特許第6962719号(P6962719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962719三次元複合製品の付加製造のための複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962719
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】三次元複合製品の付加製造のための複合材料
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20211025BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20211025BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20211025BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20211025BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20211025BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20211025BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20211025BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20211025BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20211025BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20211025BHJP
【FI】
   B29C64/118
   B29C64/209
   B29C64/245
   B29C64/393
   B33Y70/10
   B33Y80/00
   B33Y10/00
   B29C64/236
   C08J5/04CFD
   C08L1/02
   C08L67/04
   C08L23/10
   B33Y50/02
【請求項の数】25
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-119169(P2017-119169)
(22)【出願日】2017年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-222169(P2017-222169A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2020年4月7日
(31)【優先権主張番号】16397521.2
(32)【優先日】2016年6月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】314013187
【氏名又は名称】ウーペーエム−キュンメネ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UPM−Kymmene Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】サーリコスキ,エヴェ
(72)【発明者】
【氏名】コソネン,ハッリ
(72)【発明者】
【氏名】キンヌネン,アリ ペー
(72)【発明者】
【氏名】ヌルミネン,アリ
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/141779(WO,A1)
【文献】 特開2016−060048(JP,A)
【文献】 特表2013−519736(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105295106(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00− 64/40
B33Y 10/00− 99/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出による付加製造における使用に適切なフィラメント(FIL1)であって、
当該フィラメント(FIL1)は、
半結晶性ポリ乳酸と、
木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む複合材料から形成され、
木質系セルロース繊維の化学パルプの量は、前記フィラメント(FIL1)の前記複合材料が、0.1Hz周波数および180℃で測定されたとき、10000Pa・s以上の複素粘度(η)を有するように、押出によって付加製造されるとき、前記フィラメント(FIL1)から形成される複合体溶融物が、133℃以上の温度(Tsub)において、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率(G’/G’’)を有するように選択されることを特徴とするフィラメント(FIL1)。
【請求項2】
前記フィラメント(FIL1)は、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項3】
前記フィラメント(FIL1)は、ISO6721−10:2015に従って、180℃〜25℃の温度範囲内で5℃/分の線形速度を有する温度傾斜にて、1Hz周波数、0.1%ひずみにおいて、25mm直径の平行平板および0.6mmの間隙を用いて、前記複合材料の試料から測定されたとき、140℃以上の温度(Tsub)において、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率(G’/G’’)を有することを特徴とする請求項2に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項4】
前記フィラメント(FIL1)は、25℃において、
6GPa以下の曲げ弾性率、および
2GPa/g/cmを超える比弾性率をさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項5】
前記複合材料は、溶融物から凝固されると、1.15%未満の寸法成形収縮率を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項6】
前記木質系セルロース繊維の化学パルプは、0.4mm以下の長さ加重平均繊維長を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項7】
前記木質系セルロース繊維の化学パルプは、化学パルプの0.5重量%以下のリグニン含有量を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項8】
前記複合材料は、
前記フィラメント重量の90重量%以下の量の半結晶性ポリ乳酸と、
前記フィラメント重量の30重量%以下の量の木質系セルロース繊維の化学パルプと、
前記フィラメント重量の30重量%以下の量の、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーとを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項9】
前記複合材料は、
前記フィラメント重量の50〜90重量%の範囲内の量の半結晶性ポリ乳酸と、
前記フィラメント重量の5〜30重量%の範囲内の量の木質系セルロース繊維の化学パルプと、
前記フィラメント重量の5〜20重量%の範囲内の量の、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーとを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項10】
前記複合材料は、
前記フィラメント重量の50〜70重量%の範囲内の量の半結晶性ポリ乳酸と、
前記フィラメント重量の20重量%以下の量の木質系セルロース繊維の化学パルプと、
前記フィラメント重量の20重量%以下の量の、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーと、
前記フィラメント重量の5重量%以下の量の、マレイン酸グラフト化ポリプロピレンホモポリマーまたはマレイン酸グラフト化ポリプロピレンコポリマーとを含み、
これらの成分の総量が、前記フィラメント重量の100重量%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項11】
22℃において、乾燥試験片によって、50%の相対湿度を有する空気中から24時間で吸収された水分量は、前記乾燥試験片の、0.6重量%未満であり、
前記測定前に、前記試験片は、ISO62(2008年度版)に従って、48時間にわたって120℃で乾燥されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項12】
前記水分量は、前記乾燥試験片の0.5重量%未満であることを特徴とする請求項11に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項13】
前記フィラメント(FIL1)は、5mm以下の最大断面幅(W)を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項14】
前記最大断面幅(W)は、3mm以下であることを特徴とする請求項13に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項15】
前記フィラメント(FIL1)は、前記フィラメント長(L)に垂直な前記フィラメント最大断面寸法(W)に対するフィラメント長(L)として測定された、100以上の形状比(L/W)を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項16】
前記形状比(L/W)は、250以上であることを特徴とする請求項15に記載のフィラメント(FIL1)。
【請求項17】
付加製造システムを用いて、モデルに従って三次元複合製品(PROD1)を作製する方法であって、
付加製造システムにおける複合製品のモデルであって、三次元複合製品の形状を規定するモデルを得ることと、
半結晶性ポリ乳酸と木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)を、前記付加製造システムにおけるヒータユニット(HU1)に供給することであって、当該フィラメント(FIL1)の一部を当該ヒータユニット(HU1)に同時に供給することと、
前記ヒータユニット(HU1)に供給された前記フィラメント(FIL1)の各部分が、前記半結晶性ポリ乳酸の溶融温度(T)よりも高い処理温度(TEXIT)まで加熱され、それによって、前記ヒータユニットに供給された前記フィラメント(FIL1)の前記部分に対応する、複合体溶融物(MLT1)の部分を形成することと、
前記複合体溶融物(MLT1)の一部を、孔幅(W)を有するノズル(100)から同時に吐出することと、
前記複合体溶融物の複数の部分が、モデルに従ってプラットフォーム(PLT0)上に互いに付着し、それによって前記三次元複合製品(PROD1)を形成するように吐出操作を制御することとを含み、
前記フィラメントにおける木質系セルロース繊維の化学パルプの量は、前記フィラメントの複合材料が、180℃、0.1Hz周波数において測定されたとき、10000Pa・s以上の複素粘度ηを有するように、押出によって付加製造されると、前記フィラメントから形成された複合体溶融物が、133℃以上の温度TSUBにおいて、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率G’/G’’を有するように選択されることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記処理温度Texitは、230℃以下であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記処理温度Texitは、160〜230℃の範囲内にあることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記フィラメント(FIL1)を、引張力(F)を用いて、前記ヒータユニット(HU1)に供給するための供給手段(120)を提供することをさらに含み、
