(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜方向傾き補正値計算部は、前記回転角の値に応じた、前記第1補正値と前記第2補正値の間の案分処理により、前記傾斜方向傾きの前記補正値を計算する、請求項1に記載の傾き導出装置。
前記傾斜方向傾き補正値計算部は、前記回転角を、前記第1方向と前記第2方向の間の角度へと変換して変換値を計算し、該変換値を基に前記案分処理を行う、請求項2に記載の傾き導出装置。
前記傾斜方向傾き補正値計算部が計算した前記傾斜方向傾きの前記補正値を基に、前記直交方向からの前記第1方向に向けての前記軸の傾きである第1方向傾きと、前記直交方向からの前記第2方向に向けての前記軸の傾きである第2方向傾きを導出する、第1及び第2方向傾き計算部を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の傾き導出装置。
前記傾斜方向傾き補正値計算部は、計算した前記傾斜方向傾きの前記補正値を、前記傾斜方向傾きとして出力する、請求項1から5のいずれか一項に記載の傾き導出装置。
前記傾斜方向傾きの前記補正値を基に、前記直交方向からの前記第1方向に向けての前記軸の傾きである第1方向傾きと、前記直交方向からの前記第2方向に向けての前記軸の傾きである第2方向傾きを導出する、請求項7から10のいずれか一項に記載の傾き導出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11に示されるような指示器101を使用する場合においては、第1電極101aは位置検出装置100に密接されているが、第2電極101bは、位置検出装置100から、高さHだけ離れて位置づけられている。このため、第1電極101aに比べると、第2電極101bは、センサ100aによる検出値が小さくなる。
また、上記のように第2電極101bは、軸Cの周囲に、例えば軸Cを囲うようにリング状に、第1電極101aに比べると大きな体積で形成されているため、センサ100aが第2電極101bとして検出する範囲が大きい。
このように、センサ100aは、第2電極101bの位置として、小さい検出値が広く分布した領域を検出する。このため、位置検出装置100がこの中から、上記のような傾きの計算の基となる第2電極101bの検出座標Bを正確に特定するのは容易ではない。
【0007】
第2電極101bは、軸Cの周囲に、例えば軸Cを囲うようにリング状に設けられているため、位置検出装置100が第2電極101bの位置として検出する領域の形状は、指示器101の傾きにより変化し一定の形状とはならない。このため、例えば第2電極101bに相当する領域の形状を基に、座標Bを特定するのも容易ではない。
【0008】
また、第2電極101bは軸Cから一定の距離を置いた位置に設けられている。このため、指示器101の傾きに応じて、計算時に考慮すべき電極101a、101b間の距離Lの値も、厳密には変化する実効値として扱う必要がある。
【0009】
更に、上記のようにセンサ100aによる第2電極101bの検出値は小さな値である。このため、何らかのノイズが介入した場合においては、ノイズが大きく影響し、座標Bの特定が更に困難なものとなる。
【0010】
上記の要因が相乗し、座標Bの正確な特定が困難であるため、特定された座標Bの値は誤差を多分に含むものとなりがちである。結果として、上記のように特定された座標Bの値を基に、純粋に理論式によって導出される傾きの精度は高くはない。
【0011】
一般にセンサ100aは、直交する2方向の各々に延びる複数の導体により形成されている。これら導体の各々は所定の幅を備えており、異なる方向に延びる導体が交差した部分の各々には、導体同士がオーバーラップされて1つの単位102が形成されている。
この一単位102の、X方向における長さ102xとY方向における長さ102yが、XY双方の方向における導体数等に因り、異なることがある。一単位102の長さ102x、102yは、位置検出装置100が表示装置の場合には、XY双方の方向における解像度にも依存しうる。これに伴い、XY双方向において、一単位102の感度に差異が生じる場合もある。
このような場合においては、指示器101をX方向とY方向の各々に同じ角度だけ傾けたとしても、異なる値が検出され得る。すなわち、センサの一単位102の長さがX方向とY方向において異なると、導出される傾きの精度は更に低減し得る。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、指示器の傾きを精度よく導出可能な、傾き導出装置及び傾き導出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る傾き導出装置は、ペン状の指示器の傾きを導出する傾き導出装置であって、前記指示器は、軸方向の一端に設けられた第1電極と、前記軸の周囲に設けられた第2電極を備え、前記第1電極の位置と、前記第2電極の位置を検出する平面状のセンサと、制御部を備え、該制御部は、前記指示器を前記センサに直交する直交方向から前記センサ上の第1方向に向けて傾けた際の、前記第1及び第2電極の各々の前記位置を基に計算された値に対応する第1入力値と、前記軸の傾きの補正値である第1補正値との対応関係が登録された第1ルックアップテーブルと、前記指示器を前記センサ上の前記第1方向とは異なる第2方向に向けて傾けた際の、前記第1及び第2電極の各々の前記位置を基に計算された値に対応する第2入力値と、前記軸の傾きの補正値である第2補正値との対応関係が登録された第2ルックアップテーブルと、前記第1及び第2電極の各々の前記位置を基に入力値を計算して、前記第1及び第2入力値として前記第1及び第2ルックアップテーブルへ入力する入力計算部と、前記第1及び第2電極の各々の前記位置を基に、前記第1方向から前記第2方向に向けた前記軸の回転角を導出する回転角計算部と、前記回転角と前記第1及び第2補正値から、前記直交方向から前記軸の傾いた方向に向けた前記軸の傾きである傾斜方向傾きの補正値を計算する傾斜方向傾き補正値計算部と、を備える。
上記のような構成によれば、第2電極がセンサから離れていることに起因する微弱な検出値、第2電極の形状に起因する広い検出範囲等の要因により、第1及び第2電極の各々の位置を基に計算された入力値が誤差を多分に含むものとなっていたとしても、この誤差に対応し解消した補正値を第1及び第2ルックアップテーブルに格納し、傾斜方向傾き補正値計算部においてはこの補正値、すなわち第1及び第2ルックアップテーブルが出力する第1及び第2補正値から、傾斜方向傾きの補正値を計算する。このため、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器の傾きを精度よく導出することができる。
