)の量比が上記下限値未満では、高温、例えば120℃での特性が不十分で耐久試験の中で早期に顕在化するという問題が生じる。
【0029】
本発明における第1及び第2のコハク酸イミド化合物は、無灰分散剤として公知のコハク酸イミド化合物またはホウ素化コハク酸イミド化合物であってよい。ホウ素化コハク酸イミド化合物とは、アルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド化合物を、ホウ酸又はホウ酸塩等のホウ素化合物で変性した(ホウ素化した)ものが挙げられる。アルキル基又はアルケニル基とは、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィン、またはそのオリゴマー、及びエチレンとプロピレンのコオリゴマーなどが挙げられる。
【0030】
コハク酸イミド化合物とは、より詳細には、ポリアミンに無水コハク酸が付加した化合物である。モノタイプのコハク酸イミド化合物及びビスタイプのコハク酸イミド化合物があり、いずれも使用することができる。モノタイプのコハク酸イミド化合物は例えば下記式(1)で表すことができる。ビスタイプのコハク酸イミド化合物は例えば下記式(2)で表すことができる。
【化3】
【化4】
上記式において、R
1は互いに独立に炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基であり、mは1〜20の整数であり、nは0〜20の整数である。特にはビスタイプのコハク酸イミド化合物が好ましい。コハク酸イミド化合物は、モノタイプ及びビスタイプの併用、2種以上のモノタイプの併用、2種以上のビスタイプの併用であってもよい。
【0031】
ホウ素化コハク酸イミド化合物とは、上記式で表されるようなコハク酸イミド化合物とホウ素化合物とを反応して得られた化合物である。ホウ素化合物とは、ホウ酸、ホウ酸無水物、ホウ酸エステル、酸化ホウ素、及びハロゲン化ホウ素などである。ホウ素化コハク酸イミド化合物は1種単独であっても、2種以上の組合せであってもよい。
【0032】
本発明の潤滑油組成物において、第一及び第二のコハク酸イミド化合物は各々、その一部又は全部がホウ素化コハク酸イミド化合物であってよい。すなわち、本発明における第一及び第二のコハク酸イミド化合物は、互いに独立に、ホウ素化されていないコハク酸イミド化合物の単独又は2種以上、ホウ素化コハク酸イミド化合物の単独又は2種以上、及びホウ素化されていないコハク酸イミド化合物1種以上とホウ素化コハク酸イミド化合物1種以上との組み合わせ、から選ばれるいずれであってもよい。(C−1)成分及び(C−2)成分の各々において、ホウ素化コハク酸イミド化合物の割合は特に制限されないが、各々の成分の質量に対して5〜100質量%が好ましく、さらには20〜100質量%が好ましく、さらには50〜100質量%が好ましい。
【0033】
(C−1)第1のコハク酸イミド化合物は、質量平均分子量4,000〜7,000を有する。該質量平均分子量は、好ましくは5,000〜7,000であり、さらに好ましくは5,200〜6,800であるのがよい。第1のコハク酸イミド化合物の分子量が4,000未満であると、シャダー特性が悪化する。尚、本発明において、第1のコハク酸イミド化合物の質量平均分子量は、溶媒:THF(テトラヒドロフラン)、充填カラム:スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、設定温度:40℃、設定流量1.0ml/分で、RI(示差屈折)検出器にて測定された、ポリスチレン換算の値である。
【0034】
第1のコハク酸イミド化合物としてホウ素化コハク酸イミド化合物を使用する場合における、(C−1)成分中のホウ素含有量は、限定的ではないが、(C−1)成分であるホウ素化コハク酸イミド化合物の質量に対して0.1〜3質量%が好ましく、さらには0.2〜2.5質量%が好ましく、さらには0.2〜2質量%が好ましく、特には0.2〜1.5質量%が好ましい。(C−1)成分中の窒素含有量は、限定的ではないが、(C−1)成分であるホウ素化コハク酸イミド化合物の質量に対して0.3〜10質量%が好ましく、さらには0.5〜5質量%が好ましく、特には0.8〜2.5質量%が好ましい。
【0035】
