(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
[繊維複合体]
本実施形態の繊維複合体は、発泡樹脂を含む芯材を含み、上記芯材の表面の少なくとも一部に、繊維及び樹脂を含む表皮材が積層された繊維複合体であり、上記繊維複合体の厚さ方向の断面において、上記芯材中に幅8μm以上の樹脂部分(A)、及び平均長径が5〜800μmの気泡(C)を含む。
【0020】
本実施形態の繊維複合体は、発泡樹脂を含む芯材の少なくとも一方の表面の少なくとも一部に、繊維及び樹脂を含む表皮材が配置された複合体であることが好ましい。上記表皮材は、芯材の両表面に設けられていてもよいし、片面に設けられていてもよい。上記表皮材は、芯材の表面の一部に設けられていてもよいし、全面に設けられていてもよい。
【0021】
すなわち、実施形態の繊維複合体では、芯材の表面のうち表皮材を配置する部分は、芯材の形状に応じて適宜定められてよく、例えば、シート状の場合(後述の実施例参照)には、片面又は両面の全部又は一部としてよく、塊状の場合には、静置状態で特定方向から見える面の全部又は一部としてもよく、線状の場合には、一端から延在方向に所定長さについての表面の全部又は一部としてよい。
【0022】
図1を用いて、本実施形態の繊維複合体の断面を説明する。
図1は、本実施形態の繊維複合体の厚さ方向の断面である。繊維複合体1は、芯材2の両面の全面に表皮材3が積層された繊維複合体1である。芯材2には、8μm以上の幅を持つ実質的に中実な樹脂部分(A)4及び平均長径が5〜800μmの気泡(C)6を含む。幅が広い樹脂部分(A)を有することにより、高温環境下での剛性、外観、表面美粧性に優れる。
図1の例では、気泡(C)6は、薄い樹脂部分(B)及び/又は厚い樹脂部分(A)によって囲まれている。即ち、隣り合う気泡同士の境界が、樹脂部分(A)及び/又は樹脂部分(B)からなっている。特に、樹脂部分(A)に囲まれた領域内に、樹脂部分(B)に囲まれた気泡が複数含まれているため、高温時の剛性に一層優れる。
また、樹脂部分(A)4は、表皮材3が積層された芯材の一方の表面(例えば
図1の上側表面)から他方の表面(
図1の下側表面)まで、厚さ方向に連続的につながっている。つながり方はまっすぐでもよいし、
図1のように網目状でつながっていてもよい。さらに、樹脂部分(A)4の多くが閉じられており、閉じられた樹脂部分(A)4内には、樹脂部分(B)5及び気泡6を含んでいる。
【0023】
(芯材)
本実施形態の繊維複合体における上記芯材は、発泡樹脂を含む。芯材には、目的や用途に応じて、発泡樹脂以外の部材が含まれていてもよい。ただし、発泡樹脂の特性が得られやすい観点から、芯材に含まれる樹脂は発泡樹脂のみであることが好ましく、芯材は発泡樹脂のみからなることがより好ましい。また、芯材は、発泡樹脂を含む発泡体であることが好ましく、発泡樹脂のみからなる発泡体であることがより好ましい。
【0024】
−発泡樹脂−
上記発泡樹脂は、耐熱性が高い樹脂が好ましく、より好ましくはポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等を主成分とする発泡樹脂であり、特に好ましくはポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂である。
なお、発泡樹脂は単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
ここで、「主成分とする」とは、発泡樹脂全量(100質量%)に対して、50質量%以上含むことをいい、60質量%以上としてもよく、100質量%としてもよい。
【0025】
上記芯材に、後述する、表皮材を重ね合わせ、温度や圧力を高くして積層の繊維複合体を形成することができる。このため、芯材の弾性率が高いほうが、繊維複合体としたときの厚み等の繊維複合体の外観がよいため、この点から、発泡樹脂としては、ポリアミド系樹脂、又はポリフェニレンエーテル系樹脂が好適である。
【0026】
上記ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸と二価アルコールとが、縮合反応を行った結果得られた高分子量の線状ポリエステルが好ましい。中でも、芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。
なお、ポリエステル系樹脂は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記芳香族ポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステルが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
なお、上記芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に、例えば、トリメリット酸等のトリカルボン酸、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸やその無水物、グリセリン等のトリオール、ペンタエリスリトール等のテトラオール等の三価以上の多価アルコール等を構成成分として含有していてもよい。
【0028】
上記ポリエステル系樹脂としてポリエチレンテレフタレート等を用いる場合、架橋剤によって架橋されていてもよい。架橋剤としては、公知のものが用いられ、例えば、無水ピロメリット酸等の酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。なお、架橋剤は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミド共重合体、これらの混合物が挙げられる。
なお、ポリアミド系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記ポリアミドとしては、例えば、ジアミンとジカルボン酸との重縮合により得られる、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン1212等;ラクタムの開環重合により得られる、ナイロン6、ナイロン12等;等が挙げられる。
【0031】
上記ポリアミド共重合体としては、例えば、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロン66/610、ナイロン66/612、ナイロン66/6T(Tは、テレフタル酸成分を表す)、ナイロン66/6I(Iは、イソフタル酸成分を表す)、ナイロン6T/6I等が挙げられる。中でも、脂肪族ポリアミドが好ましく、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6等がより好ましい。
【0032】
上記ポリアミド系樹脂の混合物としては、例えば、ナイロン66とナイロン6との混合物、ナイロン66とナイロン612との混合物、ナイロン66とナイロン610との混合物、ナイロン66とナイロン6Iとの混合物、ナイロン66とナイロン6Tとの混合物、ナイロン6とナイロン6I/6Tとの混合物等が挙げられる。中でも、発泡樹脂の結晶化度を高めて、耐熱性及び複合体の表面美粧性を十分にする観点から、混合物の場合のポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドを50質量%超含むものであることが好ましく、60質量%以上含むものであることがより好ましい。
なお、ポリアミド系樹脂のアミノ基又はカルボキシル基と反応する置換基(以下、反応性の置換基ともいう。)を有する化合物や重合体等を用いて、ポリアミド系樹脂の分子内において、かかる置換基を介した架橋構造を形成させることによって、ポリアミド系樹脂の架橋度を高めてもよい。
【0033】
反応性の置換基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩、エステル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボジイミド基等の官能基等が挙げられ、特に、反応の速さの観点から、グリシジル基、カルボジイミド基が好ましい。
上記反応性の置換基は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、反応性の置換基を有する化合物や重合体等は、1分子中に複数種の官能基を有していてもよい。
なお、反応性の置換基のポリアミド系樹脂への導入量は、架橋により樹脂にゲル化等が生じない程度とするのがよい。
【0034】
ポリアミド系樹脂が末端に有する高反応性の官能基(アミノ基及びカルボキシル基)を、ポリアミド系樹脂の合成において末端封止剤を添加することによって、低反応性の官能基に変える(ポリアミド系樹脂の末端を封鎖する)ことができる。
この場合、末端封止剤を添加する時期としては、原料仕込み時、重合開始時、重合中後期、又は重合終了時が挙げられる。
【0035】
上記末端封止剤としては、ポリアミド系樹脂のアミノ基又はカルボキシル基との間で反応し得る単官能性の化合物である限り、特に制限されることなく、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。末端封止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、高温環境下で使用される場合には上記発泡樹脂と共に、熱安定剤を用いてもよく、特に熱安定剤としては、120℃以上の高温環境下で長期熱老化を効果的に防止する観点から、銅化合物が好ましく、この銅化合物とハロゲン化アルカリ金属化合物との組み合わせも好ましい。ここで、ハロゲン化アルカリ金属化合物としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む重合体をいい、例えば、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなる単独重合体、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む共重合体等が挙げられる。
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;アルキル基;アルコキシ基;フェニル基;ハロゲン原子と一般式(1)中のベンゼン環との間に少なくとも2個の炭素原子を有するハロアルキル基又はハロアルコキシ基で第3α−炭素を含まない基;からなる群から選択される一価の基である。]
【0037】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジラウリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−ジフェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メトキシ−6−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−ステアリルオキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジベンジル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。中でも、特に、上記一般式(1)にR
1及びR
2が炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R
3及びR