また、第1及び第2ルックアップテーブルには、互いに異なる第1及び第2方向の各々に向けて指示器を傾けた際の、軸の傾きの補正値である第1及び第2補正値が格納されている。更に、傾斜方向傾き補正値計算部は、これら第1及び第2補正値と、回転角計算部により計算された第1方向から第2方向に向けた軸の回転角を基に、傾斜方向傾きの補正値を計算する。すなわち、軸が第1方向と第2方向の間のどの方向に傾けられているかを計算し、第1方向へ傾けた場合の補正値と第2方向へ傾けた場合の補正値の、例えば案分処理等により、傾斜方向傾きの補正値を計算可能である。これにより、センサの一単位の長さや感度が第1方向と第2方向において異なる場合であっても、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器の傾きを精度よく導出することができる。
【0014】
本発明の一態様においては、前記傾斜方向傾き補正値計算部は、前記回転角の値に応じた、前記第1補正値と前記第2補正値の間の案分処理により、前記傾斜方向傾きの前記補正値を計算する。
上記のような構成によれば、軸を第1の方向へ傾けた場合の第1補正値と第2の方向へ傾けた場合の第2補正値の双方に対し、回転角の値に応じて案分処理を行っている。このため、傾斜方向傾きの補正値の計算に際し、第1補正値と第2補正値の各々を適切に反映することができる。これにより、センサの一単位の長さや感度が第1方向と第2方向において異なる場合であっても、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器の傾きを精度よく導出することができる。
【0015】
本発明の別の態様においては、前記傾斜方向傾き補正値計算部は、前記回転角を、前記第1方向と前記第2方向の間の角度へと変換して変換値を計算し、該変換値を基に前記案分処理を行う。
上記のような構成によれば、回転角を第1方向と第2方向の間の角度へと変換するため、案分処理を適切に実施可能である。これにより、センサの一単位の長さや感度が第1方向と第2方向において異なる場合であっても、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器の傾きを精度よく導出することができる。
【0016】
本発明の別の態様においては、前記入力計算部は、前記センサ上における前記第1及び第2電極の各々の前記位置の距離であるセンサ上距離を、前記軸方向における前記第1電極と前記第2電極の距離である軸方向距離で除算して、前記入力値を計算する。
上記のような構成によれば、入力値の計算時に三角関数等の複雑な演算を要しないため、計算量やメモリ量を低減することができる。
【0017】
本発明の別の態様においては、前記傾斜方向傾き補正値計算部が計算した前記傾斜方向傾きの前記補正値を基に、前記直交方向からの前記第1方向に向けての前記軸の傾きである第1方向傾きと、前記直交方向からの前記第2方向に向けての前記軸の傾きである第2方向傾きを導出する、第1及び第2方向傾き計算部を更に備える。
上記のような構成によれば、精度の高い第1方向傾きと第2方向傾きを導出可能である。
【0018】
本発明の別の態様においては、前記傾斜方向傾き補正値計算部は、計算した前記傾斜方向傾きの前記補正値を、前記傾斜方向傾きとして出力する。
上記のような構成によれば、精度の高い傾斜方向傾きを導出可能である。
【0019】
また、本発明に係る傾き導出方法は、ペン状の指示器によって指示された傾きを導出する傾き導出方法であって、平面状のセンサにより、前記指示器の軸方向の一端に設けられた第1電極と、前記軸を囲うように設けられた第2電極の各々の位置を検出し、前記第1及び第2電極の各々の前記位置を基に入力値を計算し、前記指示器を前記センサに直交する直交方向から前記センサ上の第1方向に向けて傾けた際の、前記第1及び第2電極の各々の前記位置を基に計算された値に対応する第1入力値と、前記軸の傾きの補正値である第1補正値との対応関係が登録された第1ルックアップテーブルへ、前記入力値を前記第1入力値として入力し、前記指示器を前記センサ上の前記第1方向とは異なる第2方向に向けて傾けた際の、前記第1及び第2電極の各々の前記位置を基に計算された値に対応する第2入力値と、前記軸の傾きの補正値である第2補正値との対応関係が登録された第2ルックアップテーブルへ、前記入力値を前記第2入力値として入力し、前記第1及び第2電極の各々の前記位置を基に、前記第1方向から前記第2方向に向けた前記軸の回転角を導出し、前記回転角と、前記第1及び第2ルックアップテーブルから出力された前記第1及び第2補正値から、前記直交方向から前記軸の傾いた方向に向けた前記軸の傾きである傾斜方向傾きの補正値を計算する。
上記のような方法によれば、第2電極がセンサから離れていることに起因する微弱な検出値、第2電極の形状に起因する広い検出範囲等の要因により、第1及び第2電極の各々の位置を基に計算された入力値が誤差を多分に含むものとなっていたとしても、この誤差に対応し解消した補正値を第1及び第2ルックアップテーブルに格納し、この補正値、すなわち第1及び第2ルックアップテーブルが出力する第1及び第2補正値から、傾斜方向傾きの補正値を計算する。このため、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器の傾きを精度よく導出することができる。
また、第1及び第2ルックアップテーブルには、互いに異なる第1及び第2方向の各々に向けて指示器を傾けた際の、軸の傾きの補正値である第1及び第2補正値が格納されている。更に、これら第1及び第2補正値と、回転角計算部により計算された第1方向から第2方向に向けた軸の回転角を基に、傾斜方向傾きの補正値を計算する。すなわち、軸が第1方向と第2方向の間のどの方向に傾けられているかを計算し、第1の方向へ傾けた場合の補正値と第2の方向へ傾けた場合の補正値の、例えば案分処理等により、傾斜方向傾きの補正値を計算可能である。これにより、センサの一単位の長さや感度が第1方向と第2方向において異なる場合であっても、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器の傾きを精度よく導出することができる。
【0020】
本発明の一態様においては、前記傾斜方向傾きの前記補正値は、前記回転角の値に応じた、前記第1補正値と前記第2補正値の間の案分処理により計算される。
上記のような方法によれば、軸を第1の方向へ傾けた場合の第1補正値と第2の方向へ傾けた場合の第2補正値の双方に対し、回転角の値に応じて案分処理を行っている。このため、傾斜方向傾きの補正値の計算に際し、第1補正値と第2補正値の各々を適切に反映することができる。これにより、センサの一単位の長さや感度が第1方向と第2方向において異なる場合であっても、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器の傾きを精度よく導出することができる。