前記引張力(F)は、前記フィラメント(FIL1)の破断点における引張ひずみ未満であることを特徴とする請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記フィラメントを、10〜100mm/秒の範囲内の供給速度(V)で前記ヒータユニットに供給することをさらに含むことを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記供給速度(V)は、10〜70mm/秒の範囲内であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記複合体溶融物の吐出部分が、前記複合体溶融物(MLT1)の、前記プラットフォーム(PLT0)または別の部分に接触して冷却されると、前記ノズル(100)の孔の寸法に対応する厚み(HML)および幅(WML)を有する複合体要素(POR1、POR2)に変換されるように、前記ノズル(100)および/または前記プラットフォーム(PLT0)の、前記供給速度(V)および/または前記側方運動(V)をモデルに従って制御することをさらに含むことを特徴とする請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記プラットフォーム表面(SURFPLT)に平行な平面において、複合体要素(POR1、POR2)が互いに付着し、それによって、材料層(ML)を生じるように、前記ノズル(100)および/または前記プラットフォーム(PLT0)の、前記供給速度(V)および/または前記側方運動(V)を前記モデルに従って制御することをさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
材料層(ML、MLK−1)が、前記プラットフォーム表面(NPLT)の法線に実質的に平行な方向(S)において互いに付着し、それによって、複数の層を有する三次元製品(PROD1)を作るように、前記ノズル(100)および/または前記プラットフォーム(PLT0)の、前記供給速度(V)および/または側方運動(V)をモデルに従って制御することをさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出による付加製造においての使用に適切な複合材料と、かかる複合材料のフィラメントから、付加製造システムで三次元複合製品を製造するための方法と、かかる複合材料を用いる付加製造システムによって得られる三次元複合製品とに関する。
【背景技術】
【0002】
技術としての付加製造は、ISO17296−1およびASTM2792−12に規定されるような、モデルに基づいて固体を形成することをいう。付加製造は、拡張製造、三次元印刷、または3Dプリンティングとしても知られている。
【0003】
熱可塑性材料、典型的には、ポリマー、またはマトリックスポリマーを含む複合材料は、それらの材料の、ガラス転移温度または溶融温度よりも高い温度に加熱されたとき、固体状態から溶融状態への遷移を経る。押出による付加製造は、モデルに従った製品を得るために、熱可塑性材料を、ノズルを通して所定の方法でプラットフォーム上に流して沈着させることを含む方法を意味する。以後、かかる三次元製品は、「3D印刷製品」としても表わされる。押出による付加製造は、材料のシングルショットを連続的に処理されて特定形状にされていく、従来の押出および成形方法とは異なる。典型的には、鋳型または差圧を、溶融または半固体材料を支持するために、当該材料が固体化する前に使用することが可能である。押出による付加製造は、鋳型なしに行われる。したがって、付加製造において使用される熱可塑性材料は、従来の押出または成形方法において使用されるものとは異なる特性が必要とされ得る。
【0004】
材料は、フィラメント、粉体、または顆粒形態など、異なる形態で付加製造システムに供給されてもよい。典型的には、付加製造システムは、フィラメント形態など、特定形態で固体材料を受け入れるように構成されている。熱溶解積層法および融解フィラメント製造などの多くの押出加工法は、フィラメント形態の材料を使用する。供給材料の形態および熱機械的特性は、材料または付加製造に影響を及ぼす。支持体から押し出されるフィラメント材料は、スプールとも称されるが、押出原理で作動する付加製造システムに材料を提供する便利な方法である。
【0005】
押出による付加製造のためのフィラメントは、マトリックス材料としての熱可塑性ポリマーを含む複合材料から形成可能である。ポリ乳酸は、これは以後PLAと省略されるが、押出による付加製造におけるマトリックス材料として使用可能である。PLAは、押出による付加製造にとって適切なレオロジー特性を提供し得る。PLAは、典型的には、溶融物を受入れるために押出型付加製造システムにおいて使用される、ガラスベッドなどの加熱されたプラットフォームに対して良好な付着性を有する。
【0006】
押出による付加製造におけるPLAの課題の1つは、ポリマーの、HDTおよびTが非常に低く、典型的には約60℃以下であることである。PLAは、ガラス転移温度以下の温度で高い剛性を有する。したがって、PLAで製造されたフィラメントは、比較的もろく、硬いガラス様表面を有する。特に、長時間にわたって張力を受けているとき、かかるフィラメントは、容易に破壊され、フィラメントの付加製造システムへのフィラメントの供給を妨げ得るものとなる。特に、フィラメント供給速度が増加するとき、より大きな力がフィラメントに加えられ、それによって供給が阻害されるリスクが増加する。
【0007】
PLAの処理温度は、典型的には非常に高い。PLAの処理温度は、180〜195℃の範囲内であるか、またはさらに高くてもよい。処理温度とTとの間の大きな相違は、PLAから形成された溶融物の徐冷につながる。半結晶グレードは、PLAの非結晶性グレードよりも早い結晶化速度を有するが、溶融状態のPLA材料は、固体化前に、十分に押出された形状を保持することができない。PLAは、比較的低い溶融粘度を有し、溶融状態の印刷材料が、押出された形状にとどまらず、流れ続け、崩壊し得るような状態においては、汚い印刷結果をもたらすことになる。このことは、ノズルの寸法が大きくなり、大量の材料が、同時に吐出されるときに特に問題である。
【0008】
付加製造の別の態様は、3D印刷製品の特性が、従来的に製造された押出製品とは異なってもよいものである。3D印刷製品は、典型的には、印刷材料の、複数の層と隣接する列とを含む。印刷速度および印刷経路に応じて、形成された3D印刷製品の機械的特性は変化してもよい。後続の列または層が、固定化材料層の表面または隣に溶融物として沈着されるように、2つの隣接する列または層が印刷されたとき、界面が、付着された層の間に形成される。かかる状態において、溶融状態の材料は、ノズルから同時に流れることを止めることができない。低い溶融粘度を有する材料は、扱うことが困難であるかもしれない。これは、特に印刷操作が非連続形状の製造を必要とし、付加製造システムが、沈着した材料部分または層の間に空間または間隙を残すべきである場合である。
【0009】
フィラメント供給の目的から、複合材料は、柔軟であり、張力に耐えなければならない。一方、付加製造システムから沈着する間に、溶融形態の複合材料は、溶融物の正確な分割を可能にするべきである。したがって、押出による付加製造において、複合溶融物の各沈着部分が、ノズル孔の寸法に対応する横断面形状を得ることができるように、溶融物の一部を沈着させることは困難である。
【0010】
半結晶性ポリマーは、押出による付加製造において扱いにくい。なぜなら、半結晶性ポリマー鎖は、冷却の間にポリマー材料を収縮させるからである。支持鋳型がなければ、収縮は、最終用途目的に十分な寸法精度を有さない3D印刷製品をもたらし得る。
【0011】
したがって、付加製造システムに供給される材料の特性は、付加製造処理および形成される3D印刷製品からも、検討される必要がある。
【0012】
その結果、上述のように、付加製造システムに供給される材料の特性は、製造方法と、形成される3D印刷製品との両方に影響を与える。上述の問題が原因で、特に印刷速度が速くなると、モデルの十分に正確な再生産である付加製造による三次元複合製品を得ることは、困難である。
【発明の概要】
【0013】
いくつかの変形例は、付加製造における使用に好適なフィラメントに関する。いくつかの変形例は、付加製造システムを用いて、モデルに従って三次元複合製品を製造するための方法に関する。いくつかの変形例は、かかる方法に従って得ることができる製品に関する。
【0014】
付加製造は、典型的には製造設備に少ない投資で、比較的少ないシリーズの製品、または個別の部品でさえも製造を可能にする。押出による付加製造は、装飾的な物体、または様々な用途のための機能的部品を製造するために使用可能である。たとえば、迅速な試作、またはカスタマイズされた部品を製造するために、押出による付加製造を使用可能である。
【0015】
複合材料から形成されたフィラメントは、半結晶性ポリ乳酸、木質系セルロース繊維、およびポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーを含んでもよい。フィラメントにおける各成分の量は、互いに独立して選択可能である。
【0016】
一態様によれば、押出による付加製造における使用に好適なフィラメントが提供され、複合材料から形成されるフィラメントは、
半結晶性ポリ乳酸と、
木質系セルロース繊維の化学パルプとを含み、
木質系セルロース繊維の化学パルプの量は、前記フィラメントの複合材料が、融解状態にあり、0.1Hz周波数および180℃において測定されたとき、10000Pa・s以上の複素粘度ηを有するように、押出によって付加製造されると、フィラメントから形成される複合体溶融物が、1Hz周波数において測定されたとき、133℃以上の温度Tsubにおいて、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率G’/G’’を有するように選択される。温度Tsubは、半結晶性ポリ乳酸のガラス転移温度Tよりも高い。複素粘度ηは、ISO6721−10(2015年度版)に従って、180℃、0.1Hz周波数における周波数スイープ測定によって、25mm直径の平行平板および0.6mmの間隙を用いて、0.1%ひずみにおいて、複合材料の試料から測定可能である。 せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率G’/G’’は、ISO6721−10(2015年度版)に従って、25mm直径の平行平板および0.6mmの間隙を用いて、0.1%ひずみ、1Hz周波数において、180℃〜25℃の範囲内の温度で、5℃/分の線形速度を有する温度傾斜下において、複合材料の試料から測定可能である。
【0017】
別の態様によれば、付加製造システムを用いて、モデルに従って三次元複合製品を製造するための方法を提供し、当該方法は、
付加製造システムにおける複合製品のモデルであって、三次元複合製品の形状を規定するモデルを得ることと、
半結晶性ポリ乳酸ポリマーと木質系セルロース繊維の化学パルプとを含むフィラメントを付加製造システムのヒータユニットに供給することであって、当該フィラメントの一部が当該ヒータユニットに同時に供給されるように供給することと、
前記ヒータユニットに供給された前記フィラメントの各部分を、前記半結晶性ポリ乳酸の溶融温度よりも高い処理温度まで加熱し、それによって、前記ヒータユニットに供給された前記フィラメントの各部分に対応する、複合体溶融物の各部分を形成することと、
前記複合体溶融物の一部を、幅を有するノズルから同時に吐出することと、
前記複合体溶融物の複数の部分が、モデルに従ってプラットフォーム上に互いに付着するように吐出操作を制御し、それによって三次元複合製品を形成することと、
前記フィラメントにおける木質系セルロース繊維の化学パルプの量は、前記フィラメントの複合材料が、溶融状態である場合において、0.1Hz周波数、および180℃において測定されたときに10000Pa・s以上の複素粘度ηを有するように、押出によって付加製造されると、前記フィラメントから形成される複合体溶融物が、1Hz周波数において測定されたとき、133℃以上の温度Tsubにおいて、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率G’/G’’を有するように選択された。温度Tsubは、半結晶性ポリ乳酸のガラス転移温度Tよりも高い。複素粘度ηは、ISO6721−10(2015年度版)に従って、180℃、0.1Hz周波数の周波数スイープ測定によって、0.1%ひずみにおいて、25mm直径の平行平板と0.6mmの間隙とを用いて、複合材料の試料から測定されてもよい。せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率G’/G’’は、ISO6721−10(2015年度版)に従って、180℃〜25℃の温度範囲において5℃/分の線形速度を有する温度傾斜下にて、1Hz周波数、0.1%ひずみにおいて、25mm直径の平行平板と0.6mmの間隙とを用いて、複合材料の試料から測定されてもよい。
【0018】
一態様によれば、モデルに従った三次元複合製品は、上述のような付加製造システムを用いて得ることができる。前記製品は、層を含む三次元製品の層に平行な参照平面に実質的に平行な第1方向に第1衝撃強度と、前記参照平面に実質的に垂直な第2方向に第2衝撃強度とを含んでもよく、ISO179/1eUに従って、23℃におけるシャルピー衝撃強度値として測定されたとき、前記第1衝撃強度は、前記第2衝撃強度とは異なる。
【0019】