4が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である繰り返し単位を含む重合体が好ましい。
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、他の樹脂と併用して用いられても良く、発泡樹脂の樹脂成分100質量%に対して、40〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量%である。PPE含有量を40質量%以上とすれば、優れた耐熱性を得ることができ、また、PPE含有量を80質量%以下とすれば、優れた加工性を得ることができる。
【0039】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂と共に用いる他の樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等のポリオレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂;AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂;ポリスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;セルロース系樹脂;スチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン系、フッ素ゴム系等の熱可塑性エラストマー;ポリアミド系、ポリアセタール系、ポリエステル系、フッ素系の熱可塑性エンジニアリングプラスチック;等が挙げられる。また本発明の目的を損なわない範囲で、変性、架橋された樹脂を用いてもよい。中でも、相溶性の観点から、ポリスチレン系樹脂が好ましい。
上記他の樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂と共に用いる他の樹脂におけるポリスチレン系樹脂としては、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体、スチレン及び/又はスチレン誘導体を主成分とする共重合体等が挙げられる。ここで、「主成分とする」とは、共重合体全量(100質量%)に対して、スチレン及び/又はスチレン誘導体に由来する構成単位の含有量が60質量%以上であることをいう。
【0041】
上記スチレン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジフェニルエチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0042】
スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリクロロスチレン等が挙げられる。
【0043】
スチレン及び/又はスチレン誘導体を主成分とする共重合体としては、例えば、スチレン−α−オレフィン共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体;スチレン−アクリロニトリル共重合体;スチレン−マレイン酸共重合体;スチレン−無水マレイン酸共重合体;スチレン−マレイミド共重合体;スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体;スチレン−N−アルキルマレイミド共重合体;スチレン−N−アルキル置換フェニルマレイミド共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−メタクリル酸共重合体;スチレン−メチルアクリレート共重合体;スチレン−メチルメタクリレート共重合体;スチレン−n−アルキルアクリレート共重合体;スチレン−n−アルキルメタクリレート共重合体;エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体;ABS、ブタジエン−アクリロニトリル−α−メチルベンゼン共重合体等の三元共重合体;スチレングラフトポリエチレン、スチレングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体、(スチレン−アクリル酸)グラフトポリエチレン、スチレングラフトポリアミド等のグラフト共重合体;等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、ポリスチレン系樹脂には、必要に応じて、ブタジエン等のゴム成分を添加して使用してもよい。ゴム成分の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量%に対して、1.0〜20質量%であることが好ましく、例えば、6質量%としてよい。
【0044】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂と共に用いる他の樹脂におけるポリカーボネート系樹脂としては、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるもの等が挙げられる。ここで使用されるジヒドロキシ成分としては、芳香族ポリカーボネートのジヒドロキシ成分として使用されているものであればよく、ビスフェノール類でも脂肪族ジオール類でも良い。
【0045】
ビスフェノール類としては、例えば4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3’−ビフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’−ジフェニル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン、4,4’−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0046】
脂肪族ジオール類としては、例えば2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、1,14−テトラデカンジオール、オクタエチレングリコール、1,16−ヘキサデカンジオール、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}メタン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}エタン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−1−フェニルエタン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル}プロパン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ビフェニル}プロパン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル}プロパン、2,2−ビス{3−t−ブチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}ブタン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−4−メチルペンタン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}オクタン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}デカン、2,2−ビス{3−ブロモ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、1,1−ビス{3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}ジフェニルメタン、9,9−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル}フルオレン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロペンタン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,3−ビス[2−{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,3−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、4,8−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン、1,3−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−5,7−ジメチルアダマンタン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(イソソルビド)、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(イソマンニド)、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール(イソイディッド)等が挙げられる。これらの中で芳香族ビスフェノール類が好ましく、中でも、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンおよび1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましい。殊に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−スルホニルジフェノールおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも、強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または2種以上組み合わせて用いてもよい。さらにポリカーボネート樹脂は、分岐化剤を上記のジヒドロキシ化合物と併用して分岐化ポリカーボネート樹脂としてもよい。
【0047】
かかる分岐化ポリカーボネート樹脂に使用される分岐化剤としての三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが挙げられる。またテトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられる。中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。また、ポリカーボネート樹脂に関しては、フェノール等で末端を封止してもよい。
【0048】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマーを重合させることによって製造される。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの何れか一方又は双方を意味する。
上記(メタ)アクリル系樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
又、上記(メタ)アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリル系モノマー以外にこれと共重合可能なモノマー成分を含有していてもよい。このようなモノマーとしては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。
