特許第6962693号(P6962693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962693
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/06 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   H01L43/06 Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-38543(P2017-38543)
(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公開番号】特開2018-147932(P2018-147932A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飛岡 孝明
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0210023(US,A1)
【文献】 特許第5966060(JP,B2)
【文献】 特開2007−212435(JP,A)
【文献】 特開2016−111333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた縦型ホール素子とを有する半導体装置であって、
前記縦型ホール素子は、
前記半導体基板上に設けられた第2導電型の半導体層と、
前記半導体層の表面に直線上に設けられ、前記半導体層の濃度よりも高濃度の第2導電型の不純物領域からなる複数の電極と、
前記半導体層の表面において、前記複数の電極の各電極間にそれぞれ設けられ、前記複数の電極をそれぞれ分離する複数の第1導電型の電極分離拡散層とを備え、
前記複数の電極は、制御電流供給電極として機能する電極と、前記制御電流供給電極と交互に配置されたホール電圧出力電極として機能する電極とを含み、
前記ホール電圧出力電極は、前記半導体基板と垂直な深さ方向において、前記半導体層の表面から第1の深さを有し、
前記制御電流供給電極は、前記半導体基板と垂直な深さ方向において、前記第1の深さ及び前記電極分離拡散層の深さよりも深い第2の深さを有し、少なくとも前記電極分離拡散層の底面の深さから前記第2の深さまでの全域で前記半導体層と直接接触していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記制御電流供給電極の不純物の濃度は、前記ホール電圧出力電極の不純物の濃度と略同等であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記制御電流供給電極は、前記第2の深さを有する第2導電型の第1の不純物層と、前記第1の不純物層の表面に設けられ、前記第1の深さを有し、前記第1の不純物層よりも高濃度の第2導電型の第2の不純物層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の不純物層の不純物の濃度は、前記ホール電圧出力電極の不純物の濃度と略同等であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電極分離拡散層の深さは、前記第1の深さと略同等であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記制御電流供給電極の深さは、前記半導体層と略同等であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体層は、エピタキシャル層であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体層および前記電極分離拡散層の表面は、前記電極が設けられている領域を除いて絶縁膜で覆われていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記制御電流供給電極の数は2つ以上であり、前記ホール電圧出力電極の数は1つ以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記縦型ホール素子が前記半導体基板上に二つ設けられ、
前記二つの縦型ホール素子の一方における前記電極の数と前記二つの縦型ホール素子の他方における前記電極の数とが同数であり、
前記二つの縦型ホール素子の一方においては、前記直線上の両端に位置する電極が前記制御電流供給電極であり、
前記二つの縦型ホール素子の他方においては、前記直線上の両端に位置する電極が前記ホール電圧出力電極であり、
前記二つの縦型ホール素子の一方における前記直線と前記二つの縦型ホール素子の他方における前記直線とが平行であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記縦型ホール素子を囲み、前記縦型ホール素子を周囲から電気的に分離する第1導電型の素子分離拡散層と、
前記素子分離拡散層の周囲に設けられ、前記縦型ホール素子からの出力信号を処理する、あるいは前記縦型ホール素子へ信号を供給するための回路を構成する素子が形成された素子形成領域とをさらに備え、
