特許第6962715号(P6962715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ 東京モノレール株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6962715-跨座式モノレール桁 図000002
  • 特許6962715-跨座式モノレール桁 図000003
  • 特許6962715-跨座式モノレール桁 図000004
  • 特許6962715-跨座式モノレール桁 図000005
  • 特許6962715-跨座式モノレール桁 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962715
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】跨座式モノレール桁
(51)【国際特許分類】
   E01B 25/08 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   E01B25/08
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-113555(P2017-113555)
(22)【出願日】2017年6月8日
(65)【公開番号】特開2018-204389(P2018-204389A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303041135
【氏名又は名称】東京モノレール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 宏和
(72)【発明者】
【氏名】北村 健
(72)【発明者】
【氏名】赤松 篤
(72)【発明者】
【氏名】大澤 和也
(72)【発明者】
【氏名】武者 浩透
(72)【発明者】
【氏名】武田 均
(72)【発明者】
【氏名】川口 哲生
(72)【発明者】
【氏名】加納 宏一
(72)【発明者】
【氏名】趙 唯堅
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−017169(JP,A)
【文献】 特開2007−092456(JP,A)
【文献】 特開2014−015753(JP,A)
【文献】 実開平03−122128(JP,U)
【文献】 特開2017−057588(JP,A)
【文献】 特開2005−256462(JP,A)
【文献】 特開2015−229818(JP,A)
【文献】 実公昭44−011287(JP,Y1)
【文献】 特開2015−086595(JP,A)
【文献】 特開2008−231841(JP,A)
【文献】 特表2009−523928(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0073876(US,A1)
【文献】 米国特許第05457839(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00−26/00
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の桁本体と、
前記桁本体の上面に敷設されたプレキャスト製のコンクリート床版と、
前記コンクリート床版と前記桁本体との間に充填された充填材と、を備えた跨座式モノレール桁であって、
前記コンクリート床版の下面には、前記桁本体側の突出する複数の突起が形成されていて、
前記突起の周縁には、下に向かうに従って外形が小さくなるように、傾斜面が形成されていることを特徴とする跨座式モノレール桁。
【請求項2】
前記突起の中央部に前記突起の下面に滞留する空気を排気するための排気孔が形成されていて、
前記突起の下面は、中央部に向かうに従って高くなるように傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載の跨座式モノレール桁。
【請求項3】
前記桁本体の側面に形成された案内鋼板の上端が、当該桁本体の上面よりも上側に突出しており、
前記案内鋼板と前記突起との間に隙間が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の跨座式モノレール桁。
【請求項4】
前記桁本体の上面に形成されたスタッドボルトが、当該スタッドボルトの頭部に取り付けられた矩形状の係止板を介して、前記コンクリート床版に形成された貫通孔に係止されており、
前記係止板の短辺は、前記貫通孔の内幅よりも小さな長さであることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の跨座式モノレール桁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跨座式モノレール桁に関する。