【0021】
本発明の別の態様においては、前記回転角を、前記第1方向と前記第2方向の間の角度へと変換して変換値を計算し、該変換値を基に前記案分処理が行われる。
上記のような方法によれば、回転角を第1方向と第2方向の間の角度へと変換するため、案分処理を適切に実施可能である。これにより、センサの一単位の長さや感度が第1方向と第2方向において異なる場合であっても、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器の傾きを精度よく導出することができる。
【0022】
本発明の別の態様においては、前記センサ上における前記第1及び第2電極の各々の前記位置の距離であるセンサ上距離を、前記軸方向における前記第1電極と前記第2電極の距離である軸方向距離で除算して、前記入力値を計算する。
上記のような方法によれば、入力値の計算時に三角関数等の複雑な演算を要しないため、計算量やメモリ量を低減することができる。
【0023】
本発明の別の態様においては、前記傾斜方向傾きの前記補正値を基に、前記直交方向からの前記第1方向に向けての前記軸の傾きである第1方向傾きと、前記直交方向からの前記第2方向に向けての前記軸の傾きである第2方向傾きを導出する。
上記のような方法によれば、精度の高い第1方向傾きと第2方向傾きを導出可能である。
【0024】
本発明の別の態様においては、計算した前記傾斜方向傾きの前記補正値を、前記傾斜方向傾きとして出力する。
上記のような方法によれば、精度の高い傾斜方向傾きを導出可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、指示器の傾きを精度よく導出可能な、傾き導出装置及び傾き導出方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態における傾き導出装置は、ペン状の指示器の傾きを導出する傾き導出装置であって、指示器は、軸方向の一端に設けられた第1電極と、軸の周囲に設けられた第2電極を備え、第1電極の位置と、第2電極の位置を検出する平面状のセンサと、制御部を備え、該制御部は、指示器をセンサに直交する直交方向からセンサ上の第1方向に向けて傾けた際の、第1及び第2電極の各々の位置を基に計算された値に対応する第1入力値と、軸の傾きの補正値である第1補正値との対応関係が登録された第1ルックアップテーブルと、指示器をセンサ上の第1方向とは異なる第2方向に向けて傾けた際の、第1及び第2電極の各々の位置を基に計算された値に対応する第2入力値と、軸の傾きの補正値である第2補正値との対応関係が登録された第2ルックアップテーブルと、第1及び第2電極の各々の位置を基に入力値を計算して、第1及び第2入力値として第1及び第2ルックアップテーブルへ入力する入力計算部と、第1及び第2電極の各々の位置を基に、第1方向から第2方向に向けた軸の回転角を導出する回転角計算部と、回転角と第1及び第2補正値から、直交方向から軸の傾いた方向に向けた軸の傾きである傾斜方向傾きの補正値を計算する傾斜方向傾き補正値計算部と、を備える。
また、本発明に係る傾き導出方法は、ペン状の指示器によって指示された傾きを導出する傾き導出方法であって、平面状のセンサにより、指示器の軸方向の一端に設けられた第1電極と、軸を囲うように設けられた第2電極の各々の位置を検出し、第1及び第2電極の各々の位置を基に入力値を計算し、指示器をセンサに直交する直交方向からセンサ上の第1方向に向けて傾けた際の、第1及び第2電極の各々の位置を基に計算された値に対応する第1入力値と、軸の傾きの補正値である第1補正値との対応関係が登録された第1ルックアップテーブルへ、入力値を第1入力値として入力し、指示器をセンサ上の第1方向とは異なる第2方向に向けて傾けた際の、第1及び第2電極の各々の位置を基に計算された値に対応する第2入力値と、軸の傾きの補正値である第2補正値との対応関係が登録された第2ルックアップテーブルへ、入力値を第2入力値として入力し、第1及び第2電極の各々の位置を基に、第1方向から第2方向に向けた軸の回転角を導出し、回転角と、第1及び第2ルックアップテーブルから出力された第1及び第2補正値から、直交方向から軸の傾いた方向に向けた軸の傾きである傾斜方向傾きの補正値を計算する。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態における傾き導出装置1と、これと共に使用される指示器101の説明図である。
図2は、傾き導出装置1の説明図である。
指示器101はペン状を成しており、軸C方向の一端に設けられた第1電極101aと、軸Cの周囲に設けられた第2電極101b、及び、これらを駆動する図示されない駆動回路を備えている。
第2電極101bは、本実施形態においては、軸Cを囲うようにリング状に設けられている。
第1及び第2電極101a、101bは、後述する傾き導出装置1のセンサ2と静電結合することにより、傾き導出装置1に対して信号を送信する。
【0029】
傾き導出装置1は、本実施形態においては、タブレット型の情報端末である。傾き導出装置1は、例えば液晶パネル等の表示装置の表面上に、平面状の、静電容量方式のセンサ2を備えたものであり、液晶パネルの表示領域の略全面にわたってセンサ2が設けられて、表示領域全体がセンサによる位置検知可能領域1aとなっている。傾き導出装置1のセンサ2は、位置検知可能領域1a内に指示器101が位置づけられた場合に、第1電極101aの位置と第2電極101bの位置を検出して、指示器101によって指示された位置を検出する。
【0030】
センサ2は、第1方向に延在する複数の第1方向導体3と、第1方向と直交する第2方向に延在する複数の第2方向導体4を備えている。本実施形態においては、第1方向は紙面横方向である方向Xであり、第2方向は紙面縦方向である方向Yである。
第1方向導体3と第2方向導体4の各々は、位置検知可能領域1a内の表示装置の所定の画素数に導体3、4の一本が対応して、所定の幅を備えるように形成され、表示装置の画素よりも粗い格子状となるように設けられている。第1方向導体3と第2方向導体4が交差した部分の各々には、導体3、4同士がオーバーラップされて、
図5に示されるセンサ2の一単位2bが形成されている。
【0031】
傾き導出装置1は、選択回路5を備えている。第1及び第2方向導体3、4の各々の末端は、選択回路5に接続されている。選択回路5は、第1及び第2方向導体3、4の各々を所定の順序で選択することにより、指示器101の第1及び第2電極101a、101bから各導体3、4に送信された信号を受信する。