半結晶性ポリ乳酸は、低い溶融粘度を有し、したがって、溶融状態であるときニュートン流体としてふるまう。溶融状態の半結晶性ポリ乳酸に加えられる力は、重力でさえ、それによって、半結晶性ポリ乳酸溶融物の沈着部分を変形可能である。複合材料から形成されるフィラメントは、フィラメント重量の90重量%以下の量で半結晶性ポリ乳酸を含んでもよい。複合材料から形成されるフィラメントは、好ましくは、フィラメント重量の50〜90重量%の範囲内などの、50重量%以上の量で半結晶性ポリ乳酸を含んでもよい。
【0020】
半結晶性ポリ乳酸の欠点を克服するために、複合材料から形成されるフィラメントは、木質系セルロース繊維の化学パルプを含んでもよい。木質系セルロース繊維の化学パルプは、少ない量のリグニンを含む。特に、漂白された化学パルプは、本質的にリグニンを含まず、高い白色度を有する。特に、化学パルプは、半結晶性ポリ乳酸を含む複合材料のレオロジー挙動を改良するために好適な特性を含む。
【0021】
木質系セルロース繊維の化学パルプの量は、複合材料の複素粘度ηに影響を与える。複合材料から形成されるフィラメントは、フィラメント重量の30重量%以下の量の木質系セルロース繊維の化学パルプを含んでもよい。ポリ乳酸と、木質系セルロース繊維の化学パルプとを含めるために複合体溶融物を準備するとき、木質系セルロース繊維の化学パルプの量は、複合材料の十分に高いせん断複合粘度ηを得るために選択されてもよい。したがって、木質系セルロース繊維の化学パルプは、半結晶性ポリ乳酸と木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む複合体溶融物の粘弾性特性を増加させる効果を有する。好ましくは、複合材料から形成されるフィラメントは、フィラメント重量の5〜30重量%の範囲などの、5重量%以上の量で木質系セルロース繊維の化学パルプを含んでもよい。
【0022】
複素粘度ηは、動的粘度としても知られており、凝固が始まる前にガラス転移温度を超える温度から冷却されるとき、複合材料の溶融物がもたらされる最小粘度の尺度である。複素粘度ηは、複素弾性率Gを角周波数で除算することによって得られる。複素弾性率Gは、動的レオロジー法によって測定される。角周波数は、ラジアン毎秒で測定される動的周波数をいう。角周波数は、ヘルツ周波数の代わりに使用可能である。複素粘度G値は、典型的にはパスカル秒の単位でもたらされ、Pa・sと省略される。
【0023】
複素弾性率Gは、動的弾性率としても知られており、式1によって表わすことができる。
* =G’+iG’’ (式1)
ここで、G’は、せん断貯蔵弾性率を表し、G’’は、せん断損失弾性率を表し、iは、虚数単位を表す。
【0024】
複素弾性率は、振動条件下において変形するための応力比である。複素弾性率は、粘弾性材料の特性である。それは、降伏応力以下の応力にさらされたとき、材料の剛性を定量化する。複素弾性率は、材料の、柔軟性または剛性を示す。複素弾性率は、動的レオロジー測定によって決定可能である。複素弾性率は、したがって、変形が弾性であるので回復可能であるか、または粘性であるので回復できないかに関わらず、変形に対する材料の全ての抵抗を表す。材料は、したがって、溶融状態からの冷却による変形に耐える。したがって、付加製造システムのノズルから一度吐出された、複合体溶融物の一部は、モデルに従って、三次元複合製品の形成を可能にするために、十分な正確性で型に固体化される。
【0025】
フィラメント材料のレオロジー特性は、せん断貯蔵弾性率とせん断損失弾性率とによってさらに説明することができる。G’として示されるせん断貯蔵弾性率は、材料内の貯蔵エネルギーを評価する。せん断貯蔵弾性率は、したがって、弾性部分を表す。G’’として示されるせん断損失弾性率は、熱として消散されたエネルギーを示す。せん断損失弾性率は、粘性の部分を表す。ポリ乳酸などのマトリックス材料のガラス転移温度を超える状況において、G’は、G’’よりも大きく、材料は、エネルギーを貯蔵する性質を有し、機械的力が材料に加えられたとき、その初期形態に戻ることができる。材料は、したがって、弾性挙動を有する。G’’がG’よりも大きい状況において、材料に加えられる機械的力は、材料が流れるように材料の内部構造に崩壊をもたらす。木質系セルロース繊維の化学パルプの量は、フィラメントの複合材料が、Tsub>Tの状況において、十分な複素粘度ηを有するように、押出によって付加製造されると、フィラメントから形成される複合体溶融物は、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率G’/G’’を有する。好ましくは、ポリ乳酸と、木質系セルロース繊維の化学パルプとを含むフィラメントが、133℃以上のTsubにおいて、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率G’/G’’を有し、Tsub>Tであり、複合体溶融物が、冷却されると、それ自身の重量を支持し始める。半結晶性ポリ乳酸と木質系セルロース繊維とを含む複合体溶融物は、せん断減粘性である。せん断貯蔵弾性率G’、せん断損失弾性率G’’、および交差点G’/G’’=1は、ISO6721−10(2015年度版)に従って、180℃〜25℃の温度範囲内で5℃/分の線形速度を有する温度傾斜にて、1Hz周波数、0.1%ひずみにおいて、25mmの直径の平行平板と0.6mmの間隙とを用いて、複合材料の試料から決定されてもよい。
【0026】
複合材料から形成されるフィラメントは、ポリプロピレンをさらに含み得る。ポリプロピレンは、エラストマー修飾されたポリプロピレンホモポリマー、またはコポリマーであってもよい。複合材料からなるフィラメントは、30重量%以下、好ましくは、フィラメント重量の20重量%以下のポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーを含んでもよい。ポリプロピレンは、典型的には、ポリ乳酸よりも高い溶融粘度を有する。ポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーの熱たわみ温度は、半結晶性ポリ乳酸の熱たわみ温度よりも高くてもよい。ポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーの熱たわみ温度は、ISO75−2(2013年度版)の方法Bに従って、0.45Mpaの一定の曲げ応力下において測定されるとき、80℃以上であってもよい。好ましくは、複合材料から形成されるフィラメントは、フィラメント重量の5〜20重量%の範囲内などの、5重量%以上の量のポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーを含んでもよい。ポリプロピレンは、押出による付加製造法における複合材料の、せん断貯蔵弾性率に対するせん断損失弾性率の比率を増加させるために準備されてもよい。ポリプロピレン、ポリ乳酸、および木質系セルロース繊維の化学パルプを含むフィラメントは、高温においてG’’>G’を有するように構成されてもよい。ポリ乳酸と木質系セルロース繊維の化学パルプとを含むフィラメントは、133℃以上の温度においてG’/G’’=1である交差点を有するように用意されてもよい。ポリプロピレン、ポリ乳酸、および木質系セルロース繊維の化学パルプを含むフィラメントは、145℃以上のような140℃以上の温度においてG’/G’’=1である交差点を有するように用意されてもよい。ポリプロピレンは、したがって、複合体溶融物が、冷却されて、それ自身の重量を支持し始める温度を変更するために用意されてもよい。かかる複合体溶融物は、当該複合体溶融物が冷却されるとき、より弾性を有する。したがって、ポリプロピレン、ポリ乳酸、および木質系セルロース繊維を含む、付加製造のためのフィラメントは、冷却に対して感受性が低く、改良された寸法安定性を有する。冷却されたときの複合体溶融物の挙動は、押出による付加製造において重要である。なぜなら、製品は、複数の層を含んでもよく、補助鋳型なしに複合体溶融物から形成されるからである。
【0027】
有利には、フィラメントは、材料成分が非再生材料ではない複合材料から形成される。各材料成分は、互いに独立して非再生材料であってもよい。本明細書において、非再生材料は、ポリ乳酸および/またはポリプロピレンなどの未使用ポリマー材料をいう。本明細書において、非再生繊維材料は、パルプミルからの新たに製造された木質系セルロース繊維の化学パルプをいう。非再生材料は、典型的には、再生材料よりも高い精製度を有する。
【0028】
冷却された時の押し出された複合体部分の変形を減少するために、押出による付加製造の製造速度は、典型的には比較的ゆっくりと維持される。従来、付加製造システムの製造速度を増大することは、溶融した材料の冷却挙動が原因で、特に困難であった。ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの半結晶性ポリマーは、押出による付加製造に特に困難であった。なぜなら、半結晶性ポリマー鎖は、冷却の間にポリマー材料を収縮させるからである。収縮は、冷却されて溶融状態から凝固されたときの材料の寸法低下をいう。ポリプロピレンは、特に、収縮する傾向を有する。また、ポリプロピレンは、非極性であり、典型的には、20℃において30mN/m以下の範囲内の低い表面自由エネルギーを示す。低い表面自由エネルギーは、ポリプロピレンからなるポリマー溶融物をプラットフォームに付着させることを困難にする。
【0029】
収縮は、処理温度が高くなると、ポリマー溶融物が固体化し始める前に冷却しなければならないことが必要となるように、ポリマー溶融物の処理温度に関係する。処理温度と溶融温度との間の大きな温度の相違は、したがって、収縮を増大させ得る。半結晶性ポリマーに関して、ガラス転移温度(以後、Tという)は、重要である。半結晶性材料において、ガラス転移は、材料の非結晶質領域内の可逆性転移であって、温度が増加するにつれて、ポリマーが、硬く、比較的もろい状態から、溶融またはゴム様状態に変わる可逆性転移をいう。結晶化は、溶融物から冷却されて、溶融状態の半結晶性材料の温度が、低下して、当該材料の、熱たわみ温度またはガラス転移温度に接近するときに生じる。結晶化度に応じて、溶融物から固体までの状態遷移は、一様でなくてもよい。ポリマー鎖が迅速に再配置されるとき、材料は、収縮し得る。
【0030】
複合体溶融物が十分に高い複素粘度ηを有する場合、押出によって付加製造された時、フィラメントから形成される複合体溶融物は、上昇した温度Tsubにおける変形に抵抗することが可能である。木質系セルロース繊維とポリプロピレンとを含む複合材料は、したがって、複合材料の収縮傾向をさらに減少させるために構成されてもよい。木質系セルロース繊維の化学パルプは、マトリックス材料におけるポリ乳酸および/またはポリプロピレンなどの半結晶性ポリマーの異種凝結を促進する凝結剤として働くように配置されてもよい。木質系セルロース繊維と、ポリ乳酸および/またはポリプロピレンなどの半結晶性ポリマーとを含む複合材料は、したがって、結晶化のより早い速度を有するフィラメントを提供するために用意され得る。複合材料は、したがって、ISO294−4(2011年度版)に従って、70℃の温度と60mm×60mm×2mmの寸法とを有する矩形成形板が、195℃の初期温度を有する複合体溶融物で満たされた状態で測定される場合、溶融物から凝固されたとき、1.15%未満の成形収縮率を有するように用意されてもよい。
【0031】
ポリプロピレンの上述された特性は、さらに、付加製造に挑戦する間に、フィラメント材料の曲げ弾性率を改良し、当該フィラメントが、より高度の柔軟性と表面柔軟性とを有するように用意されてもよい。プロピレンモノマーとエチレンモノマーとのコポリマーを含む複合材料は、特に、フィラメントの靭性と柔軟性とを増加するように構成されてもよい。
【0032】
親水性の木質系セルロース繊維に対する疎水性ポリプロピレンの適合性は、マレイン酸グラフト化ポリプロピレンによって改良可能である。複合材料は、たとえば、1〜5%の範囲内などの少なくとも1%、好ましくは、フィラメントの3重量%以下の量でマレイン酸グラフト化ポリプロピレンホモポリマーまたはマレイン酸グラフト化ポリプロピレンコポリマーを含んでもよい。
【0033】
木質系セルロース繊維の、繊維長、リグニン含有量、およびバルク密度は、高い比弾性率を有する材料を提供するためにさらに選択されてもよく、それによって、支持鋳型なしに3D印刷された製品の剛性駆動形成(stiffness-driven formation)を改良することができる。複合材料からなるフィラメントは、ISO178(2015年度版)の方法Bに従って、2mm/分の速度において3点曲げ試験によって測定されるとき、6GPa以下の曲げ弾性率と、2GPa/g/cmを超え、有利には3GPa/g/cmを超え、最も有利には4GPa/g/cm以上の比弾性率とを有するように用意されてもよい。
【0034】
化学パルプ重量の2.0%以下、好ましくは0.5%以下などの低いリグニン含有量を有する木質系セルロース繊維の化学パルプは、さらに、複合材料の処理温度が増加加するように用意されてもよい。フィラメントは、木質系セルロース繊維が、少ないリグニンを有する化学パルプであり、ヘミセルロース含有量が、少ない色相および彩度を有する3D印刷された複合体表面を提供するように用意可能である複合材料から形成された。かかる複合体表面は、淡い色を有する表面として視覚的に知覚される。漂白された化学パルプなどの高い白色度を有する繊維材料は、所望の特定の色を有するフィラメントを提供するためにさらに使用可能である。なぜなら、材料は、容易に染色可能であるからである。