潤滑油組成物中における第1のコハク酸イミド化合物の含有量は、限定的ではないが、潤滑油組成物の質量全体に対して0.05〜2質量%が好ましく、0.08〜1.8質量%がより好ましく、0.1〜1.5質量%がさらに好ましい。含有量が前記下限値未満では十分な清浄性が確保できない可能性があり、前記上限値を超えるとスラッジが発生する可能性がある。
【0036】
(C−2)第2のコハク酸イミド化合物は、質量平均分子量7,000超〜10,000を有する。該質量平均分子量は、好ましくは7,100〜9,600であり、さらに好ましくは7,500〜9,200であるのがよい。第2のコハク酸イミド化合物の分子量が10,000超であると、低温粘度が悪化する。
尚、本発明において、第2のコハク酸イミド化合物の質量平均分子量は、溶媒:THF(テトラヒドロフラン)、充填カラム:スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、設定温度:40℃、設定流量1.0ml/分で、RI(示差屈折)検出器にて測定された、ポリスチレン換算の値である。
【0037】
第2のコハク酸イミド化合物においてホウ素化コハク酸イミド化合物を使用する場合、(C−2)成分中のホウ素含有量は、限定的ではないが、(C−2)成分であるホウ素化コハク酸イミド化合物の質量に対してホウ素含有量が0.1〜3質量%が好ましく、さらには0.2〜2.5質量%が好ましく、さらには0.2〜2質量%が好ましく、特には0.2〜1.5質量%が好ましい。(C−2)成分中の窒素含有量は、限定的ではないが、(C−2)成分であるホウ素化コハク酸イミド化合物の質量に対して0.2〜5質量%が好ましく、さらには0.3〜2.5質量%が好ましく、特には0.5〜2質量%が好ましい。
【0038】
潤滑油組成物中における第2のコハク酸イミド化合物の含有量は、限定的ではないが、0.05〜2質量%が好ましく、0.08〜1.8質量%がより好ましく、0.1〜1.5質量%がさらに好ましい。前記下限値未満では十分な清浄性が確保できない可能性があり、前記上限値を超えると低温粘度が発生する。
【0039】
本発明の潤滑剤組成物は、上記(C−1)成分及び上記(C−2)成分と併用して、他の無灰分散剤をさらに含有することができる。他の無灰分散剤として典型的には、コハク酸アミド化合物が挙げられる。
【0040】
(D)リン系極圧剤
本発明の潤滑油組成物は(D)リン系極圧剤を必須に含有する。該リン系極圧剤とはリンを有する極圧剤であり、従来公知のものであってよい。潤滑油組成物におけるリン系極圧剤の含有量は、限定的ではないが、潤滑油組成物全体の質量に対して0.01〜2.5質量%が好ましく、0.02〜1.5質量%がより好ましく、0.02〜1.0質量%であることがさらに好ましい。本発明におけるリン系極圧剤は硫黄を有していてもよく、チオリン酸エステル等のリン−硫黄系極圧剤はリン系極圧剤に包含され、後述する硫黄系極圧剤には包含されない。但し、本発明においてリン系極圧剤はジチオリン酸亜鉛を包含しない。特に好ましくは、本発明におけるリン系極圧剤は金属元素を有さない。
【0041】
本発明の潤滑油組成物は、上記リン系極圧剤に加えて硫黄系極圧剤をさらに含有してもよい。該硫黄系極圧剤とは硫黄を有する極圧剤であり、従来公知のものであってよい。また、上記の通り本発明の潤滑油組成物はジチオリン酸亜鉛を含まない。従って、本発明における硫黄系極圧剤はジチオリン酸亜鉛を包含しない。特に好ましくは、本発明における硫黄系極圧剤は金属元素を有さない。本発明の潤滑油組成物における該硫黄系極圧剤の含有量は、潤滑油組成物中0.1質量%以下、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.06質量%以下となる量である。潤滑油組成物が硫黄系極圧剤を潤滑油組成物中に上記上限値超となる量で含有すると、シャダー特性が悪くなる。
【0042】
上記の通り本発明の潤滑油組成物はジチオリン酸亜鉛を含まない。ジチオリン酸亜鉛が潤滑油組成物中に存在すると、潤滑油組成物のシャダー特性を悪化させるからである。
【0043】
リン系極圧剤としては、好ましくは、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、及びこれらのアミン塩、リン酸、及び亜リン酸が挙げられる。これらは1種単独であっても、2種以上の併用であってもよい。特に好ましくは、リン系極圧剤は、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩の中から選択される少なくとも1種以上と、リン酸及び亜リン酸から選ばれる少なくとも1種以上の組合せである。これらリン系極圧剤に加えて硫黄系極圧剤を含んでいてよいが、その含有量は上述した条件を満たす必要がある。
