特許第6962682号(P6962682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962682発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962682
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/14 20060101AFI20211025BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20211025BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20211025BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20211025BHJP
   H01B 13/24 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01B13/14 B
   C08J9/04 101
   C08J9/04CES
   C08L23/00
   H01B7/02 G
   H01B7/295
   H01B13/24 Z
【請求項の数】2
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-229521(P2016-229521)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-85309(P2018-85309A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月17日
【審判番号】不服2021-2412(P2021-2412/J1)
【審判請求日】2021年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 宏晃
【合議体】
【審判長】 辻本 泰隆
【審判官】 河本 充雄
【審判官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−173918(JP,A)
【文献】 特開2004−149553(JP,A)
【文献】 特開平11−189743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B13/14
C08J 9/04
C08L23/00
H01B 7/295
H01B13/24
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも、ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂、発泡剤、充填剤、及び滑剤を混合し、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程
(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に架橋剤及び架橋助剤を添加してから架橋し、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程
(3)前記工程(2)で得られた架橋体を押出し、導体の外周に前記架橋体からなる被覆層を形成する工程、および
(4)前記工程(3)で形成した被覆層を発泡させる工程
を有し、
前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物は、
前記ベース樹脂全体を100重量部としたときに、ポリオレフィン系樹脂を60〜95重量部、ゴム成分を5〜40重量部含有し、
前記発泡剤を、ベース樹脂100重量部に対し0.1〜10重量部含有し、
前記充填剤を、前記ベース樹脂100重量部に対し10〜90重量部含有し、
前記滑剤を、前記ベース樹脂100重量部に対し0.5〜10重量部含有し、
前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に、
前記架橋剤を、前記ベース樹脂100重量部に対し0.02〜0.5重量部添加するとともに、前記架橋助剤を、前記ベース樹脂100重量部に対し前記架橋剤の1〜3倍量添加する、
発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法。
【請求項2】
導体と、前記導体の外周に、発泡しかつベース樹脂を含む被覆層とを有する発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルであって、
前記被覆層の発泡率が3〜30%であり、
前記被覆層における前記ポリオレフィン系樹脂の架橋物の径方向の配向が、軸線方向の配向と比較して大きく、
前記被覆層は、
前記ベース樹脂全体を100重量部としたときに、ポリオレフィン系樹脂を60〜95重量部、ゴム成分を5〜40重量部含有し、
前記充填剤を、前記ベース樹脂100重量部に対し10〜90重量部含有し、
前記滑剤を、ベース樹脂100重量部に対し0.5〜10重量部含有する、
発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心が世界的に高まっており、電線・ケーブルにおいても焼却時に有害なハロゲンガスなどを発生させないノンハロゲンの組成物を用いたものが普及しつつある。また、ノンハロゲン組成物を用いた電線・ケーブルについて様々な提案がなされている。
【0003】
電線・ケーブルに用いるノンハロゲン組成物としては、ポリオレフィン系樹脂がある。
そこで、近年では、ポリオレフィン系樹脂に難燃剤として金属水酸化物を配合したノンハロゲン難燃性樹脂組成物が多用されるようになっている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、エチレン・アクリル酸エステル共重合体(a)および/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体(b)20〜80質量%、アクリルゴム(c)10〜40質量%、およびアクリル酸変性ポリオレフィン(d)10〜40質量%を含有し、さらには必要に応じ、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリエチレン(e)20質量%以下および/またはスチレンブロック共重合体(f)20質量%以下を含有する樹脂混合物100質量部に対して、シランカップリング剤で表面処理された金属水和物(g)150〜250質量部含有する組成物の架橋体で導体が被覆されている絶縁電線が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−325833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術では、所期の十分な難燃性を得るために水酸化マグネシウムのような金属水和物を多量に配合する必要があり、樹脂成分が硬くなり、電線・ケーブルの切裂き易さや皮むき性が悪化し、施工性が劣るという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、切裂き易さや皮むき性を改善し、優れた施工性を有するとともに十分な機械的特性も兼ね備えた発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法」は、下記[1]〜[3]を特徴としている。