さらに、熱及び必要に応じ、塩やアルカリ、酸を用いて、脱水反応や脱エタノール反応、アミン交換反応をすることで、主鎖にグルタル酸無水物や(メタ)アクリルイミド環、ラクトン環を導入することで、耐熱性を付与してもよい。特に好ましくはメタクリルイミド系樹脂、無水マレイン酸と(メタ)アクリル及びスチレンとの共重合樹脂等が挙げられる。
【0050】
上記発泡樹脂は、更に、任意選択的に、添加剤等のその他の成分、微量のガス等を含んでいてもよい。発泡樹脂に含まれてもよいその他の成分としては、安定剤、衝撃改良剤、難燃剤、滑剤、顔料、染料、耐候性改良剤、帯電防止剤、耐衝撃改質剤、結晶核剤、ガラスビーズ、無機充填剤、架橋剤、タルク等の核剤、他の熱可塑性樹脂等が挙げられ、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。上記発泡樹脂におけるその他の成分の含有量は、発泡樹脂100質量部に対して、30質量部以下としてよく、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。
【0051】
特に、上記安定剤としては、特に限定されることなく、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ホスファイト化合物、チオエーテル系化合物等の有機系酸化防止剤や熱安定剤;ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系等の光安定剤や紫外線吸収剤;金属不活性化剤等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
発泡樹脂に含まれてもよい微量ガスとは、発泡樹脂の製造過程(後述)において含まれることとなるものである。ガスとしては、特に限定されないが、空気、炭酸ガス、発泡剤として用いられる各種ガス、脂肪族炭化水素系ガス、アルコール等が挙げられる。脂肪族炭化水素系ガスとしては、具体的には、ブタン、ペンタン等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、ペンタノール等が挙げられる。
微量ガスの含有量は、芯材100質量%中に、0.1質量%未満が好ましく、0.07質量%以下がさらに好ましく、含まれていないことが特に好ましい。ガスが少ないほうが、繊維複合体としたときに100℃の環境下で、発泡樹脂がガスの影響で膨れることを防止することができ、外観として好ましい。
【0053】
また、発泡樹脂には他の熱可塑性樹脂が含まれていてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等のポリオレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリカーボネート系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、1,2−ポリブタジエン系、フッ素ゴム系等の熱可塑性エラストマー;ポリアセタール系、ポリエステル系、フッ素系の熱可塑性エンジニアリングプラスチック;等が挙げられる。また本発明の目的を損なわない範囲で、変性、架橋された樹脂を用いてもよい。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
−樹脂部分(A)−
上記芯材は樹脂部分(A)及び気泡(C)を含み、さらに樹脂部分(B)を含むことが好ましい。なお、上記芯材は、樹脂部分(A)、樹脂部分(B)、気泡(C)以外の構造を有していてもよい。
【0055】
本実施形態の芯材に含まれている樹脂部分(A)は、繊維複合体を厚さ方向に切断して得られる断面において、8μm以上の幅を持つ実質的に中実な樹脂部分であることが好ましい。樹脂部分(A)の幅は、8μm以上であると、繊維複合体の高温時の環境での剛性が高くて好ましい。より好ましくは、9μm以上、さらに好ましくは、12μm以上である。
ここで、樹脂部分の幅(気泡外周上の任意の点aにおける樹脂部分の幅)とは、隣り合う気泡の気泡外周間の距離をいい、具体的には、上記断面において、気泡の外周上の点aと該気泡に隣接する気泡の外周上の点bとを結んだ線分の長さが最小距離となる2点を結んだ線分の長さをいう。但し、該線分は、樹脂部分のみを通り、気泡(C)は通らないものとする。なお、気泡外周上の点aにおける樹脂部分の幅が8μm以上とは、点aにおける樹脂部分の幅及び点bにおける樹脂部分の幅が何れも8μm以上であることが好ましい。
【0056】
樹脂部分(A)を構成する樹脂は、発泡樹脂と同じでもよいし、異なっていてもよい。樹脂部分(A)の幅及び気泡の長径は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0057】
上記樹脂部分(A)は、高温環境下における剛性に一層優れる観点から、樹脂部分の幅が8μm以上となる点が、連続して1mm以上続くことが好ましく、5mm以上続くことがより好ましく、発泡体の厚さ以上続くことがさらに好ましく、発泡体の厚さの1.5倍以上続くことが特に好ましい。中でも、樹脂部分の幅が8μm以上となる点が、厚さ方向に連続して1mm以上続くことが好ましく、5mm以上続くことがより好ましい。また、厚さ方向に連続して、発泡体の厚さ100%に対して50%以上続くことが好ましく、100%続くことがより好ましい。
【0058】
上記芯材中に含まれる樹脂部分(A)の平均幅は、高温環境下における剛性に一層優れる観点から、8〜40μmであることが好ましい。
なお、樹脂部分(A)の平均幅は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0059】
上記樹脂部分(A)は、上記断面において、樹脂部分(A)の少なくとも一部が、表皮材が積層された芯材の一方の表面から他方の表面に連続的につながっていることが好ましい。このように幅が広い樹脂部分(A)が連続的につながっていることで、芯材の構造材としての構造を太い樹脂部分(A)によって成り立たせることが出来、高温でも太い樹脂部分(A)が支持材としての役割を担っているため繊維複合体の芯材の曲げ強度を保持することが出来て好ましい。
樹脂部分(A)は、上記断面において、厚さ方向に直線状に連続的につながっていてもよいし、曲線状に連続的につながっていてもよい。中でも、高温環境下における剛性に一層優れる観点から、厚さ方向に連続的につながる樹脂部分(A)を複数有することが好ましく、直線状及び/又は曲線状に厚さ方向に連続的につながる樹脂部分(A)を複数有しこれらの樹脂部分が幅方向(上記断面において厚さ方向に直交する方向)につながる網目構造(
図1参照)を有することがより好ましい。上記網目構造は、上記断面の芯材の一部にあってもよいし、芯材全体にあってもよい。
【0060】
高温環境下における剛性に一層優れる観点から、上記断面において、芯材と表皮材との界面には、樹脂部分(A)が含まれることが好ましく、全面が樹脂部分(A)であってもよいし(
図1参照)、一部が樹脂部分(A)であってもよい。
また、上記断面において、芯材と空気との界面(断面の幅方向両端辺等)には、樹脂部分(A)が含まれていてもよく、全面が樹脂部分(A)であってもよいし(
図1参照)、一部が樹脂部分(A)であってもよい。
【0061】
−樹脂部分(B)−
上記樹脂部分(B)は、6μm以下の幅を持つ樹脂部分である。樹脂部分(B)は、芯材に含まれる気泡同士の隔壁を示し、気泡の壁面に相当する。樹脂部分(B)の幅が6μm以下であると、気泡間の距離が短く、芯材に気泡が密に存在していることを表し、軽量でかつ高温時の剛性が均一であり好ましい。より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは4μm以下である。樹脂部分(B)の幅の測定方法は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0062】
上記芯材中に含まれる樹脂部分(B)の平均幅は、高温環境下における剛性に一層優れる観点から、0.6〜6μmであることが好ましい。
なお、樹脂部分(B)の平均幅は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、本明細書における樹脂部分(A)及び樹脂部分(B)の平均幅とは、それぞれの幅が特定範囲を満たす、任意の30個の樹脂部分から求めた値をいうものとする。
【0063】
−気泡(C)−
上記気泡(C)の平均長径は、5〜800μmが好ましく、10〜700μmがより好ましい。気泡の平均長径がこの範囲であれば、特に100℃の高温環境下において、衝撃エネルギーを十分に吸収することができ好ましい。
なお、本明細書において気泡の平均長径は、後述の実施例に記載の方法で測定される値をいう。本明細書における平均長径とは、平均長径が特定範囲を満たす、任意の30個の気泡から求めた値をいうものとする。
【0064】
上記断面において、複数の気泡(C)が樹脂部分(A)に囲まれた構造を含むことが好ましい。本実施形態の芯材中の樹脂部分(B)及び前記気泡(C)は、樹脂部分(A)に囲まれていることが好ましい。薄い樹脂部分(B)と気泡(C)を含み、樹脂部分(A)を含まない芯材は、高温時、一般に破断しやすく、強度が低い。厚い樹脂部分(A)に囲まれていることで、繊維複合体に高温時に応力がかかった場合、樹脂部分(A)で応力に耐えることが出来るため好ましい。さらに、芯材内に細かく網目状に貼り廻られた樹脂部分(A)に、樹脂部分(B)及び気泡(C)が囲まれていることがより好ましい。樹脂部分(A)により囲まれた単位としては、長径が100μm〜3mmが好ましく、より好ましくは300μm〜3mmである。
【0065】
上記芯材中の樹脂部分(A)及び樹脂部分(B)を構成する樹脂は同じでもよいし、また、異なっていてもよい。
本実施形態の繊維複合体の製造方法としては、先に作製した網目状の樹脂部分(A)間に樹脂部分(B)と気泡(C)からなる発泡樹脂を詰め込んでも良いし、樹脂部分(B)と気泡(C)からなる発泡樹脂を樹脂部分(A)の原料である樹脂で貼り合せることで樹脂部分(A)を構成してもよいし、樹脂部分(B)と気泡(C)からなる発泡樹脂を溶着することで溶着し、気泡が取り除かれた樹脂部分(A)を構成してもよい。
【0066】
上記芯材の見掛け密度は、10〜700kg/m
3が好ましく、20〜600kg/m
3がより好ましい。見掛け密度が適度だと、特に100℃等の高温環境下においても、繊維複合体に強い衝撃が負荷された際に、気泡の座屈によって、応力集中部が発生しにくく、表皮材が容易に変形して破壊するおそれが少なく好ましい。また、軽量化の目的に対し好ましい。
なお、本明細書において、見掛け密度とは、繊維強化複合体から芯材のみを切り出し、測定した体積及び重量から求められる、後述の実施例に記載の方法で測定される値をいう。
【0067】
(表皮材)
本実施形態の繊維複合体に用いられる繊維及び樹脂を含む表皮材は、強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させてなるものであることが好ましい。
【0068】
表皮材は、芯材の両表面に積層一体化されている必要はなく、芯材の少なくとも一方の表面に表皮材が積層一体化されていればよい。表皮材の積層は、繊維複合体の用途に応じて決定すればよい。中でも、繊維複合体の耐衝撃性を考慮すると、芯材の厚さ方向における上下面のそれぞれの表面に表皮材が積層一体化されていることが好ましい。このような繊維複合体1は、
図1に示すように、発泡樹脂からなる芯材2と、この芯材2の両面にそれぞれ積層一体化なされてなる表皮材3を有する。
【0069】