【0044】
リン酸エステル及び酸性リン酸エステルは(R
1O)
aP(=O)(OH)
3−aで表される。aは0、1、2、又は3である。R
1は互いに独立に、炭素数4〜30の一価炭化水素基である。ここで、a=1又は2の場合が酸性リン酸エステルとなる。
【0045】
亜リン酸エステル及び酸性亜リン酸エステルは(R
2O)
bP(=O)(OH)
2−bHで表される。bは0、1、又は2である。R
2は互いに独立に、炭素数4〜30の一価炭化水素基である。
【0046】
リン酸エステル及び酸性リン酸エステルは、好ましくはリン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、及びリン酸トリアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
【0047】
亜リン酸エステル及び酸性亜リン酸エステルは、好ましくは亜リン酸モノアルキルエステル及び亜リン酸ジアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
また、リン系極圧剤として、上述したリン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル又は酸性亜リン酸エステルの一部の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物、例えば、チオリン酸エステル、チオ亜リン酸エステル、酸性チオリン酸エステル、及び、酸性チオ亜リン酸エステルも包含する。
【0049】
より詳細には、リン酸モノオクチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリオクチル、亜リン酸モノオクチル、亜リン酸ジオクチル、チオリン酸モノオクチル、チオリン酸ジオクチル、チオリン酸トリオクチル、チオ亜リン酸モノオクチル、チオ亜リン酸ジオクチル、リン酸モノドデシル、リン酸ジドデシル、リン酸トリドデシル、亜リン酸モノドデシル、亜リン酸ジドデシル、酸性リン酸ブチルエステル、酸性リン酸ヘキシルエステル、酸性リン酸オクチルエステル、酸性リン酸ドデシルエステル、酸性亜リン酸ブチルエステル、酸性亜リン酸ヘキシルエステル、酸性亜リン酸オクチルエステル、酸性亜リン酸ドデシルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
更に、上記化合物のうち部分エステルになっているもののアルキルアミン塩及びアルケニルアミン塩も好適に使用することができる。すなわち、酸性リン酸エステルのアミン塩、酸性亜リン酸エステルのアミン塩を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
より詳細には、リン酸モノオクチルのアミン塩、リン酸ジオクチルのアミン塩、リン酸トリオクチルのアミン塩、亜リン酸ジオクチルのアミン塩、亜リン酸トリオクチルのアミン塩、チオリン酸ジオクチルのアミン塩、チオリン酸トリオクチルのアミン塩、チオリン酸トリドデシルのアミン塩、リン酸ジデシルのアミン塩、亜リン酸ジデシルのアミン塩、リン酸ジドデシルのアミン塩、リン酸トリドデシルのアミン塩、亜リン酸ジドデシルのアミン塩、亜リン酸トリドデシルのアミン塩、チオリン酸トリドデシルのアミン塩、リン酸トリヘキサドデシルのアミン塩、亜リン酸トリヘキサドデシルのアミン塩、酸性亜リン酸ブチルエステルのアミン塩、酸性リン酸ヘキシルエステルのアミン塩、酸性リン酸オクチルエステルのアミン塩、酸性リン酸ドデシルエステルのアミン塩、酸性亜リン酸ブチルエステルのアミン塩、酸性亜リン酸ヘキシルエステルのアミン塩、酸性亜リン酸オクチルエステルのアミン塩、酸性亜リン酸ドデシルエステルのアミン塩などが挙げられる。
【0052】