[1]
1)少なくとも、ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂、架橋剤、架橋助剤、及び発泡剤を混合し、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程
(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋し、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程
(3)前記工程(2)で得られた架橋体を押出し、導体の外周に前記架橋体からなる被覆層を形成する工程、および
(4)前記工程(3)で形成した被覆層を発泡させる工程
を有し、
前記ベース樹脂全体を100重量部としたときに、ポリオレフィン系樹脂を60〜95重量部、ゴム成分を5〜40重量部含有する、
発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法であること。
[2]
上記[1]に記載の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法において、
前記架橋剤を、前記ベース樹脂100重量部に対し0.02〜0.5重量部含有し、
前記架橋助剤を、前記架橋剤の1〜3倍量含有する、
発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法であること。
[3]
上記[2]に記載の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法において、
前記ベース樹脂が前記ポリオレフィン系樹脂を60〜95重量部、ゴム成分を5〜40重量部含有し、
前記発泡剤の含有量が0.1〜10重量部であり、
前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物は、さらに充填剤を10〜90重量部含有し、
滑剤を0.5〜10重量部含有する、
発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法であること。
【0009】
上記[1]の構成の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法によれば、導体の外周に被覆層を形成するよりも前にポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋させている。そのため、発泡が安定化し、高発泡化が実現され、切裂き易さや皮むき性が改善される。また、引張強度が高い、加熱変形しにくい、といった十分な機械的特性も得られる。
【0010】
したがって、本構成の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法は、優れた施工性および機械的特性を両立可能である。
【0011】
上記[2]の構成の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法によれば、架橋剤および架橋助剤の配合量を特定化しているため、架橋後のポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に対し、良好な押出特性を提供できる。
【0012】
したがって、電線・ケーブルの優れた施工性および機械的特性が得られるとともに、製造性も向上する。
【0013】
上記[3]の構成の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法によれば、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物におけるベース樹脂の組成、その含有量、発泡剤の含有量、充填材の含有量並びに滑剤の含有量を特定化しているため、発泡の安定化、切裂き易さや皮むき性、機械的特性をさらに高めることができる。
【0014】
したがって、電線・ケーブルの施工性および機械的特性をさらに向上できる。
【0015】
更に、前述した目的を達成するために、本発明に係る「発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル」は、下記[4]を特徴としている。
[4]
導体と、前記導体の外周に、発泡しかつベース樹脂を含む被覆層とを有する発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルであって、
前記被覆層の発泡率が3〜30%であり、
前記被覆層における前記ポリオレフィン系樹脂の架橋物の径方向の配向が、軸線方向の配向と比較して大きく、
前記ベース樹脂全体を100重量部としたときに、ポリオレフィン系樹脂を60〜95重量部、ゴム成分を5〜40重量部含有する、
発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルであること。
【0016】
上記[4]の構成の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルによれば、被覆層の発泡率およびポリオレフィン系樹脂の架橋物の配向方向を特定化しているため、発泡が安定化し、高発泡化が実現され、切裂き易さや皮むき性が改善される。また、十分な引張強度や加熱変形のような機械的特性も得られる。
【0017】