表皮材を構成している繊維は強化繊維であることが好ましい。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維等の無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維等の金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維等の有機繊維;ボロン繊維等が挙げられる。強化繊維は、1種単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。中でも、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的強度を有している。
【0070】
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材等が挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。また、繊維束を結束させる際に使用する糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸等の合成樹脂糸、及びガラス繊維糸等のステッチ糸が挙げられる。
【0071】
強化繊維基材は、一枚の強化繊維基材のみを用いてもよいし、複数枚の強化繊維基材を積層して積層強化繊維基材として用いてもよい。上記積層強化繊維基材としては、(1)一種のみの強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(2)複数種の強化繊維基材を用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材を複数枚用意し、これらの面材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた面材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層強化繊維基材等が挙げられる。なお、面材同士を一体化させる際に使用する糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸等の合成樹脂糸、及びガラス繊維糸等のステッチ糸が挙げられる。
【0072】
表皮材は強化繊維に強化用樹脂が含浸されてなるものであることが好ましい。含浸させた強化用樹脂によって、強化繊維同士を結着一体化させることができる。強化繊維に含浸させる強化用樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の何れも用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。上記強化用樹脂は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0073】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂、等が挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0074】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、発泡体との接着性又は繊維強化プラスチック層を構成している強化繊維同士の接着性に優れていて、耐熱性も高いことから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。
【0075】
上記熱可塑性樹脂としての上記エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0076】
上記熱可塑性樹脂としての上記ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。ジオールは、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0077】
表皮材中における樹脂(好ましくは、強化用合成樹脂)の含有量は、表皮材100質量%に対して、20〜70質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。樹脂(好ましくは、強化用合成樹脂)の含有量が少な過ぎると、繊維同士の結着性や表皮材と芯材との接着性が不十分となり、表皮材の機械的強度や繊維複合体の耐衝撃性を十分に向上することができない虞れがある。また、樹脂の含有量が多過ぎると、表皮材の機械的強度が低下して、繊維複合体の耐衝撃性を十分に向上させることができない可能性がある。また、樹脂の耐熱性は高いほうが高温時の剛性を維持するために好ましいいが、高すぎると、貼り合せる際に高温が必要となり、成形時間が長くなり生産性が落ちる。耐熱性は、樹脂のガラス転移温度で表すことが出来て、熱硬化性樹脂の場合、硬化後のガラス転移温度で表す。好ましいガラス転移温度は、70〜150℃であり、より好ましくは75〜140℃である。ガラス転移温度は、JIS K7121に基づき測定が可能である。
【0078】
表皮材の厚さは、1層につき0.02〜2mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。厚さが上記範囲内である表皮材は、軽量であるにも関わらず機械的強度に優れる。
【0079】
表皮材の目付は、50〜4000g/m
2が好ましく、100〜1000g/m
2がより好ましい。目付が上記範囲内である表皮材は、軽量であるにも関わらず機械的強度に優れる。
【0080】
[製造方法]
(芯材の製造方法)
本実施形態の発泡樹脂を含む芯材の製造方法としては、公知の製造方法を用いることができる。具体的には、(1)発泡性を備える樹脂粒子を型内に充填し、水蒸気等で加熱し、樹脂粒子を発泡させると同時に樹脂粒子同士を熱融着させることによって、発泡成形品(発泡体)を製造する方法(型内発泡成形法)、(2)合成樹脂を押出機に供給して化学発泡剤又は物理発泡剤等の発泡剤の存在下にて溶融混練し押出機から押出発泡させて発泡体を製造する方法(押出発泡法)、(3)合成樹脂及び化学発泡剤を押出機に供給して化学発泡剤の分解温度未満にて溶融混練し押出機から発泡性樹脂成形体を製造し、この発泡性樹脂成形体を発泡させて発泡体を製造する方法等が挙げられる。中でも、上記型内発泡成形法は、製品形状を自由に設定しやすく、高発泡倍率の発泡成形品を得やすい等の利点がある。(2)の押出発泡法及び(3)でも後加工で樹脂部分(A)を設けることは可能であるが、中でも(1)の型内発泡成形法が樹脂粒子内の溶着によって予備樹脂部分(A)の前駆体が得られ、発泡することによって樹脂部分(B)と気泡を1度の成形で得ることが出来て好ましい。
【0081】
上記型内発泡成形法で用いられる樹脂粒子としては、例えば、予備発泡粒子等が挙げられる。例えば、ポリアミド系樹脂発泡体を製造する際には、ポリアミド系予備発泡粒子を用いることができる。
なお、本明細書において、予備発泡粒子とは、最終段階の発泡を行っていない発泡性を備えた樹脂粒子(ビーズ等)を指す。
【0082】
上記予備発泡粒子は、上記発泡樹脂の原料となる樹脂に発泡剤を含有(含浸)させて、発泡を生じさせることによって得ることができる。例えば、ポリアミド系樹脂に発泡剤を含有(含浸)させる方法としては、特に限定されることなく、一般的に用いられている方法としてよい。
【0083】
樹脂に発泡剤を含浸させる方法としては、水等の懸濁系で水性媒体を用いて行う方法(懸濁含浸法)、重炭酸ナトリウム等の熱分解型発泡剤を用いる方法(発泡剤分解法)、ガスを臨界圧力以上の雰囲気とし液相状態にして、樹脂に接触させる方法(液相含浸法)、ガスを臨界圧力未満の雰囲気とし気相状態にして、樹脂に接触させる方法(気相含浸法)等が挙げられる。発泡剤を含有させる方法としては、特に気相含浸法が好ましい。
【0084】
上記発泡剤分解法としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム等の熱分解型発泡剤を用いる方法等が挙げられる。なお、熱分解型発泡剤は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0085】
上記気相含浸法では、高温条件下で実施される懸濁含浸法の場合と比較して、ガスの樹脂への溶解度がより高く、発泡剤の含有量を高くしやすい。そのため、気相含浸法では、高発泡倍率を達成しやすく、予備発泡粒子内の気泡サイズが均一になりやすい。
【0086】
また、上記発泡剤分解法も、懸濁含浸法と同様に高温条件下で実施される。また、この方法では、加えた熱分解型発泡剤全てがガスになるわけではないため、ガス発生量が相対的に少なくなりやすい。そのため、気相含浸法では、発泡剤含有量を高くしやすいという利点がある。更に、気相含浸法では、液相含浸法の場合と比較して、耐圧装置や冷却装置等の設備がよりコンパクトになりやすく、設備費を低減しやすい。
【0087】
気相含浸法に用いられる樹脂の形状としては、特に限定されることなく、例えば、ビーズ状、ペレット状、球体、不定形の粉砕物等が挙げられ、その大きさは、発泡後の予備発泡粒子の大きさを適度なものとし、予備発泡粒子の取り扱いやすさを高め、成形時の充填をより密にする観点から、平均径が0.2〜3mmであることが好ましい。
【0088】
気相含浸法の条件としては、特には限定されることなく、例えば、ガスの樹脂への溶解をより効率的に進める観点から、雰囲気圧力としては、0.5〜6.0MPaであることが好ましく、雰囲気温度としては、5〜30℃であることが好ましい。
ここで、上記予備発泡粒子を製造する際に使用される発泡剤としては、特に限定されることなく、空気やガスとし得る化合物等が挙げられる。
【0089】
ガスとし得る化合物の例としては、二酸化炭素、窒素、酸素、水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の無機化合物;トリクロロフルオロメタン(R11)、ジクロロジフルオロメタン(R12)、クロロジフルオロメタン(R22)、テトラクロロジフルオロエタン(R112)、ジクロロフルオロエタン(R141b)、クロロジフルオロエタン(R142b)、ジフルオロエタン(R152a)、HFC−245fa、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−225ca等のフルオロカーボン;HFO−1234y、HFO−1234ze(E)等のハイドロフルオロオレフィン;プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等の飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素類;メタノール、エタノール等のアルコール類;等が挙げられる。
これらの空気やガスとし得る化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
発泡剤としては、環境への影響が少なく、可燃性や支燃性がないものが好ましく、取り扱い時の安全性の観点から、可燃性及び支燃性のない無機化合物が更に好ましく、樹脂への溶解性、取り扱いの容易性の観点から、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)が特に好ましい。
【0091】