【0035】
有利には、複合材料から形成されるフィラメントは、
フィラメント重量の90重量%以下、好ましくは50〜90重量%の量の半結晶性ポリ乳酸と、
フィラメント重量の30重量%以下、好ましくは5〜30重量%の量の木質系セルロース繊維の化学パルプと、
フィラメント重量の30重量%以下、好ましくは5〜20重量%のポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーとを含み得る。
【0036】
有利には、複合材料から形成されるフィラメントは、
フィラメント重量の50〜70重量%の範囲内の量の半結晶性ポリ乳酸と、
フィラメント重量の20重量%以下の量の木質系セルロース繊維の化学パルプと、
フィラメント重量の20重量%以下の量のポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーと、
フィラメント重量の5重量%以下の量のマレイン酸グラフト化ポリプロピレンホモポリマーまたはマレイン酸グラフト化ポリプロピレンコポリマーとを
これらの成分の総量が、フィラメント重量の100重量%に等しくなるように含み得る。
【0037】
さらに詳しくは、本発明は、押出による付加製造における使用に適切なフィラメント(FIL1)であって、
当該フィラメント(FIL1)は、
半結晶性ポリ乳酸と、
木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む複合材料から形成され、
木質系セルロース繊維の化学パルプの量は、前記フィラメント(FIL1)の前記複合材料が、0.1Hz周波数および180℃で測定されたとき、10000Pa・s以上の複素粘度(η)を有するように、押出によって付加製造されるとき、前記フィラメント(FIL1)から形成される複合体溶融物が、133℃以上の温度(Tsub)において、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率(G’/G’’)を有するように選択されることを特徴とするフィラメント(FIL1)である。
【0038】
本発明において、前記フィラメント(FIL1)は、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーをさらに含むことを特徴とする。
【0039】
本発明において、前記フィラメント(FIL1)は、ISO6721−10:2015に従って、180℃〜25℃の温度範囲内で5℃/分の線形速度を有する温度傾斜にて、1Hz周波数、0.1%ひずみにおいて、25mm直径の平行平板および0.6mmの間隙を用いて、前記複合材料の試料から測定されたとき、140℃以上の温度(Tsub)において、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率(G’/G’’)を有することを特徴とする。
【0040】
本発明において、前記フィラメント(FIL1)は、25℃において、
6GPa以下の曲げ弾性率、および
2GPa/g/cmを超える比弾性率をさらに有することを特徴とする。
【0041】
本発明において、前記複合材料は、溶融物から凝固されると、1.15%未満の寸法成形収縮率を有することを特徴とする。
【0042】
本発明において、前記木質系セルロース繊維の化学パルプは、0.4mm以下の長さ加重平均繊維長を有することを特徴とする。
【0043】
本発明において、前記木質系セルロース繊維の化学パルプは、化学パルプの0.5重量%以下のリグニン含有量を有することを特徴とする。
【0044】
本発明において、前記複合材料は、
前記フィラメント重量の、90重量%以下、好ましくは50〜90重量%の範囲内の量の半結晶性ポリ乳酸と、
前記フィラメント重量の、30重量%以下、好ましくは5〜30重量%の範囲内の量の木質系セルロース繊維の化学パルプと、
前記フィラメント重量の、30重量%以下、好ましくは5〜20重量%の範囲内の量の、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーとを含むことを特徴とする。
【0045】
本発明において、前記複合材料は、
前記フィラメント重量の50〜70重量%の範囲内の量の半結晶性ポリ乳酸と、
前記フィラメント重量の20重量%以下の量の木質系セルロース繊維の化学パルプと、
前記フィラメント重量の20重量%以下の量の、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーと、
前記フィラメント重量の5重量%以下の量の、マレイン酸グラフト化ポリプロピレンホモポリマーまたはマレイン酸グラフト化ポリプロピレンコポリマーとを含み、
これらの成分の総量が、前記フィラメント重量の100重量%であることを特徴とする。
【0046】
本発明において、22℃において、乾燥試験片によって、50%の相対湿度を有する空気中から24時間で吸収された水分量は、前記乾燥試験片の、0.6重量%未満、好ましくは0.5重量%未満であり、
前記測定前に、前記試験片は、ISO62(2008年度版)に従って、48時間にわたって120℃で乾燥されることを特徴とする。
【0047】
本発明において、前記フィラメント(FIL1)は、5mm以下、好ましくは3mm以下の最大断面幅(W)を有することを特徴とする。
【0048】
本発明において、前記フィラメント(FIL1)は、前記フィラメント長(L)に垂直な前記フィラメント最大断面寸法(W)に対するフィラメント長(L)として測定された、100以上、好ましくは250以上の形状比(L/W)を有することを特徴とする。
【0049】
また本発明は、付加製造システムを用いて、モデルに従って三次元複合製品(PROD1)を作製する方法であって、
付加製造システムにおける複合製品のモデルであって、三次元複合製品の形状を規定するモデルを得ることと、
半結晶性ポリ乳酸と木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のフィラメント(FIL1)を、前記付加製造システムにおけるヒータユニット(HU1)に供給することであって、当該フィラメント(FIL1)の一部を当該ヒータユニット(HU1)に同時に供給することと、
前記ヒータユニット(HU1)に供給された前記フィラメント(FIL1)の各部分が、前記半結晶性ポリ乳酸の溶融温度(T)よりも高い処理温度(TEXIT)まで加熱され、それによって、前記ヒータユニットに供給された前記フィラメント(FIL1)の前記部分に対応する、複合体溶融物(MLT1)の部分を形成することと、
前記複合体溶融物(MLT1)の一部を、孔幅(W)を有するノズル(100)から同時に吐出することと、
前記複合体溶融物の複数の部分が、モデルに従ってプラットフォーム(PLT0)上に互いに付着し、それによって前記三次元複合製品(PROD1)を形成するように吐出操作を制御することとを含み、
前記フィラメントにおける木質系セルロース繊維の化学パルプの量は、前記フィラメントの複合材料が、180℃、0.1Hz周波数において測定されたとき、10000Pa・s以上の複素粘度ηを有するように、押出によって付加製造されると、前記フィラメントから形成された複合体溶融物が、133℃以上の温度TSUBにおいて、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率G’/G’’を有するように選択されることを特徴とする方法である。
【0050】
本発明において、前記処理温度Texitは、230℃以下、好ましくは160〜230℃の範囲内にあることを特徴とする。
【0051】
本発明において、前記フィラメント(FIL1)を、引張力(F)を用いて、前記ヒータユニット(HU1)に供給するための供給手段(120)を提供することをさらに含み、
前記引張力(F)は、前記フィラメント(FIL1)の破断点における引張ひずみ未満であることを特徴とする。
【0052】
本発明において、前記フィラメントを、10〜100mm/秒の範囲内、好ましくは10〜70mm/秒の範囲内の供給速度(V)で前記ヒータユニットに供給することをさらに含むことを特徴とする。
【0053】
本発明において、前記複合体溶融物の前記吐出部分が、前記複合体溶融物(MLT1)の、前記プラットフォーム(PLT0)または別の部分に接触して冷却されると、前記ノズル(100)の孔の寸法に対応する厚み(HML)および幅(WML)を有する複合体要素(POR1、POR2)に変換されるように、前記ノズル(100)および/または前記プラットフォーム(PLT0)の、前記供給速度(V)および/または前記側方運動(V)をモデルに従って制御することをさらに含むことを特徴とする。
【0054】
本発明において、前記プラットフォーム表面(SURFPLT)に平行な平面において、複合体要素(POR1、POR2)が互いに付着し、それによって、材料層(ML)を生じるように、前記ノズル(100)および/または前記プラットフォーム(PLT0)の、前記供給速度(V)および/または前記側方運動(V)を前記モデルに従って制御することをさらに含むことを特徴とする。
【0055】
本発明において、材料層(ML、MLK−1)が、前記プラットフォーム表面(NPLT)の法線に実質的に平行な方向(S)において互いに付着し、それによって、複数の層を有する三次元製品(PROD1)を作るように、前記ノズル(100)および/または前記プラットフォーム(PLT0)の、前記供給速度(V)および/または側方運動(V)をモデルに従って制御することをさらに含むことを特徴とする。
【0056】
さらに、本発明は、上記方法に従って得ることができる製品である。
【0057】
本発明において、複数の層を含む前記三次元製品の当該複数の層に平行な参照平面(REF0)に実質的に平行な第1方向(S)における第1衝撃強度と、
前記参照平面(REF0)に実質的に垂直な第2方向(S)における第2衝撃強度とを含み、
前記第1衝撃強度は、前記第2衝撃強度とは異なることを特徴とする。
【0058】
さらなる詳細は、本発明の様々な態様を示す図1図8を参照して以下に示される。図において、S、S、およびSは、直交方向を示す。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】複合材料からなる、押出による付加製造における使用に適切なフィラメントを一例にとして示す。
図2】フィラメントを付加製造システムに供給するために適した支持体に巻かれたフィラメントであって、当該フィラメントが支持体の周囲に曲げられたフィラメントを一例として示す。
図3】付加製造システムを用いて、三次元複合製品を製造するための方法の三次元図であって、フィラメントが、付加製造システムのヒータユニットに供給され、フィラメントの部分に対応する複合体溶融物の部分が、制御された方法でプラットフォームに吐出され、それによって互いに付着された複合体要素を製造し、三次元複合製品を形成する方法を一例として示す三次元図を示す。
図4図3に開示されたような三次元複合製品を製造する方法の断面図を一例として示し、さらに温度を示す。
図5図3および図4に開示されたような、三次元複合製品を製造する方法の断面図を一例として示し、さらに動きと力とを示す。
図6】付加製造システムを用いて得られる三次元複合製品の断面図であって、三次元複合製品が互いに付着した層を有する断面図を一例として示す。
図7】ポリ乳酸を含む複合材料において、温度の関数として、せん断損失弾性率曲線G’’とせん断貯蔵弾性率曲線G’とを示す。ポリプロピレンを含む複合材料は、2つの曲線G’とG’’とが交わる点を示す、より高い交差点温度を有することが分かった。
図8】ポリ乳酸を含む複合材料において、温度の関数として、せん断損失弾性率曲線G’’と、せん断貯蔵弾性率曲線G’とを示す。ポリプロピレンを含む複合材料は、2つの曲線G’とG’’とが交わる点を示す、より高い交差点温度を有することが分かった。
図9】ポリ乳酸を含む複合材料の衝撃強度を示す。異なる製造方法によって、同一材料から作製された2つの試料の衝撃強度が、異なることが分かった。ポリプロピレンを含む複合材料も、低下した衝撃強度を有することが分かった。
図10】ポリ乳酸を含む複合材料の衝撃強度を示す。異なる製造方法によって同一材料から作製された2つの試料の衝撃強度が異なることが分かった。ポリプロピレンを含む複合材料も、低下した衝撃強度を有することが分かった。