したがって、本構成の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルは、優れた施工性および機械的特性を両立可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、切裂き易さや皮むき性を改善し、優れた施工性を有するとともに十分な機械的特性も兼ね備えた発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および該製造方法により製造された発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルを提供することができる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態に係る発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの断面図であり、(a)は発泡ポリオレフィン被覆電線の断面図、(b)は発泡ポリオレフィン被覆ケーブルの断面図である。
図2図2は、本実施形態に係る発泡ポリオレフィン被覆電線の別の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの一実施形態について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの断面図であり、(a)は発泡ポリオレフィン被覆電線の断面図、(b)は発泡ポリオレフィン被覆ケーブルの断面図である。
図1(a)に示すように、本実施形態における電線1は、銅線等の導体2と、導体2の外周を被覆する絶縁体3と、絶縁体3の外周を被覆する被覆層4とを備える。
また、図1(b)に示すように、本実施形態に係る発泡ポリオレフィン被覆ケーブル10は、束ねられた複数の電線1(1a,1b,1c)と、束ねられた複数の電線1の周縁を覆う、被覆層としての被覆層4とを備える。
図2は、本実施形態に係る発泡ポリオレフィン被覆電線の別の例の断面図である。本実施形態における電線1’は、銅線等の導体2と、導体2の外周を被覆する絶縁体3と、絶縁体3の外周を被覆する被覆層4とを備え、被覆層4が下層41と上層42との2層構成になっている。
【0023】
導体2は、1本の素線のみであってもよく、複数本の素線を束ねて形成したものであってもよい。導体2の材料としては、例えば、銅、メッキされた銅、銅合金、アルミニウム、及びアルミニウム合金等の導電性金属を用いることができる。
【0024】
絶縁体3は、所望により設けることができ、その材料はとくに制限されず、公知の絶縁体の中から適宜選択することができ、例えばポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びビニル混合物等からなるものが好ましく用いられる。
【0025】
被覆層4は、前記のように、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製し、作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋し、得られた架橋体を押出し、導体2の外周に、または絶縁体3を設ける場合はその外周に該架橋体からなる被覆層を形成し、これを発泡させることにより形成される。以下、説明する。
【0026】
ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂、架橋剤、架橋助剤、及び発泡剤を含有する。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂としては、とくに制限されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、及び超低密度ポリエチレン(V−LDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリオレフィン系樹脂は、密度が0.85〜1.00g/cmであることが好ましく、0.90〜0.97g/cmがより好ましい。前記範囲の密度のポリオレフィン系樹脂を用いることで、機械的特性をさらに向上させることができる。また、ポリオレフィン系樹脂は、溶融粘度(MFR)が0.4〜2.5であることが好ましく、0.4〜1.0がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂の溶融温度が前記範囲であると、押出加工性が向上する。
なお、本発明でいう密度は、JIS K7112に準拠して測定される値であり、MFRは、JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgf荷重にて測定される値である。
【0028】
なおベース樹脂としては、本発明の効果を損ねない限り、前記ポリオレフィン系樹脂以外の成分を必要に応じて適宜使用することができる。このような成分としては、例えばゴム成分が挙げられ、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・ブタジエン・ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、及びニトリルゴム(NBR)等が挙げられる。
前記ゴム成分の配合量は、ベース樹脂全体を100重量部としたときに、前記ポリオレフィン系樹脂が60〜95重量部、前記ゴム成分が5〜40重量部となるようにするのが好ましい。さらに好ましくは前記ポリオレフィン系樹脂が70〜95重量部、前記ゴム成分が5〜40重量部である。
ゴム成分は、樹脂組成物にゴム弾性を付与するという役割を有する。
前記ポリオレフィン系樹脂が60重量部以上であることにより、引張強度が向上し、95重量部以下であることにより切裂き易さや皮むき性が改善する。
また前記ゴム成分が5重量部以上であることにより、切裂き易さや皮むき性が改善し、40重量部以下であることにより、引張強度が向上する。
なお、ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン(PP)を使用する場合、その配合量は、ベース樹脂全体を100重量部としたときに、30重量部以下であることが好ましい。30重量部を超えると、切裂き易さや皮むき性が低下する恐れがある。
【0029】
架橋剤としては、有機酸化物が挙げられるが、これに限定されるものではない。具体的には、架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、及びtert−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
中でも好ましい架橋剤としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサンが挙げられる。