前記素子形成領域は、第2導電型のウェルを有し、
前記ウェルは、前記第1の不純物層と略同等の深さ及び略同等の濃度分布を有していることを特徴とする請求項3又は4に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、水平方向の磁界を検知する縦型ホール素子を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール素子は、磁気センサとして非接触での位置検知や角度検知が可能であることから様々な用途に用いられている。中でも半導体基板表面に対して垂直な磁界成分(垂直磁場)を検知する横型ホール素子を用いた磁気センサが一般に良く知られているが、基板の表面に対して平行な磁界成分(水平磁場)を検知する縦型ホール素子を用いた磁気センサも各種提案されている。
【0003】
縦型ホール素子では、基板に垂直な方向へ流れる電流と基板に平行な方向へ流れる電流との両方を利用して、水平磁場を検出するのが一般的である。
これに対し、近年では、例えば特許文献1のように、基板に垂直な方向へ流れる電流を低減し、基板に平行な方向へ流れる電流を多くして、これを積極的に利用し、水平磁場を検知する縦型ホール素子が提案されている。
【0004】
特許文献1に開示された縦型ホール素子は、半導体基板に形成されたトレンチと、トレンチの内側面に形成された絶縁膜と、絶縁膜を介してトレンチ内に埋め込まれた導電体と、トレンチの底部に導電体と接続されて形成された濃度の高いコンタクト領域とを備えて構成されている。そして、トレンチ内に埋め込まれた導電体とコンタクト領域とが制御電流供給電極として機能する。
【0005】
かかる構成では、二つの制御電流供給電極間に電流を供給すると、その電流は、トレンチ底部に設けられたコンタクト領域間に流れることとなる。したがって、基板表面と垂直な方向の電流成分をほぼ無くし、電流のほとんど全てを基板表面と平行な方向に流れるようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5966060号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構造では、以下のような問題が生じる。
上述のとおり、二つの制御電流供給電極間に電流を供給すると、電流のほぼ全てが基板表面と平行な方向に流れるが、この電流は、磁気感受部となる半導体基板内において、コンタクト領域間の最短経路となる部分に特に集中して流れることとなる。したがって、コンタクト領域より下の磁気感受部における基板裏面に近い領域には、電流がほとんど流れない状態となる。また、制御電流供給電極を構成する導電体が埋め込まれたトレンチの内側面には絶縁膜が形成されているため、電流は、二つのトレンチの側壁間の磁気感受部にもほとんど流れない。したがって、基板と平行な方向に流れる電流の基板の深さ方向における幅が狭くなる。
【0008】
ホール素子の磁気感度は、流れる電流の幅に比例して高くなることが知られているが、特許文献1の構造では、上述のとおり、基板と平行な方向に流れる電流の幅が狭くなってしまうため、結果として、感度をあまり高くすることができないという問題がある。
したがって、本発明は、基板と平行な方向に流れる電流による感度を向上させた縦型ホール素子を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に設けられた縦型ホール素子とを有する半導体装置であって、前記縦型ホール素子は、前記半導体基板上に設けられた第2導電型の半導体層と、前記半導体層の表面に直線上に設けられ、前記半導体層の濃度よりも高濃度の第2導電型の不純物領域からなる複数の電極と、前記半導体層の表面において、前記複数の電極の各電極間にそれぞれ設けられ、前記複数の電極をそれぞれ分離する複数の第1導電型の電極分離拡散層とを備え、前記複数の電極は、制御電流供給電極として機能する電極と、前記制御電流供給電極と交互に配置されたホール電圧出力電極として機能する電極とを含み、前記ホール電圧出力電極は、第1の深さを有し、前記制御電流供給電極は、前記第1の深さ及び前記電極分離拡散層の深さよりも深い第2の深さを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2導電型の半導体層中に、制御電流供給電極がホール電圧出力電極及び電極分離拡散層よりも深く設けられているため、二つの制御電流供給電極間に電流を流したとき、その電流は、基板と平行な方向に流れ、且つ半導体層内を深さ方向に幅広く、すなわち、電極分離拡散層の底部から駆動電流供給電極の底部までの間の領域全体に亘って流れることとなる。したがって、ホール素子の磁気感度を高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の平面図であり、(b)は、(a)のL1−L1’線に沿った断面図である。
図2図1に示す縦型ホール素子の変形例を示す図であり、図1(a)のL−L’線に沿った断面図である。
