【実施例】
【0031】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
なお、実施例1〜3の各サンプルについて、乾果換算で1.2g/L等量(サンプル1Lに対して使用するホップ(乾燥質量)のグラム数が1.2g)となるようにホップ抽出物、乾燥ホップ、生果ホップの添加量を調整した。
【0032】
[実施例1]
まず、実施例1では、添加するホップ抽出物の抽出方法が、各評価に与える影響について確認した。
【0033】
(サンプルの準備)
市販のノンアルコールビールを用意し、適宜、ホップ抽出物(含有量:A−2〜A−4は0.04v/v%、A−5〜A−6は0.06v/v%)を混合してサンプル液を準備した。
サンプルA−2「マイクロ波(Fr.1)」のホップ抽出物は、1.5kgの生ホップ(品種:フラノビューティ、乾燥質量:約0.3kg)が収容された容器に対し、マイクロ波発生装置(兼松エンジニアリング株式会社製、型番:EXT−V20P02)によってマイクロ波(波長:121〜123mm)を照射し、加熱されたホップから発生した蒸気を捕集(当該蒸気が約65℃となるようにマイクロ波発生装置を制御)したもののうち、捕集開始時点から0〜100mLのものである。なお、サンプルA−3「マイクロ波(Fr.2)」のホップ抽出物は、捕集開始時点から100mLを超え200mLまでのものであり、サンプルA−4「マイクロ波(Fr.3)」のホップ抽出物は、200mLを超え300mLまでのものである。
サンプルA−5「減圧蒸留」のホップ抽出物は、50℃、約12kPaで減圧蒸留して得られたものである。
サンプルA−6「常圧蒸留」のホップ抽出物は、100℃で蒸留して得られたものである。
サンプルA−7「乾果ドライホッピング」、サンプルA−8「生果ドライホッピング」は、それぞれ乾燥したホップの球果、生のホップの球果を前記のノンアルコールビールに4日間浸漬(サンプル液350mLに対して、乾燥ホップで0.42g、生果で2.1g浸漬)させて準備した。
【0034】
(試験内容)
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された専門のパネル4名がビジュアルアナログ尺度(VAS法:アロマサイエンスシリーズ21(3)「においの心理学」p154)に則って「漬物/ムレ」、「渋味/エグ味」、「フレッシュな香味」、「総合評価」について、独立点数付けし、その平均値を算出した。
その後、「対象(ホップを添加せず)」の点数と各サンプルの点数との差(=「各サンプルの点数」−「対象の点数」)を算出し、算出した値を表に示した。
なお、「漬物/ムレ」、「渋味/エグ味」の評価については、サンプルを飲んだ後に感じる香味を評価し、「フレッシュな香味」、「総合評価」については、サンプルを飲む前の香り、飲んでいる際、及び、飲んだ後に感じられる香味を総合的に評価した。
【0035】
(漬物/ムレ:評価基準)
VAS法において、10cmの直線を用意し、左端を「感じない」、右端を「想像し得る限り強く感じる」とし、評価を実施した。
すなわち、「感じない」場合は0点、「想像しうる限り強く感じる」場合は10点、そのちょうど中間と判断すれば5点となる。評価後、左端からの距離を測定し、官能評価値とした(この点、以下の評価基準も同様である)。
なお、「漬物/ムレ」の点数が低い程、サンプルを飲用後の不快な香味(漬物様の香味、ムレ臭)が抑制されているとの判断ができる。
【0036】
(渋味/エグ味:評価基準)
VAS法において、10cmの直線を用意し、左端に「0点:感じない」、右端に「10点:想像し得る限り強く感じる」という数値と指標を設けて評価を実施した。
なお、「渋味/エグ味」の点数が低い程、サンプルを飲用後の不快な香味(渋味、エグ味)が抑制されているとの判断ができる。
【0037】
(フレッシュな香味:評価基準)
VAS法において、10cmの直線を用意し、左端に「0点:感じない」、右端に「10点:想像し得る限り強く感じる」という数値と指標を設けて評価を実施した。