【0030】
架橋助剤としては、とくに制限されないが、例えば分子内に二重結合を二個以上有する化合物が挙げられ、具体的には1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート;1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートなどのトリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びトリメチロールエタントリメタクリレートなどのトリメタクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びテトラメチロールメタンテトラアクリレートなどのテトラアクリレート;ジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族化合物;トリアリルシアヌレート、及びトリアリルイソシアヌレートなどのシアヌレート;ジアリルフタレートなどのジアリル化合物;トリアリル化合物等が挙げられる。
中でも好ましい架橋助剤としては、トリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。
【0031】
本発明によれば、前記架橋剤および前記架橋助剤の量的バランスを図ることにより、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物が架橋後であっても、良好な押出特性を提供することができる。
すなわち、前記架橋剤の配合量は、前記ベース樹脂100重量部に対し0.02〜0.5重量部が好ましく、0.02〜0.1重量部がさらに好ましい。架橋剤の配合量が0.02重量部以上であることにより、良好な押出特性を提供できるとともに引張強度が向上し、0.5重量部以下であることにより、良好な押出特性を提供できるとともに押出し後の外観も向上する。
また、前記架橋助剤の配合量は、前記架橋剤の1〜3倍量が好ましく、1.5〜2.0倍量がさらに好ましい。前記架橋助剤の配合量が前記架橋剤の1倍量以上であることにより、良好な押出特性を提供できるとともに押出し後の外観も向上する。3倍量以下であることにより、良好な押出特性を提供できるとともに引張強度が向上する。
【0032】
発泡剤としては、化学的分解によって炭酸ガスや窒素ガスなどを発生させる公知の化学分解型発泡剤等を用いることができ、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)やヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等のヒドラジン誘導体、及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
前記発泡剤の配合量は、前記ベース樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がさらに好ましい。
【0033】
また被覆層4には、必要に応じて、充填剤、滑剤、酸化防止剤、加工助剤、中和剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、及び分散剤等の公知の各種添加剤を配合することもできる。
【0034】
充填剤としては、例えば、臭素化エチレンビスフタルイミド誘導体、ビス臭素化フェニルテレフタルアミド誘導体、臭素化ビスフェノール誘導体、及び1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン等の有機系臭素含有難燃剤;水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤;芳香族縮合リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、及びメラミンリン酸塩等のリン酸系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ピロリン酸アンモニウム、ピロリン酸メラミン、及びピロリン酸ピペラジン等のイントメッセント系難燃剤;軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、マイカ、ペントナイト、ゼオライト、消石灰、カオリン、及びけいそう土等が挙げられる。
【0035】
滑剤としては、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、及びエステル系滑剤等が挙げられる。
【0036】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0037】
加工助剤としては、例えば、パラフィン系油、アロマチック系油、及びナフテン系油等の石油系油等が挙げられる。
【0038】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチレート系化合物、置換トリル系化合物、及び金属キレート系化合物等が挙げられる。
【0039】
顔料としては、「顔料便覧(日本顔料技術協会編)」に記載されている一般的な無機顔料や有機顔料を用いることができる。例えば、無機顔料としては、チタンイエロー等のチタンを含む(複合)金属酸化物、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、及び三酸化アンチモン等が挙げられる。有機顔料はフタロシアニン系、アンスラキノン系、キナクリドン系、アゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ペリノン系、及びペリレン系等の顔料が挙げられる。
【0040】
帯電防止剤としては、例えば、アルキルリン酸エステル、及びケイ酸化合物等が挙げられる。
【0041】
分散剤としては、例えば、アクリル系分散剤、脂肪酸エステル系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤、非イオン性界面活性剤、両親媒性トリフェニレン誘導体、及びピレン誘導体等が挙げられる。
【0042】
本発明における前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物は、充填剤および滑剤を配合するのが好ましく、その配合量は、前記ベース樹脂100重量部に対し、充填剤は10〜90重量部が好ましく、30〜60重量部がさらに好ましい。滑剤は0.5〜10重量部が好ましく、1〜2重量部がさらに好ましい。充填剤の配合量が10重量部以上であることにより、切裂き易さや皮むき性が向上し、90重量部以下であることにより引張強度の悪化が防止される。また滑剤の配合量が0.5重量部以上であることにより、切裂き易さや皮むき性が向上し、90重量部以下であることにより引張強度の悪化が防止される。