また上記以外のリン系極圧剤としてリン酸及び亜リン酸が好適に使用される。さらに、限定的ではないが、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、及びこれらのアミン塩の中から選ばれる少なくとも1種以上と、リン酸及び亜リン酸から選択される少なくとも1種以上との併用が好ましい。併用する場合におけるリン酸及び亜リン酸の割合は、特に制限されるものでないが、リン系極圧剤の合計質量に対してリン酸及び亜リン酸が0.02〜0.5質量%であるのが好ましい。
【0053】
また、特には、酸性リン酸エステルと、リン酸及び亜リン酸から選ばれる1種以上との組み合わせが好ましい。特に、酸性リン酸エステルとしては、酸性リン酸ブチルエステル、酸性リン酸ヘキシルエステル、酸性リン酸オクチルエステル、及び酸性リン酸ドデシルエステルから選ばれる1以上が好ましい。
【0054】
硫黄系極圧剤としては、硫化オレフィン、硫化油脂、硫化エステル及びポリサルファイドを挙げることができる。
【0055】
硫化オレフィンはオレフィン類を硫化して得られる化合物である。硫化オレフィンは、例えば、ポリイソブチレン類及びテルペン類などのオレフィン類を、硫黄または他の硫化剤で硫化して得られる。
【0056】
硫化油脂は、油脂と硫黄との反応生成物である。例えば、ラード、牛脂、鯨油、パーム油、ヤシ油、ナタネ油などの動植物油脂を硫化させて得られる。該反応によって得られる生成物は、単一物質種のものではなく、種々の物質の混合物であってよい。従って、化学構造は必ずしも明確でない。
【0057】
硫化エステルは、上記硫化油脂の他に、各種有機酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ジカルボン酸、芳香族カルボン酸など)と各種アルコールとの反応により得られるエステル化合物を硫黄その他の硫化剤で硫化して得られるものが挙げられる。硫化油脂と同様、化学構造は必ずしも明確でない。
【0058】
本発明の潤滑油組成物は、上記(A)〜(D)成分に加えて、さらに(E)金属清浄剤及び/又は(F)エーテルスルホラン化合物を含むことが好ましい。
【0059】
(E)金属清浄剤
金属清浄剤としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を有する清浄剤が挙げられる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有するスルフォネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有するサリシレート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有するフェネートが挙げられるが、これに限定されない。また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、マグネシウム、バリウム、ナトリウム、及びカルシウムが挙げられるが、これに限定されない。
【0060】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有するスルフォネートとしては、限定的ではないが、カルシウムスルフォネート、及びマグネシウムスルフォネートが好ましく用いられる。
【0061】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有するサリシレートとしては、限定的ではないが、カルシウムサリシレート、及びマグネシウムサリシレートが好ましく用いられる。
【0062】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有するフェネートとしては、限定的ではないが、カルシウムフェネート、及びマグネシウムフェネートが好ましく用いられる。
【0063】
金属清浄剤中に含まれるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の量は、限定的ではないが、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1.0〜15質量%がさらに好ましい。
【0064】
金属清浄剤は、限定的ではないが、全塩基価10〜500mgKOH/gを有するのが好ましく、50〜400mgKOH/gがより好ましく、150〜400mgKOH/gがさらに好ましい。特には、200〜400mgKOH/gとした場合、より一層好ましくは300〜400mgKOH/gとした場合、最も好ましくは310〜400mgKOH/gとした場合には、清浄性効果も高く、スラッジの発生も抑制可能となるため、最も好ましい。
