特許第6962703号(P6962703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962703粒状繊維吹付けノズル、粒状繊維吹付け装置及び粒状繊維吹付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962703
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】粒状繊維吹付けノズル、粒状繊維吹付け装置及び粒状繊維吹付け方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/14 20060101AFI20211025BHJP
   B05D 1/14 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B05B7/14
   B05D1/14
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-73218(P2017-73218)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171600(P2018-171600A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青野 利彦
(72)【発明者】
【氏名】谷辺 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉野 雄亮
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−006644(JP,A)
【文献】 実開昭53−079860(JP,U)
【文献】 実開昭56−110858(JP,U)
【文献】 実開昭56−098360(JP,U)
【文献】 特開2007−061758(JP,A)
【文献】 実開昭58−156550(JP,U)
【文献】 国際公開第96/026013(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−17/08
B05D 1/00−7/26
E04F 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状繊維噴射口を備える粒状繊維圧送管と、4個以上の凝集材噴射口とを具備し、粒状繊維噴射口を挟んで凝集材噴射口が向かい合い、該凝集材噴射口から噴射される凝集材が粒状繊維圧送管の中心軸側に傾斜する平面状に噴射されるように凝集材噴射口を粒状繊維噴射口の外縁に配置してあり、上記粒状繊維噴射口が、断面扁平な形状であることを特徴とする粒状繊維吹付けノズル。
【請求項2】
求項1記載の粒状繊維吹付けノズルと、粒状繊維輸送装置と、凝集材輸送装置と、空気圧送装置とを具備し、粒状繊維輸送装置が粒状繊維吹付けノズルの粒状繊維圧送管に連通し、凝集材輸送装置及び空気圧送装置が粒状繊維吹付けノズルの凝集材噴射口に連通していることを特徴とする粒状繊維吹付け装置
【請求項3】
請求項記載の粒状繊維吹付け装置を用い、上記粒状繊維輸送装置により粒状繊維を圧送し粒状繊維吹付けノズルにおける粒状繊維圧送管の吐出口より吐出させた粒状繊維と、凝集材輸送装置により圧送した凝集材を空気圧送装置により圧送した圧縮空気とともに向い合う凝集材噴射口から、粒状繊維圧送管の中心軸側に傾斜する平面状に噴射し、粒状繊維と凝集材とを略線状に合流混合させて構造物に吹付けることを特徴とする粒状繊維吹付け方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状繊維吹付けノズルに関する。詳しくは、吹付け時に発生する粉塵を抑制できる粒状繊維吹付けノズルに関する。また、本発明は、粒状繊維吹付け装置に関する。詳しくは、粒状繊維吹付け時に発生する粉塵を抑制できる粒状繊維吹付け装置に関する。また、本発明は、粒状繊維吹付け方法に関する。詳しくは、粒状繊維吹付け時に発生する粉塵量が少ない粒状繊維吹付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火性、防火性、吸音性および/または断熱性などを付与する目的で、構造物表面にロックウールからなる繊維層を設けることが広く行われている。繊維層の形成には、ロックウールからなる粒状繊維(直径数mm〜数cmの繊維塊)および水を主成分とする凝集材を用いた吹付工法が用いられることも多い。ロックウール吹付工法としては、乾式工法、湿式工法、半乾式工法が知られている。乾式工法は、予め、ロックウール粒状繊維とセメントとを乾式混合した乾燥混合物(乾式混合物、以下「ロックウール・セメント混綿」ということがある。)