図3】(a)は、本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の平面図であり、(b)は、(a)のL2−L2’線に沿った断面図である。
図4】(a)は、本発明の第3の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の平面図であり、(b)は、(a)のL3−L3’線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の縦型ホール素子100を有する半導体装置を説明するための図であり、図1(a)は、平面図、図1(b)は、図1(a)のL1−L1’線に沿った断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置は、P型(第1導電型)の半導体基板10と、半導体基板10上に設けられた縦型ホール素子100と、縦型ホール素子100の周囲を取り囲むように設けられたP型の素子分離拡散層70とを備えている。
【0014】
縦型ホール素子100は、半導体基板10上に設けられたN型(第2導電型)の半導体層20と、N型半導体層20の表面に直線L1−L1’上に設けられたN型の不純物領域からなる電極31、33、35、42、44と、これらの電極をそれぞれ分離するP型の電極分離拡散層51〜54とを備えて構成されている。
【0015】
電極31、33、35、42、44のうち、電極31、33、35は、駆動電流供給電極として機能する電極であり、電極42、44は、ホール電圧出力電極として機能する電極である。駆動電流供給電極31、33、35とホール電圧出力電極42、44とは、図示のとおり、直線L1−L1’上に交互に配置されている。
【0016】
駆動電流供給電極31、33、35は、ホール電圧出力電極42、44及び電極分離拡散層51〜54のいずれの深さよりも深く形成されている。
また、制御電流供給電極31、33、35の濃度とホール電圧出力電極42、44の濃度とは、略同等である。
【0017】
さらに、縦型ホール素子100においては、N型半導体層20の表面の電極31、33、35、42、44が設けられている領域を除く領域を覆うように、絶縁膜として、例えばSiO2膜60が設けられている。これにより、N型半導体層20表面において、半導体基板10と平行に流れる電流を抑制することができる。
【0018】
素子分離拡散層70は、N型半導体層20の底よりも深く、P型の半導体基板10に達するように形成されている。これにより、縦型ホール素子100を半導体基板10上の他の領域(図示せず)から電気的に分離している。
【0019】
なお、本縦型ホール素子100において、P型電極分離拡散層51〜54は、例えば、N型半導体層20内にP型の不純物を選択的に拡散することにより形成される。
また、駆動電流供給電極31、33、35及びホール電圧出力電極42、44は、例えば、以下のようにして形成される。
【0020】
まず、P型電極分離拡散層51〜54形成後に、P型電極分離拡散層51〜54上を覆い、電極31、33、35、42、44を形成する領域を残すように、SiO2膜60を例えばLOCOS法により形成し、これをマスクとしてN型不純物を導入することにより、ホール電圧出力電極42、44が形成される。このとき、駆動電流供給電極31、33、35を形成する領域にもホール電圧出力電極42、44と同じ深さのN型の不純物領域が形成される。ここで、ホール電圧出力電極42、44の深さは、P型電極分離拡散層51〜54の深さより浅くなるように形成される。
【0021】
続いて、駆動電流供給電極31、33、35を形成する領域に開口を有し、ホール電圧出力電極42、44上を覆うレジストを形成し、これをマスクとしてN型不純物を深く導入することにより、駆動電流供給電極31、33、35が形成される。
【0022】
次に、本実施形態の半導体装置における縦型ホール素子100において、半導体基板10と平行な方向の磁界成分を検知する原理について説明する。
磁界は、半導体基板10と平行な方向に、図1(b)において、紙面の奥側から手前側へかかっているものとする。
【0023】
駆動電流供給電極33から駆動電流供給電極31及び35へ電流が流れるように駆動電流供給電極31、33及び35に駆動電流を供給すると、電流は、磁気感受部となるN型半導体層20において、駆動電流供給電極33から駆動電流供給電極31及び35へ向かって、それぞれ半導体基板10と平行な方向(左右方向)に流れる。
【0024】
このとき、電流は、図1(b)に点線で示しているP型電極分離拡散層51〜54の底部から、駆動電流供給電極31、33、35の底部までの間の領域に亘って流れることとなる。すなわち、電流は、深さ方向に幅広く流れることとなる。
このように流れる電流に対し、磁界の作用により、電流と磁界の双方に垂直な方向に起電力が発生する。
【0025】
すなわち、本実施形態では、駆動電流供給電極33から31へ向かって半導体基板10と平行な方向に流れる電流に対しては、半導体基板10からホール電圧出力電極42へ向かう方向(上方向)に、駆動電流供給電極33から35へ向かって半導体基板10と平行な方向に流れる電流に対しては、ホール電圧出力電極44から半導体基板10へ向かう方向(下方向)にそれぞれローレンツ力が発生する。