図11】周波数の関数として、複合材料の複素粘度ηを示す。木質系セルロース繊維の化学パルプを含む複合材料は、より高い複素粘度を有することが分かった。ポリプロピレンをさらに含む複合材料は、最も高い複素粘度を有することが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1および図2を参照のこと。押出による付加製造は、熱溶解積層法および融解フィラメント製造などにおいて、フィラメント材料を使用可能である。本明細書において、フィラメントFIL1は、木質系セルロース繊維と、ポリ乳酸などのマトリックス材料とを含む複合材料から形成された物品をいう。マトリックス材料は、ポリプロピレンなどの他のポリマーをさらに含んでもよい。フィラメントFIL1は、当該フィラメントが、コイルの形状で曲がるように支持体COIL1に巻かれてもよい。支持体COIL1は、巻かれたフィラメントFIL1に引張力が加えられたとき、当該フィラメントが、引張力の供給源に向かって引き出し可能に、回転するように構成されてもよい。支持体COIL1は、付加製造システムにおける使用前にフィラメントを貯蔵するように構成されてもよい。フィラメントFIL1は、100以上の、好ましくは250以上の形状比L/Wを有してもよい。形状比L/Wは、フィラメント長Lに垂直なフィラメント最大断面寸法Wに対するフィラメント長Lとして測定された、直径に対する長さの比率をいう。フィラメント長Lに対して垂直な断面寸法Wが丸いとき、最大断面寸法Wは、フィラメントの直径である。フィラメントは、1〜5mmの範囲内などの、5mm以下、好ましくは3mm以下の直径、最大断面幅Wを有するように構成されてもよい。1.75mmおよび2.85mmの直径は、押出による付加製造用のフィラメントに使用される2つの一般的な直径である。
【0061】
付加製造システムを用いて三次元複合製品を製造するための方法
図3図6を参照のこと。押出による付加製造は、押し出される材料を支持する鋳型なしに、モデルによって固体を形成することに基づくものである。したがって、前記方法は、複合製品PROD1のモデルを得ることを含む。モデルは、形成されるべき三次元複合製品PROD1の形状を規定するために使用される。典型的には、モデルは、コンピュータファイル形式で保存されたデジタル情報などのデジタルモデルである。モデルは、製造されるべき固体の位置情報を含んでもよい。位置情報は、プラットフォームPLT0と、3Dプリンターなどの付加製造システムにおけるノズル100との操作を制御するために使用可能である。モデルは、たとえば、互いに同等の画素の三次元情報を含み、それによって画素の三次元マップを提供してもよい。
【0062】
押出に適切な付加製造システムは、典型的には、複合体溶融物MLT1を沈着させるためのノズル100と、沈着した溶融物を受入れるためのプラットフォームPLT0とを含む加熱された押出機ヘッドを含む。ノズル100および/またはプラットフォームPLT0は、プラットフォームPLT0に対するノズル100の相対位置が、3つの方向S、S、Sで制御可能であるように、複数軸上を移動するように構成可能である。モデルは、フィラメントFIL1から形成される複合体溶融物MLT1の連続位置が、所定の法則でプラットフォームに吐出されるように、プラットフォームPLT0および/またはノズル100の動きを互いに関して制御するために使用可能である。複合体溶融物MLT1の沈着と、プラットフォームPLT0および/またはノズル100の動きとを互いに関して制御することによって、複合体溶融物MLT1の連続的部分を、所定の方法で、プラットフォームPLT0上に押出可能である。付加製造システムは、層ごとの方式で、熱可塑性材料の供給と溶融物の沈着とを制御するように構成されてもよい。
【0063】
付加製造システムは、供給部と溶融物吐出部とに分割されてもよい。付加製造システムの供給部は、典型的には低温端と高温端とを有する。低温端は、複合材料を固体形状に処理する。高温端は、固体複合材料を溶融形状に処理する。付加製造システムは、フィラメントFIL1を含む支持体COIL1を含んでもよい。付加製造システムの低温端は、支持体COIL1からフィラメントFIL1を押出すための供給手段120を含んでもよい。供給手段120は、付加製造システムの高温端に位置するヒータユニットHU1にフィラメントFIL1を導くように構成される。供給手段120は、フィラメントFIL1をヒータユニットHU1に供給するように構成されてもよい。制御ユニットは、ヒータユニットHU1へのフィラメントFIL1の供給速度Vを制御するように構成されてもよい。供給手段120は、引張力Fによって、フィラメントFIL1をヒータユニットHU1に供給するように用意されてもよく、引張力Fは、フィラメントFIL1の破断時の引張強度よりも小さい。引張力Fは、より大きな引張力Fが、より早い供給速度Vで供給されるように供給速度Vに相関する。供給手段120は、たとえば、ロールと、当該ロールに導くように用意されたステッピングモータとを含んでもよい。制御ユニットは、ヒータユニットHU1へのフィラメントFIL1の供給を制御するように構成されてもよい。供給速度Vは、たとえば、10〜100mm/秒、好ましくは10〜70mm/秒の範囲内にあってもよい。
【0064】
付加製造システムは、ヒータユニットHU1に位置する温度センサなどの温度制御手段を含んでもよい。コントロールユニットは、温度センサからの温度情報を受け取るように構成されてもよい。ヒータユニットHU1は、たとえば、ヒータと熱電対とを含んでもよい。ヒータユニットHU1は、ノズル100が、フィラメントFIL1の処理温度TEXIT以上の温度T100に加熱可能であるように、ノズル100に結合してもよい。制御ユニットは、供給速度Vが、ノズル温度T100に同調可能であるように供給手段120にさらに接続されてもよい。それによって、ヒータユニットHU1は、処理温度TEXITへのヒータユニットHU1に供給されたフィラメントFIL1の各部分を加熱するために、十分な時間を有するように用意されてもよい。
【0065】
処理温度TEXITは、フィラメントFIL1材料組成物に依存する。たとえば、フィラメントFIL1が、より高い溶融点またはガラス転移温度を有する複合材料から形成されるとき、よい高い処理温度TEXITが必要とされてもよい。結局、供給速度Vは、ヒータユニットHU1が、初期フィラメント温度TFIL1を有する固体フィラメントFIL1を処理温度TEXITまで加熱するために十分な時間を有するように、小さくてもよい。初期フィラメント温度TFIL1は、フィラメントFIL1の複合材料の、溶融温度T、または熱たわみ温度未満である。ヒータユニットHU1は、したがって、ヒータユニットHU1に供給されたフィラメントFIL1の各部分を処理温度TEXITまで加熱するように構成されてもよい。マトリックス材料が半結晶性ポリ乳酸であるとき、ヒータユニットHU1は、ヒータユニットHU1に供給されたフィラメントFIL1の各部分を、前記半結晶性ポリ乳酸の溶融温度Tよりも高い処理温度TEXITまで加熱することができ、それによって、複合体溶融物の部分を形成する。フィラメントFIL1の処理温度TEXITは、たとえば160℃を超えてもよい。フィラメントFIL1が、木質系セルロース繊維の化学パルプを含み、化学パルプのリグニン含有量が少ないとき、処理温度は、180〜230℃の範囲内などの180℃を超える温度であってもよい。典型的には、処理温度TEXITは、230℃以下であり、その温度でセルロース繊維が分解し始める。
【0066】
フィラメントFIL1が、マトリックス材料のガラス転移温度Tよりも高い処理温度TEXITに加熱されるとき、フィラメントFIL1は、軟化する。したがって、処理温度TEXITにおいて、複合材料は、流動する。材料の流速は、メルトマスフローインデックスによって決定されてもよい。加熱ユニットHU1は、それによって、フィラメントFIL1から形成された、処理温度TEXITを有する複合体溶融物MLT1を提供する。
【0067】
複合体溶融物MLT1は、ノズル100を通って押し出されてもよい。ノズル100は、複合体溶融物MLT1を押出すための貫通口を備えてもよい。ノズル100の孔の寸法は、フィラメントFIL1の寸法よりも小さくてもよい。典型的には、前記孔は、円形である。前記孔の寸法は、押出速度に影響を与える。より大きな直径wを有する孔を有するノズル100は、複合体溶融物MLT1の吐出速度を速める。したがって、より大きな直径wを有する孔を有するノズル100は、フィラメントFIL1の供給速度Vを速めることができる。孔の直径wは、たとえば、0.2mm〜1.0mmの範囲内であってもよい。孔の典型的な直径wは、たとえば0.25mm、0.4mm、および0.6mmである。
【0068】
ノズル100の貫通孔は、孔幅Wを有し得る。孔幅Wは、ノズル100を通って押し出すことが可能な複合体溶融物MLT1の最大幅を規定する。ノズル100を通って押出された複合体溶融物MLT1の幅は、冷却されて複合体溶融物MLT1から形成された複合体要素POR1、POR2の幅WMLに等しくてもよい。依然として固相の流入フィラメントFIL1は、複合体溶融物MLT1に押出力を提供するために使用されてもよい。押出力は、引張力Fに相関してもよい。流入するフィラメントFIL1は、したがって、複合体溶融物を吐出するために適切な、ピストンまたはプランジャーとして作用可能である。複合体溶融物MLT1の吐出速度は、したがって、フィラメントFIL1の供給速度Vによって、いくらか制御可能である。
【0069】
付加製造システムは、供給速度V、ならびに/またはノズル100の側方運動Vおよび/もしくはプラットフォームPLT0を制御するための制御ユニットを含んでもよい。本方法は、ノズル100から複合体溶融物MLT1の一部を同時に吐出することを含んでもよい。接触線CL0は、平面方向S、Sの位置を規定し、ノズル100から流れる複合体溶融物MLT1は、プラットフォームPLT0に接触する。後続の材料層MLが、以前に吐出された材料層MLK−1の表面に方向Sに形成されるとき、接触線CL0は、位置を規定し、ノズル100から流れる複合体溶融物MLT1は、以前に沈着した材料層MLK−1に接触する。
【0070】
プラットフォームPLT0および/またはノズル100は、互いに独立して、直交方向Sx、Sy、Sz上を移動するように構成されてもよい。ノズル100を出た後、複合体溶融物MLT1の吐出部分は、冷たくなり始める。接触線CL0においてプラットフォームPLT0に接触すると、複合体溶融物MLTの各吐出部分は、複合体要素POR1、POR2に変換される。プラットフォームPLT0、または複合体溶融物MLT1の別の部分に接触すると、複合体溶融物の各吐出部分は、付着し、厚みHMLと幅WMLとを有する複合体要素POR1、POR2に変換される。
【0071】
プラットフォームPLT0および/またはノズルの動きを制御することによって、複合体要素POR1、POR2は、複合体材料のブロックBP−1、Bを形成するように用意されてもよい。複合体材料のブロックBP−1は、複合体溶融物MLT1の連続流を、たとえば方向Sに吐出することによって形成されてもよい。また、複合材料のブロックBは、複合体溶融物MLT1の非連続流を、たとえば、方向Sに吐出することによって複数の部分から形成されてもよい。複合体要素POR1、POR2は、空間が、2つの複合体要素POR1、POR2を互いに離すように、したがって、間隙VOID2によって分離されてもよい。方向S、Sにおける同一平面に沈着した、複合体要素POR1、POR2、複合材料のブロックBP−1、Bは、材料層ML、MLK−1を形成する。したがって、モデルに従って、ノズル100および/またはプラットフォームPLT0の、供給速度Vおよび/または側方運動Vを制御することによって、複合体要素POR1、POR2が、プラットフォーム表面SURFPLTに平行な平面上で互いに付着するように、材料層MLを製造可能である。複合体要素POR1、POR2が、プラットフォーム表面SurfPLTに平行な平面においてプラットフォームPLT0に付着するとき、第1材料層MLK−1が製造される。モデルに従って、ノズル100および/またはプラットフォームPLT0の、供給速度Vおよび/または垂直運動Vを制御することによって、後続の材料層ML、MLK+1が、プラットフォーム表面NPLTの法線に実質的に平行な方向Sに互いに付着するように、層MLK−1、ML、MLK+1を有する三次元製品PROD1が製造されてもよい。形成された製品は、したがって、互いに表面に用意された、複数層MLK−1、ML、MLK+1、MLK+2を含んでもよく、当該層MLK−1、ML、MLK+1、MLK+2は、互いに付着した。形成された製品は、界面IF1、IF2、IF3を層間に含んでもよい。形成された各層MLK+2は、さらなる界面IF4の基礎として機能可能である。互いに付着した、複数層MLK−1、ML、MLK+1、MLK+2の沈着を制御することによって、モデルに従って、三次元形状を得ることができる。冷却すると、複合体溶融物MLT1の連続的に押出された部分は、したがって、三次元複合製品PROD1を形成する。
【0072】
フィラメント組成物 − 熱機械的態様