発泡剤を含有(含浸)させた樹脂(発泡剤含浸樹脂)に発泡を生じさせる方法としては、特に限定されないが、例えば、発泡剤含浸ポリアミド系樹脂等の発泡剤含浸樹脂を高圧雰囲気下から低圧雰囲気下に一気に持ち込むことによって、発泡剤含浸樹脂中に溶解している発泡剤としてのガスを膨張させて、発泡を生じさせる方法や、圧力蒸気等を用いて加熱することによって、発泡剤含浸樹脂中のガスを膨張させて、発泡を生じさせる方法等を用いることができ、特に、生成物である成形体内部の気泡の大きさ(セルサイズ)を均一にするという利点、及び発泡倍率を制御して低発泡倍率の成形体の作製を容易にするという利点が得られるため、後者の加熱・発泡を行う方法を用いることが好ましい。
【0092】
ここで、予備発泡粒子を所望の発泡倍率になるまで発泡させる際、一段階の発泡を行ってもよく、二次発泡、三次発泡等からなる多段階の発泡を行ってもよい。なお、多段階の発泡を行った場合、高発泡倍率の予備発泡粒子を調製しやすく、成形に用いられる予備発泡粒子は、単位体積当たりに使用される樹脂量を低減する観点から、三次発泡まで行った予備発泡粒子であることが好ましい。
【0093】
特に、多段階の発泡の場合、各段階での発泡前に予備発泡粒子に対してガスによる加圧処理を行うことが好ましい。加圧処理に用いるガスとしては、樹脂に対して不活性である限り、特には限定されないが、ガスの安全性が高く、ガスの地球温暖化係数の小さい、無機ガスやハイドロフルオロオレフィンが好ましい。無機ガスとしては、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等が挙げられ、また、ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、HFO−1234y、HFO−1234ze(E)等が挙げられ、特に、取り扱い容易性及び経済性の観点から、空気や炭酸ガスが好ましい。加圧処理の手法としては、特には限定されないが、予備発泡粒子を加圧タンク内に充填し、該タンク内にガスを供給する手法等が挙げられる。
【0094】
上記発泡樹脂は、上記予備発泡粒子を含むことが好ましく、例えば、前述の予備発泡粒子を成形することによって得ることができる。上記予備発泡粒子は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0095】
予備発泡粒子を成形する方法としては、特に限定されないが、例えば、予備発泡粒子を成形用金型のキャビティ内に充填し、加熱することによって、発泡を生じさせると同時に予備発泡粒子同士を熱融着させた後、冷却により生成物を固化し、成形することができる。ここで、予備発泡粒子の充填方法は、特には限定されないが、例えば、金型を多少開けた状態で予備発泡粒子を充填するクラッキング法、金型を閉じたままの状態で加圧圧縮した予備発泡粒子を充填する圧縮法、金型に加圧圧縮した予備発泡粒子を充填した後に上記クラッキング法を行う圧縮クラッキング法等が挙げられる。
予備発泡粒子の気泡に一定のガス圧力を付与して、粒子内部の気泡の大きさ(セルサイズ)を均一にする観点から、予備発泡粒子を成形用金型のキャビティ内に充填する前に、予備発泡粒子に対してガスによる加圧処理を行うことが好ましい。加圧処理に用いるガスとしては、特には限定されないが、難燃性、耐熱性、寸法安定性の観点から、無機ガス等が挙げられる。無機ガス及び加圧処理の方法については、多段階発泡の場合に予備発泡粒子に対して施されるガスによる加圧処理の場合と同様である。
【0096】
予備発泡粒子を成形する際に用いられる熱媒体は、汎用の熱媒体としてよく、発泡樹脂の酸化劣化を抑制する観点から、飽和水蒸気や過熱水蒸気であることが好ましく、発泡樹脂に対して均一な加熱を可能にする観点から、飽和水蒸気が更に好ましい。
【0097】
上記発泡樹脂の製造方法は、例えば、予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填する充填工程と、キャビティ内に予備発泡粒子の熱融着温度以下の水蒸気を5〜30秒間供給して、上記予備発泡粒子を予備的に加熱する予熱工程と、キャビティ内に予備発泡粒子の熱融着温度以上の水蒸気を20〜120秒間供給して、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、発泡樹脂を得る融着工程と、を有する方法が好ましい。
【0098】
また、上記発泡樹脂は、予備発泡粒子を、予熱工程と融着工程において、二段階で加熱して得ることが好ましい。
【0099】
この方法によれば、一段階目に、予備発泡粒子の熱融着温度以下の水蒸気で予備発泡粒子を予備的に加熱することによって、予備発泡粒子の集合体全体における温度分布をより均一にすることができる。そして、この一段階目の予備的な加熱により、二段階目に、熱融着温度以上の水蒸気で予備発泡粒子を加熱した際に、予備発泡粒子における発泡がより均一なものとなり、予備発泡粒子を発泡体に成形しやすくなる。
【0100】
また、この方法によれば、得られる発泡樹脂において、樹脂の結晶子サイズがより大きくなり、また、結晶化度がより高くなり、ひいては、耐熱性に優れた芯材を得ることができる。
【0101】
予備発泡粒子を加熱する際の温度としては、前述の通り、予備発泡粒子の熱融着温度(Tf)近傍であることが望ましい。
なお、本明細書において、熱融着温度とは、予備発泡粒子を飽和水蒸気内において加熱し、予備発泡粒子同士が融着する温度を指す。熱融着温度の測定方法は下記に記載の通りである。なお、本明細書において熱融着温度は、後述の実施例に記載の方法で測定される値をいう。
【0102】
一段階目の加熱温度は、Tf(℃)より低い温度であることが望ましく、Tf−20℃以上であることが好ましく、Tf−15℃以上であることが更に好ましく、また、Tf−2℃以下であることが好ましく、Tf−5℃以下であることが更に好ましい。
一段階目の加熱時間は、2秒以上であることが望ましく、3秒以上であることが更に望ましく、20秒以下であることが望ましく、15秒以下であることが更に望ましい。
【0103】
二段階目の加熱温度は、Tf(℃)より高い温度であり、Tf+15℃以下であることが好ましく、Tf+10℃以下であることが更に好ましく、Tf+5℃以下であることが特に好ましい。
二段階目の加熱時間は、10秒以上であることが望ましく、15秒以上であることが更に望ましく、60秒以下であることが望ましく、45秒以下であることが更に望ましい。
【0104】
一段階目及び二段階目の加熱温度及び加熱時間を、上記範囲とすれば、予備発泡粒子同士を十分に熱融着させることができ、また、樹脂の結晶化がより促進された発泡体を得ることができる。
【0105】
積層前の発泡体の密度は、発泡樹脂の強度を適度にして、気泡膜を破膜しにくくすることによって、発泡樹脂や繊維複合体の外観を向上させる観点から、20kg/m
3以上であることが好ましく、50kg/m
3以上であることが更に好ましく、また、繊維複合体の軽量性を高める観点から、800kg/m
3以下であることが好ましく、500kg/m
3未満であることが更に好ましい。
なお、発泡体の密度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0106】
積層前の上記発泡体の独立気泡率Sは、発泡樹脂の強度を向上させると共に、連続気泡部分において生じ得る発泡体への水の取り込みを生じにくくして、発泡体の密度を低下しにくくする観点から、80%以上であることが望ましく、85%以上であることが更に望ましい。
なお、独立気泡率S(%)は、下記式(3)で表される式により算出される。
S(%)={(Vx−W/ρ)/(Va−W/ρ)}×100 ・・・(3)
式中、Vxは、発泡体の真の体積(cm
3)であり、Vaは、発泡体の見掛けの体積(cm
3)であり、Wは、発泡体の重量(g)であり、ρは、発泡体の基材樹脂の密度(g/cm
3)である。
独立気泡率は、繊維複合体から表皮材を切り取って測定することが可能である。また、独立気泡率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0107】
積層前の上記発泡体は、高温環境下での物性低下や熱収縮を抑制する観点から、150℃における寸法変化率が、1.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。
なお、寸法変化率は、JIS K6767の寸法安定性評価・B法に準拠して、測定した値をいう。
【0108】
また、積層前の発泡体の発泡倍率は、1.3〜60倍が好ましく、1.5〜30倍がより好ましく、5〜20倍がより好ましい。発泡倍率が上記範囲内である発泡体は、適度な熱伝動性を有しており、これにより繊維複合体製造時の圧縮工程において、芯材内に所望の幅の広い樹脂部分(A)を形成することが容易となる。なお、本発明において、発泡体の発泡倍率はJIS K7222に準拠して測定された値とする。
【0109】
積層前の上記発泡体の融着率は、樹脂部分(A)の生成に非常に重要であり、複合体に曲げ歪み等の応力が加わった際の剛性を高める観点、及び、発泡体を切断した際に予備発泡粒子の成形体からの欠落を抑制する観点から、60%以上であることが好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
なお、融着率の測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0110】
(繊維複合体の製造方法)
本実施形態の繊維複合体の製造方法としては、公知の熱成形方法を用いることができ、例えば、真空成形法、圧空成形法、圧縮成形法等が挙げられる。真空成形法及び圧空成形法を応用した熱成形方法として、例えば、ストレート成形法、ドレープ成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシスト・リバースドロー成形法、エアスリップ成形法、スナップバック成形法、リバースドロー成形法、プラグアシスト・エアスリップ成形法、マッチモールド成形法、及び、これらの成形法を組み合わせた熱成形方法が挙げられる。
【0111】
中でも、予備発泡粒子を用いて熱融着発泡成形で得られた発泡樹脂を芯材として使用する場合には、金型もしくは真空パック内で、負圧にした状態で、熱及び圧力をかけることで、一体化する方法が、事前に熱融着で生じた、樹脂部分(A)の前駆体にボイド等が存在している場合に、加熱及び真空でボイドをなくして、好ましい幅で実質的に中実な樹脂部分(A)を得ることが出来るため好ましい。真空圧空成形法又は真空圧縮成形法が好ましく、具体的にはオートクレーブ方法や金型キャビティ真空圧縮成形法が好ましい。
【0112】
繊維複合体を熱成形方法を用いて製造する要領の一例を具体的に説明する。本実施形態の繊維複合体の製造方法としては、芯材(例えば、発泡体)の少なくとも一方の表面の少なくとも一部に、強化用合成樹脂が含浸されている強化繊維を含む表皮材が積層されてなる積層体を、上記強化用合成樹脂のガラス転移温度より50℃低い温度以上でかつ上記強化用合成樹脂のガラス転移温度より60℃高い温度以下で、なおかつ芯材に含まれる発泡樹脂の熱融着温度より50℃低い温度以上でかつ芯材に含まれる発泡樹脂の熱融着温度より20℃高い温度以下で加熱しながら、0.05〜1MPaの押圧で圧縮して同時成形する圧縮工程を含む方法等が挙げられる。この時に例えばあらかじめオートクレーブの中に積層体を入れた真空パックを入れて真空パック内を減圧にしながら真空パック外から熱と圧力(圧空)をかけて成形してもよい。また、圧縮の時に金型を使用する場合は、金型キャビティに積層体を入れた後、パーティング面に、Oリングや印籠構造等のシールができる機構を設けて、金型キャビティ内を減圧にしながら、金型面で積層体を加熱圧縮してもよい。
【0113】
上記圧縮工程は、上記発泡体の圧縮変形率が5〜40%となるように圧縮することが好ましく、より好ましくは25%より大きく40%未満である。