【0065】
金属清浄剤は、潤滑油組成物中に任意の割合で含有されればよい。例えば、0〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%であり、さらに好ましくは0.2〜1質量%である。
【0066】
金属清浄剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。併用する場合でも種類の限定はなく、たとえばスルフォネート化合物同士、サリシレート化合物同士、フェネート化合物同士でもよいが、スルフォネート化合物とサリシレート化合物、スルフォネート化合物とフェネート化合物、サリシレート化合物とフェネート化合物という組み合わせであってもよい。
【0067】
(F)エーテルスルホラン化合物
本発明の潤滑油組成物はエーテルスルホラン化合物を含有することにより適度なシールゴム膨潤性をより確保することができる。エーテルスルホラン化合物とは、以下のような化合物である。
【化5】
上記式において、Rは炭素数1〜20のアルキル基であり、好ましくは炭素数8〜16のアルキル基である。
【0068】
エーテルスルホラン化合物の配合量は、潤滑油組成物中に0〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がさらに好ましく、0.2〜1質量%がより好ましい。
【0069】
本発明の潤滑油組成物中は、上記(B)ないし(F)以外のその他の添加剤をさらに含んでもよい。たとえば、油性剤、摩耗防止剤、リン系及び硫黄系極圧剤以外の極圧剤、さび止め剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、消泡剤、着色剤、及び自動変速機油用パッケージ添加剤が挙げられる。これらのうち少なくとも1種を含有する各種潤滑油用パッケージ添加剤を添加することもできる。
【0070】
本発明の潤滑油組成物の100℃での動粘度は、限定されることはないが、3〜10mm
2/sであることが好ましく、3〜8mm
2/sであることがより好ましく、4〜7.5mm
2/sであることがさらに好ましく、4〜6mm
2/sであることが一層好ましい。潤滑油組成物の100℃での動粘度が上記下限値未満であると、摩擦係数を十分に確保することができない可能性がある。また、上記上限値超であると、シャダー特性が悪くなる場合がある。
【0071】
本発明の潤滑油組成物の粘度指数は、限定されることはないが、150以上であることが好ましく、160以上であることがより好ましい。潤滑油組成物の粘度指数が上記下限値未満であると、低温特性を十分に確保できない可能性がある。また、上限は限定されることはないが、250であることが好ましい。
【0072】
本発明の潤滑油組成物は、低粘度化されているにもかかわらず、十分大きな金属間摩擦係数を有し、且つ、シャダー特性も確保できるという効果を奏する。また、上記の通り、本発明に従いさらに基油及び粘度指数向上剤の構成を特定することにより、せん断安定性を確保することもできる。さらには、エーテルスルホラン化合物を含有することにより、適度なシールゴム膨潤性を確保することもできる。さらには、全塩基価が200〜400mgKOH/gの金属清浄剤を使用することによって、清浄性を確保しつつスラッジの発生を抑制できるため好ましい。本発明の潤滑油組成物は無段変速機用として好適に用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0074】
実施例及び比較例にて使用した各成分は以下の通りである。下記に示す各成分を表1又は表2に示す組成にて混合して潤滑油組成物を調製した。下記においてKV100は100℃での動粘度を、VIは粘度指数を、PMAはポリメタクリレートを意味する。
(A)潤滑油基油
・鉱油1:高度水素化精製パラフィン系基油(KV100=3.1mm
2/s、VI=112)
・鉱油2:高度水素化精製パラフィン系基油(KV100=4.2mm
2/s、VI=122)
・鉱油3:高度水素化精製パラフィン系基油(KV100=4.2mm
2/s、VI=134)
・鉱油4:水素化精製パラフィン系基油(KV100=2.2mm
2/s、VI=109)
・鉱油5:水素化精製パラフィン系基油(KV100=2.5mm