複合体溶融物MLT1の複合体要素POR1、POR2への変換は、温度駆動工程である。付加製造システムから押し出された複合体溶融物の冷却の間における、メルトフローインデックス、冷却、およびレオロジー特性は、吐出された複合体要素POR1、POR2の間の間隙VOID2を含む三次元製品PROD1を提供するために使用可能である。複合材料から形成されるフィラメントのメルトマスフローインデックスは、複合体要素POR1、POR2が交差点温度Tsub以上であるとき、複合体溶融物MLT1の自己支持構造を改良するために選択可能である。複合材料のメルトフローインデックスは、複合体溶融物MLT1の自己支持構造と逆に相関する。したがって、比較的低いメルトフローインデックスを有する複合材料は、溶融状態で向上した寸法安定性を有する。複合材料のメルトマスフローインデックスは、組成物中における木質系セルロース繊維の化学パルプ量の増加によって減少し得る。付加製造システムから押出される複合体溶融物の溶融挙動は、フィラメントFIL1のレオロジー特性によってさらに制御されてもよい。交差点温度Tsubと処理温度TEXITとの間の小さな温度差を有する複合材料から形成されたフィラメントFIL1は、付加製造法のための複合体溶融物MLT1であって、ノズル100の寸法に応じて、複合体溶融物MLT1の吐出された部分が、厚みHMLと幅WMLとを有する複合体要素POR1、POR2に変換される複合体溶融物MLT1を提供するために使用可能である。ノズル100を出るとき、複合材料は、処理温度TEXITに近い温度を有する。付加製造システムは、典型的には、温度TENVを有する環境に位置する。環境温度TENVは、複合材料の熱たわみ温度未満である。環境温度TENVは、変化してもよい。環境温度TENVは、たとえば、20〜35℃の範囲内にあってもよい。フィラメントFIL1のレオロジー特性は、フィラメントFIL1から形成された複合体溶融物の寸法安定性を改良するために使用可能である。複合材料から形成されたフィラメントFIL1は、交差点温度Tsubを有する。交差点温度Tsubは、フィラメント材料の溶融物レオロジーに関する。交差点温度Tsubは、せん断貯蔵弾性率G’の値が、複合材料のせん断損失弾性率G’’の値に等しい温度を示す。交差点温度Tsubは、フィラメントFIL1の組成物に依存する。複合体要素POR1、POR2の温度が、交差点温度Tsub以下であるとき、当該複合体要素POR1、POR2は、それ自身の重量を支持可能であるように、十分な寸法安定性を有する。言い換えれば、複合体要素POR1、POR2の温度が、交差点温度Tsub以下であるとき、当該複合体要素POR1、POR2は、変形することなく、複合体溶融物MLT1の別の部分の基礎として作用可能である。有利には、交差点温度Tsubは、Tsub≦TEXITであるように処理温度TEXITに近い。交差点温度Tsubと処理温度TEXITとの間の温度差は、複合体溶融物の冷却速度に影響を与える。交差点温度Tsubは、T<Tsub≦TEXITであるように、ガラス転移温度Tよりも高い。交差点温度Tsubと、処理温度TEXITとの間の小さな温度差を有する複合材料から形成されるフィラメントFIL1は、冷却にあまり感受性ではない。交差点温度Tsubと、処理温度TEXITとの間の温度差は、5〜40℃の範囲内などの、たとえば、100℃未満、好ましくは80℃未満、最も好ましくは40℃未満であってもよい。
【0073】
フィラメント組成物 − 木質系セルロース繊維
フィラメントFIL1は、木質系セルロース繊維を含んでもよく、このことは、木製材料に由来するセルロース繊維をいう。好ましくは、フィラメントFIL1は、フィラメントFIL1重量の5〜30重量%の範囲内などの30重量%以下の量の木質系繊維の化学パルプを含んでもよい。木製材料は、トウヒ、マツ、モミ、カラマツ、ベイマツ、もしくはツガなどの軟材の木、またはカバノキ、アスペン、ポプラ、ハンノキ、ユーカリノキ、もしくはアカシアなどの硬材の木、または軟材および硬材の混合物に由来してもよい。木質系セルロース繊維は、機械的に処理された、および/もしくは化学的処理された繊維、ならびに/または繊維様粒子を含んでもよい。
【0074】
化学的パルプ化処理を受けた木質系セルロース繊維は、以後、木質系セルロース繊維の化学パルプと称される。化学パルプは、たとえば、クラフトプロセス、または亜硫酸法に由来してもよいが、ソーダパルプ化法などの他の化学処理が使用されてもよい。クラフトプロセスは、パルプ産業における最も広く使用されている蒸解方法であり、クラフトプロセスに由来する化学パルプは、大量に利用可能である。化学パルプのリグニン含有量は、化学パルプ重量の0.01〜15.00重量%の範囲内のように典型的に低い。典型的には、化学パルプは、化学パルプ重量の、5%未満または2%未満などの10%以下のリグニン含有量を有してもよい。実質的にリグニンを含まない化学パルプが望まれる用途において、化学パルプのリグニン含有量は、化学パルプ重量の、0.01〜1.00重量%の範囲内など、好ましくは0.01〜0.50重量%の範囲内などの、1%未満または0.5%未満などさらに少なくてもよい。リグニンは、木に天然に存在する高度に重合化された高分子である。針葉樹などの多くの軟材は、大量のリグニンを含む。リグニンは、架橋可能であり、木質系セルロース繊維について撥水剤として作用可能である。たとえば、木材細胞において、リグニンの存在は、水が木材細胞に侵入することを制限し、構造を非常に堅くする。リグニンは、セルロース繊維よりも物理的および熱的に耐久性が低い。リグニンを含む木質系セルロース繊維は、したがって、比較的低い温度においてより容易に分解する傾向を有する。リグニンは、リグニンを実質的に含まない木質系セルロース繊維が分解し始める温度よりも顕著に低い160℃以下の温度で既に分解し始める。さらに、リグニンの分解は、香りと共に誘導体を生成し得る。最終用途によっては、複合製品における香りの存在は、望ましくない。
【0075】
木質系セルロース繊維の化学パルプの比較的小さな平均繊維長は、半結晶性ポリ乳酸を含む複合材料のレオロジー挙動を改良するために好適な特性を提供することができる。木質系セルロース繊維の化学パルプの繊維長は、複合材料の複素粘度ηにさらに影響を与え得る。好ましくは、複合材料は、木質系セルロース繊維の化学パルプを含むように用意されてもよく、木質系セルロース繊維の化学パルプ重量の、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が、0.4mm未満、より好ましくは0.25mm未満、最も好ましくは0.1mm未満の長さ加重繊維長を有してもよい。たとえば、木質系セルロース繊維の化学パルプ重量の、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%は、0.1mm〜0.4mmの範囲内の長さ加重繊維長を有してもよい。
【0076】
化学的に処理された繊維と、繊維様粒子とは、空隙、または中空内部をさらに備えてもよい。低下したリグニン含有量と中空内部とが原因で、化学パルプなどの化学的に処理された繊維は、したがって、主に機械的方法によって処理されたパルプなどの、リグニン含有量が低下しなかった繊維の密度未満の密度を有してもよい。化学的に処理された繊維は、空隙または中空内部が主方向Sに平行に延びるように、主方向Sにおける長さを含む細長い形態を有し得る。化学的に処理された繊維様粒子は、空隙または中空内部が、主方向Sに平行に延びるように、繊維様粒子の幅および長さを規定する長軸および短軸を含む水平寸法と、繊維様粒子の高さを決定する垂直寸法とを有する、フレーク形態の平坦形状を有し得る。化学的に処理された繊維または繊維様粒子の空隙または中空内部は、複合材料における木質系セルロース繊維の密度を減少するために使用可能である。
【0077】
したがって、化学パルプは、木質系セルロース繊維が、低下した密度を有し、たとえば160〜230℃の範囲内における、より高い処理温度で処理されるように、少ないリグニン含有量および中空内部を有するように用意されてもよい。
【0078】
フィラメント組成物−ポリ乳酸
フィラメントFIL1は、ポリ乳酸などの半結晶性ポリマーを含んでもよい。好ましくは、フィラメントFIL1は、フィラメントFIL1重量の、50〜90重量%の範囲内、より好ましくは50〜80重量%などの90重量%以下の量のポリ乳酸を含んでもよい。ポリ乳酸は、化学式(Cを有する熱可塑性脂肪族ポリエステルをいう。ポリ乳酸は、ポリラクチド、ポリ乳酸ポリマー、およびPLAとしても知られている。ポリ乳酸は、SFS−EN−13432基準に従って規定されるような生分解性ポリマーである。ポリ乳酸は、トウモロコシ、タピオカ、またはサトウキビの作物残渣などの多くの再生可能な供給源に由来し得る。
【0079】
ポリ乳酸は、典型的には、乳酸モノマーの直接縮合によって、または非環式のジエステルであるラクチドの開環重合によって、製造される。乳酸は、キラル性を有するので、ポリ乳酸は、ポリ−L−ラクチド、またはポリ−D−ラクチドなどのいくつかの形態で存在し得る。ポリ−L−ラクチドは、半結晶性である。ポリ−D−ラクチドは、非結晶質である。
【0080】
半結晶性ポリ乳酸は、典型的には、200℃を超える温度で熱分解を受ける。ポリ−L−ラクチドなどのポリ乳酸ホモポリマーは、一般的に、60〜65℃の範囲のガラス転移温度と173〜178℃の範囲の溶融温度とを有する。ポリ乳酸に対する好適な処理温度は、したがって、典型的には、185〜190℃の範囲内にあり、非常に狭い。ポリ−L−ラクチドは、37%の範囲内の結晶性と、2.7〜16GPaの範囲内の引張弾性率とを有する。ポリ−L−ラクチドの溶融温度は、40〜50℃まで増加可能であり、その熱たわみ温度は、ポリマーをPDLA(ポリ−D−ラクチド)とともに物理的に混合することによって、約60℃から190℃まで増加可能である。
【0081】
フィラメント組成物 − ポリプロピレン
フィラメントFIL1は、ポリプロピレンなどの半結晶性ポリマーを含んでもよい。本明細書においてポリプロピレンとは、プロピレンのポリマーをいう。ポリプロピレンは、ホモポリマーの形態であってもよく、鎖沿いの全ての繰り返しプロペンユニットは、同じ種類である。また、プロピレンは、繰り返しプロペンユニットが、別のモノマーユニットをさらに含む、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーの形態であってもよい。ポリプロピレンは、好ましくはイソタクチックであり、全てのメチル側鎖が、ポリマー鎖の同じ側に位置している。ポリプロピレンは、低い表面自由エネルギーレベルを有し、多くの化学溶媒、塩基、および酸に対して高い抵抗性を有するポリオレフィンである。ポリプロピレンは、フィラメントと形成された製品とが、帯電防止特性を有する付加製造用のフィラメント材料を提供するように用意されてもよい。非極性および低い表面自由エネルギー特性が原因で、ポリプロピレンは、高度に疎水性である。好ましくは、フィラメントFIL1は、フィラメントFIL1重量の、1〜30重量%の範囲内、より好ましくは5〜25重量%の範囲内、最も好ましくは5〜20重量%の範囲内などの、30重量%以下の量のポリプロピレンを含んでもよい。フィラメントFIL1は、エラストマー修飾されたポリプロピレンをさらに含んでもよい。エラストマー修飾されたポリプロピレンは、複合材料、したがってフィラメントFIL1の硬さが増加するように構成されてもよい。ポリプロピレンにおける不飽和エラストマーは、さらに衝撃強度が増加するように用意されてもよいが、飽和エラストマーは、さらに、フィラメントFIL1の硬さが増加するように用意されてもよい。エラストマー修飾ポリプロピレンは、したがって、溶融状態の材料の吐出を促進する、より高い溶融強度をもたらし得る。より高い溶融強度を有する複合体溶融物は、沈着した材料部分または層の間の空間を含む形状などの非連続な形状の印刷を促進可能であるより正確な位置で沈着されてもよい。
【0082】
実施例1 − フィラメント材料の熱機械的特性の比較データ
以下の表1は、複合材料の、いくつかの機械的および物理的特性を示す。試料、および比較試料は、それらの物理的、機械的、および熱的特性の観点から試験された。試料「S0」は、未使用のポリプロピレンと、木質系セルロース繊維の化学パルプの20重量%とを含む。試料「S0」は、ポリ乳酸を含まない。試料「S1」は、半結晶性ポリ乳酸からなり、木質系セルロース繊維の化学パルプを含まない。試料「S2」は、半結晶性ポリ乳酸と、20重量%の木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む。試料「S2」は、ポリプロピレンを含まない。試料「S3」は、70重量%の半結晶性ポリ乳酸、10重量%のポリプロピレン、および20重量%の木質系セルロース繊維の化学パルプを含む。試料「C1」は、ポリ乳酸などのポリエステル、10〜20重量%の範囲内の木材繊維、および添加剤に基づくポリマー混合物を含む参照試料である。試料「C2」は、ポリ乳酸およびポリヒドロキシルアルカノエートのポリマー混合物を含む別の参照試料である。
【0083】
【表1】
【0084】
メルトフローインデックス
半結晶性ポリ乳酸を含む複合材料のメルトフローインデックスは、複合材料における、木質系セルロース繊維の化学パルプおよび/またはポリプロピレンの量を制御することによって選択されてもよい。典型的には、ポリプロピレンのメルトフローインデックスは、ポリ乳酸のメルトフローインデックスよりも顕著に高い。付加製造用半結晶性ポリ乳酸は、典型的には20〜85g/10分(190℃、10kg、ISO1133)の範囲内にあるメルトフローインデックスを有する。典型的には、ポリプロピレンは、45〜110g/10分(230℃、2.16kg、ISO1133)の範囲内にあるメルトフローインデックスを有する。木質系セルロース繊維は、複合材料のメルトフローインデックスを減少させる効果を有する。