選択回路5は、各導体3、4から受信した信号を、次に説明する入力データ生成部6へ送信する。
【0032】
傾き導出装置1は、入力データ生成部6を備えている。入力データ生成部6は、選択回路5から受信した信号を、指示器101の第1電極101aから受信した信号と第2電極101bから受信した信号とに分類し、それぞれを第1電極データ、第2電極データとして、次に説明する制御部10へ送信する。
この分類は、例えば、センサ2及び選択回路5が第1電極101aからの信号受信と第2電極101bからの信号受信を時分割で行うことにより行われる。
【0033】
傾き導出装置1は、制御部10を備えている。
図3は、制御部10の信号処理ブロック図である。制御部10は、重心計算部11、IIRフィルタ12、電極位置差分計算部13、入力計算部14、ルックアップテーブル(以下、LUTと呼称する)15、回転角計算部16、傾斜方向傾き補正値計算部17、及び、第1及び第2方向傾き計算部18を備えている。
【0034】
重心計算部11は、第1重心計算部11Aと第2重心計算部11Bを備えている。
第1重心計算部11Aは、入力データ生成部6が送信した第1電極データを受信し、方向Xと方向Yの各々における最大値を計算する。これにより、第1重心計算部11Aは、指示器101の第1電極101aから送信された信号が最も強い、すなわち、第1電極101aの反応が最も強いセンサ2上の座標を特定する。
第1重心計算部11Aは、更に、この第1電極101aの反応が最も強いセンサ2上の座標を中心とした、縦横の各々において5つの第1及び第2方向導体3、4に相当する、計25個のセンサ2上の座標におけるデータを抽出する。
図4は、このように抽出された25個のデータD1〜D25を説明するものである。
図4においては、第1電極101aの反応が最も強いセンサ2上の座標に相当するデータは、中心に位置するD13となっている。
【0035】
この25個のデータに対し、第1重心計算部11Aは、次の数式1に示すように、データの値D
iとセンサ2上の座標値(x
i、y
i)との積算を行い、これをD
iの総和で除算する。これにより、第1電極101aの反応が最も強い方向Xと方向Yの各々におけるセンサ2上の座標値である第1電極暫定座標値A
t(A
xt、A
yt)が、小数点以下の粒度で計算される。
【0037】
第1重心計算部11Aは、第1電極暫定座標値A
tをIIRフィルタ12へ送信する。
【0038】
第2重心計算部11Bは、第2電極データを受信し、第1重心計算部11Aと同様に、方向Xと方向Yの各々における最大値を計算する。これにより、第2重心計算部11Bは、指示器101の第2電極101bから送信された信号が最も強い、すなわち、第2電極101bの反応が最も強いセンサ2上の座標を特定する。
第2重心計算部11Bは、更に、第1重心計算部11Aと同様に、第2電極101bの反応が最も強いセンサ2上の座標を中心とした、縦横の各々において5つの第1及び第2方向導体3、4に相当する、計25個のセンサ2上の座標におけるデータを抽出する。
この25個のデータに対し、第2重心計算部11Bは、第1重心計算部11Aと同様に、データの値D
iとセンサ2上の座標値(x
i、y
i)との積算を行い、これをD
iの総和で除算する。これにより、第2電極101bの反応が最も強い方向Xと方向Yの各々におけるセンサ2上の座標値である第2電極暫定座標値B
t(B
xt、B
yt)が算出される。
第2重心計算部11Bは、第2電極暫定座標値B
tをIIRフィルタ12へ送信する。
【0039】
IIRフィルタ12は、第1IIRフィルタ12Aと第2IIRフィルタ12Bを備えている。
第1IIRフィルタ12Aは、第1重心計算部11Aから第1電極暫定座標値A
tを受信し、時間方向のIIRフィルタを適用して時間的なゆらぎを低減させ、第1電極座標値A(A
x、A
y)を算出する。
第1IIRフィルタ12Aは、第1電極座標値Aを電極位置差分計算部13へ送信する。
【0040】
第2IIRフィルタ12Bは、第2重心計算部11Bから第2電極暫定座標値B
tを受信し、時間方向のIIRフィルタを適用して時間的なゆらぎを低減させ、第2電極座標値B(B
x、B
y)を算出する。
第2IIRフィルタ12Bは、第2電極座標値Bを電極位置差分計算部13へ送信する。
【0041】
電極位置差分計算部13は、第1IIRフィルタ12Aと第2IIRフィルタ12Bから、第1電極座標値Aと第2電極座標値Bを受信する。
電極位置差分計算部13は、B
x−A
x及びB
y−A
yを計算して座標値A、B間の差分を求め、表示装置の内部処理において使用される、方向Xと方向Yの各々の内部解像度値に換算することで、第1方向差分S
xと第2方向差分S
yを算出する。
【0043】
数式2において、P
x、P
yはそれぞれ、表示装置の方向Xと方向Yにおける内部解像度値の各々を、第2方向導体4と第1方向導体3の本数の各々で除算した値である。
電極位置差分計算部13は、第1方向差分S
xと第2方向差分S
yを入力計算部14と回転角計算部16に送信する。
【0044】
入力計算部14は、第1及び第2電極の各々の位置A、Bを基に、より詳細には、位置A、Bを基に電極位置差分計算部13により算出された第1方向差分S
xと第2方向差分S
yを基に、入力値を計算してLUT15へ入力する。
【0045】
図5は、指示器101の第1電極101a及び第2電極101bと、傾き導出装置1との関係を座標系として示したものである。
図5におけるXY平面が、傾き導出装置1の位置検知可能領域1aに相当する。
入力計算部14は、より詳細には、センサ2上における第1及び第2電極101a、101bの各々の位置の距離であるセンサ上距離Dを、軸C方向における第1電極101aと第2電極101bの距離である軸方向距離Lで除算して、入力値を計算する。
【0046】
以下、センサ2に直交する直交方向Zからの軸Cの傾いた方向を、傾斜方向と呼称する。
図5においては、この傾斜方向に向けての軸Cの傾きθが、傾斜方向傾きθとして示されている。
本実施形態においては、傾斜方向傾きθを計算した後に、これを用いて後に説明する第1方向傾きθ
x及び第2方向傾きθ
yを導出する。
基本的には、次の数式3のように、センサ上距離Dを計算し、これを基に、傾斜方向傾きθ
tを計算可能である。
【0048】
図10は、後に説明する本実施形態の変形例における制御部の、入力計算部44とLUT45の関係を示す説明図である。この変形例における入力計算部44は、上記の数式3に基づいて傾斜方向傾きθ
tを計算している。
後に説明するように、数式3によって計算された傾斜方向傾きθ
tには誤差が内包されており、この値を使用する場合においては、誤差を解消する更なる補正が必要である。