【背景技術】
【0002】
跨座式モノレール桁として、鋼製桁を採用すれば、コンクリート桁よりも軽量なため、長大スパンのモノレール桁に有効である。ところが、鋼製桁の上面が鋼板の場合、跨座式モノレールのゴム製タイヤと桁上面との間に十分な摩擦係数を確保することができない場合がある。そのため、所望の摩擦係数を確保するために、鋼製桁の上面にコンクリート床版が形成された合成桁を採用する場合がある。ところが、コンクリート床版を現場打ちコンクリートにより形成すると、コンクリートの乾燥収縮が進行した際にひび割れが生じるおそれがあった。また、既設の跨座式モノレール桁の補強・補修は施工時間が限定されているとともに、部分的に施工を行う必要があるため、現場打ちコンクリートによる施工が採用できない場合がある。また、コンクリート床版の走行面は、摩耗に対する耐久性が要求される。
そのため、特許文献1には、耐久性に優れた跨座式モノレール桁として、鋼製の桁本体の上面に、工場生産等によるプレキャスト製のコンクリート床版が載置された合成桁が開示されている。この跨座式モノレール桁では、鋼製桁の上面に立設したスタッドボルト等の連結部材をコンクリート床版に形成された貫通孔に挿入するとともに、鋼製桁の上面とコンクリート床版との間に充填材を充填することで、鋼製桁とコンクリート床版との一体性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5351635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコンクリート床版は、充填材との付着面となる下面が平坦なため、コンクリート床版と充填材との間で付着切れが生じやすい。床版と充填材との間で付着切れが生じると、走行輪から受ける摩擦荷重(ずれ荷重)がコンクリート床版のみに作用する状態となり、その結果、ずれ荷重がスタッドボルトの全体に分散せずにスタッドボルトの上部に集中する。スタッドボルトの上部にずれ荷重が集中すると、スタッドボルトの下端に作用する曲げ応力が大きくなり、スタッドボルトの負担が大きい。
このような観点から、本発明は、連結部材の負担を低減することを可能とした跨座式モノレール桁を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、鋼製の桁本体と、前記桁本体の上面に敷設されたプレキャスト製のコンクリート床版と、前記コンクリート床版と前記桁本体との間に充填された充填材とを備えた跨座式モノレール桁であって、前記コンクリート床版の下面には前記桁本体側の突出する複数の突起が形成されていて、前記突起の周縁には下に向かうに従って外形が小さくなるように傾斜面が形成されていることを特徴とする。
かかる跨座式モノレール桁は、コンクリート床版の下面に形成された突起によって、充填材との付着が向上する。すなわち、突起がせん断キーとして機能することで、一体性が確保され、その結果、スタッドボルト等の連結部材に作用する曲げ応力を軽減することができる。
【0006】
前記突起の中央部に前記突起の下面に滞留する空気を排気するための排気孔が形成されていて、前記突起の下面が中央部に向かうに従って高くなるように傾斜していれば、充填材を充填する際に突起の周囲に空気溜まりが生じ難くなる。その結果、突起31の周囲に充填材4を確実に充填することができる。
また、前記桁本体の側面に形成された案内鋼板の上端が当該桁本体の上面よりも上側に突出している場合には、前記案内鋼板と前記突起との間に隙間を広く形成しておく。こうすることで、案内鋼板と突起との間に空気溜まりが生じ難くなる。
さらに、前記桁本体の上面に形成されたスタッドボルトは、当該スタッドボルトの頭部に取り付けられた矩形状の係止板を介して前記コンクリート床版に形成された貫通孔に係止されているのが望ましい。この場合、係止板の短辺は貫通孔の内幅よりも小さい長さとする。このようにすることで、貫通孔が、充填材を充填する際の排気孔として機能するため、コンクリート床版の下面に空気溜まりが生じ難くなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の跨座式モノレール桁によれば、鋼製の桁本体とコンクリート床版とを接合する連結部材の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る跨座式モノレール桁に示す断面図である。
図2】(a)はコンクリート床版の上面の平面図、(b)はコンクリート床版の下面の平面図である。
図3】(a)は図2(b)のA−A断面図、(b)は図2のB−B断面図、(c)は(b)のC部分拡大図である。
図4】(a)は図2(a)のD−D断面図、(b)は図2のE−E断面図である。