【0085】
上述の表1を参照すると、マトリックス材料がポリプロピレンである試料S0の80g/10分のメルトフローインデックスは、試験された試料の最大値であった。再利用木質繊維を含み、マトリックス材料がポリ乳酸である参照試料C1のメルトフローインデックスは、46g/10分であった。半結晶性ポリ乳酸を含む試料S1、S2、およびS3において、メルトフローインデックスは、25g/10分以下であった。PLAのみを含む試料S1のメルトフローインデックスは、19g/分であった。さらに化学パルプを含む試料S2のメルトフローインデックスは、10g/10分であった。半結晶性ポリ乳酸、化学パルプ、およびポリプロピレンを含む試料S3のメルトフローインデックスは、13g/10分であった。したがって、化学パルプは、複合材料のメルトフローインデックスを減少させる効果をもたらした。化学パルプは、再利用木材繊維とは異なる効果をもたらすことがさらに明らかとなった。複合材料のメルトフローインデックスの上昇を含む、複合体へのポリプロピレンの添加は、したがってより良好な流動性をもたらす。有利には、複合体溶融物MLT1は、60g/10分未満、より有利には30g/10分未満、最も有利には20g/10分未満のメルトフローインデックスを有する(190℃、10kg、ISO1133)。
【0086】
破断点引張ひずみ
破断点引張ひずみは、衝撃強度に使用されるものと同様の成形試料から測定可能である。三次元複合製品の引張強度は、ISO527−2(2012年度版)に従って、50mm/分の試験速度、23℃において、アレイ型試験標準標本1Bの形状を有する試料からさらに測定可能である。
【0087】
試料S1は、10%の破断値において引張ひずみを有した。試料S2は、1.6%の破断値において引張ひずみを有した。試料S3は、3.6%の破断値において引張ひずみを有した。したがって、複合材料への木質系セルロース繊維の化学パルプの添加は、破断値において引張ひずみを減少させ得る。
【0088】
引張弾性率
上述の表1を参照のこと。引張弾性率は、ISO527−2(2012年度版)に従って、1mm/分の試験速度、23℃において測定された。マトリックス材料がポリプロピレンである試料S0の引張弾性率は、試験された試料の最小値であった2100Mpaであった。再利用木材繊維を含み、マトリックス材料がポリ乳酸である参照試料C1の引張弾性率は、3290Mpaであった。半結晶性ポリ乳酸を含む試料S1、S2、およびS3において、引張弾性率は、3700〜5300Mpaの範囲内であり、より高い。PLAのみを含む試料S1の引張弾性率は、3700Mpaであった。化学パルプをさらに含む試料S2の引張弾性率は、5300Mpaであった。したがって、化学パルプは、複合材料の引張弾性率を増加させる効果を有した。半結晶性ポリ乳酸、化学パルプ、およびポリプロピレンを含む試料S3の引張弾性率は、4700Mpaであった。したがって、ポリプロピレンと組み合わせた化学パルプは、複合材料の引張弾性率をわずかに増加させる効果を有した。
【0089】
比弾性率
上述の表1を参照して、ポリプロピレンおよびポリ乳酸と組み合わせた化学パルプは、複合材料の比弾性率を増加させるために使用可能である。さらに、化学パルプは、再利用木材繊維とは異なる効果を有してもよい。マトリックス材料がポリプロピレンである試料S0の比弾性率は、2121Mpaであり、試験された試料の最小値であった。再利用木材繊維を含み、マトリックス材料がポリ乳酸である参照試料C1の引張弾性率は、2861Mpaであった。マトリックス材料として半結晶性ポリ乳酸を含む、試料S1、S2、およびS3において、比弾性率は、2984〜4077Mpaの範囲内であり、参照試料C1におけるよりも高かった。PLAのみを含む試料S1の比弾性率は、2984Mpaであった。化学パルプをさらに含む試料S2の比弾性率は、4077Mpaであった。したがって、化学パルプは、複合材料の比弾性率を増加させる効果を有した。半結晶性ポリ乳酸、化学パルプ、およびポリプロピレンを含む試料S3の比弾性率は、3790Mpaであった。
【0090】
表1の結果に基づいて、木質系セルロース繊維の、リグニン含有量およびバルク密度は、したがって、比弾性率に効果を有し得る。化学パルプは、支持鋳型なしに、3D印刷製品の剛性駆動形成を改良するために使用可能である。かかる複合材料から形成されるフィラメントは、2GPa/g/cmを超える、有利には3GPa/g/cmを超える、最も有利には4GPa/g/cm以上の比弾性率を有するように用意されてもよい。
【0091】
曲げ弾性率
曲げ弾性率は、曲げにおける硬さの測定値である。エラストマーなどの柔軟な材料は、強化繊維よりも低い値を有する。曲げ強度は、負荷下における変形に耐える材料の性能を評価する。押出による付加製造における使用に適切なフィラメントは、それが付加製造システムに供給可能であるように、曲げ弾性率および引張強度を含むように用意されてもよい。有利には、付加製造用の複合材料から形成されるフィラメントは、高い曲げ強度および低い曲げ弾性率を有する。フィラメントに加えられる負荷によって曲がるフィラメントを提供することによって、付加製造システムにフィラメントが供給されたときのフィラメントの破壊が回避可能である。
【0092】
マトリックス材料として半結晶性ポリ乳酸と、木質系セルロース繊維とを含む複合材料から形成されるフィラメントは、6GPa以下の曲げ弾性率を有するように用意されてもよい。フィラメントは、ポリプロピレンをさらに含んでもよい。ポリプロピレンは、材料の柔軟性を改良する効果を有する。溶融状態においてフィラメント材料は、付加製造システムに由来する材料の正確な吐出を促進する高い剛性を有し得る。
【0093】
ポリプロピレンの典型的な曲げ弾性率は、約1.5Gpa/g/cmである。化学パルプは、支持鋳型なしに3D印刷製品の曲げ弾性率を増加するために使用可能である。ポリプロピレンは、化学パルプなどの木質系セルロース繊維を含むポリ乳酸から形成されるフィラメントの、軟性および柔軟性を改良するために使用可能である。
【0094】
上述の表1を参照すれば、曲げ弾性率は、ISO178(2015年度版)の方法Bに従った2mm/分の速度、2GPa/g/cmを超える比弾性率において三点曲げ負荷試験によって測定された。
【0095】
表1の結果に基づいて、化学パルプと組み合わせたポリプロピレンは、曲げ弾性率に影響を与える。80重量%のポリ乳酸と、20重量%の木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む試料S2は、5300Mpaの曲げ弾性率値を有する。70重量%のポリ乳酸、10重量%のポリプロピレン、および20重量%の木質系セルロース繊維の化学パルプを含む試料S3は、4440Mpaの曲げ弾性率を有する。試料S2およびS3を比較すると、複合材料へのポリプロピレンの添加によって、曲げ弾性率が減少してもよく、このことは、柔軟性の改良を示す。ポリ乳酸、化学パルプから形成され、さらに10重量%のポリプロピレンを含む複合体を提供することによって、曲げ弾性率は、ポリプロピレンを含まない対応する複合体に比べて、12%以上など少なくとも10%減少してもよい。
【0096】
フィラメントは、材料の曲げ弾性率が、2〜6GPa/g/cmの範囲内、有利には3GPa/g/cmを超え、最も有利には4GPa/g/cmを超えるような6GPa以下となるように、ポリ乳酸、木質系セルロース繊維、およびポリプロピレンを含むように用意されてもよい。マトリックス材料がポリプロピレンである試料S0の曲げ弾性率は、2000Mpaであり、試験された試料の最小値であった。再利用木材繊維を含み、マトリックス材料がポリ乳酸である参照試料C1の曲げ弾性率は、3930Mpaであった。マトリックス材料として半結晶性ポリ乳酸を含む、試料S1、S2、およびS3において、曲げ弾性率は、3490〜5300Mpaの範囲内であった。PLAのみを含む試料S1の曲げ弾性率は、3490Mpaであった。化学パルプをさらに含む試料S2の曲げ弾性率は、5300Mpaであった。したがって、化学パルプは、複合材料の曲げ弾性率を増加する効果を有した。半結晶性ポリ乳酸、化学パルプ、およびポリプロピレンを含む試料S3の曲げ弾性率は、4400Mpaであった。
【0097】
水分吸収
上述の表1を参照すると、ポリプロピレンは、化学パルプおよびポリ乳酸を含む複合材料の水分吸収を減少するために使用可能である。化学パルプを含む、試料S1、S2、およびS3において、ポリプロピレンを含むフィラメントの乾燥試験標本によって、50%相対湿度を有する空気から22℃において24時間で吸収された水分量は、前記乾燥標本の0.6重量%未満であることが分かった。測定前に、試験標本は、ISO62(2008年度版)に従って、48時間にわたって120℃で乾燥された。192時間にわたる水分吸収量は、乾燥試験標本の重量の1.75重量%未満であることが分かった。測定前に、試験標本は、ISO62(2008年度版)に従って、48時間にわたって120℃で乾燥された。
【0098】
実施例2−フィラメント材料の溶融レオロジーの比較データ
図7および図8を参照のこと。これらの図は、ポリ乳酸を含む複合材料試料S1、S2、S3、およびC1における、温度Tの関数として、せん断損失弾性率曲線G’’と、せん断貯蔵弾性率曲線G’とを示し、当該試料は、上述の実施例1に開示されたものに対応する。複合体溶融物の動的レオロジー特性は、以下に開示されたような試験条件において、平行平板を備える振動性レオメータによって測定された。
【0099】
試験条件
測定システム:平行平板、セットアップPP25−SN5319、ディスク直径25mm、間隙0.6mm
ゆがみ振幅:直線粘弾性領域において0.1%
周波数:1Hz
温度傾斜:180〜25℃、線形速度5℃/分、連続傾斜、ディケード毎5ポイント
試験装置:Anton Paar MCR 301
試験は、製造業者の指示書に従って、ASTM D4440−15と同等のISO6721−10:2015に従って実施された。
【0100】
図における垂直軸は、加えられる力をパルカル(Pa)で示す。
図における水平軸は、温度(T)を示す。
曲線G’S1、G’S2、G’S3、G’C1は、それぞれ試料S1、S2、S3、およびC1のせん断貯蔵弾性率曲線を示す。
曲線G’’S1、G’’S2、G’’S3、G’’C1は、それぞれ試料S1、S2、S3、およびC1のせん断損失弾性率曲線を示す。
破線TS1、TS2、TS3、およびTC1は、交差点温度を示し、せん断損失弾性率は、せん断貯蔵弾性率に等しく、すなわち、
G’=G’’である。
以下の表2は、複合材料の試料から測定された交差点温度値を開示する。
【0101】
【表2】
【0102】
表2は、TC1=126℃、TS1=132℃、TS2=136℃、およびTS3=146℃であることを示す。試料S2、つまりポリ乳酸と木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む複合材料は、試料S1の交差点温度よりも高い135℃以上の交差点温度を有することが分かった。ポリプロピレンをさらに含む複合材料は、145℃以上の最も高い交差点温度を有することが分かった。複合材料におけるポリプロピレンの使用は、したがって、冷却されると、当該複合体溶融物が、それ自身の重量を支持し始める温度を変える。かかる複合体溶融物は、複合体溶融物が冷却されたとき、さらに弾性となる。したがって、ポリプロピレン、ポリ乳酸、および木質系セルロース繊維を含む付加製造用のフィラメントは、冷却にあまり感受性ではなく、改良された寸法安定性を有する。ポリプロピレン、ポリ乳酸、および木質系セルロース繊維の化学パルプを含むフィラメントは、したがって、高温においてG’’>G’を有するように構成されてもよい。ポリ乳酸と、木質系セルロース繊維の化学パルプとを含むフィラメントは、135℃以上の温度において、交差点G’/G’’=1を有するように用意されてもよい。ポリプロピレン、ポリ乳酸、および木質系セルロース繊維の化学パルプを含むフィラメントは、140℃以上、好ましくは145℃以上の温度において、交差点G’/G’’=1を有するように用意されてもよい。
【0103】
実施例3−フィラメント材料の熱たわみ温度の比較データ
以下の表3は、複合材料を含むフィラメントの熱たわみ温度における、木質系セルロース繊維の化学パルプとポリプロピレンとの効果の実験データを示す。熱たわみ温度は、上述の実施例1に開示されたものに対応する、複合材料試料S1、S2、およびS3から測定された。熱たわみ温度は、ISO75−2(2013年度版)の方法Aに従って、1.8MPaの一定の曲げ応力下において測定された。
【0104】
【表3】
【0105】
試料S1の結果に基づいて、ポリ乳酸を含むフィラメントは、60℃未満の低い熱たわみ温度を有する。試料S2の結果に基づいて、ポリ乳酸と、木質系セルロース繊維の化学パルプとを含むフィラメントは、90℃以上、さらに90℃以上の顕著に高い熱たわみ温度を有するように用意されてもよい。木質系セルロース繊維の化学パルプは、したがって、フィラメントの熱たわみ温度を上昇させるように用意されてもよい。試料S3の結果に基づいて、ポリプロピレン、ポリ乳酸、および木質系セルロース繊維の化学パルプを含むフィラメントは、ポリ乳酸のみを含むフィラメントと同じか、またはわずかに高い熱たわみ温度を有するように用意されてもよい。しかしながら、試料S2と比較すると、ポリ乳酸と木質系セルロースとを含むフィラメントへのポリプロピレンの導入は、熱たわみ温度を低下させる効果を有する。