2/s、VI=99)
・合成基油1:ポリ−α−オレフィン(KV100=10mm
2/s、VI=137)
・合成基油2:ポリ−α−オレフィン(KV100=40mm
2/s、VI=147)
・合成基油3:エチレン−α−オレフィン共重合体(KV100=10mm
2/s、 VI=150)
・合成基油4:エチレン−α−オレフィン共重合体(KV100=40mm
2/s、VI=155)
【0075】
(B)粘度指数向上剤
・PMA系粘度指数向上剤1(Mw=30,000)
【0076】
(C)ホウ素化コハク酸イミド化合物
(C−1)
・ホウ素化コハク酸イミド化合物1(Mw=5,600、B:0.34wt%、N=1.58wt%、上記した式(2)においてR
1はポリイソブテニル基、n=4〜12の混合物)
・ホウ素化コハク酸イミド化合物3(Mw=4,600、 B:1.8wt%、N=2.35wt%、上記した式(2)においてR
1はポリイソブテニル基、n=4〜12の混合物)
(C−2)
・ホウ素化コハク酸イミド化合物2(Mw=8,500、B:0.23wt%、N=0.88wt%、上記した式(2)においてR
1はポリイソブテニル基、n=4〜12の混合物)
【0077】
(D)極圧剤
(D−1) リン酸
(D−2) 亜リン酸
(D−3) 酸性リン酸ブチルエステル
(D−4) 酸性リン酸ブチルエステルのアミン塩
(D−5) 酸性リン酸ヘキシルエステル
(D−6) 酸性亜リン酸ブチルエステル
(D−7) 硫化オレフィン
(D−8) ジアルキルチオリン酸亜鉛(炭素数6の1級アルキル基)
【0078】
(E)金属清浄剤
・Caスルホネート(全塩基価350mgKOH/g)
【0079】
(F)エーテルスルホラン化合物
・LUBRIZOL730(下記式において、R
1=C
10H
21の化合物)
【化6】
【0080】
(G)その他の添加剤
摩耗防止剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、消泡剤、金属不活性化剤、及び着色剤
【0081】
【表1】
【表2】
【表3】
【0082】
各潤滑油組成物について下記方法に従い各種性状を測定した。結果を表4〜6に示す。(1)100℃における動粘度(KV100)試験法:ASTM D445に従い測定した。
(2)粘度指数試験法:ASTM D2270に従い測定した。
(3)せん断安定性試験法:JASO M347−2014に従い、10時間後の100℃における粘度を測定し、試験開始前の粘度からの変化率を求めた。
(4)シャダー防止寿命試験法:JASO M349−2012に従い、40℃、60℃、80℃、120℃において評価したdμ/dv(1.0〜2.0m/sにおける平均)のいずれかがが−2x10
−3を下回る時間を求めた。
(5)摩擦係数(市販品との比較):Optimol社製、SRV摩擦摩耗試験機にて同社製SUJ ボール(直径10mm)、SUJディスク(直径24mmx高さ6.9mm、ラッピング処理)を用いて、荷重:100N、温度:100℃、周波数:50Hz、振幅:0.5mmにして試験を行い、30分後の摩擦係数の平均値を求めた。市販油(比較例5)の摩擦係数を1.0として比率を求めた。
(6)ゴム膨潤性試験法:ASTM D471にてC typeダンベル形状のACMゴム(NOK社製 T945)を用い、150℃で試料油に浸漬し、70時間後の体積変化率を求めた。
【0083】
尚、比較例5では市販品の変速機用潤滑油組成物を評価した。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
表4及び表5に記載の実施例1〜15に示す通り、本発明の潤滑油組成物は、2種類のコハク酸イミドを組合せ、且つ、リン系極圧剤を含むことにより、100℃での動粘度が低いにも関わらず、金属間摩擦係数を低下させることなくシャダー防止寿命を延長することができる。比較例1に示す通り(C−2)成分を含まないとシャダー特性が悪くなる。また、比較例4に示す通りジチオリン酸亜鉛を含むとシャダー特性が悪くなる。さらには、硫黄系極圧剤を本発明の上限超で含有するとシャダー特性が悪くなる。
また、実施例1と実施例8の対比からわかるように、(A)成分の構成を特定し、且つ(F)エーテルスルホランをさらに含有することにより、上記効果に加えてシールゴム膨潤性をより向上することができる。