をノズルから吐出し、これと同時にノズルの周縁に配置した複数個の噴水口より圧力水を噴射し、両者を混合吹付ける工法である。この乾式工法は、嵩比重が0.2〜0.3と軽量の被覆層を形成できるが、施工時にセメントやロックウールによる発塵が著しく、環境上の問題が指摘されている。湿式工法は、乾式工法の欠陥を改善する為になされたものである。この湿式工法は、主材のロックウール粒状繊維とセメントに界面活性剤と増粘剤を配合してなる吹付施工用被覆材を用い、これに水を加えたペーストを圧縮空気によりノズルから吹付ける方法である。この湿式工法は、浮遊粉塵の問題点は改善されたものの、形成される被覆層の嵩比重が0.4〜0.6と重く、乾式工法に比べてコストが高いという問題が指摘されている。
【0003】
半乾式工法は、予め、ロックウール粒状繊維とセメントとを混合しない工法である。半乾式工法において、ロックウール粒状繊維は、解繊機(解綿機)で解繊(解綿)・破砕され(細かく粒状(直径数mm〜数cm程度の繊維塊)にされ)、ロータリーバルブ等により定量的に送り出され、エアブロアによりホース内を圧送され、吹付ノズルに供給される。セメントはスラリー槽で水と混合されてセメントスラリーとされた後、スラリーポンプにより搬送パイプを通って吹付ノズルに供給される。そのセメントスラリーは、吹付ノズルの周縁から噴射されるか、或いは吹付ノズルの中心軸付近から噴射され、ロックウールと合流・混合し、ロックウールとセメント水和物からなる繊維層が形成される。半乾式工法によれば、浮遊粉塵が減少し、乾式工法に近い嵩比重の被覆層が形成できる。このようなことから、半乾式工法がロックウール吹付工法の主流となっている。半乾式工法は乾式工法に比べて吹付け施工時に発生する粉塵量を少なくできるものの、吹付け装置をコンパクトなものにし難いという問題がある。吹付け装置をコンパクトなものにし易いのは、ロックウール・セメント混綿を用いる乾式工法である。また、ポリスチレンフォームや硬質ウレタンフォーム等の発泡樹脂系断熱材に、半乾式工法で厚み30mmでロックウールとセメント水和物からなる繊維層で被覆しても不燃性が不充分であり、半乾式工法で圧送するロックウールのみからなる粒状繊維をロックウール・セメント混綿に替えることで、厚み30mmに形成した繊維層で充分な不燃性が得られることが本発明者等の検討により分かった(例えば特許文献1参照。)。そこで、ロックウール・セメント混綿を吹付けノズルまで輸送するロックウール吹付工法、即ち、混綿を用いる乾式工法又は半乾式工法のロックウール吹付工法であっても吹付け施工時に発生する粉塵を抑制できる技術が望まれていた。
【0004】
繊維質等と水硬性無機質接着剤等を配合した材料を通す導管の先端外周に空気と水を一度に噴射する噴射孔を複数備える吹付けノズルを用いる方法が提案されている(例えば特許文献2又は3参照。)。また、吹付けノズル前側に複数の給水ノズルを、該給水ノズルから出る加圧された水の噴流の軸が吹付けノズルから出る混綿の噴流の軸線上で交叉するように環状に配置する技術が提案されている(例えば特許文献4参照。)。
【0005】
しかし、吹付けノズルから噴射される混綿の噴流に、その周囲から水を混綿の噴流の軸線上で交叉するように噴射すると、粉塵は低減されるが、混綿と水との合流混合が略一点で行われるため、表面が平坦な繊維層を形成することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−141868号公報
【特許文献2】実公昭55−011961号公報
【特許文献3】実用新案登録第2582028号公報
【特許文献4】実公昭49−000053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粒状繊維とセメントとを乾式混合した乾燥混合物(乾式混合物、以下「混綿」ということがある。)又は水を含む凝集材と混合前の粒状繊維を吹付けノズルまで輸送し該吹付けノズルの吐出口より噴射した乾式混合物又は乾燥粒状繊維に、上記吐出口の付近に配置した凝集材噴射口(凝集材噴射ノズル)より排出(噴射)される水を主要成分とする凝集材を合流混合させる吹付工法に用いたときに発生する粉塵が少なく、且つ吹付けにより形成される繊維層の表面を平坦に施工し易い、粒状繊維吹付けノズル及び粒状繊維吹付け装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、粒状繊維吹付け時に発生する粉塵量を抑制できる粒状繊維吹付け方法、即ち、粒状繊維とセメントとの乾式混合物又は乾燥粒状繊維を吹付けノズルまで輸送し該吹付けノズルの吐出口より噴射した乾式混合物(混綿)又は乾燥粒状繊維に、上記吐出口の付近に配置した凝集材噴射口(凝集材噴射ノズル)より排出(噴射)される水を主要成分とする凝集材を合流混合させる粒状繊維吹付け方法において、発生する粉塵が少なく、且つ吹付けにより形成される繊維層の表面を平坦にすることが行い易い、粒状繊維吹付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、特定の粒状繊維吹付けノズルを用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)表す粒状繊維吹付けノズル、()で表す粒状繊維吹付け装置、並びに()で表す粒状繊維吹付け方法である。