【0026】
これにより、ホール電圧出力電極42と44との間に電位差が生じ、この電位差によって磁界を検知することができる。
このように、本実施形態によれば、半導体基板と平行な方向に流れる電流の深さ方向における幅を広くすることができる。
【0027】
ホール素子の磁気感度は、流れる電流の幅に比例することから、本実施形態によれば、高い磁気感度を得ることが可能となる。このため、N型半導体層20の厚さは、厚いほど好ましい。
【0028】
なお、本実施形態においては、図1(b)に破線で示した領域全体に亘って電流が均一に流れることが望ましい。そのため、N型半導体層20は、濃度分布が一定であることが好ましい。N型半導体層20の濃度分布を一定にするには、例えば、N型半導体層20をエピタキシャル層とすることで実現できる。
【0029】
さらに、ホール素子の磁気感度は、移動度にも比例して高くなることが知られていることから、磁気感受部であるN型半導体層20の濃度は低いほど好ましく、例えば、1×1015〜1×1017atoms/cm3程度であることが好ましい。
以上のとおり、本実施形態では、半導体基板と平行な方向に流れる電流の深さ方向における幅を広くすることにより磁気感度を高くすることを可能としている。
【0030】
次に、図2に、本実施形態の縦型ホール素子100の変形例を示す。図2は、図1(a)のL1−L1’線に沿った断面図である。
図2に示すように、本変形例では、駆動電流供給電極31、33、35の深さをN型半導体層20の深さと略同等としている。これにより、電流が半導体層20と半導体基板との界面付近まで流れられるようになり、図1(b)に示す例よりも、半導体基板と平行な方向に流れる電流の深さ方向における幅を広くすることができる。
【0031】
また、本変形例では、電極分離拡散層51〜54の深さをホール電圧出力電極42、44の深さと略同等としている。これにより、電流がホール電圧出力電極42、44の近傍まで流れられるようになり、電流の深さ方向における幅をさらに広くすることができる。
【0032】
このように、駆動電流供給電極31、33、35は、半導体層20の厚さの範囲内で深いほど好ましく、電極分離拡散層51〜54は、各電極間を分離できる範囲において浅いほど好ましい。
このように、本変形例によれば、磁気感度をさらに向上させることが可能となる。
【0033】
[第2の実施形態]
ホール素子においては、磁界が印加されていないときでも、いわゆるオフセット電圧が出力されることが知られている。オフセット電圧を除去することが不要な程度に小さい場合は問題ないが、磁気センサとして高い精度が求められる場合等は、オフセット電圧は除去する必要がある。
【0034】
オフセット電圧を除去する方法として、スピニングカレント法が知られている。
縦型ホール素子において、スピニングカレント法によりオフセットキャンセルを行うには、直線上に並べられた複数の電極を、交互に制御電流供給電極とホール電圧出力電極との役割を入れ替えて使用できるようにし、且つ、電流を流す方向を切り替える必要がある。
【0035】
しかし、上記第1の実施形態では、制御電流供給電極がホール電圧出力電極よりも深く形成されていることから、制御電流供給電極とホール電圧出力電極の役割を入れ替えて使用することはできない。
【0036】
そこで、本発明の第2の実施形態として、スピニングカレント法によりオフセットキャンセルを行うことが可能な縦型ホール素子を備えた半導体装置について説明する。
図3(a)は、本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のL2−L2’線に沿った断面図である。
なお、図1に示す縦型ホール素子100を有する半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0037】
本実施形態の半導体装置は、同一半導体基板10上に、二つの縦型ホール素子100及び200を備えて構成されている。
縦型ホール素子100は、図1に示す縦型ホール素子100と同一の構成である。
一方、縦型ホール素子200は、図3(a)の下側に示す平面形状を有し、L2−L2'線に沿った断面図である図3(b)に示す断面形状を有している。
【0038】
縦型ホール素子200は、半導体基板10上に設けられたN型の半導体層20と、N型半導体層20の表面に直線L2−L2'上に設けられたN型の不純物領域からなる電極32、34、41、43、45と、これらの電極をそれぞれ分離するP型の電極分離拡散層51〜54とを備えて構成されている。よって、縦型ホール素子200は、縦型ホール素子100と同数の5つの電極を有している。
【0039】
電極32、34、41、43、45のうち、電極32、34は、駆動電流供給電極として機能する電極であり、電極41、43、45は、ホール電圧出力電極として機能する電極である。駆動電流供給電極32、34とホール電圧出力電極41、43、45とは、図示のとおり、直線L2−L2'上に交互に配置されている。
【0040】