図10に示されるLUT45がこの補正を行うものであり、LUT45には、上記の傾斜方向傾きθ
tとその補正値の対応関係が格納されている。これにより、LUT45は、入力された傾斜方向傾きθ
tに対して対応する傾斜方向傾きθの補正値を出力する。すなわち、数式3によって計算された傾斜方向傾きθ
tは、あくまで暫定値である。
【0049】
このように、また後に更に詳細に説明するように、
図3、
図10に示されるLUT15、45は、入力計算部14、44によって計算された値に対して、傾斜方向傾きの補正値を出力する。したがって、
図10に示されるように、数式3によって計算された暫定値θ
tを入力とし、傾斜方向傾きの補正値を出力するように入力計算部44を実装して、これに対応するようにLUT45を構成することも可能ではある。
【0050】
しかし、本実施形態においては、
図3に示されるように入力計算部14は、次の数式4を用いて、LUT15への入力値IをD/Lとして計算している。すなわち、上記の数式3により計算される傾斜方向傾きの暫定値θ
tの代わりに、第1及び第2電極101a、101bの各々の位置A、Bを基に計算された値として入力値Iを計算し、これをLUT15へ入力する。これに伴いLUT15には、傾きではなく、この入力値Iに対応する値と、傾斜方向傾きの補正値との対応関係が登録されている。
【0052】
上記の数式3には、複雑な計算か、または、特別な変換テーブルをメモリ上に必要とする三角関数が使用されている。上記のように、LUT15への入力をI=D/Lの値とし、入力値と補正値との、三角関数の計算も含めた対応関係をLUT15に登録することで、三角関数による計算やメモリ上への変換テーブルの実装を省いている。
【0053】
入力計算部14は、計算した入力値IをLUT15へ送信し、入力する。
【0054】
LUT15は、第1LUT15Aと、第2LUT15Bを備えている。
第1及び第2LUT15A、15Bの各々には、指示器101をセンサ2に直交する直交方向Zから第1及び第2方向X、Yの各々に向けて傾けた際の、第1及び第2電極101a、101bの各々の位置A、Bを基に計算された値に対応する第1及び第2入力値の各々と、軸Cの傾きの補正値である第1及び第2補正値の各々との対応関係が登録されている。
【0055】
指示器101においては、第1電極101aをセンサ2に接するように設けた際に、
図11に示されるように、第2電極101bはセンサ2から離れて位置づけられるため、第2電極101bは、センサ2による検出値が小さくなる。また、第2電極101bは、軸Cの周囲に、第1電極101aに比べると大きな体積で形成されているため、センサ2が第2電極101bとして検出する範囲が大きい。このように、センサ2は、第2電極101bの位置として、小さい検出値が広く分布した領域を検出するため、第2電極101bの検出座標Bを正確に特定するのは容易ではない。したがって、第2IIRフィルタ12Bから出力された第2電極座標値Bは、誤差を多分に含むものとなっている。
このため、傾斜方向傾きを上記のような数式3によって導出した場合においては、導出された傾斜方向傾きの暫定値θ
tには、上記の誤差が反映されている。
同様に、上記のような数式4を使用した場合においても、入力値Iには上記の誤差が反映されている。
【0056】
ここで、実際に指示器101を傾けた角度と、第2電極座標値Bや傾斜方向傾きθの誤差を含む計算値との関係が予めわかっていれば、これらの誤差を含む計算値から、指示器101の精度の高い傾きを導き出せるはずである。すなわち、例えば実験などにより、上記の入力計算部14により入力値Iを外部出力するように設定された傾き導出装置によって、実際に指示器101を第1及び第2方向X、Yの各々に向けて傾けて角度を測り、その際の入力値Iの、誤差を含む出力値を取得する。この出力値に対し、実際の指示器101の傾きを傾きの補正値θ
1、θ
2として対応付けて、対応関係として保持しておく。実際に傾きを測定する際には、入力計算部14によって、誤差を含む入力値Iを傾斜方向傾きの暫定値θ
tに対応する値として上記数式4により計算する。そして、この入力値Iを基に、第1及び第2方向X、Yの各々での、対応関係において対応する傾きの補正値θ
1、θ
2を導出する。これにより、指示器101の精度の高い傾きを求めることができる。LUT15には、このような対応関係が登録されている。
【0057】
より詳細には、第1LUT15Aには、指示器101を直交方向Zから第1方向Xに向けて傾けた際の、第1及び第2電極101a、101bの各々の位置A、Bを基に計算された値に対応する第1入力値と、軸Cの傾きの補正値である第1補正値θ
1との対応関係が登録されている。ここで、第1及び第2電極101a、101bの各々の位置A、Bを基に計算された値とは、指示器101を直交方向Zから第1方向Xに向けて傾けた際の、数式4により計算される誤差を含んだI=D/Lの値である。
換言すれば、第1補正値θ
1は、指示器101を、実際に傾けた傾斜方向に代えて第1方向Xに向けて実際に傾けた角度だけ傾け、この状況下でのIを第1入力値としたときに出力されるべき第1方向Xにおける傾きの補正値である。
【0058】
また、第2LUT15Bには、指示器101を第2方向Yに向けて傾けた際の、第1及び第2電極101a、101bの各々の位置A、Bを基に計算された値に対応する第2入力値と、軸Cの傾きの補正値である第2補正値θ
2との対応関係が登録されている。ここで、第1及び第2電極101a、101bの各々の位置A、Bを基に計算された値とは、指示器101を直交方向Zから第2方向Yに向けて傾けた際の、数式4により計算される誤差を含んだI=D/Lの値である。
換言すれば、第2補正値θ
2は、指示器101を、実際に傾けた傾斜方向に代えて第2方向Yに向けて実際に傾けた角度だけ傾け、この状況下でのIを第2入力値としたときに出力されるべき第2方向Yにおける傾きの補正値である。
【0059】
すなわち、第1LUT15A、第2LUT15Bはそれぞれ、入力計算部14から受信した入力値Iが、これに対応する第1及び第2入力値として入力された場合に、指示器101が実際に傾けられた方向ではなく、第1及び第2方向X、Yに向けて傾けられたものと想定した際の、第1及び第2方向X、Yの各々における傾斜方向傾きの補正値θ
1、θ
2を出力する。後に説明する傾斜方向傾き補正値計算部17が、これらの出力値θ
1、θ
2に対して第1方向Xから第2方向Yへ向けた軸Cの回転角を基に適切に案分処理することにより、最終的な傾斜方向傾きの補正値θ
cを計算する。
このように、第1方向Xと第2方向Yの各々における補正された傾斜方向傾きθ
1、θ
2を出力し、これを基に最終的な傾斜方向傾きの補正値θ
cを計算している。これにより、