(1)粒状繊維噴射口を備える粒状繊維圧送管と、4個以上の凝集材噴射口とを具備し、粒状繊維噴射口を挟んで凝集材噴射口が向かい合い、該凝集材噴射口から噴射される凝集材が粒状繊維圧送管の中心軸側に傾斜する平面状に噴射されるように凝集材噴射口を粒状繊維噴射口の外縁に配置してあり、上記粒状繊維噴射口が、断面扁平な形状であることを特徴とする粒状繊維吹付けノズル。
(2)記(1)の粒状繊維吹付けノズルと、粒状繊維輸送装置と、凝集材輸送装置と、空気圧送装置とを具備し、粒状繊維輸送装置が粒状繊維吹付けノズルの粒状繊維圧送管に連通し、凝集材輸送装置及び空気圧送装置が粒状繊維吹付けノズルの凝集材噴射口に連通していることを特徴とする粒状繊維吹付け装置
(3)上記()の粒状繊維吹付け装置を用い、上記粒状繊維輸送装置により粒状繊維を圧送し粒状繊維吹付けノズルにおける粒状繊維圧送管の吐出口より吐出させた粒状繊維と、凝集材輸送装置により圧送した凝集材を空気圧送装置により圧送した圧縮空気とともに向い合う凝集材噴射口から、粒状繊維圧送管の中心軸側に傾斜する平面状に噴射し、粒状繊維と凝集材とを略線状に合流混合させて構造物に吹付けることを特徴とする粒状繊維吹付け方法
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粒状繊維とセメントとを乾式混合した乾燥混合物(乾式混合物、以下「混綿」ということがある。)又は水を含む凝集材と混合前の粒状繊維を吹付けノズルまで輸送し該吹付けノズルの吐出口より噴射した乾式混合物又は乾燥粒状繊維に、上記吐出口の付近に配置した凝集材噴射口(凝集材噴射ノズル)より排出(噴射)される水を主要成分とする凝集材を合流混合させる吹付工法に用いたときに発生する粉塵が少なく、且つ吹付けにより形成される繊維層の表面を平坦に施工し易い、粒状繊維吹付けノズル及び粒状繊維吹付け装置が得られる。
【0011】
また、本発明によれば、粒状繊維吹付け時に発生する粉塵量を抑制できる粒状繊維吹付け方法、即ち、粒状繊維とセメントとの乾式混合物又は乾燥粒状繊維を吹付けノズルまで輸送し該吹付けノズルの吐出口より噴射した乾式混合物(混綿)又は乾燥粒状繊維に、上記吐出口の付近に配置した凝集材噴射口(凝集材噴射ノズル)より排出(噴射)される水を主要成分とする凝集材を合流混合させる粒状繊維吹付け方法において、発生する粉塵が少なく、且つ吹付けにより形成される繊維層の表面を平坦にすることが行い易い、粒状繊維吹付け方法が得られる。
【0012】
本発明によれば、粒状繊維吹付け時に発生する粉塵量を抑制できるので、粒状繊維吹付け作業が行い易く、保護具の簡素化、清掃作業の軽減又は省略等が図られ、施工効率の向上も望める。また、吹付けにより形成される繊維層の表面を平坦に施工し易いので、作業効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の粒状繊維吹付けノズルの一例の模式的な断面図である。
図2】本発明の粒状繊維吹付けノズルを用いた粒状繊維吹付け装置の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の粒状繊維吹付けノズルは、粒状繊維噴射口を備える粒状繊維圧送管と、4個以上の凝集材噴射口とを具備し、粒状繊維噴射口を挟んで凝集材噴射口が向かい合い、該凝集材噴射口から噴射される凝集材が粒状繊維圧送管の中心軸側に傾斜する平面状に噴射されるように凝集材噴射口を粒状繊維噴射口の外縁に配置してあることを特徴とする。上記粒状繊維圧送管は、粒状繊維噴射口を備えており、少なくともこの粒状繊維噴射口の形状が扁平及び粒状繊維噴射口付近3cm程度は断面形状が扁平であることが好ましい。粒状繊維噴射口が次式(1)で求める扁平率が0.28以上0.98以下であることがより好ましく、0.5以上0.95以下であることが更に好ましい。
扁平率=(長径−短径)÷長径 ・・・・・ (1)
粒状繊維圧送管の粒状繊維噴射口の反対側(対向する側)の開口部は、粒状繊維輸送装置と連通する輸送管を接続する。粒状繊維輸送装置により圧送されてきた粒状繊維は、粒状繊維圧送管内を通り、粒状繊維噴射口より吐出される。粒状繊維噴射口が扁平であると、噴出された粒状繊維の噴流の断面形状も扁平となるため、凝集材噴射口から噴出された凝集材と混合し易くなり粉塵がより低減するとともに、粒状繊維と凝集材との混合物が断面扁平に吹き付けられるため、繊維層の表面を平坦に施工し易い。