【0043】
本発明の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法は、前記のように、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴としている。
(1)少なくとも、ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂、架橋剤、架橋助剤、及び発泡剤を混合し、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程
(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋し、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程
(3)前記工程(2)で得られた架橋体を押出し、導体の外周に前記架橋体からなる被覆層を形成する工程
(4)前記工程(3)で形成した被覆層を発泡させる工程
【0044】
前記工程(1)において、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の作製方法としては、前記のベース樹脂、架橋剤、架橋助剤、及び発泡剤、並びに必要に応じて添加されるその他の各種添加剤を公知の混合手段を用いて均一に混合する方法が例示される。
【0045】
前記工程(2)において、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋する方法としては特に制限されず、従来知られた任意の方法を採用できる。
【0046】
ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋度は、本発明の効果の観点から、1〜50%であることが好ましく、3〜40%がさらに好ましい。
なお、架橋度は、JISC3005の27項の試験に準拠するものとする。具体的には、架橋後のポリオレフィン系発泡性樹脂組成物のサンプル5gを用意し、そのサンプルを溶剤のキシレン100gの中に入れて浸漬し、溶剤の温度を120℃に24時間保持し、そして、溶剤の中からサンプルを取り出して真空デシケータの中に入れて、温度100±2℃、真空度1.3kPa(10Torr)以下で24時間以上乾燥する。乾燥後、サンプルの重量(試験後の質量)をmgの単位まで測定し、サンプルの当初の重量(試験前の質量)と比較した百分率で示す。
【0047】
前記工程(3)において、架橋体の押出し方法としてはとくに制限されず、例えば公知の単軸押出機や二軸押出機等の押出機により前記工程(2)で得られた架橋体を押出し、導体2の外周に前記架橋体からなる被覆層4を形成することができる。また、この押出工程の際に、前記工程(4)として被覆層が発泡し、本発明の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルが製造される。
【0048】
本発明の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルは、前記の製造方法によって製造することができ、導体2と、前記導体2の外周に、発泡しかつポリオレフィン系樹脂を含む被覆層4とを有し、前記被覆層4の発泡率が3〜30%であり、前記被覆層4における前記ポリオレフィン系樹脂の架橋物の径方向の配向が、軸線方向の配向と比較して大きいことを特徴とする。
前記被覆層4の発泡率が3%以上であることにより、切裂き易さや皮むき性が向上し、30%以下であることにより、引張強度や耐熱変形等の機械的特性が向上する。発泡率は、5〜25%であることがさらに好ましい。なお、本発明では、導体2の外周に被覆層4を形成するよりも前にポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋させ、発泡が安定化させ、高発泡化(例えば10%以上の発泡率)が実現されるが、導体2の外周に被覆層4を形成した後にポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋させると、発泡が安定せず、外観が不良となる。
【0049】
なお、本発明でいう発泡率は、発泡前と発泡後の比重割合から算出される。
【0050】
また本発明では、導体2の外周に被覆層4を形成するよりも前にポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋させているため、被覆層4における前記ポリオレフィン系樹脂の架橋物の径方向の配向が、軸線方向の配向と比較して大きくなり、これにより、電線・ケーブルの長手方向における切裂き易さや皮むき性が向上する。なお、架橋物の配向は、分散したゴム成分の進行方向をSEM等により確認できる。
【0051】
なお図2に示すように被覆層4が下層41と上層42との2層構成の形態の場合、例えば下層41と上層42におけるポリオレフィン系樹脂の密度に差異を持たせ、所望の性質(例えば加熱変形特性や耐熱性等)をそれぞれの層に分担させることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0053】
以下の材料を使用した。
EVA:三菱化学(株)製 A543
PP:日本ポリプロピレン(株)製ノバテックBC8A
EPDM:JSR(株)製EP07AP
有機過酸化物:日油(株)製パーヘキサ25B(2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン)
架橋助剤:新中村化学(株)製NKエステル3G(トリエチレングリコールジメタクリレート)
充填剤:水酸化マグネシウム
滑剤:日油(株)製ステアリン酸カルシウム
発泡剤:永和化成 ADCA(アゾジカルボンアミド)EV405D
【0054】
[試験電線A1〜A99]
表1〜4に示す配合量(重量部)に従い、各成分を温度200℃のニーダーにて混練し、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製した。
続いて、架橋剤、架橋助剤を添加し、190℃×3分以上で混練することにより架橋させ、架橋体を調製した。
続いて、押出成形機を用いて各架橋体を直径2.0mmの銅線上に0.8mm厚となるように絶縁体を、さらにその上に1.5mmとなるように前記架橋体からなる被覆層を形成して試験電線(平型3×2.0)を作製した。