なお、「フレッシュな香味」の点数が高い程、サンプルのフレッシュな香味が増強されているとの判断ができる。
【0038】
(総合評価:評価基準)
VAS法において、10cmの直線を用意し、左端に「0点:非常に不快な香味」、右端に「10点:非常に好適な香味」という数値と指標を設けて評価を実施した。
なお、「総合評価」の点数が高い程、サンプルがノンアルコールビールテイスト飲料として好ましい香味となっているとの判断ができる。
【0039】
表1に、各サンプルの各評価の結果を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(結果の検討)
サンプルA−2、A−3、A−4は、マイクロ波によって抽出したホップ抽出物を用いていたことから、サンプルA−1と比較してフレッシュな香味が強かったとともに、飲用後の不快な香味もそれほど強くなっていなかった。特に、これらの中でも、サンプルA−2はフレッシュな香味の増強効果が大きかった。
一方、サンプルA−5、A−6は、減圧蒸留、常圧蒸留によって抽出したホップ抽出物を用いていたことから、渋味、エグ味が強くなってしまった。
また、サンプルA−7、A−8は、乾果ドライホッピング、生果ドライホッピングによってホップの香味付けを行っていたことから、漬物様の香味、ムレ臭、渋味、エグ味が強くなってしまった。
【0042】
以上の結果より、従来の方法によって抽出したホップ抽出物を用いるよりも、マイクロ波によって抽出したホップ抽出物を用いた方が、フレッシュな香味を増強させることができるとともに、飲用後の不快な香味を低減でき、さらに、総合評価も良いことがわかった。
【0043】
[実施例2]
次に、実施例2では、使用するホップの状態や、蒸気の温度条件が、各評価に与える影響について確認した。
【0044】
(サンプルの準備)
市販のノンアルコールビールを用意し、適宜、ホップ抽出物(含有量:B−2〜B−5は0.04v/v%、B−6は0.02v/v%)を混合してサンプル液を準備した。
サンプルB−2「生球果(65℃)」のホップ抽出物は、マイクロ波発生装置(兼松エンジニアリング株式会社製、型番:EXT−V20P02)によってマイクロ波(波長:121〜123mm)を1.5kgの生ホップ(品種:フラノビューティ、乾燥質量:約0.3kg)が収容された容器に照射し、加熱されたホップから発生した蒸気を捕集(当該蒸気が約65℃となるようにマイクロ波発生装置を制御)したもののうち、捕集開始時点から0〜100mLのものである。
【0045】
サンプルB−3「生球果(40℃)」のホップ抽出物は、サンプルB−2の抽出方法のうち、蒸気の温度が約40℃となるようにマイクロ波発生装置を制御した点のみを変えた方法によって得られたものである。
サンプルB−4「凍結球果(65℃)」のホップ抽出物は、サンプルB−2の抽出方法のうち、「生ホップ」ではなく「凍結ホップ(球果に対して凍結処理を行った後に解凍を行ったもの)」を用いた点のみを変えた方法によって得られたものである。
サンプルB−5「乾燥球果(水5倍希釈)」のホップ抽出物は、サンプルB−2の抽出方法のうち、「生ホップ」ではなく、「質量が約1/5となるまで乾燥させた乾燥ホップ(生ホップ1.5kg→乾燥ホップ0.3kg)に4倍量の水(水1.2kg)を加えたもの」を用いた点のみを変えた方法によって得られたものである。
サンプルB−6「乾燥球果(水2倍希釈)」のホップ抽出物は、サンプルB−2の抽出方法のうち、「生ホップ」ではなく、「質量が約1/5となるまで乾燥させた乾燥ホップ(生ホップ3.0kg→乾燥ホップ0.6kg)に等量の水(水0.6kg)を加えたもの」を用いた点のみを変えた方法によって得られたものである。なお、サンプルB−6のホップ抽出物は、他のサンプルの2倍量の乾燥ホップを使用したことから、前記のとおり、ホップ抽出物を0.02v/v%(他のサンプル:0.04v/v%の半分)となるように混合した。