【0106】
したがって、ポリプロピレンは、ポリ乳酸と比べてより高い熱たわみ温度が得られるように導入されてもよい。
【0107】
実施例4 − フィラメント材料の衝撃強度の比較データ
表1および図9を参照のこと。図9は、射出成形の衝撃強度値と、押出による付加製造によって印刷された試料との比較を示す。縦軸は、キロジュール毎平方メートル(kJ/m)で衝撃強度値を示している。試料は、上述の実施例1に開示されたものに対応する。試料S2、S3、およびC1は、射出成形(明るい灰色、左)として、印刷された試料(濃い灰色、右)として作製された。シャルピー衝撃強度値は、ノッチなしエッジを用いて、ISO179−1(2010年度版)に従って23℃で測定された。この基準は、ISO179/1eUとしても知られている。衝撃強度測定において使用された各試料は、80×10×4mmの寸法を有するアレイ形状を有した。
【0108】
シャルピー衝撃強度は、80×10×4mmの寸法を有する試料標本を用いて、ISO179/1eUに従って23℃において測定された。
【0109】
表1の衝撃強度値は、射出成形試料から測定され、表1において「成形」として表わされ、付加製造システムを用いて得られた、層を削る三次元複合製品試料は、表1において「印刷」と表わされた。
【0110】
印刷された試料は、複数の層中に、各層が、材料の連続流として印刷されるように印刷された。各層は、後続の層が、既に固定化された層の表面に印刷されるように、分離して印刷された。層は、プラットフォーム表面SurfPLTに対して実質的に平行な方向Sにおいて互いに隣接して印刷された。複合体溶融物の連続的に押出された部分は、したがって、三次元複合製品を形成する。したがって、80mmの長さは、0.6mmノズル、100%充填剤を用いて、30mm/sの側方運動Vにおいて、0.2mm層厚で、方向Sに形成された。
【0111】
試料S1は、射出成形されたとき、23℃において23kJ/mのノッチなしシャルピー衝撃強度を有した。試料S2およびS3は、射出成形されたとき、23℃において、それぞれ23および21kJ/mのノッチなしシャルピー衝撃強度を有した。試料C1は、射出成形されたとき、23℃において19kJ/mのノッチなしシャルピー衝撃強度を有した。結果に基づいて、ポリ乳酸と、木質系セルロース繊維の化学パルプの約20重量%とを含む複合材料は、純粋なPLAと同様の衝撃強度を有する。しかしながら、製品は、射出成形によって得られた製品とは異なる押出による付加製造によって得られた。試料S2およびS3は、射出成形されたとき、23℃において、それぞれ11.3および8.9kJ/mのノッチなしシャルピー衝撃強度を有した。試料C1は、射出成形されたとき、23℃において、10.8kJ/mのノッチなしシャルピー衝撃強度を有した。
【0112】
形成された試料の各層は、方向Sxにおける複合体溶融物の連続流を分配することによって形成される複合材料のブロックを表す。層内において、界面は存在しない。形成された試料は、したがって、層間に界面を含む。したがって、プラットフォーム表面NPLTの法線に実質的に平行な方向Sにおいて互いに付着された層を含む複合製品は、複数の層を含む三次元製品の層に平行な参照平面REF0に実質的に平行な第1方向Sにおける第1衝撃強度と、前記参照平面REF0に実質的に垂直な第2方向Sにおける第2衝撃強度とを含んでもよく、ISO179/1eUに従って、23℃におけるシャルピー衝撃強度値として測定されたとき、前記第1衝撃強度は、前記第2衝撃強度とは異なる。第1衝撃強度は、20kJ/m以下、好ましくは、5〜15kJ/mの範囲内などの15kJ/m以下であってもよい。
【0113】
したがって、押出による付加製造は、層を含む三次元製品を得るように用意されてもよく、当該製品の、引張強度および/または衝撃強度などの機械的特性は、射出成形などの他の手段によって同一の複合材料から得られた製品とは異なる。
【0114】
実施例5 − 衝撃強度に対するポリプロピレンの影響
図10および以下の表4を参照のこと。図10は、ポリ乳酸および/または異なる量のポリプロピレンを含む、押出による付加製造によって印刷された複合材料試料の衝撃強度値の比較を表す。参照試料C1は、上述の実施例1に開示された試料C1に対応する。4つの試料PP0、PP5、PP10、およびPP20は、化学パルプの20重量%と、マトリックス材料としてポリ乳酸と、それぞれ0、5、10、または20重量%の量のポリプロピレンとを含み、参照試料C1と比較された。縦軸は、キロジュール毎平方メートル(kJ/m)の衝撃強度値を示す。試料棒グラフの上端の縦線は、標準偏差を示す。表4の値は、図10における試料棒グラフによって示される値に対応する。表4は、フィラメントのノッチなしシャルピー衝撃強度におけるポリプロピレン量の影響の実験データを示す。
【0115】
【表4】
【0116】
図10および表4から分かるように、ポリプロピレンの添加は、衝撃強度を減少させる。しかしながら、ポリプロピレンの量は、5〜20重量%の範囲内にあるとき、ノッチなしシャルピー衝撃強度に顕著な影響を有さなかった。
【0117】
実施例6 − フィラメント複合材料の複素粘度の比較データ
図11を参照のこと。図は、ポリ乳酸を含む複合材料試料S1、S2、S3、およびC1において、周波数の関数として、複素粘度ηを示し、当該試料は、上述の実施例1および2に開示されたものに対応する。複合体溶融物の動的レオロジー特性は、以下に開示されたような試験条件において平行平板を備える動的レオメータによって測定された。
【0118】
試験条件:
測定システム:平行平板、セットアップPP25−SN5319、ディスク直径25mm、間隙0.6mm
ひずみ振幅:線形粘弾性範囲において、0.1%
周波数スイープ:0.01〜100Hz
周波数スロープ:ディケード毎5ポイント
温度:180℃
試験装置:Anton Paar MCR 301
【0119】
試験は、ASTM D4440−15に等価であるISO6721−10:2015に従って、製造業者の指示書に従って実施された。
【0120】
図における縦軸は、パスカル秒(Pa・s)の単位で複素粘度ηを表す。
図における横軸は、ヘルツ(Hz)の単位で周波数を表す。
曲線S1、S2、S3、およびC1は、周波数の関数として、それぞれ試料S1、S2、S3、およびC1の複素粘度ηを表す。
【0121】
以下の表5は、0.1Hzおよび1Hzの周波数における、試料S1、S2、S3、およびC1の複素粘度ηを開示する。
【0122】
周波数スイープ測定によって、0.1Hz周波数において測定された周波数値は、付加製造システムを用いて、モデルに従って三次元複合製品を製造するための方法における状態を表し、複合体溶融物の一部は、当該複合体溶融物の一部が、プラットフォームまたは別の層に付着するようにノズルから同時に吐出される。したがって、0.1Hzの周波数値は、複合体溶融物が、流れる前、または流れた後に、実質的に固定されるとき、フィラメント材料から形成された複合体溶融物の挙動を表す。言い換えれば、0.1Hzの周波数値は、たとえばノズルから出た後、未だ流れないか、または流れを止める複合体溶融物の挙動を表す。
【0123】
周波数スイープ測定によって、1Hzの周波数において測定される周波数値は、付加製造システムを用いて、モデルに従って三次元複合製品を製造するための方法における状態を表し、複合体溶融物の吐出された部分は、複合体要素に変換される。1Hzの周波数値は、ノズルおよび/またはプラットフォームの側方運動に対応する速度において、フィラメント材料から形成される複合体溶融物の冷却時間とほぼ同じである。したがって、1Hzの周波数値は、吐出された複合体溶融物の冷却速度を示す。
【0124】
【表5】
【0125】
上述の表5に示されたように、半結晶性ポリ乳酸からなり、木質系セルロース繊維の化学パルプを含まない試料S1において、複素粘度ηは、0.1Hzの周波数、および1Hzの周波数の両方において、6000Pa・s未満である。半結晶性ポリ乳酸と20重量%の木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む試料S2において、複素粘度ηは、0.1Hzの周波数において33499Pa・sであり、1Hzの周波数において9427Pa・sである。70重量%の半結晶性ポリ乳酸と、10重量%のポリプロピレンと、20重量%の木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む試料S3において、複素粘度ηは、1Hzの周波数において12527Pa・sであり、0.1Hzの周波数において63023Pa・sである。
【0126】
図11および表5に基づいて、上述のような条件において試験されたとき、半結晶性ポリ乳酸と木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む複合材料から形成された、押出による付加製造における使用に適切なフィラメントは、0.1Hzの周波数において測定されたとき、フィラメントの複合材料が、10000Pa・s以上、好ましくは20000Pa・s以上、最も好ましくは30000Pa・s以上の複素粘度ηを有するように、押出によって付加製造されたとき、フィラメントから形成された複合体溶融物が、133℃以上の温度Tsubにおいて、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率を有するように、重量の5〜30重量%の範囲の量の木質系セルロース繊維の化学パルプのフィラメントを含むように準備することが可能である。
【0127】
さらに図11および表5に基づいて、上述されたような条件において試験されたとき、半結晶性ポリ乳酸と木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む複合材料から形成された、押出による付加製造における使用に適切なフィラメントは、押出によって付加製造されたとき、フィラメントから形成された複合体溶融物が、133℃以上の温度Tsubにおいて、1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率を有するように、1Hzの周波数において測定されたとき、フィラメントの複合材料が、5000Pa・s以上、好ましくは7000Pa・s以上、最も好ましくは9000Pa・s以上の複素粘度ηを有するように、重量の5〜30重量%の範囲内の量の木質系セルロース繊維の化学パルプのフィラメントを含むように準備することが可能である。
【0128】
さらに図11、表2、および表5に基づいて、上述の条件において試験されたとき、半結晶性ポリ乳酸と木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む複合材料から形成された、押出による付加製造における使用に適切なフィラメントは、押出によって付加製造されたとき、フィラメントから形成された複合体溶融物が、140℃以上の温度Tsubにおいて1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率を有するように、0.1Hzの周波数において測定されたとき、フィラメントの複合材料が、15000Pa・s以上、好ましくは35000Pa・s以上、最も好ましくは50000Pa・s以上の複素粘度ηを有するように、重量の5〜30重量%の範囲内の量の木質系セルロース繊維の化学パルプのフィラメントと5〜20重量%の範囲内の量でポリプロピレンとを含むように準備することが可能である。
【0129】
さらに図11、表2、および表5に基づいて、上述のような条件において試験されたとき、半結晶性ポリ乳酸と木質系セルロース繊維の化学パルプとを含む複合材料から形成された、押出による付加製造における使用に適切なフィラメントは、押出によって付加製造されたとき、フィラメントから形成された複合体溶融物が、140℃以上の温度Tsubにおいて1.0以上の、せん断損失弾性率に対するせん断貯蔵弾性率の比率を有するように、フィラメントの複合体材料が、1Hzの周波数において測定されたとき、5000Pa・s以上、好ましくは9000Pa・s以上、最も好ましくは12000Pa・s以上の複素粘度ηを有するように、重量の5〜30重量%の範囲内の量の木質系セルロース繊維の化学パルプのフィラメントと50〜20重量%の範囲内の量のポリプロピレンとを含むように準備することが可能である。
【0130】
当業者にとって、本発明に係る、フィラメント、製品、および方法の、修正および変更が、認識可能であることは明確である。図は、概略図である。添付の図面を参照して上述された特定の実施例は、例示にすぎず、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を制限することを意味するものではない。
図1
図2
図3
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図9
図10
図11