【0055】
各試験電線について、下記の評価を行った。
発泡率:前発泡前と発泡後の比重割合によって算出した。
引張強さ:JIS C3005の4.16項の引張試験を実施することにより測定した。10MPa以上を規格値とし、規格値を満たすものをA、満たさないものをBと記載した。
加熱変形(75℃):JIS C3005の4.23項の加熱変形を実施することにより測定した。規格値を満たすものをA、規格値を満たさないものをBと記載した。
皮むき性:試験ケーブルに切れ込みを入れ、引張試験機に下チャック部にナイフを設置し、上チャック部に切れ込みを入れた試験ケーブルをナイフをかませた状態で設置して引張試験を行うことにより測定した。皮剥き荷重40N未満をA、40N以上をBと記載した。
押出外観:ブツなどを目視・触診により確認した。ブツ等なしをA、ブツ等ありをBと記載した。
結果を表1〜4に併せて示す。
【0056】
[試験電線B1〜B146]
表5〜10に示す配合量(重量部)に従い、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製したこと以外は、上記試験電線A1〜A99と同様にして試験電線を作製した。結果を表5〜10に示す。
【0057】
さらに、試験電線A1〜A99、B1〜B146において測定・算出した、引張強さ、加熱変形(75℃)、皮むき性、押出外観の各種パラメータに基づいて、各種試験電線の総合評価を行った。本総合評価において、評価Aは、上記各種パラメータの全ての評価がAであることを表し、評価Bは上記各種パラメータのうちAの評価が3つ、Bの評価が1つであることを表し、評価Cは上記各種パラメータのうちAの評価が2つ、Bの評価が2つであることを表し、評価Dは上記各種パラメータのうちAの評価が1つ、Bの評価が3つであることを表し、評価Eは上記各種パラメータのうち全ての評価がBであることを表す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
【表10】
【0068】
本発明の製造方法を実施して製造された各試験電線では、被覆層を形成した後にポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋させるという従来の方法で作製した試験電線と比べ、高発泡化が実現でき、切裂き易さや皮むき性が改善された。また、引張強度が高い、加熱変性にしくいといった機械的特性も得られた。
特に、本発明の構成の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法により作製した試験電線A1〜A99は、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物におけるベース樹脂の組成、その含有量、発泡剤の含有量、充填材の含有量並びに滑剤の含有量を特定化しているため、すべて総合評価がAとなっており、発泡の安定化、切裂き易さや皮むき性、及び機械的特性をさらに高めることができた。
【0069】
なお、本発明の製造方法を実施して製造された各試験電線における被覆層の架橋物の配向方向を前記方法によって確認したところ、架橋物の径方向の配向が、軸線方向の配向と比較して大きいことが分かった。
【0070】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0071】
ここで、上述した本発明に係る発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および該製造方法により製造された発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
下記(1)〜(4)の工程を含む、発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法。
(1)少なくとも、ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂、架橋剤、架橋助剤、及び発泡剤を混合し、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程
(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋し、ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程
(3)前記工程(2)で得られた架橋体を押出し、導体の外周に前記架橋体からなる被覆層を形成する工程
(4)前記工程(3)で形成した被覆層を発泡させる工程
[2]
前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物は、
前記架橋剤を、前記ベース樹脂100重量部に対し0.02〜0.5重量部含有し、
前記架橋助剤を、前記架橋剤の1〜3倍量含有するものである、
前記(1)に記載の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法。
[3]
前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物において、
前記ベース樹脂が前記ポリオレフィン系樹脂を60〜95重量部、ゴム成分を5〜40重量部含有し、
前記発泡剤の含有量が0.1〜10重量部であり、
前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物は、さらに充填剤を10〜90重量部含有し、
前記滑剤を0.5〜10重量部含有する、
前記(2)に記載の発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法。
[4]
導体(2)と、前記導体(2)の外周に、発泡しかつポリオレフィン系樹脂を含む被覆層(4)とを有する発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル(1,10)であって、
前記被覆層(4)の発泡率が3〜30%であり、
前記被覆層(4)における前記ポリオレフィン系樹脂の架橋物の径方向の配向が、軸線方向の配向と比較して大きいことを特徴とする、
発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル(1,10)。
【符号の説明】
【0072】
1 電線
2 導体
3 絶縁体
4 被覆層
10 ケーブル
41 下層
42 上層
図1
図2