【0046】
(試験内容、評価基準)
試験内容、及び、各試験の評価基準については、実施例1と同様であった。
【0047】
表2に、各サンプルの各評価の結果を示す。
【0048】
【表2】
【0049】
(結果の検討)
サンプルB−2〜B−6は、マイクロ波によって抽出したホップ抽出物を用いていたことから、サンプルB−1と比較してフレッシュな香味が強かったとともに、飲用後の不快な香味もそれほど強くなっていなかった。特に、これらの中でも、生球果又は凍結球果を用いたサンプルB−2、B−3、B−4はフレッシュな香味の増強効果が大きかった。さらに、これらの中でも蒸気の温度が40℃のサンプルB−3は飲用後の不快な香味の低減効果が大きかった。
【0050】
以上の結果より、マイクロ波によって抽出したホップ抽出物を用いる際、生ホップ又は凍結球果を用いるのが好ましく、蒸気の温度が低い方が好ましいことがわかった。
【0051】
[実施例3]
次に、実施例3では、使用するホップの品種が、各評価に与える影響について確認した。
【0052】
(サンプルの準備)
市販のノンアルコールビールを用意し、適宜、ホップ抽出物(含有量:C−2〜C−8は0.04v/v%)を混合してサンプル液を準備した。
サンプルC−2〜C−8は、1.5kgの生ホップ(品種:表3に記載、乾燥質量:約0.3kg)が収容された容器に対し、マイクロ波発生装置(兼松エンジニアリング株式会社製、型番:EXT−V20P02)によってマイクロ波(波長:121〜123mm)を照射し、加熱されたホップから発生した蒸気を捕集し(当該蒸気が約65℃となるようにマイクロ波発生装置を制御)、捕集開始時点から0〜100mLのホップ抽出物を用いたものである。
【0053】
(試験内容、評価基準)
試験内容、及び、各試験の評価基準については、実施例1と同様であった。
【0054】
表3に、各サンプルの各評価の結果を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
(結果の検討)
サンプルC−2〜C−7は、マイクロ波によって抽出したホップ抽出物を用いていたことから、サンプルC−1と比較してフレッシュな香味が強かったとともに、飲用後の不快な香味もそれほど強くなっていなかった(一部のサンプルは低減していた)。
以上の結果より、ホップの品種に拘わらず、本発明の効果が得られることがわかった。
【0057】
[実施例4]
次に、実施例4では、ホップ抽出物の含有量が、各評価に与える影響について確認した。
【0058】
(サンプルの準備)
市販のノンアルコールビールを用意し、適宜、ホップ抽出物(含有量:表4に記載)を混合してサンプル液を準備した。
サンプルD−2〜D−8のホップ抽出物は、1.5kgの生ホップ(品種:フラノビューティ、乾燥質量:約0.3kg)が収容された容器に対し、マイクロ波発生装置(兼松エンジニアリング株式会社製、型番:EXT−V20P02)によってマイクロ波(波長:121〜123mm)を照射し、加熱されたホップから発生した蒸気を捕集し(当該蒸気が約65℃となるようにマイクロ波発生装置を制御)、捕集開始時点から0〜100mLのものである。
【0059】
(試験内容、評価基準)
試験内容、及び、各試験の評価基準については、実施例1と同様であった。
【0060】
表4に、各サンプルの各評価の結果を示す。
【0061】
【表4】
【0062】
(結果の検討)
サンプルD−2〜D−8は、マイクロ波によって抽出したホップ抽出物を用いていたことから、サンプルD−1と比較してフレッシュな香味が強かったとともに、飲用後の不快な香味もそれほど強くなっていなかった(一部のサンプルは低減していた)。これらの中でも、ホップ抽出物の含有量が0.004v/v%以上(特に、0.010v/v%以上)のサンプルは、フレッシュな香味の増強効果をしっかりと感じ取ることができた。
以上の結果より、ホップ抽出物の含有量を所定量以上とすることにより、より確実に本発明の効果が得られることがわかった。