【0015】
上記凝集材噴射口は、粒状繊維噴射口を挟んで凝集材噴射口が向かい合い、該凝集材噴射口から噴射される凝集材が粒状繊維圧送管の中心軸側に傾斜する平面状に噴射されるように凝集材噴射口を粒状繊維噴射口の外縁に片側2個以上配置してある。ここで平面状とは、ある程度の厚みがあってもよい。凝集材噴射口から噴射される凝集材の噴流の断面形状が楕円又は線状となるような凝集材噴射口の形状であると、凝集材の噴流が平面形状となり易いので好ましい。凝集材噴射口は、片側2個以上、両側で4個以上とするが、好ましくは片側2〜10個、両側で4〜20個とすることが好ましく、より好ましくは片側3〜5個、両側で6〜10個とすることが凝集材の噴流を平面に噴霧し易く且つ粒状繊維吹付けノズルの重さを軽くできることから好ましい。
【0016】
粒状繊維圧送管の中心軸側を挟んで両側から噴射される凝集材の噴流が交差する位置(交差位置)が、粒状繊維圧送管の中心軸であることが好ましい。また、交差位置と状繊維圧送管の吐出口との距離(交差距離)が300〜1200mmとなるように、各凝集材噴射口を配置することが好ましい。また、凝集材噴射口と粒状繊維圧送管との距離は、粒状繊維噴射口の短径の5倍以内の距離とすることが好ましく、粒状繊維噴射口の短径の3倍以内の距離とすることがより好ましい。
【0017】
本発明において、粒状繊維とは、直径数mm〜数cm程度の繊維塊、好ましくは直径5mm〜5cmの繊維塊であり、その材質としては無機繊維、有機繊維及び無機繊維と有機繊維の混合物でもよく、好ましくは耐火性又は不燃性を得易いので無機繊維であり、より好ましくは鉱物繊維である。最も好ましくはロックウールである。本発明において、ロックウールは、溶融炉で溶融された岩石や高炉スラグ等を主体とする材料が、急冷されながら、繊維化された素材(鉱物繊維)である。例えば、高炉スラグを主体とする材料より製造されたスラグウールなども含まれる。前記ロックウールは、繊維化された鉱物繊維を集めただけの原綿を解綿機等で細かくした粒状ロックウールを好適に用いることができる。原綿を用いる場合は、輸送前に解綿機等で細かくして用いる。粒状ロックウールは、ロックウールの原綿を解砕、解綿、切断、分級(例えば、篩い分け)、造粒などの工程の一種又は二種以上の組み合わせにより得られる。斯かるロックウールが用いられた場合、熱がロックウールを被覆する下地に伝わり難い。本発明の粒状繊維としては、セメントとの乾式混合物が、形成する繊維層が耐火性又は不燃性を得易いことから好ましい。
【0018】
本発明における凝集材としては、水、水溶液、無機質スラリー及び樹脂エマルション並びに無機質含有樹脂エマルション(樹脂含有無機質スラリー)が好適な例として挙げられ、より好ましい例としては水、水溶液、セメントスラリー及び合成樹脂エマルション(ポリマー)並びにセメント含有樹脂エマルション(樹脂含有セメントスラリー)が挙げられる。本発明に用いるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、アルミナセメント、フライアッシュセメントや高炉セメント等の混合セメント、超速硬セメント等の急硬性セメント等の水硬性セメントが挙げられる。また、本発明の凝集材に用いる樹脂エマルションとしては、スチレン・ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体又はメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の合成ゴム、天然ゴム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリクロロピレン、ポリアクリル酸エステル、スチレン・アクリル共重合体、オールアクリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル・アクリル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体、変性酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニルビニルバーサテート共重合体、アクリル・酢酸ビニル・ベオバ(t‐デカン酸ビニルの商品名)共重合体等の酢酸ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂等の合成樹脂、アスファルト及びゴムアスファルト等の瀝青質等のエマルションが挙げられる。
【0019】