圧縮変形率とは、圧縮工程前の成形品の厚さが10mm、圧縮工程後の成形品の厚さが7mmとすると、この成形品の圧縮変形率は30%ということである。圧縮変形率は積層体の加熱温度及び圧縮する押圧で制御可能である。なお、積層体の加熱温度とは、積層体の表皮材の表面温度をいう。この加熱温度は、強化用合成樹脂のガラス転移温度より50℃低い温度以上でかつガラス転移温度より60℃高い温度以下であると、硬化時間内で十分な硬化が得られるため、密着性が向上し、100℃の高温環境下において、剛性が保たれて好ましい。さらに加熱温度は、芯材に含まれる発泡樹脂の熱融着温度とも関係し、熱融着温度より40℃低い温度以上熱融着温度より20℃高い温度以下であることが好ましく、この条件だと、芯材の気泡の平均アスペクト比及び気泡の形状を適度に保ち、積層体の界面の密着性が非常に高くなり、100℃の高温環境下において、剛性が保たれて好ましい。芯材に含まれる発泡樹脂の熱融着温度より20℃より高い温度で圧縮を行うと、芯材が溶融してしまい、芯材の気泡が破裂、消失して好ましくない。より好ましくは芯材に含まれる発泡樹脂の熱融着温度より30℃低い温度以上、芯材に含まれる発泡樹脂の熱融着温度より10℃高い温度以下である。
【0114】
また、押圧は0.05〜1MPaが好ましく、より好ましくは0.1〜0.7MPaである。押圧がこの範囲にある場合、繊維複合体の表面外観がよく、樹脂部分(A)が厚くなり、高温での強度が高く好ましい。
【0115】
押圧時間は、加熱温度にもよるが、芯材に存在するボイドを削除し、なおかつ、発泡体の気泡を破裂させない程度に芯材を軟化させた状態で、圧力をかけ続けることで、樹脂部分(A)が形成されていくために好ましくは、1時間より長く、10時間未満が好ましい。
【0116】
本発明実態では、芯材(好ましくは、発泡体)は気泡を含んでいることによって熱伝動性が低いため、芯材中央部は加熱され難い。従って、圧縮工程の前に、積層体を、圧力をかけない条件で、予備加熱工程を実施することが好ましい。このような予備加熱工程を実施することによって、芯材内部、表面部を気泡が破泡せずに適度に軟化させることが可能となる。また、圧縮工程において、積層体を所定の温度で加熱することによって、強化繊維に含浸されている強化用合成樹脂も適度に軟化させることができる。そして、このような加熱を行いながら積層体を圧縮することによって、表皮材が芯材表面に沿って変形しながら芯材を厚さ方向と表面方向の全面的に押圧することができる。これにより、予備発泡粒子の溶着性をさらに向上させることが可能となる。
【0117】
強化繊維に含浸させる強化用合成樹脂に未硬化の熱硬化性樹脂が含有している場合には、圧縮工程において、積層体の加熱を調整することによって、好ましくは、繊維強化プラスチック層形成材の未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させることなく流動性を保持した状態に保持して、繊維強化プラスチック層形成材を発泡体表面に沿って変形させた後、積層体の加熱時間を調整して未硬化の熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させることによって、熱硬化性樹脂を硬化させて強化繊維同士を結着一体化させることができ、これにより芯材上に強化繊維に熱硬化性樹脂が含浸されてなる表皮材を形成することができる。強化繊維に含浸させる強化用合成樹脂に熱可塑性樹脂を用いた場合には、圧縮工程において積層体を加熱した後に積層体を冷却させることによって熱可塑性樹脂も冷却固化させ、これにより熱可塑性樹脂によって強化繊維同士を結着一体化させて、芯材上に強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸されてなる繊維及び樹脂を含む表皮材を形成することができる。
【0118】
また、真空パックや金型キャビティを減圧にする場合は、出来るだけ真空にすることが発泡樹脂内の大きなボイドや表皮材を芯材に密着させ、外観、厚み精度を良くするために好ましいが、金型キャビティ内を真空にする場合は、シール性を強化しなければならないため、金型シール性の耐久性がよくないため、好ましくはゲージ圧として、−0.1MPa〜−0.01MPaであり、より好ましくは、−0.8MPa〜−0.01MPaである。
【0119】
本実施形態の方法では、上述した芯材の少なくとも一方の表面に、合成樹脂が含浸されている強化繊維を含む繊維強化プラスチック層形成材が積層された積層体を用いることが好ましい。芯材における繊維強化プラスチック層形成材を積層する面は、得られる繊維複合体の用途に応じて決定すればよく、特に制限されない。したがって、芯材の一方の面のみに繊維強化プラスチック層形成材を積層してもよい。中でも、得られる繊維複合体の耐衝撃性を考慮すると、芯材の両面にそれぞれ繊維強化プラスチック層形成材を積層することが好ましい。
【0120】
本実施形態の繊維複合体は、芯材が圧縮されるため、厚さの調整が必要である。厚さの調整は、積層体への加圧度を調整することによって行うことができる。例えば、芯材の圧縮変形率を調整する方法としては、積層体をその厚さ方向に押圧部材によって挟持し、これらの押圧部材によって積層体に付加する押圧力を調整する方法等が用いられる。この時、積層体の外方、例えば、積層体の幅方向又は長さ方向における両端部外側にスペーサを配置することが好ましい。スペーサの高さを調整することによって積層体への加圧度や発泡体の圧縮変形率を容易に調整することが可能となる。
【0121】
なお、スペーサを用いる場合、スペーサは、積層体の外方に配置すればよく、例えば、積層体の幅方向又は長さ方向における両端部外側に少なくとも配置すればよく、積層体の幅方向における両端部外側及び長さ方向における両端部外側の双方にスペーサを配置してもよい。
【0122】
また、一定の容積、厚さを考慮した真空金型キャビティ構造をもつ金型を用いることで、所望の厚さを持つ繊維複合体を得ることが出来る。
【0123】
上述した通り、圧縮工程において積層体を加熱圧縮させることによって、芯材と、この芯材の少なくとも一方の面に積層一体化されてなり且つ繊維及び樹脂を含む表皮材を有する繊維複合体が得られる。
【0124】
上述の通りに圧縮工程を行った後に繊維複合体に含まれている芯材をその厚さ方向の中央部において切断することによって、芯材の一方の面のみに表皮材が積層一体化されてなる繊維複合体を得ることもできる。
【0125】
本実施形態の繊維複合体の厚さは、特に制限はないが、0.5mm〜500mmが好ましい。厚さは、表皮材及び芯材である発泡体の厚さで決められるが、表皮材と芯材を加圧一体成形する際に所望の厚さが得られない場合、芯材の厚さを調整することで所望の厚さを得ることが可能となる。
【0126】
本実施形態の繊維複合体の23℃における曲げ強度は110〜140MPaであることが好ましい。また、100℃における曲げ強度は、80〜120MPaであることが好ましく、より好ましくは90〜120MPaである。また、23℃における曲げ強度と100℃における曲げ強度の差は、40MPa以内であることが好ましい。
なお、23℃における曲げ強度及び100℃における曲げ強度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0127】
本実施形態の繊維複合体では、発泡樹脂を含む芯材が上述したコア層及び表面層を有していることによって、高温環境下での表皮材の剛性を維持したまま、耐衝撃性が向上されている。したがって、このような繊維複合体は、特に制限されないが、航空機、自動車、船舶、及び建築物等の構成部材や電子機器の筐体として好適に用いられる。
【実施例】
【0128】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0129】
積層前の芯材等の物性の測定方法を以下に示す。
(A)密度
得られた芯材について、重量W(kg)を測定し、その後、水没法により、芯材の見掛けの体積Va(m
3)を測定した。そして、その重量Wを見掛けの体積Vaで除した値W/Va(kg/m
3)を、積層前の芯材の密度とした。
【0130】
(B)独立気泡率
前述の(A)において見掛けの体積Vaを測定した芯材について、その真の体積(Vx)を空気比較式比重計(ベックマン(株)社製)を用いて測定した。そして、式(3)に従って、独立気泡率S(%)を算出した。
S(%)={(Vx−W/ρ)/(Va−W/ρ)}×100 ・・・(3)
式中、Vxは、芯材の真の体積(cm
3)であり、Vaは、芯材の見掛けの体積(cm
3)であり、Wは、芯材の重量(g)であり、ρは、芯材の基材樹脂の密度(g/cm
3)である。
【0131】
(C)融着率
縦:300mm、横:300mm、厚さ:20mmの板状の芯材の表面にカッターナイフを用いて縦に2等分するように5mmの深さの切り込み線を入れ、この線に沿って芯材を分割した。この分割面に現れた予備発泡粒子に関して、予備発泡粒子が粒子内で破断している(予備発泡粒子が分割面により破壊されている)ものの数(a)と、予備発泡粒子同士の界面に沿って破断している(予備発泡粒子同士の界面が分割面になっている)ものの数(b)とを測定し、下記式(4)に従って積層前の芯材の融着率(%)を算出した。
融着率(%)={a/(a+b)}×100・・・(4)
【0132】
(D)熱融着温度
得られた発泡樹脂の予備発泡粒子を、気泡内部の圧力が大気圧であり、炭化水素等の発泡剤を含んでいない状態にした。この予備発泡粒子10gを金属メッシュの容器に予備発泡粒子同士が接触するように入れ、次いで、所定温度の飽和蒸気で30秒間加熱した。そして、加熱後に予備発泡粒子同士が全体で80%以上融着していた温度のうちの最低の温度(℃)を、予備発泡粒子の熱融着温度(℃)とした。
【0133】
後述する実施例及び比較例で得られた繊維複合体の評価方法(1)〜(6)について、以下に説明する。
【0134】
(1)樹脂部分(A)の幅、樹脂部分(B)の幅、気泡(C)の平均長径
繊維複合体をその厚さ方向に切断し、走査型電子顕微鏡を用いて切断面を100倍で撮影した。上側の表皮材から下側の表皮材までサンプルをずらしながら測定し、貼り合せて1つの画像とした。得られた切断面において、気泡の外周間の距離を測定し、樹脂部分(A)及び樹脂部分(B)の有無を観測した。また、得られた切断面の撮影像において、芯材にある、樹脂部分(A)を無作為に30か所選択し、その幅を測定し、相加平均値から樹脂部分(A)の平均幅とした。
次に樹脂部分(B)を同様に無作為に30か所選択し、その幅を測定し、相加平均値から樹脂部分(B)の平均幅とした。
次に、芯材の気泡(C)についても30個無作為に選択し、気泡断面の外側輪郭線上において相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離である「気泡の長径」を測定し、相加平均値から気泡(C)の平均長径とした。
なお、上記切断面において、芯材表面において断面が露出している気泡が存在している場合、このような気泡は測定対象から除外した。例えば、芯材から未発泡の表皮を切断除去した場合等は、芯材表面に断面が露出している気泡が存在している可能性がある。
また、上側の表皮材側から下側の表皮材側まで、樹脂部分(A)が厚さ方向に連続的につながっているかを、撮影像を見て確認し、つながっていた場合を「○」、繋がっていなかった場合を「×」とした。
さらに樹脂部分(B)及び気泡(C)が樹脂部分(A)に囲まれているかを、同様に撮影像を見て確認し、囲まれていた場合を「○」、囲まれていなかった場合を「×」とした。