図3(b)に示すように、駆動電流供給電極32、34は、ホール電圧出力電極41、43、45及び電極分離拡散層51〜54のいずれの深さよりも深く形成されている。
また、制御電流供給電極32、34の濃度とホール電圧出力電極41、43、45の濃度とは、略同等である。
【0041】
さらに、縦型ホール素子200においても、縦型ホール素子100と同様、N型半導体層20の表面の電極32、34、41、43、45が設けられている領域を除く領域を覆うように、絶縁膜として、例えばSiO2膜60が設けられている。これにより、N型半導体層20表面において、半導体基板10と平行に流れる電流を抑制することができる。
【0042】
このように、縦型ホール素子200は、縦型ホール素子100における駆動電流供給電極31、33、35をホール電圧出力電極41、43、45に置き換え、縦型ホール素子100におけるホール電圧出力電極42、44を駆動電流供給電極32、34に置き換えた構成となっている。
【0043】
したがって、縦型ホール素子100においては、直線L1−L1’上の両端に位置する電極が制御電流供給電極(31、35)であり、縦型ホール素子200においては、直線L2−L2’上の両端に位置する電極がホール電圧出力電極(41、45)である。
また、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、直線L1−L1’と直線L2−L2’とが平行となるように配置されている。
【0044】
ここで、図3(a)においては、縦型ホール素子100を紙面上側に、縦型ホール素子200を紙面下側に並べて配置した例を示しているが、これに限らず、横に並べて配置する等、直線L1−L1'と直線L2−L2'とが平行になるよう配置されれば、どのような配置であっても構わない。
縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、素子分離拡散層70によって分離されている。
【0045】
なお、縦型ホール素子100、200からの出力信号を処理する、あるいは縦型ホール素子100、200へ信号を供給するための回路を構成するトランジスタ等の素子も素子分離拡散層70によって分離された領域(図示せず)に形成されるが、かかる領域を例えば、図3(a)において、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間に設けても構わない。
【0046】
かかる構成の二つの縦型ホール素子100及び200を備えた半導体装置において、スピニングカレント法により、オフセットキャンセルを行う方法について、以下に説明する。
【0047】
縦型ホール素子100においては、制御電流供給電極33から制御電流供給電極31及び35へ電流を流したときに、ホール電圧出力電極42と44との間の電圧を出力電圧Vout1として得る。また、電流を流す方向を逆方向にする、すなわち、制御電流供給電極31及び35から制御電流供給電極33へ電流を流した時のホール電圧出力電極42と44との間の電圧を出力電圧Vout2として得る。
【0048】
一方、縦型ホール素子200においては、制御電流供給電極32から制御電流供給電極34へ電流を流したときに、ホール電圧出力電極43とホール電圧出力電極41及び45との間の電圧を出力電圧Vout3として得る。また、電流を流す方向を逆方向にする、すなわち、制御電流供給電極34から制御電流供給電極32へ電流を流したときに、ホール電圧出力電極43とホール電圧出力電極41及び45との間の電圧を出力電圧Vout4として得る。
【0049】
そして、縦型ホール素子100の出力電圧Vout1およびVout2と縦型ホール素子200の出力電圧Vout3及びVout4を加減算することにより、オフセット電圧を除去することができる。
【0050】
このように、制御電流供給電極とホール電圧出力電極とで深さが異なってしまい、一直線上に配置された複数の電極を、交互に制御電流供給電極とホール電圧出力電極として入れ替えて使用することができなくなってしまった場合においても、深さの深い制御電流供給電極と浅いホール電圧出力電極を入れ替えた2つの縦型ホール素子100及び200を同一半導体基板10上に形成することにより、等価的に、電流を流す方向を切り替え、且つ制御電流供給電極とホール電圧出力電極との役割を入れ替えるスピニングカレント法を用いることができ、オフセット電圧を除去することが可能となる。
【0051】
また、縦型ホール素子100及び200において、同じタイミングで電流を流すことができるため、一つの縦型ホール素子においてスピニングカレントを行うよりも、オフセット電圧除去を行う処理が短縮できる。したがって、磁場検知の高速化も可能となる。
【0052】
[第3の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態においては、制御電流供給電極31〜35の濃度がホール電圧出力電極41〜45の濃度と略同等であり、深さが異なる例を示した。
本実施形態では、制御電流供給電極を上記第1及び第2の実施形態の制御電流供給電極とは異なる構成とした例について説明する。
【0053】