図5】(a)はコンクリート床版の貫通孔を示す平面図、(b)は(a)のF−F断面図、(c)は(a)のG−G断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、図1に示すように、車両が軌道の上方を走行するように構成された跨座式モノレール桁1について説明する。跨座式モノレール桁1は、上面と両側面にそれぞれ車輪(走行輪W、案内輪W、安定輪W)の走行路が形成されている。跨座式モノレール桁1は、その上面において車両重量を支え、側面において車両を案内するように構成されている。
本実施形態の跨座式モノレール桁1は、鋼製の桁本体2と、桁本体2の上面に敷設されたプレキャスト製のコンクリート床版3と、桁本体2とコンクリート床版3との間に充填された充填材4とを備えている。
【0010】
桁本体2は、上面鋼板21と下面鋼板22と側面鋼板23,23とにより箱状に形成されており、内部に空洞を備えている。
上面鋼板21は、コンクリート床版3を敷設可能な大きさを有し、かつ、モノレールの車両の重量に対して十分な耐力を有している。
上面鋼板21には、複数の連結部材が形成されている。本実施形態では、連結部材として、スタッドボルト24を上面鋼板21の表面に溶接している。なお、連結部材は、スタッドボルト24に限定されるものではなく、例えば、孔あき鋼板ジベルであってもよい。本実施形態では、図2および図3に示すように、4本のスタッドボルト24が所定の間隔をあけて2列配置(計8本)されている。なお、スタッドボルト24の配置および本数は限定されるものではない。スタッドボルト24にはネジ加工が施されており、コンクリート床版3の貫通孔33に挿通させ、充填材4を充填させた状態でナット25を螺着することでコンクリート床版3を固定する。
【0011】
図1に示すように、桁本体2の左右の側面には、案内路(案内鋼板26,26)が上下に2段形成されている。案内路は、車両の車輪W(案内輪Wおよび安定輪W)が当接することで車両の走行を案内する走行路である。案内鋼板26は、側面鋼板23の表面に突設された支持鋼板27、または、上面鋼板21と支持鋼板27により、桁本体10の側面(側面鋼板23)から張り出した状態で固定されている。案内鋼板26の固定方法は前記の方法に限定されるものではなく、例えば、下側の案内鋼板26は、下面鋼板22と支持鋼板27により固定されていてもよい。上側に設けられた案内鋼板26の上端は、上面鋼板21(桁本体2)の上面よりも上側に突出している。
本実施形態の桁本体2は、鋼板を組み合わせて構成されているため、車両の走行に対して十分な耐力を有している。また、桁本体2は、内部に空洞を備えた箱状であるため、軽量化を図ることができ、長大スパンのモノレール桁を構成することを可能としている。
【0012】
コンクリート床版3は、図1に示すように、桁本体2(上面鋼板21)の上方に敷設されて、走行輪Wの走行路として機能する。本実施形態では、複数のコンクリート床版3が桁本体2の桁軸方向に沿って連設されている。コンクリート床版3は、製品工場等において、強度や製作寸法精度のばらつきを所定の精度に収まるように厳密に品質管理されて製作されたプレキャスト部材である。走行面のレベル管理や凹凸精度管理についても高品質に製造されている。また、コンクリート床版3は、トラック等で搬送可能な形状に形成されているため、取り扱いやすい。本実施形態のコンクリート床版3は、桁本体2と同じ程度の幅を有している。すなわち、コンクリート床版3を桁本体2の上方に敷設した状態で、コンクリート床版3の側面が、案内鋼板26の外面と面一となる(図3(c)参照)。
【0013】
コンクリート床版3の下面には、図2(b)に示すように、桁本体2側に突出する複数の突起31が形成されている。本実施形態では、コンクリート床版3の長辺に沿って、2か所ずつ、計4か所の突起31が形成されている。なお、突起31の数および配置は限定されるものではない。突起31は、平面視矩形状を呈している。図3(c)に示すように、突起31の外縁のうち、コンクリート床版3の長辺に面する縁(案内鋼板26側の縁)は、コンクリート床版3の下面に対して垂直に形成されている。一方、突起31のその他の外縁は、図3(a)および(b)に示すように、下に向かうに従って突起31の中央に近付くように傾斜している。すなわち、突起31は、下に向かうに従って外形が小さくなる形状を有している。
【0014】
各突起31の中央部には、コンクリート床版3を貫通する排気孔32が形成されている。本実施形態の排気孔32は、断面円形であるが、排気孔32の形状は限定されるものではない。また、排気孔32の内径は適宜決定すればよい。
突起31の下面は、中央部(排気孔32)に向かうに従って高くなるようにすり鉢状に傾斜している。すなわち、突起31の下面には、円錐台状の空間が形成されている。
突起31は、図3(c)に示すように、コンクリート床版3の側面から所定の間隔をあけた位置に形成されていて、突起31の側端面と案内鋼板26の内側面との間に隙間が形成される。なお、突起31と案内鋼板26との隙間の大きさは限定されるものではないが、本実施形態では、30mmとする。