なお、上側とは表皮材と一体化する際に縦型プレス機に横置きサンプルを設置した時に上側の面を示し、下側は下側の面を示す。
結果を表1に示す。
【0135】
(2)芯材の見掛け密度
実施例及び比較例で得られた繊維複合体の芯材を立方体形状で切出し、重量W(kg)を測定した後、ノギスにて芯材の3辺を測定し、その体積V(m
3)を計算した。そして、体積Vに対する重量Wの割合(W/V)(kg/m
3)を見掛け密度とした。
結果を表1に示す。
【0136】
(3)曲げ強度
JIS K7221に準拠し、実施例及び比較例で得られた繊維複合体の曲げ強度(MPa)を求めた。具体的には、得られたサンプルから、縦100mm×横15mm×厚さ(得られたサンプル厚さ)のサイズで試験片を10本切り出した。標準状態として、温度23℃、相対湿度50%に制御した室内に24時間静置して状態調整した試験片を、AUTOGRAPH AG−5000D(島津製作所製)での測定に5本供し、JISに規定する計算式から、曲げ強度(23℃雰囲気下)(MPa)を算出し、平均を求めた。また、標準状態として、温度23℃、相対湿度50%に制御した室内に24時間静置し、その後、恒温槽内にて100℃に1時間静置して状態調整した試験片を、100℃恒温槽内にて、AUTOGRAPH AG−5000D(島津製作所製)での測定に5本供し、JISに規定する計算式から曲げ強度(100℃雰囲気下)(MPa)を算出し、平均を求めた。
結果を表1に示す。
【0137】
(4)外観
実施例及び比較例で得られた繊維複合体の表面を目視にて観察し、表層の状態を以下のように評価した。
結果を表1に示す。
◎(優れる):表皮材の樹脂が十分硬化し、繊維複合体の表面に、樹脂不足や凹凸がない。
○(良好):表皮材の樹脂が十分硬化しているが、繊維複合体の表面に若干の凹凸やゆがみが見られる
×(悪い):表皮材の樹脂が芯材側へ入り込み、繊維複合体の表面に、樹脂不足により繊維の露出や凹凸形状ができている。発泡樹脂の収縮が生じ、表面に凹凸形状やゆがみが生じている。
【0138】
(5)厚さ
実施例及び比較例で得られた繊維複合体の厚さ(mm)を、ノギスを用いて測定した。
測定箇所は、外周部は4辺の10mm内側で辺の中央部を測定し4点を平均化して求めた。シート中央部はシートの対角線の交点を測定した。
また、上側表面層に積層している表皮材及び下側表面層に積層している表皮材の合計厚さ(mm)を、ノギスを用いて測定した。
結果を表1に示す。
【0139】
(実施例1)
引張弾性率が250GPaの炭素繊維と、硬化した後のガラス転移温度が130℃であるエポキシ樹脂とで構成される、繊維目付が200g/m
2、炭素繊維含有量が60質量%のクロスプリプレグ(商品名「パイロフィル TR3110 381FMX」、三菱レイヨン社製)を作製し、表皮材として表裏各1枚用意した。
次に、芯材としてのポリアミド系樹脂発泡体を下記の方法で用意した。
ポリアミド系樹脂としてのナイロン6(商品名:UBEナイロン 1022B、宇部興産(株)製)100質量部、核剤としてのタルク0.8質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox1098、BASF製)0.3質量部を、単軸押出機にて加熱条件下で溶融混練し、その後ストランド状に押出し、冷水槽で水冷し、カッティングを行い、ペレット形状の基材樹脂を作製した。
これに、特開2011−105879号公報の実施例に記載の方法に準じて、基材樹脂に発泡剤としての炭酸ガスを含有させた。そして、炭酸ガスを含めた基材樹脂を加熱することによって、発泡を生じさせて、密度:300kg/m
3の予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子をオートクレーブ中に封入し、オートクレーブ内の圧力が0.5MPaとなるまで、圧縮空気を1時間かけて導入し、その後、圧力を0.5MPaに24時間保持することによって、予備発泡粒子に加圧処理を施した。
加圧処理した予備発泡粒子を、型内発泡成形機に取り付けた(型内成形の金型のキャビティ寸法は、縦:300mm、横:300mm、高さ:10mmである)金型を型締めした後、予備発泡粒子を充填し、その後、キャビティ内に135℃の飽和水蒸気を10秒間供給し(一段階目の加熱)、さらに、キャビティ内に144℃の飽和水蒸気を30秒間供給して(二段階目の加熱)、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、予備発泡粒子を用いた密度:200kg/m
3の発泡体を成形した。
金型のキャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた成形体を冷却し、その後、型開きを行い、芯材としてのポリアミド系樹脂発泡体を取り出した。
得られた発泡体を芯材として用い、芯材の上下両面に表皮材を1枚ずつ積層し、両面のその上に穴あきフィルム、ブリーザークロスを積層し、この積層体を10mm厚さのアルミ板で両面各1枚づつで挟み、真空ポンプにつないで真空パックの中が減圧にできるチューブがついた真空パックに積層体を入れて、シールを行い、真空パックをゲージ圧で−0.07MPaに減圧し続ける。次いで、これを複合材料加熱硬化試験用オートクレーブ(羽生田鉄工所製 小型オートクレーブ DANDELION)に入れて、オートクレーブ中の温度を90℃、圧力0.3MPaで6時間ホールドした。
なお、実施例1で得られた繊維複合体は、芯材の表面層の300×300mmの両面に表皮材が積層された繊維複合体である。得られたサンプルをカットソーでカットし、断面観察を行い、さらに短冊を作成し、曲げ強度を測定した。繊維複合体は、標準状態及び100℃の高温環境下のいずれにおいても、良好な曲げ弾性率を備え、良好な外観を有していた。
実施例1の詳細を表1に示す。
【0140】
(実施例2)
実施例1に対し、複合材料加熱硬化試験用オートクレーブ中の温度を140℃、圧力
0.3MPaで1.5時間ホールドした以外は実施例1と同様の条件で繊維複合体を得た。
実施例1と同様にして、断面観察、曲げ強度を測定した。また、得られた繊維複合体は
標準状態及び100℃の高温環境下のいずれにおいても良好な曲げ弾性率を備え、良好な外観を有していた。実施例2の詳細を表1に示す。
【0141】
(実施例3)
実施例2と同様に密度:200kg/m
3の予備発泡粒子を得た後、得られた予備発泡粒子をオートクレーブ中に封入し、オートクレーブ内の圧力が0.5MPaとなるまで、圧縮空気を1時間かけて導入し、その後、圧力を0.5MPaに24時間保持する、という加圧処理を実施し、その後に、230℃で加熱することによって、更に発泡を生じさせて、密度:120kg/m
3の発泡体を得た点以外は、実施例2と同様にして発泡体及び繊維複合体を得た。実施例3の詳細を表1に示す。
【0142】
(実施例4)
芯材としてのポリアミド系樹脂発泡体を下記の方法で用意した以外は、実施例1と同様にして製造及び評価を行った。
ポリアミド系樹脂としてナイロン666(ナイロン66/6)(商品名:Novamid 2430A、(株)DSM製)100質量部、核剤としてのタルク0.8質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox1098、BASF製)0.3質量部を、押出機にて加熱条件下で溶融混練し、その後ストランド状に押出し、冷水槽で水冷し、カッティングを行い、ペレット形状の基材樹脂を作製した。
これに、特開2011−105879号公報の実施例に記載の方法に準じて、基材樹脂に発泡剤としての炭酸ガスを含有させた。そして、炭酸ガスを含む基材樹脂を加熱することによって、発泡を生じさせて、密度:200kg/m
3の予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子をオートクレーブ中に封入し、オートクレーブ内の圧力が0.4MPaとなるまで、圧縮空気を1時間かけて導入し、その後、圧力を0.4MPaに24時間保持することによって、予備発泡粒子に加圧処理を施した。
加圧処理した予備発泡粒子を、実施例1で用いた金型発泡成形機を用いて、金型を型締めした後、予備発泡粒子を充填し、その後キャビティ内に130℃の飽和水蒸気を40秒間供給し、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、予備発泡粒子を用いた密度:200kg/m
3の発泡体を成形した。
金型のキャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた成形体を冷却し、その後、型開きを行い、芯材としてのポリアミド系樹脂発泡体を取り出した。
得られた発泡体を芯材として用い、実施例1に対し、複合材料加熱硬化試験用オートクレーブ中の温度を130℃、圧力0.3MPaで3時間ホールドした以外は実施例1と同様の条件で繊維複合体を得た。この繊維複合体は、標準状態及び100℃の高温環境下のいずれにおいても、良好な曲げ弾性率を備え、良好な外観を有していた。
実施例4の詳細を表1に示す。
【0143】
(実施例5)
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)(旭化成株式会社製、S201A)を60質量%、非ハロゲン系難燃剤(ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)(BBP))を18質量%、ゴム濃度が6質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)を10質量%(基材樹脂中のゴム成分含有量は0.6質量%)、汎用ポリスチレン樹脂(PS)(PSジャパン株式会社製、GP685)を12質量%、核剤としてのタルク0.8質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox1098、BASF製)0.3質量部用い、これらを押出機にて加熱溶融混練の後に押し出し、芯材としての基材樹脂ペレットを作製した。特開平4−372630号公報の実施例1に記載の方法に準じ、基材樹脂ペレットを耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として炭酸ガス(気体)を注入し、圧力3.2MPa、温度11℃の条件下で3時間かけて、基材樹脂ペレットに対して炭酸ガスを7質量%含浸させた。
その後、基材樹脂ペレットを予備発泡機内で攪拌羽を77rpmにて回転させながら、加圧水蒸気により発泡させて、予備発泡粒子を得た。
この予備発泡粒子を0.5MPaまで1時間かけて昇圧し、その後0.5MPaで8時間保持し、加圧処理を施した。
加圧処理した予備発泡粒子を、型内成形金型のキャビティ(キャビティ寸法は、縦:300mm、横:300mm、高さ:10mm)内に充填し、その後、型締めした。そして、この金型を型内発泡成形機に取り付けた。
その後、キャビティ内に125℃の飽和水蒸気を10秒間供給し(一段階目の加熱)、その後、キャビティ内に130℃の飽和水蒸気を30秒間供給して(二段階目の加熱)、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、予備発泡粒子を成形した。
金型のキャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた成形体を冷却し、その後、型開きを行い、芯材としてのポリフェニレンエーテル系樹脂発泡体を取り出した。
得られた発泡体を芯材として用い、実施例1に対し、複合材料加熱硬化試験用オートクレーブ中の温度を80℃、圧力0.3MPaで6時間ホールドした以外は実施例1と同様の条件で繊維複合体を得た。