図5に示されるセンサ2の一単位2bの長さや感度が第1方向Xと第2方向Yにおいて異なる場合であっても、その影響が低減されている。
【0060】
図6、
図7に、第1LUT15A、第2LUT15Bの実施例を示す。これらの表においては、左から奇数番目の列に第1及び第2入力値が「アドレス」として示されている。また、その右側に、すなわち偶数番目の列に、各傾斜方向傾きθの第1及び第2補正値θ
1、θ
2が「データ」として示されている。
本実施例においては、第1及び第2入力値と第1及び第2補正値θ
1、θ
2の各々に、所定の値、例えば100等の値が乗算されている。これは、整数に対して丸め処理を行うに際し、演算精度の低減を抑制するためのものである。また、本実施例における第1及び第2補正値θ
1、θ
2の単位はラジアン(rad)である。
【0061】
例えば
図6において、「アドレス」が「50」の位置には、「データ」として値「51」が示されている。これは、第1入力値が0.5の場合、すなわち、傾斜方向傾きが30°に相当する場合には、第1補正値θ
1は0.51rad、すなわち、約29.2°であることを意味する。これは、実験時には、入力計算部14によって計算された入力値Iが傾斜方向傾き30°に相当する値を示す場合には、第1方向Xに向けて傾斜方向傾きが29.2°となるように指示器101を傾けていたということを示している。
【0062】
本実施例においては、第1及び第2入力値は例えば7ビットで実現されており、127までの値を持っている。
図1に示されるように、本実施形態においては、指示器101は、第1電極101aの位置する先端から軸C方向に向けて漸次拡径し、テーパー状に形成されている。この、テーパー状に形成された部分の軸Cに対する角度αが、例えば25°とすると、第1電極101aを傾き導出装置1の位置検知可能領域1aに接触させた状態で、指示器101を25°を超えて傾けることは不可能である。このため、第1及び第2補正値θ
1、θ
2の上限は、この場合においては65°に相当する、1.13radとなっている。すなわち、本実施例においては、LUT15には上限値1.13radを超えた値は登録されていない。
【0063】
また、本実施例においては、上記のようなセンサ2上での測定実験を、位置検知可能領域1a上の任意の複数の場所、例えば5か所において実施している。より詳細には、この5か所は、例えば位置検知可能領域1aの中央と、4つの角部近傍の各々である。そして、これらの場所により測定された値の平均を計算することにより、第1及び第2LUT15A、15Bに登録する値が決定されている。これにより、位置検知可能領域1a上の場所に依存した値の差異による誤差の影響を低減している。
【0064】
LUT15は、
図6、
図7に示されたような対応関係により、入力計算部14から受信した入力値Iを基に、傾斜方向傾きθの第1及び第2補正値θ
1、θ
2を抽出し、傾斜方向傾き補正値計算部17へと送信する。
【0065】
回転角計算部16は、第1及び第2電極の各々の位置A、Bを基に、より詳細には、位置A、Bを基に電極位置差分計算部13により算出された第1方向差分S
xと第2方向差分S
yを基に、第1方向Xから第2方向Yに向けた軸Cの回転角φを導出する。
回転角は、
図5に示される、第1方向Xからの、XY平面すなわち位置検知可能領域1a上における第2方向Yに向けての角度φに相当する。
回転角計算部16は、回転角φを、次に示す数式5により導出する。
【0067】
回転角計算部16は、導出した回転角φを傾斜方向傾き補正値計算部17へ送信するとともに、外部へ出力する。
【0068】
傾斜方向傾き補正値計算部17は、第1及び第2LUT15A、LUT15Bから第1及び第2補正値θ
1、θ
2を、回転角計算部16から回転角φを、それぞれ受信する。
傾斜方向傾き補正値計算部17は、回転角φと第1及び第2補正値θ
1、θ
2から、回転角φの値に応じた第1補正値θ
1と第2補正値θ
2の間の案分処理により、傾斜方向傾きの補正値θ
cを計算する。
【0069】
より詳細には、傾斜方向傾き補正値計算部17は、次式6により、回転角φを第1方向Xと第2方向Yの間の角度へと変換して変換値Mを計算し、これを基に案分処理を行う。
【0071】
数式6からわかるように、Mは、回転角φを第1方向Xと第2方向Yの間の角度、すなわち0以上π/2以下の値へと変換したものであり、Nはπ/2とMの差分である。上式においては、Mが第2補正値θ
2に乗算され、Nが第1補正値θ
1に乗算されている。これにより、変換値Mが大きく第1方向Xよりも第2方向Yに近い場合には、第2方向Yに対応する第2補正値θ
2が、第1補正値θ
1よりも大きく補正値θ
cに影響するようになっている。また、変換値Mが小さく第1方向Xに近い場合には、逆にNが大きくなり、第1方向Xに対応する第1補正値θ
1が大きく補正値θ
cに影響するようになっている。
【0072】
傾斜方向傾き補正値計算部17は、計算した傾斜方向傾きの補正値θ
cを、次に説明する第1及び第2方向傾き計算部18へ送信する。
【0073】
第1及び第2方向傾き計算部18は、電極位置差分計算部13から第1方向差分S
xと第2方向差分S
yを、傾斜方向傾き補正値計算部17から傾斜方向傾きの補正値θ
cを、それぞれ受信する。
第1及び第2方向傾き計算部18は、傾斜方向傾きの補正値θ
cを基に、直交方向Zからの第1方向Xに向けての軸Cの傾きである第1方向傾きと、直交方向Zからの第2方向Yに向けての軸Cの傾きである第2方向傾きを導出する。
【0074】
上記のように、本実施形態においては、第1方向は
図5に示される方向Xであるから、直交方向Zからのセンサ2上の第1方向Xに向けての軸Cの傾きである第1方向傾きは、
図5におけるXZ平面内の角度θ
xに相当する。第1方向傾きθ
xは、換言すれば、直交方向Zからの、XZ平面へ投影された軸Cの成分である軸C
xの傾きである。
また、同様に、本実施形態においては、第2方向は
図5に示される方向Yであるから、直交方向Zからのセンサ2上の第2方向Yに向けての軸Cの傾きである第2方向傾きは、
図5におけるYZ平面内の角度θ
yに相当する。第2方向傾きθ
yは、換言すれば、直交方向Zからの、YZ平面へ投影された軸Cの成分である軸C
yの傾きである。
第1及び第2方向傾き計算部18は、次に示す数式7により、傾斜方向傾きθの補正値θ
cから、位置検知可能領域1aからの第2電極101bの高さHを計算した後に、第1方向傾きθ
x及び第2方向傾きθ
yを導出する。
【0076】
第1及び第2方向傾き計算部18は、導出した第1方向傾きθ
x及び第2方向傾きθ
yを外部へ出力する。
【0077】
次に、上記傾き導出装置1を使用した傾き導出方法を、
図1乃至
図7、
図11を用いて説明する。
【0078】