【0015】
コンクリート床版3には、図2(a)および(b)に示すように、桁本体2に固定されたスタッドボルト24,24,…に対応して複数の貫通孔33,33,…が形成されている。本実施形態では、長手方向に沿って4つの貫通孔33,33,…が2列(計8か所)形成されている。なお、貫通孔33の配置や箇所数等は限定されるものではなく、スタッドボルト(連結部材)24の配置や本数等に応じて適宜設定すればよい。
貫通孔33は、図4(b)および(c)に示すように、段差を有して形成されており、上側の拡幅部33aが下側の一般部33bよりも大きな平面形状を有している。本実施形態の拡幅部33aは、図5(a)に示すように、平面視円形である。また、拡幅部33aは、図5(b)および(c)に示すように、底面の面積が上面の面積よりも大きくなるように、円錐台状に形成されている。なお、拡幅部33aの形状は限定されるものではなく、例えば、円柱状であってもよい。また、拡幅部33aは、平面視多角形状であってもよい。一般部33bは、スタッドボルト24の外径よりも大きな平面形状を有している。本実施形態の一般部33bは、図5(a)に示すように、平面視長方形状の角柱状を呈している。なお、一般部33bの形状は限定されるものではなく、例えば、平面視正方形や円形であってもよい。
【0016】
コンクリート床版3は、図5(b)および(c)に示すように、貫通孔33,33,…にスタッドボルト24,24,…を挿通させた状態で桁本体2の上面に充填材4を介して敷設される。
スタッドボルト24の頭部には、係止板28を挿通させた状態でナット25を螺着する。本実施形態では、係止板28として一般部33bの長辺(内幅)の大きさよりも小さな幅の短辺を有した長方形状の鋼板を使用する。係止板28は、長方形状の一般部33bに対して、互いの長辺同士が直交するように、拡幅部33aの底部に載置する。このようにすると、一般部33bと係止板28の縁との間に空気抜き用の隙間が形成される。なお、係止板28の形状は、拡幅部33aの底面(貫通孔33)上に載置した際に、一般部33b(貫通孔33)の内面との間に隙間を形成することが可能であれば限定されるものではない。
【0017】
コンクリート床版3の長手方向端部には、図2(b)に示すように、レベル調整ボルト5を挿通するための調整ボルト孔34,34,…が形成されている。調整ボルト孔34は、列状に配設された貫通孔33,33,…の延長線上に形成されている。調整ボルト孔34は、レベル調整ボルト5の外径よりも大きな内径を有して形成されており、下側端部には、図4(a)に示すように、レベル調整ボルト5を螺着可能な調整ナット34aが予め埋設されている。なお、調整ナット34aは必要に応じて設ければよい。
また、コンクリート床版3には、図2(b)に示すように、桁本体2とコンクリート床版3との間に充填材4を注入するための注入孔35,35,…が形成されている。本実施形態では、コンクリート床版3の各長辺に沿って3か所ずつ(計6か所)を注入孔35が貫通している。コンクリート床版3の長手方向に隣り合う注入孔35同士の間には、二つの突起31,31が形成されている。なお、注入孔35の数および配置は限定されるものではない。また、注入孔35の形状も限定されない。
【0018】
充填材4は、コンクリート床版3を桁本体2の上面に載置させた際に形成されたコンクリート床版3の下面と桁本体2(上面鋼板21)の上面との隙間に充填する。図3(c)に示すように、本実施形態では、案内鋼板26の上端とコンクリート床版3の下面との間にシール材6を介設する。本実施形態のシール材6は、排気用の切り込みが形成されたゴムスポンジからなる。なお、シール材6の切り込みは、シール材6(コンクリート床版3)の長手方向と交差する方向に形成する。なお、シール材6を構成する材料は、案内鋼板26の上端とコンクリート床版3の下面との隙間を塞ぐとともに、充填材4を充填する際に当該隙間から空気を排気することが可能な材料であれば限定されるものではない。また、シール材6には、通気性を確保するために切り込みに代えて微細な貫通孔が形成されていてもよい。
【0019】
跨座式モノレール桁1の構築は、以下の手順により行う。
まず、鋼製の桁本体2の上面鋼板21に複数のスタッドボルト24を溶接する。なお、スタッドボルト24は、桁本体2の上面に予め溶接されていてもよい。
次に、上面鋼板12の上面に配置されたコンクリート床版3を配置する。このとき、コンクリート床版3の貫通孔33にスタッドボルト24を挿通させる。また、コンクリート床版3の調整ボルト孔34に挿通させたレベル調整ボルト5を利用して高さ調整を行う。コンクリート床版3は、高さ調整によって所望の縦断勾配および横断勾配を確保する。コンクリート床版3の高さ調整が完了したら、スタッドボルト24の頭部(拡幅部33aの底部)に係止板28をセットするとともに、ナット25をスタッドボルト24に螺着する。