なお、実施例5で得られた繊維複合体は、芯材の表面層の全面に表皮材が積層された繊維複合体である。実施例5の詳細を表1に示す。
【0144】
(実施例6)
メタクリル酸メチル(MMA)70質量部、スチレン(ST)10質量部、無水マレイン酸(MAH)20質量部、タルク0.8質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox1098、BASF製)0.3質量部と、開始剤としてラウロイルパーオキザイド0.3質量部、発泡剤としてnブタノール10質量部を室温で、10分撹拌後、縦、横各500mm厚さ10mmのガラス板の平面に、15mmのシリコーンゴムのOパッキンをガラス板の端部付近に置き、Oパッキン内に先のモノマー溶液を充填して、さらにその上にもう一枚同じガラス板を置いて、Oパッキン及びモノマー溶液をガラスで挟み込むようにして、ガラスの周辺に厚さが調整できるクリップ複数用いて厚さが12mmになるようクリップを均等に締め付けた。それを、60℃の温水バスに24時間浸漬した。その後取り出し、130℃のオーブンに1時間キュアして、その後室温まで冷却し、クリップ、ガラス板を取り外し、Oパッキンを切断削除して特殊アクリル系樹脂板を得た。この特殊アクリル系樹脂を粉砕機で粉砕し、分級して2mmの粉砕粒子を得た。この粉砕微粒子を150℃の防爆オーブンに60分入れて、発泡を生じさせて、取り出し、密度:200kg/m
3の予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子をオートクレーブ中に封入し、オートクレーブ内の圧力が0.5MPaとなるまで、圧縮空気を1時間かけて導入し、その後、圧力を0.5MPaに24時間保持することによって、予備発泡粒子に加圧処理を施した。
加圧処理した予備発泡粒子を、型内成形金型のキャビティ(キャビティ寸法は、縦:300mm、横:300mm、高さ:10mm)内に充填し、その後、型締めした。そして、この金型を型内発泡成形機に取り付けた。
その後、キャビティ内に110℃の飽和水蒸気を10秒間供給し(一段階目の加熱)、その後、キャビティ内に120℃の飽和水蒸気を30秒間供給して(二段階目の加熱)、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、予備発泡粒子を成形した。
金型のキャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた成形体を冷却し、その後、型開きを行い、芯材としてのアクリル系樹脂発泡体を取り出した。
得得られた発泡体を芯材として用い、実施例1に対し、複合材料加熱硬化試験用オートクレーブ中の温度を110℃、圧力0.3MPaで4時間ホールドした以外は実施例1と同様の条件で繊維複合体を得た。
なお、実施例6で得られた繊維複合体は、芯材の表面層の全面に表皮材が積層された繊維複合体である。実施例6の詳細を表1に示す。
【0145】
(実施例7)
ポリエチレンテレフタレート(PET、三井化学社製 商品名「SA−135」)100質量部、ポリエチレンテレフタレートにタルクを含有させてなるマスターバッチ(ポリエチレンテレフタレート含有量:60質量%、タルク含有量:40質量%)1.8質量部、無水ピロメリット酸0.2質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox1098、BASF製)0.3質量部を含むポリエチレンテレフタレート組成物を単軸押出機にて290℃の加熱条件下で溶融混練し、続いて、押出機の途中から、ノルマルブタンをポリエチレンテレフタレート100質量部に対して0.8質量部となるように溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物に圧入して、ポリエチレンテレフタレート中に均一に分散させた。
しかる後、押出機の前端部において、溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物を280℃に冷却した後、単軸押出機にて加熱条件下で溶融混練し、その後ストランド状に押出し、冷水槽で水冷し、カッティングを行い、ペレット形状の密度:400kg/m
3の予備発泡粒子を得た。
得られた予備発泡粒子をオートクレーブ中に封入し、オートクレーブ内の圧力が0.5MPaとなるまで、圧縮空気を1時間かけて導入し、その後、圧力を0.5MPaに24時間保持することによって、予備発泡粒子に加圧処理を施した。
加圧処理した予備発泡粒子を、型内成形金型のキャビティ(キャビティ寸法は、縦:300mm、横:300mm、高さ:10mmt)内に充填し、その後、型締めした。そして、この金型を型内発泡成形機に取り付けた。
その後、キャビティ内に120℃の飽和水蒸気を10秒間供給し(一段階目の加熱)、その後、キャビティ内に130℃の飽和水蒸気を30秒間供給して(二段階目の加熱)、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、予備発泡粒子を成形した。
金型のキャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた成形体を冷却し、その後、型開きを行い、芯材としてのPET系樹脂発泡体を取り出した。
得られた発泡体を芯材として用い、実施例1に対し、複合材料加熱硬化試験用オートクレーブ中の温度を120℃、圧力0.3MPaで3時間ホールドした以外は実施例1と同様の条件で繊維複合体を得た。実施例7の詳細を表1に示す。
【0146】
(実施例8)
原料としては、次のようにして合成した、ポリカーボネート樹脂パウダーを原料とした。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「ビスフェノールA」と称する事がある)710質量部を溶解した(ビスフェノールA溶液)後、塩化メチレン2299質量部と48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液112質量部を加えて、15〜25℃でホスゲン354質量部を約90分かけて吹き込みホスゲン化反応を行った。ホスゲン化終了後、11質量%濃度のp−tet−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液148質量部と48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液88質量部を加えて、攪拌を停止し、10分間静置分離後、攪拌を行い乳化させ5分後、ホモミキサー(特殊機化工業(株))で回転数1200rpm、パス回数35回で処理し高乳化ドープを得た。該高乳化ドープを重合槽(攪拌機付き)で、無攪拌条件下、温度35℃で3時間反応し重合を終了した。反応終了後、有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発させ、ポリカーボネートのパウダーを得た。脱水後、熱風循環式乾燥機により120℃で12時間乾燥し、ポリカーボネート樹脂パウダーを得た。
このようにして得られたポリカーボネート樹脂パウダー(ガラス転移温度154℃)100質量部に対して高分子量アクリル系樹脂(三菱レイヨン社製、商品名「メタブレンP−530A」、重量平均分子量300万)1質量部及び気泡調整剤(ポリテトラフルオロエチレン粉末)0.1質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox1098、BASF製)0.3質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物を用いて単軸押出機にて300℃の加熱条件下で溶融混練し、その後ストランド状に押出し、冷水槽で水冷し、カッティングを行い、ペレット形状の基材樹脂を作製した。
得られた基材樹脂を耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として炭酸ガス(気体)を注入し、圧力3.0MPa、温度11℃の条件下で3時間かけて、基材樹脂ペレットに対して炭酸ガスを7.5質量%含浸させた。そして、炭酸ガスを含む基材樹脂を加熱水蒸気で加熱することによって、発泡を生じさせて、密度:200kg/m
3の予備発泡粒子を得た。その後、キャビティ内に125℃の飽和水蒸気を10秒間供給し(一段階目の加熱)、その後、キャビティ内に130℃の飽和水蒸気を30秒間供給して(二段階目の加熱)、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、予備発泡粒子を成形した。
金型のキャビティ内に冷却水を供給することによって、得られた成形体を冷却し、その後、型開きを行い、芯材としてのポリカーボネート樹脂発泡体を取り出した。
得られた発泡体を芯材として用い、実施例1に対し、複合材料加熱硬化試験用オートクレーブ中の温度を120℃、圧力0.3MPaで3時間ホールドした以外は実施例1と同様の条件で繊維複合体を得た。実施例8の詳細を表1に示す。
【0147】
(比較例1)
実施例8で用いたポリカーボネート樹脂組成物をL/Dが40の50mmφTダイ2軸押し出し機の温度を280℃とし、原料をホッパーから投入し、バレルの真ん中で液化ノルマルブタンを1MPaの圧力で加圧注入し、Tダイ出口でポリカーボネート樹脂が発泡するとともに、ノルマルブタンを気化させた。出口からは上下からステンレスシームベルトで出てきた発泡樹脂を挟み込んで厚さ10mm、幅400mmの発泡シートを得た。なお、厚さはTダイのリップ間隙及び、上下のステンレスシームベルトの間隙を調整することで10mmの厚さを得た。幅はTダイの口幅が400mmのTダイを用いて400mmの幅を得た。
得られた発泡シートから、300×300×10mmを切り出した発泡体を芯材として用い、得られた発泡体を芯材として用い、実施例1に対し、複合材料加熱硬化試験用オートクレーブ中の温度を120℃、圧力0.3MPaで3時間ホールドした以外は実施例1と同様の条件で繊維複合体を得た。比較例1の詳細を表1に示す。
【0148】
(比較例2)
実施例8で得られた、密度:200kg/m
3の予備発泡粒子を用いて、型内発泡成形機に取り付けた(型内成形の金型のキャビティ寸法は、縦:300mm、横:300mm、高さ:10mmである)金型を型締めした後、予備発泡粒子を充填し、その後、キャビティ内に125℃の飽和水蒸気を20秒間供給し、予備発泡粒子を発泡させ、且つ熱融着させることによって、発泡体を成形した。
得られた発泡体を芯材として用い、実施例1に対し、オートクレーブ中の温度を80℃、圧力0.3MPaで0.5時間ホールドした以外は実施例1と同様の条件で繊維複合体を得た。比較例2の詳細を表1に示す。
【0149】
実施例1〜8については、23℃及び100℃雰囲気での曲げ強度が高く、また、外観や繊維複合体の厚さが均一でよい結果となった。一方比較例1は樹脂部分(A)の厚さが樹脂部分(B)とほぼ同等で薄く、そのため、樹脂部分(A)がないと判断する。従って樹脂部分(A)がつながっておらず、樹脂部分(B)、気泡(C)が樹脂部分(A)に囲まれている形状でもなく、100℃雰囲気での曲げ強度が低い結果となった。また、繊維複合体の真ん中の厚さが厚く、表面が太鼓状にゆがんだ外観となり良くない結果となった。比較例2は発泡粒子の熱溶着及びオートクレーブ成形中の時間が不十分のため樹脂部分(A)が薄く、そのため、樹脂部分(A)がないと判断する。また、樹脂部分(A)がつながっていないところが多く、100℃雰囲気での曲げ強度が低い結果となった。また、繊維複合体の真ん中の厚さが薄く、表面がゆがんだ外観となり良くない結果となった。
【0150】
【表1】