指示器101が、その第1電極101aが傾き導出装置1の位置検知可能領域1aに接触するように、傾き導出装置1上に位置付けられると、傾き導出装置1は、センサ2により第1電極101aと第2電極101bの各々の位置を検出する。
より詳細には、指示器101からセンサ2に送信された信号を、第1方向導体3と第2方向導体4の各々を介して選択回路5が受信する。
選択回路5は、各導体3、4から受信した信号を入力データ生成部6へ送信する。
【0079】
入力データ生成部6は、選択回路5から受信した信号を、指示器101の第1電極101aから受信した信号と第2電極101bから受信した信号とに分類し、それぞれを第1電極データ、第2電極データとして制御部10へ送信する。
【0080】
制御部10の第1重心計算部11Aは、入力データ生成部6が送信した第1電極データを受信し、指示器101の第1電極101aから送信された信号が最も強い、すなわち、第1電極101aの反応が最も強い座標を特定する。第1重心計算部11Aは、この第1電極101aの反応が最も強い座標から、第1電極暫定座標値A
t(A
xt、A
yt)を算出する。
第1重心計算部11Aは、第1電極暫定座標値A
tをIIRフィルタ12へ送信する。
第2重心計算部11Bは、第1重心計算部11Aと同様に、第2電極データを受信し、第2電極暫定座標値B
t(B
xt、B
yt)を算出して、IIRフィルタ12へ送信する。
【0081】
第1IIRフィルタ12Aは、第1重心計算部11Aから第1電極暫定座標値A
tを受信し、時間方向のIIRフィルタを適用して、第1電極座標値A(A
x、A
y)を算出し、電極位置差分計算部13へ送信する。
第2IIRフィルタ12Bは、第2重心計算部11Bから第2電極暫定座標値B
tを受信し、時間方向のIIRフィルタを適用して、第2電極座標値B(B
x、B
y)を算出し、電極位置差分計算部13へ送信する。
【0082】
電極位置差分計算部13は、第1IIRフィルタ12Aと第2IIRフィルタ12Bから、第1電極座標値Aと第2電極座標値Bを受信する。
電極位置差分計算部13は、第1方向差分S
xと第2方向差分S
yを算出し、入力計算部14と回転角計算部16に送信する。
【0083】
入力計算部14は、電極位置差分計算部13により算出された第1方向差分S
xと第2方向差分S
yを基に、上記の数式4によって入力値Iを計算する。
入力計算部14は、算出した入力値Iを、第1及び第2LUT15A、LUT15Bの各々へ、第1及び第2入力値として入力する。
【0084】
LUT15の第1LUT15Aと第2LUT15Bは、
図6、
図7に示されたような対応関係により、入力計算部14から受信した入力値Iを基に、第1及び第2補正値θ
1、θ
2を抽出し、傾斜方向傾き補正値計算部17へと送信する。
【0085】
回転角計算部16は、電極位置差分計算部13により算出された第1方向差分S
xと第2方向差分S
yを基に、第1方向Xから第2方向Yに向けた軸Cの回転角φを導出する。
回転角計算部16は、導出した回転角φを傾斜方向傾き補正値計算部17へ送信するとともに、外部へ出力する。
【0086】
傾斜方向傾き補正値計算部17は、第1及び第2LUT15A、LUT15Bから第1及び第2補正値θ
1、θ
2を、回転角計算部16から回転角φを、それぞれ受信する。
傾斜方向傾き補正値計算部17は、回転角φと第1及び第2補正値θ
1、θ
2から、回転角φの値に応じた第1補正値θ
1と第2補正値θ
2の間の案分処理により、傾斜方向傾きの補正値θ
cを計算する。
より詳細には、傾斜方向傾き補正値計算部17は、数式6により回転角φを第1方向Xと第2方向Yの間の角度へと変換して変換値Mを計算し、これを基に案分処理を行う。
傾斜方向傾き補正値計算部17は、計算した傾斜方向傾きの補正値θ
cを第1及び第2方向傾き計算部18へ送信する。
【0087】
第1及び第2方向傾き計算部18は、電極位置差分計算部13から第1方向差分S
xと第2方向差分S
yを、傾斜方向傾き補正値計算部17から傾斜方向傾きの補正値θ
cを、それぞれ受信する。
第1及び第2方向傾き計算部18は、傾斜方向傾きの補正値θ
cを基に第1方向傾きθ
xと第2方向傾きθ
yを導出し、外部へ出力する。
【0088】
次に、上記の傾き導出装置1及び傾き導出方法の効果について説明する。
【0089】
上記のような構成によれば、LUT15には、入力計算部14によって計算された、誤差を含む傾斜方向傾きθの暫定値θ
tと、その補正値θ
cとの対応関係が登録されている。
より詳細には、本実施形態においては、LUT15には、例えば実験などにより、上記の入力計算部14により入力値Iを外部出力するように設定された傾き導出装置によって、実際に指示器101を第1及び第2方向X、Yの各々に向けて傾けて角度を測り、その際の入力値Iの、誤差を含む出力値を取得して、この出力値に対し、実際の指示器101の傾きを傾きの補正値θ
1、θ
2として対応付けた対応関係が格納されている。すなわち、LUT15の対応関係は、指示器101を実際に傾けた傾きの値と入力計算部14の出力値を、第1及び第2方向X、Yの各々においてそれぞれ補正値θ
1、θ
2と入力値として対応させることにより生成されている。
したがって、第2電極101bがセンサから離れていることに起因する微弱な検出値、第2電極101bの形状に起因する広い検出範囲等の要因により、第2IIRフィルタ12Bから出力された第2電極座標値B、及び、入力計算部14においてこの第2電極座標値Bを基に計算された入力値Iが誤差を多分に含むものとなっていたとしても、この誤差に対応し解消した補正値θ
1、θ
2を第1及び第2LUT15A、15Bに格納し、傾斜方向傾き補正値計算部17においてはこの補正値θ
1、θ
2から、傾斜方向傾きの補正値θ
cを計算する。このため、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器101の傾きを精度よく導出することができる。
【0090】
また、第1及び第2LUT15A、15Bには、互いに異なる第1及び第2方向X、Yの各々に向けて指示器101を傾けた際の、軸Cの傾きの補正値である第1及び第2補正値θ
1、θ
2が格納されている。更に、傾斜方向傾き補正値計算部17は、これら第1及び第2補正値θ
1、θ
2と、回転角計算部16により計算された第1方向Xから第2方向Yに向けた軸Cの回転角φを基に、傾斜方向傾きの補正値θ
cを計算する。すなわち、軸Cが第1方向Xと第2方向Yの間のどの方向に傾けられているかを計算し、第1方向Xへ傾けた場合の補正値θ
1と第2方向Yへ傾けた場合の補正値θ
2の案分処理により、傾斜方向傾きの補正値θ
cを計算している。
これにより、傾斜方向傾きの補正値θ
cを計算するに際し、第1補正値θ
1と第2補正値θ