本発明の粒状繊維吹付け装置は、上記の粒状繊維吹付けノズルと、粒状繊維輸送装置と、凝集材輸送装置と、空気圧送装置とを具備し、粒状繊維輸送装置が粒状繊維吹付けノズルの粒状繊維圧送管に連通し、凝集材輸送装置及び空気圧送装置が粒状繊維吹付けノズルの凝集材噴射口に連通している。
【0020】
粒状繊維吹付けノズルの粒状繊維圧送管は、粒状繊維輸送装置と連通している。この粒状繊維輸送装置は、粒状繊維用定量供給装置と、送風機(ブロア)と、材料圧送ホース(マテリアルホース)とを具備し、粒状繊維用定量供給装置としては解綿機を用いることもできる。この場合、解綿機は、パッキングにより圧縮されている粒状繊維を解しながら粒状繊維の圧送経路内に定量供給する。送風機(ブロア)と、粒状繊維用定量供給装置と、材料圧送ホース(マテリアルホース)と、粒状繊維吹付けノズルの粒状繊維圧送管は連通している。圧送経路内に定量供給された粒状繊維は、送風機(ブロア)より送られる空気により、材料圧送ホース内を通り、粒状繊維吹付けノズルの粒状繊維圧送管に送られ、該粒状繊維圧送管の先端部の吐出口より噴射される。
【0021】
また、空気圧送装置より凝集材噴射ノズルに圧送される圧縮空気の圧力が0.1〜2MPaの範囲内であると粉塵の発生の抑制効果に優れることから好ましい。空気圧送装置より凝集材噴射ノズルに圧送(供給)される圧縮空気の圧力は、0.1〜1.5MPaが好ましく、0.2〜1.0MPaとすることがより好ましい。空気圧送装置としては、コンプレッサーが安定した圧力で連続して圧縮空気を圧送できることから好ましい。
【0022】
本発明の粒状繊維吹付け方法は、上記の粒状繊維吹付け装置を用い、上記粒状繊維輸送装置により粒状繊維を圧送し粒状繊維吹付けノズルにおける粒状繊維圧送管の吐出口より吐出させた粒状繊維と、凝集材輸送装置により圧送した凝集材を空気圧送装置により圧送した圧縮空気とともに向い合う凝集材噴射口から、粒状繊維圧送管の中心軸側に傾斜する平面状に噴射し、粒状繊維と凝集材とを略線状に合流混合させて構造物に吹付けることを特徴とする。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明を実施例を基に説明をするが、本発明はその実施例に限定されない。図1に本発明の粒状繊維吹付けノズルの一例の模式的な断面図を示した。また、図2に、本発明の粒状繊維吹付けノズルを用いた粒状繊維吹付け装置の一例の模式図を示した。混綿11を解綿機10に投入し、解すとともに粒状繊維の圧送経路内に定量供給する。圧送経路内に入った粒状繊維は、ブロア12より経路内に送られる空気によりマテリアルホース9内を通り、粒状繊維吹付けノズル1の粒状繊維圧送管2内に送られ、扁平形状の粒状繊維噴射口(吐出口)3より射出される。凝集材13が入った凝集材貯留槽8と吸引ホースで連通するポンプ7により凝集材用ホース内を通り、粒状繊維吹付けノズル1の凝集材用耐圧ホース取り付け部21に凝集材13が圧送される。また、コンプレッサー6(空気圧送装置)により、圧縮空気用耐圧ホースおよび圧縮空気用耐圧ホース取り付け部22を通り凝集材噴射ノズル14に圧縮空気が圧送される。圧縮空気と凝集材が粒状繊維吹付けノズル1の内部で合流し、凝集材噴射ノズル14の直線状の噴出孔15より噴射される。噴射された凝集材の噴流4と、吐出口3より射出された粒状繊維の噴流5が、吐出口3の先で合流混合し、構造物の表面に吹付けられ、繊維層を形成する。この圧縮空気とともに断面扁平に噴出(吐出)した凝集材13が、粒状繊維噴射口(吐出口)3より断面扁平に射出された粒状繊維と、粒状繊維吹付けノズル1の先で合流混合する。この合流混合することで、発生する粉塵が抑制される。その断面扁平の合流混合物が構造物の表面に線状に吹付けられ、表面を平坦に繊維層を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、吹付けロックウール等に好適に用いることができ、粒状繊維、セメント水和物からなる繊維層を発生する粉塵を抑制しながら構築することができ、耐火被覆構造物、不燃構造物又は断熱性構造物の構築に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 粒状繊維吹付けノズル
2 粒状繊維圧送管
3 粒状繊維噴射口(吐出口)
4 凝集材の噴流
5 粒状繊維の噴流
6 コンプレッサー(空気圧送装置)
7 ポンプ
8 凝集材貯留槽
9 マテリアルホース
10 解綿機
11 混綿
12 ブロア
14 凝集材噴射ノズル
15 噴出孔(凝集材噴射口)
16 凝集材の流れの中心軸
17 粒状繊維圧送管の中心軸
18 交差位置
19 粒状繊維圧送管の中心軸と、圧縮空気噴射口から噴射される圧縮空気の流れの中心軸とがなす角θ
20 粒状繊維吹付け装置
21 凝集材用耐圧ホース取り付け部
22 圧縮空気用耐圧ホース取り付け部
図1
図2