そして、1または2つの注入孔35から桁本体2とコンクリート床版3との隙間に充填材4を注入する。このとき、充填材4の注入に使用していない注入孔35は排気孔として機能する。そして、桁本体2とコンクリート床版3との隙間への充填材4による充填が完了したら、貫通孔33、調整ボルト孔34および注入孔35に、間詰め材を充填するとともに、隣接する他のコンクリート床版3との間に形成された隙間(目地)に間詰め材を充填する。
【0020】
以上、本実施形態の跨座式モノレール桁1によれば、桁本体2上面の車輪Wの走行面に、プレキャスト製のコンクリート床版3を採用しているため、モノレール走行面を高い仕上げ精度に構築することができる。また、コンクリート床版3を使用すると錆、ひびわれ、磨り減りなどに対する耐久性が向上するとともに、モノレール走行に必要な摩擦係数を長期的に保持することができるため、維持管理に要する費用を削減することができる。なお、コンクリート床版3として、超高強度繊維補強コンクリート製床版(UFC床版)等の高耐久性の材料を使用することで、耐久性を向上させ部材厚を薄くすることができる。
【0021】
また、コンクリート床版3は、下面に複数の突起31が形成されているため、充填材4との付着性が優れている。すなわち、突起31がせん断キーとして機能することで、充填材4との一体性が確保され、その結果、スタッドボルト24に作用する曲げ応力を軽減することができる。そのため、スタッドボルト24の疲労耐久性および安全性の向上を図ることができる。
突起31の中央部に排気孔32が形成されているため、充填材4を充填した際に突起31の下面に空気だまりが生じ難い。その結果、突起31の周囲に充填材4を確実に充填することができる。また、突起31の下面が排気孔32に向かうに従って高くなるように傾斜していて、突起31の下面の空気が排気孔32に誘導されるため、さらに突起31の下面に空気だまりが生じ難い。さらに、突起31の周縁に傾斜面が形成されていて、突起31の周囲の空気は排気孔32に誘導されるため、突起31の周囲に空気溜まりが生じ難い。
また、桁本体2の側面に形成された案内鋼板26と突起31との間に隙間が形成されているため、突起31の案内鋼板26側の側面の空気は案内鋼板26の上端から排気される。
このように、桁本体2とコンクリート床版3との隙間に対して、空気溜まりが形成されることなく隅々まで充填材4が充填されるため、局所的な応力の発生を防ぐことができる。また、コンクリート床版3と充填材4とが密着しているため、一体性を確保できる。
【0022】
案内鋼板26の上端とコンクリート床版3の下面との間には、切り込みが形成されたシール材6が介設されているため、充填材4の流出が防止されているとともに、コンクリート床版3の下面の空気が排気される。そのため、桁本体2とコンクリート床版3との間に充填材4を密実に充填することができる。また、案内鋼板26の上端が上面鋼板21(桁本体2)の上面よりも上側に突出しているため、案内鋼板26がずれ止めとして機能する。
また、スタッドボルト24は、貫通孔33の一般部33bの内幅よりも小さな長さ矩形状の係止板28を介して貫通孔33に係止されているため、係止板28と貫通孔33との間に形成された隙間が、充填材4を充填する際の排気孔として機能する。そのため、コンクリート床版3の下面に空気溜まりが生じ難くなる。
また、複数の注入孔35が形成されているため、充填材4の注入に使用していない注入孔35が排気孔として機能する。そのため、排気孔32とともに注入孔35から排気することで、コンクリート床版3の下面に空気溜まりが形成されることを防止し、充填材4の充填を確実に行うことができる。また、充填材4の注入に使用していない注入孔35を利用して、充填材4の充填状況を確認することができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
突起31には、排気孔32が形成されている必要はない。また、突起31に排気孔32が形成されていない場合には、突起31の下面は、中心部から外側に向かうに従って上側に傾斜しているのが望ましい。また、突起31の周囲は全周囲(全辺)が傾斜していてもよい。
案内鋼板26は、必ずしも上面鋼板21の上面よりも上側に突出している必要はない。なお、案内鋼板26の上面とコンクリート床版3の下面との隙間は、型枠により遮蔽してもよい。
貫通孔33は、必ずしも段差を有している必要はない。また、スタッドボルト(連結部材)24は、必ずしも貫通孔33内に係止させる必要はない。
【符号の説明】
【0024】
1 跨座式モノレール桁
2 桁本体
21 上面鋼板
24 スタッドボルト
25 ナット
26 案内鋼板
28 係止板
3 コンクリート床版
31 突起
32 排気孔
33 貫通孔
4 充填材
図1
図2
図3
図4
図5