説明をわかりやすくするために、図1に示す第1の実施形態の縦型ホール素子100において、制御電流供給電極31、33、35を本実施形態による構成の制御電流供給電極に置き換えた例を説明する。
【0054】
図4は、本発明の第3の実施形態の縦型ホール素子300を有する半導体装置を説明するための図であり、図4(a)は、平面図、図4(b)は、図4(a)のL3−L3’線に沿った断面図である。
なお、図1に示す縦型ホール素子100を有する半導体装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0055】
縦型ホール素子300は、半導体基板10上に設けられたN型の半導体層20と、N型半導体層20の表面に直線L3−L3’上に設けられたN型の不純物領域からなる電極331、333、335、42、44と、これらの電極をそれぞれ分離するP型の電極分離拡散層51〜54とを備えて構成されている。
【0056】
電極331、333、335、42、44のうち、電極331、333、335は、駆動電流供給電極として機能する電極であり、電極42、44は、ホール電圧出力電極として機能する電極である。駆動電流供給電極331、333、335とホール電圧出力電極42、44とは、図示のとおり、直線L3−L3’上に交互に配置されている。
【0057】
駆動電流供給電極331、333、335は、それぞれ、N型不純物層331a及び331b、N型不純物層333a及び333b、N型不純物層335a及び335bによって構成されている。
【0058】
N型不純物層331a、333a、335aは、N型不純物層331b、333b、335bの表面に設けられ、ホール電圧出力電極42、44と略同一濃度且つ略同一深さを有している。
【0059】
N型不純物層331b、333b、335bは、ホール電圧出力電極42、44及び電極分離拡散層51〜54のいずれの深さよりも深く形成されている。また、N型不純物層331b、333b、335bは、N型不純物層331a、333a、335aよりも濃度が低く、且つ広い幅を有している。
【0060】
一方、P型素子分離拡散層70によって縦型ホール素子300と電気的に分離された半導体基板10上の他の領域(図示せず)には、縦型ホール素子300からの出力信号を処理する、あるいは縦型ホール素子300へ信号を供給するための回路を構成するトランジスタ等の素子が設けられる。かかる素子を形成するために、当該領域の少なくとも一部には、Nウェルが形成される。
【0061】
したがって、N型不純物層331b、333b、335bは、上記Nウェルと共通の工程で形成することができる。これにより、当該Nウェルは、N型不純物層331b、333b、335bと略同一の深さ及び略同一の濃度分布を有することとなる。
【0062】
このように、本実施形態によれば、製造プロセスを増加させることなく、N型不純物層331a、333a、335a及びN型不純物層331b、333b、335bからなる駆動電流供給電極331、333、335を形成することができる。
【0063】
本実施形態に示した駆動電流供給電極の構成は、図1に示す第1の実施形態だけでなく、その変形例を示した図2の例や、図3に示す第2の実施形態における駆動電流供給電極にも適用することが可能である。
【0064】
また、本実施形態における駆動電流供給電極331、333、335も、電流の深さ方向における幅をさらに広くするために、図2に示した第1の実施形態の縦型ホール素子100の変形例における駆動電流供給電極31、33、35と同様、深いほど好ましい。この場合、N型不純物層331a、333a、335aの深さは変えずに、N型不純物層331b、333b、335bの深さを深くすることが好ましい。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態においては、第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明したが、導電型を入れ替えて、第1導電型をN型、第2導電型をP型としても構わない。
【0066】
また、上記実施形態では、電極の数は5つとしたが、これは、スピニングカレント法によるオフセットキャンセル処を行うために必要となる電極の数である。したがって、スピニングカレント法によるオフセットキャンセルが不要な程度にオフセット電圧が小さくできる場合等には、駆動電流供給電極2つとホール電圧出力電圧1つの合計3つ以上の電極があればよい。
【0067】
また、上記第2の実施形態においては、縦型ホール素子100及び200がそれぞれ5つの電極を備える例を示したが、スピニングカレント法は、電極の数は5つに限らず、5つ以上の電極があれば実施することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 半導体基板
20 N型半導体層
31、32、33、34、35 駆動電流供給電極
41、42、43、44、45 ホール電圧出力電極
51、52、53、54 電極分離拡散層
60 絶縁膜
70 素子分離拡散層
100、200、300 縦型ホール素子
図1
図2
図3
図4