2の各々を適切に反映することができる。したがって、センサ2の一単位2bの長さや感度が第1方向Xと第2方向Yにおいて異なる場合であっても、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器101の傾きを精度よく導出することができる。
【0091】
また、傾斜方向傾き補正値計算部17は、回転角φを、第1方向Xと第2方向Yの間の角度へと変換して変換値Mを計算し、変換値Mを基に案分処理を行う。
これにより、特に案分処理においては回転角φを第1方向Xと第2方向Yの間の角度へと変換するため、案分処理を適切に実施可能である。したがって、センサ2の一単位2bの長さや感度が第1方向Xと第2方向Yにおいて異なる場合であっても、計算される傾斜方向傾きの精度を高め、指示器101の傾きを精度よく導出することができる。
【0092】
また、入力計算部14は、センサ2上における第1及び第2電極101a、101bの各々の位置の距離であるセンサ上距離Dを、軸C方向における第1電極101aと第2電極101bの距離である軸方向距離Lで除算して、入力値Iを計算する。
上記のような構成によれば、LUT15への入力の計算時に三角関数等の複雑な演算を要しないため、計算量やメモリ量を低減することができる。
【0093】
また、本実施形態においては、第1及び第2LUT15A、15Bは、
図6、
図7に示されるように、1次元の配列として実現可能である。したがって、第1及び第2LUT15A、15Bの実装に当たり必要とされるメモリ量が少量で済み、メモリ容量が低いハードウェアに対しても容易に適用可能である。
【0094】
[実験結果]
次に、
図8を用いて、上記実施形態に関する実験結果について説明する。
【0095】
図8は、センサ2の一単位2bの長さや感度が第1方向Xと第2方向Yにおいて異なる傾き導出装置1において、傾斜方向傾きの導出結果をグラフとして示したものである。
図8(a)、(b)、(c)、(d)の各々においては、回転角φをそれぞれ、0°、30°、60°、90°にして、傾斜方向傾きを計測している。
図8の各図の横軸は、実際に指示器101を傾き導出装置1の位置検知可能領域1aに対して傾けた角度であり、縦軸は、傾き導出装置1における傾斜方向傾きの値である。
図8各図において、線20は理想値であり、線21A、22A、23A、24Aは、数式3の演算により導出された傾斜方向傾きであり、線21B、22B、23B、24Bは、上記傾き導出装置1の出力値である。
【0096】
回転角φが30°、60°、90°と、0°から離れるにつれ、線22A、23A、24Aは線20から乖離し、特に回転角φが90°の場合においてはセンサ2の一単位2bの長さの異方性が大きく影響することにより、大きな誤差が認められる。
これに対し、線22B、23B、24Bは概ね線20に沿った結果となっており、センサ2の一単位2bの長さや感度が第1方向Xと第2方向Yにおいて異なる場合であっても、線22A、23A、24Aに比べると誤差が減少している。すなわち、傾斜方向傾き補正値計算部17における数式6を用いた案分処理が有効に作用していることがわかる。
【0097】
[上記実施形態の変形例]
次に、上記実施形態として示した傾き導出装置1及び傾き導出方法の変形例を説明する。
図9は、本変形例における傾き導出装置の制御部30の信号処理ブロック図である。本変形例の傾き導出装置における制御部30は、上記実施形態における傾き導出装置1の制御部10とは、制御部30が、第1方向傾きθ
x及び第2方向傾きθ
yに替えて、傾斜方向傾きθを出力する点が異なっている。
すなわち、本変形例においては、傾斜方向傾き補正値計算部37は、計算した傾斜方向傾きの補正値θ
cを、傾斜方向傾きθとして外部へ出力する。また、制御部30は、第1及び第2方向傾き計算部を備えていない。
本変形例における傾き導出装置及び傾き導出方法が、上記実施形態と同様な効果を奏することは言うまでもない。
【0098】
なお、本発明の傾き導出装置及び傾き導出方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
【0099】
例えば、上記実施形態及び変形例においては、傾き導出装置はタブレット型の情報端末であったが、これに限られず、スマートフォンや据え置き型のディスプレイなど、表示装置とセンサを備えた他の物であってもよいのは言うまでもない。
また、上記実施形態及び各変形例においては、表示装置としては液晶パネルが使用されていたが、これに限られず、例えば有機ELディスプレイ(OLED)等の、他の表示装置が使用されてもよいのは言うまでもない。
【0100】
また、上記実施形態及び変形例においては、指示器101の第2電極101bは、軸Cを囲うようにリング状に設けられていたが、これに限られない。例えば、同じ機能を備えた複数の第2電極が、軸Cを中心として周方向に互いに離間して設けられた結果、リング状に形成されていてもよいし、他の態様で整列されていても構わない。
【0101】
また、上記実施形態においては、第1方向Xと第2方向Yは互いに直交していたが、90°以外の他の角度で交差していてもよい。このような場合であっても、例えば数式6における案分処理の角度を調整する等により対応可能である。
【0102】
また、上記実施形態及び変形例においては、LUT15には、数式4で示される、入力値Iに相当する値と、傾斜方向傾きの補正値との対応関係が登録されていた。これに代えて、上記実施形態において
図10を用いて既に説明したように、数式3で示される、傾斜方向傾きの暫定値θ
tを入力計算部44が出力し、この暫定値θ
tと、傾斜方向傾きの補正値との対応関係が登録されるよう、LUT45が構成されていてもよい。
この場合においても、LUT45は上記実施形態と同様に第1LUT45Aと第2LUT45Bを備えている。
第1LUT45Aには、指示器を直交方向Zから第1方向Xに向けて傾けた際の、数式3により計算された暫定値θ
tに対応する第1入力値と、軸Cの傾きの補正値である第1補正値θ
1との対応関係が登録されている。
また、第2LUT45Bには、指示器を第2方向Yに向けて傾けた際の、数式3により計算された暫定値θ
tに対応する第2入力値と、軸Cの傾きの補正値である第2補正値θ
2との対応関係が登録されている。
【0103】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態及び変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、制御部が、上記実施形態の第1及び第2方向傾き計算部18と、変形例の傾斜方向傾き補正値計算部37の双方を同時に備え、第1方向傾きθ
x、第2方向傾きθ
y、傾斜方向傾きθを全て外部へ出力してもよい。